JP2018150447A - 多層フィルムおよび成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】オレフィン系基材への高い室温接着力と低いタック性を両立する多層フィルムおよび加飾フィルム、並びにこれらのフィルムを具備するが被着体に貼合されてなる成形体を提供すること。【解決手段】上記課題を解決する本発明は、基材層および粘着材層を含み、前記粘着材層が、少なくとも一種のスチレン系熱可塑性エラストマー(a)および少なくとも一種の粘着付与剤(b)を含む樹脂組成物(E)よりなり、前記樹脂組成物(E)が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(a)の合計100質量部に対して、前記粘着付与剤(b)の合計80〜400質量部を含有し、前記樹脂組成物(E)の25℃、角速度0.1rad/sにおけるG’が8.0×103Pa〜2.0×105Paである多層フィルムである。【選択図】なし

Description

本発明は、非極性樹脂に対する室温接着性および低タック性に優れた粘着材を有する加飾用の多層フィルム、並びに、該多層フィルムが被着体に貼合されてなる成形体に関する。
家電製品、電子部品、機械部品、自動車部品などの様々な用途で、意匠性、耐久性、耐熱性および機械強度に優れたセラミックス、金属、合成樹脂などよりなる部材が幅広く使用されている。これらの部材は用途、部品構成および使用方法などにより、異なる材料同士を接着または複合化して使用する場合がある。また、家電製品の外装・壁紙、自動車の内装などには、木目調などの絵柄による加飾やメタリック調やピアノブラック調などの意匠性の付与、耐傷つき性や耐候性といった機能性の付与などを目的として加飾フィルムが用いられている。
しかしながら、加飾フィルムと被着体とが極性の異なる異種材料である場合、加飾フィルムが被着体に接着しないという問題がある。このような場合、フィルムを被着体に接着させるためには、通常別途接着剤の塗布が必要となる。この作業には溶剤の塗布工程、乾燥工程、養生工程などが必要であり、接着性の付与に長い時間を要したり、VOCによる作業環境の悪化が懸念されたり、塗布ムラによる接着不良等が発生したりする。したがって、接着剤を必要とせず異種材料に接着できる加飾フィルムが求められている。
これに対し、特許文献1には、芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロックと共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロックとを有するブロック共重合体またはその水素添加物である熱可塑性エラストマーおよび極性基含有ポリプロピレン系樹脂を含有する樹脂組成物からなるフィルムをインサート部材に貼り合せ、次いで樹脂部材をインサート成形する接着体の製造方法が提案されている。
また、特許文献2には、ポリオレフィン系重合体、および芳香族ビニル化合物重合体ブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックとを含有するブロック共重合体またはその水素添加物を含有する熱可塑性樹脂組成物よりなる層(I)を含む、層間接着性に優れる積層体が開示されている。
また、特許文献3には、(1)ポリアミド樹脂(A)10〜89.5重量部、ゴム強化スチレン系樹脂(B)10〜89.5重量部、(A)と(B)との相溶化剤(C)0.5〜50重量部〔但し(A)、(B)、および(C)の合計を100重量部とする〕からなる樹脂組成物をフィルム成形してなる貼合成形用加飾フィルムが開示されている。
また、一般的な粘着材を用いる場合、粘弾性測定における室温、角周波数0.1rad/secの貯蔵弾性率(G’)が低い粘着材を使用することで、被着体との界面が埋まり、高い室温接着力を発現することが知られている。非特許文献1に示すBikermanの理論式や、非特許文献2に示すKaelbleの理論式においては、粘着剤の弾性率と、被着体との接着力が負の相関関係であることが示されていた。しかしながら、こういったG’が低い粘着材を用いた場合はタック、いわゆる「べたつき」が強いために取扱いが煩雑である。すなわち、被着体に対する室温接着力とタック性は、いわゆるトレードオフの関係にあり、これらの性能を両立できる方法は知られていなかった。これに対し、特許文献4には、被着体に貼付して用いられる装飾フィルムであって、透明な樹脂からなる保護層によって被覆された装飾材料層と接着剤層とを少なくとも含んでなるとともに、前記装飾フィルムがプローブタック試験で測定した場合に、0.01〜3.50Nのタック値、を有していることを特徴とする装飾フィルムが開示されている。
特許文献1および2に記載の樹脂組成物および該樹脂組成物からなるフィルムについて本発明者らが検討したところ、三次元表面加飾成形(Three dimension Overlay Method:TOM成形)ではオレフィン系材料に接着したものの、室温で貼合した場合には接着性を示さなかった。
また特許文献3に記載の接着剤を含む加飾フィルムは、ABSに対して優れた接着性を示すことが示されているが、ポリプロピレンなどのオレフィン系材料に対しては適用されていない。
