[ポリアルキレングリコールエステル]
本発明に係るポリアルキレングリコールエステル(以下、「本エステル」という。)は、脂肪族モノカルボン酸(A)成分と、ポリアルキレングリコール(B)成分とをエステル化する等して得られるポリアルキレングリコールエステルである。
[(A)脂肪族モノカルボン酸成分]
本エステルに用いられる脂肪族モノカルボン酸(A)成分は、炭素数4〜18、好ましくは炭素数4〜12、より好ましくは炭素数7〜10の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸である。
直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸としては、具体的には、n−ブタン酸、n−ペンタン酸、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸、n−ウンデカン酸、n−ドデカン酸、n−トリデカン酸、n−テトラデカン酸、n−ペンタデカン酸、n−ヘキサデカン酸、n−ヘプタデカン酸、n−オクタデカン酸が例示される。これらの中でも、低温流動性に優れ、低温粘度が低い点で、炭素数4〜9の脂肪族飽和モノカルボン酸が好ましく、具体的には、n−ブタン酸、n−ペンタン酸、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸が例示される。また、耐熱性に優れる点で、炭素数8〜12の脂肪族飽和モノカルボン酸が好ましく、具体的には、n−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸、n−ウンデカン酸、n−ドデカン酸が例示される。さらには、非常に高い粘度指数、良好な耐熱性及び低温流動性を有する点で炭素数7〜10、特に炭素数7〜9の脂肪族飽和モノカルボン酸が好ましく、具体的にはn−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸が推奨される。これらは、夫々単独で又は2種以上を適宜組み合わせてエステル化に供することができる。
分岐鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸としては、具体的には、イソブタン酸、イソペンタン酸、イソヘキサン酸、イソヘプタン酸、イソオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、イソデカン酸、イソウンデカン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソペンタデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソヘプタデカン酸、イソオクタデカン酸等が例示される。これらの中でも、耐熱性に優れる点で炭素数7〜9の脂肪族飽和モノカルボン酸が好ましく、具体的には、イソヘプタン酸、イソオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸が例示される。さらに、耐熱性及び低温流動性のバランスに優れる点で、2−エチルヘキサン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸が推奨され、耐熱性、低温流動性に優れ、高い粘度指数を有する点で、3,5,5−トリメチルヘキサン酸が特に好ましい。これらは、夫々単独で又は2種以上を適宜組み合わせてエステル化に供することができる。
上記酸成分として、直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸及び分岐鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸からなる混合モノカルボン酸を用いた場合、得られる本エステルには、1分子中に2種以上のモノカルボン酸に由来するアシル基を含む混基エステルが含まれる。例えば、酸成分として、n−オクタン酸及び2−エチルヘキサン酸を用いた場合、得られる本エステルには、
(i)n−オクタン酸及び2−エチルヘキサン酸からなる混基エステル、
(ii)2−エチルヘキサン酸からなるジエステル、及び
(iii)n−オクタン酸からなるジエステル、
が含まれる。
また、混合モノカルボン酸を用いる場合、直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸と、分岐鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸との使用比率は、特に制限が無く任意の比率で用いることができる。その比率としては、所望する性能に応じて用いられる脂肪族飽和モノカルボン酸の種類により適宜選択することができる。例えば、直鎖状の脂肪族モノカルボン酸の一部を分岐鎖状の脂肪族モノカルボン酸に代えることにより、得られる本エステルの低温流動性、金属適合性が改善される傾向があり好ましい。より具体的には、直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸と分岐鎖状の脂肪族モノカルボン酸とのモル比は、95:5〜1:99が好ましく、特に95:5〜30:70、さらに好ましくは90:10〜60:40が例示される。
[(B)ポリアルキレングリコール成分]
本エステルに用いられるポリアルキレングリコール(B)成分は、一般式(2)
[式中、A
1Oは、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐鎖状のオキシアルキレン基を表し、nは、3又は4の整数を表す。但し、nが3の時、3個のA
1Oは、1乃至2個のオキシエチレン基、及び2乃至1個のオキシプロピレン基又はオキシブチレン基を表し、nが4の時、4個のA
1Oは、1乃至3個のオキシエチレン基、及び3乃至1個のオキシプロピレン基又はオキシブチレン基を表す。]
で表され、分子内に、少なくとも1個のオキシエチレン基と、少なくとも1個のオキシプロピレン基又はオキシブチレン基を有するポリアルキレングリコールである。
係るオキシエチレン基と、オキシプロプレン基又はオキシブチレン基との結合順序は、特に限定されず、何れの順序で結合していてもよい。例えば、上記ポリアルキレングリコールが、2個のオキシエチレン基と1個のオキシプロピレン基からなるジエチレングリコールプロピレングリコールの場合には、ヒドロキシエチルオキシエチルオキシプロパノールと、ヒドロキシエチルオキシプロピルオキシエタノールとが存在するが、そのいずれか一方であっても、又はそれらの混合物のいずれであってもよい。
さらに、A
1Oで表されるオキシアルキレン基は、詳細には、下記一般式(3)で表される、分岐を有さないオキシエチレン基、1個若しくは2個のメチル基を有するオキシエチレン基、又は1個のエチル基を有するオキシエチレン基のいずれかを表す。分岐鎖を有するオキシエチレン基の場合、分岐鎖の結合位置によって、種々の異性体があるが、これら位置異性体には特に限定がなく、何れの異性体であってもよい。
[式中、R
3及びR
4は、同一又は相異なって水素原子、メチル基又はエチル基を表す。但し、R
3又はR
4のいずれか一方がエチル基である場合、もう一方は水素原子である。]
係るポリアルキレングリコールの製造方法としては、特に限定がなく従来公知の方法が広く使用できる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコールに、触媒存在下で、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを反応させることにより容易に得ることができる。得られたポリアルキレングリコールは、通常、付加モル数の分布がありそのまま用いることもできるが、精密蒸留等の分離操作により、所望の付加モル数に分離して使用することが好ましい。
上記ポリアルキレングリコールの具体例としては、2個のオキシエチレン基と1個のオキシプロピレン基からなるジエチレングリコールプロピレングリコール、1個のオキシエチレン基と2個のオキシプロピレン基からなるエチレングリコールジプロピレングリコール、2個のオキシエチレン基と1個のオキシブチレン基からなるジエチレングリコールブチレングリコール、1個のオキシエチレン基と2個のオキシブチレン基からなるエチレングリコールジブチレングリコール、3個のオキシエチレン基と1個のオキシプロピレン基からなるトリエチレングリコールプロピレングリコール、2個のオキシエチレン基と2個のオキシプロピレン基からなるジエチレングリコールジプロピレングリコール、1個のオキシエチレン基と3個のオキシプロピレン基からなるエチレングリコールトリプロピレングリコール、3個のオキシエチレン基と1個のオキシブチレン基からなるトリエチレングリコールブチレングリコール、2個のオキシエチレン基と2個のオキシブチレン基からなるジエチレングリコールジブチレングリコール、1個のオキシエチレン基と3個のオキシブチレン基からなるエチレングリコールトリブチレングリコールが挙げられる。
これらの中でも、低粘度性、耐熱性及び低温流動性のバランスに優れる点で、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基からなるポリアルキレングリコールが好ましく、さらに、3又は4個のオキシアルキレン基のうち、1個がオキシプロピレン基であるポリアルキレングリコールが好ましい。かかる好ましいポリアルキレングリコールの具体例としては、ジエチレングリコールプロピレングリコール、トリエチレングリコールプロピレングリコールが挙げられ、特にトリエチレングリコールプロピレングリコールが好ましい。
上記(B)成分は、夫々単独で又は2種以上を適宜組み合わせてエステル化に供することができる。
[エステル化反応]
本発明の潤滑油に係る一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールエステルの製法には特に限定されず、例えば、上記(A)成分と上記(B)成分とを、好ましくは窒素等の不活性ガス雰囲気中、常圧又は減圧下において、エステル化触媒の存在下又は無触媒下で加熱撹拌しながらエステル化することにより調製することができる。
エステル化反応を行うに際し、酸成分の使用量としては、例えば、ポリアルキレングリコール成分1モルに対して1.95〜3.0モル、好ましくは2.0〜2.5モル用いられる。
エステル化触媒としては、ルイス酸類、アルカリ金属類、スルホン酸類等が例示され、具体的にルイス酸としては、アルミニウム誘導体、錫誘導体、チタン誘導体が例示され、アルカリ金属類としては、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド等が例示され、さらにスルホン酸類としてはパラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸等が例示され、錫誘導体としては、酸化錫、水酸化錫、粉末錫、有機酸錫が例示される。
