JP5092281B2 - 排ガス浄化装置 - Google Patents

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Description

本発明は、排ガス浄化装置に関し、より詳しくは、PMが含まれている排ガスを浄化するために好適に用いることが可能な排ガス浄化装置に関する。
ガソリンエンジンについては、排気の厳しい規制とそれに対処できる技術の進歩とにより、排気中の有害成分は確実に減少している。しかし、ディーゼルエンジンについては、PM(粒子状物質:パティキュレート マター)が含まれていることから、排気浄化のための技術的課題が多く残されている。そこで、近年では、PM、なかでもスート成分を低温から酸化することのできる酸化触媒の開発が行われてきた。
例えば、特開平1−318715号公報(特許文献1)においては、排ガス中のNOをNOに酸化させるための触媒を有するハニカム型モノリス体と、前記排ガスを前記触媒に通してNOをNOに変換する装置と、前記装置から排出されるNO含有ガスを受けとるために下流側に配置され且つ排ガス中のPMをNO含有ガスで燃焼させるためのフィルターとを備える排ガス浄化装置が開示されている。しかしながら、このような特許文献1に記載の排ガス浄化装置においては、気相中の酸素のみを酸化剤としてPMを酸化することができなかった。
また、特開2004−42021号公報(特許文献2)においては、銀(Ag)及び/又はコバルト(Co)で安定化されたセリア(CeO)を有する触媒組成がDPFの再生中のすす酸化を促進することが開示され、Agとセリアのモル比は4:1〜1:4(CeとAgの合計量に対するAgの含有量(モル%)は20mol%〜80mol%に相当)が好ましく、3:1〜1:3(CeとAgの合計量に対するAgの含有量(モル%)は33mol%〜67mol%に相当)がより好ましいことが記載されている。そして、Agの含有量が75mol%でCeの含有量が25mol%の混合物について活性度が最大であったとされている。また、Agの含有量が25mol%でCeの含有量が75mol%の混合物では、唯一の酸化剤として酸素を用いてもすす酸化に関して活性であり、この場合に気相中に活性酸素種を生成することができると示されている。なお、特許文献2に記載されている触媒の製造方法は、セルロース材料(Whatman(登録商標)フィルタペーパー540)に硝酸塩前駆体を含浸させ、室温で一晩乾燥させた後に600℃、2時間の条件でセルロースを燃やすことにより、約70〜200Å程度に集中した多孔性と14〜150m/gの高比表面積を有する触媒組成を得る方法である。
このような特許文献2における評価方法は大きく2つあり、一つはディーゼルすすと触媒組成をへらによりloose−contactせしめたものを酸素10%雰囲気等でTGAにより分解速度を測定する方法であり、もう一つはDPFにより圧損バランス試験を行う方法である。そして、例えばAgの含有量が75mol%の触媒組成についてのTGA評価では、NO:1010ppm、O:10%という好条件で且つ最良の触媒組成であっても323℃における酸化速度は0.117hr−1である。すなわち、NOという強力な酸化剤が十分に存在する条件であっても、1時間に酸化されるスートの割合は11.7%にすぎない。一方、圧損バランス試験においては、Ag−Ce系であるCPF−15では325℃付近でほぼPMを酸化できていることになっているが、この試験結果は先の試験結果と矛盾していることから、実際の圧損バランス試験においてはスート成分のすり抜け等が生じていると本発明者らは考えており、特許文献2に記載の触媒組成、すなわち単純にAgと、CeO又はCe及びCeOとが存在するのみでは、スート等のPM、HC、CO又はNO等の成分を低温で十分に酸化することはできなかった。
また、このような特許文献2に記載されているような触媒においては、気相中の酸素のみを酸化剤としてPMを酸化することができなかった。
特開平1−318715号公報 特開2004−42021号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、気相中の酸素を酸化剤とすることができ、より低温の温度領域で十分にPM、HC、CO又はNO等の成分を酸化することができ、PMが堆積した場合においても比較的低温の再生処理で十分に再生させることが可能な排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、核となる銀粒子と、前記銀粒子の周囲を覆っている平均一次粒径が1〜100nmのセリア微粒子とからなる凝集体を備える排ガス浄化装置により、気相中の酸素を酸化剤とすることができ、より低温の温度領域で十分にPM、HC、CO又はNO等の成分を酸化することができ、PMが堆積した場合においても比較的低温の再生処理で十分に再生させることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の排ガス浄化装置は、排ガス中のPM、HC、CO、NOを酸化して浄化するための排ガス浄化装置であって、
排ガス管と、前記排ガス管内に配置した凝集体とを備え、
前記凝集体が、核となる銀粒子と、前記銀粒子の周囲を覆っている平均一次粒径が1〜100nmのセリア微粒子とからなる凝集体を備えており、前記凝集体の平均粒径が0.05〜0.5μmであり、且つ、前記銀粒子と前記セリア微粒子との比率(モル比)が35:65〜60:40であることを特徴とするものである。
上記本発明の排ガス浄化装置においては、基材と、前記基材に担持された前記凝集体とを備えることが好ましい。
上記本発明の排ガス浄化装置においては、前記基材が1〜300μmの細孔を有するものであり、前記細孔内に前記凝集体の平均粒径の0.5〜50倍の平均厚さを有するコート層が前記凝集体により形成されていることが好ましい。
上記本発明の排ガス浄化装置においては、前記基材の気孔率が30〜70%であることが好ましい。
上記本発明の排ガス浄化装置においては、強制再生処理が必要となるPM堆積量の第一の基準(A)と、第一の基準(A)よりも低い基準であるPM堆積量の第二の基準(B)とに基づいて、
求められたPM堆積量が第一の基準(A)と第二の基準(B)との間にある場合に、強制再生処理のための第一の再生処理温度よりも低い第二の再生処理温度で低温再生処理を施し、
求められたPM堆積量が第一の基準(A)を超えた場合に、強制再生処理を施す、
ように前記排ガス浄化装置を制御する制御手段を更に備えることが好ましい。
