JP2002060769A - 潤滑油 - Google Patents

潤滑油

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JP2002060769A
JP2002060769A JP2000251867A JP2000251867A JP2002060769A JP 2002060769 A JP2002060769 A JP 2002060769A JP 2000251867 A JP2000251867 A JP 2000251867A JP 2000251867 A JP2000251867 A JP 2000251867A JP 2002060769 A JP2002060769 A JP 2002060769A
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alcohol
ester
acid
aromatic dicarboxylic
oil
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Application number
JP2000251867A
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English (en)
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Yasuyuki Kawahara
康行 川原
Koji Takahashi
孝司 高橋
Makiko Takii
真希子 滝井
Mikio Saitou
未来生 斉藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
New Japan Chemical Co Ltd
Original Assignee
New Japan Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 安価で、且つ、高温での劣化が少なく、ま
た、劣化した場合でもタール分ができにくく、且つ、耐
揮発性に優れた潤滑油を提供することを目的とする。 【構成】 (1)芳香族ジカルボン酸、(2)3,5,
5−トリメチルヘキサノール、及び(3)脂肪族多価ア
ルコールをエステル化して得られる芳香族ジカルボン酸
複合エステルであって、酸成分1当量に対しアルコール
成分1.0〜1.5当量、アルコール成分中における
3,5,5−トリメチルヘキサノール(A)と脂肪族多
価アルコールの比率が(A):(B)=65:35〜4
0:60である芳香族ジカルボン酸複合エステルの1種
又は2種以上を含有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、潤滑油に関し、よ
り詳しくは、酸化安定性及び低揮発性に優れるエステル
系合成潤滑油に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、機械類の高速・高負荷化、高効率
化、省エネルギー化、メンテナンスフリー化、低コスト
化等に伴い、潤滑油に対しても高性能であること、例え
ば耐熱性が高く長寿命であり、使用温度範囲が広く、劣
化してもタール分[スラッジ、ワニス、コーク(炭化
物)]の生成量が少なくメンテナンスに有利であり、更
に低価格であるという性能が要求されるようになってい
る。
【0003】現在、潤滑油としては、石油留分である鉱
油がその使用量の大部分を占めているが、上記の要求性
能の多様化に伴う過酷な使用条件下では、用途に応じて
各種合成油が潤滑油として用いられている。
【0004】合成油にはポリ−α−オレフィン、ポリブ
テン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等の合成
炭化水素系、エステル系、ポリアルキレングリコール
系、フェニルエーテル系、シリコーン油系等の合成油が
あり、合成油の中でも特にエステル系は鉱油系潤滑油に
比べて長寿命(耐熱性が良い)、使用温度範囲が広い
(流動点が低い、粘度指数が高い)、潤滑性が良い、揮
発性が低いなどの長所を持っている。エステル系潤滑油
は他の合成油に比較しても優れた物性バランスを有して
いるにもかかわらず、一般に鉱油系潤滑油に比較して価
格が高いため、用途が限定されているのが実状である。
従って、従来のエステル系潤滑油以上の性能を持ち、且
つ安価なエステルを提供することができれば産業界の要
求に応えることが可能となる。
【0005】従来、エステル系合成潤滑油としては、ア
ジピン酸やセバシン酸等の脂肪族二塩基酸とオキソアル
コールから合成される脂肪族ジエステル、フタル酸やト
リメリット酸とオキソアルコールから合成される芳香族
カルボン酸エステル、及び、ペンタエリスリトールやト
リメチロールプロパン等のネオペンチルポリオールと一
価のカルボン酸とから合成されるポリオールエステル等
が知られている。
【0006】現在、上記エステル類の中でもエステル系
潤滑油の主流はポリオールエステルである。一般に、ポ
リオールエステルは、脂肪族ジエステルや芳香族カルボ
ン酸エステルに比べて特に高温での熱安定性や酸化安定
性が優れている。そのため、近年、潤滑油の使用条件が
苛酷化するにつれ様々な分野、例えばジェットエンジン
油、ガスタービン油、コンプレッサー油、チェーン油、
油圧作動油、ギヤ油、軸受油、グリース等の分野にも好
んで使用されるようになってきた。
【0007】しかしながら、使用条件の苛酷化は更に進
みつつあり、ポリオールエステルでも高温で劣化して酸
価が上昇したり、タール分が生成したりという点が問題
となってきている。そのため、従来のポリオールエステ
ル以上の酸化安定性を有する潤滑油が必要となってい
る。更に、現在の潤滑油の使用条件においては、優れた
酸化安定性に加え、耐揮発性に更に優れている潤滑油が
要望されてきている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このような状況の中
で、本発明は、安価で、且つ、従来の合成エステルと同
等又はそれ以上に高温での劣化が少なく、また、劣化し
た場合でもタール分ができにくく、且つ、耐揮発性に優
れた潤滑油を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】先に発明者らは、特開平
10−130673号及び特開平10−292186に
おいて、特定の構造を有した芳香族カルボン酸エステル
が酸化安定性に優れ、ポリオールエステル以上の性能を
有することを見いだしており、これについて更なる研究
を進める中で、特定の酸とアルコールとを特定の割合で
用いてエステル化した芳香族カルボン酸エステルが、特
に耐揮発性に優れており、これらのエステルを含有する
潤滑油が酸化安定性及び耐揮発性に優れていることを見
いだし、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至っ
た。
【0010】即ち、本発明に係る潤滑油は、(1)芳香
族ジカルボン酸、(2)3,5,5−トリメチルヘキサ
ノール及び(3)脂肪族多価アルコールをエステル化し
て得られうる芳香族ジカルボン酸複合エステルであっ
て、エステル化の際の成分(2)の3,5,5−トリメ
チルヘキサノール(A)及び成分(3)の脂肪族多価ア