触媒の使用量としては、例えば、原料である酸成分及びポリアルキレングリコール成分の総重量に対して0.05〜1.0重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%程度用いられる。特に錫誘導体の場合には、酸化錫に換算した重量で、0.1〜0.2重量%が好ましく、パラトルエンスルホン酸の場合では、0.5〜3.0重量%の触媒量が好ましい。尚、酸化錫に換算した重量とは、使用する錫誘導体の重量に、酸化錫の分子量/錫誘導体の分子量を乗じた値である。換言すると、錫誘導体の使用量の好ましい範囲は、0.1x(錫誘導体の分子量/酸化錫の分子量)〜0.2(錫誘導体の分子量/酸化錫の分子量)で表すことができる。
エステル化反応は、不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましく、常圧又は減圧下のいずれでも行うことができる。反応温度は、使用する触媒により適宜選択することができるが、通常100〜250℃、好ましくは120〜230℃の反応温度さらに好ましくは、160℃〜220℃の反応温度が例示される。特に、錫触媒を用いた場合は160〜230℃が好ましく、パラトルエンスルホン酸を用いた場合は、120〜150℃が好ましい。また、反応時間としては、後述のモノオールモノエステルが十分低減するまで反応を継続するのが好ましく、原料、触媒量によって異なるが、通常3〜30時間程度である。必要に応じて、生成してくる水をベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の非水溶性溶剤を用いて系外に共沸留去させてもよい。
本エステル中には、反応中間体として或いはアルキレングリコール鎖の分解副生物として一般式(4)
[式中、R
5は、炭素数4〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和脂肪族モノカルボン酸から、カルボキシル基を除いて得られる残基を表す。mは、1〜4の整数を表す。A
2Oは、一般式(1)におけるA
1Oと同義である。]
で表されるモノオールモノエステルが含有されることがある。かかるモノオールモノエステルは、潤滑油に発泡性を与える虞があるため実質的に含有しないことが望ましい。モノオールモノエステルを含有する場合、本エステル中の2重量%以下が好ましく、より好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下が推奨される。
上記に記載した製造方法の中でも、上記モノオールモノエステルの副生が少なく、潤滑油用途に適したエステルを製造する為には、
(i)エステル化反応開始時の(B)成分1モルに対する(A)成分のモル比が、1.95〜3.0(特に、2.0〜2.5)であり、
(ii)触媒として、錫誘導体(特に、酸化錫)を(A)成分と(B)成分の総重量に対して、0.1〜0.2重量%(酸化錫換算値)を使用し、及び
(iii)反応温度を120〜230℃(特に好ましくは、160〜230℃)でエステル化反応を行うことが、好ましい。
係る条件でエステル化反応を行うことにより、水酸基価が低減された、特にモノオールモノエステルの含有量が低減され、且つ、ポリアルキレングリコールのエーテル鎖の切断が少なく、その切断により生じたモノアルキレングリコール又はそのエステル化物の副生が抑制されるため、軸受用潤滑油として適したエステルを得ることができる。さらに、係る反応条件で得られたエステルは、耐熱性にも優れる傾向があり好ましい。
又、本エステルは、ポリアルキレングリコール1モルに対し、脂肪族飽和モノカルボン酸の1モルを反応させて部分エステルを調製後、さらに所定量の脂肪族飽和モノカルボン酸を加えて、段階的に目的とする本エステルを得ることもできる。
また、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸1モルに対して、エチレンオキサイドを含む2種以上のアルキレンオキサイドを夫々1モル以上付加させてポリアルキレングリコールモノエステルを調製後、さらに所定量の脂肪族モノカルボン酸を加えて、目的とする本エステルを得ることもできる。かかる反応方法は、一般式(1)に係るR1及びR2が異なるエステル又は2種以上のオキシアルキレン基を有する本エステルの好適な製造方法として例示することができる。
また、酸成分としてこれらの脂肪族飽和モノカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル等の炭素数1〜4の低級アルキルエステルを用い、所定のポリアルキレングリコールとのエステル交換反応により目的とする本エステルを得ることもできる。
エステル化反応により得られたエステル化反応生成物を、そのまま或いは未反応の酸(水同伴剤を使用した場合は、水同伴剤)を留去した後、アルカリ洗浄に供するのが好ましい。これにより、残存する未反応の酸、末端にカルボキシル基を有する不純物、触媒等が除去され、金属適合性、耐熱性等に優れたエステルを得ることができる。
アルカリ洗浄に使用する洗浄液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩等のアルカリの水溶液が例示でき、その濃度は特に限定されないが、0.5〜20重量%程度が好ましい。アルカリ水溶液の使用量は反応終了後の反応生成物の全酸価に対して当量又は過剰となる量とするのが好ましい。アルカリ洗浄後の生成物は、中性となるまで水洗するのが好ましい。
中和及び水洗工程を経て得られたエステル化粗物から、さらに、前記モノオールモノエステル及びその他のエステル化副生物を除去することが好ましい。除去の方法には、特に制限はないが、蒸留により留去する方法が好ましい。係るモノオールモノエステルの除去工程を経ることによって、特に潤滑油として優れた性能を有する本エステルを得ることができる。蒸留条件としては、本エステルとモノオールモノエステルとを分離できる限り特に制限はないが、例えば、150℃〜270℃、1〜15000Pa、好ましくは180〜230℃、1〜4000Paが挙げられる。さらに、窒素、アルゴン等の不活性ガスや水蒸気等を蒸留装置の気相部或いは液相部に導入しながら蒸留を行うことは、蒸留時間の短縮或いは品質劣化の抑制などの点から好ましい方法として例示される。
より高品質な本エステルを得るために、中和・水洗後又は蒸留工程後、さらに吸着剤による精製を実施することが好ましい。吸着剤としては、天然若しくは合成の吸着剤が挙げられる。具体的には、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、シリカアルミナ、活性白土、ゼオライト、マグネシア、カルシア、珪藻土、ハイドロタルサイト、合成ハイドロタルサイト、イオン交換樹脂などが用いられる。その使用量は、通常、エステルに対して0.005〜5重量%が例示され、好ましくは0.01〜3重量%が推奨される。
上記吸着剤は、好ましくは2種以上、さらに好ましくは3種類以上を併用することが推奨される。2種類以上の吸着剤を用いることにより、より耐熱性に優れたエステルが得られる傾向がある。
吸着剤の組み合わせの具体例としては、活性炭及び活性アルミナの組み合わせ、活性炭及びシリカゲルの組み合わせ、活性炭及び活性白土の組み合わせ、活性アルミナ及び活性白土の組み合わせ、活性アルミナ、活性白土及びハイドロタルサイトの組み合わせ、活性炭、活性白土及び活性アルミナの組み合わせ等が挙げられ、特に、活性炭及び活性アルミナの組み合わせが特に好ましい。その配合比としては重量比で活性炭/活性アルミナ=80/20〜20/80、好ましくは、50/50〜30/70が推奨される。
吸着剤による精製方法としては、エステルに吸着剤を加え、70〜100℃、好ましくは80〜90℃で、常圧又は減圧下、10分〜2時間、好ましくは、30分〜1時間加熱攪拌する方法が挙げられる。又、吸着塔に吸着剤を充填させ、エステルを通過させてもよい。本吸着処理を常圧で実施する場合には、窒素等の不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。
本エステルの全酸価としては、0.1mgKOH/g以下、好ましくは0.05mgKOH/g以下である。全酸価が0.1mgKOH/gにおいて耐熱性が向上する。全酸価が0.1mgKOH/gを超える場合は、適当な中和剤で全酸価を低減させることもできる。
本エステルの水酸基価(JIS−K−0070)としては、6mgKOH/g以下、好ましくは3mgKOH/g以下、さらに好ましくは1mgKOH/g以下である。水酸基価が6mgKOH/g以下において、発泡性が抑制される。水酸基価は、残存する水酸基を反応工程で十分に低減することにより調整可能である。
本エステルの硫酸灰分(JIS−K−2272.5)としては、通常30ppm以下、好ましくは10ppm以下である。硫酸灰分が30ppm以下のときには耐熱性が向上する。硫酸灰分は、本エステルの原料となる酸及び/又はアルコールとして硫酸灰分が低いもの(例えば、30ppm以下のもの)を用い、又、触媒として金属触媒を使用した場合、触媒自身及び触媒由来の有機金属化合物を中和、水洗、吸着精製により十分に除去することで調整可能である。
本エステルのヨウ素価(基準油脂分析試験法2.3.4)としては、1I2g/100g以下、好ましくは0.5I2g/100g、さらに好ましくは0.1I2g/100g以下である。ヨウ素価が1I2g/100g以下のときは耐熱性が向上する。ヨウ素価は、本エステルの原料となる酸成分及び/又はポリアルキレングリコール成分のヨウ素価が低いもの(例えば、0.3I2g/100g以下のもの)を用いることにより調製可能である。また、ヨウ素価が1以上の本エステルを水素還元することでも調整可能である。
本エステルの中でも、流動点(JIS−K−2269)が−30℃以下であるものが好ましく、より低温での使用に適する点で−45℃以下、特に−60℃以下であるものが好ましい。
本エステルの中でも、粘度指数(JIS−K−2283)が140以上のものが好ましく、より好ましくは145以上、特に150以上が好ましい。粘度指数が140以上であるエステルは、広範囲の温度領域で低粘度であり、耐熱性にも優れる上、低温流動性及び金属適合性とのバランスにも優れる傾向にある。
本エステルの中でも、0℃における動粘度が、50mm2/s未満が好ましく、より好ましくは45mm2/s未満、特に40mm2/s未満である本エステルが好ましい。動粘度は低い程好ましく、その下限は特に限定されないが、通常15mm2/s以上が例示される。
本エステルの中でも、後述の実施例の項に記載の耐熱性(揮発量)が、2.0重量%未満が好ましく、より好ましくは1.2重量%未満、さらに好ましくは1.0重量%未満、特に1.0未満である本エステルが好ましい。
本エステルの中でも、後述の実施例の項に記載の金属適合性が、0.3mgKOH/g未満であるものが好ましく、特に0.2mgKOH/g未満であるものが好ましい。
本エステルの中でも、0℃における動粘度が、50mm2/s未満、粘度指数が140以上、且つ流動点が−30℃以下であるエステルが好ましく、要求される物性により適宜選択される。
