JP5089449B2 - 粉末ほうじ茶を含有する茶飲料 - Google Patents

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Description

本発明は、粉末ほうじ茶を茶飲料に添加することにより、該茶飲料の香味を増強する方法に関する。また、本発明は、粉末ほうじ茶を茶抽出液に添加、混合することにより香味が増強された茶飲料、に関する。
近年、缶やペットボトル等の容器に充填された容器詰茶飲料が多く開発、市販されており、特に、緑茶飲料の市場が拡大している。市場の拡大とともに、このような容器詰茶飲料に対する消費者の嗜好は高まっており、急須で淹れたような、適度な渋味を有しながらも、旨味やコク味をより一層強く感じる緑茶飲料の開発が望まれている。
容器詰茶飲料、特にペットボトル等の透明容器に充填された容器詰緑茶飲料は、保存中における沈殿抑制の観点から、緑茶抽出液を微細なメッシュ(フィルター)での濾過、遠心分離、珪藻土濾過、限外濾過、またはこれらを併用した分離処理により、緑茶由来の懸濁粒子或いは茶葉組織の微細片を取除くことによって製造されている。このように茶葉由来の固形分が除去されてしまうため、このような緑茶飲料は、茶特有の香りや、旨味、コク味が物足りないという欠点を有する。特に、香りの点において、上記の原因の他、容器詰飲料として殺菌工程や保存工程を経るため、急須で淹れたてのような豊かな香りが消失してしまうという欠点を有する。
そこで、容器詰茶飲料の香りを増強する方法として、例えば、茶葉に短時間、蒸気を通ずる方法(特許文献1)、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸ナトリウムの存在下に茶などから香気成分を蒸留し、これを添加する方法(特許文献2)、高温抽出した後、低温抽出することにより、高温抽出の高い香りと低温抽出の深い旨味とコクを有する茶飲料を得る方法(特許文献3)、茶類を低温抽出水と高温抽出水の少なくとも2種類の抽出水にて有用成分を抽出し、旨味及び香気ともバランスのとれた製品を製造する方法(特許文献4)等が開示されている。
また、茶飲料の香りを増強する添加剤も種々検討されており、例えば、茶飲料にカロチン類の熱分解物を加えて花香調を増強する方法(特許文献5)、3−メチルノナン−2,4−ジオンを用いてコクのあるグリーン香を持った茶飲料を得る方法(特許文献6)等が開示されている。
一方、抹茶等の粉末緑茶葉を利用することにより、茶飲料中の旨味及びコク味を増強する方法が知られている。例えば、緑茶粉末(微粉末茶)を水または温水で抽出し、該抽出液を遠心分離して緑茶粉末由来の大粒子成分を遠心分離して香味、滋味ともに優れた微粉茶飲料を得る方法(特許文献7)や、緑茶抽出液を遠心分離し澄明な部分を採取して透明緑茶抽出液を調製し、これに緑茶粉末を添加して緑茶微粒子を適度に含み、コクがあり、深い味わいのある緑茶飲料を得る方法(特許文献8)が開示されている。
特開平08−116882号公報 特開平08−073886号公報 特開平6−303904号公報 特開平11−56242号公報 特公平07−099995号公報 特開2002−171906号公報 特開平11−276074号公報 特許第2981137号
