JP5091065B2 - 走査プローブ顕微鏡 - Google Patents

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本発明は走査プローブ顕微鏡し、更に詳しくは溶液中に入れた試料の原子間力顕微鏡像を薄膜を介してSPM測定を行なって得るようにした走査プローブ顕微鏡に関する。
走査プローブ顕微鏡(SPM)は、カンチレバの先端部に形成された探針と試料間の間に働く物理量を測定して試料表面を観察するようにした顕微鏡である。SPMは、原理上、観察環境を選ばないため、真空、大気、溶液中といった環境下で利用されている。近年では、SPMの一手法であるNC−AFM(Non Contact−Atomic Force Microscope:非接触原子間力顕微鏡)において、真空、大気中で原子分解能が得られている。
更に、NC−AFMと同じ検出方式であるFM検出では、溶液中においても原子分解能が得られており、ナノバイオ分野への展開が期待されている。このように、SPMの大きな特徴は、試料表面を原子レベルの分解能で観察できることであるが、NC−AFM技術を応用したSKPM(Scanning Kelvin Probe Force Microscope:走査ケルビンプローブフォース顕微鏡)では、試料表面の電位分布を高分解能で観察できたりする。
またコンタクトAFM技術を応用した粘弾性AFMでは、試料表面の粘性、弾性の分布が観察できたりする。更に、プローブと試料間に電圧を印加して、その間に流れる微小電流を測定することで、表面の導電性の評価も可能である。このような応用は、物性評価に利用されており、測定の容易さから真空や大気圧下での測定が一般的である。
近年、溶液中で原子分解能が得られている溶液中SPMについて説明する。図11は走査プローブ顕微鏡の従来構成例を示す図である。図11は、カンチレバを含めた開放型試料ホルダ周りの構造を示す。レーザダイオード(LD)光源1からのレーザ光がカンチレバ2に照射される。そして、カンチレバ2からの反射光が分割タイプの光検出器(フォトディテクタ:PD)3に照射され、光てこの原理によりカンチレバ2の変位(たわみ角)が検出される。
一方、スキャナ4には、着脱可能な試料ホルダ5が固定されており、試料6がその上に例えば両面テープ等で固定されている。その上に溶液7が滴下されており、表面張力によりカバーガラス8に液面が密着されている。図のAは表面張力により形成された溶液の形状を示している。
カンチレバ2は、カンチレバ載せ台9に固定用金具10で挟み込み、固定用ビス11で固定されている。カンチレバ載せ台9は、加振用PZT12を介してカンチレバホルダベース13に接着剤等で固定されている。この構造により、カンチレバ2をその固有振動数で発振させ、探針2a−試料6間に働く力を固有振動数のプラス側への周波数シフトとして検出するFM検出AFM観察が可能になり、原子分解能が得られる。FM検出については、以下のSKPMの中で説明する。ここで、探針2aはカンチレバ2の先端部に設けられた突起であり、プローブとも呼ばれる。
図12はFM検出方式のSKPMの構成例を示す図である。図11と同一のものは、同一の符号を付して示す。カンチレバ2の背面にはレーザダイオード1からレーザ光が照射され、その反射光は光検出器3により検出される。この光てこ方式によりカンチレバ2の振動変位が検出され、バンドパスフィルタが内蔵されたプリアンプ14により電気的に増幅される。
電気的に増幅されたカンチレバ2の変位信号は、アンプ調整回路15を介して加振用PZT12に入力されるループが組まれている。図示していないが、このループには、位相シフタも組み込まれており、カンチレバ2の固有振動数で正帰還発振するように設定されている。アンプ調整回路15では、オートマチック・ゲインコントロール(AGC)等によりカンチレバ2の振動振幅、或いは加振用PZT12に入力される電圧振幅が一定になるように制御されている。
プリアンプ14から出力される周波数f0の発振波形は、途中で分岐されて、PLLで構成されているFM復調器16に入力される。そして、その発振周波数に相当する電圧を出力する(f/V変換)。即ち、周波数f0からVf0に変換される。
探針2aと試料6間に作用する力の勾配F’とバネ定数kのカンチレバ2の固有振動数f0の間には、
0∝√(k−F’)
の関係があり、f0の変化(周波数シフト)はほぼF’に相当する。
f/V変換された周波数に相当する信号は、エラーアンプ17(エラーアンプ1)によりその周波数が固有振動数からある一定量シフトするように、フィルタ18,Zピエゾドライバ19を介してPZTスキャナ4のZ動が制御される(フィードバック1)。
一定に保持される周波数シフトは基準電圧Ref.Vによって設定される。この時のZ動を制御している信号(フィルタ18の出力)が表面の凹凸(Topography(トポグラフィ)信号)に相当し、スキャン信号(X,YScan)によりPZTスキャナ4が2次元的にスキャンされ、その時のZ動を輝度信号とすることで、試料の凹凸像(Topo像)が得られる。以上がFM検出を用いたAFMの動作である。
カンチレバ2の固有振動数f0は探針2aと試料6間の静電気力によってもシフトする。そこで導電性カンチレバ2に発振器21及びエラーアンプ22(エラーアンプ2)からの電圧(VDC+VACsin(ωt))を印加した場合、接地された試料6と探針2a間に電位差が生じ、静電気力が作用する。
印加電圧の交流成分の周波数がFM復調器16の動作帯域より小さく、且つフィードバック1の帯域を越えた値(追従できない値)に設定されれば、FM復調器16の出力Vf0にその交流成分による変調が現れる。この信号をロックインアンプ23でω(角周波数)を参照信号として検出すると、ω成分の振幅に相当する出力が得られる。