[好ましい本エステル]
上記、(A)成分と、(B)成分とをエステル化することによって得られる本エステルの中でも、ジエチレングリコールプロピレングリコール又はトリエチレングリコールプロピレングリコールと炭素数7〜10の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸とから得られるジエステルが好ましい。
上記の好ましい本エステルの中でも、炭素数7〜10の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸を酸成分とするジエステルは、高い粘度指数を示す点で好ましい。かかるジエステルのうち、ジエチレングリコールプロピレングリコールとのジエステルの具体例としては、ジエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−ヘプタノエート)、ジエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−オクタノエート)、ジエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−ノナノエート)、ジエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−デカノエート)が挙げられる。
トリエチレングリコールプロピレングリコールとのジエステルの具体例としては、トリエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−ヘプタノエート)、トリエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−オクタノエート)、トリエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−ノナノエート)、トリエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−デカノエート)が挙げられる。
これらの中でも粘度指数、低温流動性及び耐熱性のバランスに優れる点で、ジエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−ヘプタノエート)、ジエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−オクタノエート)、ジエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−ノナノエート)、トリエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−ヘプタノエート)、トリエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−オクタノエート)、トリエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−ノナノエート)が好ましく、さらに、ジエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−オクタノエート)、トリエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−ヘプタノエート)が好ましく、特にトリエチレンクリコールプロピレングリコール−ジ(n−ヘプタノエート)が好ましい。
又、2種の直鎖状の飽和脂肪族モノカルボン酸を酸成分とするジエステルのなかでも、ジエチレングリコールプロピレングリコールとのジエステルの具体例としては、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−ヘプタン酸及びn−オクタン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−ヘプタン酸及びn−ノナン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−ヘプタン酸及びn−デカン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−オクタン酸及びn−ノナン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−オクタン酸及びn−デカン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−ノナン酸及びn−デカン酸とのジエステルが挙げられる。
トリエチレングリコールプロピレングリコールとのジエステルの具体例としては、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−ヘプタン酸及びn−オクタン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−ヘプタン酸及びn−ノナン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−ヘプタン酸及びn−デカン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−オクタン酸及びn−ノナン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−オクタン酸及びn−デカン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−ノナン酸及びn−デカン酸とのジエステルが挙げられる。
前記好ましい本エステルの中でも酸成分が、炭素数7〜10の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸(特に、炭素数7〜9の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸)、及び炭素数7〜10、好ましくは炭素数7〜9の分岐鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸(特に、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸)からなる混合脂肪族飽和モノカルボン酸である混基ジエステルは、粘度指数、低温流動性、低温保存性及び耐熱性に優れる点で好ましい。炭素数7〜10の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸と、炭素数7〜9の分岐鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸とのモル比は、95:5〜50:50が好ましく、90:10〜60:40がより好ましい。
係るジエステルのうち、ジエチレングリコールプロピレングリコールとのジエステルの具体例としては、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−ヘプタン酸及びイソヘプタン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−ヘプタン酸及びイソオクタン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−ヘプタン酸及び2−エチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−ヘプタン酸及びイソノナン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−ヘプタン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−オクタン酸及びイソヘプタン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−オクタン酸及びイソオクタン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−オクタン酸及び2−エチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−オクタン酸及びイソノナン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−オクタン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−ノナン酸及びイソヘプタン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−ノナン酸及びイソオクタン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−ノナン酸及び2−エチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−ノナン酸及びイソノナン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−ノナン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−デカン酸及びイソヘプタン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−デカン酸及びイソオクタン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−デカン酸及び2−エチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−デカン酸及びイソノナン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとn−デカン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステルが挙げられる。