ルコール(B)からなるアルコール成分中における
(A)と(B)の比率が(A):(B)=65:35〜
40:60(当量%)である芳香族ジカルボン酸複合エ
ステルの1種又は2種以上を含有することを特徴とす
る。
【0011】また、本発明に係る潤滑油は、(1)芳香
族ジカルボン酸、(2’)(2−1)3,5,5−トリ
メチルヘキサノール及び(2−2)3,5,5−トリメ
チルヘキサノール以外の炭素数4〜18の脂肪族一価ア
ルコールからなる一価アルコール並びに(3)脂肪族多
価アルコールをエステル化して得られうる芳香族ジカル
ボン酸複合エステルであって、エステル化の際の成分
(2’)の一価アルコール(A’)と成分(3)の脂肪
族多価アルコール(B)からなるアルコール成分中にお
ける(A’)と(B)の比率が(A’):(B)=6
5:35〜40:60(当量%)である芳香族ジカルボ
ン酸複合エステルの1種又は2種以上を含有することを
特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の潤滑油に含有される芳香
族ジカルボン酸複合エステル(以下「本エステル」とい
う。)は、所定の酸成分とアルコール成分とを常法に従
って、好ましくは窒素等の不活性ガス雰囲気下、エステ
ル化触媒の存在下又は無触媒下で加熱撹拌しながらエス
テル化することにより調製されるエステル化合物であ
る。
【0013】本エステルに係る酸成分は、炭素数6〜1
2の芳香族ジカルボン酸であり、具体的には、フタル
酸、4−t−ブチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタ
ル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン
酸、2、2’−ビス(カルボキシフェニル)プロパン、
ジカルボキシジフェニルエーテル等の芳香族ジカルボン
酸及びこれらの無水物、並びに当該芳香族ジカルボン酸
とメタノール、エタノール等の炭素数1〜4の低級アル
コールエステルが例示される。これらの芳香族ジカルボ
ン酸の中でも、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸
及びこれらの無水物が好ましい。
【0014】本エステルに係る必須のアルコール成分
は、3,5,5−トリメチルヘキサノール及び脂肪族多
価アルコールである。
【0015】3,5,5−トリメチルヘキサノールは、
その酢酸エステル、プロピオン酸エステル等の低級アル
キルエステルを用いることも可能である。
【0016】脂肪族多価アルコールは、芳香環或いはシ
クロヘキサン環を有していてもよい炭素数2〜15の脂
肪族の二価以上のアルコールであり、炭素数2〜15の
脂肪族二価アルコール、炭素数3〜12の脂肪族三価ア
ルコール、炭素数4〜15の脂肪族四価アルコール等が
挙げられる。
【0017】具体的な炭素数2〜15の脂肪族二価アル
コールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリ
コール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレン
グリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピ
レングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−
ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブ
タンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘ
キサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオー
ル、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−
ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−
メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、イ
ソプレングリコール、ヘキシレングリコール、1,4−
ベンゼンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタ
ノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4
−シクロヘキサンジメタノール等が例示される。
【0018】具体的な炭素数3〜12の脂肪族三価アル
コールとしては、グリセリン、1,2,6−ヘキサント
リオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロ
パン、トリメチロールオクタン等が例示される。
【0019】具体的な四価以上の炭素数4〜15の脂肪
族多価アルコールとしては、ジトリメチロールプロパ
ン、トリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトー
ル、ジペンタエリスリトール等が例示される。
【0020】これらの多価アルコールの中でも、酸化安
定性及び低タール性に優れる点で、エチレングリコー
ル、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジ
オール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エ
チル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プ
ロピル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールエ
タン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール
が好ましい。
【0021】エステル化に際し、使用する3,5,5−
トリメチルヘキサノール(A)及び脂肪族多価アルコー
ル(B)の比率は、(A):(B)=65:35〜4
0:60(当量%)である。更に、得られるエステルが
耐揮発性に優れる点で、(A):(B)=60:40〜
50:50(当量%)で使用するのが特に好ましい。こ
こでいう当量%とは、アルコール成分全体の−OH基の
数を100当量%としたときの、(A)又は(B)が有
する各−OH基の数の割合である。本エステルの40℃
における動粘度としては150mm/s以上が好まし
いが、係るアルコールの比率を採択することで、動粘度
150mm/s以上で、酸化安定性及び耐揮発性良好
なエステルを得ることができる。脂肪族多価アルコール
の比率が35当量%未満では、動粘度が低くなる傾向に
あり、耐揮発性の良好なエステルが得られない。また、
脂肪族多価アルコールの比率が60当量%を越えると、
動粘度が急激に高くなり、流動性に大きく影響する。
【0022】エステル化の際、3,5,5−トリメチル
ヘキサノール及び脂肪族多価アルコールからなるアルコ
ール成分は、例えば、化学当量として、芳香族ジカルボ
ン酸からなる酸成分1当量に対し1.0〜1.5当量、
好ましくは酸成分1当量に対し1.05〜1.2当量用
いられる。即ち、酸成分中の−COOH基の数1に対
し、アルコール成分中の−OH基の数が1.0〜1.
