JP5090805B2 - 新規微生物、及び新規微生物を用いたヒアルロン酸又はその塩類の分解方法、並びに新規微生物を用いた不飽和型ヒアルロン酸糖鎖の製造方法 - Google Patents

新規微生物、及び新規微生物を用いたヒアルロン酸又はその塩類の分解方法、並びに新規微生物を用いた不飽和型ヒアルロン酸糖鎖の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、新規微生物に関し、特にヒアルロン酸水溶液に含有されている高分子のヒアルロン酸又はその塩類を分解して不飽和型ヒアルロン酸糖鎖を産生するアースロバクター アトロシアネウス(Arthrobacter atrocyaneus)種に属する新規微生物に関する。
ヒアルロン酸は、D−グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンの二糖が直鎖状に結合した枝分かれのない高分子多糖であり、動物のあらゆる結合組織に存在し、その分子量は数万から数百万とされている。ヒアルロン酸(又はその塩類)の構造式を化1に示す。化1の構造式中、Xは水素又は塩で構成される。
Figure 0005090805
ヒアルロン酸又はその塩類から誘導された、非還元末端糖であるD−グルクロン酸の4位と5位に二重結合を有している不飽和型ヒアルロン酸糖鎖は、自然界からは極微量しか得られず、入手困難若しくは入手できるとしても高価である。しかしながら、不飽和型ヒアルロン酸糖鎖は分析・研究用試薬などとして商業的な価値がある。
このような不飽和型ヒアルロン酸糖鎖の製造方法としては、微生物由来の酵素によりヒアルロン酸又はその塩類を分解するのが一般的である。微生物由来の酵素を用いることにより、非還元末端糖であるD−グルクロン酸の4位と5位に二重結合を有している二糖ユニットの不飽和型ヒアルロン酸糖鎖(化2)、あるいは非還元末端糖のD−グルクロン酸の4位と5位に二重結合を有している、四糖や八糖など種々の偶数サイズの不飽和型ヒアルロン酸糖鎖を製造することができる。化2の構造式中、Xは水素又は塩で構成される。
しかし、ヒアルロン酸又はその塩類を分解し、不飽和型ヒアルロン酸糖鎖を精製する分解酵素は高価であり、工業的に不飽和型ヒアルロン酸糖鎖を製造するにはコストが高くなってしまうという問題があった。
Figure 0005090805
このように、不飽和型ヒアルロン酸糖鎖の製造方法は、従来様々な問題を抱えており、何らかの簡便な方法でヒアルロン酸又はその塩類の分解を行う必要があった。
この簡便な分解方法としては、種々の方法が考えられるが、その中でも微生物を用いた生物分解処理は、温和な条件で分解が可能であり、比較的低コストであることから、非常に有用な方法であると考えられる。
ヒアルロン酸又はその塩類を不飽和型ヒアルロン酸糖鎖に分解する微生物としては、例えば、Streptomyces、Streptococcus、Peptococcus、Arthrobacter、Proteus、Flavobacteriumなどが研究されている(非特許文献1−4参照)。
Ohya T, Kaneko Y. Novel hyaluronidasefrom Streptomyces. Biochim. Biophys. Acta 198: 607-609, 1970. Tam Y-C, Chan EC. Purification andcharacterization of hyaluronidase from oral Peptostreptococcus species. Infect.Immun. 47: 508-513, 1985. Hiyama K, Okada S. Crystallization andsome properties of chondroitinase from Arthrobacter aurescens. J. Biol. Chem.250: 1824-1828, 1975. Yamagata T, Saito H, Habuchi O, SuzukiS. Purification and properties of bacterial chondroitinases andchondrosulfatases. J. Biol. Chem. 243: 1523-1535, 1968.
