JP2007120653A - 流体軸受装置、ならびにそれを用いたスピンドルモータ及び情報装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 耐熱性に優れ、蒸発損失の少ない動圧発生液体を用いることによって、信頼性が高く、かつ小型化に適した流体軸受装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 軸構造体及びスリーブの少なくとも一方に動圧発生機構を有し、前記軸構造体と前記スリーブとが対向する隙間に動圧発生液体が存在する流体軸受装置であって、
動圧発生液体の主成分が、150以上の粘度指数を有するか、35mN/m以上の表面張力を有するか及び/又は7.0×10-4K-1以下である0℃と80℃との間の平均体膨張率を有するイオン性液体が存在する流体軸受装置。
【選択図】 図1
【解決手段】 軸構造体及びスリーブの少なくとも一方に動圧発生機構を有し、前記軸構造体と前記スリーブとが対向する隙間に動圧発生液体が存在する流体軸受装置であって、
動圧発生液体の主成分が、150以上の粘度指数を有するか、35mN/m以上の表面張力を有するか及び/又は7.0×10-4K-1以下である0℃と80℃との間の平均体膨張率を有するイオン性液体が存在する流体軸受装置。
【選択図】 図1
Description
本発明は、動圧型の流体軸受装置、ならびにそれを用いたスピンドルモータ及び情報装置に関する。
流体軸受装置は、軸と、軸を受けるスリーブとからなり、両者の対向する隙間に動圧発生液体が介在する。軸の回転に伴い、軸又はスリーブに形成された動圧発生溝によって動圧発生液体がかき集められ、軸とスリーブとが対向する隙間に圧力を発生し、軸がスリーブに対して非接触で支持される。これにより、高速回転が実現され、回転時の騒音を軽減することができる。
これら流体軸受装置を搭載したスピンドルモータは、媒体の記録密度の向上に不可欠な回転精度、さらに耐衝撃性や静粛性に優れている。よって、磁気ディスク装置に代表される情報機器用及び音響・映像機器用に用いられるモータの主流となってきている。
近年、磁気ディスク装置の小型化、高速化が進み、その主要部品であるスピンドルモータも、小型化、高速化が求められている。
一般的な流体軸受装置において、軸とスリーブとが対向する隙間に動圧を発生させるための流体として、空気及び潤滑油などの液体が用いられている。しかし、空気は粘性が低く、隙間に圧力を発生させるためには非常に狭い隙間や広い対向面積を必要とし、かつ、それを実現する高い加工精度が求められる。その結果、製造コストが増加する。潤滑油等の液体(以下、「動圧発生液体」と称する。)を用いる場合、流体軸受装置のトルク(回転力)、すなわち消費電力を低減するために低粘度な液体が理想とされる一方で、連続使用による発熱に伴う蒸発損失の低減が求められている。
従来、セバシン酸ジオクチル(DOS)、アゼライン酸ジオクチル(DOZ)、アジピン酸ジオクチル(DOA)等のエステルを動圧発生液体として用いた流体軸受装置が提案された。また、ネオペンチルグリコールのカプリル酸とカプリン酸の混合エステルを動圧発生液体として用いた流体軸受装置(例えば、特許文献1)、ネオペンチルグリコールと炭素数6〜12の一価脂肪酸及び/又はその誘導体とから得られるエステルを動圧発生液体として用いた流体軸受装置(例えば、特許文献2)、β位又はβ,β’位にアルキル側鎖を有するジオール成分から誘導されるポリオールエステルを動圧発生液体として用いた流体軸受装置(例えば、特許文献3)等が提案されている。
また、動圧発生液体として、導電性が確保され、蒸気圧がほぼゼロのイオン性液体を用いることによって、添加剤が不要で、動圧発生液体の蒸発を防止することができる流体軸受装置(例えば、特許文献4)が提案されている。
特開2000−336383号公報
特開2001−316687号公報
特開2002−195252号公報
特開2005−147394号公報
しかし、これら従来のエステル系の動圧発生液体は、低粘度でトルク低減が可能である一方、その分子構造上の特徴から耐熱性が低く(蒸気圧が高く)、高温になるほど蒸発量が増大する。そのため、高温環境下での連続使用においては、軸受の回転に必要な動圧発生液体量を確保できなくなる。
また、動圧発生液体の蒸発量を予め考慮して、必要以上の余分な動圧発生液体を充填する必要があり、それに伴って、余分な動圧発生液体を充填するための空間や部位を必要とし、流体軸受装置の小型化やコスト削減が困難になる。
また、動圧発生液体の蒸発量を予め考慮して、必要以上の余分な動圧発生液体を充填する必要があり、それに伴って、余分な動圧発生液体を充填するための空間や部位を必要とし、流体軸受装置の小型化やコスト削減が困難になる。
さらに、イオン性液体については、従来例ではその適用の可能性が示唆されただけである。そのため、粘度等をはじめとして、動圧発生液体で求められるような特性をそのまますべて満たしているとは言いがたく、実際に利用できるイオン性液体を見出すには至っていないのが現状である。
本発明の発明者らは、流体軸受装置において、携帯機器用途等ではさらなる耐衝撃性の向上、車載機器用途では極低温から高温まで広い使用温度域でも電流などの性能変化が小さいことなど、用途に応じた種々の特性が求められていることを考慮して、これらの特性の多様化及び向上等をさらに図るべく鋭意研究を行った結果、種々のパラメータのなかから、その種類にかかわらず、表面張力が大きく、粘度の温度変化率が小さな特性等が重要であることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明の流体軸受装置は、軸構造体及びスリーブの少なくとも一方に動圧発生機構を有し、前記軸構造体と前記スリーブとが対向する隙間に動圧発生液体が存在する流体軸受装置であって、動圧発生液体の主成分が、150以上の粘度指数を有するか、35mN/m以上の表面張力を有するか及び/又は7.0×10-4K-1以下である0℃と80℃との間の平均体膨張率を有することを特徴とする。
