JP6692088B2 - 液中原子間力顕微鏡 - Google Patents

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Description

本発明は、液体の中に置かれた試料を観測するための液中原子間力顕微鏡に関する。
原子間力顕微鏡(以下、AFM(Atomic Force Microscope)ともいう)は、ナノスケールの空間分解能で表面形状や表面物性を測定できる分析技術である。AFMは、試料の導電性を問わず分析が行える点や、液中環境での動作が可能である点などから、特に、固液界面における構造や現象の分析へと応用するための研究開発が盛んに実施されてきた(例えば、特許文献1参照)。
特開平8−129017号公報
しかしながら、液中AFMでは、カンチレバーを液中に浸漬させていることに起因して、カンチレバーによる力検出性能を低下させる問題が生じる場合があり、液中AFM技術の発展が妨げられている。
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、従来よりも力検出性能を向上させた液中原子間力顕微鏡を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る液中原子間力顕微鏡は、液体の中に置かれた試料を観察するための液中原子間力顕微鏡であって、先端に探針部を有するカンチレバーと、前記試料と前記探針部の先端との相互作用力による前記カンチレバーの変位を計測する変位計測部と、前記変位計測部で計測された変位に基づいて前記試料と前記探針部の先端との距離を一定に維持する制御を行うフィードバック制御部と、開口部を有し、前記液体の液面を覆う薄膜とを備え、前記探針部は、前記開口部を貫通し、当該探針部の先端だけが前記液体に浸漬するように、前記カンチレバーに固定されている。
ここで、前記探針部は、前記カンチレバーの先端に接着されたガラスプローブと、前記ガラスプローブの先端に形成された探針とで構成され、前記探針部は、当該探針部のうち、前記探針を含む先端部分だけが前記液体に浸漬するように、前記カンチレバーに固定されていてもよい。
また、前記薄膜は、窒化シリコンで構成されたメンブレンであってもよい。
また、さらに、前記薄膜と前記試料との間に挟まれ、かつ、前記液体に接するスペーサを備えてもよい。
これによれば、液中原子間力顕微鏡は、薄膜により、探針部の先端が液中に浸漬し、かつ、探針部の先端を除く部分が大気中に位置するように配置することができる。よって、液中原子間力顕微鏡は、力検出性能を向上させることができる。このように、従来よりも力検出性能を向上させた液中原子間力顕微鏡が提供される。
本発明により、従来よりも力検出性能を向上させた液中原子間力顕微鏡が提供される。
AFMの動作原理を示す模式図である。 探針と試料との間に働く相互作用力の説明図である。 AFMによる変位検出方法を示す模式図である。 従来技術における液中AFMの問題点を示す模式図である。 従来技術における液中原子間力顕微鏡による変位検出方法を示す模式図である。 実施の形態における液中原子間力顕微鏡による変位検出方法を示す模式図である。 実施の形態における液中原子間力顕微鏡の構成を示すブロック図である。 実施の形態における液中原子間力顕微鏡の特殊探針を示す模式図である。 実施の形態における液中原子間力顕微鏡により取得されたマイカの液中原子像を示す画像図である。
本発明の実施の形態を説明する前に、上記背景技術で説明した従来技術における問題点を詳細に説明し、その後で、本発明に係る液中原子間力顕微鏡を詳細に説明する。
[走査型プローブ顕微鏡の原理]
走査型プローブ顕微鏡(SPM(Scanning Probe Microscope))では、鋭くとがった探針を試料に接近させて、探針と試料との間に働く相互作用(トンネル電流又は相互作用力など)を検出し、この相互作用を一定に保つように探針と試料との間の距離(探針のz位置)をフィードバック制御する。さらに、このフィードバック制御を維持した状態で、探針(または試料)を水平方向(xy方向)に走査すれば、探針(または試料)が試料表面の凹凸に応じて上下する。この探針の上下動の軌跡を水平位置に対して記録すれば試料表面の凹凸像が得られる。
[原子間力顕微鏡(AFM)]
図1は、AFMの動作原理を示す模式図である。図2は、探針と試料との間に働く相互作用力の説明図である。
