JP5087092B2 - 金属直接蒸着用積層フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、表面に直接金属蒸着を施して金属蒸着フィルムを得るための基材フィルムとして有用な金属直接蒸着用積層フィルムに関する。また、本発明は、この金属直接蒸着用積層フィルムを用いてなる金属蒸着フィルム、さらには金属調シートおよび金属調成形品に関する。
各種成形品(例えば、家電製品の外装部材や自動車の内装部材など)の表面に金属光沢を付与して金属調の外観を得る加飾方法としては、成形品に直接金属蒸着を施した後、透明な艶塗料等で塗装して蒸着した金属層を保護する方法がある。しかし、このように蒸着した後に塗装する方法は、工程が煩雑であり生産性に劣り、しかも塗装の際には環境衛生的な問題なども懸念される。そこで、熱可塑性樹脂からなるフィルムにあらかじめ金属蒸着を施し、得られた金属蒸着フィルムを、成形品の表面に貼合したり、いわゆる射出成形同時貼合法によって成形と同時に貼合したりすることにより、成形品に金属光沢を付与する加飾方法が注目されている。
かかる加飾方法に利用される金属蒸着フィルムとしては、基材フィルムに直接、金属蒸着層を設けたもの(特許文献1、2)や、基材フィルムと金属蒸着層との密着性を向上させるために、基材フィルムの表面に半硬化状態にある熱硬化性樹脂からなるアンカー層を形成し、このアンカー層の上に金属蒸着層を設けたもの(特許文献3)が提案されている。いずれの金属蒸着フィルムにおいても、基材フィルムとしては、透明性や耐候性の観点から、通常アクリル系フィルムが好ましく用いられる。
特開2002−370311号公報 特開2008−110518号公報 特開平10−735号公報
しかしながら、特許文献1、2のような金属蒸着フィルムでは、基材フィルムに対する金属蒸着層の密着性が充分ではなく、成形品に貼合する際などに金属蒸着層が剥れてしまうことがあった。他方、特許文献3の金属蒸着フィルムは、熱硬化性樹脂からなるアンカー層を有しているので、金属蒸着層の密着性は良好であるものの、アンカー層を設けるためにはグラビア印刷法などによる塗工工程が必要となるため、特許文献1、2の如き基材フィルム上に直接金属蒸着を施す場合に比べ、工程が煩雑になり、生産性の低下や製品コストの高騰を招くという欠点があった。
そこで、本発明の目的は、表面に直接金属を蒸着させて密着性の高い金属蒸着層を形成することができる金属直接蒸着用積層フィルムを提供し、さらには、この金属直接蒸着用積層フィルムに金属蒸着が施されたフィルム(金属蒸着フィルム)と、該金属蒸着フィルムを用いた金属調シートおよび金属調成形品とを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった。その結果、熱可塑性樹脂からなる層の少なくとも一方の面に、スチレン系単量体とシアン化アルケニルとの共重合体もしくはスチレン系単量体と無水マレイン酸との共重合体を含むスチレン系樹脂層を積層してなる積層フィルムを基材フィルムとし、この積層フィルムのスチレン系樹脂層側の面に金属を直接蒸着させると、密着性の高い金属蒸着層を形成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第一の金属直接蒸着用積層フィルムは、熱可塑性樹脂を樹脂成分とする樹脂組成物(a)からなる熱可塑性樹脂層(A)の少なくとも一方の面に、スチレン系単量体とシアン化アルケニルとの共重合体を樹脂成分とする樹脂組成物(b1)からなるスチレン系樹脂層(B1)が積層されてなり、前記樹脂組成物(a)に含まれる熱可塑性樹脂がメタクリル樹脂であることを特徴とする。
本発明の第二の金属直接蒸着用積層フィルムは、熱可塑性樹脂を樹脂成分とする樹脂組成物(a)からなる熱可塑性樹脂層(A)の少なくとも一方の面に、スチレン系単量体と無水マレイン酸との共重合体を樹脂成分とする樹脂組成物(b2)からなるスチレン系樹脂層(B2)が積層されてなり、前記樹脂組成物(a)に含まれる熱可塑性樹脂がメタクリル樹脂であることを特徴とする。
本発明の第一の金属蒸着フィルムは、本発明の第一又は第二の金属直接蒸着用積層フィルムのうち、熱可塑性樹脂層(A)の一方の面にスチレン系樹脂層(B1)又は(B2)が積層されてなる金属直接蒸着用積層フィルムに対し、スチレン系樹脂層(B1)又は(B2)側の面に金属蒸着層が設けられていることを特徴とする。
本発明の第二の金属蒸着フィルムは、本発明の第一又は第二の金属直接蒸着用積層フィルムのうち、熱可塑性樹脂層(A)の両方の面にスチレン系樹脂層(B1)又は(B2)が積層されてなる金属直接蒸着用積層フィルムに対し、いずれか一方の面に金属蒸着層が設けられていることを特徴とする。
本発明の金属調シートは、本発明の第一又は第二の金属蒸着フィルムの金属蒸着層側の面に、熱可塑性樹脂シートが積層されてなることを特徴とする。
本発明の第一の金属調成形品は、本発明の第一又は第二の金属蒸着フィルムの金属蒸着層側の面が、成形品に貼合されてなることを特徴とする。
本発明の第二の金属調成形品は、本発明の金属調シートの熱可塑性樹脂シートが積層された面が、成形品に貼合されてなることを特徴とする。
本発明によれば、表面に直接金属を蒸着させて密着性の高い金属蒸着層を形成することができる金属直接蒸着用積層フィルムを提供することができる。かかる金属直接蒸着用積層フィルムであれば、直接、金属蒸着を施すことにより、密着性が高く剥れにくい金属蒸着層を備えた金属蒸着フィルムを得ることができ、さらには、この金属蒸着フィルムを用いて、金属調の外観に優れた金属調シートや金属調成形品を得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の第一の金属直接蒸着用積層フィルム(以下、「金属直接蒸着用積層フィルム」を単に「積層フィルム」と称することもある)は、熱可塑性樹脂を樹脂成分とする樹脂組成物(a)からなる熱可塑性樹脂層(A)の少なくとも一方の面に、スチレン系単量体とシアン化アルケニルとの共重合体を樹脂成分とする樹脂組成物(b1)からなるスチレン系樹脂層(B1)が積層されてなるものであり、本発明の第二の金属直接蒸着用積層フィルムは、熱可塑性樹脂を樹脂成分とする樹脂組成物(a)からなる熱可塑性樹脂層(A)の少なくとも一方の面に、スチレン系単量体と無水マレイン酸との共重合体を樹脂成分とする樹脂組成物(b2)からなるスチレン系樹脂層(B2)が積層されてなるものである。