しかしながら、これらは全て酵素レベルでの活性を評価したものであり、実際にこれらの微生物がヒアルロン酸含有溶液中でどのような挙動を示すか研究されていないのが現状である。
従って、微生物を用いたヒアルロン酸又はその塩類を分解し、不飽和型ヒアルロン酸糖鎖を生産する工業的に実用可能な条件を満たし、かつ十分な分解能を持つという観点から考察すると、既知の菌種では必ずしも十分であるとは言えない。
このようなヒアルロン酸又はその塩類を分解する菌種において、工業的に実用可能な条件としては、十分なヒアルロン酸分解能を持ち、既知の菌種と生育条件が異なり、その応用範囲が拡大できるもの、あるいはその利用形態が豊富にあることが好ましい。
例えば、ヒアルロン酸又はその塩類を水溶液にして該菌種を用いて分解しようと想定した場合、使用する菌種が十分な分解能を有することは勿論、栄養源としてヒアルロン酸又はその塩類のみという貧栄養下でも生育し、かつ分解能を維持できることが望ましい。
そこで、本発明の発明者らは、ヒアルロン酸又はその塩類を分解する菌種を鋭意探索した結果、神奈川県内の環境中から、ヒアルロン酸分解能を有する新たな菌種を分離取得することに成功した。また、この菌種株をヒアルロン酸水溶液と接触させることで、優れたヒアルロン酸の分解効果が得られることを見いだし、本発明を完成させた。
本発明は、ヒアルロン酸分解能が優れている新規微生物、及び新規微生物を用いたヒアルロン酸又はその塩類の分解方法、並びに新規微生物を用いた不飽和型ヒアルロン酸糖鎖の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の新規微生物は、ヒアルロン酸又はその塩類の分解能を有するアースロバクター アトロシアネウス(Arthrobacter atrocyaneus)種に属する菌株としてある。
また、本発明の新規微生物は、以下の実施形態に示す所定の菌学的性質を有する微生物としてある。
また、本発明の新規微生物は、16S rRNAの遺伝子塩基配列が、配列番号1に記載された塩基配列を含む微生物としてある。
また、本発明の新規微生物は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター 受託番号NITE P−245で示されるアースロバクター アトロシアネウスJU-01(Arthrobacter atrocyaneus JU-01)株としてある。
また、本発明のヒアルロン酸又はその塩類の分解方法は、上記のいずれかの新規微生物をヒアルロン酸又はその塩類を含む溶液と接触させる方法としてある。
また、本発明の不飽和型ヒアルロン酸糖鎖の製造方法は、上記のいずれかの新規微生物をヒアルロン酸又はその塩類を含む溶液と接触させ、不飽和型ヒアルロン酸糖鎖を製造する方法としてある。
本発明によれば、ヒアルロン酸又はその塩類、特に栄養源としてヒアルロン酸又はその塩類のみという貧栄養下状態でも効率よくヒアルロン酸又はその塩類を分解する、アースロバクター アトロシアネウス(Arthrobacter atrocyaneus)に属する新規微生物、アースロバクター アトロシアネウスJU-01(Arthrobacter atrocyaneus JU-01)株を提供することができる。
また、本発明によって提供する新規微生物を用いることで、ヒアルロン酸又はその塩類を効率よく分解することができ、不飽和型ヒアルロン酸糖鎖を製造することが可能となる。
本発明によって取得された菌株の菌学的性質を以下に示す。なお、本発明において使用した培地の組成を以下に示す。
(i) ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト寒天培地(SCD寒天培地)
Tryptone 15g
Soypeptone 5g
NaCl 5g
Agar 15g
Deionized water 1000mL
(ii) イースト・麦芽寒天培地(ISP培地No.2)
Yeast Extract 4g
Malt Extract 10g
Glucose 4g
Agar 15g
Deionized water 1000mL
(iii) スターチ・無機塩寒天培地(ISP培地No.4)
Soluble Starch 10g
K2HPO4 1g
MgSO4 1g
NaCl 1g
(NH4)2SO4 2g
CaCO3 2g
Trace Salt Solution* 1mL
Agar 15g
Deionized water 1000mL
*Trace Salt Solution
FeSO4・7H2O 0.1g
MnCl2・4H2O 0.1g
ZnSO4・7H2O 0.1g
Deionized water 100mL
(iv) 肉汁寒天平板培地
Beef Extract 10g
Peptone 10g
NaCl 5g
Agar 15g
Deionized water 1000mL
(v) 肉汁液体培地
Beef Extract 5g
Peptone 10g
NaCl 5g