原子間力顕微鏡(AFM)は、SPMの一種であり、探針と試料との間に働く相互作用力を検出して、探針と試料との間の距離を一定に保つよう探針のz位置を制御する(図1)。AFMでは、鋭くとがった探針を先端に備えたカンチレバー(片持ち梁)を力検出器として用いる。通常、探針を試料に接近させると、大気中又は真空中では、図2に示したように、まずはファンデアワールス力と静電気力とに起因する引力的相互作用力が働く。そして、探針を試料にさらに接近させると、化学的相互作用力に起因する強い斥力がこれらの力を上回る。AFMでは、探針を試料表面に近づけた時に、探針が受ける引力(または斥力)の変化を一定に保つように探針のz位置をフィードバック制御する。この状態で探針を水平方向に走査することで、前述のとおり、試料表面の凹凸像を得る。
[AFMの力検出手法の問題(従来技術)]
図3は、AFMによる変位検出方法を示す模式図である。
AFMは、図3に示すように、カンチレバーの背面に照射したレーザの反射光をフォトダイオードで検出することにより、カンチレバーの変位(たわみ量)から、カンチレバーが探針の先端から受けた相互作用力を計測する。従来、AFMを用いた原子分解能計測は、真空中でのみ達成されていた。しかしながら、近年、力検出器や力検出手法を大幅に改良することにより、高分解能観察が難しいと考えられていた液中環境下における原子分解能AFM観察が可能となった。これにより、固液界面現象をAFMで直接可視化することが可能となり、幅広い研究分野の発展に貢献すると考えられている。しかしながら、液中AFMには、以下のような問題点があり、液中AFM技術の発展を妨げている。
(1)AFM計測の安定性の問題
図4は、従来技術における液中AFMの問題点を示す模式図である。
液中AFMでは、カンチレバーを液中に浸漬させているので、観察溶液に含まれる不純物(析出物、又は、溶解していない粒子など)がカンチレバーの背面に付着することがある。また、触媒反応や電池の電極反応などのAFM観察においては、図4に示すように、サンプル表面から発生した気泡がカンチレバーに付着することがある。これにより、レーザの反射光が乱反射して、安定なAFM計測が不可能になることがしばしば発生する。このような問題は、液中AFMの観察試料や溶液の適用範囲を狭める要因となる。
(2)レーザ光照射の影響
生体試料や触媒の液中反応では、レーザ光を照射することで反応が発生又は促進するものがある。現状のAFM装置のセットアップでは、レーザ光を用いた力検出手法を用いているので、このレーザ光によって、液中AFM計測中に観察試料が変化してしまうことが問題である。この問題についても、液中AFMの応用範囲を狭める要因となっている。
(3)電位計測における長距離力の問題
近年、液中AFM技術を応用した計測手法として、液中における試料表面の電位計測技術が開発された。現状では、固液界面の局所的な電位分布(短距離力)を取得するために、実験的に取得した静電気力から、探針先端と試料との間に働く静電気力のみを抜き出す必要がある。そのためには、局所的な構造に依存しない長距離力(主に、カンチレバー全体と試料表面とに働く力)を実験データから差し引く必要があるが、短距離力と長距離力との分離は非常に困難である。
(4)Q値の低下の問題
液中においては、カンチレバーの周辺に水が存在するので、その粘性により、カンチレバーの振動エネルギーの散逸が著しく増大する。それに伴って、カンチレバーの共振のQ値が、大気中と比べて大きく減少する。カンチレバーの最小力検出限界Fminの近似値は、以下の(式1)で与えられる。ここで、kはカンチレバーのバネ定数、kはボルツマン定数、Tは温度、Bは計測帯域、fはカンチレバーの共振周波数である。(式1)より、Q値が減少すると、Fminが増加して、力検出性能が悪化する。液中では、大気中と比べてQ値が100〜1000から1〜10程度に減少するので、力検出性能が大幅に悪化する。
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
[AFMの力検出手法の改良(本発明の技術内容)]
本発明技術では、上記問題を解決するために、薄膜シールド機構を備えた走査型プローブ顕微鏡を提案する。この走査型プローブ顕微鏡について、従来技術と対比して説明する。
図5は、従来技術における液中原子間力顕微鏡による変位検出方法を示す模式図である。図6は、本実施の形態における液中原子間力顕微鏡による変位検出方法を示す模式図である。
従来技術では、図5に示す通り、カンチレバー全体を観察溶液中に浸漬している。一方、本実施の形態では、カンチレバーと観察試料との間に薄膜を設置して、薄膜に開けた穴から探針の先端のみを観察溶液中に浸漬する。これにより、液中で発生する汚染物や気泡がカンチレバーへ付着することを抑えることができ、安定な液中AFM観察を可能にする。また、光照射や電位計測については、シールド薄膜による遮蔽効果が期待できる。光照射による観察試料表面の影響については、シールド薄膜によって力検出用レーザの観察試料への照射を防止することができる。電位計測においては、金属製のシールド薄膜を用いることにより、カンチレバーと観察試料との間に働く長距離力の影響を遮断することができる。