5、好ましくは1.05〜1.2になるように使用され
る。
【0023】エステル化触媒としては、ルイス酸類、ア
ルカリ金属類、スルホン酸類等が例示され、具体的にル
イス酸類としては、アルミニウム誘導体、錫誘導体、チ
タン誘導体が例示され、アルカリ金属類としてはナトリ
ウムアルコキシド、カリウムアルコキシド等が例示さ
れ、更にスルホン酸類としてはパラトルエンスルホン
酸、メタンスルホン酸、硫酸等が例示される。その使用
量は、例えば原料である酸及びアルコールの総重量に対
して0.1〜1.0重量%程度用いられる。
【0024】エステル化温度としては、150〜230
℃が例示され、通常、3〜30時間で反応は完結する。
【0025】エステル化反応終了後、過剰の原料を減圧
下または常圧下にて留去する。引き続き慣用の精製方
法、例えば、中和、水洗、液液抽出、減圧蒸留、活性炭
処理等の吸着精製等により本エステルを精製することが
可能である。
【0026】本エステルは、芳香族ジカルボン酸と3,
5,5−トリメチルヘキサノールとの完全なエステルを
調製後、相当量の脂肪族多価アルコールを加えて、エス
テル交換により得ることも可能である。
【0027】また、本エステルに係る3,5,5−トリ
メチルヘキサノールの代わりに、3,5,5−トリメチ
ルヘキサノールと3,5,5−トリメチルヘキサノール
以外の炭素数4〜18の脂肪族一価アルコールとの混合
物(以下、「混合一価アルコール」という。)を用いて
もよい。
【0028】3,5,5−トリメチルヘキサノール以外
の炭素数4〜18の脂肪族一価アルコールとして、具体
的には、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコー
ル、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、n
−ヘキサノール、イソヘキサノール、n−ヘプタノー
ル、イソヘプタノール、n−オクタノール、イソオクタ
ノール、2−エチルヘキサノール、n−ノナノール、イ
ソノナノール、n−デカノール、イソデカノール、n−
ウンデカノール、イソウンデカノール、n−ドデカノー
ル、イソドデカノール、n−トリデカノール、イソトリ
デカノール、n−テトラデカノール、イソテトラデカノ
ール、n−ペンタデカノール、イソペンタデカノール、
n−ヘキサデカノール、イソヘキサデカノール、n−ヘ
プタデカノール、イソヘプタデカノール、n−オクタデ
カノール、イソオクタデカノール等が例示される。又、
これらの脂肪族一価アルコールの代わりにこれらの酢酸
エステル、プロピオン酸エステル等の低級アルキルエス
テルを用いることも可能である。
【0029】これらの中でも、より優れた低温流動性を
得るには、炭素数4〜18の分岐鎖状の脂肪族一価アル
コールが推奨され、より優れた酸化安定性、低タール性
を得るには炭素数6〜14の直鎖状の脂肪族一価アルコ
ールが推奨される。更に、低温流動性に優れ且つ酸化安
定性、低タール性に優れるエステルを得るためには、炭
素数8〜12の分岐鎖状若しくは直鎖状の脂肪族一価ア
ルコールが望ましい。具体的には、n−オクタノール、
2−エチルヘキサノール、n−ノナノール、イソノナノ
ール、n−デカノール、n−ウンデカノール、イソウン
デカノール、n−ドデカノール、イソドデカノールなど
が例示される。
【0030】混合一価アルコール全体(100モル%と
する)中に占める3,5,5−トリメチルヘキサノール
の割合は50モル%以上であり、好ましくは70モル%
以上である。3,5,5−トリメチルヘキサノールが混
合一価アルコール中50モル%未満では、酸化安定性の
低下及びタールが生成する傾向が認められる。
【0031】本エステルを混合一価アルコールを用いて
得る場合、エステル化の際のアルコール成分中の混合一
価アルコール(A’)及び脂肪族多価アルコール(B)
の比率は、(A’):(B)=65:35〜40:60
(当量%)である。更に、得られるエステルが耐揮発性
に優れる点で、(A’):(B)=60:40〜50:
50(当量%)で使用するのが特に好ましい。脂肪族多
価アルコールの比率が35当量%未満では、動粘度が低
くなる傾向にあり、耐揮発性の良好なエステルが得られ
ない。また、脂肪族多価アルコールの比率がアルコール
成分中60当量%を越えると、エステルの粘度が急激に
高くなり、流動性に大きく影響する。
【0032】また、本エステルを混合一価アルコールを
用いて得る場合のエステル化の際、混合一価アルコール
及び脂肪族多価アルコールからなるアルコール成分は、
化学当量として、芳香族ジカルボン酸からなる酸成分1
当量に対し1.0〜1.5当量、好ましくは酸成分1当
量に対し1.05〜1.2当量用いられる。
【0033】本エステルには、その成分として、通常、
(a)芳香族ジカルボン酸と、3,5,5−トリメチル
ヘキサノール及び混合一価アルコールを用いた場合は
3,5,5−トリメチルヘキサノール以外の炭素数4〜
18の脂肪族一価アルコール(以下、これらを纏めて単
に「一価アルコール」という。)から得られるフルエス
テル、(b)2分子以上の芳香族ジカルボン酸が1分子
又は複数分子の脂肪族多価アルコールと結合し、末端カ
ルボキシル基が一価アルコールで封止されたフルエステ
ル(以下、「架橋エステル−1」という。)、(c)1
分子以上の芳香族ジカルボン酸が1分子又は複数分子の
脂肪族多価アルコールを介して得られるエステルであっ
て、芳香族ジカルボン酸のカルボキシル基が全てエステ
ル化され、脂肪族多価アルコール由来の水酸基が残存す
るエステル、(d)1分子以上の芳香族ジカルボン酸と
1分子以上の脂肪族多価アルコールから得られる環状の
フルエステル(以下、「架橋エステル−2」という。)
(e)1分子以上の芳香族ジカルボン酸が1分子以上の
脂肪族多価アルコールを介して得られるエステルであっ
て、アルコール由来の水酸基が全てエステル化されカル
ボン酸由来のカルボキシル基が残存するエステルが混在
する。
【0034】架橋エステル−1としては、芳香族ジカル
ボン酸と脂肪族多価アルコールに由来するエステル結合
を含有してなる基が1つのものから2つ以上繰り返して
連なったものまで、種々の構造を有するオリゴマーが例
示される。一例として、芳香族ジカルボン酸と二価アル
コールから得られるオリゴマーの構造式を式(I)に示