トリエチレングリコールプロピレングリコールとのジエステルの具体例としては、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−ヘプタン酸及びイソヘプタン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−ヘプタン酸及びイソオクタン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−ヘプタン酸及び2−エチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−ヘプタン酸及びイソノナン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−ヘプタン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−オクタン酸及びイソヘプタン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−オクタン酸及びイソオクタン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−オクタン酸及び2−エチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−オクタン酸及びイソノナン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−オクタン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−ノナン酸及びイソヘプタン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−ノナン酸及びイソオクタン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−ノナン酸及び2−エチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−ノナン酸及びイソノナン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−ノナン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−デカン酸及びイソヘプタン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−デカン酸及びイソオクタン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−デカン酸及び2−エチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−デカン酸及びイソノナン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとn−デカン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステルが挙げられる。
本エステルの中でも酸成分が炭素数7〜9の分岐鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸であるジエステルは、非常に優れた低粘度性、低温流動性を有する点から好ましい。係るジエステルのうち、ジエチレングリコールプロピレングリコールとのジエステルとしては、ジエチレングリコールプロピレングリコール−ジイソヘプタノエート、ジエチレングリコールプロピレングリコール−ジイソオクタノエート、ジエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジエチレングリコールプロピレングリコール−ジイソノナノエート、ジエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノエート)が挙げられる。
トリエチレングリコールプロピレングリコールとのジエステルの具体例としては、トリエチレングリコールプロピレングリコール−ジイソヘプタノエート、トリエチレングリコールプロピレングリコール−ジイソオクタノエート、トリエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコールプロピレングリコール−ジイソノナノエート、トリエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノエート)が挙げられる。
さらに、2種の分岐鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸を酸成分とするジエステルのうち、ジエチレングリコールプロピレングリコールとのジエステルの具体例としては、ジエチレングリコールプロピレングリコールとイソヘプタン酸及びイソオクタン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとイソヘプタン酸及び2−エチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとイソヘプタン酸及びイソノナン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとイソヘプタン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとイソオクタン酸及び2−エチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとイソオクタン酸及びイソノナン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとイソオクタン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールと2−エチルヘキサン酸及びイソノナン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールと2−エチルヘキサン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとイソノナン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステルが挙げられる。
トリエチレングリコールプロピレングリコールとのジエステルの具体例としては、トリエチレングリコールプロピレングリコールとイソヘプタン酸及びイソオクタン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとイソヘプタン酸及び2−エチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとイソヘプタン酸及びイソノナン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとイソヘプタン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとイソオクタン酸及び2−エチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとイソオクタン酸及びイソノナン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとイソオクタン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールと2−エチルヘキサン酸及びイソノナン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールと2−エチルヘキサン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとイソノナン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステルが挙げられる。
上記の好ましい分岐鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸のジエステルの中でも、酸成分として2−エチルヘキサン酸又は3,5,5−トリメチルヘキサン酸を酸成分として含有するジエステルは、耐熱性、低温流動性及び金属適合性のバランスに優れる点で推奨される。
係るジエステルのうち、ジエチレングリコールプロピレングリコールとのジエステルの具体例としては、ジエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノエート)、ジエチレングリコールプロピレングリコールとイソヘプタン酸及び2−エチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとイソヘプタン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとイソオクタン酸及び2−エチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとイソオクタン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールと2−エチルヘキサン酸及びイソノナン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールと2−エチルヘキサン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとイソノナン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステルが挙げられる。
トリエチレングリコールプロピレングリコールとのジエステルの具体例としては、トリエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノエート)、トリエチレングリコールプロピレングリコールとイソヘプタン酸及び2−エチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとイソヘプタン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとイソオクタン酸及び2−エチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとイソオクタン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールと2−エチルヘキサン酸及びイソノナン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールと2−エチルヘキサン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとイソノナン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステルが挙げられる。
これらの中でも、耐熱性と低温流動性及び金属適合性のバランスに優れ、高い粘度指数を有する点で、3,5,5−トリメチルヘキサン酸を酸成分として含有するジエステルが好ましい。具体的には、ジエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノエート)、ジエチレングリコールプロピレングリコールとイソヘプタン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとイソオクタン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールと2−エチルヘキサン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、ジエチレングリコールプロピレングリコールとイソノナン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノエート)、トリエチレングリコールプロピレングリコールとイソヘプタン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとイソオクタン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールと2−エチルヘキサン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステル、トリエチレングリコールプロピレングリコールとイソノナン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのジエステルが挙げられる。
