JP2006193723A - 流体軸受装置、ならびにそれを用いたスピンドルモータ及び情報装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】低トルク即ち低消費電力で、信頼性が高く、小型化に適した流体軸受装置ならびにそれを用いたスピンドルモータ及び情報装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 軸構造体及びスリーブの対向する面の少なくとも一方に動圧発生溝を有し、前記軸構造体と前記スリーブとが対向する面の隙間に潤滑剤が介在する流体軸受装置において、前記潤滑剤は、少なくとも1つのエーテル結合を持つ2価アルコールと1種以上の炭素数6〜10の飽和1価脂肪酸とから得られる総炭素数20〜28のジエステルを含有する流体軸受装置。
【選択図】 図1
【解決手段】 軸構造体及びスリーブの対向する面の少なくとも一方に動圧発生溝を有し、前記軸構造体と前記スリーブとが対向する面の隙間に潤滑剤が介在する流体軸受装置において、前記潤滑剤は、少なくとも1つのエーテル結合を持つ2価アルコールと1種以上の炭素数6〜10の飽和1価脂肪酸とから得られる総炭素数20〜28のジエステルを含有する流体軸受装置。
【選択図】 図1
Description
本発明は、動圧型の流体軸受装置、ならびにそれを用いたスピンドルモータ及び情報装置に関する。
流体軸受装置は、軸と、軸を受けるスリーブとからなり、両者の対向する隙間に潤滑剤が介在する。軸の回転に伴い、軸又はスリーブに形成された動圧発生溝によって潤滑剤がかき集められ、圧力を発生し、軸がスリーブに対して非接触で支持される。これにより、高速回転が実現され、また回転時の騒音を軽減することを可能とする。
これら流体軸受装置を搭載したスピンドルモータは、媒体の記録密度の向上に不可欠な回転精度、さらに耐衝撃性や静粛性に優れているため、磁気ディスク装置に代表される情報機器用や音響・映像機器用に用いられるモータの主流となってきている。
しかし、特に、これら流体軸受装置を搭載したスピンドルモータを磁気ディスク装置に用いる場合、流体軸受装置の軸とスリーブとが非接触で高速回転するため、軸とスリーブとの間に介在する潤滑剤の流動や磁気ディスクの空気摩擦によって帯電が生じ、装置内に電荷が蓄えられることとなる。この蓄えられた電荷が、軸もしくはスリーブと連結した磁気ディスクと、記録再生ヘッドとの間で放電されると、記録再生障害や記録再生ヘッドの損傷を引き起こす虞がある。
その対策として、潤滑剤に導電性添加剤として有機ポリマーを添加した磁気ディスク装置(例えば、特許文献1参照)、潤滑剤に帯電防止剤を添加した流体軸受スピンドルモータ(例えば、特許文献2参照)、潤滑剤に特定の添加剤を配合した流体軸受装置(例えば、特許文献3参照)等が提案されている。これらの技術は、導電性又は帯電防止効果を向上させるための各種添加剤を潤滑剤に添加することによって、装置内に蓄えられた電荷をアースする、もしくは、帯電を抑制するものであった。
しかし、このように、添加剤として高分子量又は高粘度の化合物を一定量以上添加することにより、潤滑剤の粘度が高くなり、軸受装置のトルクが増大(つまり、消費電力が増大)するという問題がある。
また、添加剤は特定の効果(導電性添加剤は導電性、帯電防止剤は帯電防止)を向上させることを目的とするため、添加剤自体の耐熱性や耐久性が潤滑剤の他の機能に影響を与える場合がある。さらに、添加剤の劣化に伴い、添加剤の効果低減や潤滑剤全体の劣化促進を引き起こす場合があり、装置の長期信頼性を得ることができないという問題がある。
また、添加剤は特定の効果(導電性添加剤は導電性、帯電防止剤は帯電防止)を向上させることを目的とするため、添加剤自体の耐熱性や耐久性が潤滑剤の他の機能に影響を与える場合がある。さらに、添加剤の劣化に伴い、添加剤の効果低減や潤滑剤全体の劣化促進を引き起こす場合があり、装置の長期信頼性を得ることができないという問題がある。
さらに、近年、磁気ディスク装置の小型化、省エネルギー化、長寿命化が進み、それに伴い、その主要部品であるスピンドルモータにも、モータ消費電流の低減及び耐久性の向上が求められている。
そのため、流体軸受装置に使用される潤滑剤として、セバシン酸ジオクチル(DOS)、アゼライン酸ジオクチル(DOZ)、アジピン酸ジオクチル(DOA)等のエステルを潤滑剤として用いた流体軸受装置が提案された。また、ネオペンチルグリコールと炭素数6〜12の一価脂肪酸及び/又はその誘導体とから得られるエステルを潤滑剤として用いた流体軸受装置(例えば、特許文献4参照)、一般式R1−COO−(AO)n−R2 で表されるエステルを潤滑剤として用いた軸受(例えば、特許文献5参照)等の従来例が提案されている。これらは、粘度の低い潤滑剤を用いることによって、トルクを低減(つまり、低消費電力)しようとするものであった。
特表2000−500898号公報
特開2001−208069号公報
特開2003−171685号公報
特開2001−316687号公報
特開2002−206094号公報
しかし、このような潤滑剤を用いた流体軸受装置では、トルク低減が可能な一方で、潤滑剤の耐熱性が低い(蒸気圧が高い)ため蒸発量が大きく、長期の使用にあたっては軸受装置の安定した回転に必要な潤滑剤量を維持できない。したがって、装置の信頼性が十分でなく、寿命が短くなるという問題がある。また、その対策として、潤滑剤の蒸発量を考慮して必要以上の余分な潤滑剤を充填する方法が考えられるが、その分のトルクの増加やコスト増を招き、加えてスペース確保のために小型化が困難になるという問題がある。
本発明は、軸構造体及びスリーブの対向する面の少なくとも一方に動圧発生溝を有し、前記軸構造体と前記スリーブとが対向する面の隙間に潤滑剤が介在する流体軸受装置において、前記潤滑剤は、少なくとも1つのエーテル結合を持つ2価アルコールと1種以上の炭素数6〜10の飽和1価脂肪酸とから得られる総炭素数20〜28のジエステルを含有する流体軸受装置を提供する。
また、本発明は、上述した装置を搭載したスピンドルモータ及び該スピンドルモータを搭載した情報装置を提供する。
また、本発明は、上述した装置を搭載したスピンドルモータ及び該スピンドルモータを搭載した情報装置を提供する。