また、前記制御手段を更に備える上記本発明の排ガス浄化装置においては、第二の再生処理温度として複数の温度条件が設定されており、求められたPM堆積量が第一の基準(A)と第二の基準(B)との間にある場合に、低温側の第二の再生処理温度で低温再生処理を施し、その後のPM堆積量が第二の基準(B)未満となった場合は低温再生処理を終了し、該PM堆積量が未だ第一の基準(A)と第二の基準(B)との間にある場合は、順次高温側の第二の再生処理温度に変更して低温再生処理を繰り返すように前記排ガス浄化装置を制御することがより好ましい。
なお、本発明のディーゼル排ガス浄化用構造体及びそれを用いた排ガス浄化方法によって、上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明においては、先ず、核となる銀(Ag)粒子と、前記銀粒子の周囲を覆っている平均一次粒径が1〜100nmの第二のセリア(CeO)微粒子とからなる凝集体を備えているが、かかる凝集体によってPMは比較的低温域にあっても十分に浄化される。このような凝集体によりPMを酸化する機構は以下のようなものと推察する。すなわち、先ず、Ag粒子により比較的低温でも含酸素物質から酸素が遊離される。次に、遊離されて生成した活性酸素種(O:例えば酸素イオン)がCeO微粒子によりPMの表面に移動させられ、そこで表面酸化物が形成される。なお、このような表面酸化物のCとOの結合は、主にC=O、C=C及びC−Oに分類できることが知られている(Applied Catalysis B,50,185−194(2004))。次いで、このようにして形成された表面酸化物が気相の酸素により、或いはCeO微粒子を介して移動してくる酸素活性種により酸化される。このようにして、PMの周囲から酸化された部分が除去、縮小していき、最終的に完全に酸化されて消失させることができる。また、かかる凝集体は、同様にしてPM以外にもHC、NO等の成分を比較的低温で十分に酸化できるものと推察される。
従って、本発明の排ガス浄化装置は、気相中の酸素を酸化剤として、より低温の温度領域で十分にPM、HC、CO又はNO等の成分を酸化することができ、更には、低温域で十分にPMを酸化させることができるため、排ガス浄化装置内に堆積したPMも低温で除去することができるため、比較的低温の再生処理で十分に再生させることが可能となる。
本発明によれば、気相中の酸素を酸化剤とすることができ、より低温の温度領域で十分にPM、HC、CO又はNO等の成分を酸化することができ、PMが堆積した場合においても比較的低温の再生処理で十分に再生させることが可能な排ガス浄化装置を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の排ガス浄化装置は、核となる銀粒子と、前記銀粒子の周囲を覆っている平均一次粒径が1〜100nmのセリア微粒子とからなる凝集体を備えることを特徴とするものである。
なお、本発明にかかる銀(Ag)粒子及びセリア(CeO)微粒子そのものは一次粒子であり、前者が後者により覆われてなる二次粒子を「凝集体(又は一次凝集体)」、さらにそのような凝集体が集合してなる三次粒子を「集合体(又は二次凝集体)」と称する。
また、前記Ag粒子はAgを単独で用いたものであってもよいが、AgとAg以外の他の金属との二種以上の金属からなる合金であってもよい。更に、前記Ag粒子は、その一部が、酸化物を形成していてもよく、他の元素との化合物を形成していてもよい。前記Ag粒子の一部が酸化物や化合物を形成している場合、Agの含有率が0.3質量%以上であることが好ましい。
このようなAg粒子は、含酸素物質の少なくとも酸素を遊離させ、酸素活性種を生成することができるものである。すなわち、このようなAg粒子は、酸素遊離材として機能する。そして、このようなAg粒子によって、効率的にPM等を酸化する反応系に酸素原子を取り込むことが可能となる。また、このようなAg粒子(酸素遊離材)は、含酸素物質捕捉材としても機能することもある。そのため、このようなAg粒子によって、より低温から大量の酸素活性種を、酸素活性種移動材を通じてPMや、HC、CO又はNO等の成分に供給して酸化を促進することが可能となる。
また、このようなAg粒子の粒径としては、特に限定されないが、大気中500℃で5時間焼成した後の平均粒径が10〜100nm(より好ましくは10〜50nm)であることが好ましく、また、酸素10容量%及び窒素90容量%からなる雰囲気中800℃で5時間焼成した後の平均粒径が10〜400nm(より好ましくは10〜80nm)であることが好ましい。このようなAg粒子の平均粒径が前記下限未満ではAg粒子(酸素遊離材)により生成された酸素活性種のCeO微粒子(酸素活性種移動材)への受け渡しが阻害される傾向にあり、他方、前記上限を超えるとAg粒子がCeO微粒子によって覆われにくくなる傾向にある。
このようなセリア微粒子は、前記Ag粒子(酸素遊離材)により生成された酸素活性種を移動することが可能なものであり、酸素活性種移動材として機能する。このようなセリア微粒子は、その価数変化等を通じて酸素活性種(例えば酸素イオン)を移動することのできる材料である。このような材料を用いることによって前記Ag粒子(酸素遊離材)により生成された酸素活性種を受け取ると、酸素活性種はCeO微粒子(酸素活性種移動材)を移動して、吸着されているPMに到達することが可能となる。このような酸素活性種が移動する経路は、CeO微粒子のバルク内部を通る必要はなく、例えば、CeO微粒子の表面を移動できればよい。また、PMを酸化する場合においては、酸素活性種の酸化力が強過ぎると、PMとCeO微粒子との間の接触部分が優先的に酸化されてしまい、両者の間の接触状態が失われて空隙が生じるため、PMを完全に酸化することが困難となることから、酸素活性種は適度の酸化力(PMと酸素活性種が直ちに反応せず、酸素活性種がPM上を移動できる程度)を有することが好ましい。
また、このような凝集体においては、CeO微粒子における酸素活性種の移動度を高めると共にCeO粒子の粗大化をより確実に防止するために、La、Nd、Pr、Sm、Y、Ca、Ti、Fe、Zr及びAlからなる群から選択される少なくとも一種(特に好ましくはLa及び/又はNd)を更に含有していることがより好ましい。なお、このような添加成分を含有する場合、Ceと添加成分の合計量に対して添加成分の含有量が1〜30mol%程度であることが好ましく、5〜20mol%程度であることがより好ましい。なお、このような添加成分は、CeO微粒子中に含有されていることが好ましい。
また、このようなCeO微粒子の粒径は、特に限定されないが、大気中500℃で5時間焼成した後の平均粒径が1〜75nm(より好ましくは8〜20nm、更に好ましくは8〜15nm)であることが好ましく、また、酸素10容量%及び窒素90容量%からなる雰囲気中800℃で5時間焼成した後の平均粒径が8〜100nm(より好ましくは8〜60nm、更に好ましくは8〜40nm)であることが好ましい。CeO微粒子(酸素活性種移動材粒子)の上記平均粒径が上記下限未満ではスート等のPMとの接触が阻害される傾向にあり、他方、上記上限を超えるとAg粒子(酸素遊離材粒子)を覆うことが困難となる傾向にある。