Deionized water 1000mL
(vi) 肉汁ゼラチン培地
Beef Extract 5g
Peptone 10g
NaCl 5g
Gelatin 200g
Deionized water 1000mL
(vii) リトマスミルク
Litmes 0.5g
Skim milk powder 100g
Sodium sulfite 0.5g
Deionized water 1000mL
A.形態的性質
形態的性質を観察する培地として、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト寒天培地(SCD寒天培地)、イースト・麦芽寒天培地(ISP培地No.2)及びスターチ・無機塩寒天培地(ISP培地No.4)を用いて観察を行った。
本発明に係る菌株の形態的性質を表2に示す。
Figure 0005090805
B.培養的性質
(1)各種培地による培養的性質
培養的性質を観察する培地として、肉汁寒天平板培地、肉汁液体培地、肉汁ゼラチン培地(穿刺培養)およびリトマスミルクを用いて観察を行った。
本発明に係る菌株の培養的性質を表3に示す。
Figure 0005090805
(2)ISP培地No.2及びISP培地No.4による培養的性質
本発明に係る菌株のイースト・麦芽寒天培地(ISP培地No.2)及びスターチ・無機塩寒天培地(ISP培地No.4)による培養的性質を表4示す。
Figure 0005090805
C.生理学的性質
本発明に係る菌株の生理学的性質を表5に示す。
Figure 0005090805
D.化学分類学的性質
本発明に係る菌株の細胞壁ペプチドグリカンのアミノ酸組成は、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、リジンからなり、ジアミノピメリン酸は存在しない。
また、本発明に係る菌株の16S rRNAの塩基配列(約1500bp)について、公知の16SrRNA塩基配列データとの相同性を調べたところ、アースロバクター アトロシアネウス(Arthrobacter atrocyaneus)の標準菌株であるDSM20127株と約99.4%の相同性を示した。
これらの結果より、本菌株はアースロバクター アトロシアネウス(Arthrobacter
atrocyaneus)であると同定した。
しかし、本菌株は、後述する実施例からも明らかなように、本菌株は公知の菌株にはない優れたヒアルロン酸分解能を有している。
一方、アースロバクター アトロシアネウス種に属する菌株においてはヒアルロン酸を分解する菌はこれまでに知られていない。
以上のことから、本菌株を新菌株と認定し、アースロバクター アトロシアネウスJU-01(Arthrobacter atrocyaneus JU-01)と命名し、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託した(受託番号:NITE P−245)。
本発明においては、本菌株の他、自然にもしくは人工的手段によって変異させて得られる変異株及び子孫であっても、上述した本菌株が備える能力を有するものはすべて本発明に包含される。
本発明に使用するヒアルロン酸又はその塩類は、特に限定されるものではないが、市販試薬又はヒアルロン酸又はその塩類を得ることができる素材から調製(動物・植物・微生物発酵・合成法)したものが使用できる。
本発明に使用するヒアルロン酸の分子量は、特に限定されるものではないが、100万以上のヒアルロン酸の他、100万未満のヒアルロン酸も使用可能である。
ヒアルロン酸は、遊離型若しくは塩型でもよく、安定に使用することができる塩型が好ましい。
ヒアルロン酸の塩類としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの無機金属塩類、リジン塩、アルギニン塩、ヒスチジン塩等の塩基性アミノ酸塩、アンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩等の有機塩類がヒアルロン酸の好適な塩として挙げられ、特に汎用的であるアルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
本発明に使用される菌株の培養に用いられる培地は、本発明の菌株が資化することができる炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、本発明の微生物の培養を効率的に行える培地であれば、天然培地、合成培地のいずれでも用いることができる。
培地中の炭素源の具体例としては、例えば、グルコース、マンノース、フルクトース、マンニトール、イノシトール、スターチ等の炭水化物を挙げることができる。
窒素源の具体例としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、乳酸アンモニウム等の各種無機アンモニウム塩や有機アンモニウム塩、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、大豆粉、綿実かす等を挙げることができる。