本発明によれば、潤滑剤が良好な導電性を発揮するため、潤滑剤に、導電性及び/又は帯電防止効果を与えるための添加剤を添加することなく、信頼性の高い流体軸受装置を実現できる。また、このような添加剤による潤滑剤の粘度増加を回避することができるため、トルク低減を図ることができる。さらに、従来と比べて、潤滑剤の粘度が低く、かつ耐熱性が高いため、流体軸受装置の低トルク化と潤滑剤の蒸発量の低減とを両立することができる。この結果、低消費電力で、長寿命な流体軸受装置を実現できる。また、流体軸受装置1台当りに充填する潤滑剤の量を低減でき、コスト低減及び装置の小型化が可能となる。
以下、本発明の実施をするための最良の形態を具体的に示した実施の形態について、図面とともに記載する。
《実施の形態1》
本発明の実施の形態1について、図2を用いて説明する。図2は、実施の形態1における軸固定式の流体軸受装置の主要部分の断面図である。
本発明の実施の形態1について、図2を用いて説明する。図2は、実施の形態1における軸固定式の流体軸受装置の主要部分の断面図である。
図2において、軸2は、その外周面にヘリングボーン形状のラジアル動圧発生溝2a、2bが形成されている。軸2は、一端がスラストフランジ3に固定され、他端がベース1aに圧入固定されている。軸2及びスラストフランジ3は、軸部を構成する。なお、本発明では、軸2のみで軸構造体を構成してもよいし、任意にスラストフランジ3(図1及び図2)及びハブ15の一部(図3)又は全部とが軸構造体を構成してもよい。軸部及びベース1aは、固定部を構成する。
一方、スリーブ4は、軸部を受ける軸受孔を有する。スリーブ4の一端にはスラストプレート9が取り付けられている。スリーブ4の軸受孔には、スラストプレート9とスラストフランジ3とが対向するように軸部が挿入されている。スリーブ4及びスラストプレート9は回転部を構成する。また、スラストフランジ3のスラストプレート9との対向面には、スパイラル形状のスラスト動圧発生溝3aが形成されている。軸受孔と軸部の隙間には後述する潤滑剤8が介在する。回転部及び固定部によってモータ駆動部が形成される。
回転部の回転に伴い、動圧発生溝2a、2bは潤滑剤8をかき集め、軸2とスリーブ4との間のラジアル半径隙間10においてラジアル方向にポンピング圧力を発生する。同様に、回転により、動圧発生溝3aは潤滑剤8をかき集め、スラストフランジ3とスラストプレート9との間でスラスト方向にポンピング圧力を発生する。これにより回転部は固定部に対して上方に浮上して非接触で回転支持される。
なお、モータの回転数としては、一般に、4200rpm、5400rpm、7200rpm、10000rpm、15000rpm等が用いられる。
なお、モータの回転数としては、一般に、4200rpm、5400rpm、7200rpm、10000rpm、15000rpm等が用いられる。
本発明の流体軸受装置では、軸2とスリーブ4のラジアル半径隙間10は、1〜5μmが好ましく、より好ましくは1.5μm〜4μm、さらに好ましくは1.5μm〜3μmである。
トルクは、一般に軸2とスリーブ4のラジアル半径隙間10(以下、単に「隙間」と記す。)の逆数に比例し、剛性は隙間の3乗の逆数に比例するため、潤滑剤8の粘度に応じた隙間が必要である。従って、この範囲の隙間において、本発明の流体軸受装置おける潤滑剤を用いた場合に、潤滑剤の低粘度化の効果を十分に発揮させることができ、低トルク化と、軸受に必要な剛性とを両立できる。
トルクは、一般に軸2とスリーブ4のラジアル半径隙間10(以下、単に「隙間」と記す。)の逆数に比例し、剛性は隙間の3乗の逆数に比例するため、潤滑剤8の粘度に応じた隙間が必要である。従って、この範囲の隙間において、本発明の流体軸受装置おける潤滑剤を用いた場合に、潤滑剤の低粘度化の効果を十分に発揮させることができ、低トルク化と、軸受に必要な剛性とを両立できる。
一般に、流体軸受装置における潤滑剤は低粘度であれば、高温環境において所定の軸剛性を確保するために、ラジアル半径隙間を小さくする必要がある。
しかし、上記した範囲の隙間で、本発明の流体軸受装置における潤滑剤を用いることにより、隙間の影響を最小限にとどめて、トルク低減の効果を最大限に発揮させることができる。また、混入異物及び起動停止時に発生する摩耗粉等による軸受ロックの発生を防止して、装置の信頼性を向上させることができる。さらに、過度の軸及びスリーブ等の高い加工精度と組立精度とが必要とならず、コストアップを防止することができる。また、本発明の流体軸受装置における潤滑剤の低粘度化の効果を最大限に発揮させながら、軸受の剛性を確保して、実用上の使用に十分耐えることができる。また、軸の偏心率の増大を防止し、スピンドルモータに取り付けられる磁気ディスク等の記録媒体の回転面振れを抑制し、これにより記録再生位置の精度の低下や信号強度のばらつきを最小限にし、磁気ディスク装置の性能基準を十分に満たすことができる。さらに、潤滑剤と空気との接触面積を最小限にとどめ、潤滑剤の酸化劣化を防止して、軸受装置の寿命を確保することができる。
しかし、上記した範囲の隙間で、本発明の流体軸受装置における潤滑剤を用いることにより、隙間の影響を最小限にとどめて、トルク低減の効果を最大限に発揮させることができる。また、混入異物及び起動停止時に発生する摩耗粉等による軸受ロックの発生を防止して、装置の信頼性を向上させることができる。さらに、過度の軸及びスリーブ等の高い加工精度と組立精度とが必要とならず、コストアップを防止することができる。また、本発明の流体軸受装置における潤滑剤の低粘度化の効果を最大限に発揮させながら、軸受の剛性を確保して、実用上の使用に十分耐えることができる。また、軸の偏心率の増大を防止し、スピンドルモータに取り付けられる磁気ディスク等の記録媒体の回転面振れを抑制し、これにより記録再生位置の精度の低下や信号強度のばらつきを最小限にし、磁気ディスク装置の性能基準を十分に満たすことができる。さらに、潤滑剤と空気との接触面積を最小限にとどめ、潤滑剤の酸化劣化を防止して、軸受装置の寿命を確保することができる。