前記熱可塑性樹脂層(A)を構成する樹脂組成物(a)に樹脂成分として含まれる熱可塑性樹脂は、本発明の積層フィルムを用いて得た金属蒸着フィルムの用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、メタクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ環状オレフィン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF樹脂)などが挙げられ、特に、得られた金属蒸着フィルムを金属調外観を付与する表面加飾用途に用いる場合には、透明性や耐候性の観点から、メタクリル樹脂が好ましい。
前記メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステルを主体とする重合体であり、メタクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、メタクリル酸エステルを50重量%以上とこれ以外の単量体50重量%以下との共重合体であってもよい。ここで、メタクリル酸エステルとしては、通常、メタクリル酸のアルキルエステル(メタクリル酸アルキル)が用いられる。なお、メタクリル樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記メタクリル酸アルキルの例としては、通常、アルキル基の炭素数が1〜8であるもの、好ましくは1〜4であるものが用いられる。具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられ、これらの中でも、メタクリル酸メチルが好ましい。メタクリル酸アルキルは、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
前記メタクリル酸エステル以外の単量体としては、アクリル酸アルキルや、メタクリル酸アルキル又はアクリル酸アルキルと共重合可能な他の単量体が挙げられる。
前記アクリル酸アルキルとしては、通常、アルキル基の炭素数が1〜8であるもの、好ましくは1〜4であるものが用いられる。具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。アクリル酸アルキルは、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
前記メタクリル酸アルキル又はアクリル酸アルキルと共重合可能な他の単量体は、単官能単量体、すなわち分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を1個有する化合物であってもよいし、多官能単量体、すなわち分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する化合物であってもよいが、単官能単量体が好ましく用いられる。ここで、単官能単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンの如き芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルの如きシアン化アルケニル化合物;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、N−置換マレイミド;等が挙げられる。また、多官能単量体の例としては、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートの如き多価アルコールのポリ不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルの如き不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートの如き多塩基酸のポリアルケニルエステル;ジビニルベンゼンの如き芳香族ポリアルケニル化合物;等が挙げられる。メタクリル酸アルキル又はアクリル酸アルキルと共重合可能な他の単量体は、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
前記メタクリル樹脂を構成する単量体成分(前記メタクリル酸アルキル、前記アクリル酸アルキル、および前記メタクリル酸アルキル又はアクリル酸アルキルと共重合可能な他の単量体)の好ましい組成は、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキルおよびこれらと共重合可能な他の単量体の合計を100重量%として、メタクリル酸アルキルが50〜100重量%、アクリル酸アルキルが0〜50重量%、他の単量体が0〜49重量%であり、より好ましくは、メタクリル酸アルキルが50〜99.9重量%、アクリル酸アルキルが0.1〜50重量%、他の単量体が0〜49重量%であり、前記メタクリル樹脂は、かかる組成の単量体成分を重合させてなる重合体であるのがよい。
前記メタクリル樹脂は、前述した単量体成分を、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などの公知の方法で重合させることにより調製することができる。その際、所望のガラス転移温度に調整するため、もしくは積層フィルムを形成する際に好適な成形性を示す粘度を得るため、重合時に連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤の量は、単量体成分の種類やその組成などに応じて、適宜決定すればよい。
前記メタクリル樹脂のガラス転移温度は、熱可塑性樹脂層(A)の耐熱性の観点から、40℃以上であるのが好ましく、60℃以上であるのがより好ましい。メタクリル樹脂のガラス転移温度は、それを構成する単量体成分の種類や組成(割合)を調整することにより、適宜設定することができる。
前記熱可塑性樹脂層(A)を構成する樹脂組成物(a)は、得られる積層フィルムの柔軟性を向上させるうえで、ゴム粒子を含有していることが好ましい。特に、メタクリル樹脂を樹脂成分とする場合には、ゴム粒子を含有させるとよい。ここで、ゴム粒子としては、例えば、アクリル系ゴム粒子、ブタジエン系ゴム粒子、スチレン−ブタジエン系ゴム粒子などを用いることができるが、これらの中でも、耐候性の点から、アクリルゴム粒子が好ましい。なお、ゴム粒子は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記アクリルゴム粒子は、ゴム成分として、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を含有する粒子であり、この弾性重合体のみからなる単層構造の粒子であってもよいし、弾性重合体の層を有する多層構造の粒子であってもよい。熱可塑性樹脂層(A)の表面硬度の点からは、多層構造の粒子であることが好ましい。