また、本発明は、上述した装置を搭載したスピンドルモータ及び該スピンドルモータを搭載した情報装置を提供する。
また、本発明は、上述した装置を搭載したスピンドルモータ及び該スピンドルモータを搭載した情報装置を提供する。
本発明によれば、耐熱性に優れ(特に、高温環境下においても)蒸発損失の少ない動圧発生液体を用いることによって、高信頼性及び高性能で、かつ小型化に適した長寿命な流体軸受装置、スピンドルモータ及び情報装置を得ることができる。しかも、動圧発生液体の蒸発量を低減させることにより、さらに、衝撃時でも軸受装置からもれにくい特性を選択することにより、装置1台当たりの動圧発生液体の充填量を低減し、かつ、余分な動圧発生液体を充填するための部位や空間を不要とし、低コスト化及び小型化に適した流体軸受装置の実現が可能となる。
以下、本発明の実施をするための最良の形態を具体的に示した実施の形態について、図面とともに記載する。
《実施の形態1》
本発明の実施の形態1について、図2を用いて説明する。図2は、実施の形態1における軸固定式の流体軸受装置の主要部分の断面図である。
図2において、軸2は、その外周面に、ヘリングボーン形状のラジアル動圧発生溝2a、2bが形成されている。軸2は、一端がスラストフランジ3に固定され、他端がベース1aに圧入固定されている。軸2及びスラストフランジ3は、軸部を構成する。軸部及びベース1aは、固定部を構成する。
本発明の実施の形態1について、図2を用いて説明する。図2は、実施の形態1における軸固定式の流体軸受装置の主要部分の断面図である。
図2において、軸2は、その外周面に、ヘリングボーン形状のラジアル動圧発生溝2a、2bが形成されている。軸2は、一端がスラストフランジ3に固定され、他端がベース1aに圧入固定されている。軸2及びスラストフランジ3は、軸部を構成する。軸部及びベース1aは、固定部を構成する。
一方、スリーブ4は、軸部を受ける軸受孔を有する。スリーブ4の一端にはスラストプレート9が取り付けられている。スリーブ4の軸受孔には、スラストプレート9とスラストフランジ3とが対向するように軸部が挿入される。スリーブ4及びスラストプレート9は回転部を構成する。また、スラストフランジ3のスラストプレート9との対向面には、スパイラル形状のスラスト動圧発生溝3aが形成されている。軸受孔と軸部の隙間には、動圧発生液体8として後述するイオン性液体が介在する。回転部及び固定部によってモータ駆動部が形成される。
回転部の回転に伴い、動圧発生溝2a、2bに動圧発生液体8がかき集められ、軸2とスリーブ4との間のラジアル半径隙間10においてラジアル方向にポンピング圧力が発生する。同様に、回転により、動圧発生溝3aに動圧発生液体8がかき集められ、スラストフランジ3とスラストプレート9との間でスラスト方向にポンピング圧力が発生する。これにより、回転部は、固定部に対して上方に浮上して非接触で回転支持される。
なお、モータの回転数としては、一般に、4200rpm、5400rpm、7200rpm、10000rpm、15000rpm等が用いられる。
軸2の材質としては、ステンレス鋼が最適である。ステンレス鋼は、他の金属と比べ、高硬度で、摩耗発生量も抑制できるため、有効である。より好ましくは、マルテンサイト系ステンレス鋼である。
なお、モータの回転数としては、一般に、4200rpm、5400rpm、7200rpm、10000rpm、15000rpm等が用いられる。
軸2の材質としては、ステンレス鋼が最適である。ステンレス鋼は、他の金属と比べ、高硬度で、摩耗発生量も抑制できるため、有効である。より好ましくは、マルテンサイト系ステンレス鋼である。
スリーブ4には、銅合金、鉄合金、ステンレス鋼、セラミックス、樹脂等の材料を使用することが好ましい。さらに、より耐摩耗性及び加工性が高く、かつ、低コストである、銅合金、鉄合金、ステンレス鋼がより好ましい。また、コスト面から焼結材料でもよく、動圧発生液体を焼結材料に含浸させる場合でも同様の効果が得られる。軸材料及び/またはスリーブ材料の一部表面または全表面に、メッキ法、物理蒸着法、化学蒸着法、拡散被膜法等によって表面改質を行ってもよい。
なお、上述の説明では、ラジアル動圧発生溝は、軸2の外周面に形成したが、スリーブ4の軸受孔面(内周面)、あるいは軸2の外周面及びスリーブ4の軸受孔面の両方に形成してもよい。つまり、ラジアル動圧発生機構は、軸又はスリーブの少なくとも一方に有していればよい。また、スラストフランジ3側面とスリーブ4との間でラジアル動圧発生機構を有していてもよい。動圧発生機構としては、例えば、溝、突起、段差、傾斜面等種々の形状のものが挙げられる。また、ラジアル動圧発生溝は、ヘリングボーン形状及びスパイラル形状等、種々の形状を採用することができる。
また、スラスト動圧発生溝は、スラストフランジ3のスラストプレート9との対向面のみ、あるいはスラストプレート9のスラストフランジ3との対向面のみ、スラストフランジ3のスラストプレート9との対向面の裏面のみ、もしくは前記3箇所のうちの2箇所以上に形成してもよい。
なお、スラスト動圧発生溝以外に、上述したような動圧を発生する機構であれば、どのような機構のものであってもよい。
本実施の形態において軸部を片端固定としたが、これに限らず、両端固定の場合、又はスリーブの軸受孔を両端開放した場合でも同様の効果が得られる。
なお、スラスト動圧発生溝以外に、上述したような動圧を発生する機構であれば、どのような機構のものであってもよい。
本実施の形態において軸部を片端固定としたが、これに限らず、両端固定の場合、又はスリーブの軸受孔を両端開放した場合でも同様の効果が得られる。
《実施の形態2》