す。 [式中、Aはベンゼン環、Rは炭素数4〜18の分岐鎖
状アルキル基若しくは直鎖状アルキル基、Bは炭素数2
〜18の二価アルコールから2個の水酸基を除いてなる
残基を表す。yは1以上の整数である。]
【0035】架橋エステル−2としては、芳香族ジカル
ボン酸と脂肪族多価アルコールに由来するエステル結合
を含有してなる基が1つのものから2つ以上繰り返して
連なったものまで、種々の構造を有する環状オリゴマー
が例示される。一例として、芳香族ジカルボン酸と二価
アルコールから得られる環状オリゴマーの構造式を式
(II)に示す。 [式中、Aはベンゼン環、Bは炭素数2〜18の二価ア
ルコールから2個の水酸基を除いてなる残基を表す。z
は1以上の整数である。]
【0036】かくして得られる本エステルの中でも、非
常に優れた酸化安定性、低タール性及び低揮発性を有す
る点で、芳香族ジカルボン酸がフタル酸であり、アルコ
ール成分が3,5,5−トリメチルヘキサノール、及
び、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコー
ル、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコー
ル、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオー
ル、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオ
ール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン
又はペンタエリスリトールから選ばれる脂肪族多価アル
コールの1種又は2種以上であるエステルが推奨され
る。
【0037】これらの中でも特に、芳香族ジカルボン酸
がフタル酸であり、アルコール成分が3,5,5−トリ
メチルヘキサノール及び1,4−ブタンジオールである
エステル、又は、芳香族ジカルボン酸がフタル酸であ
り、アルコール成分が3,5,5−トリメチルヘキサノ
ール及びネオペンチルグリコールであるエステルが推奨
される。
【0038】本エステルの全酸価は0.5mgKOH/
g以下、好ましくは0.1mgKOH/g以下、更に好
ましくは0.05mgKOH/g以下であることが望ま
しい。全酸価は中和により調整可能である
【0039】本エステルの水酸基価は100mgKOH
/g以下、好ましくは50mgKOH/g以下、更に好
ましくは30mgKOH/g以下であることが望まし
い。水酸基価は精製により未反応アルコールを除去する
ことで調整可能である。
【0040】本発明に係る潤滑油は、本エステル以外
に、その性能を低下させない範囲で、鉱物油(石油の精
製によって得られる炭化水素油)、ポリ−α−オレフィ
ン、ポリブテン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレ
ン、フィッシャートロプシュ法(Fischer-Tropsch proc
ess)によって得られる合成炭化水素の異性化油などの
合成炭化水素油、動植物油、本エステル以外の有機酸エ
ステル、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテ
ル、ポリフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテ
ル、シリコーン油よりなる群から選ばれる1種若しくは
2種以上の化合物を適宜併用することができる。
【0041】鉱物油としては溶剤精製鉱油、水素化精製
鉱油、ワックス異性化油が挙げられるが、通常、100
℃における動粘度が1.0〜40mm/s、好ましく
は2.0〜30mm/sの範囲にあるものが用いられ
る。
【0042】ポリ−α−オレフィンとしては、炭素数2
〜16のα−オレフィン(例えばエチレン、プロピレ
ン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デ
セン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1ーヘキサデ
セン等)の重合体又は共重合体であって100℃におけ
る動粘度が1.0〜40mm/s、粘度指数が100
以上のものが例示され、特に100℃における動粘度が
2.0〜30mm/sで、粘度指数が120以上のも
のが好ましい。
【0043】ポリブテンとしては、イソブチレンを重合
したもの、イソブチレンをノルマルブチレンと共重合し
たものがあり、一般に100℃の動粘度が2.0〜60
00mm/sの広範囲のものが挙げられる。
【0044】アルキルベンゼンとしては、炭素数1〜4
0の直鎖又は分岐のアルキル基で置換された、分子量が
200〜450であるモノアルキルベンゼン、ジアルキ
ルベンゼン、トリアルキルベンゼン、テトラアルキルベ
ンゼン等が例示される。
【0045】アルキルナフタレンとしては、炭素数1〜
30の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されたモノアル
キルナフタレン、ジアルキルナフタレン等が例示され
る。
【0046】動植物油としては、牛脂、豚脂、パーム
油、ヤシ油、ナタネ油、ヒマシ油等が例示される。
【0047】本エステル以外の有機酸エステルとして
は、芳香族多価カルボン酸エステル、脂環族多価カルボ
ン酸エステル、ポリオールエステル及びその他のエステ
ルが例示される。
【0048】芳香族多価カルボン酸エステルとしては、
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット
酸、トリメシン酸、ピロメリット酸若しくはその無水物
と炭素数3〜22の直鎖状又は分岐鎖状の飽和又は不飽
和の脂肪族一価アルコールとのフルエステルが挙げられ
る。
【0049】脂環族多価カルボン酸エステルとしては、
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロ
ヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカル
ボン酸、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、