前記弾性重合体は、アクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、アクリル酸エステル50重量%以上とこれ以外の単量体50重量%以下との共重合体であってもよい。ここで、アクリル酸エステルとしては、通常、アクリル酸のアルキルエステル(アクリル酸アルキル)が用いられる。
より具体的には、前記弾性重合体は、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体および多官能単量体の合計を100重量%として、アクリル酸アルキルを50〜99.9重量%と、メタクリル酸アルキルを0〜49.9重量%と、単官能単量体を0〜49.9重量%と、多官能単量体を0.1〜10重量%とを重合させてなる共重合体であるのが好ましい。
前記弾性重合体を構成するアクリル酸アルキルとしては、前記メタクリル樹脂を構成するアクリル酸アルキルとして前述したものと同様のものが挙げられ、それらの中でも特に、アクリル酸ブチルやアクリル酸2−エチルヘキシルのように炭素数が4〜8であるアルキル基を有するものが好ましく挙げられる。なお、このアクリル酸アルキルは、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
前記弾性重合体を構成するメタクリル酸アルキルとしては、前記メタクリル樹脂を構成するメタクリル酸アルキルとして前述したものと同様のものが挙げられる。なお、このメタクリル酸アルキルは、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
前記弾性重合体を構成する単官能単量体としては、前記メタクリル樹脂を構成する単官能単量体(メタクリル酸アルキル又はアクリル酸アルキルと共重合可能な他の単量体)として前述したものと同様のものが挙げられ、それらの中でも特に、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンの如き芳香族アルケニル化合物が好ましく挙げられる。なお、この他の単官能単量体は、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
前記弾性重合体を構成する多官能単量体としては、前記メタクリル樹脂を構成する多官能単量体(メタクリル酸アルキル又はアクリル酸アルキルと共重合可能な他の単量体)として前述したものと同様のものが挙げられ、それらの中でも特に、不飽和カルボン酸のアルケニルエステルや多塩基酸のポリアルケニルエステルが好ましく挙げられる。なお、この多官能単量体は、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
前記アクリルゴム粒子が多層構造の粒子である場合の好ましい態様としては、i)アクリル酸エステルを主体とする前記弾性重合体の層の外側に、メタクリル酸エステルを主体とする硬質重合体の層を備えた多層構造の粒子、ii)アクリル酸エステルを主体とする前記弾性重合体の層の内側に、メタクリル酸エステルを主体とする硬質重合体の層を備えた多層構造の粒子、が挙げられる。また、前記弾性重合体の層の外側に前記i)の硬質重合体の層を備え、かつ前記弾性重合体の層の内側に前記ii)の硬質重合体の層を備えた多層構造の粒子(例えば、内層が前記ii)の硬質重合体、中間層が前記弾性重合体、外層が前記i)の硬質重合体からなる3層構造の粒子)も同様に好ましい態様である。
前記i)の態様において、より好ましくは、前記弾性重合体の層の外側に、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体及び多官能単量体の合計を100重量%として、メタクリル酸アルキルを50〜100重量%と、アクリル酸アルキルを0〜50重量%と、単官能単量体を0〜50重量%と、多官能単量体を0〜10重量%とを重合させてなる硬質重合体の層を備えた多層構造であるのがよい。
なお、前記i)の態様において、外側に位置する硬質重合体は、その内側に位置する弾性重合体100重量部に対し、通常10〜400重量部、好ましくは20〜200重量部であるのがよい。外側に位置する硬質重合体を弾性重合体100重量部に対し10重量部以上とすると、弾性重合体の凝集が生じ難くなり、熱可塑性樹脂層(A)の透明性が良好となる。
前記ii)の態様において、より好ましくは、前記弾性重合体の層の内側に、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体及び多官能単量体の合計を100重量%として、メタクリル酸アルキルを70〜100重量%と、アクリル酸アルキルを0〜30重量%と、単官能単量体を0〜30重量%と、多官能単量体を0〜10重量%とを重合させてなる硬質重合体の層を備えた多層構造であるのがよい。
なお、前記ii)の態様において、内側に位置する硬質重合体は、その外側に位置する弾性重合体100重量部に対し、通常10〜400重量部、好ましくは20〜200重量部であるのがよい。
前記硬質重合体を構成するメタクリル酸アルキルとしては、前記メタクリル樹脂を構成するメタクリル酸アルキルとして前述したものと同様のものが挙げられ、それらの中でも、メタクリル酸メチルが好ましく挙げられる。なお、このメタクリル酸アルキルは、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
前記硬質重合体を構成するアクリル酸アルキルとしては、前記メタクリル樹脂を構成するアクリル酸アルキルとして前述したものと同様のものが挙げられ、それらの中でも特に、炭素数が1〜4であるアルキル基を有するものが好ましく挙げられる。なお、このアクリル酸アルキルは、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
前記硬質重合体を構成する単官能単量体としては、前記メタクリル樹脂を構成する単官能単量体(メタクリル酸アルキル又はアクリル酸アルキルと共重合可能な他の単量体)として前述したものと同様のものが挙げられる。なお、この他の単官能単量体は、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
前記硬質重合体を構成する多官能単量体としては、前記メタクリル樹脂を構成する多官能単量体(メタクリル酸アルキル又はアクリル酸アルキルと共重合可能な他の単量体)として前述したものと同様のものが挙げられる。なお、この多官能単量体は、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