本発明の実施の形態2について、図1を用いて説明する。 図1は、実施の形態2における軸回転式の流体軸受装置を有するスピンドルモータを搭載した磁気ディスク装置の主要部分の断面図である。本実施の形態においては、流体軸受装置を軸固定から軸回転方式にした点及びスラスト動圧発生溝をヘリングボーン形状にした点において、図2における実施の形態1の流体軸受装置とは異なる。それ以外の点においては、実施の形態1と同様の構成をなし、同一符号を付した要素についての詳細な説明は省略する。
本発明の実施の形態2について、図1を用いて説明する。 図1は、実施の形態2における軸回転式の流体軸受装置を有するスピンドルモータを搭載した磁気ディスク装置の主要部分の断面図である。本実施の形態においては、流体軸受装置を軸固定から軸回転方式にした点及びスラスト動圧発生溝をヘリングボーン形状にした点において、図2における実施の形態1の流体軸受装置とは異なる。それ以外の点においては、実施の形態1と同様の構成をなし、同一符号を付した要素についての詳細な説明は省略する。
図1において、軸2は、外周面にヘリングボーン形状のラジアル動圧発生溝2a、2bを形成し、一端をスラストフランジ3に固定し、他端を磁気ディスクを取り付けるためのハブ5に圧入する。軸2及びスラストフランジ3は軸部を形成する。ハブ5の内周面にはロータマグネット6が固定される。軸部(軸2及びスラストフランジ3)、ハブ5、ロータマグネット6は、回転部を構成する。なお、本発明では、軸2のみで軸構造体を構成してもよいし、任意にスラストフランジ3(図1及び図2)及びハブ5の一部(図3)又は全部とが軸構造体を構成してもよい。
一方、スリーブ4は、ベース1に圧入され、軸部を受ける軸受孔を有する。スリーブ4の一端にはスラストプレート9が取り付けられている。スリーブ4の軸受孔には、スラストプレート9とスラストフランジ3とが対向するように軸部が挿入される。ベース1に形成された壁にはステータコイル7が取り付けられる。ベース1、スリーブ4、スラストプレート9、及びステータコイル7は、固定部を形成する。スラストフランジ3のスラストプレート9との対向面には、へリングボーン形状のスラスト動圧発生溝3aが形成されている。軸受孔と軸部の隙間には動圧発生液体8が充填され軸受装置が構成される。回転部及び固定部は、モータ駆動部を構成する。
このモータ駆動部により、回転部が回転駆動する動作について説明する。
まず、ステータコイル7に通電されると回転磁界が発生し、ステータコイル7と対向して取り付けられたロータマグネット6が回転力を受け、ハブ5、軸2及びスラストフランジ3とともに回転を始める。回転により、ヘリングボーン形状の動圧発生溝2a、2b及び3aは動圧発生液体8をかき集め、ラジアル方向、スラスト方向ともに(軸2とスリーブ4との間、及びスラストフランジ3とスラストプレート9との間に)ポンピング圧力を発生する。これにより回転部は固定部に対して上方に浮上して非接触で回転支持され、磁気ディスク上のデータの記録再生を可能とする。
まず、ステータコイル7に通電されると回転磁界が発生し、ステータコイル7と対向して取り付けられたロータマグネット6が回転力を受け、ハブ5、軸2及びスラストフランジ3とともに回転を始める。回転により、ヘリングボーン形状の動圧発生溝2a、2b及び3aは動圧発生液体8をかき集め、ラジアル方向、スラスト方向ともに(軸2とスリーブ4との間、及びスラストフランジ3とスラストプレート9との間に)ポンピング圧力を発生する。これにより回転部は固定部に対して上方に浮上して非接触で回転支持され、磁気ディスク上のデータの記録再生を可能とする。
なお、ハブ5に取り付けられる磁気ディスクは、材質が、限定されないが、ガラス製もしくはアルミニウム製で、小型機種の場合には、限定されないが、1枚以上(通常、1〜2枚)が装着される。中でも、本発明は、2.5インチサイズ以下の小型の磁気ディスクを搭載するスピンドルモータ及び磁気ディスク装置において有効である。
《実施の形態3》
図3は、実施の形態3の軸回転式の流体軸受け装置を有するスピンドルモータを搭載した磁気ディスク装置の主要部分の断面図である。
この磁気ディスク装置において、ベース11の中央には、軸12を受ける軸受孔を有するスリーブ21が圧入されており、ベース11に形成された壁にはステータコイル17が取り付けられている。スリーブ21の軸受孔には、一端側から軸12が挿入されており、他端がキャップ21aによって閉塞されている。軸12には、外周面にヘリングボーン形状のラジアル動圧発生溝(図示せず)が形成されており、その一端がハブ15に圧入されており、他端はキャップ21aに対向している。軸12の外周面(動圧面)は、スリーブ21の内周面(動圧面)に対して半径方向に隙間Rを介して対向しており、その隙間Rに動圧発生液体8が満たされている。ハブ15の内周面にはロータマグネット16が固定されており、このハブ15と軸12とが軸構造体を構成する。
図3は、実施の形態3の軸回転式の流体軸受け装置を有するスピンドルモータを搭載した磁気ディスク装置の主要部分の断面図である。
この磁気ディスク装置において、ベース11の中央には、軸12を受ける軸受孔を有するスリーブ21が圧入されており、ベース11に形成された壁にはステータコイル17が取り付けられている。スリーブ21の軸受孔には、一端側から軸12が挿入されており、他端がキャップ21aによって閉塞されている。軸12には、外周面にヘリングボーン形状のラジアル動圧発生溝(図示せず)が形成されており、その一端がハブ15に圧入されており、他端はキャップ21aに対向している。軸12の外周面(動圧面)は、スリーブ21の内周面(動圧面)に対して半径方向に隙間Rを介して対向しており、その隙間Rに動圧発生液体8が満たされている。ハブ15の内周面にはロータマグネット16が固定されており、このハブ15と軸12とが軸構造体を構成する。
また、スリーブ21の上端面(動圧面)と、ハブ15の内部側における下端面(動圧面)とは、軸方向に隙間Sを介して対向するように配置されており、これら面の少なくとも一方側には、スパイラル形状のスラスト動圧発生溝(図示省略)が形成されている。その隙間Sにも動圧発生液体8が満たされており、上述した隙間Rから、隙間Sに至るまで、実質的に連続して途切れなく充填されている。