また、このような凝集体においては、大気中500℃で5時間焼成した後、並びに、酸素10容量%及び窒素90容量%からなる雰囲気中800℃で5時間焼成した後のいずれにおいても、前記Ag粒子(酸素遊離材粒子)の平均粒径が前記CeO微粒子(酸素活性種移動材粒子)の平均粒径の1.3倍以上であることが好ましく、2.0倍以上であることがより好ましい。Ag粒子及びCeO微粒子の平均粒径が上記条件を満たさないと、Ag粒子の周囲が十分にCeO微粒子により覆われず、PMや、HC、CO又はNO等の成分を酸化する能力が低下する傾向にある。
また、このような凝集体は、Ag粒子の周囲がCeO微粒子により覆われてなるものである。かかるAg粒子とCeO微粒子との比率は特に限定されないが、Ag粒子とCeO微粒子との比率(モル比)が4:1〜1:9であることが好ましく、35:65〜60:40であることがより好ましく、40:60〜60:40であることが特に好ましい。Ag粒子の量が上記下限より少ないと、気相から遊離される活性酸素種の量が低下してPMや、HC、CO又はNO等の成分を酸化する能力が低下する傾向にあり、他方、CeO微粒子の量が上記下限より少ないと、PMや、HC、CO又はNO等の成分に移動できる活性酸素種の量が低下してPMを酸化する能力が低下する傾向にある。そして、上記の比率が40:60〜60:40であると、Ag粒子の周囲をCeO微粒子が覆い易く、且つ、それらの凝集体を形成しない両成分の割合が低下するため特に好ましい。
このような凝集体の平均粒径、すなわち前記Ag粒子が前記CeO微粒子により覆われてなる凝集体の平均粒径は特に制限されないが、0.05〜0.5μmであることが好ましく、0.07〜0.2μmであることがより好ましい。平均粒径が上記下限未満では含酸素物質とAg粒子との接触が阻害される傾向にあり、他方、上記上限を超えるとCeO微粒子とPM等の接触が阻害される傾向にある。
また、このような凝集体は、分散性が高いことが好ましく、全凝集体のうちの60容量%以上のものが前記平均粒径±50%の範囲内の粒径を有していることが好ましい。前記凝集体の分散性が、このように高いとPMを酸化する能力がより向上すると共に、DPF等の担体により均一に担持させることが可能となる傾向にある。
さらに、前記凝集体は、前記セリア微粒子の表面に担持されている第三の金属超微粒子を更に備えていてもよい。かかる第三の金属超微粒子が存在すると、セリア微粒子(酸素活性種移動材粒子)が、酸素活性種をPMや、HC、CO又はNO等の成分に供給し易くなる傾向にある。
このような第三の金属超微粒子を構成する第三の金属としては、Hのイオン化傾向より小さいイオン化傾向を有するもの(例えば、Au,Pt,Pd,Rh,Ru,Ag,Hg,Cu,Bi,Sb,Ir,Os)であることが好ましく、Agのイオン化傾向以下のイオン化傾向を有するもの(貴金属:例えば、Au,Ag,Cu,Pt,Pd,Rh,Ru,Ir,Os)であることがより好ましく、Agであることが特に好ましい。また、第三の金属超微粒子が、1〜1000個の原子からなることが好ましい。
また、前記凝集体は、前記銀粒子の周囲を覆っている前記セリア微粒子が、その表面にクラックを生じた状態で凝集していてもよい。さらに、前記凝集体の形状は特に限定されないが、前記凝集体が球状であることが好ましい。
次に、このような凝集体の製造方法について説明する。このような凝集体の製造方法としては、Agの塩とCeの塩とを含有する溶液から、Agの塩に由来するAg粒子がCeの塩に由来するCe化合物微粒子により覆われている凝集体前駆体を生成せしめる工程と、得られた凝集体前駆体を焼成することによって、核となるAg粒子と、前記Ag粒子の周囲を覆っている平均一次粒径が1〜100nmのセリアの微粒子とからなる凝集体を得る工程とを含む方法が挙げられる
このようなAgやCeの塩としては、AgやCeの硝酸塩、酢酸塩、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、無機錯塩等の水溶性の塩が挙げられ、中でも硝酸塩(例えば、硝酸銀や硝酸セリウム)が好適に用いられる。また、Agの塩とCeの塩とを含有する溶液を調製するための溶媒としては、特に制限されず、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール等の単独又は混合系溶媒)等の各種溶媒が挙げられるが、水が特に好ましい。
なお、Agの塩とCeの塩との配合量(仕込み量)は、得られるAg粒子とCeO微粒子との比率と完全には一致する必要はなく、得ようとする凝集体におけるAg粒子とCeO微粒子との組み合わせや比率の好適条件に応じてAgの塩とCeの塩との組み合わせや配合量の条件が適宜設定される。また、Ceの塩に対してAgの塩が過剰に存在するようにすると、溶液中に生成するCeO微粒子を全て凝集体の一部とさせ易くなる傾向にあり、凝集体以外の成分が溶液中に生成しないので好ましい。
また、このような凝集体の製造方法においては、前記凝集体前駆体を生成せしめる工程において、pH調整剤の存在下でCe化合物微粒子を生成せしめ、前記Ce化合物微粒子の還元作用によって前記Ag粒子を析出させることによって前記凝集体前駆体を生成せしめることが好ましい。
酸化還元反応が起きるための要件はAgとCeとの電位で説明することができるが、電位はpH依存性がある。一般的に、pHが大きくなるほど電位は低下する。したがって、このような凝集体の製造方法においては、適宜pH調整剤を添加して酸化還元反応を制御することが好ましい。また、pH調整剤を添加することによって、活性化エネルギーも変化することから、酸化還元反応を最適条件にすることが可能である。このようなpH調製剤としては、NaOH、KOH、NH、HNO、HSOが例示されるが、一般的な酸やアルカリを用いれば足りる。
なお、Agは酸性側では電位が高いため、反応が早く進行し過ぎるため、粗大なAgが析出し易くなる傾向があることから、塩基の存在下でアルカリ性とすることが好ましい。その際、pH調整剤としてNaOHを用いると沈殿が生じてしまうことから、アンモニアでアルカリ性とすることが好ましい。この場合には、アンモニアは錯化剤としても機能している。また、このような塩基の濃度は特に限定されないが、塩基としてアンモニアを用いる場合には一般的には1〜50%程度のアンモニア濃度を有する溶液を用いることが好ましい。さらに、この場合におけるCe化合物微粒子は、Ceの水酸化物であると考えられる。
