JP2006105207A - 流体軸受装置、それを用いたスピンドルモータ、及びそれを用いたディスク駆動装置 - Google Patents

流体軸受装置、それを用いたスピンドルモータ、及びそれを用いたディスク駆動装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の流体軸受装置は、上記課題を鑑みてなされたものであり、耐熱性に優れ、蒸発損失の少ない動圧発生液体を用いることによって、信頼性が高く、かつ小型化に適した流体軸受装置を提供することを目的とする。
【解決手段】軸及びスリーブの少なくとも一方に動圧発生溝を有し、前記軸と前記スリーブとが対向する隙間に動圧発生液体が介在する流体軸受装置において、前記動圧発生液体の主成分がイオン性液体であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、動圧型の流体軸受装置、それを用いたスピンドルモータ、及びそれを用いたディスク駆動装置に関する。
流体軸受装置は、軸と、軸を受けるスリーブとからなり、両者の対向する隙間には、動圧を発生させるための流体が介在する。軸の回転に伴い、軸及びスリーブの少なくとも一方に形成された動圧発生溝によって流体がかき集められ、軸とスリーブが対向する隙間に圧力を発生し、軸がスリーブに対して非接触で支持される。これにより、高速回転を実現し、また回転時の騒音を軽減することを可能とするものである。
これら流体軸受装置を搭載したスピンドルモータは、媒体の記録密度の向上に不可欠な回転精度、さらに耐衝撃性や静粛性に優れているため、磁気ディスク装置に代表される情報機器用や音響・映像機器用に用いられるモータの主流となってきている。
近年、磁気ディスク装置の小型化、高速化が進み、その主要部品であるスピンドルモータも小型化、高速化が求められている。
一般的な流体軸受装置において、軸とスリーブとが対向する隙間に動圧を発生させるための流体として、空気、ならびに潤滑剤などの液体が用いられている。しかしながら、空気は粘性が低く、隙間に圧力を発生させるためには非常に狭い隙間や広い対向部位を必要とし、かつ、それを実現する高い加工精度が求められるため、製造コストが増加する。潤滑剤等の液体(以下、「動圧発生液体」と称する。)を用いる場合、流体軸受装置のトルク(回転力)すなわち消費電力を低減するために低粘度な液体が理想とされる一方で、連続使用による発熱に伴う蒸発損失の低減が求められている。
従来、動圧発生液体として、セバシン酸ジオクチル(DOS)、アゼライン酸ジオクチル(DOZ)及びアジピン酸ジオクチル(DOA)等のエステルを用いた流体軸受装置に加え、ネオペンチルグリコールのカプリル酸とカプリン酸の混合エステルを用いた流体軸受装置(例えば、特許文献1)、ネオペンチルグリコールと炭素数6〜12の一価脂肪酸及び/又はその誘導体とから得られるエステルを用いた流体軸受装置(例えば、特許文献2)、及びβ位又はβ,β’位にアルキル側鎖を有するジオール成分から誘導されるポリオールエステルを用いた流体軸受装置(例えば、特許文献3)等が提案されている。
特開2000−336383号公報 特開2001−316687号公報 特開2002−195252号公報
しかしながら、上記の従来の動圧発生液体は、炭化水素系の潤滑剤であり、低粘度でトルク低減が可能である一方、その分子構造上の特徴から耐熱性が低く(蒸気圧が高く)、高温になるほど蒸発量が増大する。そのため、高温環境下での連続使用においては、軸受の回転に必要な潤滑剤量を確保できなくなるという問題があった。
また、潤滑剤の蒸発量を予め考慮して、必要以上の余分な潤滑剤を充填する必要があり、かつ、それに伴って余分な潤滑剤を充填するための空間や部位を必要とし、流体軸受装置の小型化やコスト削減が困難になるという問題があった。
本発明の流体軸受装置は、上記課題を鑑みてなされたものであり、耐熱性に優れ、蒸発損失の少ない動圧発生液体を用いることによって、信頼性が高く、かつ小型化に適した流体軸受装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の流体軸受装置は、軸及びスリーブの少なくとも一方に動圧発生溝を有し、前記軸と前記スリーブとが対向する隙間に動圧発生液体が介在する流体軸受装置において、前記動圧発生液体の主成分がイオン性液体である。
イオン性液体は、正イオン及び負イオンからなる液体状の塩であり、正イオン及び負イオンがイオン結合により強く結びついているため、不揮発性及び耐熱性に優れている。本発明の流体軸受装置は、動圧発生液体としてイオン性液体を用いることによって、高温環境下でも蒸発損失が少なく、長期の使用においても軸受の回転に必要な動圧発生液体量を維持することができるため、信頼性が高く長寿命である。
また、予め蒸発量を考慮して余分な動圧発生液体を充填する必要が無いため、コスト低減が可能である。本発明の流体軸受装置は、低コストで、かつ、小型化に適している。
請求項2に記載の流体軸受装置は、前記イオン性液体は、少なくとも使用温度において液体である。