また特許文献4に記載の透明な樹脂層と接着剤を含む装飾フィルムは、低いタック性を示すものの、被着体との接着には加熱処理が必要であった。
特開2014−168940号公報 WO2016/121868 特許公報4766734号 特開2003−191369号公報
Bikerman,J.J.:J.Appl. Sci.,2,216(1959) Kaelble,D.H.:Trans. Soc. Rheol.,9,135(1965)
以上より、本発明の目的は、特定の組成および物性範囲に制御した樹脂組成物と基材を用いることで、通常はいわゆるトレードオフの関係となるオレフィン系基材への室温接着力と低いタック性を両立する多層フィルムおよび加飾フィルム、並びに、これらのフィルムが被着体に貼合されてなる成形体を提供することである。
本発明によれば、上記の目的は、基材層および粘着材層を含む多層フィルムであって、前記粘着材層が、少なくとも一種のスチレン系熱可塑性エラストマー(a)および少なくとも一種の粘着付与剤(b)を含む樹脂組成物(E)よりなり、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(a)が、芳香族ビニル化合物に由来する単量体単位からなる重合体ブロック(A)とイソプレンに由来する単量体単位および/または1,3−ブタジエンに由来する単量体単位からなる重合体ブロック(B)とを含み、かつ、水素添加されている水添ブロック共重合体であって、前記重合体ブロック(A)の含有量が、水素添加前におけるブロック共重合体の総量に対して5〜40質量%であり、前記重合体ブロック(B)の水素添加率が70%以上であり、前記樹脂組成物(E)が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(a)の合計100質量部に対して、前記粘着付与剤(b)の合計80〜400質量部を含有し、前記樹脂組成物(E)の25℃、角速度0.1rad/sにおけるG’が8.0×10Pa〜2.0×10Paであることを特徴とする多層フィルムを提供することにより達成される。
前記樹脂組成物(E)はさらに軟化剤(c)を含有していても良い。また、前記粘着付与剤(b)は、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン系樹脂、スチレン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。
また本発明は、前記基材層と粘着材層の間に加飾層を有していてもよく、前記加飾層は、金属蒸着層、顔料もしくは染料を含有する着色層、印刷層のいずれかであっても良い。
さらに本発明おいて前記基材層は、非晶性樹脂からなっていても良く、前記非晶性樹脂は、(メタ)アクリル系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびポリエステル系樹脂のいずれかであっても良い。また、前記基材層表面にはハードコート層が設けられていても良い。
また、本発明の多層フィルムの厚さは、20μm〜1000μmであるのが好ましい。
さらに本発明は、上記の多層フィルムが、前記粘着材層を介して被着体に貼合されてなる成形体である。
本発明の粘接着材層および基材層を含む多層フィルムは、当業者が想定しえないことに、オレフィン系基材への室温接着力と低タック性の両方に優れるため、特に車輌外装に用いる多層フィルムとして好適に使用できる。
本発明の多層フィルムは、樹脂組成物(E)よりなる粘着剤層と基材層とを含む。
前記樹脂組成物(E)は、芳香族ビニル化合物に由来する単量体単位を含む重合体ブロック(A)とイソプレンに由来する単量体単位および/または1,3−ブタジエンに由来する単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物であるスチレン系熱可塑性エラストマー(aと粘着付与剤(b)とを含み、前記重合体ブロック(A)の含有量が、水素添加前におけるスチレン系熱可塑性エラストマー(a)の総量に対して5〜40質量%、前記重合体ブロック(B)の水素添加率が70%以上であって、前記樹脂組成物(E)が前記スチレン系熱可塑性エラストマー(a)の合計100質量部に対して、粘着付与剤(b)の合計80〜400質量部を含有し、前記樹脂組成物(E)の25℃、角速度0.1rad/sにおけるG’が8.0×10Pa〜2.0×10Paであることを特徴とする。以下、上記成分(a)、(b)について順に説明し、次いで、他の成分および樹脂組成物(E)について説明する。
[スチレン系熱可塑性エラストマー(a)]
樹脂組成物(E)が含有するスチレン系熱可塑性エラストマー(a)は、芳香族ビニル化合物に由来する単量体単位(以下、芳香族ビニル化合物単位と称することがある)を含む重合体ブロック(A)とイソプレンに由来する単量体単位および/または1,3−ブタジエンに由来する単量体単位(以下、共役ジエン化合物単位と称することがある)を含む重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物である。前記熱可塑性エラストマー(a)は、樹脂組成物(E)に柔軟性や、良好な力学特性および成形加工性などを付与するものであり、該組成物中でマトリックスの役割を果たす。