また、このような凝集体の製造方法においては、前記凝集体前駆体を生成せしめる工程において、錯化剤の存在下で前記Agの塩に由来する第一の金属化合物を生成せしめ、前記Ce化合物微粒子の還元作用によって前記第一の金属化合物を還元して前記銀粒子を析出させることがより好ましい。
さらに、酸化還元反応を最適な条件にするためには、上記のようにpH調整剤を添加することが好ましいが、その場合、特にpHによっては沈殿物を生じることがある。そこで、錯化剤を用いない場合に沈殿物が生成する条件であっても、錯化剤を添加することにより、金属塩の状態とすることができる。このようにすることにより、電位や活性化エネルギーも変化するため、適宜条件を合わせることが可能となる。例えば、Agを[Ag(NHとすることが好ましい。このような錯化剤としては、アンモニア、有機酸(グリコール酸、クエン酸、酒石酸等)のアルカリ塩、チオグリコール酸、ヒドラジン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、グリシン、ピリジン、シアン化物が例示される。
また、このような凝集体の製造方法においては、前記凝集体前駆体を生成せしめる工程において、温度調整することが好ましい。反応溶液の温度条件は、酸化還元反応を支配する重要な因子である。溶媒が液体として機能している範囲で溶液の温度を適宜調整することが好ましい。例えば、30℃以上とすることが好ましく、60℃以上とすることがより好ましい。そして、1〜3気圧、100〜150℃程度の条件とすると確実に反応を起こすことができる傾向にあり、また反応時間を短縮できることから産業への応用上も好ましい。
なお、前記凝集体前駆体を生成せしめる工程において、Ag及びCeの塩溶液にpH調整剤含有溶液(例えば塩基性溶液)を添加・混合するいわゆる「沈殿法」であっても、pH調整剤含有溶液(例えば塩基性溶液)にAg及びCeの塩溶液を添加・混合するいわゆる「逆沈殿法」であってもよい。この場合において、Agの塩、Ceの塩の順、又はその逆の順序で逐次添加・混合してもよい。また、反応時間は特に限定されないが、好ましくは0.1〜24時間程度、より好ましくは0.1〜3時間程度かけて凝集させることが好ましい。また、錯化剤を用いる場合には、予め錯化剤により金属塩としてから上記操作を行ってもよい。
また、このような前記凝集体前駆体を生成せしめる工程における反応溶液中の固形分濃度は特に制限されないが、1質量%〜50質量%であることが好ましく、10質量%〜40質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることが更に好ましい。固形分濃度が前記下限未満では、凝集処理の促進効果が低下する傾向にあり、他方、上記上限を超えると銀粒子を核とした凝集体を得ることが困難となる傾向にある。このように凝集処理を行うことで、前述のように銀粒子がCe化合物微粒子により覆われている凝集体前駆体が効率良く且つ確実に得られるようになる。
さらに、このような凝集体前駆体の平均粒径は特に制限されないが、0.05〜0.5μmであることが好ましく、0.07〜0.2μmであることがより好ましい。また、かかる凝集体前駆体の分散性が高いことが好ましく、全凝集体前駆体のうちの60容量%以上のものが前記平均粒径±50%の範囲内の粒径を有していることが好ましい。凝集体前駆体の分散性がこのように高いと、得られる凝集体の分散性が高くなり、DPF等の担体により均一に担持させることが可能となる傾向にある。
そして、このような凝集処理によって得られた凝集体前駆体を、必要に応じて洗浄した後に、焼成することによって、前述の凝集体を得ることができる。かかる焼成の際の条件は特に限定されないが、一般的には酸化雰囲気(例えば、空気)中において300〜600℃で1〜5時間程度かけて焼成することが好ましい。
さらに、このような凝集体の製造方法においては、前記Ce化合物微粒子又は前記CeO微粒子の表面に第三の金属超微粒子を担持せしめる工程が更に含まれていてもよい。このように第三の金属超微粒子を担持せしめる方法としては、(i)前記凝集処理によって得られた凝集体前駆体を焼成した後にセリアの微粒子の表面に第三の金属超微粒子を担持せしめる方法と、(ii)前記凝集処理と同時にCe化合物微粒子の表面に第三の金属超微粒子を析出させる方法が例示される。
方法(i)においては、前述の第三の金属の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩等を用いて、いわゆる含浸担持させる方法、或いは、金属酸化物表面での酸化還元反応を利用する方法を採用することができる。前者の含浸担持法は、触媒等を得る際に用いられる一般的な金属超微粒子の担持法である。
一方、後者の方法は、例えばAgをセリアの微粒子中の欠陥サイト(例えば、CeOが部分的にCe3+となっている部分)により還元させることにより金属超微粒子を析出させる方法である。その際、析出反応速度を制御して金属超微粒子の粒径を制御するために、必要に応じて錯化剤を添加することが好ましい。例えば、AgNOにアンモニア水を滴下することにより[Ag(NHを生成させると、酸化還元電位が変化して析出速度が低下するため、より微細な金属超微粒子が得られる傾向にある。
また、方法(ii)は、前述の凝集処理時の酸化還元反応を利用するものであり、第三の金属がAgである場合に特に好ましい方法である。この方法においては、前述の凝集体前駆体を生成せしめる工程において、Ce化合物微粒子により第一の金属が析出されると同時に、Ce化合物微粒子の表面にも第三の金属超微粒子が析出されるものである。
また、本発明の排ガス浄化装置は、前記凝集体を備えるものであればよく特に制限されるものではないが、基材と、前記凝集体とを備えるものがより好ましい。
このような基材としては特に制限されず、DPF基材、モノリス状基材、ハニカム状基材、ペレット状基材、プレート状基材、発泡状セラミック基材等が好適に採用される。また、このような基材の材質も特に制限されないが、コージエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用される。
また、本発明の排ガス浄化装置においては、前記基材に付与する凝集体の量は特に制限されず、対象とする内燃機関等に応じてその量を適宜調整することができるが、基材体積1リットルに対して凝集体の量が10〜300g程度となる量が好ましい。なお、本発明の排ガス浄化装置としては、凝集体自身をペレット化する等して用いることもできる。