この出力がゼロの時、カンチレバの探針2aと試料6間の静電気力が最小となり、この状態を維持するような直流電圧(VDC)がエラーアンプ22(エラーアンプ2)から加算器24を経てカンチレバ探針2aの電位としてフィードバックされる(フィードバック2)。このVDCが探針2aに対する試料表面のCPD(Contact Potecial Difference)であり、試料表面のTopo信号と同時に表示することでNC−AFM像(Topography Signal)と電位像(Potential Signal)が同時に観察される。
従来のこの種の装置としては、位相比較器を有し周波数シフトを電圧に変換して周波数がカンチレバの固有振動数より一定量シフトするようにZ動駆動する第1のフィードバック手段と、該第1のフィードバック手段の位相比較器の出力を直接取り出してフィルタを介してロックイン検出してカンチレバの探針・試料間の静電気力が最小となるようにカンチレバの電位にフィードバックする第2のフィードバック手段とを備えたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
また、第1の面に試料が保持される膜と、該膜の第2の面に接する雰囲気を減圧する真空室と、該真空室に接続され、膜を介して試料に一次線を照射する一次線照射手段と、一次線の照射により試料から発生する二次的信号を検出する信号検出手段と、前記真空室内において、膜と一次線照射手段との間の空間を仕切るための開閉バルブを備えたものが知られている(例えば特許文献2参照)。
また、先端部の表面が導電性材料からなるカンチレバと、試料及びカンチレバ先端部の導電性材料の電位をそれぞれ独立に制御する手段と、試料及びカンチレバ先端部の導電性材料に流れる電流をそれぞれ独立に検出する手段とを備えたものが知られている(例えば特許文献3参照)。
特開2004−226237号公報(段落0013〜0019、図1、図2)。 特開2007−292702号公報(段落0027〜0052、図1、図2) 特開平8−86795号公報(段落0038〜0043、図4〜図9)
溶液中SPMで電位測定などの電気的特性を測定/観察しようとした場合、細胞の培養液が電解質のためSKPMやAFMによる電流測定ができないという問題がある。また、細胞のような生体試料では、表面の凹凸が大きく、凹凸像と同時に粘弾性測定のような機械的特性を測定/観察した場合に、凹凸の影響によるアーチファクトが大きくなるという問題がある。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、溶液中内に探針(プローブ)を配置せずに溶液中内の電気特性を測定/観察することができる走査プローブ顕微鏡を提供することを目的とし、また観察面を平坦化して機械的特性を測定/観察することができる走査プローブ顕微鏡を提供することを目的としている。
(1)請求項1記載の発明は、探針を先端に有し、該探針が試料の表面に近接配置されるカンチレバと、前記試料と前記探針とを相対的にX,Yスキャンするスキャン手段と、前記試料と前記探針との距離を相対的に変化させるZ動駆動手段とを備え、前記カンチレバと前記試料との間に薄膜を配置し、該薄膜を隔て前記試料の特性を得るようにした走査プローブ顕微鏡であって、前記薄膜で構成された開放型の或いは密閉型のシャーレを設け、該シャーレの中に流動体物質又は溶液と共に前記薄膜に吸着した前記試料を配置したことを特徴とする。
(2)請求項2記載の発明は、前記試料の特性は、機械的又は電気的又は光学的又は磁気的又は表面形状のうちの少なくとも一つであることを特徴とする
)請求項記載の発明は、前記カンチレバ側を真空にしたことを特徴とする。
)請求項記載の発明は、前記試料が透明の場合、前記薄膜を底面とするシャーレに前記試料を配置し、前記試料側に光学顕微鏡を配置して、前記試料に対する探針或いはカンチレバ位置の確認を行えるようにしたことを特徴とする。
)請求項記載の発明は、前記薄膜を隔てて、流動体物質又は溶液中における前記薄膜に吸着した前記試料のフォースモジュレーションを行なうことを特徴とする。
)請求項記載の発明は、前記カンチレバと前記試料、或いは溶液中電極間に電圧を印加して前記薄膜を介して走査ケルビンプローブフォース顕微鏡(SKPM)観察像を測定するようにしたことを特徴とする。
)請求項記載の発明は、前記走査ケルビンプローブフォース顕微鏡観察における2ω成分と探針−試料間バイアス電圧依存の力勾配(F−Vカーブ)測定の2次の項の係数を求めるようにしたことを特徴とする。
)請求項記載の発明は、前記薄膜を隔てて、流動体物質又は溶液中における前記薄膜に吸着した前記試料の電流を電流検出AFM法で測定するようにしたことを特徴とする。
)請求項記載の発明は、前記カンチレバと前記試料、或いは溶液中電極間に電圧を印加して前記薄膜を介してコンタクトAFM観察を行ない、探針或いは試料側電極に流れる電流を検出することを特徴とする。
10)請求項10記載の発明は、前記薄膜を隔てて、流動体物質又は溶液中における前記薄膜に吸着した前記試料のSTM探針からの電子線照射によるカソードネミネッセンス計測を行なうようにしたことを特徴とする。
11)請求項11記載の発明は、前記薄膜を隔てて、流動体物質又は溶液中における前記薄膜に密着した試料のSNOM法による光学特性測定を行なうようにしたことを特徴とする。ここで、SNOMとはScanning Nearfield Optical Microscopeの略である。
12)請求項12記載の発明は、前記薄膜を隔てて、流動体物質又は溶液中における前記薄膜に吸着された試料のMFM法による磁気特性を測定するようにしたことを特徴とする。
13)請求項13記載の発明は、前記薄膜を隔てて、流動体物質又は溶液中における前記薄膜に吸着した試料を冷却し、凝固或いは粘性を大きくすることにより、電荷や磁性特性を動きにくくしたことを特徴とする。