4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、1,2,
4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シク
ロヘキサントリカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘ
キサンテトラカルボン酸若しくはその無水物と炭素数3
〜22の直鎖状又は分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族
アルコールとのフルエステルが挙げられる。
【0050】ポリオールエステルとしては、ネオペンチ
ルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリス
リトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリス
リトール等のネオペンチルポリオールと炭素数3〜22
の直鎖状及び/又は分岐鎖状の飽和の脂肪酸とのフルエ
ステルを使用することが可能である。
【0051】その他のエステルとしては、ダイマー酸、
水添ダイマー酸などの重合脂肪酸と炭素数3〜22の直
鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族アルコ
ールとのエステル、脂肪族分岐鎖状モノカルボン酸アル
キルエステル、脂肪族直鎖状モノカルボン酸アルキルエ
ステル等のカルボン酸エステルが挙げられる。
【0052】ポリアルキレングリコールとしては、アル
コールと炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアル
キレンオキサイドの開環重合体が例示される。アルキレ
ンオキサイドとしてはエチレンオキサイド、プロピレン
オキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられ、これらの
1種を用いた重合体、若しくは2種以上の混合物を用い
た共重合体が使用可能である。又、片端又は両端の水酸
基部分がエーテル化若しくはエステル化した化合物も使
用可能である。重合体の動粘度としては、5.0〜10
00mm/s(40℃)、好ましくは5.0〜500
mm/s(40℃)である。
【0053】ポリビニルエーテルとしては、ビニルエー
テルモノマーの重合によって得られる化合物であり、モ
ノマーとしてはメチルビニルエーテル、エチルビニルエ
ーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニ
ルエーテル、イソブチルビニルエーテル、sec−ブチ
ルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、
n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエー
テル、2−メトキシエチルビニルエーテル、2−エトキ
シエチルビニルエーテル等が挙げられる。重合体の動粘
度としては、5.0〜1000mm/s(40℃)、
好ましくは5.0〜800mm/s(40℃)であ
る。
【0054】ポリフェニルエーテルとしては、2個以上
の芳香環のメタ位をエーテル結合又はチオエーテル結合
でつないだ構造を有する化合物が挙げられ、具体的に
は、ビス(m−フェノキシフェニル)エーテル、m−ビ
ス(m−フェノキシフェノキシ)ベンゼン、及びそれら
の酸素の1個若しくは2個以上を硫黄に置換したチオエ
ーテル類(通称C−エーテル)等が例示される。
【0055】アルキルフェニルエーテルとしては、ポリ
フェニルエーテルを炭素数6〜18の直鎖状若しくは分
岐鎖状のアルキル基で置換した化合物が挙げられ、特に
1個以上のアルキル基で置換したアルキルジフェニルエ
ーテルが好ましい。
【0056】シリコーン油としては、ジメチルシリコー
ン、メチルフェニルシリコーンのほか、長鎖アルキルシ
リコーン、フルオロシリコーン等の変性シリコーンが挙
げられる。
【0057】潤滑油中における鉱物油、合成炭化水素
油、動植物油、有機酸エステル、ポリアルキレングリコ
ール、ポリビニルエーテル、ポリフェニルエーテル、ア
ルキルフェニルエーテル、シリコーン油の含有量として
は、90重量%以下が推奨されるが、耐熱性を損なわな
いために50重量%以下であることがより好ましい。特
に鉱物油、ポリアルキレングリコール、ポリブテン又は
動植物油の併用においては30重量%以下とするのが望
ましい。
【0058】本発明の潤滑油は、40℃における動粘度
が150〜600mm/sであることが推奨される。
潤滑油の動粘度は用途、使用条件によって異なるため、
本範囲の中で、適切な動粘度を選択して使用することが
可能である。
【0059】本発明に係る潤滑油は、その性能を向上さ
せるために、酸化防止剤、油性剤、摩耗防止剤、極圧
剤、金属不活性剤、防錆剤、粘度指数向上剤、流動点降
下剤、増稠剤、消泡剤等の添加剤の1種又は2種以上を
適宜配合することも可能である。配合量は、所定の効果
を奏する限り特に限定されるものではないが、その具体
的な例を以下に示す。
【0060】酸化防止剤としては、2,6−ジ−ter
t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス
−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール等のフェノ
ール系酸化防止剤、N−フェニル−α−ナフチルアミ
ン、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン等のアミン
系酸化防止剤、フェノチアジン等の硫黄系酸化防止剤等
が使用可能である。これらの酸化防止剤は、通常、潤滑
油に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜
3重量%添加するのがよい。
【0061】これらの酸化防止剤は、耐熱性をより向上
させるために2種以上を添加することが望ましい。その
組み合わせとしては、2種以上のフェノール系酸化防止
剤の組み合わせ、2種以上のアミン系酸化防止剤の組み
合わせ、2種以上の硫黄系酸化防止剤の組み合わせ、1
種以上のフェノール系酸化防止剤及び1種以上のアミン
系酸化防止剤の組み合わせ、1種以上のフェノール系酸