また、このような本発明の排ガス浄化装置においては、前記基材が1〜300μmの細孔を有するものであり、前記細孔内に前記凝集体の平均粒径の0.5〜50倍の平均厚さを有するコート層が前記凝集体により形成されていることが好ましい。なお、本発明の排ガス浄化装置においては、本発明の効果を損なわない限りにおいて、前記凝集体とともに他の成分を更に備えていてもよい。このような他の成分としては、核となるPt、Rh、Pd、Ru、Ir、Os、Au等の第一の金属粒子と、前記第一の金属粒子の周囲を覆っている平均一次粒径が1〜100nmのLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd等の第二の金属酸化物微粒子とからなる凝集体であってもよい。
また、このような基材としては、気孔率が30〜70%(より好ましくは50〜65%)であることが好ましい。ここにいう「気孔率」とは、基材内部の空洞部分の体積率をいう。また、このような気孔率が前記下限未満では、排ガス中の粒子状物質により閉塞し易くなるとともに前記凝集体のコート層を形成しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、排ガス中の粒子状物質を捕集しにくくなるとともに基材の強度が低下する傾向にある。
次に、基材と、凝集体とを備える排ガス浄化装置の好適な製造方法について説明する。このような排ガス浄化装置の好適な第一の製造方法は、第一の凝集体分散液を基材に接触させた後に焼成することによって排ガス浄化装置を得ることを特徴とする方法であり、また、第二の製造方法は、第二の凝集体分散液を基材に接触させた後に焼成することによって排ガス浄化装置を得ることを特徴とする方法である。
このような第一の凝集体分散液は、前記凝集体と、分散媒とを含有するものである。このような第一の凝集体分散液は、バインダーを更に含有していることが好ましい。ここで用いるバインダーとしては特に制限されず、例えばセリアゾル等が好適に用いられる。また、凝集体とバインダーとの混合比率も特に制限されず、凝集体とバインダーとの混合比率が重量比で99:1〜80:20程度であることが好ましい。例えば、バインダーを用いた場合であっても、超音波処理により容易に分散性の高い分散液(スラリー)を得ることができる。
また、第二の凝集体分散液は、上記凝集体の製造方法の過程で得られた凝集体前駆体と、分散媒とを含有するものである。このような第二の凝集体分散液においては、上述の凝集体の製造過程で得られた凝集体前駆体を含有する溶液から、系中の残存イオンを50〜99.9%分離して得られた凝集体前駆体を含有していることが好ましい。凝集する段階でもある程度の分散性はあるが、塩や錯化剤に起因する残存イオンを除去することにより非常に分散性の高い分散液を得ることができるようになる。
ここで、前記第一及び第二の凝集体分散液を基材に接触させる方法は特に制限されないが、例えばDPF等のフィルタ基材の細孔内に入り込ませる際には超音波をかけながら接触させることが好ましい。また、この場合の焼成条件は、前述の焼成条件と同様の条件が好ましい。
また、このような第二の製造方法によれば、PM、HC、CO又はNO等を酸化できる成分が凝集体自身であるゆえ、それ自身がバインダーの役割を果たし、より効果的な本発明の排ガス浄化装置を提供できる。
さらに、本発明の排ガス浄化装置においては、強制再生処理が必要となるPM堆積量の第一の基準(A)と、第一の基準(A)よりも低い基準であるPM堆積量の第二の基準(B)とに基づいて、
求められたPM堆積量が第一の基準(A)と第二の基準(B)との間にある場合に、強制再生処理のための第一の再生処理温度よりも低い第二の再生処理温度で低温再生処理を施し、
求められたPM堆積量が第一の基準(A)を超えた場合に、強制再生処理を施す、
ように前記排ガス浄化装置を制御する制御手段を更に備えることが好ましい。このような制御手段を備えることによって、前記排ガス浄化装置に堆積したPMを効率よく除去することができ、排ガス浄化装置を再生させて連続的に使用することを可能とする。
このような前記制御手段としては、例えばエンジンコントロールユニット(ECU)が挙げられる。このようなECUは、マイクロプロセッサ及びその動作に必要なROM、RAM等の周辺装置を組み合わせたコンピュータとして構成されているものである。
また、前述の第一の再生処理温度としては、600℃以上(より好ましくは600〜650℃)の温度であることが好ましい。また、第二の再生処理温度は、前記第一の再生処理温度よりも低い温度であり、200〜500℃であることが好ましく、250〜400℃程度であることが好ましい。更に、「強制再生処理」とは、前記第一の再生処理温度による熱処理をいい、「低温再生処理」とは、前記第二の再生処理温度による熱処理をいう。なお、このような熱処理の時間は、再生処理を目的として排ガス温度を上昇させる際に生じる燃費悪化を抑制するという観点から、不必要に長くすることは好ましくなく、1〜10分程度とすることが好ましい。
また、第一の基準(A)及び第二の基準(B)は、排ガス浄化装置の大きさ、形態、基剤の種類等に応じて適宜その値を設定することができる。また、本発明においては、第一の基準(A)の方が第二の基準(B)よりも大きな値となる。さらに、このような第二の基準(B)の好適な値は、基材の種類等によって異なるものであることから特に制限されるものではないが、例えば、気孔率が65%の基材を用いた場合には、第二の基準(B)は基材1Lあたり1.5g/L以下であることが好ましく、1.0g/L以下であることがより好ましく、0.5g/L以下であることが更に好ましい。
このようなPMの堆積量を測定する方法としては特に制限されず、例えば、以下のような方法を採用できる。すなわち、このようなPMの堆積量を測定する方法としては、内燃機関の運転状況及び排ガス浄化装置の使用履歴等とPMの堆積量とに関するマップを予め作成しておき、そのマップに基づいてPMの堆積量を算出する方法、前記凝集体を排ガス管等に配置した場合には前記凝集体を配置した位置の前後の位置の排ガスの圧力差とPMの堆積量とに関するマップを予め作成しておき、そのマップに基づいて圧力差を測定してPMの堆積量を算出する方法、圧力差を吸入空気量で補正することによりPM堆積量を算出する方法、及び、それらの方法をすべて採用する方法等を適宜採用することができる。なお、このようなPMの堆積量を測定においては、それに必要な各種センサーを適宜用いてもよい。
以下、このような制御手段を用いた場合について、フローチャートを参照しながら説明する。図1は、このような制御の好適な一実施形態を示すフローチャートである。図1に示すステップ1ではコントロールユニットにおいてPMの堆積量を算出し、ステップ2では、そのPMの堆積量が第二の基準(B)以上であるか否かを判断する。そして、PMの堆積量が第二の基準(B)以上であればステップ3へ進み、PMの堆積量が第二の基準(B)未満であれば再生処理を施さずにそのまま終了する。そして、ステップ3では、PM堆積量が第一の基準(A)を超えたか否かを判断する。そして、PMの堆積量が第一の基準(A)以下である場合、すなわち、PMの堆積量が第一の基準(A)と第二の基準(B)との間にある場合には、ステップ4に進み低温再生処理が施される。また、ステップ3でPMの堆積量が第一の基準(A)を超えたと判断された場合には、ステップ5に進み強制再生処理が施される。