使用温度とは、流体軸受装置の組み立て時、もしくは実際に流体軸受装置が使用される温度である。通常、イオン性液体は「室温(20℃〜23℃程度)で液体である塩」と定義されている。しかしながら、イオン性液体の融点及び凝固点が室温付近では、流体軸受装置が低温環境下で使用される場合に、軸受のトルクが急激に増加し、あるいは、軸受ロックが発生する可能性が高くなり、十分な信頼性が得られない。本発明の流体軸受装置は、イオン性液体の融点が低く、低温環境下においても動作不良を起こさず、使用可能な温度範囲が広い。本発明によれば、信頼性の高い流体軸受装置を実現できる。
請求項3に記載の流体軸受装置は、前記イオン性液体が摂氏20℃において体積抵抗率が10Ωcm以下である。
流体軸受装置は、軸側又はスリーブ側の回転に伴い、空気等との摩擦によって静電気が発生するため、機器の動作不良の原因となることがあった。本発明の流体軸受装置は、動圧発生液体であるイオン性液体の体積抵抗率が10Ωcm以下であるため、回転部で発生した静電気電荷はイオン性液体を介して、ある程度軸受装置の固定側に流れる。このため、アースブラシ等の機械的接触による静電気防止対策の必要がない。本発明の流体軸受装置は、静電気を軽減するための部材を設けたり、添加剤を添加する必要がなく、低コストである。
請求項4に記載のスピンドルモータは、請求項1から請求項3のいずれかにおける流体軸受装置を備える。本発明の構成によると、低コストで、かつ、小型化に適した長寿命なスピンドルモータを実現できる。
請求項5に記載のディスク駆動装置は、請求項4に記載のスピンドルモータを備える。本発明の構成によると、低コストで、かつ、小型化に適した長寿命なディスク駆動装置を実現できる。
本発明にかかる流体軸受装置は、動圧発生液体としてイオン性液体を用いることにより、耐熱性に優れ、高温環境下においても蒸発損失が少なく、信頼性の高い長寿命な流体軸受装置を実現できる。
また、動圧発生液体の蒸発量を低減できるため、装置1台当りの動圧発生液体の充填量を低減し、かつ、余分な動圧発生液体を充填するための部位や空間を必要としないため、低コスト化及び小型化に適した流体軸受装置を実現できる。
以下、本発明の実施をするための最良の形態を具体的に示した実施の形態について、図面とともに記載する。
《実施の形態1》
本発明の実施の形態1について、図2を用いて説明する。図2は、実施の形態1における軸固定式の流体軸受装置の主要部分の断面図である。
図2において、軸2は、外周面にヘリングボーン形状のラジアル動圧発生溝2a、2bを形成する。軸2は、一端をスラストフランジ3に固定し、他端をベース1aに圧入固定する。軸2及びスラストフランジ3は、軸部を構成する。軸部及びベース1aは、固定部を構成する。
一方、スリーブ4は、軸部を受ける軸受孔を有する。スリーブ4の一端にはスラストプレート9が取り付けられている。スリーブ4の軸受孔には、スラストプレート9とスラストフランジ3とが対向するように軸部が挿入される。スリーブ4及びスラストプレート9は回転部を構成する。また、スラストフランジ3のスラストプレート9との対向面には、スパイラル形状のスラスト動圧発生溝3aが形成されている。軸受孔と軸部の隙間には動圧発生液体8が介在する。回転部及び固定部によってモータ駆動部が形成される。
回転部の回転に伴い、動圧発生溝2a、2bは動圧発生液体8をかき集め、軸2とスリーブ4との間のラジアル半径隙間10においてラジアル方向にポンピング圧力を発生する。同様に、回転により、動圧発生溝3aは動圧発生液体8をかき集め、スラストフランジ3とスラストプレート9との間でスラスト方向にポンピング圧力を発生する。これにより回転部は固定部に対して上方に浮上して非接触で回転支持される。
動圧発生液体8としては、イオン性液体である、N,N−ジエチル−N−メチル(2−メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩が、低粘度であり(40℃において20.5mm/s)、好ましい。その結果、従来と比較してより耐熱性に優れ、蒸発損失の少ない信頼性の高い流体軸受装置を提供する事が出来る。
また、動圧発生液体8として、融点が0℃以下である、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウム テトラフルオロボレート塩、N,N−ジエチル−N−メチル(2−メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート塩、1−ブチル−ピリジウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩、及び、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウム トリフルオロメタンスルホネート塩のいずれかを用いることができる。これらは融点が低いため、低温環境下においても粘度が急激に増加することがなく、軸受のトルクの急激な増加や軸受ロックを起こす可能性が低い。