さらに、この手法では力検出器を大気中で動作させるため、従来の液中AFM計測で問題となっていたQ値の減少を抑える効果がある。したがって、従来の液中計測よりも力検出感度を向上させることが原理的に可能である。
[液中原子間力顕微鏡の構成]
図7は、本実施の形態における液中原子間力顕微鏡10の構成を示すブロック図である。
液中原子間力顕微鏡10は、液体21の中に置かれた試料20を観察するための液中観察用原子間力顕微鏡であって、探針部12を有するカンチレバー11、変位計測部13、フィードバック制御部14、PC(パーソナルコンピュータ)15、XY駆動部16、及び、ステージ17及び試料ホルダ18を備える。なお、本図の左下に示されるように、鉛直上方をZ軸、Z軸に直交する2つの直交軸をX軸及びY軸とする。
カンチレバー11は、先端に探針部12が接着された片持ち梁であり、試料20と探針部12の先端との相互作用力を検出する力検出器として機能する。
変位計測部13は、試料20と探針部12の先端との相互作用力によるカンチレバー11の変位を計測する回路であり、図3で示された原理でカンチレバー11のZ軸方向における変位を検出するためのLD(Laser Diode)13a、PD(Photodiode)13b及びプリアンプ13cを有する。つまり、LD13aから出射されたレーザは、カンチレバー11の背面で反射し、反射光となってPD13bに入射し、PD13bでカンチレバー11のZ軸方向における変位を示す電気信号となり、その電気信号がプリアンプ13cで増幅され、フィードバック制御部14に出力される。
フィードバック制御部14は、変位計測部13で計測された変位に基づいて試料20と探針部12の先端との距離を一定に維持する制御を行う回路であり、プリアンプ13cから送られてきた電気信号が示すカンチレバー11のZ軸方向における変位を一定に維持するための、ステージ17をZ軸方向に駆動する信号(Z軸駆動信号)を生成し、ステージ17及びPC15に出力する。
PC15は、試料20をX軸及びY軸方向に走査させるためのXY駆動信号をXY駆動部16に出力するとともに、フィードバック制御部14から送られてくるZ軸駆動信号を受信し、それらXY駆動信号及びZ軸駆動信号に基づいて試料20の表面の凹凸を示す2次元画像を生成して表示する装置である。
XY駆動部16は、PC15から送られてくるXY駆動信号に従ってステージ17にX軸駆動信号及びY軸駆動信号を出力することでステージ17をX軸方向及びY軸方向に駆動し、これによって、試料20をX軸方向及びY軸方向に走査させる。
ステージ17は、フィードバック制御部14から送られてくるZ軸駆動信号、及び、XY駆動部16から送られてくるX軸駆動信号及びY軸駆動信号に従って、上部に載置された試料ホルダ18をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動させることで、探針部12の先端に対して試料20を相対的にX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動させるピエゾ素子等からなるスキャナである。
試料ホルダ18は、液体21の中に置かれた試料20を保持する装置であり、容器24、試料20、液体21、スペーサ22、及び、薄膜23で構成される。容器24には液体21が満たされ、その中に試料20が置かれ、液体21の液面には、開口部23aを有する薄膜23が設けられている。この開口部23aにより、探針部12は、開口部23aを貫通し、探針部12の先端だけが液体21に浸漬することが可能になる。また、薄膜23と試料20との間に挟まれた位置には、液体21と接するスペーサ22が設けられている。スペーサ22は、例えば、液体21の液面と接する薄膜23の面に蒸着された金で構成される。
なお、液中原子間力顕微鏡10は、探針と試料との間の相互作用力によって生じるカンチレバー11の変位から、探針と試料との間の相互作用力を検出するタイプのスタティックモードAFMだけに限られず、カンチレバー11をその共振周波数近傍の周波数で機械的に振動させながら試料に対して水平方向に走査した際の、探針と試料との間の相互作用力によって生じる振動振幅、周波数又は位相の変化から探針と試料との間の相互作用力を検出するダイナミックモードAFMであってもよい。また、フィードバック制御部14は、ステージ17をZ軸方向に駆動する代わりに、探針部12をZ軸方向に変位させてもよい。
[本発明の新規性]
探針先端部分のみを液中に浸漬させて、力検出器を大気中で動作させる手法は、既にチューニングフォーク又はコリブリセンサと呼ばれる技術で実現されている。しかしながら、力検出器と観察試料との間に薄膜を設置して、力検出器を液中から分離する手法は、これまでに報告されていない。