また、このような低温再生処理等を施す場合においては、第二の再生処理温度として複数の温度条件が設定し、求められたPM堆積量が第一の基準(A)と第二の基準(B)との間にある場合に、低温側の第二の再生処理温度で低温再生処理を施し、その後のPM堆積量が第二の基準(B)未満となった場合は低温再生処理を終了し、該PM堆積量が未だ第一の基準(A)と第二の基準(B)との間にある場合は、順次高温側の第二の再生処理温度に変更して低温再生処理を繰り返すように前記排ガス浄化装置を制御することがより好ましい。
このようにして繰り返して低温再生処理を施すことで、強制再生処理を施すことなく、より低温で排ガス浄化装置を再生することが可能となり、強制再生処理を施す回数を大幅に減らすことができるため、再生時の内燃機関の燃費の低下を低減することができ、更には、基材を更に備える場合に、基材の溶損、割れ等を十分に抑制することができる。なお、低温再生処理を繰り返す際には、第一の基準(A)と第二の基準(B)との間にある場合に第二の再生処理温度を順次高温側に変更していくこととなるが、複数設定されている第二の再生処理温度のうちのより低い温度で再生処理を終了させることが好ましい。なお、このような第二の再生処理温度として設定される複数の温度の条件は、特に制限されず、前述のように200〜500℃の温度範囲内にあることが好ましく、基材の種類やPMの性状等によってPMを浄化するのに最適な温度に適宜設定することができる。
以下、このようにして繰り返して低温再生処理を施すように制御する場合の好適な例を、フローチャートを参照しながら説明する。図2は、このような制御の好適な一実施形態を示すフローチャートである。このような制御を行う場合においては、先ず、コントロールユニットにおいてPMの堆積量を算出し、PMの堆積量が第一の基準(A)と第二の基準(B)との間にある場合に、図2に示すステップ1に進む。このようなステップ1においては、低温再生処理の回数iが1であると認定する。次に、ステップ2に進み第二の再生処理温度をT(iは低温再生処理の回数を示し、例えば、第二の再生処理温度がT、T、T、Tと4段階に設定されていた場合であってi=1の場合にはTが採用される。なお、温度は、T<T<T<Tの関係にある。)に設定して昇温し、低温再生処理を施す。そして、低温再生処理後にステップ3に進み、PMの堆積量Xi(iは低温再生処理の回数を示す)を算出する。その後、ステップ4において、このようにして算出されたPMの堆積量Xiが第二の基準(B)未満であるか否かを判定し、Xiが第二の基準(B)未満である場合には低温再生処理を終了する。そして、PMの堆積量Xiが未だ第二の基準(B)以上である場合、すなわち、未だXiが第一の基準(A)と第二の基準(B)との間にある場合には、ステップ5に進み、それまでに施された低温再生処理の回数iと、第二の再生処理温度として設定されている温度の設定数e(例えば、第二の再生処理温度がT、T、T、Tと4段階に設定されていた場合にはe=4となる)とが同一であるか否かを判定し、i=eである場合には、低温再生処理を終了する。また、それまでに施された低温再生処理の回数iの値が、第二の再生処理温度の設定数e未満である場合(e>iの場合)には、ステップ6に進み、低温再生処理の回数iをi+1回と認定して、再度ステップ2に進み、i+1回目の低温再生処理を施す。なお、このようなi+1回目の低温再生処理は、i回目の処理よりも高い温度のTi+1まで昇温する再生処理である。そして、このような制御の下では、ステップ4又はステップ5において終了条件を満たすものと判断されるまで、ステップ2〜6が順次繰り返され、繰り返し低温再生処理が施される。
また、本発明の排ガス浄化装置においては、前記凝集体を配置した後の位置にNOx浄化触媒を更に配置させてもよい。このようにしてNOx浄化触媒を配置することで、排ガス浄化の際に、前記凝集体によりPMが十分に除去された排ガスがNOx浄化触媒に接触するため、NOx浄化触媒がPMにより被毒劣化することが十分に抑制される。
なお、このような本発明の排ガス浄化装置は、内燃機関から排出される排ガスを接触させることで、PMを含む排ガスを十分に浄化することができる。そして、このような排ガス浄化装置により、気相中の酸素を酸化剤とすることが可能であり、より低温の温度領域で十分にPM、HC、CO又はNO等の成分を酸化することができ、PMが堆積した場合においても比較的低温の再生処理で排ガス浄化装置を十分に再生させることが可能となる。更に、本発明の排ガス浄化装置は、前記制御手段を更に備えた場合には、触媒活性の劣化を防止しながら、より長期間の使用が可能となる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
先ず、50.46gのCe(NO・6HOと、5.59gのLa(NOと、29.62gのAgNOとを120mLの水で溶解せしめた溶液を調製し、次に、25%アンモニア水38.21gを水100gに希釈したアンモニア水を調製した。そして、上記アンモニア水を撹拌しているところに前述のようにして調製した溶液を投入し、凝集体を調製した。
次に、得られた凝集体を、テストピースサイズ(35ml)のDPF(コージェライト製、気孔率65%、平均細孔径30μm)に以下のコート方法で被覆せしめて本発明の排ガス浄化装置を得た。すなわち、逆沈殿、凝集処理後の沈殿(凝集体)を遠心分離により回収し、水を加えることによって15質量%濃度のスラリーを得た。次いで、そのスラリーをDPFの細孔内に入り込むように接触させた。その状態で吸引したのち大気中500℃で1時間の焼成を施しながら、担持量(被覆量)が150g/Lとなるまで繰り返した。この方法のメリットは、焼成時に沈殿自身が焼結してバインダーの役割を果たすため、スート酸化に有効な成分のみからなる被覆を形成することができる。また、上記のスラリーの粒度分布を測定すると、約0.1μmの凝集体が安定に分散していたことから、DPFへの被覆が容易であることが確認された。なお、上記のコート方法では超音波をかけずに接触させたが、超音波をかけながら行ってもよい。
(実施例2)
実施例1と同様にして得られた排ガス浄化装置に対して、O10%、N90%からなる雰囲気中において800℃で5時間焼成する耐久試験を行い、耐久試験後の本発明の排ガス浄化装置を得た。
(実施例3)
凝集体をコートする際に担持量(被覆量)を50g/Lとした以外は実施例1と同様にして本発明の排ガス浄化装置を得た。
(実施例4)