また、軸2は、直径1〜4mmが好ましい。これにより、軸受の剛性を確保するために、隙間と軸の長さとを適切に調整することができ、装置の小型化の制限を抑制し、必要な性能基準を十分に満たすことが可能になる。また、剛性とトルクロスとのバランスを調節し、潤滑剤の効果を十分に発揮させることができる。ラジアル半径隙間10との組み合わせから、軸2は、より好ましくは直径1.5〜3.5mm、さらに好ましくは直径1.5〜3mmである。これにより、本発明の流体軸受装置における潤滑剤の効果を最大限に利用できる。
軸2の材質としては、ステンレス鋼が最適である。ステンレス鋼は、他の金属と比べ、高硬度で、摩耗発生量を抑制できるため、低粘度で表面保護吸着膜の薄い、本発明の流体軸受装置における潤滑剤を用いる場合に有効である。より好ましくは、マルテンサイト系ステンレス鋼である。
スリーブ4には、銅合金、鉄合金、ステンレス鋼、セラミックス、樹脂等の材料を使用することが好ましい。より耐摩耗性及び加工性が高く、かつ、低コストである、銅合金、鉄合金、ステンレス鋼がより好ましい。コスト面から焼結材料を用いてもよく、潤滑剤を焼結材料に含浸させる場合でも同様の効果が得られる。軸材料及び/またはスリーブ材料の一部表面または全表面に、メッキ法、物理蒸着法、化学蒸着法、拡散被膜法等によって表面改質を行ってもよい。
なお、上述の説明では、ラジアル動圧発生溝は、軸2の外周面に形成したが、スリーブ4の軸受孔面(内周面)、あるいは軸2の外周面及びスリーブ4の軸受孔面の両方に形成してもよい。つまり、ラジアル動圧発生機構は、軸又はスリーブの少なくとも一方に有していればよい。スラストフランジ3側面とスリーブ4との間でラジアル動圧発生機構を有していてもよい。動圧発生機構としては、例えば、溝、突起、段差、傾斜面等種々の形状のものが挙げられる。また、ラジアル動圧発生溝は、ヘリングボーン形状及びスパイラル形状等、種々の形状を採用することができる。
また、スラスト動圧発生溝は、スラストフランジ3のスラストプレート9との対向面のみ、あるいはスラストプレート9のスラストフランジ3との対向面のみ、スラストフランジ3のスラストプレート9との対向面の裏面のみ、もしくは前記3箇所のうちの2箇所以上に形成してもよい。
なお、スラスト動圧発生溝以外に、上述したような動圧を発生する機構であれば、どのような機構のものであってもよい。
本実施の形態において軸部を片端固定としたが、これに限らず、両端固定の場合、又はスリーブの軸受孔を両端開放した場合でも同様の効果が得られる。
なお、スラスト動圧発生溝以外に、上述したような動圧を発生する機構であれば、どのような機構のものであってもよい。
本実施の形態において軸部を片端固定としたが、これに限らず、両端固定の場合、又はスリーブの軸受孔を両端開放した場合でも同様の効果が得られる。
《実施の形態2》
本発明の実施の形態2について、図1を用いて説明する。図1は、実施の形態2における軸回転式の流体軸受装置を有するスピンドルモータを搭載した磁気ディスク装置の主要部分の断面図である。本実施の形態においては、流体軸受装置を軸固定から軸回転方式にした点及びスラスト動圧発生溝をヘリングボーン形状にした点において、図2における実施の形態1の流体軸受装置とは異なる。それ以外の点においては、実施の形態1と同様の構成をなし、同一の符号を付した要素についての詳細な説明は省略する。
本発明の実施の形態2について、図1を用いて説明する。図1は、実施の形態2における軸回転式の流体軸受装置を有するスピンドルモータを搭載した磁気ディスク装置の主要部分の断面図である。本実施の形態においては、流体軸受装置を軸固定から軸回転方式にした点及びスラスト動圧発生溝をヘリングボーン形状にした点において、図2における実施の形態1の流体軸受装置とは異なる。それ以外の点においては、実施の形態1と同様の構成をなし、同一の符号を付した要素についての詳細な説明は省略する。
図1において、軸2は、外周面にヘリングボーン形状のラジアル動圧発生溝2a、2bを形成し、一端をスラストフランジ3に固定し、他端をハブ5に圧入する。軸2及びスラストフランジ3は軸部を形成する。ハブ5には、さらに2枚のガラス製磁気ディスク11がスペーサ12を挟み込んだ状態で積層され、クランプ13を介して止ビス14で固定されている。また、ハブ5の内周面にはロータマグネット6が固定される。軸部(軸2及びスラストフランジ3)、ハブ5、ロータマグネット6、磁気ディスク11、スペーサ12、クランプ13、及び止ビス14は、回転部を構成する。
一方、スリーブ4は、ベース1に圧入され、軸部を受ける軸受孔を有する。スリーブ4の一端にはスラストプレート9が取り付けられている。スリーブ4の軸受孔には、スラストプレート9とスラストフランジ3とが対向するように軸部が挿入される。ベース1に形成された壁にはステータコイル7が取り付けられる。ベース1、スリーブ4、スラストプレート9、及びステータコイル7は、固定部を形成する。スラストフランジ3のスラストプレート9との対向面には、へリングボーン形状のスラスト動圧発生溝3aが形成されている。軸受孔と軸部の隙間には後述する潤滑剤8が充填され、軸受装置が構成される。回転部及び固定部は、モータ駆動部を構成する。
このモータ駆動部により、回転部が回転駆動する動作について説明する。
まず、ステータコイル7に通電されると回転磁界が発生し、ステータコイル7と対向して取り付けられたロータマグネット6が回転力を受け、ハブ5、軸2、磁気ディスク11、クランプ13、スペーサ12とともに回転を始める。回転により、ヘリングボーン形状の動圧発生溝2a、2b及び3aは潤滑剤8をかき集め、ラジアル方向、スラスト方向ともに(軸2とスリーブ4との間、及びスラストフランジ3とスラストプレート9との間に)ポンピング圧力を発生する。これにより回転部は固定部に対して上方に浮上して非接触で回転支持され、磁気ディスクのデータの記録再生を可能とする。
なお、ハブ5に取り付けられる磁気ディスクは、特に限定されないが、材質は、ガラス製もしくはアルミニウム製が挙げられ、小型機種の場合には、1枚以上(通常1〜2枚)を装着することができる。