本発明の軸受用潤滑油は、本エステルを潤滑油基油として含む潤滑油であるか、又は本エステルと他の基油(以下、「併用基油」という。)との混合物を基油として含む潤滑油であり、該潤滑油基油に対して、本エステルを、15〜100重量%、好ましくは40〜100重量%、さらに好ましくは60〜100重量%、特に好ましくは80〜100重量%含有する。また、本発明の軸受用潤滑油の総重量に対して、一般式(4)で表されるモノオールモノエステルの含有量が2重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下であることが推奨される。かかる範囲内において、軸受用潤滑油として使用時の発泡が特に、抑制される傾向にある。
本明細書において「潤滑油基油」とは、本発明の潤滑油が本エステルのみを基油として含む場合は、本エステルを指し、本発明の潤滑油が本エステルと他の基油との混合物で有る場合には、本エステルと併用基油との混合物を指す。
本エステル中のモノオールモノエステル含有量が高く、軸受用潤滑油の総重量に対して2重量%を超える場合には、モノオールモノエステルの含有量が2重量%以下となるように、本エステルと併用基油とを混合した潤滑油基油を用いることが好ましい。
上記併用基油としては、鉱物油(石油の精製によって得られる炭化水素油)、ポリ−α−オレフィン、ポリブテン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、脂環式炭化水素油、フィッシャートロプシュ法(Fischer-Tropsch process)によって得られる合成炭化水素の異性化油などの合成炭化水素油、動植物油、本エステル以外の有機酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテル、シリコーン油が例示され、係る併用基油の少なくとも1種を適宜併用することができる。
鉱物油としては、溶剤精製鉱油、水素化精製鉱油、ワックス異性化油が挙げられるが、通常、100℃における動粘度が1.0〜25mm2/s、好ましくは2.0〜20.0mm2/sの範囲にあるものが用いられる。
ポリ−α−オレフィンとしては、炭素数2〜16のα−オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1ーヘキサデセン等)の重合体又は共重合体であって、100℃における動粘度が1.0〜25mm2/s、粘度指数が100以上のものが例示され、特に100℃における動粘度が1.5〜20.0mm2/sで、粘度指数が120以上のものが好ましい。
ポリブテンとしては、イソブチレンを重合したもの、イソブチレンをノルマルブチレンと共重合したものがあり、一般に100℃の動粘度が2.0〜40mm2/sの広範囲のものが挙げられる。
アルキルベンゼンとしては、炭素数1〜40の直鎖又は分岐のアルキル基で置換された、分子量が200〜450であるモノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、トリアルキルベンゼン、テトラアルキルベンゼン等が例示される。
アルキルナフタレンとしては、炭素数1〜30の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されたモノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン等が例示される。
動植物油としては、牛脂、豚脂、パーム油、ヤシ油、ナタネ油、ヒマシ油、ヒマワリ油等が例示される。
本エステル以外の有機酸エステルとしては、脂肪酸モノエステル、脂肪族二塩基酸ジエステル、ポリオールエステル及びその他のエステルが例示される。
脂肪酸モノエステルとしては、炭素数5〜22の脂肪族直鎖状又は分岐鎖状モノカルボン酸と炭素数3〜22の直鎖状又は分岐鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコールとのエステルが挙げられる。
脂肪族二塩基酸ジエステルとしては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナメチレンジカルボン酸、1,10−デカメチレンジカルボン酸等脂肪族二塩基酸若しくはその無水物と炭素数3〜22の直鎖状又は分岐鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコールとのフルエステルが挙げられる。
ポリオールエステルとしては、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチルプロパンジオール、2−ブチル2−エチルプロパンンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等のネオペンチル型構造のポリオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、、2−メチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、1,6−ヘプタンジオール、2−メチル−1,7−ヘプタンジオール、3−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−メチル−1,7−ヘプタンジオール、1,7−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,8−オクタンジオール、4−メチル−1,8−オクタンジオール、1,8−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,9−ノナンジオール、4−メチル−1,9−ノナンジオール、5−メチル−1,9−ノナンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール等の非ネオペンチル型構造のポリオールと炭素数3〜22の直鎖状及び/又は分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪酸とのフルエステルを使用することが可能である。
その他のエステルとしては、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、或いは、縮合ヒマシ油脂肪酸、水添縮合ヒマシ油脂肪酸などのヒドロキシ脂肪酸と炭素数3〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族アルコールとのエステルが挙げられる。
ポリアルキレングリコールとしては、アルコールと炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレンオキサイドの開環重合体が例示される。アルキレンオキサイドとしてはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられ、これらの1種を用いた重合体、若しくは2種以上の混合物を用いた共重合体が使用可能である。又、片端又は両端の水酸基部分がエーテル化した化合物も使用可能である。重合体の動粘度としては、5.0〜1000mm2/s(40℃)、好ましくは5.0〜500mm2/s(40℃)である。
ポリビニルエーテルとしては、ビニルエーテルモノマーの重合によって得られる化合物であり、モノマーとしてはメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、2−メトキシエチルビニルエーテル、2−エトキシエチルビニルエーテル等が挙げられる。重合体の動粘度としては、5.0〜1000mm2/s(40℃)、好ましくは5.0〜500mm2/s(40℃)である。
ポリフェニルエーテルとしては、2個以上の芳香環のメタ位をエーテル結合又はチオエーテル結合でつないだ構造を有する化合物が挙げられ、具体的には、ビス(m−フェノキシフェニル)エーテル、m−ビス(m−フェノキシフェノキシ)ベンゼン、及びそれらの酸素の1個若しくは2個以上を硫黄に置換したチオエーテル類(通称C−エーテル)等が例示される。
アルキルフェニルエーテルとしては、ポリフェニルエーテルを炭素数6〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基で置換した化合物が挙げられ、特に1個以上のアルキル基で置換したアルキルジフェニルエーテルが好ましい。
シリコーン油としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーンのほか、長鎖アルキルシリコーン、フルオロシリコーン等の変性シリコーンが挙げられる。
これらの併用基油の中でも、耐熱性及び潤滑性に優れる点で合成炭化水素油及び有機酸エステルが好ましく、特に、ポリ−α−オレフィン、シクロアルカン誘導体、脂肪族二塩基酸ジエステル、ポリオールエステル及び脂肪酸モノエステルが好ましい。
特に好ましい脂肪酸モノエステルとしては、炭素数12〜18の脂肪族直鎖状モノカルボン酸と炭素数8〜10の脂肪族飽和直鎖状一価アルコール又は炭素数8〜13の脂肪族飽和分岐鎖状一価アルコールとのフルエステルが例示される。具体的には、n−ドデカン酸n−オクチル、n−ドデカン酸n−ノニル、n−ドデカン酸n−デシル、n−ドデカン酸2−エチルヘキシル、n−ドデカン酸イソオクチル、n−ドデカン酸イソノニル、n−ドデカン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、n−ドデカン酸イソデシル、n−ドデカン酸イソウンデシル、n−ドデカン酸イソドデシル、n−ドデカン酸イソトリデシル、n−テトラデカン酸n−ノニル、n−テトラデカン酸n−デシル、n−テトラデカン酸2−エチルヘキシル、n−テトラデカン酸イソオクチル、n−テトラデカン酸イソノニル、n−テトラデカン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、n−テトラデカン酸イソデシル、n−テトラデカン酸イソウンデシル、n−テトラデカン酸イソドデシル、n−テトラデカン酸イソトリデシル、n−ヘキサデカン酸n−ノニル、n−ヘキサデカン酸n−デシル、n−ヘキサデカン酸2−エチルヘキシル、n−ヘキサデカン酸イソオクチル、n−ヘキサデカン酸イソノニル、n−ヘキサデカン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、n−ヘキサデカン酸イソデシル、n−ヘキサデカン酸イソウンデシル、n−ヘキサデカン酸イソドデシル、n−ヘキサデカン酸イソトリデシル、n−オクタデカン酸n−ノニル、n−オクタデカン酸n−デシル、n−オクタデカン酸2−エチルヘキシル、n−オクタデカン酸イソオクチル、n−オクタデカン酸イソノニル、n−オクタデカン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、n−オクタデカン酸イソデシル、n−オクタデカン酸イソウンデシル、n−オクタデカン酸イソドデシル、n−オクタデカン酸イソトリデシルが好ましい。