以上のようなアクリルゴム粒子は、例えば、公知の乳化重合法によりラテックス中に合成することができ、その後、適当な回収操作(例えば、塩析、酸析、凍結などで凝固させた後、ろ過し、次いで洗浄する方法や、スプレー乾燥処理により回収する方法等)を行なうことにより粉体として単離する方法で得ることができる。乳化重合に際しては、アクリルゴム粒子の内側(中心側)の層となる重合体を構成する単量体成分から順に重合させていけばよく、例えば、内層(弾性重合体)/外層(硬質重合体)からなる2層構造のゴム粒子の場合は、まず、内層とする弾性重合体を構成する単量体成分を重合させて弾性重合体の粒子を含むラテックスを得、次いで、このラテックスに外層とする硬質重合体を構成する単量体成分を添加して重合させることにより、弾性重合体の粒子に硬質重合体をグラフトさせればよい。なお、各層を形成する際の重合は、それぞれ、1段の反応で行なってもよいし、2段以上の多段反応で行なってもよい。2段以上の多段反応で行う場合には、各段で用いる単量体の組成は特に制限されず、当該層を形成する多段反応で用いる全ての単量体成分の組成が上述した所定の範囲内にあればよい。
前記アクリルゴム粒子の粒径については、該ゴム粒子中の弾性重合体の層の平均粒子径が、0.01〜0.4μmであるのが好ましく、より好ましくは0.05〜0.3μm、さらに好ましくは0.07〜0.25μmであるのがよい。この平均粒子径が大きすぎると、熱可塑性樹脂層(A)の透明性が低下するおそれがあり、一方、平均粒子径が小さすぎると、熱可塑性樹脂層(A)の表面硬度が低下して傷が付き易くなったり、熱可塑性樹脂層(A)の柔軟性が低下して割れ易くなったりするおそれがある。アクリルゴム粒子における弾性重合体の平均粒子径は、例えば、乳化重合によりアクリルゴム粒子を得る際に、乳化剤の添加量や単量体成分の使用量等を調節することによって制御することができる。
なお、アクリルゴム粒子中の弾性重合体の層の平均粒子径は、アクリルゴム粒子をメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、その断面において酸化ルテニウムによる弾性重合体の層への染色を施した後、電子顕微鏡で観察して、染色された部分の直径(外径)から求めることができる。すなわち、アクリルゴム粒子をメタクリル樹脂に混合し、その断面を酸化ルテニウムで染色すると、母相のメタクリル樹脂は染色されず、弾性重合体の層の外側に硬質重合体の層が存在する場合には、この外側の硬質重合体も染色されず、弾性重合体の層のみが染色される。したがって、電子顕微鏡でほぼ円形状に観察される染色部分の直径から、弾性重合体の粒子径を求めることができる。なお、弾性重合体の層の内側に硬質重合体の層が存在する場合には、この内側の硬質重合体も染色されず、外側の弾性重合体の層のみが染色された2層構造として観察されることになるが、この場合は、2層構造の外側、すなわち弾性重合体の層の外径で考えればよい。
前記樹脂組成物(a)にゴム粒子を含有させる場合、樹脂成分である熱可塑性樹脂とゴム粒子との配合割合は、両者の合計を100重量部としたときに、熱可塑性樹脂が20〜95重量部であり、ゴム粒子が5〜80重量部であるのがよい。熱可塑性樹脂の割合が少なくゴム粒子の割合が多すぎると、熱可塑性樹脂層(A)の表面硬度が低下して傷付き易くなるおそれがあり、一方、熱可塑性樹脂の割合が多くゴム粒子の割合が少なすぎると、熱可塑性樹脂層(A)の柔軟性が低下して割れ易くなるおそれがある。
また、前記ゴム粒子としてアクリルゴム粒子を使用する場合、熱可塑性樹脂とアクリルゴム粒子との合計を100重量部としたときに、アクリルゴム粒子中の弾性重合体の量が、5〜50重量部であることが好ましく、7〜40重量部であることがより好ましい。アクリルゴム粒子中の弾性重合体の量が、5重量部以上であれば、熱可塑性樹脂層(A)が脆くなることがなく良好な成膜性を発現することとなり、一方、50重量部以下であれば、熱可塑性樹脂層(A)の透明性や表面硬度が優れる。
本発明の第一の金属直接蒸着用積層フィルムにおいて、前記スチレン系樹脂層(B1)を構成する樹脂組成物(b1)は、樹脂成分として、スチレン系単量体とシアン化アルケニルとの共重合体(以下「共重合体(I)」と称することもある)を含有する。
前記共重合体(I)を構成するスチレン系単量体としては、例えば、スチレンのほか、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、4−メチルスチレンの如きメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレンの如きジメチルスチレン、エチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、メトキシスチレン、ブロモスチレン、フルオロスチレン、ニトロスチレン、クロロメチルスチレン、アセトキシスチレン、4−(ジメチルアミノメチル)スチレンなどが挙げられる。スチレン系単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記共重合体(I)を構成するシアン化アルケニルとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。シアン化アルケニルは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記共重合体(I)は、スチレン系単量体とシアン化アルケニルとを含む単量体成分を公知の方法で共重合させて得られるものである。
前記共重合体(I)に占めるスチレン系単量体の割合(すなわち、共重合に供する全単量体成分中のスチレン系単量体の割合)は、スチレン系樹脂層(B1)と熱可塑性樹脂層(A)との密着性やスチレン系樹脂層(B1)と金属蒸着層との密着性の点から、共重合に供する全単量体成分に対して、通常、50〜90重量%、好ましくは60〜85重量%、より好ましくは65〜80重量%であるのがよい。他方、前記共重合体(I)に占めるシアン化アルケニルの割合(すなわち、共重合に供する全単量体成分中のシアン化アルケニルの割合)は、スチレン系樹脂層(B1)と熱可塑性樹脂層(A)との密着性やスチレン系樹脂層(B1)と金属蒸着層との密着性の点から、共重合に供する全単量体成分に対して、通常、10〜50重量%、好ましくは15〜40重量%、より好ましくは20〜35重量%であるのがよい。なお、共重合体(I)を構成する単量体として、スチレン系単量体およびシアン化アルケニル以外の他の単量体が含まれていてもよいが、その場合、他の単量体の合計量が、共重合に供する全単量体成分に対して、通常、30重量%以下であるのがよい。