また、動圧発生液体8として、融点が0℃以下である、1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウム ブロマイド塩、1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウム クロライド塩、1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェイト塩、1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウム テトラフルオロボレート塩、1−オクチル−3−メチル−イミダゾリウム テトラフルオロボレート塩、1−オクチル−3−メチル−イミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェイト塩、1−デシル−3−メチル−イミダゾリウム ブロマイド塩、1−デシル−3−メチル−イミダゾリウム クロライド塩、1−ブチル−ピリジウム テトラフルオロボレート塩、及び、1−ヘキシル−ピリジウム テトラフルオロボレート塩のいずれかを用いることもできるが、これらは粘度が高いため、適正な軸受設計を必要とする。
また、動圧発生液体8として、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェイト塩、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウム メチルソルフェイト塩、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネート塩、1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウム トリフルオロメタンスルホネート塩、及び、1−ヘキシル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム テトラフルオロボレート塩は、融点が室温(20℃〜23℃)程度であるから、室温以上での使用に限定された流体軸受装置に用いることができる。
また、他のイオン性液体として、1−ブチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム トリフルオロメチルスルホネート塩、1−ブチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム ブロマイド塩、1−ブチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム クロライド塩、1−エチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム ブロマイド塩、及び、1−エチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム クロライド塩等が考えられるが、これらは融点が室温(20℃〜23℃)以上であるから、一般的な流体軸受装置用の動圧発生液体としては好ましくない。
また、イオン性液体は精製度等により融点や粘度等の物理性能が変動するため、上記は一定条件下における一例としての区分であり、各物質の用途を限定したり、請求の範囲を限定したりするものではない。
また、動圧発生液体8には添加剤を配合できる。添加剤は、動圧発生液体の性能を向上、補完する目的で、公知の化合物を選択することができる。具体的には、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性剤、油性剤、極圧剤、摩擦調整剤、摩耗防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤、清浄分散剤等の1種もしくは2種以上を配合することができる。主成分のイオン性液体が極性物質であり極性を持つ添加剤は比較的溶解性があり有効な場合があるが、上記の全ての添加剤が有効であるとはいえない。また添加剤は、劣化に伴いガス発生や変質を引き起こし、軸受及び装置の性能を低下させるため、配合総量を必要最小限にとどめるべきである。
モータの回転数としては、一般に、4200rpm、5400rpm、7200rpm、10000rpm、15000rpm等が用いられる。
なお、流体軸受装置に充填される動圧発生液体8は、あらかじめ最小ラジアル半径隙間の寸法以下の孔径のフィルターで加圧もしくは減圧濾過を行い、異物除去を行うことが望ましい。異物が混入すると、上記のように軸受ロックが発生する可能性が高くなるからである。
軸2の材質としては、ステンレス鋼が好ましい。ステンレス鋼は、他の金属と比べ、高硬度で、摩耗発生量も抑制できるため有効である。より好ましくは、マルテンサイト系ステンレス鋼である。