(1)請求項1記載の発明によれば、薄膜を隔てて試料を観察するので、試料の凹凸の影響を受けず、安定した試料特性の情報を観察することができる。また、薄膜を隔てて試料を配置できるため、試料の保管環境(溶液中、特殊ガス中、真空中、凍結状態)に保持した状態で観察することができる。また、開放型シャーレを使用することで、外部から試料への電圧印加やマニピュレーション等を容易に行なうことができる。また、密閉型シャーレの場合には、汎用機で容易に適用することができる。
(2)請求項2記載の発明によれば、薄膜を隔てて試料を観察するので、試料の凹凸の影響を受けず、安定した機械的又は電気的又は光学的又は磁気的又は表面形状特性の情報を観察することができる。
)請求項記載の発明によれば、カンチレバ側を真空にすることで、薄膜表面の水等の吸着層の影響が除去でき、SPMとしての力の検出感度が向上し、機械的又は電気的又は光学的又は磁気的特性等の信号検出感度も向上する。また、カンチレバ側を真空にすることで、薄膜表面の水等の吸着層の影響が除去でき、薄膜表面での電荷の放電(ディスチャージ)を抑制でき、電気的等の信号検出を正確に行なうことができる。
)請求項記載の発明によれば、試料側に光学顕微鏡を配置することにより、薄膜を隔ててカンチレバやカンチレバ探針が観察できるため、観察位置の位置合わせを容易に行なうことができる。
)請求項記載の発明によれば、薄膜を隔てて流動体物質や溶液中における薄膜に吸着した試料を粘弾性測定することにより、カンチレバが吸引され、従来は測定ができなかった流動体物質や凹凸が激しく正確に測定できなかった試料においても容易に粘弾性測定を行なうことができる。
)請求項記載の発明によれば、SKPM観察やF−Vカーブ測定において、試料側に電極を設けることにより、直接或いは試料により近い位置に電圧印加できるため、探針−試料間への電圧印加が確実となる。
)請求項記載の発明によれば、SKPM観察やF−Vカーブ測定において、2ω成分の大きさや2次式の2次の項の係数を検出することにより、試料側の誘電率に相当する情報が得られるため、試料側の誘電率測定、及び流動体物質や溶液中における薄膜に吸着した物質(試料)の不均一性や吸着層の厚さ情報を得ることができる。
)請求項記載の発明によれば、薄膜を隔てて、流動体物質や溶液中における薄膜に吸着した試料に電流を流し、その大きさを画像化することにより、流動体物質や吸着試料の導電性の分布を測定することができる。
)請求項記載の発明によれば、薄膜を隔てて、流動体物質や溶液中における薄膜に吸着した試料の電流測定を行なう場合において、試料側に電極を設けることにより、直接或いは試料により近い位置に電圧印加ができるため、探針−試料間への電圧印加が確実となり、正確な電流測定を行なうことができる。
10)請求項10記載の発明によれば、薄膜を隔てて、流動体物質や溶液中における薄膜に吸着した物質(試料)に低エネルギーの電子を照射することにより、試料固有のCLが起こり、流動体物質や吸着試料内の特定試料の分布を観察することができる。また、分光することにより、組成分析等の化学分析が可能となる。
11)請求項11記載の発明によれば、薄膜を隔てて、流動体物質や溶液中における薄膜に吸着した試料をSNOM観察することにより、流動体物質や吸着試料内の局所的な光学的特性(透過率や反射率等)を観察することができる。
12)請求項12記載の発明によれば、薄膜を隔てて、流動体物質又は溶液中における薄膜に吸着した磁性物質をMFM観察することにより、従来観察できなかった流動体物質や吸着試料内の局所的な磁気力分布を観察することができる。
13)請求項13記載の発明によれば、試料冷却機能を付加することにより、薄膜を隔てた流動体物質又は溶液中における薄膜に吸着した試料が冷却でき、凝固或いは粘性を大きくすることにより、電荷や磁性特性を固定でき、電荷分布や磁気力分布の分解能を向上することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態を示す構成図である。図11,図12と同一のものは、同一の符号を付して示す。ここでは、電気特性の一つである表面電位測定(SKPM)の場合について説明する。図の上側は、図下側の破線の円B内の拡大図を示す。生細胞のような生体試料6は、薄膜形成基板27に形成された薄膜隔壁28の上に付着しており、溶液7で満たされている。
取り扱いやすくするため、薄膜隔壁28付きの薄膜形成基板27は、薄膜シャーレ29に組み込まれている。薄膜隔壁28としては、透過電子顕微鏡等で使用されている有機薄膜や窒化膜/酸化膜のような無機薄膜等があり、100nm以下の薄膜生成が可能である。薄膜シャーレ29は、シャーレ固定台30をPZTスキャナ4に取り付けられており、試料6は薄膜シャーレ29毎X,Y方向へのスキャンとZ方向への変位制御ができるようになっている。
試料6の下方からは、薄膜隔壁28を介してカンチレバ2が配置されており、薄膜隔壁下面との相互作用力が検出できるようになっている。カンチレバ2の背面には、レーザダイオード1からのレーザ光が照射され、その反射光は光検出器3により検出される。この光てこ方式によりカンチレバ2の振動変位が検出され、バンドパスフィルタが内蔵されたプリアンプ14により電気的に増幅される。
電気信号に変換されたカンチレバ2の変位信号は、アンプ調整回路15を介して加振用PZT12に入力されるループが組まれている。なお、図示していないが、このループには移相器も組み込まれており、カンチレバ2の固有振動数で正帰還発振するように設定されている。アンプ調整回路15では、AGC(オートマチック・ゲイン・コントロール:自動利得制御)等によりカンチレバ2の振動振幅、或いは加振用PZT12に入力される電圧振幅が一定になるように制御されている。