無機物の具体例としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム等を挙げることができる。
また、必要に応じて、チアミン、ビオチン等のビタミン類、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸、アデニン、グアニン等の核酸関連物質を添加してもよい。
本発明に用いられる菌株の培養は、振盪培養、通気攪拌培養、平板静置培養等の条件下で行うことが好ましい。
培養は、20〜40℃の温度範囲で行うことが好ましく、25〜35℃で18〜48時間程度培養することがより好ましい。
培養中のpHとしては、pH4.0〜9.0とすることができ、中性付近に保持することが好ましい。pH調整は、無機酸あるいは有機酸、アルカリ溶液、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。
本発明の不飽和型ヒアルロン酸糖鎖の製造方法は、ヒアルロン酸又はその塩類を上記の本発明の菌株で分解処理するステップと、この処理生成物から不飽和型ヒアルロン酸糖鎖を濃縮・分離・精製するステップからなる。
本発明の菌株によるヒアルロン酸又はその塩類の分解処理方法は、菌株の培養菌体そのままを用いて、ヒアルロン酸又はその塩類が含有している水溶液に接触させる。
具体的には、培養菌体を滅菌水で107〜108個/mL程度に懸濁し、その懸濁液をヒアルロン酸又はその塩類を含有した水溶液の重量に対し、1.0w/v%接種する。
接種後の培養温度としては20〜30℃の範囲が好ましく、最も好ましくは25℃で、18時間〜120時間程度培養する。培養中、pHの調整は特に行わなくても良い。
処理生成物の滅菌方法としては、加熱滅菌、高圧蒸気滅菌、ろ過滅菌、紫外線殺菌、放射線殺菌等が好ましく、ろ過滅菌で行うことがより好ましい。
滅菌処理を行い得られた処理物から不飽和型ヒアルロン酸糖鎖を濃縮・分離・精製するには、公知の種々の方法を選択し組み合わせて行うことができる。
例えば、濾過、遠心分離、減圧濃縮、透析、乾燥、凍結乾燥、吸着、脱着、各種溶媒に対する溶解度の差を利用する方法(沈殿、結晶化、再結晶等)、各種クロマトグラフィー(イオン交換、ゲルろ過など)等を用いることができる。また、得られた不飽和型ヒアルロン酸糖鎖は、232nm付近に紫外線吸収を認めることから、分光光度計や、紫外分光光度計が組み込まれた高速液体クロマトグラフ、紫外分光光度計が組み込まれた高速液体クロマトグラフ質量分析計などを用いて不飽和型ヒアルロン酸糖鎖の精製を確認することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の方法を用いることにより、D−グルクロン酸の4位と5位に二重結合を有している不飽和型ヒアルロン酸糖鎖、好ましくは2〜8糖の糖鎖、より好ましくは2糖及び4糖の不飽和型ヒアルロン酸糖鎖を容易に得ることができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1)ヒアルロン酸ナトリウム水溶液中での生存確認
本発明に係る菌株であるアースロバクター アトロシアネウスJU-01(Arthrobacter
atrocyaneus JU-01)株を用いてヒアルロン酸ナトリウム水溶液中での生存状態を確認する試験を以下の通りに行った。
なお、ヒアルロン酸ナトリウムは平均分子量約150万のものを使用した。
復元させたアースロバクター アトロシアネウスJU-01をシャーレから取り、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト寒天培地に塗抹し、32℃で18時間の前培養を行った後、培養菌体を滅菌水で107〜108個/mL程度に懸濁した。
次に、滅菌済みである容量が100mLのねじ口瓶に、無菌的に調製した1.0w/w%ヒアルロン酸ナトリウム100gを入れ、調整した菌懸濁液を1.0mL接種した。
これを25℃で7日間静置した後、菌数をソイビーン・カゼイン・ダイジェスト寒天培地(SCD寒天培地)で測定し、菌数の増減を観察した。
(比較例1)ヒアルロン酸ナトリウム水溶液中での生存確認
公知である菌株アースロバクター アトロシアネウス(Arthrobacter atrocyaneus)NBRC12956株を用いてヒアルロン酸ナトリウム水溶液中での生存状態を確認する試験を、実施例1と同様に行い、7日後の菌数を測定した。
実施例1及び比較例1の結果を表6に示す。
Figure 0005090805
実施例1及び比較例1の結果を比較すると、公知の菌株であるアースロバクター アトロシアネウス(Arthrobacter atrocyaneus)NBRC12956株は、栄養源としてヒアルロン酸ナトリウムのみという貧栄養下状態では、徐々に減少していくことがわかる。