−重合体ブロック(A)−
前記重合体ブロック(A)を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンなどが挙げられる。芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロックは、これらの芳香族ビニル化合物の1種のみに由来する構造単位からなっていてもよいし、2種以上に由来する構造単位からなっていてもよい。中でも、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレンが好ましい。
芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロック(A)は、好ましくは芳香族ビニル化合物単位80質量%以上、より好ましくは芳香族ビニル化合物単位90質量%以上、さらに好ましくは芳香族ビニル化合物単位95質量%以上を含有する重合体ブロックである。前記重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物単位のみを有していてもよいが、本発明の効果を損なわない限り、芳香族ビニル化合物単位と共に、他の共重合性単量体単位を有していてもよい。他の共重合性単量体としては、例えば、1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテルなどが挙げられる。他の共重合性単量体単位を有する場合、その割合は、芳香族ビニル化合物単位および他の共重合性単量体単位の合計量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
−重合体ブロック(B)−
前記重合体ブロック(B)を構成する共役ジエン化合物は、1,3−ブタジエンおよび/またはイソプレンである。
共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロック(B)は、これらの共役ジエン化合物の1種のみに由来する構造単位からなっていてもよいし、2種以上に由来する構造単位からなっていてもよい。
共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロック(B)は、好ましくは共役ジエン化合物単位80質量%以上、より好ましくは共役ジエン化合物単位90質量%以上、さらに好ましくは共役ジエン化合物単位95質量%以上を含有する重合体ブロックである。前記重合体ブロック(B)は、共役ジエン化合物単位のみを有していてもよいが、本発明の妨げにならない限り、共役ジエン化合物単位と共に、他の共重合性単量体単位を有していてもよい。他の共重合性単量体としては、例えば、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの他のジエン化合物、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレンなどが挙げられる。他の共重合性単量体単位を有する場合、その割合は、共役ジエン化合物単位および他の共重合性単量体単位の合計量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロック(B)を構成する共役ジエンの結合形態は特に制限されない。例えば、1,3−ブタジエンの場合には、1,2−結合、1,4−結合を、イソプレンの場合には、1,2−結合、3,4−結合、1,4−結合をとることができる。そのうちでも、共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロック(B)が1,3−ブタジエンからなる場合、イソプレンからなる場合、または1,3−ブタジエンとイソプレンの両方からなる場合は、前記重合体ブロック(B)における1,2−結合量および3,4−結合量の合計が特に高い接着性能を発現するという観点から、40モル%以上であることが好ましい。前記重合体ブロック(B)における1,2−結合量および3,4−結合量の合計は、40〜90モル%であることが好ましく、50〜80モル%であることがより好ましい。
なお、1,2−結合量および3,4−結合量の合計量は、H−NMR測定によって算出できる。具体的には、1,2−結合および3,4−結合単位に由来する4.2〜5.0ppmに存在するピークの積分値および1,4−結合単位に由来する5.0〜5.45ppmに存在するピークの積分値との比から算出できる。
スチレン系熱可塑性エラストマー(a)における芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロック(A)と共役ジエン化合物を含有する重合体ブロック(B)との結合形態は特に制限されず、直鎖状、分岐状、放射状、またはこれらの2つ以上が組み合わさった結合形態のいずれであってもよいが、直鎖状の結合形態であることが好ましい。