発振波形は、途中で分岐されてPLLで構成されているFM復調器16に入力され、その発振周波数に相当する電圧を出力する。具体的には、FM復調器16は、入力周波数信号f0を出力電圧信号Vf0に変換する周波数/電圧変換器(f/V変換器)である。探針2aと試料6間に作用する力の勾配F’とバネ定数kのカンチレバ2の固有振動数f0には、f0∝√(k−F’)の関係があり、f0の変化(周波数シフト)はほぼF’に相当する。
f/V変換された周波数f0に相当する信号は、エラーアンプ17によりその周波数が固有振動数からある一定量シフトするように、フィルタ18、Zピエゾドライバ19を介してPZTスキャナ4のZ動が制御される(フィードバック1)。ここで、一定に保持される周波数シフトは基準電圧Ref.Vにより設定される。
この時のZ動を制御している信号(フィルタ18の出力)が、試料表面の凹凸像(Topography Signal)に相当し、スキャン信号(X,Yscan)によりPZTスキャナ4が2次元的にスキャンされ、その時のZ動を輝度信号とすることで、Topo像が得られる。以上がFM検出を用いたAFMの動作である。
また、カンチレバ2の固有振動数f0は、探針2aと試料6間の静電気力によってもシフトする。導電性カンチレバ2に発振器(OSC)21及びエラーアンプ2からの電圧[VDC+VACsin(ωt)]を印加した場合、シャーレ固定台30、薄膜シャーレ29、溶液7を通じて接地された試料6と絶縁膜である薄膜隔壁28を介した探針2a間に電位差が生じ、静電気力が作用する。
印加電圧の交流成分の周波数がFM復調器16の動作帯域より小さく、且つ前記フィードバック1の帯域を越えた値(追従できない値)に設定されれば、FM復調器16の出力Vf0にその交流成分による変調が現れる。この信号をロックインアンプ23で、ωを参照信号として検出すると、ω成分の振幅に相当する出力が得られる。
この出力がゼロの時、カンチレバ2の探針2aと試料6間の静電気力が最小となり、この状態を維持しようとする直流電圧VDCがエラーアンプ2から加算器24を経て探針2aの電位としてフィードバックされる(フィードバック2)。このVDCが探針2aに対する試料表面のCPDであり、試料表面のTopo信号と同時に表示することでNC−AFM像と電位像が同時に観察される。
この場合において、SPMとして観察される試料6の表面形状は、薄膜隔壁の下面の表面形状となるが、100nm以下の薄膜であるため、その表面の凹凸(粗さ)は数nm以下と非常に小さく、静電気力を正確に捉えるための条件である非接触状態がNC−AFM観察像として容易に得られる。
生細胞のように、細胞内や細胞間で情報伝達する際には、必ず電荷の授受があり、局所的には電位差のある状態となる。このような電位差を薄膜隔壁28を介してカンチレバ2で検出しようとした場合、試料6からより離れた位置での観察と等価となるので、電位差が大きければ従来のSKPM手法で十分検出することができる。
また、図示していないが、もう一台ロックインアンプを使用し、2ω成分も同時に検出することで、試料内の誘電率の違いが画像化でき、電位像より試料全体の形状が比較的画像化しやすく、また観察位置の同定がしやすい。更に、今回の説明では、シャーレ底の試料を観察するために、倒立型のSPMとしたが、密閉型の溶液中セル内を薄膜を介して観察することも可能であり、この場合は汎用のSPMにおいても容易に実施可能である。
以上、説明したように、第1の実施の形態によれば、薄膜を隔てて試料を観察するので、試料の凹凸の影響を受けず、安定した機械的又は電気的又は光学的又は磁気的特性等の情報を観察することができる。また、薄膜を隔てて試料を配置できるため、試料の保管環境(溶液中、特殊ガス中、真空中、凍結状態)に保持した状態で観察することができる。
(実施の形態2)
図2は本発明の第2の実施の形態を示す構成図である。図1,図11と同一のものは、同一の符号を付して示す。図では、電気回路を示していないが、図1のそれと同じである。図に示す実施の形態は、図1に示す第1の実施の形態における薄膜シャーレ29を密閉型の薄膜シャーレ29’としたものである。薄膜シャーレ29’の中には溶液7が充填され、試料6が薄膜シャーレ29’の中に試料6が薄膜隔壁(図1の28参照、以下単に薄膜と略す)に吸着されている。なお、シャーレは密閉型のシャーレではなく、開放型のシャーレを用いてもよい。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
密閉型シャーレ29’を使用すると、汎用SPMの試料ホルダ5に両面テープ又は接着により装着するだけで、膜を介しての観察が可能になる。ここで、密閉型シャーレ29’は、例えばQUANTOMIX Ltd等でSEM用のシャーレとして市販されている。これを用いた場合には、外部からの電圧印加やマニピュレータ等に制限がある。逆に、使用するSPMが真空タイプであれば、容易にカンチレバ2側を真空にし、検出感度を向上させることができる。
この実施の形態によれば、開放型シャーレを使用することで、外部から試料への電圧印加やマニピュレーション等を容易に行なうことができる。また、密閉型シャーレの場合には、汎用機で容易に適用することができる。
(実施の形態3)
実施の形態3はカンチレバ2側を真空にしたものである。図3は本発明の第3の実施の形態例を示す構成図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。この実施の形態は、カンチレバ側(SPM側)を真空排気できるようにしたものである。SPM部は真空容器32内に設置されており、探針2aを試料6に近づけるためのZ粗動機構やXYステージ機構を備えたスキャナ取付け台33にPZTスキャナ4が装着されている。