チューニングフォークは、液中に浸漬させる探針の長さを精密に制御しておらず、AFM実験ごとにQ値が大きく変動する。一方で、本手法では、金属薄膜と観察試料との間のスペーサの高さを制御することにより、水膜の厚さを精密に制御することが可能であり、実験環境の再現性を容易に得ることができる。
コリブリセンサは、液中環境下においてもQ値が6000以上あり、液中に浸漬させる探針の長さが常に一定であるのでQ値の変動もない。しかしながら、Q値と同様にバネ定数も非常に高く、探針を試料に接触させた段階で、試料が破壊されてしまう恐れがある。一方で、本発明技術は、バネ定数をこれまでの一般的なAFMカンチレバーと同程度に保つことが可能であり、バイオサンプル等の比較的柔らかい試料の液中AFM観察に応用することが可能である。
また、コリブリセンサは、(式1)よりQ値の上昇がバネ定数の上昇で相殺されて、力検出性能が従来のAFM計測と比較してあまり向上しない。一方で、本発明技術は、カンチレバーを大気中で動作させることでQ値の上昇が望めるだけではなく、バネ定数を従来と同程度に保つことができるので、(式1)より力検出性能を向上させることができる。
[探針部の詳細な構造]
図8は、本実施の形態における液中原子間力顕微鏡の特殊探針を示す模式図である。図8は、具体的には、図7におけるカンチレバー11の先端に接着された探針部12の詳細な構造を示す図である。
図8に示されるように、カンチレバー11の先端に、長さ100〜200μm程度のガラスプローブ12aが接着され、さらにガラスプローブ12aの先端に電子線堆積(EBD(Electron Beam Induced Deposition))による探針12bが形成されている。つまり、探針部12は、ガラスプローブ12aと探針12bとを有している。そして、探針部12は、探針部12のうち、探針12bを含む先端部分(例えば、探針部12の先端から50μm程度の部分)だけが液体21に浸漬するように、カンチレバー11に固定されている。
[観察例(マイカ/リン酸緩衝溶液界面のAFM観察)]
本観察例では、薄膜シールド機構を用いてマイカ/リン酸緩衝溶液界面の液中AFM観察を行った。マイカの劈開面は、セロハンテープ等で容易に劈開することが可能であり、AFM観察直前に原子レベルで平坦かつ清浄な表面を取得することができる。また、マイカ表面は親水的であり、なおかつ純水中で溶解・成長しないので、液中AFM計測のモデルとしてよく用いられている系である。この計測結果を基に、薄膜シールド機構を用いた時の、液中AFM計測の安定性や、Q値の上昇について検証を行った。
薄膜シールド機構は、電子顕微鏡のウインドウとして用いられている窒化シリコン(Si)メンブレンを使用した。開口部23aは、50μm四方程度とした。
一般的に、電子顕微鏡用メンブレンウインドは、Siウェハ上にSi薄膜を20〜500nm堆積し、Siウェハ中央部分のみをエッチングすることで作製されている。このメンブレンは、電子顕微鏡のイメージングに耐えるために、比較的高い耐熱性や機械的強度を有するので、今回のシールド機構に用いた場合にも、水の圧力に耐える十分な耐久性があると考えられる。このメンブレンの底部に金のマスク蒸着により、スペーサを作製し、メンブレンと観察試料との間の空間を形成した。メンブレンの側面に余分な観察溶液を接触させておくことで、観察溶液がメンブレンの穴から蒸発しても、常に側面からスペーサの間を通して観察溶液が補充され、AFM観察中に溶液環境を維持し続けることが可能である。
今回は、スペーサ22の厚さを50μm程度にしたので、汎用的なカンチレバーの探針の長さ(10μm)では、カンチレバーが試料表面にアプローチする際にメンブレンに接触してしまう恐れがあった。そのため、カンチレバー先端をガラスプローブ(長さ:150μm)で延長した特殊探針を使用した(図8)。
図9は、本実施の形態における液中原子間力顕微鏡10により取得されたマイカの液中原子像を示す画像図である。
図9より、マイカの結晶構造を反映した周期構造が、液中AFM像に再現していることが分かる。本観察例では、液中AFM計測を3時間程度連続して行ったが、観察溶液が乾燥することはなく、長時間安定してイメージングを行うことができた。また、Q値が15〜30程度に上昇し、従来の液中観察よりも2倍以上向上させることに成功した。Q値は、今回用いたガラスプローブの長さを短くしたり、メンブレン底部に形成したスペーサの高さを低くして水膜の厚さを薄くしたりすることにより、さらに上昇させることができると予想される。
以上の実験結果から、本実施の形態における液中原子間力顕微鏡10により、原子スケールでのAFM観察が可能であることが実証された。これにより、不純物を多く含む溶液環境中、又は、気泡発生環境下などの過酷条件下における液中AFM観察が可能となる。また、レーザ光又は電界の影響を、シールド薄膜で遮蔽することが可能である。
