JP4343764B2 - 毛髪の評価方法及びケラチン繊維改質剤の評価方法 - Google Patents
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Description
また、毛髪を過酸化水素を含有するブリーチ剤でブリーチ処理した後、システイン系パーマネントウェーブ用剤でウェーブ処理して作製した疑似くせ毛を使用して毛髪化粧品の性能を評価する方法(特許文献1参照)や、毛髪化粧料で生体より分離された毛髪を処理した後、当該被処理毛髪の物性を経時的に測定し、当該物性の挙動を指標とする評価法(特許文献2参照)や、毛髪の束に、この束を変形させる力を加えたときの束の応力と変形を測定し、これらの測定値を指標として前記化粧料を評価する評価方法(特許文献3参照)が知られている。
荒井幸三 第16回繊維応用技術研究会資料集、大阪(2002) P1〜10
また、引張試験等による評価は、必ずしも他の評価方法の結果と一致する結果を得ることができず、特許文献1〜3による方法では、ケラチン繊維内部の変化を調べることができなかった。
毛髪の断面における硬さ分布を、原子・分子間の力を検出する装置を用いて測定し、マクロフィブリルにおける硬さと、マクロフィブリル間充物質における硬さとの差に基づいて、毛髪の状態を評価することを特徴とする毛髪の評価方法を要旨とする。
また、本発明によれば、例えば、毛髪断面を2次元に走査した測定データに基づき評価を行うことができるので、毛髪内部での局部的な物性変化(具体的にはケラチン繊維内部の微細構造の変化)を詳細に評価することができる。
本発明では、例えば、測定データを、多段階の階層を有する信号に変換し、変換された信号に対し波形処理を行い、試料表面の硬さ分布を画像化することができる。そして、その画像を用いて、毛髪の評価を行うことができる。
(2)請求項2の発明は、
前記原子・分子間の力を検出する装置は原子間力顕微鏡であることを特徴とする請求項1記載の毛髪の評価方法を要旨とする。
また、透過型電子顕微鏡を用いる評価方法のように、試料の準備に多大な時間や労力を要する必要がない。
(3)請求項3の発明は、
原子間力顕微鏡のプローブを振動させケラチン繊維の切断面に接触させることにより測定を行うことを特徴とする請求項2に記載の毛髪の評価方法を要旨とする。
(4)請求項4の発明は、
前記測定は、前記原子間力顕微鏡のフォースモジュレーション測定であることを特徴とする請求項2又は3に記載の毛髪の評価方法を要旨とする。
このamplitude像は、原子間力顕微鏡が備えるカンチレバーの振れ振幅の変化量を検出した像である。試料において柔らかい領域では、探針を押し込みやすいので振れ振幅は小さくなり、逆に、硬い領域では振れ振幅は大きくなる。従って、amplitude像により、毛髪断面における硬さ分布を知ることができる。
(5)請求項5の発明は、
前記硬さ分布は、前記原子間力顕微鏡のプローブの振れ振幅の変化量に基づいて測定することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の毛髪の評価方法を要旨とする。
(6)請求項6の発明は、
毛髪の断面における粘弾性分布を、原子・分子間の力を検出する装置を用いて測定し、マクロフィブリルにおける粘弾性と、マクロフィブリル間充物質における粘弾性との差に基づいて、毛髪の状態を評価することを特徴とする毛髪の評価方法を要旨とする。
また、本発明によれば、例えば、毛髪断面を2次元に走査した測定データに基づき評価を行うことができるので、毛髪内部での局部的な物性変化(具体的にはケラチン繊維内部の微細構造の変化)を詳細に評価することができる。
本発明では、例えば、測定データを、多段階の階層を有する信号に変換し、変換された信号に対し波形処理を行い、試料表面の粘弾性分布を画像化することができる。そして、その画像を用いて、毛髪の評価を行うことができる。
(7)請求項7の発明は、
前記原子・分子間の力を検出する装置は原子間力顕微鏡であることを特徴とする請求項6に記載の毛髪の評価方法を要旨とする。
また、透過型電子顕微鏡を用いる評価方法のように、試料の準備に多大な時間や労力を要する必要がない。
(8)請求項8の発明は、
原子間力顕微鏡のプローブを振動させケラチン繊維の切断面に接触させることにより測定を行うことを特徴とする請求項7に記載の毛髪の評価方法を要旨とする。
(9)請求項9の発明は、
前記測定は、前記原子間力顕微鏡のフォースモジュレーション測定であることを特徴とする請求項7又は8に記載の毛髪の評価方法を要旨とする。
このphase像は、カンチレバーを振動させるピエゾの信号に対するカンチレバーの振動信号の位相の遅れを検出した像である。試料において弾性が大きい領域では、位相の遅れが小さくなり、粘性が大きい領域では位相の遅れが大きくなる。従って、phase像により、毛髪断面における粘弾性分布を知ることができる。
(10)請求項10の発明は、
前記粘弾性分布は、前記原子間力顕微鏡のプローブの振れにおける位相の遅れに基づいて測定することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の毛髪の評価方法を要旨とする。
毛髪にケラチン繊維改質剤を適用する前後に、請求項1〜10のいずれかに記載の毛髪の評価方法によりケラチン繊維の切断面を評価し、前記ケラチン繊維改質剤による毛髪の状態変化を評価することを特徴とするケラチン繊維改質剤の評価方法を要旨とする。