PZTスキャナ4の上部には光てこ方式のような変位検出系が組み込まれており、同じくPZTスキャナ4に取り付けられているカンチレバ2の変位が検出される。このようなプローブスキャン方式としては、ピエゾ抵抗タイプの自己検出型カンチレバを使用することで、構成が簡素化できる。
試料6が付着している薄膜シャーレ29の周りには真空シール45が設けられており、薄膜シャーレ29の下側は真空に保持できるようになっている。真空容器32には、真空ポンプ35が接続されており、容器内を真空排気できるようになっている。31は試料6の上部に設置された光学顕微鏡である。この光学顕微鏡の機能については後述する。
このように構成された装置において、FM検出タイプのSKPMの場合は、SPM部を真空排気することで、カンチレバ2のQ値が非常に大きくなり、力検出感度が向上し、静電気力の検出感度も高くなり、より小さい電位差を画像化することができる。
第3の実施の形態によれば、カンチレバ側を真空にすることで、薄膜表面の水等の吸着層の影響が除去でき、SPMとしての力の検出感度が向上し、機械的又は電気的又は光学的又は磁気的特性等の信号検出感度も向上する。また、カンチレバ側を真空にすることで、薄膜表面の水等の吸着層の影響が除去でき、薄膜表面での電荷の放電(ディスチャージ)を抑制でき、電気的等の信号検出を正確に行なうことができる。
(実施の形態4)
図4は本発明の第4の実施の形態の要部を示す構成図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。この実施の形態例は、図では電気回路を示していないが、図1のそれと同じである。図に示す実施の形態は、図1に示す実施の形態に、光学顕微鏡を組み込み、試料の観察位置を光学顕微鏡で観察し、下方からSPM同定するようにしたものである。図において、31が光学顕微鏡である。
このように構成された装置において、薄膜隔壁28(図1参照)は、非常に薄いため、光学的にはほぼ透明であり、生細胞のような半透明の試料の場合、光学顕微鏡31でカンチレバ2の位置が観察できる。光学顕微鏡31のフォーカスや観察モード(蛍光、位相差)を変えることにより、観察位置が特定しやすくなり、その位置に探針2aを移動することができる。薄膜領域が大きく、複数の試料が載っている場合には、図示されていないが、XYステージで位置合わせを行なうことができる。
この実施の形態によれば、試料側に光学顕微鏡を配置することにより、薄膜を隔ててカンチレバやカンチレバ探針が観察できるため、観察位置の位置合わせを容易に行なうことができる。
(実施の形態5)
図5は本発明の第5の実施の形態を示す構成図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。この実施の形態は、薄膜を隔てて流動体物質、溶液中における薄膜に吸着した物質(試料)をフォースモジュレーション法により、粘弾性AFM、VE−AFMによる粘弾性測定を行なうようにしたものである。光てこ方式による光検出器3の出力はプリアンプ14に入り、該プリアンプ14の出力は、ロックインアンプ23とエラーアンプ17に入っている。ロックインアンプ23には、Signal inとして入っている。
一方、発振器21の出力は、前記ロックインアンプ23に基準信号Refとして入り、加算器50にも入っている。ロックインアンプからは弾性像(Acosθ)と粘性像(Asinθ)が出力される。エラーアンプ17の出力はフィルタ18に入り、該フィルタ18からはAFM像(トポロジ信号)が出力される。また、フィルタ18の出力は、前記加算器50に入っている。フィルタ18の出力と、発振器21の出力が加算された該加算器50の出力はZピエゾドライバ19に入り、該Zピエゾドライバ19の出力はPZTスキャナ4に印加されるようになっている。
このように構成された装置において、VE−AFMによる薄膜を介した粘弾性測定について開放型シャーレを用いて説明する。VE−AFMは探針2aと試料6間距離を制御するフィードバックが追従しない程度に速い周波数で探針2aと試料間距離を制御するフィードバックが追従しない程度に速い周波数で探針と試料間距離を振動させ、その振動により変調されるカンチレバの変位(力の変化)を2位相のロックインアンプ23で検出し、ロックインアンプ23の出力のAcosθ、Asinθがそれぞれ弾性像、粘性像に相当する。
薄膜を介して、VE−AFM測定を行なうことにより、流動体物質や溶液中の薄膜に吸着した試料の粘弾性測定ができる。図はコンタクトAFMにおける粘弾性AFM(VE−AFM)を示したものである。発振器21からのオシレーション信号をZピエゾドライバ19の入力信号に重畳し、探針2aと試料6間距離を振動させる。発振器21からの周波数にはZフィードバックが追従しないため、カンチレバ2の変位信号であるプリアンプ14の出力にその変調信号が現れる。この信号を発振器21からのオシレーション信号を参照信号としてロックインアンプ23に入力し、その出力から弾性像(Acosθ)と、粘性像(Asinθ)を得る。
この実施の形態によれば、薄膜を隔てて流動体物質や溶液中における薄膜に吸着した試料を粘弾性測定することにより、カンチレバが吸引され、従来は測定ができなかった流動体物質や凹凸が激しく正確に測定できなかった試料においても容易に粘弾性測定を行なうことができる。
(実施の形態6)
実施の形態6は、薄膜を隔てた流動体物質又は溶液中における薄膜に吸着した試料をSKPM法で試料側に電極を設けて電位を測定するようにしたものである。装置構成としては、図1に示す構成のものを用いる。即ち、カンチレバ2と試料6、或いは溶液中電極間に電圧を印加して、前記薄膜隔壁28を介してSKPM観察を測定する。