これらの中でも、混合油の低温流動性に優れ、かつ、低温粘度が低い点で、n−ドデカン酸2−エチルヘキシル、n−ドデカン酸イソオクチル、n−ドデカン酸イソノニル、n−ドデカン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、n−ドデカン酸イソデシル、n−テトラデカン酸2−エチルヘキシル、n−テトラデカン酸イソオクチル、n−テトラデカン酸イソノニル、n−テトラデカン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、n−テトラデカン酸イソデシルが最も好ましい。
特に好ましい脂肪族二塩基酸ジエステルとしては、アジピン酸、アゼライン酸又はセバシン酸と、炭素数8〜10の脂肪族飽和直鎖状一価アルコール又は炭素数8〜13の脂肪族飽和分岐鎖状一価アルコールとのフルエステルが例示される。具体的には、アジピン酸ジ(n−オクチル)、アジピン酸ジ(n−ノニル)、アジピン酸ジ(n−デシル)、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソオクチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジ(3,5,5−トリメチルヘキシル)、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジイソウンデシル、アジピン酸ジイソドデシル、アジピン酸ジイソトリデシル、アゼライン酸ジ(n−オクチル)、アゼライン酸ジ(n−ノニル)、アゼライン酸ジ(n−デシル)、アゼライン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソノニル、アゼライン酸ジ(3,5,5−トリメチルヘキシル)、アゼライン酸ジイソデシル、アゼライン酸ジイソウンデシル、アゼライン酸ジイソドデシル、アゼライン酸ジイソトリデシル、セバシン酸ジ(n−オクチル)、セバシン酸ジ(n−ノニル)、セバシン酸ジ(n−デシル)、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ジイソオクチル、セバシン酸ジイソノニル、セバシン酸ジ(3,5,5−トリメチルヘキシル)、セバシン酸ジイソデシル、セバシン酸ジイソウンデシル、セバシン酸ジイソドデシル、セバシン酸ジイソトリデシルが好ましい。
これらの中でも、混合油の低温流動性に優れる点で、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジ(3,5,5−トリメチルヘキシル)、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジイソトリデシル、アゼライン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アゼライン酸ジイソノニル、アゼライン酸ジ(3,5,5−トリメチルヘキシル)、アゼライン酸ジイソデシル、アゼライン酸ジイソトリデシル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ジイソノニル、セバシン酸ジ(3,5,5−トリメチルヘキシル)、セバシン酸ジイソデシル、セバシン酸ジイソトリデシルが最も好ましい。
又、特に好ましいポリオールエステルとしては、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールと、炭素数4〜10の直鎖状及び/又は分岐鎖状の脂肪酸とのフルエステルが例示される。具体的には、ネオペンチルグリコール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールからなる群より選ばれる1種若しくは2種以上の多価アルコール、及びn−ブタン酸、n−ペンタン酸、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸、イソブタン酸、イソペンタン酸、イソヘキサン酸、イソヘプタン酸、イソオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸及びイソデカン酸からなる群より選ばれる1種若しくは2種以上の脂肪族モノカルボン酸から得られるフルエステルが好ましい。
これらの中でも、混合油の低温流動性に優れる点で、ネオペンチルグリコール又は3−メチル−1,5−ペンタンジオールと炭素数5〜10の直鎖状及び/又は分岐鎖状の脂肪酸とのジエステルが最も好ましい。
[酸化防止剤]
さらに、本発明の軸受用潤滑油には、耐熱性、特に長期耐熱性を向上させるために、酸化防止剤を含有することか好ましい。
酸化防止剤としては、従来公知の酸化防止剤が広く使用でき、より具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル−3−(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−1−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等の1価フェノール系の酸化防止剤、4,4’−メチレンビス(4−ヒドロキシベンゼン)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシジフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,5,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tret−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチル−ジフェニルメタン、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、1,3,5−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸(別名:1,3,5−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H、3H、5H)−トリオン)、1,3,5−(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸(別名:1,3,5−トリス−(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H、3H、5H)−トリオン)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ビトロキシフェニル)プロピオネート]メタン等の多価フェノール系、N−フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、ジフェニルアミン、モノ(C4−C9アルキル)置換されたジフェニルアミン、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、p,p’−ジノニルジフェニルアミン、混合ジアルキルジフェニルアミン等のアミン系、フェノチアジン等の硫黄系化合物等が例示される。これらの酸化防止剤は、単独で又は組合わせて用いてもよく、これらの酸化防止剤を使用する場合、軸受用潤滑油に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%添加することが望ましい。
上記の酸化防止剤の中でも、フェノール系及びアミン系の酸化防止剤は耐熱性の向上効果に優れる点で好ましい。また、フェノール系の中でも、分子量が300〜1,200であるものが好ましく、特に、分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有する多価フェノール系酸化防止剤が好ましい。また、フェノール系及びアミン系とを併用することにより、長期耐熱性が向上する傾向にあり推奨される。これらを併用する場合、それぞれの使用量は、軸受用潤滑油に対して、0.01〜4重量%、好ましくは0.05〜2重量%添加することが好ましく、また、その合計が0.02〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%添加することが好ましい。さらに、フェノール系のアミン系に対する重量比が、同量若しくは過剰量が好ましく、具体的には、フェノール系:アミン系(重量比)=1〜5:1、好ましくは1.2〜4:1、より好ましくは1.5〜3:1が推奨される。
潤滑油の体積固有抵抗が高いと潤滑油が絶縁材となり、回転部材等に蓄積した静電気の放電により、軸受装置あるいは周辺機器が損傷する等の虞があるので、潤滑油の体積抵抗が低いことが推奨される。本エステルを含有する潤滑油に、上記酸化防止剤を配合すると、本発明の潤滑油の耐熱性(特に、長期耐熱性)が向上するのみでなく、体積固有抵抗が低下する傾向がある。特に、多価フェノール系の酸化防止剤を含有する場合にその効果が顕著になる。本エステルの種類、潤滑油に配合する添加剤の種類やその量によっても体積固有抵抗の値は異なり一概にはいえないが、例えば、1〜5x1010Ω・cmの本発明の潤滑油に対して、多価フェノール系の酸化防止剤を0.2〜5重量%以上、好ましくは0.5〜4重量%、特に好ましくは1.0〜2重量%を含有することにより、1〜5x109Ω・cm程度に低減する傾向がある。
本発明に係る各種の軸受装置の軸受用潤滑油には、その性能を向上させるために、金属清浄剤、無灰分散剤、油性剤、摩耗防止剤、極圧剤、金属不活性剤、防錆剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤等の添加剤の1種又は2種以上を適宜配合することも可能である。これらの配合量は、所定の効果を奏する限り特に限定されるものではないが、その具体的な例を以下に示す。