まず、ステータコイル7に通電されると回転磁界が発生し、ステータコイル7と対向して取り付けられたロータマグネット6が回転力を受け、ハブ5、軸2、磁気ディスク11、クランプ13、スペーサ12とともに回転を始める。回転により、ヘリングボーン形状の動圧発生溝2a、2b及び3aは潤滑剤8をかき集め、ラジアル方向、スラスト方向ともに(軸2とスリーブ4との間、及びスラストフランジ3とスラストプレート9との間に)ポンピング圧力を発生する。これにより回転部は固定部に対して上方に浮上して非接触で回転支持され、磁気ディスクのデータの記録再生を可能とする。
なお、ハブ5に取り付けられる磁気ディスクは、特に限定されないが、材質は、ガラス製もしくはアルミニウム製が挙げられ、小型機種の場合には、1枚以上(通常1〜2枚)を装着することができる。
《実施の形態3》
図3は、実施の形態3の軸回転式の流体軸受け装置を有するスピンドルモータを搭載した磁気ディスク装置の主要部分の断面図である。
この磁気ディスク装置において、ベース31の中央には、軸22を受ける軸受孔を有するスリーブ21が圧入されており、ベース31に形成された壁にはステータコイル17が取り付けられている。スリーブ21の軸受孔には、一端側から軸22が挿入されており、他端がキャップ21aによって閉塞されている。軸22には、外周面にヘリングボーン形状のラジアル動圧発生溝(図示せず)が形成されており、その一端がハブ15に圧入されており、他端はキャップ21aに対向している。軸22の外周面(動圧面)は、スリーブ21の内周面(動圧面)に対して半径方向に隙間Rを介して対向しており、その隙間Rに、後述する潤滑剤8が満たされている。ハブ15の内周面にはロータマグネット16が固定されており、このハブ15と軸22とが軸構造体を構成する。
図3は、実施の形態3の軸回転式の流体軸受け装置を有するスピンドルモータを搭載した磁気ディスク装置の主要部分の断面図である。
この磁気ディスク装置において、ベース31の中央には、軸22を受ける軸受孔を有するスリーブ21が圧入されており、ベース31に形成された壁にはステータコイル17が取り付けられている。スリーブ21の軸受孔には、一端側から軸22が挿入されており、他端がキャップ21aによって閉塞されている。軸22には、外周面にヘリングボーン形状のラジアル動圧発生溝(図示せず)が形成されており、その一端がハブ15に圧入されており、他端はキャップ21aに対向している。軸22の外周面(動圧面)は、スリーブ21の内周面(動圧面)に対して半径方向に隙間Rを介して対向しており、その隙間Rに、後述する潤滑剤8が満たされている。ハブ15の内周面にはロータマグネット16が固定されており、このハブ15と軸22とが軸構造体を構成する。
また、スリーブ21の上端面(動圧面)と、ハブ15の内部側における下端面(動圧面)とは、軸方向に隙間Sを介して対向するように配置されており、これら面の少なくとも一方側には、スパイラル形状のスラスト動圧発生溝(図示省略)が形成されている。その隙間Sにも潤滑剤8が満たされており、上述した隙間Rから、隙間Sに至るまで、実質的に連続して途切れなく充填されている。
軸22及びハブ15が回転する際には、上述したスラスト動圧発生溝の作用によって潤滑剤8に動圧力を生じる。その動圧力によって、軸22及びハブ15は、スラスト方向に浮上して、非接触状態で軸支持される。
スリーブ21の外周側には、シール部SSが形成されている。シール部SSの間隙は、スリーブ21の半径方向外方で隙間Sに接続しており、下方向に向かって拡大する構成となっている。これにより、シール部SSは潤滑剤8の外部への流出を防止している。
本発明の流体軸受装置、例えば、実施の形態1〜3では、軸2とスリーブ4とは、後述する高導電性の潤滑剤を介しているため、両者の電気導通経路を確実かつ安定に保つことができる。そのため、回転部の回転によって蓄積された電荷をアースすることができ、磁気ディスクと記録再生ヘッドの間で電荷が放電されることがなく、さらに、記録再生障害や記録再生ヘッドの損傷を引き起こすことがない。
本発明において用いることができる潤滑剤8としては、少なくとも1つのエーテル結合を持つ2価アルコールと1種以上の炭素数6〜10の飽和1価脂肪酸とから得られる総炭素数20〜28のジエステルを用いる。このジエステルは、1つ以上のエーテル結合及び2つのエステル結合を有するため、強い分子極性を示す。そのため、電荷を引き付けやすく、蓄積された電荷の移動を容易にする。その結果、潤滑剤の体積抵抗率を低減することができる。
2価アルコールとしては、1以上のエーテル結合を含むものであれば、特に限定されることなく用いることができる。例えば、1〜4のエーテル結合を含むものが適当である。具体的には、エーテル結合を1つ持つものとして、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール等が挙げられる。エーテル結合を2つ持つものとして、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリブチレングリコール等が挙げられる。エーテル結合を3つ持つものとして、テトラエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、テトラブチレングリコール等が挙げられる。エーテル結合を4つ持つものとして、ペンタエチレングリコール、ペンタプロピレングリコール等が挙げられる。
また、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等から選ばれる2種以上を縮合した複合グリコール等用いてもよい。具体的には、エチレングリコールとプロピレングリコールが縮合した複合グリコール(エチレン・プロピレングリコール)、ブチレングリコールとエチレングリコールが縮合した複合グリコール(ブチレン・エチレングリコール)、ブチレングリコールとプロピレングリコールが縮合した複合グリコール(ブチレン・プロピレングリコール)、エチレングリコールとプロピレングリコールとブチレングリコールとが縮合した複合グリコール(ブチレン・エチレン・プロピレングリコール、ブチレン・プロピレン・エチレングリコール、エチレン・ブチレン・プロピレングリコール)等が挙げられる。
これらの複合グリコールは、いずれか1つのグリコール分子と、他のいずれかのグリコールの1分子との縮合物である複合グリコールでもよく、いずれか又は全てが、2以上の分子のいずれのグリコールの組み合わせの縮合物である複合グリコールでもよい。