図1に示す構成で、シャーレ固定台30を接地するのではなく、溶液内、或いは試料に直接電極を設け、接地することにより、溶液の電気伝導度によらず、より確実に探針と試料間に静電気力を生じさせることができる。
この実施の形態によれば、SKPM観察やF−Vカーブ(周波数シフトの探針−試料間バイアス電圧依存性)測定において、試料側に電極を設けることにより、直接或いは試料により近い位置に電圧印加できるため、探針と試料間への電圧印加が確実となる。
(実施の形態7)
実施の形態7は、薄膜を隔てた流動体物質又は溶液中における薄膜に吸着した試料をSKPM法により2ω成分を測定するようにしたものである。具体的には、走査ケルビンプローブフォース顕微鏡観察における2ω成分と力勾配測定の2次の項の係数を求めるようにしたものである。
この実施の形態によれば、SKPM観察やF−Vカーブ測定において、2ω成分の大きさや2次式の2次の項の係数を検出することにより、試料側の誘電率に相当する情報が得られるため、試料側の誘電率測定、及び流動体物質や溶液中における薄膜に吸着した物質(試料)の不均一性や吸着層の厚さ情報を得ることができる。
(実施の形態8)
実施の形態8は、薄膜を隔てた流動体物質、溶液中における薄膜に吸着した物質(試料)の電流検出AFM法による電流測定を行なうようにしたものである。具体的には、溶液中に電極を設けず、図1の構成の接地の代わりにバイアス電圧をシャーレ固定台30に印加するようにしたものである。
この実施の形態によれば、薄膜を隔てた流動体物質や溶液中における薄膜に吸着した試料に電流を流し、その大きさを画像化することにより、流動体物質や吸着試料の導電性の分布を測定することができる。
(実施の形態9)
実施の形態9は、薄膜を隔てた流動体物質や溶液中における薄膜に吸着した試料の電流検出AFM法で試料側に電極を設けて電流を測定するようにしたものである。図6は本発明の第9の実施の形態を示す構成図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。この実施の形態は、細胞内の導電性を画像化するための構成を示したものである。コンタクトモードAFMにおいて、試料6の下面の薄膜隔壁28(図示せず。図1参照)にカンチレバ2の探針2aを接触させる。
試料6に電極36を直接接触させるか、挿入させるか、或いは溶液7中に挿入させ、バイアス電圧源37からの電圧を印加する。一方、カンチレバ2側には、電流計38を接続し、試料6と薄膜隔壁28を介してカンチレバ2に流れ込む電流を検出するようになっている。
このように構成された装置において、コンタクトモードAFMで、力一定モードで薄膜隔壁28を観察し、同時にカンチレバ2を流れる電流を電流計38で検出し、観察領域と同領域での試料上の導電性分布が観察できる。また、I−V特性(探針に流れる電流の探針−試料間バイアス電圧依存性)を各点で測定することで、更に詳細な電気特性を解析することができる。
この実施の形態によれば、薄膜を隔てて流動体物質や溶液中における薄膜に吸着した試料の電流測定において、試料側に電極を設けることにより、直接或いは試料により近い電圧印加できるため、探針−試料間への電圧印加が確実となり、正確な電流測定を行なうことができる。
(実施の形態10)
実施の形態10は、薄膜を隔てた流動体物質、又は溶液中における薄膜に吸着した物質のSTM探針からの電子線照射によるCL(カソードルミネッセンス)を計測するようにしたものである。この実施の形態は、AFM或いはSTMにおいて、探針から照射された電子により励起された発光した光を検出するようにしたものである。図7は本発明の第10の実施の形態の要部を示す構成図である。図6と同一のものは、同一の符号を付して示す。図7はAFMについて適用したものである。AFMの場合も、導電性カンチレバによるSTMフィードバックが望ましい。
カンチレバ2には、負電圧のバイアス電圧源34からのバイアス電圧が印加されており、導電性薄膜39にトンネル電子、或いはフィールドエミッション電子が照射される(電流が逆向きに流れる)。トンネル電流は、電流計38で検出される。導電性薄膜39は、薄膜そのものを導電材料で生成するか、上記絶縁薄膜上に導電性膜を形成してもよい。この導電性薄膜39は、シャーレ固定台30を介して接地されている。
また、試料上方には、光学顕微鏡31’(集光系)が取り付けられており、集光された光はフォトマルチプライヤー等の高感度な光検出器40により検出されて光電変換される。
このような装置において、カンチレバ2から導電性薄膜39にトンネル電子、或いはフィールドエミッション電子が照射され、電流計38で検出される電流が一定になるように探針2aと導電性薄膜39間距離が制御される。この時の導電性薄膜39に照射された電子の中のバリスティックな(通り抜ける)電子は導電性薄膜39を通り抜け、試料6に到達し、試料6内で電子励起の発光が起こった場合、光学顕微鏡31’で集光され、光検出器40で検出される。
画像収集と同時に光検出器40の出力を表示することで、トンネル電子、或いはフィールドエミッション電子励起によるCL(カソードネミネッセンス)像を観察することができる。
また、カンチレバの代わりに、光ファイバタイプのカンチレバ、或いは金属コートした先鋭化されたファイバを用いて、AFM或いはSTM(トンネル電子顕微鏡)フィードバックにより探針試料間距離を維持し、薄膜(STMフィードバックの場合は導電性薄膜)を通過できる光をファイバ先端から照射した時の光励起による発光も検出できる。これはSNOM(スキャニング.ニアフィールド・オプチカル・マイクロスコープ)と同様な測定が可能となるが、試料表面を直接走査しないので、安定動作となる。また、光検出器40の前に分光器を入れることにより、スペクトル測定も可能になる。