なお、スリーブ4には、銅合金、鉄合金、ステンレス鋼、セラミックス、及び各種樹脂等の材料を用いうるが、より耐摩耗性及び加工性が高く、かつ、低コストである、銅合金、鉄合金、ステンレス鋼が好ましい。また、コスト面から焼結材料でもよく、動圧発生液体を焼結材料に含浸させる場合でも同様の効果が得られる。なお、軸材料及び/またはスリーブ材料の一部表面または全表面に、メッキ法、物理蒸着法、化学蒸着法、拡散被膜法等によって表面改質を行ってもよい。
なお、上記実施の形態においては、ラジアル動圧発生溝2a及び2bは、軸2の外周に形成したが、スリーブ4の軸受孔面に設けてもよく、あるいは軸2の外周面及びスリーブ4の軸受孔面の両方に形成しても良い。また、スラスト動圧発生溝3aは、スラストフランジ3のスラストプレート9との対向面のみ、あるいは、スラストプレート9のスラストフランジ3との対向面のみ、あるいは、スラストフランジ3のスラストプレート9との対向面の裏面のみ、もしくは前記3箇所のうちの2箇所以上に形成しても良い。
ラジアル及びスラスト動圧発生溝2a、2b及び3aは、ヘリングボーン形状、スパイラル形状のいずれの形状でも同様の効果が得られる。
本発明の実施の形態は、軸部を片端固定としたが、両端固定の場合、あるいは、スリーブの軸受孔を両端開放した場合でも同様の効果が得られる。
《実施の形態2》
本発明の実施の形態2について、図1を用いて説明する。 図1は、実施の形態2における軸回転式の流体軸受装置を有するスピンドルモータを搭載した磁気ディスク装置の主要部分の断面図である。本実施の形態においては、流体軸受装置を軸固定から軸回転方式にした点、及び、スラスト動圧発生溝をヘリングボーン形状にした点において図2における実施の形態1の流体軸受装置とは異なる。それ以外の点においては、実施の形態1と同様の構成をなし、同一符号を付した同一または均等な要素についての詳細な説明は省略する。
図1において、軸2は、外周面にヘリングボーン形状のラジアル動圧発生溝2a、2bを形成し、一端をスラストフランジ3に固定し、他端を磁気ディスク等を取り付ける為のハブ5に圧入する。軸2及びスラストフランジ3は軸部を形成する。ハブ5の内周面にはロータマグネット6が固定される。軸部(軸2及びスラストフランジ3)、ハブ5及びロータマグネット6は、回転部を構成する。
一方、スリーブ4は、ベース1に圧入され、軸部を支承する軸受孔を有する。スリーブ4の一端にはスラストプレート9が取り付けられている。スリーブ4の軸受孔には、スラストプレート9とスラストフランジ3とが対向するように軸部が挿入される。ベース1に形成された壁にはステータコイル7が取り付けられる。スリーブ4、スラストプレート9、及びステータコイル7は、固定部を形成する。スラストフランジ3のスラストプレート9との対向面には、へリングボーン形状のスラスト動圧発生溝3aが形成されている。軸受孔と軸部の隙間には動圧発生液体8が充填され軸受装置が構成される。回転部及び固定部は、モータ駆動部を構成する。
このモータ駆動部により、回転部が回転駆動する動作について説明する。
まず、モータステータ7に通電されると回転磁界が発生し、ステータコイル7と対向して取り付けられたロータマグネット6が回転力を受け、ハブ5、軸2及びスラストフランジ3とともに回転を始める。回転により、ヘリングボーン形状の動圧発生溝2a、2b及び3aは動圧発生液体8をかき集め、ラジアル方向、スラスト方向ともに(軸2とスリーブ4との間、及びスラストフランジ3とスラストプレート9との間に)ポンピング圧力を発生する。これにより回転部は固定部に対して上方に浮上して非接触で回転支持され、ハブ5に装着された磁気ディスク等のデータの記録再生を可能とする。
なお、スピンドルモータには、通常1枚以上のアルミニウム製またはガラス製の磁気ディスクが装着される。中でも、2.5インチサイズ以下の小型の磁気ディスクを搭載されるスピンドルモータにおいて本発明は有効である。
以下、本発明のスピンドルモータについて、実施例及び比較例を用いて、さらに詳細に説明する。
以下、請求項1〜3に記載の本発明の流体軸受用動圧発生液体について、実施例1〜3及び比較例1、2を用いて、さらに詳細に説明する。
比較例1、2においては、酸化防止剤としてフェノール基を2個含有するフェノール系である4,4’−メチレンビス−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール0.5重量%とテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4‘ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.5重量%を配合した。実施例1〜3において、添加剤は使用していない。なお、本発明に示す添加剤の配合量すなわち重量%は、基油及び添加剤を含めた動圧発生液体の総重量に対する割合である。
また、いずれの動圧発生液体もあらかじめ孔径2.5μm以下のフィルタで減圧濾過処理を行い、異物除去を行っている。
(実施例1)
N,N−ジエチル−N−メチル(2−メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩を動圧発生液体とした。