金属清浄剤としては、Ca−石油スルフォネート、過塩基性Ca−石油スルフォネート、Ca−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Ca−アルキルベンゼンスルフォネート、Ba−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Ba−アルキルベンゼンスルフォネート、Mg−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Mg−アルキルベンゼンスルフォネート、Na−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Na−アルキルベンゼンスルフォネート、Ca−アルキルナフタレンスルフォネート、過塩基性Ca−アルキルナフタレンスルフォネートなどの金属スルフォネート、Ca−フェネート、過塩基性Ca−フェネート、Ba−フェネート、過塩基性Ba−フェネートなどの金属フェネート、Ca−サリシレート、過塩基性Ca−サリシレートなどの金属サリシレート、Ca−フォスフォネート、過塩基性Ca−フォスフォネート、Ba−フォスフォネート、過塩基性Ba−フォスフォネートなどの金属フォスフォネート、過塩基性Ca−カルボキシレート等が例示される。これらの金属清浄剤は、単独で又は組合わせて用いてもよく、金属清浄剤を使用する場合、通常、軸受用潤滑油基油に対して1〜10重量%、好ましくは2〜7重量%添加することが望ましい。
無灰分散剤としては、ポリアルケニルコハク酸イミド、ポリアルケニルコハク酸アミド、ポリアルケニルベンジルアミン、ポリアルケニルコハク酸エステル等が例示される。これらの無灰分散剤は、単独で又は組合わせて用いてもよく、無灰分散剤を使用する場合、通常、軸受用潤滑油基油に対して1〜10重量%、好ましくは2〜7重量%添加することが望ましい。
油性剤としては、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシ脂肪酸、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族飽和及び不飽和モノアルコール、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族飽和及び不飽和モノアミン、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸アミド、バチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコールなどのグリセリンエーテル、ラウリルポリグリセリンエーテル、オレイルポリグリセリルエーテルなどのアルキル若しくはアルケニルポリグリセリルエーテル、ジ(2−エチルヘキシル)モノエタノールアミン、ジイソトリデシルモノエタノールアミンなどのアルキル若しくはアルケニルアミンのポリ(アルキレンオキサイド)付加物等が例示される。これらの油性剤は、単独で又は組合わせて用いてもよく、油性剤を使用する場合、通常、軸受用潤滑油基油に対して0.01重量%〜5重量%、好ましくは0.1重量%〜3重量%添加することが望ましい。
摩耗防止剤・極圧剤としては、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、アルキルフェニルホスフェート類、トリブチルホスフェート、ジブチルホスフェート等のリン酸エステル類、トリブチルホスファイト、ジブチルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト等の亜りん酸エステル類及びこれらのアミン塩等のリン系、硫化油脂、硫化オレイン酸などの硫化脂肪酸、ジベンジルジスルフィド、硫化オレフィン、ジアルキルジスルフィドなどの硫黄系、Zn−ジアルキルジチオフォスフェート、Zn−ジアルキルジチオフォスフェート、Mo−ジアルキルジチオフォスフェート、Mo−ジアルキルジチオカルバメートなどの有機金属系化合物等が例示される。これらの摩耗防止剤は、単独で又は組合わせて用いてもよく、摩耗防止剤、極圧剤を使用する場合、通常、軸受用潤滑油基油に対して0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.1重量%〜5重量%添加することが望ましい。
金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール系、チアジアゾール系、没食子酸エステル系の化合物等が例示される。これらの金属不活性剤の中でも長期耐久性に優れる点で、没食子酸エステルが好ましい。没食子酸エステルとしては、具体的には炭素数3〜12のアルキル基を有する没食子酸アルキルエステルが例示される。これらの金属不活性剤は、単独で又は組合わせて用いてもよく、金属不活性剤を使用する場合、通常、軸受用潤滑油基油に対して0.01〜0.4重量%、好ましくは0.01〜0.2重量%添加することが望ましい。
防錆剤としては、ドデセニルコハク酸ハーフエステル、オクタデセニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸アミドなどのアルキル又はアルケニルコハク酸誘導体、ソルビタンモノオレエート、グリセリンモノオレエート、ペンタエリスリトールモノオレエートなどの多価アルコール部分エステル、Ca−石油スルフォネート、Ca−アルキルベンゼンスルフォネート、Ba−アルキルベンゼンスルフォネート、Mg−アルキルベンゼンスルフォネート、Na−アルキルベンゼンスルフォネート、Zn−アルキルベンゼンスルフォネート、Ca−アルキルナフタレンスルフォネートなどの金属スルフォネート、ロジンアミン、N−オレイルザルコシンなどのアミン類、ジアルキルホスファイトアミン塩等が例示される。これらの防錆剤は、単独で又は組合わせて用いてもよく、防錆剤を使用する場合、通常、軸受用潤滑油基油に対して0.01重量%〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%添加することが望ましい。
粘度指数向上剤としては、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体などのオレフィン共重合体が例示される。これらの粘度指数向上剤は、単独で又は組合わせて用いてもよく、粘度指数向上剤を使用する場合、通常、軸受用潤滑油基油に対して0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜7重量%添加することが望ましい。
流動点降下剤としては、塩素化パラフィンとアルキルナフタレンの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールの縮合物、既述の粘度指数向上剤であるポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリブテン等が例示される。これらの流動点降下剤は、単独で又は組合わせて用いてもよく、流動点降下剤を使用する場合、通常、軸受用潤滑油基油に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%添加することが望ましい。
消泡剤としては、液状シリコーンが適しており、消泡剤を使用する場合、その添加量は、通常、軸受用潤滑油基油に対して0.0005〜0.01重量%である。
さらに、加水分解抑制剤を配合することも可能であり、具体的には、アルキルグリシジルエーテル類、アルキレングリコールグリシジルエーテル類、脂環式エポキシ類、フェニルグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物、ジ−tert−ブチルカルボジイミド、1,3−ジ−p−トリルカルボジイミドなどのカルボジイミド化合物が使用可能であり、加水分解抑制剤を使用する場合、通常、軸受用潤滑油基油に対して0.05重量%〜2重量%添加するのが望ましい。
本発明に係る軸受用潤滑油は、従来公知の潤滑油と比べて耐熱性及び低温流動性が同等又はそれ以上であり、金属適合性に優れる。さらに酸化防止剤を用いた場合には、長期耐熱性に優れる。
又、本発明の軸受用潤滑油は、種々の材質の軸受に使用することができる。具体的には、鉄系軸受、銅系軸受、鉛系軸受などが例示される。
本発明の潤滑油は、粘度指数(JIS−K−2283)が140以上のものが好ましく、より好ましくは145以上、特に150以上が好ましい。
本発明の潤滑油は、0℃における動粘度が、50mm2/s未満が好ましく、より好ましくは45mm2/s未満、特に40mm2/s未満である本エステルが好ましい。また、40℃における動粘度が5〜22mm2/sであることが好ましく、特に、40℃における動粘度が5〜15mm2/sであることが好ましい。さらに、省電力性の点で40℃における動粘度が5〜10mm2/sであり、0℃における動粘度が15mm2/s以上50mm2/s未満、より好ましくは、15mm2/s以上45mm2/s未満、特に15mm2/s以上40mm2/s未満であることが好ましい。
本発明の潤滑油は、後述の実施例の項に記載の耐熱性(揮発量)が、2.0重量%未満が好ましく、より好ましくは1.2重量%未満、さらに好ましくは1.0重量%未満、特に1.0重量%未満である潤滑油が好ましい。また、長期耐熱性(時間)が、50時間以上が好ましく、より好ましくは80時間以上、さらに好ましくは120時間以上の潤滑油が好ましい。
本発明の潤滑油は、後述の実施例の項に記載の金属適合性が、0.3mgKOH/g未満であるものが好ましく、特に0.2mgKOH/g未満であるものが好ましい。
本発明の潤滑油は、流動点が−30℃以下、好ましくは−45℃以下、特に−60℃以下が好ましい。
本発明の潤滑油は、0℃における動粘度が、50mm2/s未満、粘度指数が140以上、且つ流動点が−30℃以下が好ましい。
以下に実施例を掲げて本発明を詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。また、各実施例及び比較例における潤滑油の物理特性及び化学特性は以下の方法により評価した。
(a)全酸価
JIS−K−2501に準拠して測定した。
(b)水酸基価
JIS−K−0070に準拠して測定した。
(c)ヨウ素価
基準油脂分析試験法2.3.4に準拠して測定した。
(d)動粘度
JIS−K−2283に準拠して、0℃、40℃、100℃における動粘度を測定した。
(e)粘度指数
JIS−K−2283に準拠して算出した。
(f)低温流動性試験
JIS−K−2269に準拠して流動点を測定した。
(g)耐熱性試験
耐熱性試験としては、耐揮発性と、長期耐熱性の2通りについて行った。
(g−1)耐熱性(耐揮発性)試験
各製造例のエステルに対し、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.5重量%を添加溶解させて潤滑油を調製した。次いで、内径53mm、高さ56mmの50mLビーカーに上記潤滑油2gを入れ、200mLビーカーで蓋をした後、オーブン中150℃で24時間加熱した。試験後、潤滑油の揮発量[%=(試験前の重量−試験後の重量)/試験前の重量×100]を測定し、揮発量が少ないものほど耐熱性に優れると判断した。
(g−2)長期耐熱性試験
各製造例のエステルに対して、所定の酸化防止剤を添加溶解させて調製した軸受用潤滑油10gと、SUS粉末1g及びNi粉末各1gを、内径30mm、高さ93mmの40mL共栓付き試験管に入れた。次に、空気供給・排気用にガラス管を2本を刺したゴム栓で栓をし、供給側から1L/分(常温、常圧基準)の空気の供給を行いながら、165℃のオイルバス中で加熱した。試験は一定時間ごとにおける潤滑油の揮発量[重量%=(試験前の重量−試験後の重量)/試験前の重量×100]の測定を行い、揮発量が20%を超えたときの時間で評価を行った。このときの時間が長いほど、長期耐熱性に優れると判断した。