本発明の第二の金属直接蒸着用積層フィルムにおいて、前記スチレン系樹脂層(B2)を構成する樹脂組成物(b2)は、樹脂成分として、スチレン系単量体と無水マレイン酸との共重合体(以下「共重合体(II)」と称することもある)を含有する。
前記共重合体(II)を構成するスチレン系単量体としては、前記共重合体(I)を構成するスチレン系単量体として前述したものと同様のものが挙げられる。
前記共重合体(II)は、スチレン系単量体と無水マレイン酸とを含む単量体成分を公知の方法で共重合させて得られるものである。
前記共重合体(II)に占めるスチレン系単量体の割合(すなわち、共重合に供する全単量体成分中のスチレン系単量体の割合)は、スチレン系樹脂層(B2)と熱可塑性樹脂層(A)との密着性やスチレン系樹脂層(B2)と金属蒸着層との密着性の点から、共重合に供する全単量体成分に対して、通常、60〜97重量%、好ましくは70〜95重量%、より好ましくは80〜93重量%であるのがよい。他方、前記共重合体(II)に占める無水マレイン酸の割合(すなわち、共重合に供する全単量体成分中の無水マレイン酸の割合)は、スチレン系樹脂層(B2)と熱可塑性樹脂層(A)との密着性やスチレン系樹脂層(B2)と金属蒸着層との密着性の点から、共重合に供する全単量体成分に対して、通常、3〜40重量%であり、好ましくは5〜30重量%であり、より好ましくは7〜20重量%であるのがよい。なお、共重合体(II)を構成する単量体として、スチレン系単量体および無水マレイン酸以外の他の単量体が含まれていてもよいが、その場合、他の単量体の合計量が、共重合に供する全単量体成分に対して、通常、20重量%以下であるのがよい。
前記スチレン系樹脂層(B1)を構成する樹脂組成物(b1)および前記スチレン系樹脂層(B2)を構成する樹脂組成物(b2)には、必要に応じて、前記共重合体(I)や前記共重合体(II)とともに、他の樹脂を樹脂成分として含有させることもできる。他の樹脂としては、特に制限はなく、例えば、熱可塑性樹脂として前述したメタクリル樹脂などが挙げられる。これらを含有する場合、共重合体(I)または共重合体(II)と他の樹脂との割合は、スチレン系樹脂層(B1)または(B2)と金属蒸着層との密着性の点から、通常、共重合体(I)または共重合体(II):他の樹脂(重量比)=25:75〜100:0、好ましくは、共重合体(I)または共重合体(II):他の樹脂(重量比)=40:60〜100:0である。なお、共重合体(I)または共重合体(II)とともに他の樹脂を用いる場合、両者の混合は、あらかじめ、両者を押出機やミキサーにて溶融混合し、一旦ペレット等の形状にしてからフィルム化に供してもよいし、両者をそれぞれペレット等の形状のまま用い、フィルム化する際に混合して溶融押出しするようにしてもよい。
本発明の第一の金属直接蒸着用積層フィルムにおいては、熱可塑性樹脂層(A)を構成する樹脂組成物(a)もしくはスチレン系樹脂層(B1)を構成する樹脂組成物(b1)またはその両方に、本発明の第二の金属直接蒸着用積層フィルムにおいては、熱可塑性樹脂層(A)を構成する樹脂組成物(a)もしくはスチレン系樹脂層(B2)を構成する樹脂組成物(b2)またはその両方に、有機系または無機系の微粒子を含有させてもよい。微粒子を含有させた熱可塑性樹脂層(A)やスチレン系樹脂層(B1)、(B2)は、光拡散性のマット層となるので、マット調の意匠を発現させることができる。有機系の微粒子としては、例えば、架橋アクリル系重合体粒子や架橋スチレン系重合体粒子などが挙げられ、無機系の微粒子としては、例えば、シリカやアルミナなどが挙げられる。これら微粒子の含有量は、所望する表面光沢の程度や意匠などにより適宜調整すればよいが、通常、それらを添加する層を構成する全材料に対して、0.1〜50重量%程度である。
なお、熱可塑性樹脂層(A)を構成する樹脂組成物(a)、スチレン系樹脂層(B1)を構成する樹脂組成物(b1)、またはスチレン系樹脂層(B2)を構成する樹脂組成物(b2)には、それぞれ、さらに必要に応じて、例えば、紫外線吸収剤、有機系染料、無機系染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤などの添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。
本発明の第一および第二の金属直接蒸着用積層フィルムは、前記熱可塑性樹脂層(A)の形成材料である樹脂組成物(a)と、スチレン系樹脂層(B1)の形成材料である樹脂組成物(b1)またはスチレン系樹脂層(B2)の形成材料である樹脂組成物(b2)とを積層フィルム化し、樹脂組成物(a)からなる熱可塑性樹脂層(A)の少なくとも一方の面に、樹脂組成物(b1)または樹脂組成物(b2)からなるスチレン系樹脂層(B1)、(B2)を形成することにより、得られる。積層フィルム化の方法は、特に制限されるものではなく、例えば、各層の形成材料をそれぞれ押出機にて溶融させ、フィードブロック法やマルチマニホールド法により共押出成形することにより積層する方法(共押出成形法)や、各層の形成材料のうちいずれか一方(通常は、熱可塑性樹脂層(A)の形成材料)を押出成形法などによりフィルム化し、このフィルムの表面に、他方の層の形成材料(通常は、スチレン系樹脂層(B1)、(B2)の形成材料)を、必要に応じて溶剤に溶解するなどしてコーティングする方法等が、好ましく採用される。とりわけ、本発明の積層フィルムは、樹脂組成物(a)と樹脂組成物(b1)又は樹脂組成物(b2)とが共押出成形されてなるものであることが、製造工程が簡便である点で、好ましい。
なお、本発明の第一および第二の金属直接蒸着用積層フィルムには、金属蒸着が施されない側の面に、サンドマット、ヘアライン加工などの各種加工が施されていてもよく、金属蒸着が施される側の面であっても、金属蒸着層との密着性が損なわれない限りにおいてはサンドマット、ヘアライン等の加工を施すことができる。また、本発明の第一および第二の金属直接蒸着用積層フィルムは、例えば各層の形成材料への顔料練込などによって着色されていてもよいし、フィルム表面および/または裏面に印刷が施されていてもよい。