軸12及びハブ15が回転する際には、上述したスラスト動圧発生溝の作用によって動圧発生液体8に動圧力を生じる。その動圧力によって、軸12及びハブ15は、スラスト方向に浮上して、非接触状態で軸支持される。
スリーブ21の外周側には、シール部SSが形成されている。シール部SSの間隙は、スリーブ21の半径方向外方で隙間Sに接続しており、下方向に向かって拡大する構成となっている。これにより、シール部SSは動圧発生液体8の外部への流出を防止している。
動圧発生液体8は、イオン性液体を主成分として含有する。
通常、イオン性液体(ionic liquids)は、molten salts及びfused saltsとも呼ばれ、陽イオン及び陰イオンからなり、常温(例えば、室温、20℃〜23℃程度)で液体状の塩であり、陽イオン及び陰イオンがイオン結合により強く結びついているものであればよい。
本発明で用いるイオン性液体は、150以上の粘度指数を有するか、35mN/m以上の表面張力を有するか、7.0×10-4K-1以下である0℃と80℃との間の平均体膨張率を有するか、あるいはこれらの2つ又は全てを備えているものであることが適している。
通常、イオン性液体(ionic liquids)は、molten salts及びfused saltsとも呼ばれ、陽イオン及び陰イオンからなり、常温(例えば、室温、20℃〜23℃程度)で液体状の塩であり、陽イオン及び陰イオンがイオン結合により強く結びついているものであればよい。
本発明で用いるイオン性液体は、150以上の粘度指数を有するか、35mN/m以上の表面張力を有するか、7.0×10-4K-1以下である0℃と80℃との間の平均体膨張率を有するか、あるいはこれらの2つ又は全てを備えているものであることが適している。
イオン性液体は、粘度指数が大きいものが好ましい。粘度指数は、粘度の温度依存性を表わすものであり、例えば、JIS K2283に従って算出される値である。粘度指数は、150以上であるものが好ましく、170以上、180以上、200以上、220以上、さらに250以上がより好ましい。粘度指数が大きくなると、低温と高温との間の粘度差が小さくなり、これによって高温で剛性を維持することができ、低温時の電流の低減を実現することができる。また、粘度指数の大きなイオン性液体を用いることにより、低温と高温との間の粘度差を最小限に止めることができるため、例えば、ステンレスによる軸を用いる場合でも、銅系のスリーブ(ステンレスと線膨張係数が2倍程度異なる)と組み合わせて用いることが容易となる。そのため銅系材料の快削性によって、スリーブの加工精度を向上させることができ、加工バイトの寿命を長くすることができる。
イオン性液体は、表面張力が大きいものが好ましい。例えば、32mN/m以上、35mN/m以上、40mN/m以上、45mN/m以上、50mN/m以上、さらに55mN/m以上がより好ましい。これにより、モーター設計において、テーパーシール角度が大きくてもシール効果を十分に発揮することができ、イオン性液体の液面が見やすいために、液面管理を容易に行うことが可能になる。さらに、ラビリンスの構成を省略するか、小さくするか、簡素化することができる。なお、ここでいう表面張力は、20℃での測定値であり、その他はJIS K2241に従って測定される値である。
さらに、イオン性液体は、体積変化率及び/又は線膨張係数及び/又は体膨張率が小さいことが好ましい。また、蒸発量が小さいことが好ましい。平均体膨張率は以下の式により算出される値である。
(式中、αmは平均体膨張率(1/K)、t1及びt2は温度1及び温度2、v0は0℃における体積、v1及びv2は温度1及び温度2における体積である。)
平均体膨張率は、例えば、0℃から80℃の範囲で測定した場合、7.0×10-4K-1以下、さらに、6.8×10-4K-1以下、6.6×10-4K-1以下、6.5×10-4K-1以下、6.3×10-4K-1以下、6.0×10-4K-1以下、5.5×10-4K-1以下が好ましい。これにより、動圧発生液体溜めを小さくすることができるために、ラジアル軸長を大きくすることができるか、あるいはより小型化の流体軸受装置を実現することができる。
平均体膨張率は、例えば、0℃から80℃の範囲で測定した場合、7.0×10-4K-1以下、さらに、6.8×10-4K-1以下、6.6×10-4K-1以下、6.5×10-4K-1以下、6.3×10-4K-1以下、6.0×10-4K-1以下、5.5×10-4K-1以下が好ましい。これにより、動圧発生液体溜めを小さくすることができるために、ラジアル軸長を大きくすることができるか、あるいはより小型化の流体軸受装置を実現することができる。
イオン性液体を構成する陽イオンとしては、イミダゾリウム塩系、ピリジニウム塩系、アンモニウム塩系(例えば、脂環式(ピペリジニウム塩系)、脂肪族等)、ホスホニウム塩系からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。陰イオンとしては、ハロゲン化物系、硝酸系、含硫黄系、脂肪酸系、シアノ系、パーフルオロ系からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
例えば、イミダゾリウム塩系と含硫黄系との組み合わせ、イミダゾリウム塩系とシアノ系との組み合わせ、イミダゾリウム塩系とパーフルオロ系との組み合わせ、ピリジニウム塩系と含硫黄系との組み合わせ、ピリジニウム塩系とシアノ系との組み合わせ、ピリジニウム塩系とパーフルオロ系との組み合わせ、アンモニウム塩系と含硫黄系との組み合わせ、アンモニウム塩系とシアノ系との組み合わせ、アンモニウム塩系とパーフルオロ系との組み合わせが挙げられる。