直鎖状の結合形態の例としては、芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロック(A)をAで、共役ジエン化合物を含有する重合体ブロック(B)をBで表したとき、A−Bで表されるジブロック共重合体、A−B−AまたはB−A−Bで表されるトリブロック共重合体、A−B−A−Bで表されるテトラブロック共重合体、A−B−A−B−AまたはB−A−B−A−Bで表されるペンタブロック共重合体、(A−B)nX型共重合体(Xはカップリング残基を表し、nは2以上の整数を表す)、およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、ジブロックもしくはトリブロック共重合体が好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマー(a)は、耐熱性および耐候性を向上させる観点から、共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロック(B)の一部または全部が水素添加(以下、「水添」と略称することがある)されていることが好ましい。その際の共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロック(B)の水素添加率は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。ここで、本明細書において、水素添加率は、水素添加反応前後のブロック共重合体のヨウ素価を測定して得られる値である。
スチレン系熱可塑性エラストマー(a)における芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロック(A)の含有量は、その柔軟性、力学特性の観点から、水素添加前におけるブロック共重合体全体に対して、好ましくは5〜75質量%、より好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。
また、スチレン系熱可塑性エラストマー(a)の重量平均分子量は、その力学特性、成形加工性の観点から、好ましくは30,000〜500,000、より好ましくは50,000〜400,000、より好ましくは60,000〜200,000、さらに好ましくは70,000〜200,000、特に好ましくは70,000〜190,000、最も好ましくは80,000〜180,000である。である。ここで、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
スチレン系熱可塑性エラストマー(a)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
スチレン系熱可塑性エラストマー(a)の製造方法としては、特に限定されないが、例えばアニオン重合法により製造することができる。具体的には、(i)アルキルリチウム化合物を開始剤として用い、前記芳香族ビニル化合物、前記共役ジエン化合物、次いで前記芳香族ビニル化合物を逐次重合させる方法;(ii)アルキルリチウム化合物を開始剤として用い、前記芳香族ビニル化合物、前記共役ジエン化合物を逐次重合させ、次いでカップリング剤を加えてカップリングする方法;(iii)ジリチウム化合物を開始剤として用い、前記共役ジエン化合物、次いで前記芳香族ビニル化合物を逐次重合させる方法などが挙げられる。
上記アニオン重合の際、有機ルイス塩基を添加することによって、スチレン系熱可塑性エラストマー(a)における前記重合体ブロック(B)の1,2−結合量および3,4−結合量を増やすことができ、該有機ルイス塩基の添加量によって、1,2−結合量および3,4−結合量を容易に制御することができる。
該有機ルイス塩基としては、例えば、酢酸エチルなどのエステル;トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N−メチルモルホリンなどのアミン;ピリジンなどの含窒素複素環式芳香族化合物;ジメチルアセトアミドなどのアミド;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンなどが挙げられる。
さらに、上記で得られた未水添のブロック共重合体を水素添加反応に付すことによって、水添ブロック共重合体よりなるスチレン系熱可塑性エラストマー(a)を製造することができる。水素添加反応は、反応および水素添加触媒に対して不活性な溶媒に上記で得られた未水添のブロック共重合体を溶解させるか、または、未水添のブロック共重合体を前記の反応液から単離せずにそのまま用い、水素添加触媒の存在下、水素と反応させることにより行うことができる。
また、熱可塑性エラストマー(a)としては、市販品を使用することもできる。
[粘着付与剤(b)]
粘着付与剤(b)として用いられる粘着性付与樹脂としては、例えば脂肪族不飽和炭化水素樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂、脂環式不飽和炭化水素樹脂、脂環式飽和炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、水添芳香族炭化水素樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、特に脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン系樹脂、スチレン樹脂はスチレン系熱可塑性エラストマーとの相溶性が高く、好ましい。