一例として、エチレングリコール2分子とプロピレングリコール1分子とが縮合した複合グリコール(ジエチレン・プロピレングリコール、エチレン・プロピレン・エチレングリコール)等、エチレングリコール1分子とプロピレングリコール2分子とブチレングリコール1分子とが縮合した複合グリコール(エチレン・ジプロピレン・ブチレングリコール、エチレン・プロピレン・ブチレン・プロピレングリコール等)等が挙げられる。
これらのアルコールは、位置異性体が存在する場合には、いずれの位置異性体及びその混合物でも用いることができる。
なお、これらの複合グリコールは、当該分野で知られたいずれの方法によって製造されたものでもよい。その方法には、例えば、触媒下又は無触媒下、グリコール同士の縮合反応(重縮合、重付加等、脱水縮合を含む)、グリコールとアルキレンオキサイドとの反応等を含む。
一例として、エチレングリコール2分子とプロピレングリコール1分子とが縮合した複合グリコール(ジエチレン・プロピレングリコール、エチレン・プロピレン・エチレングリコール)等、エチレングリコール1分子とプロピレングリコール2分子とブチレングリコール1分子とが縮合した複合グリコール(エチレン・ジプロピレン・ブチレングリコール、エチレン・プロピレン・ブチレン・プロピレングリコール等)等が挙げられる。
これらのアルコールは、位置異性体が存在する場合には、いずれの位置異性体及びその混合物でも用いることができる。
なお、これらの複合グリコールは、当該分野で知られたいずれの方法によって製造されたものでもよい。その方法には、例えば、触媒下又は無触媒下、グリコール同士の縮合反応(重縮合、重付加等、脱水縮合を含む)、グリコールとアルキレンオキサイドとの反応等を含む。
中でも、耐熱性や粘度特性や低温流動性等の性能に特に優れるため、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールが縮合した複合グリコール(エチレン・プロピレングリコール)、エチレングリコール2分子とプロピレングリコール1分子とが縮合した複合グリコール(ジエチレン・プロピレングリコール、エチレン・プロピレン・エチレングリコール)が好ましく、特に、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エチレングリコール2分子とプロピレングリコール1分子とが縮合した複合グリコール(ジエチレン・プロピレングリコール、エチレン・プロピレン・エチレングリコール)が好ましい。
2価アルコールは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
2価アルコールは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
ジエステルの酸成分は、炭素数6〜10の飽和1価脂肪酸である。これらは、不飽和結合を含まないため、熱及び酸化に対する安定性が高い(耐熱性が高い)。また、高温環境下や高速回転下でも劣化が起こりにくく、つまり、蒸発量及び粘度を抑え、低温流動性を向上させることができる。よって、装置の長寿命化を図ることができる。
この飽和1価脂肪酸は、1種のみで用いてもよいが、2種以上併用することが好ましい。単一種の場合よりも、低温流動性、蒸発特性等をさらに向上させることができるからである。これにより、装置の使用可能な温度範囲を拡大でき、さらに長寿命化が可能となる。脂肪酸を2種以上用いる場合は、炭素数が同一の直鎖型と分岐型、炭素数が同一で分岐位置が異なる分岐型、炭素数が異なる直鎖型、炭素数が異なる直鎖型と分岐型、炭素数が異なる分岐型等の組み合わせが挙げられる。なかでも、直鎖型を少なくとも1種以上用いることが好ましい。これにより、潤滑剤の耐熱性をより高めることができ、蒸発量を低減することができる。また、粘度の温度変化を抑制することができる。よって、装置の長寿命化とトルクの温度変化を抑制することが可能である。また、炭素数が同一の飽和1価脂肪酸、特に、炭素数が同一の直鎖型と分岐型を用いることにより、潤滑剤の耐熱性や密度等の特性において互いに大きく異なることがないため、装置の性能安定性が高まり、高い信頼性を得ることができる。
この脂肪酸の具体例としては、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸、イソヘキサン酸、イソヘプタン酸、イソオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、イソデカン酸等が挙げられる。
特に、炭素数が7〜9の直鎖型の飽和1価脂肪酸は、耐熱性、粘度特性等の性能に優れる。そのため、低トルク即ち低消費電力で、信頼性が高い流体軸受装置を実現できる。例えば、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸等が挙げられる。
炭素数7〜9の分岐型の飽和1価脂肪酸は、耐熱性と低温流動性に優れるため、軸受の信頼性向上と低温度域での回転起動確保に有効である。例えば、イソヘプタン酸、イソオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸等が挙げられる。
特に、炭素数が7〜9の直鎖型の飽和1価脂肪酸は、耐熱性、粘度特性等の性能に優れる。そのため、低トルク即ち低消費電力で、信頼性が高い流体軸受装置を実現できる。例えば、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸等が挙げられる。
炭素数7〜9の分岐型の飽和1価脂肪酸は、耐熱性と低温流動性に優れるため、軸受の信頼性向上と低温度域での回転起動確保に有効である。例えば、イソヘプタン酸、イソオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸等が挙げられる。
本発明で用いられる潤滑剤におけるジエステルは、総炭素数が20〜28であることが好ましく、22〜26がより好ましく、23〜25がさらに好ましい。これにより、軸受のトルク低減、蒸発量の減少、長寿命化を図ることができ、コスト面及び小型化に有利となる。加えて、低温度域での回転起動を確保することができる。