化防止剤及び1種以上の硫黄系酸化防止剤の組み合わ
せ、1種以上のアミン系酸化防止剤及び1種以上の硫黄
系酸化防止剤、1種以上のフェノール系酸化防止剤、1
種以上のアミン系酸化防止剤及び1種以上の硫黄系酸化
防止剤の組み合わせが例示される。これらの組み合わせ
の中でも、特に優れた耐熱性を得られる点で、2種以上
のアミン系酸化防止剤の組み合わせ、1種以上のフェノ
ール系酸化防止剤及び1種以上のアミン系酸化防止剤の
組み合わせがより好ましい。
【0062】油性剤としては、ステアリン酸、オレイン
酸などの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸、ダイマ
ー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、リシノレイン
酸、12−ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシ脂
肪酸、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの
脂肪族飽和及び不飽和モノアルコール、ステアリルアミ
ン、オレイルアミンなどの脂肪族飽和及び不飽和モノア
ミン、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの脂肪
族飽和及び不飽和モノカルボン酸アミド等が使用可能で
ある。これらの油性剤は、通常、潤滑油に対して0.0
1重量%〜5重量%、好ましくは0.1重量%〜3重量
%添加するのがよい。
【0063】摩耗防止剤・極圧剤としては、トリクレジ
ルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ア
ルキルフェニルホスフェート類、トリブチルホスフェー
ト、ジブチルホスフェート等のリン酸エステル類、トリ
ブチルホスファイト、ジブチルホスファイト、トリイソ
プロピルホスファイト等の亜りん酸エステル類及びこれ
らのアミン塩等のリン系、硫化油脂、硫化オレイン酸な
どの硫化脂肪酸、ジベンジルジスルフィド、硫化オレフ
ィン、ジアルキルジスルフィドなどの硫黄系、Zn−ジ
アルキルジチオフォスフェート、Mo−ジアルキルジチ
オカルバメートなどの有機金属系化合物等が使用可能で
ある。これらの摩耗防止剤は、通常、潤滑油に対して
0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.1重量%
〜5重量%添加するのがよい。
【0064】金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾー
ル系、チアジアゾール系の化合物等が使用可能であり、
これらの金属不活性剤は、通常、潤滑油に対して0.0
1〜0.4重量%、好ましくは0.01〜0.2重量%
添加するのがよい。
【0065】防錆剤としては、ドデセニルコハク酸ハー
フエステル、オクタデセニルコハク酸無水物、ドデセニ
ルコハク酸アミドなどのアルキル又はアルケニルコハク
酸誘導体、ソルビタンモノオレエート、グリセリンモノ
オレエート、ペンタエリスリトールモノオレエートなど
の多価アルコール部分エステル、Ca−石油スルフォネ
ート、Ca−アルキルベンゼンスルフォネート、Ba−
アルキルベンゼンスルフォネート、Mg−アルキルベン
ゼンスルフォネート、Na−アルキルベンゼンスルフォ
ネート、Zn−アルキルベンゼンスルフォネート、Ca
−アルキルナフタレンスルフォネートなどの金属スルフ
ォネート、ロジンアミン、N−オレイルザルコシンなど
のアミン類、ジアルキルホスファイトアミン塩等が使用
可能である。これらの防錆剤は、通常、潤滑油に対して
0.01重量%〜5重量%、好ましくは0.05〜2重
量%添加するのがよい。
【0066】粘度指数向上剤としては、ポリアルキルメ
タクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリブテン、エ
チレン−プロピレン共重合体、スチレン−ジエン共重合
体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体などの
オレフィン共重合体が使用可能であり、これらの粘度指
数向上剤は、通常、潤滑油に対して0.1〜15重量
%、好ましくは0.5〜7重量%添加するのがよい。
【0067】流動点降下剤としては、塩素化パラフィン
とアルキルナフタレンの縮合物、塩素化パラフィンとフ
ェノールの縮合物、既述の粘度指数向上剤であるポリア
ルキルメタクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリブ
テン等が使用可能であり、これらの流動点降下剤は、通
常、潤滑油に対して0.01〜5重量%、好ましくは
0.1〜3重量%添加するのがよい。
【0068】増稠剤としては、グリースに用いられるも
ので、カルシウム石けん、ナトリウム石けん、リチウム
石けんなどの石けん類、ベントン、シリカエアロゲル、
ウレア、ポリテトラフルオロエチレンなどの非石けん類
等が使用可能である。これらの増稠剤は、通常、潤滑油
に対して5〜20重量%添加するのがよい。
【0069】消泡剤としては、液状シリコーンが適して
おり、通常、潤滑油に対して0.0005〜0.01重
量%添加するのがよい。
【0070】本発明に係る芳香族カルボン酸エステルを
含有する潤滑油は、従来公知のエステル系潤滑油及び他
の合成潤滑油と比べて酸化安定性が同等又はそれ以上で
あり、また、高温下での揮発減量が少ないため潤滑油の
寿命が延び、給油量の低減、交換期間を長くすることが
可能である。更に、劣化した際のタール分の量が非常に
少ないことも特長であり、タール分由来の堆積物による
摺動部付近の油切れを防止し、機械及び部品の寿命延長
につながる。また、機械の分解・清掃の負担が軽減さ
れ、メンテナンスコストを低減することが可能である。
【0071】従って、現在、鉱油や合成系潤滑油が使用
されている分野、例えば、自動車エンジン油、2サイク
ルエンジン油、ジェットエンジン油、ガスタービン油、
セラミックガスタービン油、コンプレッサー油、チェー
ン油、油圧作動油、ギヤ油、軸受け油、グリース等の耐
熱性が要求される用途に使用することができる。これら
の中でも、2サイクルエンジン油、セラミックガスター