(h)金属適合性試験
実施例又は比較例の各エステルを50mL共栓付試験管に約50mLを入れ、金属片(鉄、銅、鉛)を入れ、オーブン中90℃で14日間加熱した。試験後、濾過処理したエステルの全酸価を測定する。全酸価の上昇が少ないものほど金属との適合性が良好である。また、試験片は下記のものを使用した。
鉄:針金(長さ40mm、径1.6mm)、表面を研磨紙(600番)で磨いた後に使用した。
銅:針金(長さ40mm、径1.6mm)、表面を研磨紙(600番)で磨いた後に使用した。
鉛:塊状鉛(約1g、ナカライテスク製品)
(i)体積抵抗
JIS C 2101に準拠して25℃、10Vで測定した。
[製造例1]
撹拌器、温度計、冷却管付き水分分留受器を備えた1リットルの四ツ口フラスコにn−オクタン酸 432.0g(3.0モル)、ジエチレングリコールプロピレングリコール 246.0g(1.5モル)、キシレン(酸及びアルコールの総量に対し4〜5重量%)及び触媒として酸化錫(酸及びアルコールの総量に対し0.1重量%)を仕込み、窒素雰囲気下、減圧にて220℃まで昇温した。理論生成水量(54g)を目処にして留出してくる生成水を水分分留受器で除去しながらエステル化反応を約3時間行った。反応終了後、過剰の酸を蒸留により除去してエステル化粗物を得た。次いで、得られたエステル化粗物を反応終了後の全酸価に対して過剰の苛性ソーダ水溶液で中和後、中性になるまで水洗した。さらに、得られたエステル化粗物を活性炭で処理後、濾過により活性炭を除去して、モノオールモノエステル体含有量0.7%のジエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−オクタノエート)517.9g得られた本エステルAの全酸価、水酸基価及びヨウ素価を表1に示した。
[製造例2]
n−オクタン酸に代えて、n−ノナン酸 474.0g(3.0モル)を使用した以外は製造例1と同様の方法により、モノオールモノエステル体含有量0.6%のジエチレングリコールプロピレングリコールジ(n−ノナノエート)532.8gを得た。得られた本エステルBの全酸価、水酸基価及びヨウ素価を表1に示した。
[製造例3]
n−オクタン酸に代えて、n−オクタン酸 345.6g(2.4モル)及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸 94.8g(0.6モル)を使用し、反応時間8時間とした以外は製造例1と同様の方法により、モノオールモノエステル体含有量0.8%のジエチレングリコールプロピレングリコールとn−オクタン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸との混基エステル 526.8gを得た。得られた本エステルCの全酸価、水酸基価及びヨウ素価を表1に示した。
[製造例4]
ジエチレングリコールプロピレングリコールに代えて、トリエチレングリコールプロピレングリコール 211.5g(1.5モル)を使用し、n−オクタン酸に代えてn−ヘプタン酸 390.0g(3.0モル)を使用し、反応時間4時間とした以外は製造例1と同様の方法により、モノオールモノエステル体含有量0.8%のトリエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−ヘプタノエート)498.2gを得た。得られた本エステルDの全酸価、水酸基価及びヨウ素価を表1に示した。なお、本エステルDの体積抵抗は、1.4x1010Ω・cmであった。
[製造例5]
ジエチレングリコールプロピレングリコールに代えて、トリエチレングリコール 225.3g(1.5モル)を使用した以外は製造例1と同様の方法により、モノオールモノエステル体含有量1.0%のトリエチレングリコールジ(n−オクタノエート)550.6gを得た。得られた本エステルEの全酸価、水酸基価及びヨウ素価を表1に示した。
[製造例6]
ジエチレングリコールプロピレングリコールに代えて、トリプロピレングリコール 250.0g(1.3モル)を用い、n−オクタン酸を381.6g(2.65)モルを使用し、反応時間5時間とした以外は製造例1と同様の方法により、モノオールモノエステル体含有量0.8%のトリプロピレングリコールジ(n−オクタノエート)510gを得た。得られた本エステルFの全酸価、水酸基価及びヨウ素価を表1に示した。
[製造例7]
中和工程を経ずに行った以外は、製造例1と同様の方法のより、モノオールモノエステル体含有量1.5%のジエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−オクタノエート)520.9gを得た。得られた本エステルGの全酸価、水酸基価及びヨウ素価を表1に示した。
[製造例8]
酸化錫(酸及びアルコールの総量に対し0.02重量%)とした以外は、製造例1と同様の方法により、モノオールモノエステル体含有量3.9%のジエチレングリコールプロピレングリコール−ジ(n−オクタノエート)507.9gを得た。得られた本エステルHの全酸価、水酸基価及びヨウ素価を表1に示した。
[実施例1〜4及び比較例1〜4]
製造例1〜8で得られた各エステルからなる潤滑油の、動粘度、粘度指数、低温流動性試験、金属適合性試験の結果、及び、各エステルと酸化防止剤からなる潤滑油の耐熱性(揮発性)の結果をあわせて表2に示した。
[実施例5〜16]
製造例1及び製造例4で得られた各エステルに対して、各種酸化防止剤を所定の割合(重量%)で配合し、表3に示した組成を有する軸受用潤滑油を作成した。これらの軸受用潤滑油について長期耐熱性試験を行い、その結果を表3に示した。また、使用した酸化防止剤は、下記のとおりである。
[フェノール系酸化防止剤]
酸化防止剤I:2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(試薬、東京化成工業社製)
酸化防止剤J:2,2’−メチレンビス−(6−t−ブチル−p−クレゾール)(試薬、東京化成工業社製)
酸化防止剤K:4,4’−メチレンビス−2,6−ジ−t−ブチルフェノール(試薬、東京化成工業社製)
酸化防止剤L:ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ-t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGANOX 1010」)
酸化防止剤M:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGANOX 1076」)
酸化防止剤N:1,3,5−トリス−(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H、3H、5H)−トリオン(CYTEC社製、商品名「CYANOX1790」)
[アミン系酸化防止剤]
酸化防止剤P:N−フェニルベンゼンアミンと2,4,4−トリメチルペンテンの反応生成物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGANOX L57」)
酸化防止剤Q:p、p’−ジオクチルジフェニルアミン(Vanderbilt社製、商品名「VANLUBE 81」)
[実施例17]
製造例4で得られたエステルDに対して、2,6−ジ−tert−ブチル−クレゾ−ル1.5重量%、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン0.5重量を配合した潤滑油の体積抵抗は、1.3x1010Ω・cmであった。
[実施例18]
実施例8で用いた潤滑油の体積抵抗は、3.7x109Ω・cmであった。
[実施例19]
実施例9で用いた潤滑油の体積抵抗は、3.6x109Ω・cmであった。
[実施例20]
実施例13で用いた潤滑油の体積抵抗は、2.2x109Ω・cmであった。
また、低温粘度、低温流動性、耐熱性、粘度指数、及び金属適合性の各項目について、下記の方法で評点付けをした。その結果を図1〜8に示す。
[低温粘度]
評点5:0℃における動粘度が、40mm2/s未満
評点4:0℃における動粘度が、40mm2/s以上45mm2/s未満
評点3:0℃における動粘度が、45mm2/s以上50mm2/s未満
評点2:0℃における動粘度が、50mm2/s以上55mm2/s未満
評点1:0℃における動粘度が、55mm2/s以上
[低温流動性]
評点5:流動点が、−60℃以下
評点4:流動点が、−45℃以下から−60℃未満まで
評点3:流動点が、−30℃以下から−45℃未満まで
評点2:流動点が、−15℃以下から−30℃未満まで
評点1:流動点が、−15℃より高い
[耐熱性]
評点5:揮発量が、1.0wt%未満
評点4:揮発量が、1.0wt%以上1.2wt%未満
評点3:揮発量が、1.2wt%以上2.0wt%未満
評点2:揮発量が、2.0wt%以上3.0wt%未満
評点1:揮発量が、3.0wt%以上
[粘度指数]
評点5:粘度指数が、150以上
評点4:粘度指数が、145以上150未満
評点3:粘度指数が、140以上145未満
評点2:粘度指数が、135以上140未満
評点1:粘度指数が、135未満
[金属適合性]
評点5:試験後の酸価が、0.1mgKOH/g未満
評点4:試験後の酸価が、0.1mgKOH/g以上0.2mgKOH/g未満
評点3:試験後の酸価が、0.2mgKOH/g以上0.3mgKOH/g未満
評点2:試験後の酸価が、0.3mgKOH/g以上0.4mgKOH/g未満
評点1:試験後の酸価が、0.4mgKOH/g以上
実施例(図1〜4)から明らかなように、本願発明の潤滑油は、低温粘度、低温流動性、耐熱性、粘度指数、金属適合性の評点が何れも3点以上とバランスに優れた特性を有している。比較例1〜2から明らかなように本願規定の構造を有さないポリアルキレングリコールエステルからなる潤滑油は、低温流動性に劣っていたり(図5)、或いは粘度指数が低い(図6)などバランスを欠いている。また、比較例3〜4から明らかなように、本願規定の物性値を有していない場合、例えば酸価の低いポリアルキレングリコールエステルからなる潤滑油は、金属適合性と耐熱性が劣り(図7)、或いは粘度指数に劣る傾向がある(図8)。
また、表3の実施例5と実施例6とから、一価フェノール系酸化防止剤と多価フェノール系酸化防止剤とでは、本発明に係るエステルに対して長期耐熱性を向上する効果に優れていることがわかる。また、実施例5と、実施例7又は実施例11とを対比すると、酸化防止剤の総量は同じであるが、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤を用いると、さらに長期耐熱性が向上していることがわかる。また、実施例8と実施例9において、フェノール系酸化防止剤をアミン系酸化防止剤より過剰に用いた場合に、その効果が顕著である。