このジエステルは、所定のアルコール成分と酸成分とを、触媒存在下又は無触媒下で、公知のエステル化反応に付すことにより合成することができる。
なお、潤滑剤は、2種以上のジエステルを併用してもよい。
このジエステルは、所定のアルコール成分と酸成分とを、触媒存在下又は無触媒下で、公知のエステル化反応に付すことにより合成することができる。
なお、潤滑剤は、2種以上のジエステルを併用してもよい。
例えば、アルコール成分1種と酸成分2種とから得られるジエステルは、1分子中に1種の酸成分の残基のみが結合した単一構造のジエステルが2種、1分子中に2種の酸成分の残基が結合した混合構造のジエステルが1種、合計3種類のジエステル混合物となる。このジエステル混合物をそのまま用いてもよい。
本発明における潤滑剤であるジエステルは、公知のエステルより体積抵抗率が低いため、特に導電性添加剤を添加する必要がなく、装置の帯電を良好に抑制することができる。
本発明における潤滑剤であるジエステルは、公知のエステルより体積抵抗率が低いため、特に導電性添加剤を添加する必要がなく、装置の帯電を良好に抑制することができる。
本発明における潤滑剤8は、上述したジエステルに、さらに、添加油として他の種類の油を混合させてもよい。添加油は、粘度の低減や調整、さらなる耐熱性の向上、低温流動性の向上等別の性能を付加、補完する等の目的に応じて、適宜選択できる。
具体的には、鉱物油、ポリαオレフィン、アルキル芳香族、ポリグリコール、フェニルエーテル、ポリオールエステル、二塩基酸ジエステル、リン酸エステル等既知の化合物が挙げられる。これら添加油は、1種もしくは2種以上を混合することができる。中でも、ポリオールエステル及び二塩基酸ジエステルは、耐熱性が高く、低温での流動性も優れているため、軸受装置の信頼性向上や低温度域での回転起動確保に有効である。
ポリオールエステルとしては、ネオペンチルグリコール、3−メチルー1,5−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のアルコールと脂肪酸とのエステルが挙げられる。二塩基酸ジエステルの中では、セバシン酸ジオクチル(DOS)、アゼライン酸ジオクチル(DOZ)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル等が挙げられる。
また、潤滑剤8には、添加剤を配合できる。添加剤は、基油の性能を向上、補完する目的で、公知の化合物を選択することができる。具体的には、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性剤、油性剤、極圧剤、摩擦調整剤、摩耗防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤、帯電防止剤、導電性付与剤、清浄分散剤、加水分解防止剤等の1種もしくは2種以上を配合することができる。添加剤は、劣化に伴いガス発生や変質を引き起こし、軸受及び装置の性能を低下させると共に粘度も増大させるため、配合総量を必要最小限にとどめるべきである。添加剤の配合総量は、基油及び添加剤を含めた潤滑剤の総重量に対する割合として、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.5〜4重量%である。
特に、酸化防止剤は、流体軸受装置の長期信頼性を向上させるためには、必要不可欠である。具体的には、硫黄及び塩素を分子中に含まないフェノール系または同様のアミン系酸化防止剤が流体軸受装置用として最適である。硫黄及び塩素を分子中に含む添加剤は、分解した場合に、腐食性のガスを発生し、装置の性能に大きな影響を与える恐れがある。これらの酸化防止剤は、単独でもしくは併用して使用する。中でも、80〜100℃以上の高温環境下での装置の使用にも十分効果を発揮、維持できる、耐熱性の高い、フェノール基を2個以上含有するフェノール系酸化防止剤が好ましい。さらに、低温での流動性を低下させず、装置の回転起動を容易にできる液状タイプの酸化防止剤を選択して使用することが好ましい。
さらに、低粘度で表面保護吸着膜の薄い本発明の潤滑剤の場合においては、流体軸受装置の起動及び停止時に生じる軸とスリーブの接触に伴う摩擦、摩耗が従来と比較して増大する場合がある。そのため、前記酸化防止剤に加えて、軸及びスリーブの金属表面に皮膜を形成しやすく、硫黄及び塩素を分子中に含まない、防錆剤、金属不活性剤、油性剤、極圧剤、摩耗調整剤、摩耗防止剤の少なくとも1つを添加剤として添加することが最も好ましい。
具体的には、ベンゾトリアゾール等のアゾール類、オレイン酸、n−テトラデカン酸、n−ヘキサデカン酸、n−オクタデカン酸等の脂肪酸及びその誘導体、オレイルアルコール等の脂肪族アルコール、コハク酸エステル、コハク酸ハーフエステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル等のエステル、その他として金属塩、リン酸エステル塩、脂肪族アミン、アルキルイミダゾール類、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノオレエート等が挙げられる。
各種添加剤として知られる汎用の金属塩は、流体軸受装置の起動及び停止時に生じる軸とスリーブとの接触に伴う摩擦や摩耗の発熱によって、潤滑剤のエステルが分解したカルボン酸と反応して、カルボン酸塩を形成し沈殿物となる場合があるため、使用しないことが好ましい。
軸受構成が同じである場合、モータ消費電流は潤滑剤の粘度が高いほど大きくなるため、また、モータ消費電流はモータの回転数が高いほど大きくなるため、潤滑剤の粘度はなるべく低い方が良い。しかし、潤滑剤の粘度が低い場合は、軸の剛性を保つためにラジアル半径隙間を小さくする必要がある。ラジアル半径隙間を小さくしすぎると、異物等が混入して軸受の回転ロックが起こる可能性が高くなり、装置の信頼性が低下する。したがって、潤滑剤の粘度は、20℃において、5〜35mPa・s、より好ましくは5〜30mPa・s、さらに好ましくは10〜25mPa・sであり、かつ、80℃において、2〜5mPa・s、より好ましくは、2〜4mPa・sの場合に本発明の流体軸受装置における潤滑剤の効果を最大限に発揮できる。