ビン油、チェーン油等の非常に高温で使用される用途に
適する。
【0072】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を詳しく説明す
るが、本発明は実施例に限定されるものではない。ま
た、各例における潤滑油の物理特性及び化学特性は以下
の方法により評価した。
【0073】全酸価 JIS−K−2501に基づき測定を行った。
【0074】動粘度 JIS−K−2283に準拠して測定した。
【0075】低温流動性試験 JIS−K−2269に準拠して流動点を測定した。
【0076】酸化安定性試験 潤滑油の酸化安定性試験は、通常、酸化防止剤などの添
加剤を加えて行われる為、本エステル及び比較油も同一
の添加剤を配合して酸化安定性試験を行った。実施例又
は比較例の各々のエステルに対し、N−フェニル−α−
ナフチルアミン0.7重量%、p,p’−ジオクチルジ
フェニルアミン0.7重量%、トリクレジルホスフェー
ト1.0重量%及びベンゾトリアゾール0.1重量%を
添加溶解させて潤滑油(以下、この組成のものを「添加
油」という)を調製した。次いで、内径33mm、高さ8
5mmのガラス製試験管に上記添加油0.1gと鋼、アル
ミ、銅の針金(径1.6mm)をそれぞれ2mmの長さに切
ったものを入れて共栓の蓋をし、蓋が開かないように止
め金を付けた。その試験管をオーブンに入れ、204℃
で24時間又は72時間加熱した。その後、添加油の酸
価を測定して酸化試験前の酸価との比較を行い、全酸価
の上昇値を測定した。又、添加油に20倍量のヘキサン
を入れて溶かし、不溶部をタール分(重量%)とした。
全酸価の上昇、タール分の量が少ないものほど酸化安定
性に優れると判断した。
【0077】揮発性試験 酸化安定性試験に用いた添加油を、平底アルミ皿(内径
58mm、高さ4mm)に1.0gを入れ、250℃で5時
間放置した。途中、1時間後、3時間後における重量変
化を比較した。又、テスト後にアルミ皿上に残った油の
色を比較した。揮発減量の少ないもの、油の色が薄いも
のが耐揮発性に優れると判断した。
【0078】製造例1 撹拌器、温度計、冷却管付き水分分留受器を備えた1リ
ットルの四ツ口フラスコに無水フタル酸148g(1モ
ル)、3,5,5−トリメチルヘキサノール158.4
g(1.1モル)、1,4−ブタンジオール49.5g
(0.55モル)、キシレン及びテトライソプロピルチ
タネート触媒を仕込み、減圧にて200℃まで昇温し
た。理論的にできる水の量を目処にして生成した水を水
分分留受器にとりながらエステル化反応を約5時間行っ
た。反応終了後、キシレン及び過剰のアルコールを蒸留
で除去し、苛性ソーダ水溶液で中和して、その後中性に
なるまで水洗した。次いで活性炭処理を行い、更に濾過
をしてエステルAを304g得た。エステルの全酸価、
動粘度を表1に示す。
【0079】
【0080】製造例2 酸成分として無水フタル酸148g(1モル)、アルコ
ール成分として3,5,5−トリメチルヘキサノール1
58.4g(1.1モル)及びネオペンチルグリコール
57.2g(0.55モル)を用いた以外は、製造例1
と同様の方法で、エステルBを301g得た。エステル
の全酸価、動粘度を表1に示す。
【0081】製造比較例1 酸成分として無水フタル酸148g(1モル)、アルコ
ール成分として3,5,5−トリメチルヘキサノール2
21.8g(1.54モル)及び1,4−ブタンジオー
ル29.7g(0.33モル)を用いた以外は、製造例
1と同様の方法で、エステルaを326g得た。エステ
ルの全酸価、動粘度を表1に示す。
【0082】製造比較例2 酸成分として無水フタル酸148g(1モル)、アルコ
ール成分として3,5,5−トリメチルヘキサノール6
3.4g(0.44モル)及び1,4−ブタンジオール
79.2g(0.88モル)を用いた以外は、製造例1
と同様の方法でエステル化反応を行った。反応終了後、
過剰のアルコールを蒸留で除去し、苛性ソーダ水溶液で
中和を行ったが、エステルが高粘度であるため、十分な
中和処理ができなかった。更に、活性炭処理後の濾過が
できず、エステルを得ることはできなかった。
【0083】製造比較例3 酸成分として無水トリメリット酸192g(1モル)、
アルコール成分として3,5,5−トリメチルヘキサノ
ール313.6g(2.178モル)及び1,4−ブタ
ンジオール50.5g(0.561モル)を用いた以外
は、製造例1と同様の方法で、エステルbを456g得
た。エステルの全酸価、動粘度を表1に示す。
【0084】実施例1〜2 製造例1及び2のエステルの低温流動性、酸化安定性、
耐揮発性試験を実施した。結果を表2に示す。なお、酸
化安定性試験は204℃で72時間行った。
【0085】
【0086】比較例1〜2 製造比較例1及び2のエステルの低温流動性、酸化安定
性、耐揮発性試験を実施した。結果を表2に示す。な
お、酸化安定性試験は204℃で72時間行った。
【0087】実施例3 エステルAと、無水トリメリット酸とイソデカノールの
エステル[全酸価=0.01mgKOH/g、動粘度=148
mm/s(40℃)、13mm/s(100℃)、
流動点 −35℃、以下「エステルc」という。]との
混合油(重量比でエステルA:エステルc=70:3
0)の低温流動性、酸化安定性、耐揮発性試験を実施し
た。混合油の全酸価、動粘度を表3に、各試験の結果を
表4に示す。なお、酸化安定性試験は204℃で24時
間行った。
【0088】
【0089】
【0090】実施例4 エステルAとポリブテン[全酸価=0.01mgKOH/g、
動粘度=123mm/s(40℃)、10mm/s
(100℃)、流動点 −30℃]の混合油(重量比で
エステルA:ポリブテン=85:15)の低温流動性、
酸化安定性、耐揮発性試験を実施した。混合油の全酸
価、動粘度を表3に、各試験の結果を表4に示す。な
お、酸化安定性試験は204℃で24時間行った。
【0091】実施例5 エステルBと、無水トリメリット酸と3,5,5−トリ
メチルヘキサノールのエステル[全酸価=0.01mgKO
H/g、動粘度=169mm/s(40℃)、14mm
/s(100℃)、流動点 −17.5℃、以下「エ
ステルd」という。]との混合油(重量比でエステル
B:エステルd=55:45)の低温流動性、酸化安定