上記のとおり、茶特有の香りや、旨味、コク味を増強する方法が種々検討されている。しかし、上記特許文献5,6に示すような添加剤を用いた方法では、香料として添加される添加剤が茶葉由来成分ではないために、急須で淹れたてのようなフレッシュな香りは付与されず、人工的又は茶葉由来成分以外の緑茶と異質の香味が感じられることがあった。また、茶葉由来成分で製造されるその他の方法(特許文献1〜4、7〜8)についても、香り、旨味、コク味の全てを満足しうる茶飲料は得られていなかった。したがって、本発明の目的は、茶由来成分のみで製造される茶飲料であって、茶本来の旨味・コク味を有し、かつ豊かな香りを有する容器詰茶飲料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、ほうじ茶の粉末茶葉を茶抽出液に添加することにより、茶本来の持つ香りを増強できることを見出した。そして、特に、茶抽出液が緑茶抽出液である緑茶飲料を製造する場合、ほうじ茶の粉末茶葉の添加により、緑茶特有の香り、旨味及びコク味が増強された茶飲料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
1.粉末ほうじ茶葉を茶抽出液に混合して得られる、茶飲料。
2.茶抽出液が、ほうじ茶を除く緑茶葉から選択される一種または2種以上の茶葉の抽出液である、上記1に記載の茶飲料。
3.粉末ほうじ茶の平均粒子径が、100μm以下である、上記1又は2に記載の茶飲料。
4.680nmにおける吸光度が、0.25以下である、上記1〜3のいずれかに記載の茶飲料。
5.ゲル濾過クロマトグラフィーの紫外線吸収400nmにより検出される分子量30万以上の可溶性高分子画分を0.20μg/ml以上(色素換算量)含有する、上記1〜4のいずれかに記載の茶飲料。
6.茶飲料が容器詰茶飲料である、上記1〜5のいずれかに記載の茶飲料。
7.粉末ほうじ茶を茶飲料に添加することにより、該茶飲料の香味を増強する方法。
本発明によると、茶葉由来成分のみで製造される茶飲料、すなわち、合成又は茶葉由来でない天然香料を使用しない茶飲料であって、茶特有の香りや、旨味、コク味が増強された、急須で淹れたてのような風味(味及び香)を有する茶飲料、特に、容器詰茶飲料を製造することが可能である。
本発明のほうじ茶粉末の添加は、茶飲料のフレッシュな香りを損なうことなく、茶特有の旨み、コク味を増強して、高級茶特有のまったりとした自然な甘さを感じさせる、高級感あふれる茶飲料として提供される。
(粉末ほうじ茶葉)
本発明では、茶飲料に豊かな香りを付与するための茶葉由来添加成分として、粉末ほうじ茶を用いることを特徴とする。粉末ほうじ茶の原料であるほうじ茶葉とは、飲用に供することが可能な焙じた茶葉をいい、通常、煎茶や番茶、茎茶を焙煎した茶葉で、具体的には、ほうじ番茶、京番茶、雁ヶ音ほうじ茶、ほうじ煎茶等が例示される。また、本発明における粉末ほうじ茶葉とは、前記ほうじ茶を粉末状にしたものをいい、例えば、抹茶と同様に乾燥ほうじ茶葉を小片にして石臼等で挽いて粉にして製造される。
本発明の粉末ほうじ茶葉は、製造の際に、ほうじ茶葉の細胞壁が破壊される程度の粉砕を行うことによって、このような粉砕を行わない茶葉抽出物では得られない香気成分とコク味成分を茶飲料中に溶出させることを特徴とするものである。したがって、ほうじ茶葉を数ミリ程度に切断しただけの粉砕茶葉、すなわち、細胞壁が破壊される程度にまでは粉砕されていない茶葉は、本発明の粉末ほうじ茶葉としては適当ではない。
本発明の粉末ほうじ茶葉の製造方法は、細胞壁が破壊される程度に粉砕されるものであれば、その粉砕方法は、石臼挽き、機械挽き、凍結粉砕等を問わない。ただし、粉砕時の発熱によって茶葉の品質が低下することを極力抑える観点から、石臼挽き、凍結粉砕を採用することが好ましい。このようにして製造される粉末ほうじ茶葉の平均粒子径は、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。
本発明のコク味成分は、ほうじ茶葉の細胞壁中に存在する可溶性高分子画分であり、その成分解析の結果、グリセロ糖脂質及びクロロフィルを含有することが明らかになった。グリセロ糖脂質とは、グリセロール分子を骨格として、糖残基と、脂肪酸などのアシル基が結合した糖脂質の一種であり、分子内に親水性の糖残基と疎水性のアシル基を持つ両親媒性物質である。可溶性高分子画分中、グリセロ糖脂質は、コロイド分散系として存在していると考えられる。