この実施の形態によれば、薄膜を隔てて流動体物質や溶液中における薄膜に吸着した物質に低エネルギーの電子を照射することにより、試料固有のCLが起こり、流動体物質や吸着試料内の特定試料の分布を観察することができる。また、分光することにより、組成分析等の化学分析が可能となる。
(実施の形態11)
実施の形態11は薄膜を隔てた流動体物質や溶液中における薄膜に吸着した物質(試料)のSNOM法による光学特性測定を行なうようにしたものである。図8は本発明の第11の実施の形態を示す構成図である。図7と同一のものは、同一の符号を付して示す。図8に示す装置は、SNOM(走査近接場光学顕微鏡)による薄膜を介した光学像観察について開放型シャーレを用いて説明する。
SNOMには光の検出方法や光学系の構成によりいくつか種類があるが、ここではファイバを用いた透過モードについて説明する。ファイバ43に図示されていないレーザ光源からレーザ光が導入されており、そのファイバ先端は光路を狭めるための先鋭化処理がされている。
先鋭化されたファイバ43先端からは、波長により小さい開口部から近接場光が染み出しており、波長より十分薄い薄膜を介して試料に近接場光が照射される。この近接場光は、試料6内で光学的な相互作用を受け、上方に散乱し、光学顕微鏡(集光系)31’により検出される。この光強度を凹凸像と同時に画像化することで、SNOM像(光学像が)が得られる。
凹凸像は、加振用PZT12によりファイバ43を共振振動させ、その振動振幅を側面にレーザダイオード1からレーザ光を照射し、光検出器3でその振動を検出するシェアーフォーカス方式でその振幅が一定になるようにファイバ43−探針2a−試料6間距離が制御され、凹凸像が得られる。
この実施の形態によれば、薄膜を隔てて、流動体物質や溶液中における薄膜に吸着した試料をSNOM観察することにより、流動体物質や吸着試料内の局所的な光学的特性(透過率や反射率等)を観察することができる。
(実施の形態12)
この実施の形態は、薄膜を隔てた流動体物質(磁性流体)又は溶液中における薄膜に吸着した磁性物質(磁性試料)のMFM法により磁気特性を測定するようにしたものである。図9は本発明の第12の実施の形態を示す構成図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。ここでは、MFM(磁気力顕微鏡)による薄膜を介した磁気像観察について、開放型シャーレを用いた場合について説明する。MFMとしては、一般的なACモードAFMと同じである。
図において、44はプリアンプ14の出力を受けて光検出器3の出力を直流電圧に変換するRMS・DC変換器、56はプリアンプ14の出力と発振器21の出力を受けて双方の位相を比較する位相比較器である。
17はRMS・DC変換器44の出力と基準電圧Refとを受けてその差分信号を出力するエラーアンプである。18は該エラーアンプ17の出力を受けるフィルタ、19は該フィルタ18の出力を受けてPZTスキャナ4を駆動するZピエゾドライバである。前記位相比較器56からは磁気像(位相像)が得られ、フィルタ18からはAFM像が得られる。
このように構成された装置において、加振用PZT12にカンチレバ2の共振周波数或いはその付近の周波数の発振信号を発振器21から入力し、カンチレバ2を共振周波数或いはその付近の周波数で振動させ、RMS・DC変換器44で振幅信号(直流)に変換する。その振幅がRef.Vで設定された一定値になるように探針2aと試料6間距離がフィードバック制御される。つまり、エラーアンプ17でRMS・DC変換器44の出力とRef.Vとが一定の関係になるように、PZTスキャナ4がZピエゾドライバ19で駆動される。
磁気力信号は、上述のフィードバックをホールドし、探針2aと試料6間距離を数10nm離した状態で発振器21の発振信号と、カンチレバ2の振動信号とを位相比較器(Phase Comp)45に入力して、位相信号を検出する。この位相信号が磁気力信号(磁気像)に相当する。
一般的には、ライン凹凸像を収集したあと、フィードバックを切り、同じラインを凹凸像観察時の位置より設定された距離(数10nm)リフトアップした(試料から離した)位置を走査した時の位相像を1ライン得る。これとを1画面分行なうことで、MFM像が得られる。
この実施の形態によれば、薄膜を隔てた流動体物質又は溶液中における薄膜に吸着した磁性物質をMFM観察することにより、従来観察できなかった流動体物質や吸着試料内の局所的な磁気力分布を観察することができる。
(実施の形態13)
この実施の形態は、薄膜を隔てた流動体物質又は、溶液中における薄膜に吸着した試料を冷却し、凝固性或いは粘性を大きくして、電荷や磁性特性を動きにくくしたものである。図10は本発明の第13の実施の形態を示す構成図である。図2と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、29’は密閉型薄膜シャーレであり、その中には溶液7と試料6が入っている。試料6は薄膜に密着しており、この薄膜を介してカンチレバ2の探針2aと対向するようになっている。
4はスキャナ、48は該スキャナ4の上に設けられた断熱材、49は該断熱材48の上に設けられた冷却試料台であり、この冷却試料台49に試料ホルダ5が取り付けられている。そして、該試料ホルダ5の上に密閉型薄膜シャーレ29’が装着される構成となっている。55は冷却試料台49と密着して取り付けられたヒートコンダクタ(熱伝導体)である。
このように構成された装置において、密閉型薄膜シャーレ29’は、試料ホルダ5に装着されており、該試料ホルダ5は断熱材48に取り付けられた冷却試料台49に装着されている。冷却試料台49はヒートコンダクタ55により、図示されていない冷却タンクや冷凍機に接続されており、冷却される。カンチレバ2側は、霜の発生を防ぐため、真空或いは乾燥ガス中での観察が望ましい。