例えば、イミダゾリウム塩系と含硫黄系との組み合わせ、イミダゾリウム塩系とシアノ系との組み合わせ、イミダゾリウム塩系とパーフルオロ系との組み合わせ、ピリジニウム塩系と含硫黄系との組み合わせ、ピリジニウム塩系とシアノ系との組み合わせ、ピリジニウム塩系とパーフルオロ系との組み合わせ、アンモニウム塩系と含硫黄系との組み合わせ、アンモニウム塩系とシアノ系との組み合わせ、アンモニウム塩系とパーフルオロ系との組み合わせが挙げられる。
具体的には、イオン性液体としては、以下のものが挙げられる。
(式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又はC1−14のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソブチル、nブチル、ペンチル、テトラデシル等)、Xは、Cl、Br、BF4、PF6、NO3、ハライド等の無機イオン、HSCN、CF3SO3、CF3(CF2)3SO3、CF3(CF2)7SO3、(CF3SO2)2N、(C2F5SO2)2N、p−CH3C6H4SO2、CH3SO3、C8H17OSO3、CH3OSO3、CH3O(C2H4O)2SO3、[(CH3)3CCH2CH(CH3)CH2]2P(O)O、CH3(CH2)8CO2、N(CN)2等の有機イオン等が挙げられる。
なお、陽イオン及び陰イオンは、必ずしもそれぞれ1種から構成されているものでなくてもよく、2種以上が組み合わせられていてもよい。
なお、陽イオン及び陰イオンは、必ずしもそれぞれ1種から構成されているものでなくてもよく、2種以上が組み合わせられていてもよい。
イオン性液体は、少なくとも使用温度において液体であることが好ましい。使用温度とは、流体軸受装置の組み立て時又は実際に流体軸受装置が使用される温度である。
イオン性液体は、不揮発性及び耐熱性に優れており、これを用いることによって、高温環境下でも蒸発損失が少なく、長期の使用においても軸受の回転に必要な動圧発生液体量を維持することができる。
イオン性液体は、不揮発性及び耐熱性に優れており、これを用いることによって、高温環境下でも蒸発損失が少なく、長期の使用においても軸受の回転に必要な動圧発生液体量を維持することができる。
イオン性液体は、融点が0℃以下のものが好ましい。流体軸受装置が低温環境下で使用される場合に、イオン性液体の融点及び凝固点が室温付近では、軸受のトルクが急激に増加し、あるいは、軸受ロックが発生する可能性が高くなり、十分な信頼性が得られない。しかし、本発明の流体軸受装置は、イオン性液体の融点が低く、低温環境下においても、動作不良を起こさず、使用可能な温度範囲が広がる。特に、融点が、0〜−60℃程度であるものがより好ましい。あるいは、別の観点から、流動点が15℃以下、0℃以下が好ましくは、さらに−10℃以下が好ましい。なお、流動点は、JIS K2269に従って測定される値である。
また、イオン性液体は、40℃での動粘度が小さいものが好ましい。例えば、50mm2/s以下、45mm2/s以下、40mm2/s以下、25mm2/s以下、23mm2/s以下、21mm2/s以下、さらに18mm2/s以下がより好ましく、5mm2/s以上がさらに好ましい。なお、動粘度は、JIS K2283に従って測定される値である。
また、イオン性液体は、分子鎖が短いほうが好ましい。これにより、剪断に対して耐性があり、動圧発生液体の劣化を防止することができる。さらに、油膜強度が強いもの、つまり、極性が高く、シャフト又は軸等への吸着力が強いものが好ましい。
さらに、イオン性液体では気泡が発生しにくいとともに、一旦発生した気泡が液体中に留まりにくい特性がある。この特性によって、組み立て作業中などの落下による気泡の発生を防止することができ、使用時の信頼性を向上させることができる。振動、衝撃に対する耐性を得ることができるため、カーナビゲーションシステム、携帯装置などに有用に使用することができる。減圧時の気泡の発生をも防止することができるため、航空機での輸送及び使用等においても、信頼性を向上させることができる。
また、イオン性液体は、分子鎖が短いほうが好ましい。これにより、剪断に対して耐性があり、動圧発生液体の劣化を防止することができる。さらに、油膜強度が強いもの、つまり、極性が高く、シャフト又は軸等への吸着力が強いものが好ましい。
さらに、イオン性液体では気泡が発生しにくいとともに、一旦発生した気泡が液体中に留まりにくい特性がある。この特性によって、組み立て作業中などの落下による気泡の発生を防止することができ、使用時の信頼性を向上させることができる。振動、衝撃に対する耐性を得ることができるため、カーナビゲーションシステム、携帯装置などに有用に使用することができる。減圧時の気泡の発生をも防止することができるため、航空機での輸送及び使用等においても、信頼性を向上させることができる。
また、イオン性液体は、20℃において体積抵抗率が109Ωcm以下、108Ωcm以下、107Ωcm以下、さらに106Ωcm以下であるものが好ましい。流体軸受装置は、軸側又はスリーブ側の回転に伴い、空気等との摩擦によって静電気が発生するため、機器の動作不良の原因となることがあった。しかし、体積抵抗率が109Ωcm以下である場合には、回転部で発生した静電気電荷はイオン性液体を介して、ある程度軸受装置の固定側に流れる。このため、アースブラシ等の機械的接触による静電気防止対策の必要がない。本発明の流体軸受装置は、静電気を軽減するための部材を設けたり、添加剤を添加する必要がなくなる。
イオン性液体としては、例えば、N,N−ジエチル−N−メチル(2−メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩が、低粘度であり(40℃において20.5mm2/s)、好ましい。その結果、従来と比較してより耐熱性に優れ、蒸発損失の少ない信頼性の高い流体軸受装置が得られる。