本発明のコク味成分は、ほうじ茶葉の溶媒抽出物で、ゲル濾過クロマトグラフィーの紫外線吸収400nmにより検出される分子量30万以上の可溶性高分子画分を有効成分として含有する。本明細書における可溶性高分子画分とは、メンブレンフィルター(孔径0.45μm、十慈フィールド株式会社 水系未滅菌13A)にて茶葉の溶媒抽出物又は茶飲料を濾過したときにメンブレンフィルターを通過した通過液を、ゲル濾過クロマトグラフィーに供し、紫外線吸収400nmで保持時間約6分に検出されるボイド成分をいう(図1参照)。
本発明のコク味増強の作用機構についてはいまだ明らかではないが、コロイド分散系として存在するグリセロ糖脂質が、茶葉中の他の成分と弱い会合を形成し、濃厚感を与え、コク味を付与していると推察される。茶葉からのグリセロ糖脂質の製造については、茶殻から有機溶媒で抽出する方法が知られている(特開2005−343814号公報)。グリセロ糖脂質について、その生理活性は知られているが、茶飲料に与える呈味については何ら知られておらず、細胞壁を破壊する粉砕後の抽出により、グリセロ糖脂質を含む成分が多く得られることも知られておらず、本発明により初めて見出された知見である。
(茶抽出液ベース)
本発明の茶飲料は、ベースとなる茶抽出液に粉末ほうじ茶又は粉末ほうじ茶懸濁液を混合することにより製造されるものである。ほうじ茶(ほうじ茶抽出液)、顆粒状のほうじ茶(ほうじ茶抽出液を顆粒状にしたもの)及び粉末ほうじ茶葉を湯で溶かしたものが、ほうじ茶特有の香ばしい香りを有すること、苦味や渋味がほとんどない香味を奏することは知られている。しかし、粉末ほうじ茶葉を茶抽出液、特に緑茶抽出液に添加したときに、香ばしい香りのみならず、緑茶本来が持つ深みのある茶葉感、熟成感を伴う良好な香りを付与することができることは、本発明により初めて見出された知見である。特に、本発明の粉末ほうじ茶葉は、渋味成分であるカテキンを200〜800ppm(w/v)、旨味成分であるアミノ酸を20〜200ppm(w/v)含有する茶飲料において、その効果、すなわち緑茶本来が持つ香りやコク味を、より一層増強させるという特徴を有する。
ここで、ベースとなる茶抽出液としては、ツバキ属植物(学名:Camellia sinensis)に属する樹木の生葉、もしくは、それを加工して得られる不発酵茶、半発酵茶、発酵茶、後発酵茶の抽出液であればどのようなものでも構わないが、不発酵茶本来の自然なグリーンをイメージする香味を楽しむ緑茶葉を用いることが好ましい。具体的には、煎茶、深蒸し茶、玉露、茎茶、かぶせ茶、玉緑茶、碾茶、番茶、玄米茶、釜炒り茶のうちの一種または2種以上の茶葉が選択される。特に好ましいのは、煎茶及び/又はかぶせ茶である。これら茶葉の抽出液を得るための抽出条件は、特に限定されないが、茶飲料中のカテキン量、アミノ酸量が上述の範囲内となるように、茶抽出液を得ることが好ましい。なお、茶抽出液には、抽出時又は抽出後に、L-アスコルビン酸等の酸化防止剤や、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤を添加してもよい。
(茶飲料)
上記茶抽出液ベースに、粉末ほうじ茶葉を添加して混合することにより、本発明の茶飲料は製造される。粉末ほうじ茶葉の配合割合は、所望する香味等により適宜設定すればよいが、通常、茶飲料全体に対する粉砕ほうじ茶葉量として、0.001〜0.5重量%、好ましくは0.01〜0.2重量%程度である。0.001重量%未満であると、茶飲料の緑茶本来の香味を増強する作用が十分に得られず、また0.5重量%を超えて配合すると、ほうじ茶の独特な香ばしい香りが強くなり、緑茶本来のグリーンな香りが損なわれることになる。