2LサイズのDPF(コージェライト製、気孔率65%、平均細孔径30μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして本発明の排ガス浄化装置を得た(被覆量:150g/L)。
(実施例5)
凝集体を得る際にLa(NOを用いず、凝集体中のAgの濃度が60mol%となるようにした以外は実施例1で採用した凝集体の製造方法と同様の方法を採用して凝集体を調製した。
(比較例1)
先ず、DPF(コージェライト製、気孔率65%、平均細孔径30μm、直径14.38cm×長さ15.24cm)を、325mlの蒸留水中に125gのCe(NOx6HOと、18gのZrO(NOと、6.4gのSm(NOx6HOと、2.1gのY(NOx6HOと、38.4gのクエン酸とを混合した溶液に含浸し、105℃で乾燥した後、600℃で4時間焼成した。
次いで、325mlの蒸留水中に68.5gのAgNOと、155gのCe(NOx6HOと、8.5gのZrO(NOと、12.8gのSm(NO)3x6HOと、3.0gのY(NOx6HOとを混合した溶液を基材に含浸した後、室温で一晩乾燥し、更に、105℃で10時間乾燥した後、600℃で4時間焼成した。
そして、100mlの蒸留水中に69.6gのCe(NOx6HOと、5.4gのCu(NOx3HOと、0.51gのAgNO及と、9gの尿素とを混合した溶液を、105℃にされたDPFに含浸し、80℃で乾燥した後、更に、650℃で4時間焼成して、比較のための排ガス浄化装置を製造した。なお、前記排ガス浄化装置における基材表面の触媒層の組成は、Sm、Zr及びYの添加により安定化されたセリアを持つAg0.5Ce0.5であった。
[実施例1及び比較例1で得られた排ガス浄化装置の特性の評価]
〈PM酸化性能評価試験1〉
実施例1及び比較例1で得られた排ガス浄化装置を用いて、ディーゼルエンジンの排気中において200℃で約2g/LのPMを堆積させ、その後500℃、N雰囲気を15分間保持することにより未燃炭化水素成分を除去するようにし、更に、流量30L/min、O10%雰囲気において、昇温速度20℃/分で昇温させた。そして、このときのCOピークによりPM酸化性能を比較した。得られた結果を図3に示す。なお、堆積させたPMの性状をあわせるため、PMを堆積させる処理は同時に行った。
図3に示すグラフからも明らかなように、本発明の排ガス浄化装置のCOピークが440℃付近にあり、比較のための排ガス浄化装置のCOピークが600℃付近にあることから、本発明の排ガス浄化装置においては、比較的低温で十分にPMを酸化して除去できることが確認された。
〈PM酸化性能評価試験2〉
実施例1及び2で得られた本発明の排ガス浄化装置をそれぞれ用いた以外は、酸化性能評価試験1と同様の方法を採用してPMを堆積させ、COピークによりPM酸化性能を測定した。得られた結果を図4に示す。
図4に示す結果からも明らかなように、先ず、実施例1で得られた本発明の排ガス浄化装置においては、3つのピークが見られることが確認された。このようなピークは、壁内で捕集されているドライスートと、壁内で捕集されている燃え難いスートと、壁外に堆積しているスートにそれぞれ起因するものであると推察される。また、初期(実施例1)のものと耐久試験後(実施例2)のものとで同様のピークを示していることから、本発明の排ガス浄化装置は耐久性が高いことが分かった。
このように、実施例1で得られた本発明の排ガス浄化装置においては、PMを酸化した際のCOピークが3つあることから、各ピーク温度(T2〜T4)と、後述するスート酸化速度の測定試験(図12参照)により酸化性能が確認された温度TG(T1)とを前述の第二の再生処理温度として設定して、前述のような低温再生処理を施すことで、効率よく再生できることが確認された。
〈HC酸化性能評価試験〉
実施例3で得られた本発明の排ガス浄化装置を用いて、HCの酸化性能を評価した。すなわち、HCの酸化性能の評価に際しては、流量30L/min、C(THC)500ppm、O10%雰囲気において、昇温速度20℃/分で昇温させて、CO、CO2、THCの濃度(vol%)を測定した。結果を図5に示す。
図5に示す結果からも明らかなように、本発明の排ガス浄化装置は200℃以上の温度領域で十分な活性を示し、また、HCを酸化してもCOが発生しないことが確認された。
〈NO酸化性能評価試験〉
実施例3で得られた本発明の排ガス浄化装置を用いて、NOの酸化性能を評価した。すなわち、NOの酸化性能の評価に際しては、流量30L/min、NO600ppm、O10%雰囲気において、昇温速度20℃/分で昇温させて、NOの濃度(vol%)を測定した。結果を図6に示す。
図6に示す結果からも明らかなように、本発明の排ガス浄化装置においては、NOを十分に酸化できることが確認された。なお、350℃以上の領域で、NOの濃度が上昇に転じているが、これは化学平衡に支配されたことによるものである。
〈PM酸化性能評価試験3〉
実施例4で得られた排ガス浄化装置と、比較のための2LサイズのDPF(コージェライト製、気孔率60%、平均細孔径30μm)とを用い、それぞれをエンジンからの配管中に設け、圧力変動を測定することによりPM酸化性能を評価した。なお、エンジンは、2Lディーゼルエンジンを用い、3000rpm、11.0kgmの運転条件で基材入り口の圧力を測定した。基材入り口の排気温度は約360℃であった。そして、安定した運転条件となった時点で、ある時点からの圧力差の時間変化を測定した。得られた結果を図7に示す。
図7に示した結果から明らかなとおり、DPF基材のみであるとPMが酸化しないことから圧力は時間とともに単調に増加したのに対して、本発明の複合材料基材においては若干の圧力変動は見られるものの、ほぼ一定の圧力で推移した。この結果から、本発明の複合材料基材によればPMを連続的に酸化できていることが確認された。また、このような結果から、PMの堆積量と圧力とが比例する関係にあると考えられる。そのため、前述のような制御手段を採用する際に、PMの堆積量の測定方法として圧力の変化を測定して、PMの堆積量を測定する方法を好適に採用できることが分かった。
〈PM酸化性能評価試験4〉
実施例1で得られた排ガス浄化装置を3つ用いて、それぞれにディーゼルエンジンの排気中において200℃でPMを堆積させ、その後500℃、N雰囲気を15分間保持することにより未燃炭化水素成分を除去するようにし、更に、流量30L/min、O10%雰囲気において、昇温速度20℃/分で昇温させた。なお、各排ガス浄化装置のPMの堆積量をそれぞれ1g/L、2g/L、5g/Lとした。そして、このときのCOピークによりPM酸化性能を比較した。得られた結果を図8(PM堆積量1g/L)、図9(PM堆積量2g/L)、図10(PM堆積量5g/L)に示す。なお、堆積させたPMの性状をあわせるため、PMを堆積させる処理は同時に行った。