この実施の形態によれば、試料冷却機能を付加することにより、薄膜を隔てた流動体物質又は溶液中における薄膜に吸着した試料が冷却でき、凝固或いは粘性を大きくすることにより、電荷や磁性特性を固定でき、電荷分布や磁気力分布の分解能を向上することができる。
以上説明した本発明の効果を列挙すれば、以下の通りである。
1)薄膜を介して溶液中の試料を観察するので、試料の凹凸の影響を受けず、安定した電気/機械的特性の情報を観察することができる。
2)薄膜を介して溶液中の試料を観察するので、カンチレバは大気や真空環境に置くことができ、溶液中の生細胞の局所的な電位分布/変化を高分解能で観察/測定することができる。
3)溶液中にカンチレバを浸さないので、探針に電圧印加が従来通りの方法で実施することができ、電位や電流測定を容易に行なうことができる。
本発明の第1の実施の形態を示す構成図である。 本発明の第2の実施の形態を示す構成図である。 本発明の第3の実施の形態を示す構成図である。 本発明の第4の実施の形態を示す構成図である。 本発明の第5の実施の形態の要部を示す構成図である。 本発明の第9の実施の形態を示す構成図である。 本発明の第10の実施の形態を示す構成図である。 本発明の第11の実施の形態を示す構成図である。 本発明の第12の実施の形態を示す構成図である。 本発明の第13の実施の形態を示す構成図である。 走査プローブ顕微鏡の従来構成例を示す図である。 FM検出方式のSKPMの構成例を示す図である。
符号の説明
1 レーザダイオード(LD)
2 カンチレバ
2a 探針
3 光検出器
4 PZTスキャナ
6 試料
7 溶液
9 カンチレバ載せ台
12 加振用PZT
14 プリアンプ
15 アンプ調整回路
16 FM復調器
17 エラーアンプ1
18 フィルタ
19 Zピエゾドライバ
21 発振器
22 エラーアンプ2
23 ロックインアンプ
27 薄膜形成基板
28 薄膜隔壁
29 薄膜シャーレ
30 シャーレ固定台

Claims (13)

  1. 探針を先端に有し、該探針が試料の表面に近接配置されるカンチレバと、前記試料と前記探針とを相対的にX,Yスキャンするスキャン手段と、前記試料と前記探針との距離を相対的に変化させるZ動駆動手段とを備え、前記カンチレバと前記試料との間に薄膜を配置し、該薄膜を隔て前記試料の特性を得るようにした走査プローブ顕微鏡であって、
    前記薄膜で構成された開放型の或いは密閉型のシャーレを設け、該シャーレの中に流動体物質又は溶液と共に前記薄膜に吸着した前記試料を配置したことを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
  2. 前記試料の特性は、機械的又は電気的又は光学的又は磁気的又は表面形状のうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1記載の走査プローブ顕微鏡。
  3. 前記カンチレバ側を真空にしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の走査プローブ顕微鏡。
  4. 前記試料が透明の場合、前記薄膜を底面とするシャーレに前記試料を配置し、前記試料側に光学顕微鏡を配置して、前記試料に対する探針或いはカンチレバ位置の確認を行えるようにしたことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の走査プローブ顕微鏡。
  5. 前記薄膜を隔てて、流動体物質又は溶液中における前記薄膜に吸着した前記試料のフォースモジュレーションを行なうことを特徴とする請求項1記載の走査プローブ顕微鏡。
  6. 前記カンチレバと前記試料、或いは溶液中電極間に電圧を印加して前記薄膜を介して走査ケルビンプローブフォース顕微鏡(SKPM)観察像を測定するようにしたことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の走査プローブ顕微鏡。
  7. 前記走査ケルビンプローブフォース顕微鏡観察における2ω成分と探針−試料間バイアス電圧依存の力勾配(F−Vカーブ)測定の2次の項の係数を求めるようにしたことを特徴とする請求項記載の走査プローブ顕微鏡。
  8. 前記薄膜を隔てて、流動体物質又は溶液中における前記薄膜に吸着した前記試料の電流を電流検出AFM法で測定するようにしたことを特徴とする請求項1記載の走査プローブ顕微鏡。
  9. 前記カンチレバと前記試料、或いは溶液中電極間に電圧を印加して前記薄膜を介してコンタクトAFM観察を行ない、探針或いは試料側電極に流れる電流を検出することを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の走査プローブ顕微鏡。
  10. 前記薄膜を隔てて、流動体物質又は溶液中における前記薄膜に吸着した前記試料のSTM探針からの電子線照射によるカソードネミネッセンス計測を行なうようにしたことを特徴とする請求項1記載の走査プローブ顕微鏡。
  11. 前記薄膜を隔てて、流動体物質又は溶液中における前記薄膜に密着した前記試料のSNOM法による光学特性測定を行なうようにしたことを特徴とする請求項1記載の走査プローブ顕微鏡。
  12. 前記薄膜を隔てて、流動体物質又は溶液中における前記薄膜に吸着された前記試料のMFM法による磁気特性を測定するようにしたことを特徴とする請求項1記載の走査プローブ顕微鏡。
  13. 前記薄膜を隔てて、流動体物質又は溶液中における前記薄膜に吸着した前記試料を冷却し、凝固或いは粘性を大きくすることにより、電荷や磁性特性を動きにくくしたことを特徴とする請求項1記載の走査プローブ顕微鏡。
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