本発明の茶飲料は、細胞壁が破壊される程度に粉砕された粉末ほうじ茶葉を用い、細胞膜内に存在する香味及びコク味を増強するのに有用な成分である、可溶性高分子画分を溶出させ、これを茶飲料に含有させることにより、茶特有の香り、旨味及びコク味を増強させることを特徴とするものである。
粉末ほうじ茶の可溶性高分子画分の溶出量は、その抽出温度にはほとんど影響されないが、高圧ホモジナイザー処理を施すことによって、大きく増大することがわかっている。したがって、本発明の茶飲料の好ましい製造方法は、以下の工程;1)ほうじ茶葉の細胞壁を破壊して粉末ほうじ茶葉を得る工程、2)前記粉末ほうじ茶葉に水又は茶抽出液を混合して粉末茶葉の懸濁液を得る工程、及び3)前記懸濁液に高圧ホモジナイザー処理を施す工程、を含む工程により製造することが好ましい。なお、上記工程2)において、水を混合する場合は、高圧ホモジナイザー処理後の懸濁液を別途調製した茶抽出液に添加することで、茶飲料が製造できる。
粉砕されたほうじ茶葉が水又は茶抽出液に懸濁された状態のほうじ茶葉懸濁液に、さらに高圧ホモジナイザーで微粉砕処理を施すと、茶飲料にコク味を与える可溶性高分子画分の溶出量が増加する。したがって、高圧ホモジナイザーによる湿式粉砕処理工程(工程3)を行うことが好ましい。なお、ここでいう高圧ホモジナイザーとは、微細な隙間から液を高圧下に高速で噴出することにより発生するせん断力、キャビテーション等により、乳濁液滴や懸濁粒子を超微細化する装置をいう。本発明の粉末ほうじ茶においては、高圧ホモジナイザーでなくても、粉砕茶葉から可溶性高分子画分を多く溶出しうる手段であれば、どのようなものでも使用できる。高圧ホモジナイザーを使用する場合、その圧力は特に制限されないが、圧力が高いほど可溶性画分の溶出量が増加する傾向にあることから、50kg/cm以上、好ましくは100kg/cm以上、より好ましくは200kg/cm以上である。このような条件で茶葉の微粉砕を行うと、通常、茶葉の平均粒子径は0.1μm〜1μm、好ましくは0.3μm〜1μm程度となる。
さらに、上記工程3)の後に、遠心分離や濾過のような分離処理(清澄化処理)によって不溶性固形分を除去することにより、粉砕茶葉組織の微細片や緑茶粒子等の不溶性固形分によるざらつきや後味の悪さを改善することができ、保存中の沈殿を抑制することもできる。この場合にも、本発明における香り及びコク味を増強するのに有用な成分は可溶性高分子画分であるから、清澄化処理によって、茶飲料の好ましい香り及びコク味が減少することはない。
清澄化処理の方法は特に限定されないが、簡便性から、遠心分離を用いることが好ましい。遠心分離等の分離処理条件は、適宜設定すればよいが、茶飲料の680nmにおける吸光度が0.25以下となるような分離処理条件とすることで、ざらつきのない後味のすっきりとした茶飲料となり、本発明による作用、すなわちコク味の増強をより一層感じられる茶飲料となる。このような遠心分離条件としては、具体的には、粒子径1μmを越える不溶性固形分粒子の大部分が除去されるような分離処理である。(ここで大部分とは、50%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上を表す。)