(実施例2)
1−ブチル−3−エチル−イミダゾリウム テトラフルオロボレート塩を動圧発生液体とした。
(実施例3)
1−ブチル−ピリジウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩を動圧発生液体とした。
(比較例1)
ジエステルであるセバシン酸ジオクチル(DOS)を動圧発生液体とした。
(比較例2)
ポリオールエステルであるトリメチロールプロパン−トリ−カプリレートを動圧発生液体とした。
前記の実施例1〜3及び比較例1、2の動圧発生液体が規定の同一量充填され、軸2とスリーブ4のラジアル半径隙間10を5.0μm、軸2を直径3mmのマルテンサイト系ステンレス鋼、スリーブ4を銅合金とした流体軸受装置を備えたスピンドルモータを構成し、40℃の環境下にて、回転数5400rpmのモータ消費電流を測定した。なお、比較例1の40℃のモータ消費電流値を100として、各例のモータ消費電流値を示した。
また、120℃で最長1000時間の連続回転を行い、動圧発生液体8の蒸発に伴う液面低下による振動の発生の有無を確認した。さらに試験終了後に、ハブ5を取り外し、スリーブ4の開放端(図1において上側)と軸2の隙間すなわち動圧発生液体8が充填された液面を上面から顕微鏡を用いて確認し、液面の有無を評価した。動圧発生液体8の液面が確認できない時は、蒸発によって動圧発生液体8の量が減少し液面が軸受内部に入り込んでいて、性能維持に必要な動圧発生液体量が不十分であり信頼性不足と判断した。
実施例及び比較例の体積抵抗率は、東亜DKK株式会社製の超絶縁計SM−8213及び同社動圧発生液体電極SME−8330を用いて、20℃で5Vの電圧を印可することにより測定を行った。各測定結果を表1に示す。
Figure 2006105207
表1から明らかなように、120℃での連続試験の結果、比較例1は、試験開始後240時間で軸受ロックが発生した。また比較例2は、試験開始後500時間において、軸受内の動圧発生液体が不足したことによる、1/2ホワールと呼ばれる40Hz〜44Hzの振動が確認された。また、比較例2は、試験開始後1000時間において、軸受擦れによると思われる異音が確認され、規定回転数を維持していなかった。それに対して、実施例1〜3は、1000時間経過した時点でも軸受ロック、軸ブレ、又は異音は発生しなかった。
顕微鏡による液面観察の結果、1000時間経過後において、実施例1〜3では液面が確認されたが、比較例1及び比較例2では液面が確認されなかった。
イオン性液体(実施例1〜3)の体積抵抗率の測定結果は、上記測定器の測定限界(1.054×10Ω)を下回ったため正確な値ではないが、実施例1〜3の動圧発生液体ではすべて1×10Ωcm以下であった。実施例1〜3の動圧発生液体は、十分な導電性を有していると言える。
実施例1〜3は、比較例1、2に比べて40℃におけるモータ消費電流が大きいが、1秒以内の回転数は規定回転数に達しており、実用上は問題ないと判断できる。
以上のことから、本発明の流体軸受装置及びスピンドルモータにおいて、動圧発生液体は耐熱性に優れ、蒸発損失が少ないことが確認できる。また、動圧発生液体が十分な導電性を有していることが確認できる。
本発明に係る流体軸受装置及びそれを用いたスピンドルモータは、磁気ディスク装置や光ディスク装置のモータとしても利用することができる。
本発明の実施の形態2における軸回転式の流体軸受装置を有するスピンドルモータの断面図 本発明の実施の形態1における軸固定式の流体軸受装置の断面図
符号の説明
1、1a ベース
2 軸
2a、2b ラジアル動圧発生溝
3 スラストフランジ
3a スラスト動圧発生溝
4 スリーブ
5 ハブ
6 ロータマグネット
7 ステータコイル
8 動圧発生液体
9 スラストプレート
10 ラジアル半径隙間

Claims (5)

  1. 軸及びスリーブの少なくとも一方に動圧発生溝を有し、前記軸と前記スリーブとが対向する隙間に動圧発生液体が介在する流体軸受装置において、前記動圧発生液体の主成分がイオン性液体であることを特徴とする流体軸受装置。
  2. 前記イオン性液体は、少なくとも使用温度において液体であることを特徴とする請求項1に記載の流体軸受装置。
  3. 前記イオン性液体は、摂氏20℃において体積抵抗率が10Ωcm以下であることを特徴とする請求項1に記載の流体軸受装置。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の流体軸受装置を備えるスピンドルモータ。
  5. 請求項4に記載のスピンドルモータを備えるディスク駆動装置。
JP2004290236A 2004-10-01 2004-10-01 流体軸受装置、それを用いたスピンドルモータ、及びそれを用いたディスク駆動装置 Pending JP2006105207A (ja)

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