性、耐揮発性試験を実施した。混合油の全酸価、動粘度
を表3に、各試験の結果を表4に示す。なお、酸化安定
性試験は204℃で24時間行った。
【0092】実施例6 エステルBとポリアルキレングリコール[商品名「ユニ
ルーブMB−700」、全酸価=0.01mgKOH/g、動
粘度=616mm/s(40℃)、97mm /s
(100℃)、流動点 −22.5℃、以下「PAG」
と略す]の混合油(重量比でエステルB:PAG=9
0:10)の低温流動性、酸化安定性、耐揮発性試験を
実施した。混合油の全酸価、動粘度を表3に、各試験の
結果を表4に示す。なお、酸化安定性試験は204℃で
24時間行った。
【0093】比較例3 エステルcの低温流動性、酸化安定性、耐揮発性試験を
実施した。試験の結果を表4に示す。なお、酸化安定性
試験は204℃で24時間行った。
【0094】比較例4 ポリブテンの低温流動性、酸化安定性、耐揮発性試験を
実施した。各試験の結果を表4に示す。なお、酸化安定
性試験は204℃で24時間行った。
【0095】比較例5 エステルdの低温流動性、酸化安定性、耐揮発性試験を
実施した。各試験の結果を表4に示す。なお、酸化安定
性試験は204℃で24時間行った。
【0096】比較例6 PAGの低温流動性、酸化安定性、耐揮発性試験を実施
した。試験の結果を表4に示す。なお、酸化安定性試験
は204℃で24時間行った。
【0097】表2より明らかなように、本発明のエステ
ルは、脂肪族多価アルコールの比率が35当量%未満の
芳香族ジカルボン酸の複合エステル(エステルa)や他
の芳香族ポリカルボン酸の複合エステル(エステルb)
と比べ、酸化安定性が高く、タール分の生成を低下させ
ることができ、且つ、揮発による油の減少、変色が小さ
い。更に表4から、本発明のエステルを他の潤滑油基油
と併用した場合、広範囲の粘度を有する潤滑油を提供可
能であり、性能においても、他のエステル、鉱油及び他
の合成潤滑油を単独で使用した場合と比較し、酸化安定
性、タール分の低減、耐揮発性に優れた性能を発揮する
ことがわかる。
【0098】
【発明の効果】本発明に係る潤滑油は、安価で、且つ、
従来汎用の各種の潤滑油と比較して酸化安定性、低ター
ル性及び耐揮発性に優れ、自動車エンジン油、2サイク
ルエンジン油、ジェットエンジン油、ガスタービン油、
セラミックガスタービン油、コンプレッサー油、チェー
ン油、油圧作動油、ギヤ油、軸受け油、グリース等に適
用でき、200℃以上、特に230℃以上の高温にさら
される条件下においても十分に機能することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C10N 40:04 C10N 40:04 40:08 40:08 40:12 40:12 40:25 40:25 40:30 40:30 50:10 50:10 (72)発明者 斉藤 未来生 京都府京都市伏見区葭島矢倉町13番地 新 日本理化株式会社内 Fターム(参考) 4H104 BB36A LA04 LA05 LA20 PA01 PA02 PA05 PA07 PA20 PA41 QA18

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1)芳香族ジカルボン酸、(2)3,
    5,5−トリメチルヘキサノール及び(3)脂肪族多価
    アルコールをエステル化して得られうる芳香族ジカルボ
    ン酸複合エステルであって、エステル化の際の成分
    (2)の3,5,5−トリメチルヘキサノール(A)及
    び成分(3)の脂肪族多価アルコール(B)からなるア
    ルコール成分中における(A)と(B)の比率が
    (A):(B)=65:35〜40:60(当量%)で
    ある芳香族ジカルボン酸複合エステルの1種又は2種以
    上を含有することを特徴とする潤滑油。
  2. 【請求項2】 (1)芳香族ジカルボン酸、(2’)
    (2−1)3,5,5−トリメチルヘキサノール及び
    (2−2)3,5,5−トリメチルヘキサノールを除い
    た炭素数4〜18の脂肪族一価アルコールからなる一価
    アルコール並びに(3)脂肪族多価アルコールをエステ
    ル化して得られうる芳香族ジカルボン酸複合エステルで
    あって、エステル化の際の成分(2’)の一価アルコー
    ル(A’)と成分(3)の脂肪族多価アルコール(B)
    からなるアルコール成分中における(A’)と(B)の
    比率が(A’):(B)=65:35〜40:60(当
    量%)である芳香族ジカルボン酸複合エステルの1種又
    は2種以上を含有することを特徴とする潤滑油。
  3. 【請求項3】 脂肪族多価アルコールが、エチレングリ
    コール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタ
    ンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2
    −エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2
    −プロピル−1,3−プロパンジオール、トリメチロー
    ルエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリト
    ールよりなる群から選ばれる1種又は2種以上である請
    求項1又は請求項2に記載の潤滑油。
  4. 【請求項4】 芳香族ジカルボン酸が、フタル酸、イソ
    フタル酸、テレフタル酸よりなる群から選ばれる1種又
    は2種以上である請求項1又は請求項2に記載の潤滑
    油。
  5. 【請求項5】 芳香族ジカルボン酸がフタル酸であり、
    脂肪族多価アルコールが1,4−ブタンジオール又はネ
    オペンチルグリコールである、請求項1に記載の潤滑
    油。
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JP2006274177A (ja) * 2005-03-30 2006-10-12 Nippon Oil Corp 冷凍機油組成物
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