かくして得られる本発明の第一および第二の金属直接蒸着用積層フィルムは、積層フィルム全体の厚さが、通常20〜500μmであり、好ましくは50〜250μm、より好ましくは50〜150μmである。積層フィルムの厚さが厚すぎると、例えば自動車内装材として成形する際に成形加工に時間がかかるとともに、物性や意匠性の向上効果が小さく、コストも高くなるおそれがある。一方、積層フィルムの厚さが薄すぎると、押出成形による成膜自体が、機械的制約により困難になるとともに、破断強度が小さくなり、生産不具合の発生確率が高くなるおそれがある。積層フィルムの厚さは、成膜速度、T型ダイスの吐出口厚み、ロールの間隙などを調節することにより、調整できる。
本発明の第一および第二の金属直接蒸着用積層フィルムにおいて、スチレン系樹脂層(B1)又は(B2)の厚さは、通常1μm以上であり、好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。スチレン系樹脂層(B1)又は(B2)があまり薄いと、直接蒸着性が不充分になるおそれがある。なお、スチレン系樹脂層(B1)又は(B2)を熱可塑性樹脂層(A)の両面に配置する場合には、各スチレン系樹脂層(B1)又は(B2)の厚さを1μm以上とすればよく、好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。
なお、本発明の第一の金属直接蒸着用積層フィルムではスチレン系樹脂層(B1)が、本発明の第二の金属直接蒸着用積層フィルムではスチレン系樹脂層(B2)が、熱可塑性樹脂層(A)の両面もしくは片面に積層されるが、例えば、熱可塑性樹脂層(A)の一方の面にスチレン系樹脂層(B1)が積層され、かつもう一方の面にスチレン系樹脂層(B2)が積層された態様も、本発明の範囲に包含される。
本発明の第一および第二の金属直接蒸着用積層フィルムは、後述するように、スチレン系樹脂層(B1)又は(B2)側の面に金属蒸着層を設けた金属蒸着フィルムとすることで、金属調の外観を有する加飾用フィルムとして好ましく用いられる。
本発明の第一の金属蒸着フィルムは、本発明の第一又は第二の金属直接蒸着用積層フィルムのうち、熱可塑性樹脂層(A)の一方の面にスチレン系樹脂層(B1)又は(B2)が積層されてなる金属直接蒸着用積層フィルムに対し、スチレン系樹脂層(B1)又は(B2)側の面に金属蒸着層が設けられたものであり、本発明の第二の金属蒸着フィルムは、本発明の第一又は第二の金属直接蒸着用積層フィルムのうち、熱可塑性樹脂層(A)の両方の面にスチレン系樹脂層(B1)又は(B2)が積層されてなる金属直接蒸着用積層フィルムに対し、いずれか一方の面に金属蒸着層が設けられたものである。
前記金属蒸着層を構成する金属としては、特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、インジウム、クロム、亜鉛、ガリウム、ニッケル、錫、銀、金、ケイ素、クロム、チタン、白金、パラジウム、ニッケル、ステンレススチール、ハステロイなどが用いられる。また、これらの他にも、展性に優れた金属や合金から適宜選択して用いることができる。なお、前記金属蒸着層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などで形成することができる。
本発明の第一および第二の金属蒸着フィルムにおいて 金属蒸着層の厚さは、5〜100nmであるのが好ましい。金属蒸着層の厚さが5nm未満であると、被加飾物に充分な金属光沢を付与できない場合があり、一方、100nmを超えた金属蒸着層を設けても、得られる金属光沢付与効果は変わらず、製造コストが上昇し経済的に不利になるだけである。
本発明の金属調シートは、本発明の第一又は第二の金属蒸着フィルムの金属蒸着層側の面に、バッキング材として熱可塑性樹脂シートが積層されてなるものである。ここで、熱可塑性樹脂シートを構成する樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、ポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。また、前記熱可塑性樹脂シートの厚さとしては、特に制限はなく、いわゆるフィルム領域の厚さであってもよい。具体的には、前記熱可塑性樹脂シートの厚さは、通常0.2〜2mmである。
本発明の金属調シートにおいて、金属蒸着層と熱可塑性樹脂シートとは接着剤層を介して積層されていることが好ましい。接着剤層が存在することにより、金属蒸着層と熱可塑性樹脂シートとの間に良好な密着性が得られ、金属調シートとして好適に用いることができる。
前記接着剤層を形成する接着剤は、成形時の加熱温度に耐えうるものであり、かつ金属蒸着層や熱可塑性樹脂シートの種類に応じて良好な接着性を発揮するよう適宜選択すればよい。例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリアミド系、ポリ塩化ビニル系、ポリクロロプレン系、カルボキシル化ゴム系、熱可塑性スチレン−ブタジエンゴム系、アクリル系、スチレン系、セルロース系、アルキド系、ポリ酢酸ビニル系、エチレン酢酸ビニル共重合体系、ポリビニルアルコール系、エポキシ系、シリコーン系、天然ゴム、合成ゴムなどの各樹脂の1種または2種以上からなる接着剤が用いられる。なお、これら接着剤には、金属光沢の色調への影響を考慮し、色調を調整する目的で、顔料、染料、金属粉やマイカ等の添加物などを添加してもよい。
前記接着剤層の厚さは、1〜20μmが好ましく、2〜8μmであることがより好ましい。接着剤層の厚さが、1μm未満であると、接着力が不充分となる場合があり、一方、20μmを超えると、接着剤層の乾燥に長時間を要することになるので、工程上好ましくなく、コスト的にも不利になる傾向がある。
さらに、本発明の金属調シートにおいて、金属蒸着層と熱可塑性樹脂シートとは、ドライラミネートにより積層されていることが好ましい。具体的には、例えば、上述した接着剤を必要に応じて溶剤を用いて溶液あるいはエマルジョンの状態とし、これを、グラビアコーター、リバースコーター、ダイコーター、ナイフコーター、ロールコーター等の公知の手段により、金属蒸着層或いは熱可塑性樹脂シートに、又は両者に塗布し、適宜乾燥を施すようにすればよい。
本発明の第一の金属調成形品は、本発明の第一又は第二の金属蒸着フィルムの金属蒸着層側の面が、本発明の第二の金属調成形品は、本発明の金属調シートの熱可塑性樹脂シートが積層された面が、それぞれ成形品に貼合されてなるものである。すなわち、本発明の第一または第二の金属調成形品は、上述した本発明の金属蒸着フィルムもしくは金属調シートを、金属蒸着層側とは反対側の面が表側に配置されるように、成形品に貼合されたものである。ここで、金属蒸着フィルムもしくは金属調シートを貼合する成形品としては、例えば、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂で形成されたものが好適である。