本発明者らの検討によると、ゲル濾過クロマトグラフィーの紫外線吸収400nmにより検出される分子量30万以上の可溶性高分子画分は、玉露、釜煎り玉緑茶、深蒸し茶などの高級茶葉に含まれる成分である。本発明の茶飲料では、この可溶性高分子画分が、粉末ほうじ茶葉由来成分として多量に含まれるので、高級緑茶が有する独特のまろやかで重厚な味わいを、簡便な製造方法で容器詰茶飲料として提供できる。具体的には、可溶性高分子画分が、茶飲料全体に対して0.20μg/ml(黄色4号色素換算)、好ましくは0.30μg/ml以上、より好ましくは0.50μg/ml以上含有する本発明の茶飲料は、緑茶本来の香りとともに濃厚感が感じられるコク味を有する茶飲料となる。なお、本明細書における可溶性高分子画分とは、メンブレンフィルター(孔径0.45μm、十慈フィールド株式会社 水系未滅菌13A)にて茶飲料を濾過したときにメンブレンフィルターを通過した通過液を、ゲル濾過クロマトグラフィーに供し、紫外線吸収400nmで保持時間約6分に検出されるボイド成分をいう(図1参照)。
(容器詰茶飲料)
本発明により得られる茶飲料は、殺菌工程や保存工程を経ても、その豊かな香り、旨味及びコク味が維持される。したがって、本発明の茶飲料は、容器詰飲料として好適に提供されるものである。容器詰飲料は、茶飲料を殺菌して容器に充填する、又は容器に充填した後に加熱殺菌(レトルト殺菌等)を行うことで、製造される。例えば缶飲料とする場合には、上記調合液を缶に所定量充填し、レトルト殺菌(例えば、1.2mmHg、121℃、7分)を行い、ペットボトルや紙パック、瓶飲料とする場合には、例えば120〜150℃で1〜数十秒保持するUHT殺菌等を行い、所定量をホットパック充填或いは低温で無菌充填する。本発明の容器詰茶飲料は、香味の良好な茶飲料であるから、無菌充填を行うのが最も好ましい態様である。
なお、容器としては、アルミ缶、スチール缶、PETボトル、ガラス瓶、紙容器など、通常用いられる容器のいずれも用いることができる。
以下、実施例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1.粉末ほうじ茶葉懸濁液の製造
ほうじ茶葉を小片にし、茎を除いたものを石臼で挽いて、平均粒子径12μmの粉末ほうじ茶葉(E1)を得た。平均粒子径の測定は、島津製作所レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2000にて実施した。これを約80倍の水に懸濁させ、この懸濁液を高圧ホモジナイザーにより15MPaの圧力で処理し、遠心分離処理(6000rpm、10分)して粗大な粉砕茶組織やほうじ茶粒子などの固形分を除去して、粉末ほうじ茶葉懸濁液(E2)を得た。
これを飲用したところ、ほうじ茶特有の香ばしい香りが強く、旨味やコク味の少ないものであった。
実施例2.粉末ほうじ茶葉を含有する茶飲料
以下の処方により8種類の茶飲料(比較例1〜5、本発明1〜3)を製造した。これら8種類の茶飲料について、専門パネラー5名によりコク味、香り、苦渋味、後味のすっきり感、総合的な好ましさについて5段階で評価し、その平均点を算出した。
比較例1(ベース抽出液:A):
煎茶葉1.40gを200mLの水(70℃)で5分間抽出
比較例2(ベース抽出液A+ほうじ茶抽出液B):
ほうじ茶葉1.40gを200mLの水(70℃)で5分間抽出したもの(B)に、(A):(B)=6:1となるように(A)を混合
比較例3(ベース抽出液A+ほうじ茶(小片)抽出液C):
5ミリに切断されたほうじ茶の小片(平均粒子径500μm)1.40gを200mLの水(70℃)で5分間抽出したもの(C)に、(A):(C)=6:1となるように(A)を混合
比較例4(ほうじ茶抽出液B+抹茶懸濁液D):
(B)に、抹茶を用い実施例1と同様にして製造した抹茶懸濁液(D)を、(B):(D)=6:1となるように混合
比較例5(ベース抽出液A+抹茶懸濁液D):
(A)と(D)とを、(A):(D)=6:1となるように混合
本発明1:(ベース抽出液A+粉末ほうじ茶葉E1):
実施例1の粉末ほうじ茶葉(E1)を、(A):(E1)=6:1となるように混合
本発明2:(ベース抽出液A+粉末ほうじ茶懸濁液E2):
実施例1の粉末ほうじ茶葉懸濁液(E2)を、(A):(E2)=6:1となるように混合