これに対して、アースロバクター アトロシアネウスJU-01(Arthrobacter atrocyaneus JU-01)株は、ヒアルロン酸ナトリウムのみという貧栄養下状態でも良好に生存した。
(実施例2)ヒアルロン酸ナトリウム分解能
高分子多糖であるヒアルロン酸ナトリウムの水溶液は高粘性であり、逆に低分子化したヒアルロン酸ナトリウムの水溶液は粘性が無くなっていく。この現象を利用し、ヒアルロン酸ナトリウムの水溶液の粘度を本発明の菌株によるヒアルロン酸ナトリウムの分解能として測定した。
粘度計は、B型粘度計〔(株)東機産業製、BL型粘度計〕を使用した。また、ローターは、4号を使用し、回転数6rpm、測定時間60秒、測定温度30℃の条件で測定した。
本発明に係る菌株であるアースロバクター アトロシアネウスJU-01(Arthrobacter
atrocyaneus JU-01)株を、実施例1と同様の方法で、ヒアルロン酸ナトリウムの水溶液に接種し、25℃で120時間静置して培養した後、粘度を測定した。
(比較例2)ヒアルロン酸ナトリウム分解能
公知である菌株アースロバクター アトロシアネウス(Arthrobacter atrocyaneus)NBRC12956株を、実施例1と同様の方法で、ヒアルロン酸ナトリウムの水溶液に接種し、25℃で120時間静置した後、粘度を測定した。
実施例2及び比較例2の結果を表7に示す。
Figure 0005090805
実施例2及び比較例2の結果を比較すると、公知の菌株であるアースロバクター アトロシアネウス(Arthrobacter atrocyaneus )NBRC12956株は、栄養源としてヒアルロン酸ナトリウムのみという貧栄養下状態では、ヒアルロン酸ナトリウムを分解することができなかった。
これに対して、アースロバクター アトロシアネウスJU-01(Arthrobacter atrocyaneus JU-01)株は、ヒアルロン酸ナトリウムを分解する能力において遙かに優れていた。
(実施例3)経過時間によるヒアルロン酸ナトリウムの平均分子量測定
本発明に係る菌株であるアースロバクター アトロシアネウスJU-01(Arthrobacter atrocyaneus JU-01)株を、ヒアルロン酸ナトリウムの水溶液に接触させたときの、各経過時間後の平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。
平均分子量の測定は、カラムはTSKgel GMPWXL(7.8mm×30cm)2本を用い、0.1M硝酸ナトリウムを溶離液とし、流量:1.0mL/min、カラム温度:40℃、検出器:RIの分析条件で、分子量既知の標準プルランから検量線を作成し、プルラン換算の平均分子量を算出した。
実施例1と同様の方法で、ヒアルロン酸ナトリウムの水溶液に当該菌株を接種し、120時間静置した後、0.22μmメンブランフィルターで当該菌株を除去した。
その後、減圧濃縮を行って、エタノールを用いて再結晶をし、分解したヒアルロン酸ナトリウムを精製した。
各経過時間後の平均分子量の測定結果を図1に示す。また、各経過時間後のクロマトグラムを図2〜8に示す。
これらの図に示す通り、本発明に係る菌株であるアースロバクター アトロシアネウスJU-01(Arthrobacter atrocyaneus JU-01)株を、ヒアルロン酸ナトリウムの水溶液に接種してから18時間後には、ヒアルロン酸ナトリウムの平均分子量が約1/10になり、120時間後にはヒアルロン酸ナトリウムの平均分子量は約1/2000にまで減少した。
これにより、本発明に係る菌株であるアースロバクター アトロシアネウスJU-01株を、ヒアルロン酸ナトリウムの水溶液に接触させることで、ヒアルロン酸ナトリウムが分解されることが明らかとなった。
(実施例4)ヒアルロン酸分解物の精製
本発明に係る菌株であるアースロバクター アトロシアネウスJU-01(Arthrobacter
atrocyaneus JU-01)株を、ヒアルロン酸ナトリウムの水溶液に接触させたときの、ヒアルロン酸ナトリウム分解物の精製を行った。
実施例1と同様の方法で、ヒアルロン酸ナトリウムの水溶液に当該菌株を接種し、120時間静置した後、0.22μmメンブランフィルターで当該菌株を除去した。
その後、凍結乾燥を行い、ヒアルロン酸ナトリウム分解物995mgを得た。得られたヒアルロン酸ナトリウム分解物20mgをバイオゲルP-2カラム(1.5×96cm)にて、水を溶媒としてゲルろ過クロマトグラフィーを行い、フラクション液のUV232nmの吸収をモニターし、UV232nmの吸収を認めたフラクションを集めた(図9)。
この集めたフラクションを凍結乾燥して不飽和型ヒアルロン酸ナトリウム18mgを得た。
得られた不飽和型ヒアルロン酸ナトリウムをエレクトロスプレーイオン化−飛行時間型質量分析装置(ESI-TOF-MS)にて分析したところ、D−グルクロン酸の4位と5位に二重結合を有している2糖及び4糖の混合物であることが確認された(図10)。