融点が0℃以下である、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウム テトラフルオロボレート塩、N,N−ジエチル−N−メチル(2−メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート塩、1−ブチル−ピリジウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩、及び、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウム トリフルオロメタンスルホネート塩のいずれかを用いることができる。これらは融点が低いため、低温環境下においても粘度が急激に増加することがなく、軸受のトルクの急激な増加や軸受ロックを起こす可能性が低い。
融点が0℃以下である、1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウム ブロマイド塩、1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウム クロライド塩、1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェイト塩、1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウム テトラフルオロボレート塩、1−オクチル−3−メチル−イミダゾリウム テトラフルオロボレート塩、1−オクチル−3−メチル−イミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェイト塩、1−デシル−3−メチル−イミダゾリウム ブロマイド塩、1−デシル−3−メチル−イミダゾリウム クロライド塩、1−ブチル−ピリジウム テトラフルオロボレート塩、及び、1−ヘキシル−ピリジウム テトラフルオロボレート塩のいずれかを用いることもできる。なお、これらは粘度が高いが、適正な軸受設計を行うことにより、有用である。
1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェイト塩、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウム メチルソルフェイト塩、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネート塩、1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウム トリフルオロメタンスルホネート塩、及び、1−ヘキシル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム テトラフルオロボレート塩を用いてもよい。これらは、融点が室温(20℃〜23℃)程度であるから、室温以上での使用を意図する流体軸受装置に用いることができる。
1−ブチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム トリフルオロメチルスルホネート塩、1−ブチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム ブロマイド塩、1−ブチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム クロライド塩、1−エチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム ブロマイド塩、及び、1−エチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム クロライド塩等を用いてもよい。これらは融点が室温(20℃〜23℃)以上であるため、流体軸受装置の種類、使用条件等に応じて用いることができる。
なお、イオン性液体は精製度等により融点や粘度等の物理性能が変動するため、上記は一定条件下における一例としての区分であり、各物質の用途を限定したり、請求の範囲を限定したりするものではない。
イオン性液体は、純度が高いものが好ましい。例えば、90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である。これにより、安定性が増し、上述した所望の物性を得るのに有利となる。
本発明におけるイオン性液体は、上述した特性の少なくとも1つ備えていればよいが、2つ以上を備えていることが好ましい。
イオン性液体は、純度が高いものが好ましい。例えば、90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である。これにより、安定性が増し、上述した所望の物性を得るのに有利となる。
本発明におけるイオン性液体は、上述した特性の少なくとも1つ備えていればよいが、2つ以上を備えていることが好ましい。
動圧発生液体には、これらに加え、添加剤を配合できる。添加剤は、動圧発生液体の性能のさらなる向上、補完の目的で、公知の化合物を選択することができる。具体的には、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性剤、油性剤、極圧剤、摩擦調整剤、摩耗防止剤、流動点降下剤、消泡剤、導電性付与剤、清浄分散剤等の1種もしくは2種以上を配合することができる。主成分のイオン性液体が極性物質であり、極性を有する添加剤は比較的溶解性があり、有効である。添加剤は、劣化に伴いガス発生や変質を引き起こし、軸受及び装置の性能を低下させる場合があるため、配合総量を必要最小限にとどめるべきである。
流体軸受装置に充填される動圧発生液体は、あらかじめ最小ラジアル半径隙間の寸法以下の孔径のフィルターでろ過(例えば、加圧又は減圧濾過)を行い、異物除去を行うことが望ましい。異物が混入すると、軸受ロックが発生する可能性が高くなるからである。
以下、本発明の流体軸受用動圧発生液体について、さらに詳細に説明する。