本発明3:(ベース抽出液A+抹茶懸濁液D+粉末ほうじ茶懸濁液E2):
(A)と(D)と(E2)とを、(A):(D):(E2)=6:0.5:0.5となるように混合
結果を表1に示す。本発明1〜3は、コク味、香り、すっきり感の項目において好ましいものであった。また、この評価結果より、以下のことが示唆された。
・比較例3と本発明1〜3より、ほうじ茶を小片化することで香りは増強されるがコク味が増強されず、粉末ほうじ茶葉を用いることで、香りとコク味が増強されること
・比較例5と本発明2より、粉砕茶葉(懸濁液)を用いることで、コク味が増強されるが、緑茶本来の香りは、抹茶を用いた場合(比較例5)よりも粉末ほうじ茶葉(本発明2)を用いた場合の方が増強されること
・本発明1と本発明2より、粉末ほうじ茶葉を用いることで香り及びコク味の増強を図ることができるが、高圧ホモジナイザー処理により、より一層その作用が増強され、さらに遠心分離処理により後味のすっきり感が増強されること
・本発明3より、粉末ほうじ茶葉に抹茶を併用することで、コク味、香りの強さをコントロールできること
Figure 0005089449
なお、本発明2の茶飲料について、濁度及び可溶性高分子画分の測定を行った。濁度の測定は、分光光度計(島津製作所 分光光度計 UV-1600)を用い、680nmにおける吸光度を測定した。また、可溶性高分子画分の測定は、茶飲料をメンブレンフィルター(孔径0.45μm、十慈フィールド株式会社 水系未滅菌13A)にて濾過し、通過した液を回収し、これをゲル濾過クロマトグラフィー(Agilent社 1100series)に供した。分析方法は以下のとおりである。
ゲル濾過カラム:Shodex Asahipak GS520 HQ(会社名、内径7.6mm×長さ300mm、排除限界300,000)
サンプル注入量:10μl
流量:0.5mL/min.
UV−VIS検出器:Agilent社 1100series G1315B DAD
検出設定波長:400nm
溶離液:水
温度:40℃

保持時間約6分のピーク面積から、黄色4号色素を分析して得られる検量線に基づき、その濃度を算出した。その結果、濁度(680nmにおける吸光度)は0.059であり、可溶性高分子画分は、茶飲料全体に対して1.10μg/ml(色素換算量)であった。
茶飲料のコク味を増強する、ほうじ茶葉中の有効成分を示すゲル濾過クロマトグラフィーによるチャートである。

Claims (8)

  1. 平均粒子径が20μm以下である粉末ほうじ茶葉を、ほうじ茶を除く緑茶葉から選択される一種または二種以上の茶葉の抽出液に混合して得られる、茶飲料。
  2. 680nmにおける吸光度が、0.25以下である、請求項に記載の茶飲料。
  3. ゲル濾過クロマトグラフィーの紫外線吸収400nmにより検出される分子量30万以上の可溶性高分子画分を0.20μg/ml以上(色素換算量)含有する、請求項1または2に記載の茶飲料。
  4. 粉末ほうじ茶が、ほうじ茶葉と水を高圧ホモジナイザー処理して得られる粉末ほうじ茶葉懸濁液の形態で添加されたものである、請求項1〜3のいずれかに記載の茶飲料。
  5. さらに、抹茶が添加されている、請求項1〜4のいずれかに記載の茶飲料。
  6. 茶飲料が容器詰茶飲料である、請求項1〜5のいずれかに記載の茶飲料。
  7. 粉末ほうじ茶の茶葉量が、茶飲料全体に対して0.001〜0.5重量%である、請求項1〜5のいずれかに記載の茶飲料。
  8. 平均粒子径が20μm以下である粉末ほうじ茶葉を、ほうじ茶を除く緑茶葉から選択される一種または二種以上の茶葉の抽出液に添加することにより、茶飲料の香りを増強する方法。
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