潤滑剤の体積抵抗率は、20℃において、1×1011Ω・cm以下の場合に、良好な導電性を示し、装置の信頼性を確保できる。公知のエステル系潤滑剤の体積抵抗率は、20℃において、約1×1011〜1×1013Ω・cmである。本発明の流体軸受装置における潤滑剤の20℃における体積抵抗率は、好ましくは、1×1011Ω・cm以下、より好ましくは、1×1010Ω・cm以下である。なお、体積抵抗率の測定方法は、JIS−C2101に準拠した。
潤滑剤8の蒸発量は、JIS−C2101に準拠し、150℃で24時間加熱させた場合に、4wt%程度以下である場合が好ましい。
潤滑剤8の低温固化温度は、−20℃以下、より好ましくは−40℃以下がよい。これにより、通常の装置使用温度下限である−20℃の低温環境においても、流体軸受装置やスピンドルモータに負担を掛けることなく回転起動可能である。ただし、この場合の低温固化温度は、潤滑剤において一般にJIS−K2269で測定される流動点とは異なる温度である。低温固化温度とは、サンプル瓶に潤滑剤を採取後、温度槽に2日間静置した場合に一部または全部が固形化する温度であり、流動点よりも数℃〜十数℃高い温度である。
潤滑剤8の低温固化温度は、−20℃以下、より好ましくは−40℃以下がよい。これにより、通常の装置使用温度下限である−20℃の低温環境においても、流体軸受装置やスピンドルモータに負担を掛けることなく回転起動可能である。ただし、この場合の低温固化温度は、潤滑剤において一般にJIS−K2269で測定される流動点とは異なる温度である。低温固化温度とは、サンプル瓶に潤滑剤を採取後、温度槽に2日間静置した場合に一部または全部が固形化する温度であり、流動点よりも数℃〜十数℃高い温度である。
特に、潤滑剤が、80℃における粘度が2〜5mPa・sで、低温固化温度が−20℃以下で、20℃における体積抵抗率が1×1011Ω・cm以下である場合には、粘度特性、低温流動性、導電性、耐熱性等の性能バランスをより有効に得ることができる。そのため、低トルク即ち低消費電力で、信頼性が高く、長寿命な流体軸受装置を実現できる。
流体軸受装置に充填される潤滑剤8は、あらかじめ、最小ラジアル半径隙間の寸法以下の孔径のフィルターで加圧もしくは減圧濾過を行い、異物除去を行うことが望ましい。これにより、軸受ロックの発生を防止することができる。
流体軸受装置に充填される潤滑剤8は、あらかじめ、最小ラジアル半径隙間の寸法以下の孔径のフィルターで加圧もしくは減圧濾過を行い、異物除去を行うことが望ましい。これにより、軸受ロックの発生を防止することができる。
以下、本発明のスピンドルモータ及び磁気ディスク装置について、さらに詳細に説明する。なお、本発明に示す添加剤の配合量(重量%)は、基油及び添加剤を含めた潤滑剤の総重量に対する割合である。
実施例1〜9、比較例1及び比較例2
潤滑剤に、酸化防止剤としてフェノール基を2個含有するフェノール系である4,4'−メチレンビスー2,6−ジ−tert−ブチルフェノール0.5重量%を配合した。
いずれの潤滑剤もあらかじめ孔径2.5μm以下のフィルターで減圧濾過処理により異物除去を行った。
潤滑剤に、酸化防止剤としてフェノール基を2個含有するフェノール系である4,4'−メチレンビスー2,6−ジ−tert−ブチルフェノール0.5重量%を配合した。
いずれの潤滑剤もあらかじめ孔径2.5μm以下のフィルターで減圧濾過処理により異物除去を行った。
(実施例1)
ジエチレングリコールとn−オクタン酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸(モル比50:50)とから得られる総炭素数20〜22の3種混合物のジエステルを潤滑剤とした。
ジエチレングリコールとn−オクタン酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸(モル比50:50)とから得られる総炭素数20〜22の3種混合物のジエステルを潤滑剤とした。
(実施例2)
ジプロピレングリコールとn−オクタン酸とから得られる総炭素数22のジエステルを潤滑剤とした。
ジプロピレングリコールとn−オクタン酸とから得られる総炭素数22のジエステルを潤滑剤とした。
(実施例3)
ジプロピレングリコールとn−ノナン酸とから得られる総炭素数24のジエステルを潤滑剤とした。
ジプロピレングリコールとn−ノナン酸とから得られる総炭素数24のジエステルを潤滑剤とした。
(実施例4)
トリエチレングリコールと2−エチルヘキサン酸とから得られる総炭素数22のジエステルを潤滑剤とした。
トリエチレングリコールと2−エチルヘキサン酸とから得られる総炭素数22のジエステルを潤滑剤とした。
(実施例5)
トリプロピレングリコールとn−ヘプタン酸とから得られる総炭素数23のジエステルを潤滑剤とした。
トリプロピレングリコールとn−ヘプタン酸とから得られる総炭素数23のジエステルを潤滑剤とした。
(実施例6)
トリプロピレングリコールとn−オクタン酸とから得られる総炭素数25のジエステルを潤滑剤とした。
トリプロピレングリコールとn−オクタン酸とから得られる総炭素数25のジエステルを潤滑剤とした。
(実施例7)
エチレン・プロピレングリコールとn−ノナン酸とから得られる総炭素数23のジエステルを潤滑剤とした。
エチレン・プロピレングリコールとn−ノナン酸とから得られる総炭素数23のジエステルを潤滑剤とした。
(実施例8)
ジエチレン・プロピレングリコールとn−オクタン酸とから得られる総炭素数23のジエステルを潤滑剤とした。
ジエチレン・プロピレングリコールとn−オクタン酸とから得られる総炭素数23のジエステルを潤滑剤とした。
(実施例9)
ジエチレン・プロピレングリコールとn−ノナン酸とから得られる総炭素数25のジエステルを潤滑剤とした。
ジエチレン・プロピレングリコールとn−ノナン酸とから得られる総炭素数25のジエステルを潤滑剤とした。
(比較例1)
ジエステルであるセバシン酸ジオクチル(DOS)を潤滑剤とした。
ジエステルであるセバシン酸ジオクチル(DOS)を潤滑剤とした。
(比較例2)
ネオペンチルグリコールとn−ノナン酸とから得られるポリオールエステルを潤滑剤とした。
ネオペンチルグリコールとn−ノナン酸とから得られるポリオールエステルを潤滑剤とした。