本実施例の評価方法を行うためには、ケラチン繊維の切断面を形成させる必要がある。この切断面は平滑に形成することが望ましく、平滑な切断面を形成するためには、予めケラチン繊維を樹脂に包埋し切断することが望ましい。ケラチン繊維を包埋する樹脂としては、通常透過型電子顕微鏡の切片を調製するために使用される樹脂を用いることができる。その樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル系樹脂、メタクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、ポリアクリルアマイド樹脂等がある。樹脂への包埋は各樹脂の特性により常法に従い行うことができる。
試料の切断面を形成するためには、通常の透過型電子顕微鏡の切片調製用に用いられるナイフ等を用いることができる。より平滑な切断面を形成するためにはダイヤモンドナイフを使用することが好ましい。より詳細には、まず、ガラスナイフ、グラインダー、又はアセトン脱脂した片刃剃刀を用いてトリミングを行った後、ダイヤモンドナイフで面だしを行うと良い。
化学処理毛の毛束と、トリートメント処理毛の毛束から、それぞれ、ランダムに毛髪を選択し、ケラチン繊維改質剤の評価方法の試料とした。
原子間力顕微鏡:Digital instruments社製のNanoScopeIIIaD3000(商品名)。 測定範囲:毛髪の断面のうち、コルテックスを含む、3μm×3μmの範囲。
スキャンレート(プローブの走査回数):1.06Hz
副走査方向における走査ライン数:256ライン
1走査ラインあたりのデータ数:512点/ライン
上記の条件で、化学処理毛と、トリートメント処理毛のそれぞれについて測定を行い、化学処理毛についてのamplitude像(図1(a))、化学処理毛についてのphase像(図2(a))、トリートメント処理毛についてのamplitude像(図1(b))、トリートメント処理毛についてのphase像(図2(b))とを得た。
c)次に、測定データを用いて、ケラチン繊維改質剤を評価する方法を図3を用いて説明する。尚、以下の評価方法は、原子間力顕微鏡の測定データ分析用のソフトウエアをインストールしたコンピュータを用いて行った。
また、phase像についても、同様に任意の10本のラインを引き、それぞれのラインの中で最も弾性の大きい部分と粘性の強大きい部分の差(Δ°)を算出し、化学処理毛とトリートメント処理毛との間に統計学的な有意差検定を行った。
<弾力性の基準>
4点:非常に弾力感がある。
2点:やや弾力感がある。
1点:弾力感がない。
<しなやかさの基準>
4点:非常にしなやかさがある。
2点:ややしなやかさがある。
1点:しなやかさがない。
i)本実施例のケラチン繊維改質剤評価方法によれば、上記表1に示すように、化学処理毛とトリートメント処理毛との状態の違い(すなわちケラチン繊維改質剤による毛髪の状態変化)を、客観的かつ定量的に評価することができる。
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
Claims (11)
- 毛髪の断面における硬さ分布を、原子・分子間の力を検出する装置を用いて測定し、マクロフィブリルにおける硬さと、マクロフィブリル間充物質における硬さとの差に基づいて、毛髪の状態を評価することを特徴とする毛髪の評価方法。
- 前記原子・分子間の力を検出する装置は原子間力顕微鏡であることを特徴とする請求項1記載の毛髪の評価方法。
- 原子間力顕微鏡のプローブを振動させケラチン繊維の切断面に接触させることにより測定を行うことを特徴とする請求項2に記載の毛髪の評価方法。
- 前記測定は、前記原子間力顕微鏡のフォースモジュレーション測定であることを特徴とする請求項2又は3に記載の毛髪の評価方法。
- 前記硬さ分布は、前記原子間力顕微鏡のプローブの振れ振幅の変化量に基づいて測定することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の毛髪の評価方法。
- 毛髪の断面における粘弾性分布を、原子・分子間の力を検出する装置を用いて測定し、マクロフィブリルにおける粘弾性と、マクロフィブリル間充物質における粘弾性との差に基づいて、毛髪の状態を評価することを特徴とする毛髪の評価方法。
- 前記原子・分子間の力を検出する装置は原子間力顕微鏡であることを特徴とする請求項6に記載の毛髪の評価方法。
- 原子間力顕微鏡のプローブを振動させケラチン繊維の切断面に接触させることにより測定を行うことを特徴とする請求項7に記載の毛髪の評価方法。
- 前記測定は、前記原子間力顕微鏡のフォースモジュレーション測定であることを特徴とする請求項7又は8に記載の毛髪の評価方法。
- 前記粘弾性分布は、前記原子間力顕微鏡のプローブの振れにおける位相の遅れに基づいて測定することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の毛髪の評価方法。
- 毛髪にケラチン繊維改質剤を適用する前後に、請求項1〜10のいずれかに記載の毛髪の評価方法によりケラチン繊維の切断面を評価し、前記ケラチン繊維改質剤による毛髪の状態変化を評価することを特徴とするケラチン繊維改質剤の評価方法。
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