比較例1、2においては、酸化防止剤としてフェノール基を2個含有するフェノール系である4,4’−メチレンビス−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール0.5重量%とテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.5重量%を配合した。実施例1〜4において、添加剤は使用していない。なお、本発明に示す添加剤の配合量すなわち重量%は、基油及び添加剤を含めた動圧発生液体の総重量に対する割合である。
また、いずれの動圧発生液体もあらかじめ孔径2.5μm以下のフィルターで減圧濾過処理を行い、異物除去を行っている。
比較例1、2においては、酸化防止剤としてフェノール基を2個含有するフェノール系である4,4’−メチレンビス−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール0.5重量%とテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.5重量%を配合した。実施例1〜4において、添加剤は使用していない。なお、本発明に示す添加剤の配合量すなわち重量%は、基油及び添加剤を含めた動圧発生液体の総重量に対する割合である。
また、いずれの動圧発生液体もあらかじめ孔径2.5μm以下のフィルターで減圧濾過処理を行い、異物除去を行っている。
(実施例1)
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート塩 (EMI・BF4) を動圧発生液体とした。
(実施例2)
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩 (EMI・TFSI) を動圧発生液体とした。
(実施例3)
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ジシアナミド塩 (EMI・DCA) を動圧発生液体とした。
(実施例4)
1-ヘキシル-3-エチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩 (HEI・TFSI) を動圧発生液体とした。
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート塩 (EMI・BF4) を動圧発生液体とした。
(実施例2)
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩 (EMI・TFSI) を動圧発生液体とした。
(実施例3)
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ジシアナミド塩 (EMI・DCA) を動圧発生液体とした。
(実施例4)
1-ヘキシル-3-エチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩 (HEI・TFSI) を動圧発生液体とした。
(比較例1)
ジエステルであるセバシン酸ジオクチル(DOS)を動圧発生液体とした。
(比較例2)
ポリオールエステルであるトリメチロールプロパン−トリ−カプリレート(TMP+C8酸)を動圧発生液体とした。
これら動圧発生液体の物性を表1に示す。
ジエステルであるセバシン酸ジオクチル(DOS)を動圧発生液体とした。
(比較例2)
ポリオールエステルであるトリメチロールプロパン−トリ−カプリレート(TMP+C8酸)を動圧発生液体とした。
これら動圧発生液体の物性を表1に示す。
実施例1〜4及び比較例1、2の動圧発生液体が規定の同一量充填され、軸2とスリーブ4のラジアル半径隙間10を5.0μm、軸2を直径3mmのマルテンサイト系ステンレス鋼、スリーブ4を銅合金とした流体軸受装置を備えたスピンドルモータを構成し、40℃の環境下にて、回転数5400rpmのモータ消費電流を測定した。なお、比較例1の40℃のモータ消費電流値を100として、各例のモータ消費電流値を示した。
また、120℃で最長1000時間の連続回転を行い、動圧発生液体8の蒸発に伴う液面低下による振動の発生の有無を確認した。さらに試験終了後に、ハブ5を取り外し、スリーブ4の開放端(図1において上側)と軸2の隙間すなわち動圧発生液体8が充填された液面を上面から顕微鏡を用いて確認し、液面の有無を評価した。動圧発生液体8の液面が確認できない時は、蒸発によって動圧発生液体8の量が減少し液面が軸受内部に入り込んでいて、性能維持に必要な動圧発生液体量が不十分であり信頼性不足と判断した。
実施例及び比較例の体積抵抗率は、東亜DKK株式会社製の超絶縁計SM−8213及び同社動圧発生液体電極SME−8330を用いて、20℃で5Vの電圧を印可することにより測定を行った。各測定結果を表2に示す。
表2から明らかなように、120℃での連続試験の結果、比較例1は、試験開始後240時間で軸受ロックが発生した。
また、比較例2は、試験開始後500時間において、軸受内の動圧発生液体が不足したことによる、1/2ホワールと呼ばれる40Hz〜44Hzの振動が確認された。さらに、試験開始後1000時間において、軸受擦れによると思われる異音が確認され、規定回転数を維持していなかった。
それに対して、実施例1〜4は、1000時間経過した時点でも軸受ロック、軸ブレ、又は異音は発生しなかった。
また、比較例2は、試験開始後500時間において、軸受内の動圧発生液体が不足したことによる、1/2ホワールと呼ばれる40Hz〜44Hzの振動が確認された。さらに、試験開始後1000時間において、軸受擦れによると思われる異音が確認され、規定回転数を維持していなかった。
それに対して、実施例1〜4は、1000時間経過した時点でも軸受ロック、軸ブレ、又は異音は発生しなかった。
顕微鏡による液面観察の結果、1000時間経過後において、実施例1〜4では液面が確認されたが、比較例1及び比較例2では液面が確認されなかった。