したがって、従来の手法では不可能だった観察試料の液中AFM観察が可能となり、液中AFM計測技術を幅広い分野に応用させることができる。さらに、大気中で力検出器を動作させることにより、従来の手法よりもQ値を向上させて、力検出性能を向上させることが可能である。これらのことから、本計測手法は、今後の固液界面研究を前進させる技術であり、非常に大きな進歩性を有する。
[まとめ]
液中原子間力顕微鏡(AFM)では、カンチレバー全体を液中に浸漬する構成が一般的である。しかし、それによりカンチレバーのQ値が大幅に低下するだけでなく、応用上もいくつかの問題がある。たとえば、触媒反応や電極反応により気体が発生した場合に、カンチレバーに付着して安定に計測できない。また、探針と試料との間にバイアス電圧を印加した場合には、カンチレバーと試料との間に大きな静電気力が印加される。
本実施の形態における液中原子間力顕微鏡は、これらの問題を解決するために薄膜シールド機構を備える。この構成では、電子顕微鏡用に開発されたSiメンブレンに、50μm程度の穴を集束イオンビーム(FIB)により形成し、その穴を通して探針先端のみを液中に浸漬させて、AFM観察を行う。
当初は、メンブレンと試料のギャップを、メンブレンをサポートするフレーム部に形成した金薄膜の厚さ(約500nm)により調節する予定であった。しかし、メンブレンの厚さが500nm程度と探針長(約15μm)よりも十分短いにもかかわらず、密閉された溶液によってメンブレンが上に押し上げられるために、それがカンチレバーに接触する問題が生じた。
この問題を解決するために、我々は、カンチレバー先端に、長さ100〜200μm程度のガラスプローブを接着し、さらにその先端に電子線堆積(EBD)探針を形成した(図8)。これを用いることで、探針のみを浸漬した状態で安定にマイカ表面の原子分解能観察を行うことに成功した。探針が液中に浸漬した段階で、Q値が20〜50程度まで低下してしまうので、あまり大きな力感度の向上は得られなかった。しかし、気体発生環境下での計測の安定化や、カンチレバーと試料との間に働く静電気力の抑制などの効果は十分に期待できる。
以上、本発明に係る液中原子間力顕微鏡について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本発明の範囲内に含まれる。
本発明は、従来よりも力検出性能を向上させた液中原子間力顕微鏡に利用可能である。
10 液中原子間力顕微鏡
11 カンチレバー
12 探針部
12a ガラスプローブ
12b 探針
13 変位計測部
13a LD
13b PD
13c プリアンプ
14 フィードバック制御部
15 PC
16 XY駆動部
17 ステージ
18 試料ホルダ
20 試料
21 液体
22 スペーサ
23 薄膜
23a 開口部
24 容器

Claims (4)

  1. 液体の中に置かれた試料を観察するための液中原子間力顕微鏡であって、
    先端に探針部を有するカンチレバーと、
    前記試料と前記探針部の先端との相互作用力による前記カンチレバーの変位を計測する変位計測部であって、前記カンチレバーに向けて光を出射し、出射した前記光の反射光を受光することを用いて前記変位を計測する変位計測部と、
    前記変位計測部で計測された変位に基づいて前記試料と前記探針部の先端との距離を一定に維持する制御を行うフィードバック制御部と、
    開口部を有し、前記液体の液面を覆うことによって、前記液体が存在する空間と、前記液体が存在しない空間とを区画する薄膜とを備え、
    前記探針部は、前記開口部を貫通し、当該探針部の先端だけが前記液体に浸漬するように、前記カンチレバーに固定されており、
    前記カンチレバーは、前記薄膜によって区画された、前記液体が存在しない前記空間において、前記変位計測部が出射した前記光を反射する面を有し、
    前記薄膜は、前記変位計測部が出射する前記光を遮蔽するシールド薄膜である
    液中原子間力顕微鏡。
  2. 前記探針部は、前記カンチレバーの先端に接着されたガラスプローブと、前記ガラスプローブの先端に形成された探針とで構成され、
    前記探針部は、当該探針部のうち、前記探針を含む先端部分だけが前記液体に浸漬するように、前記カンチレバーに固定されている
    請求項1に記載の液中原子間力顕微鏡。
  3. 前記薄膜は、窒化シリコンで構成されたメンブレンである
    請求項1又は2に記載の液中原子間力顕微鏡。
  4. さらに、前記薄膜と前記試料との間に挟まれ、かつ、前記液体に接するスペーサを備える
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の液中原子間力顕微鏡。
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