図8〜10に示す結果からも明らかなように、本発明の排ガス浄化装置(実施例1)においては、より低温で再生処理を施すために、PM堆積量がより少ない状態で低温再生処理を施すことが好ましいことが確認され、例えば、PMの堆積量が1g/L以下である場合に低温再生処理を施すことが好ましいことが分かった。
〈酸化速度の測定試験〉
実施例1で得られた本発明の排ガス浄化装置を用い、ディーゼルエンジンの排気中において200℃でPMを2g/L、堆積させ、その後500℃、N雰囲気を15分間保持することにより未燃炭化水素成分を除去するようにし、更に、流量30L/min、O10%雰囲気において、各温度に10分間保持し、測定されるCOの濃度からPMの酸化速度を求めた。得られた結果を図11に示す。
図11に示す結果からも明らかなように、300℃程度で十分にPMを酸化することが可能であることが確認された。
<スート酸化速度の測定試験>
先ず、実施例1〜2で製造されたDPFにコート前の凝集体と、実施例5で得られた凝集体を用い、以下の混合方法でスート(カーボン組成99.9%以上)と混合して測定用サンプルを作製した。なお、各凝集体とスートとの混合比は、重量比(g)で2:0.1とした。なお、実施例2で製造された凝集体には、実施例2で採用した方法と同様の方法を採用して耐久試験を施した。
[混合方法]スターラー(アズワン社製、MMPS−M1)とマグネット乳鉢(アズワン社製、MP−02)を用い、スピード目盛り「3」の電動混合にて3分間混合して均一混合物(測定用サンプル)を得た。
次に、得られた測定用サンプル(実施例1〜2及び5)について、熱重量分析計「GC−MS5972A」(Hewlett Packard社製)を用い、O10%/Heバランス雰囲気において各測定温度で10分間温度を保持し、そのときの重量Mと全スート重量Mからスート酸化速度を算出した。なお、算出法は、最初の重量Mの測定後に最終的に800℃まで昇温したときの重量を元にスート重量Mを算出し、測定時間t(ここでは1/6時間)から次式:
スート酸化速度=(M−M)/{(M+M)×t/2}
により算出した。得られた結果を図12に示す。
図12に示した結果から明らかなとおり、いずれの凝集体においても240℃付近からスート酸化活性が認められた。また、初期の凝集体(実施例1)及び耐久試験後の凝集体(実施例2)は、ともにスート酸化活性が非常に高いことが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、気相中の酸素を酸化剤とすることができ、より低温の温度領域で十分にPM、HC、CO又はNO等の成分を酸化することができ、PMが堆積した場合においても比較的低温の再生処理で十分に再生させることが可能な排ガス浄化装置を提供することが可能となる。
したがって、本発明の排ガス浄化装置は、PM浄化性能に優れるため、大型トラックのディーゼルエンジンから排出される排ガスを浄化するための排ガス浄化装置等として特に有用である。
本発明の制御手段によって行われる制御の好適な一実施形態を示すフローチャートである。 本発明の制御手段によって行われる制御の好適な他の実施形態を示すフローチャートである。 実施例1及び比較例1で得られた排ガス浄化装置のPM酸化性能試験の結果を示すグラフである。 実施例1〜2の本発明の排ガス浄化装置のPM酸化性能試験の結果を示すグラフである。 実施例3で得られた本発明の排ガス浄化装置のHC酸化性能試験の結果を示すグラフである。 実施例3で得られた本発明の排ガス浄化装置のNO酸化性能試験の結果を示すグラフである。 実施例4で得られた排ガス浄化装置と比較のための2LサイズのDPFのPM酸化性能試験の結果を示すグラフである。 PM堆積量1g/Lとした実施例1で得られた排ガス浄化装置のPM酸化性能試験の結果を示すグラフである。 PM堆積量2g/Lとした実施例1で得られた排ガス浄化装置のPM酸化性能試験の結果を示すグラフである。 PM堆積量5g/Lとした実施例1で得られた排ガス浄化装置のPM酸化性能試験の結果を示すグラフである。 PM堆積量2g/Lとした実施例1で得られた本発明の排ガス浄化装置の酸化速度測定試験の結果を示すグラフである。 実施例1〜2及び5で得られた排ガス浄化装置のスート酸化速度を測定した結果を示すグラフである。

Claims (6)

  1. 排ガス中のPM、HC、CO、NOを酸化して浄化するための排ガス浄化装置であって、
    排ガス管と、前記排ガス管内に配置した凝集体とを備え、
    前記凝集体が、核となる銀粒子と、前記銀粒子の周囲を覆っている平均一次粒径が1〜100nmのセリア微粒子とからなり、
    前記凝集体の平均粒径が0.05〜0.5μmであり、且つ
    前記銀粒子と前記セリア微粒子との比率(モル比)が35:65〜60:40であることを特徴とする排ガス浄化装置。
  2. 基材と、前記基材に担持された前記凝集体とを備えることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化装置。
  3. 前記基材が1〜300μmの細孔を有するものであり、前記細孔内に前記凝集体の平均粒径の0.5〜50倍の平均厚さを有するコート層が前記凝集体により形成されていることを特徴とする請求項に記載の排ガス浄化装置。
  4. 前記基材の気孔率が30〜70%であることを特徴とする請求項2又は3に記載の排ガス浄化装置。
  5. 強制再生処理が必要となるPM堆積量の第一の基準(A)と、第一の基準(A)よりも低い基準であるPM堆積量の第二の基準(B)とに基づいて、
    求められたPM堆積量が第一の基準(A)と第二の基準(B)との間にある場合に、強制再生処理のための第一の再生処理温度よりも低い第二の再生処理温度で低温再生処理を施し、
    求められたPM堆積量が第一の基準(A)を超えた場合に、強制再生処理を施す、
    ように前記排ガス浄化装置を制御する制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
  6. 第二の再生処理温度として複数の温度条件が設定されており、求められたPM堆積量が第一の基準(A)と第二の基準(B)との間にある場合に、低温側の第二の再生処理温度で低温再生処理を施し、その後のPM堆積量が第二の基準(B)未満となった場合は低温再生処理を終了し、該PM堆積量が未だ第一の基準(A)と第二の基準(B)との間にある場合は、順次高温側の第二の再生処理温度に変更して低温再生処理を繰り返すように前記排ガス浄化装置を制御することを特徴とする請求項5に記載の排ガス浄化装置。
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