イオン性液体(実施例1〜4)の体積抵抗率の測定結果は、上記測定器の測定限界(1.054×107Ω)を下回ったため正確な値ではないが、実施例1〜4の動圧発生液体ではすべて1×107Ωcm以下であり、十分な導電性を有していると言える。
実施例1〜4は、比較例1、2に比べて40℃におけるモータ消費電流が大きい場合もあるが、1秒以内の回転数は規定回転数に達しており、実用上は問題ないと判断できる。
以上のことから、本発明の流体軸受装置及びスピンドルモータにおいて、動圧発生液体は耐熱性に優れ、蒸発損失が少ないことが確認できる。また、動圧発生液体が十分な導電性を有していることが確認できる。
本発明に係る流体軸受装置及びそれを用いたスピンドルモータは、情報装置である、磁気ディスク装置(ハードディスク装置)、光ディスク装置、スキャナ装置、レーザビームプリンタ、ビデオレコーダ等のモータとして利用することができる。特に、2.5インチサイズ以下の小型の磁気ディスクを搭載するスピンドルモータ及び磁気ディスク装置において有効である。さらに、本発明は、例えば、移動体に用いられる流体軸受装置としても有効に利用可能である。
S、R 隙間
SS シール部
1a、11 ベース
2、12 軸
2a、2b ラジアル動圧発生溝
3 スラストフランジ
3a スラスト動圧発生溝
4、21 スリーブ
5、15 ハブ
6、16 ロータマグネット
7、17 ステータコイル
8 動圧発生液体
9 スラストプレート
10 ラジアル半径隙間
21a キャップ
SS シール部
1a、11 ベース
2、12 軸
2a、2b ラジアル動圧発生溝
3 スラストフランジ
3a スラスト動圧発生溝
4、21 スリーブ
5、15 ハブ
6、16 ロータマグネット
7、17 ステータコイル
8 動圧発生液体
9 スラストプレート
10 ラジアル半径隙間
21a キャップ
Claims (9)
- 軸構造体及びスリーブの少なくとも一方に動圧発生機構を有し、前記軸構造体と前記スリーブとが対向する隙間に動圧発生液体が存在する流体軸受装置であって、
動圧発生液体の主成分が、150以上の粘度指数、35mN/m以上の表面張力、7.0×10-4K-1以下である0℃と80℃との間の平均体膨張率の少なくとも1つの物性を備えているイオン性液体であることを特徴とする流体軸受装置。 - イオン性液体は、40℃において動粘度が45mm2/s以下である請求項1に記載の流体軸受装置。
- イオン性液体は、20℃において体積抵抗率が109Ωcm以下である請求項1又は2に記載の流体軸受装置。
- イオン性液体は、少なくとも使用温度において液体である請求項1〜3のいずれか1つに記載の流体軸受装置。
- イオン性液体は、陽イオンとして、イミダゾリウム塩系、ピリジニウム塩系、アンモニウム塩系及びホスホニウム塩系からなる群から選択される少なくとも1種のイオン、陰イオンとして、ハロゲン化物系、硝酸系、含硫黄系、脂肪酸系、シアノ系、パーフルオロ系からなる群から選択される少なくとも1種のイオンにより構成される請求項1〜4のいずれか1つに記載の流体軸受装置。
- イオン性液体は、
で表わされる少なくとも1種の化合物である請求項1〜5のいずれか1つに記載の流体軸受装置。 - 動圧発生機構が、軸及びスリーブの少なくとも一方に形成された溝、突起、段差及び傾斜面から選択される請求項1〜6のいずれか1つに記載の流体軸受装置。
- 請求項1〜7のいずれか1つに記載の流体軸受装置を搭載したスピンドルモータ。
- 請求項8に記載のスピンドルモータを搭載した情報装置。
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---|---|---|---|
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US11/360,509 US7737095B2 (en) | 2004-08-30 | 2006-02-24 | Hydrodynamic bearing device, and spindle motor and information device using the same |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012162693A (ja) * | 2011-02-09 | 2012-08-30 | Neos Co Ltd | 含フッ素イオン液体型合成潤滑油 |
JP2014059014A (ja) * | 2012-09-18 | 2014-04-03 | Ntn Corp | 流体動圧軸受装置及びこれを備えるモータ |
US9087547B2 (en) | 2013-01-29 | 2015-07-21 | Samsung Electro-Mechanics Japan Advanced Technology Co., Ltd. | Disk drive device with a flourescent lubricant |
-
2005
- 2005-10-28 JP JP2005314680A patent/JP2007120653A/ja active Pending
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KR20150053922A (ko) * | 2012-09-18 | 2015-05-19 | 엔티엔 가부시키가이샤 | 유체 동압 베어링 장치 및 이것을 구비하는 모터 |
US9476449B2 (en) | 2012-09-18 | 2016-10-25 | Ntn Corporation | Fluid dynamic bearing device and motor with same |
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