本発明の第一または第二の金属調成形品において、金属蒸着層と成形品とは接着剤層を介して貼合されていることが好ましい。接着剤層が存在することにより、金属蒸着層と成形品との間に良好な密着性が得られる。ここで、接着剤層を形成する接着剤の種類や接着剤層の厚さに関しては、本発明の金属調シートにおける接着剤層と同様であるが、通常、乾燥後の接着剤層が粘着性を有さないよう適宜選択される。
本発明の第一または第二の金属調成形品を得るための方法としては、フィルム(シート)インサート射出成形法が有利に採用される。フィルム(シート)インサート射出成形法は、金属蒸着フィルムや金属調シートを真空成形や圧空成形などにより予備成形してから、トムソン型などでトリミングした後、射出成形金型内に挿入し、そこへ溶融樹脂を射出することにより、射出成形品を形成すると同時に、その成形品に金属蒸着フィルムや金属調シートを貼合する方法である。フィルム(シート)インサート射出成形法のさらなる詳細については、例えば、特開2005−254531号公報などに記載されているような従来公知の技術に従えばよい。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、含有量または使用量を表す「部」および「%」は、特に断りのない限り「重量部」および「重量%」を意味するものとする。
実施例および比較例においては、メタクリル樹脂およびアクリルゴム粒子として、以下のものを使用した。
<メタクリル樹脂>
メタクリル樹脂としては、メタクリル酸メチル97.8%とアクリル酸メチル2.2%とからなる単量体成分をバルク重合により得られた熱可塑性重合体(ガラス転移温度:104℃)のペレットを用いた。なお、このガラス転移温度は、JIS−K7121−1987に準じて示差走査熱量測定により加熱速度10℃/分で求めた補外ガラス転移開始温度である。
<アクリルゴム粒子>
アクリルゴム粒子としては、内層がメタクリル酸メチル93.8%とアクリル酸メチル6%とメタクリル酸アリル0.2%とからなる単量体成分を重合させて得られた硬質重合体であり、中間層がアクリル酸ブチル81%とスチレン17%とメタクリル酸アリル2%とからなる単量体成分を重合させて得られた弾性重合体であり、外層がメタクリル酸メチル94%とアクリル酸メチル6%とからなる単量体成分を重合させて得られた硬質重合体であり、内層(硬質重合体の層)/中間層(弾性重合体の層)/外層(硬質重合体の層)の重量割合が35/45/20であり、中間層である弾性重合体の層の平均粒子径が0.22μmである、乳化重合法により得られた球形3層構造のゴム粒子を用いた。
なお、得られたアクリルゴム粒子における弾性重合体の層(中間層)の平均粒子径は、以下の方法で測定した。
〔弾性重合体の層の平均粒子径の測定〕
アクリルゴム粒子をメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、得られたフィルムを適当な大きさに切り出し、切片を0.5%四酸化ルテニウム水溶液に室温で15時間浸漬し、該ゴム粒子中の弾性重合体の層を染色した。さらに、ミクロトームを用いて約80nmの厚さにサンプルを切断した後、透過型電子顕微鏡で写真撮影を行った。この写真から無作為に100個の染色された弾性重合体の層を選択し、その各々の径を算出した後、その数平均値を求め、これを弾性重合体の層の平均粒子径とした。
(実施例1および実施例2)
まず、熱可塑性樹脂層(A)を形成する樹脂組成物(a)として、メタクリル樹脂組成物を以下のようにして調製した。すなわち、メタクリル樹脂のペレットとアクリルゴム粒子とを、メタクリル樹脂:アクリルゴム粒子(重量比)=70:30の割合でミキサーにて混合し、30mmφ二軸押出機(日本製鋼所製)を用いて溶融混錬して、メタクリル樹脂組成物をペレットとして得た。
他方、実施例1では、スチレン系樹脂層(B1)を形成する樹脂組成物(b1)として、スチレン−アクリロニトリル共重合体(ダイセルポリマー(株)製「セビアンN020」)を用い、実施例2では、スチレン系樹脂層(B2)を形成する樹脂組成物(b2)として、スチレン−無水マレイン酸共重合体(ノバケミカル社製「ダイラークD332」)を用いた。
そして、樹脂組成物(a)(メタクリル樹脂組成物)を65mmφ一軸押出機(東芝機械(株)製)にて、樹脂組成物(b1)又は(b2)(スチレン系共重合体)を45mmφ一軸押出機(東芝機械(株)製)にて、それぞれ溶融させ、フィードブロック法にて溶融積層一体化し、設定温度275℃のT型ダイスを介して押し出し、次いで、得られたフィルム状物を、一対の表面が平滑な金属製のロールの間に挟み込んで成形して、熱可塑性樹脂層とスチレン系樹脂層からなる2層構成の積層フィルムを得た。この積層フィルムにおける各層の厚さは、表1に示す通りであった。
次に、得られた積層フィルムのスチレン系樹脂層側の面に、真空蒸着法によってインジウムを蒸着させることにより、金属蒸着層(インジウム蒸着層)を形成し、金属蒸着フィルムを得た。
次いで、得られた金属蒸着フィルムの金属蒸着層(インジウム蒸着層)上に、ポリウレタン系接着剤を塗工することにより接着剤層を形成し、この接着剤層を介して、ドライラミネートにより、熱可塑性樹脂シートであるABSフィルムを金属蒸着層に積層、一体化して、金属調シートを得た。
(比較例1および比較例2)
実施例1および実施例2において、スチレン系樹脂層(B1)又は(B2)を形成する樹脂組成物(b1)又は(b2)として用いたスチレン系共重合体に代えて、比較例1では、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂(メタクリル酸メチル:スチレン(重量比)=20:80)を用い、比較例2では、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂(メタクリル酸メチル:スチレン(重量比)=50:50)を用いたこと以外、実施例1および実施例2と同様にして、熱可塑性樹脂層とスチレン系樹脂層からなる2層構成の積層フィルムを得、さらに、実施例1および実施例2と同様にして、金属蒸着フィルムおよび金属調シートを得た。
(比較例3)
実施例1および実施例2と同じ樹脂組成物(a)(メタクリル樹脂組成物)を、65mmφ一軸押出機(東芝機械(株)製)と45mmφ一軸押出機(東芝機械(株)製)との両方にて、それぞれ溶融させ、フィードブロック法にて溶融積層一体化し、設定温度275℃のT型ダイスを介して押し出し、次いで、得られたフィルム状物を、一対の表面が平滑な金属製のロールの間に挟み込んで成形して、熱可塑性樹脂層からなる単層フィルムを得た。この単層フィルムにおける熱可塑性樹脂層の厚さは、表1に示す通りであった。