軸2とスリーブ4のラジアル半径隙間10を2.5μm、軸2を直径3mmのマルテンサイト系ステンレス鋼、スリーブ4を表面がニッケルメッキされた銅合金とした流体軸受装置を備えたスピンドルモータに、上記の実施例1〜9、比較例1及び比較例2の潤滑剤を、それぞれ規定の同一量充填した。0℃及び20℃の環境下にて、回転数5400rpmのモータ消費電流を測定した。モータ消費電流値は、比較例1における20℃におけるモータ消費電流値を100とした場合の値で示した。
また、100℃で500時間連続回転後に、ハブ5及び磁気ディスク11等を取り外し、スリーブ4の開放端(図1において上側)と軸2の隙間すなわち潤滑剤8が充填された液面を上面から顕微鏡を用いて確認し、液面の有無を評価した。潤滑剤8の液面が確認できない時、蒸発量によって潤滑剤8の量が減少し、液面が軸受内部に入り込んでいるため、性能維持に必要な潤滑剤量が不十分であり信頼性不足と判断した。
さらに、前記スピンドルモータを−20℃と−40℃の環境下に各5時間放置後、−20℃と−40℃での回転起動の可否を評価した。
実施例1〜9、比較例1及び比較例2の測定結果を表1に示す。
さらに、前記スピンドルモータを−20℃と−40℃の環境下に各5時間放置後、−20℃と−40℃での回転起動の可否を評価した。
実施例1〜9、比較例1及び比較例2の測定結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜実施例9はいずれの場合においても、比較例1に比べ、モータ消費電流が低減されており、実施例9以外は、−40℃の極低温域でも、回転起動可能であった。一方、比較例2はモータ消費電流が、実施例1〜実施例9よりも低い場合があるが、−20℃及び−40℃では全く回転起動できなかった。また、液面が観察されず、蒸発量が大きかった。
さらに、比較例1及び比較例2の潤滑剤の体積抵抗率が7.5×1011Ω・cm以上であったのに対し、実施例1〜実施例9はいずれの場合も1.1×1010Ω・cm以下と良好な帯電防止効果が見られた。
なお、実施例1〜9、比較例1及び比較例2における潤滑剤の低温流動性を示す流動点とモータ回転起動可能温度とは、必ずしも一致していない。これは、JIS−K2269等で測定される流動点は、環境放置時間が定義されていない等、実際の固化温度と異なること等が要因に挙げられる。
(実施例10〜25)
表2の潤滑剤として用いる以外、実施例1と同様の構成を有した装置を作製した。これらについて同様に評価すると、実施例1〜8と同様の効果が得られる。
表2の潤滑剤として用いる以外、実施例1と同様の構成を有した装置を作製した。これらについて同様に評価すると、実施例1〜8と同様の効果が得られる。
以上のことから、本発明の流体軸受装置及びスピンドルモータは、装置の帯電を抑制すると共に、低消費電力で、信頼性が高く、小型化に適し、長寿命である。−40℃の低温でも回転起動可能である。
本発明に係る流体軸受装置及びそれを用いたスピンドルモータは、情報装置である、磁気ディスク装置(ハードディスク装置)、光ディスク装置、スキャナ装置、レーザビームプリンタ、ビデオレコーダ等のモータとして利用することができる。特に、2.5インチサイズ以下の小型の磁気ディスクを搭載するスピンドルモータ及び磁気ディスク装置において有効である。
1、1a、31 ベース
2、22 軸
2a、2b 動圧発生溝
3 スラストフランジ
3a 動圧発生溝
4、21 スリーブ
5、15 ハブ
6、16 ロータマグネット
7、17 ステータコイル
8 潤滑剤
9 スラストプレート
10 ラジアル半径隙間
11 磁気ディスク
12 スペーサ
13 クランプ
14 止ビス
21a キャップ
R、S 隙間
SS シール部
2、22 軸
2a、2b 動圧発生溝
3 スラストフランジ
3a 動圧発生溝
4、21 スリーブ
5、15 ハブ
6、16 ロータマグネット
7、17 ステータコイル
8 潤滑剤
9 スラストプレート
10 ラジアル半径隙間
11 磁気ディスク
12 スペーサ
13 クランプ
14 止ビス
21a キャップ
R、S 隙間
SS シール部
Claims (10)
- 軸構造体及びスリーブの対向する面の少なくとも一方に動圧発生溝を有し、前記軸構造体と前記スリーブとが対向する面の隙間に潤滑剤が介在する流体軸受装置において、
前記潤滑剤は、少なくとも1つのエーテル結合を持つ2価アルコールと1種以上の炭素数6〜10の飽和1価脂肪酸とから得られる総炭素数20〜28のジエステルを含有する流体軸受装置。 - 前記飽和1価脂肪酸は、2種以上の飽和1価脂肪酸である請求項1に記載の流体軸受装置。
- 前記2種以上の飽和1価脂肪酸は、少なくとも1種が直鎖型飽和1価脂肪酸である請求項2に記載の流体軸受装置。
- 前記2種以上の飽和1価脂肪酸は、炭素数が同一である請求項2又は3に記載の流体軸受装置。
- 前記飽和1価脂肪酸は、炭素数が7〜9である請求項1〜4のいずれか1つに記載の流体軸受装置。
- 前記2価アルコールは、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール及びトリプロピレングリコールからなる群の中から選ばれる1種以上又は少なくとも1分子のエチレングリコールと少なくとも1分子のプロピレングリコールとの縮合物である複合グリコールである請求項1〜5のいずれか1つに記載の流体軸受装置。
- 前記脂肪酸は、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、イソヘプタン酸、イソオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸からなる群から選択される2種以上である請求項1〜6のいずれか1つに記載の流体軸受装置。
- 前記潤滑剤は、80℃における粘度が2〜5mPa・sで、低温固化温度が−20℃以下で、20℃における体積抵抗率が1×1011Ω・cm以下である請求項1〜7のいずれか1つに記載の流体軸受装置。
- 請求項1〜8のいずれか1つに記載の流体軸受装置を備えたスピンドルモータ。
- 請求項9に記載のスピンドルモータを備えた情報装置。
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