なお、質量分析装置は、アプライドバイオシステムズ社製のQSTAR XLを使用し、イオン化方法はESIポジティブモード、移動相として0.1%酢酸含有、水/メタノール混液(1:1)を用いて測定を行った。
本発明は、不飽和型ヒアルロン酸糖鎖又はその塩類の製造に好適に利用することが可能である。
本発明のアースロバクター アトロシアネウスJU-01株をヒアルロン酸ナトリウムの水溶液に接触させて得られた分解物の平均分子量の経時変化をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した結果を示す図である。 本発明のアースロバクター アトロシアネウスJU-01株接種前のGPCクロマトグラムを示す図である。 本発明のアースロバクター アトロシアネウスJU-01株接種18時間後のGPCクロマトグラムを示す図である。 本発明のアースロバクター アトロシアネウスJU-01株接種24時間後のGPCクロマトグラムを示す図である。 本発明のアースロバクター アトロシアネウスJU-01株接種48時間後のGPCクロマトグラムを示す図である。 本発明のアースロバクター アトロシアネウスJU-01株接種72時間後のGPCクロマトグラムを示す図である。 本発明のアースロバクター アトロシアネウスJU-01株接種96時間後のGPCクロマトグラムを示す図である。 本発明のアースロバクター アトロシアネウスJU-01株接種120時間後のGPCクロマトグラムを示す図である。 本発明のアースロバクター アトロシアネウスJU-01株をヒアルロン酸ナトリウムの水溶液に接触させて得られた分解物をゲルろ過クロマトグラフィーで精製した結果を示す図である。 本発明のアースロバクター アトロシアネウスJU-01株をヒアルロン酸ナトリウムの水溶液に接触させて得られた不飽和型ヒアルロン酸ナトリウムをエレクトロスプレーイオン化−飛行時間型質量分析装置(ESI-TOF-MS)により分析した結果を示す図である。

Claims (5)

  1. ヒアルロン酸又はその塩類の分解能を有する、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター 受託番号NITE P−245で示されるアースロバクター アトロシアネウスJU-01(Arthrobacter atrocyaneus JU-01)株。
  2. 以下の菌学的性質を有する請求項1記載の微生物。
    A.形態的性質
    (1)細胞の形態: 短桿菌
    (2)細胞の大きさ(μm): 0.3〜0.5×0.8〜1.0
    (3)運動性の有無: 無し
    (4)菌糸の有無: 無し
    (5)胞子の有無: 無し
    B.培養的性質
    (1)肉汁寒天平板培地: 全縁・平滑・輝光
    (2)肉汁液体培地: 沈殿有り・皮膜無し・リング無し
    (3)肉汁ゼラチン培地(穿刺): 液化無し
    (4)リトマスミルク: 脱色・凝固有り
    C.生理学的性質
    (1)グラム染色性: +
    (2)硝酸塩の還元: +
    (3)MRテスト: −
    (4)VPテスト: −
    (5)インドールの生成: −
    (6)硫化水素の生成: −
    (7)デンプンの加水分解: +
    (8)クエン酸の利用: −
    (9)色素の生成: 黄色
    (10)ウレアーゼ: −
    (11)オキシターゼ: −
    (12)ヒアルロン酸分解能: +
    (13)生育の範囲(pH): 4〜9
    (14)生育の範囲(温度): 20〜40℃
    (15)酸素に対する態度: 好気性
    (16)OFテスト: −
    (17)各種糖類からの酸及びガスの発生
    Figure 0005090805
    D.化学分類学的性質
    (1)細胞壁のアミノ酸組成:セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、リジン
    (2)ジアミノピメリン酸の存在:ジアミノピメリン酸は存在しない
  3. 16S rRNAの遺伝子塩基配列が、配列番号1に記載された塩基配列を含む請求項1又は2記載の微生物。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載の微生物をヒアルロン酸又はその塩類を含む溶液と接触させることを特徴とするヒアルロン酸又はその塩類の分解方法。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の微生物をヒアルロン酸又はその塩類を含む溶液と接触させ、不飽和型ヒアルロン酸糖鎖を製造することを特徴とする不飽和型ヒアルロン酸糖鎖の製造方法。
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