次に、得られた単層フィルムの一方の面に、真空蒸着法によってインジウムを蒸着させることにより、金属蒸着層(インジウム蒸着層)を形成し、金属蒸着フィルムを得た。
次いで、得られた金属蒸着フィルムの金属蒸着層(インジウム蒸着層)上に、ポリウレタン系接着剤を塗工することにより接着剤層を形成し、この接着剤層を介して、ドライラミネートにより、熱可塑性樹脂シートであるABSフィルムを金属蒸着層に積層、一体化して、金属調シートを得た。
以上、各実施例および比較例で得られた各金属調シートを用いて下記の剥離試験を行い、金属蒸着層(インジウム蒸着層)と熱可塑性樹脂シート(ABSフィルム)との剥離強度を測定するとともに、スチレン系樹脂層(比較例3の場合は熱可塑性樹脂層)と金属蒸着層(インジウム蒸着層)との密着性を評価した。結果を表1に示す。
<剥離試験>
引張試験機を用いて、サンプル幅10mm、引張速度50mm/分、剥離角度180度の条件で、得られた金属調シートにおけるABSフィルムとインジウム蒸着層との間を剥離し、剥離強度を測定した。そして、この剥離(ABSフィルムとインジウム蒸着層との間の剥離)によって、スチレン系樹脂層とインジウム蒸着層(金属蒸着層)との間に剥離が生じなかった場合を「○」、剥離が認められた場合を「×」と評価した。
Figure 0005087092

Claims (18)

  1. 熱可塑性樹脂を樹脂成分とする樹脂組成物(a)からなる熱可塑性樹脂層(A)の少なくとも一方の面に、スチレン系単量体とシアン化アルケニルとの共重合体を樹脂成分とする樹脂組成物(b1)からなるスチレン系樹脂層(B1)が積層されてなり、前記樹脂組成物(a)に含まれる熱可塑性樹脂がメタクリル樹脂であることを特徴とする金属直接蒸着用積層フィルム。
  2. 熱可塑性樹脂を樹脂成分とする樹脂組成物(a)からなる熱可塑性樹脂層(A)の少なくとも一方の面に、スチレン系単量体と無水マレイン酸との共重合体を樹脂成分とする樹脂組成物(b2)からなり、前記樹脂組成物(a)に含まれる熱可塑性樹脂がメタクリル樹脂であるスチレン系樹脂層(B2)が積層されてなることを特徴とする金属直接蒸着用積層フィルム。
  3. メタクリル樹脂が、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキルおよびこれらと共重合可能な他の単量体の合計を100重量%として、メタクリル酸アルキルを50〜100重量%と、アクリル酸アルキルを0〜50重量%と、他の単量体を0〜49重量%とを重合させてなる重合体である請求項1または2に記載の金属直接蒸着用積層フィルム。
  4. 樹脂組成物(a)が、ゴム粒子を含有している請求項1〜3のいずれかに記載の金属直接蒸着用積層フィルム。
  5. ゴム粒子がアクリルゴム粒子である請求項4に記載の金属直接蒸着用積層フィルム。
  6. アクリルゴム粒子が、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体及び多官能単量体の合計を100重量%として、アクリル酸アルキルを50〜99.9重量%と、メタクリル酸アルキルを0〜49.9重量%と、単官能単量体を0〜49.9重量%と、多官能単量体を0.1〜10重量%とを重合させてなる弾性重合体を含有する粒子である請求項5に記載の金属直接蒸着用積層フィルム。
  7. アクリルゴム粒子が、前記弾性重合体の層の外側に、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体及び多官能単量体の合計を100重量%として、メタクリル酸アルキルを50〜100重量%と、アクリル酸アルキルを0〜50重量%と、単官能単量体を0〜50重量%と、多官能単量体を0〜10重量%とを重合させてなる硬質重合体の層を備えた多層構造の粒子である請求項6に記載の金属直接蒸着用積層フィルム。
  8. アクリルゴム粒子が、前記弾性重合体の層の内側に、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体及び多官能単量体の合計を100重量%として、メタクリル酸アルキルを70〜100重量%と、アクリル酸アルキルを0〜30重量%と、単官能単量体を0〜30重量%と、多官能単量体を0〜10重量%とを重合させてなる硬質重合体の層を備えた多層構造の粒子である請求項6又は7に記載の金属直接蒸着用積層フィルム。
  9. 積層フィルム全体の厚さが20〜500μmであり、スチレン系樹脂層(B1)又は(B2)の厚さが1μm以上である請求項1〜8のいずれかに記載の金属直接蒸着用積層フィルム。
  10. 樹脂組成物(a)と樹脂組成物(b1)又は樹脂組成物(b2)とが共押出成形されてなる請求項1〜9のいずれかに記載の金属直接蒸着用積層フィルム。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の金属直接蒸着用積層フィルムのうち、熱可塑性樹脂層(A)の一方の面にスチレン系樹脂層(B1)又は(B2)が積層されてなる金属直接蒸着用積層フィルムに対し、スチレン系樹脂層(B1)又は(B2)側の面に金属蒸着層が設けられていることを特徴とする金属蒸着フィルム。
  12. 請求項1〜10のいずれかに記載の金属直接蒸着用積層フィルムのうち、熱可塑性樹脂層(A)の両方の面にスチレン系樹脂層(B1)又は(B2)が積層されてなる金属直接蒸着用積層フィルムに対し、いずれか一方の面に金属蒸着層が設けられていることを特徴とする金属蒸着フィルム。
  13. 請求項11又は12に記載の金属蒸着フィルムの金属蒸着層側の面に、熱可塑性樹脂シートが積層されてなることを特徴とする金属調シート。
  14. 金属蒸着層と熱可塑性樹脂シートとは接着剤層を介して積層されている請求項13に記載の金属調シート。
  15. 金属蒸着層と熱可塑性樹脂シートとがドライラミネートにより積層されてなる請求項14に記載の金属調シート。
  16. 請求項11又は12に記載の金属蒸着フィルムの金属蒸着層側の面が、成形品に貼合されてなることを特徴とする金属調成形品。
  17. 金属蒸着層と成形品とは接着剤層を介して貼合されている請求項16に記載の金属調成形品。
  18. 請求項13〜15のいずれかに記載の金属調シートの熱可塑性樹脂シートが積層された面が、成形品に貼合されてなることを特徴とする金属調成形品。
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