[軟化剤(c)]
軟化剤(c)としては、例えば、一般にゴム、プラスチックスに用いられる軟化剤が挙げられる。例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系のプロセスオイル;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸誘導体;ホワイトオイル、ミネラルオイル、エチレンとα−オレフィンのオリゴマー、パラフィンワックス、流動パラフィン、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン、低分子量ポリイソプレンなどが挙げられる。
[その他の成分]
本発明の樹脂組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて酸化防止剤、滑剤、光安定剤、加工助剤、顔料や色素などの着色剤、難燃剤、帯電防止剤、艶消し剤、シリコンオイル、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、発泡剤、抗菌剤、防カビ剤、香料などを含有していてもよい。
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系、リン系、ラクトン系、ヒドロキシル系の酸化防止剤などが挙げられる。これらの中でも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
[樹脂組成物(E)]
樹脂組成物(E)は、少なくとも一種のスチレン系熱可塑性エラストマー(a)の合計100質量部に対して、少なくとも一種の粘着付与剤(b)の合計80〜400質量部含有する。粘着付与剤(b)が80質量部より少ないと、被着体に接着させることが難しいことがある。一方、粘着付与剤(b)が400質量部から多くなると、樹脂組成物(E)が硬くなり、柔軟性および力学特性が発現しにくくなることがある。粘着付与剤(b)の含有量は、スチレン系熱可塑性エラストマー(a)100質量部に対して、好ましくは85質量部以上、より好ましくは90質量部以上であり、より好ましくは300質量部以下であり、さらに好ましくは280質量部以下である。
さらに前記樹脂組成物(E)は、軟化剤(c)を0〜100質量部含有する。軟化剤(c)が100質量部より多いと、ブリードアウトして時間が経過することで接着力が低下することがある。軟化剤(c)の含有量は、スチレン系熱可塑性エラストマー(a)100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。
さらに前記樹脂組成物(E)の25℃、角速度0.1rad/sにおけるG’は8.0×10Pa〜2.0×10Paである。25℃、角速度0.1rad/sにおけるG’が8.0×10Paより小さいと、タックが大きくなり、取扱いが困難になる。一方、25℃、角速度0.1rad/sにおけるG’が2.0×10Paより大きいと、接着力が発現しないことがある。
[樹脂組成物(E)の製造方法]
本発明の樹脂組成物(E)を調製する方法は特に制限されないが、該樹脂組成物(E)を構成する各成分の分散性を高めるため、例えば、トルエン溶媒中で撹拌混合する方法が推奨される。この場合に、スチレン系熱可塑性エラストマー(a)および粘着付与剤(b)と、必要に応じて添加される軟化剤(c)およびその他の成分とを同時に混合して撹拌混合してもよい。スチレン系熱可塑性エラストマー(a)、粘着付与剤(b)等の、室温下における不揮発成分の濃度は溶液粘度などに応じて適宜調節するのがよく、通常20wt%〜60wt%の範囲内の温度で混合するとよい。
このようにして、本発明の樹脂組成物溶液を得ることができる。得られた樹脂組成物溶液は、シート、フィルム、プレートなど様々な形状のものに塗布することができる。塗布方法は特に制限はなく、従来からの各種塗布法、例えばグラビアコート、ダイコート、コンマコート、バーコートなどにより塗布することができる。
他に該樹脂組成物(E)を得る方法として、該樹脂組成物(E)を構成する各成分の分散性を高めるため、例えば、溶融混練して混合する方法が推奨される。この場合に、スチレン系熱可塑性エラストマー(a)および粘着付与剤(b)と、必要に応じて添加される軟化剤(c)およびその他の成分とを同時に混合して溶融混練してもよい。混合操作は、例えばニ一ダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの既知の混合または混練装置を使用して行なうことができる。特に、スチレン系熱可塑性エラストマー(a)と粘着付与剤(b)の混練性、相溶性を向上させる観点から、二軸押出機を使用することが好ましい。混合・混練時の温度は、使用するスチレン系熱可塑性エラストマー(a)と粘着付与剤(b)等の溶融温度などに応じて適宜調節するのがよく、通常110℃〜300℃の範囲内の温度で混合するとよい。
このようにして、本発明の樹脂組成物(E)を、ペレット、粉末などの任意の形態で得ることができる。得られた樹脂組成物(E)は、フィルム、シート、プレート、パイプ、チューブ、棒状体、粒状体など種々の形状に成形することができる。これらの製造方法は特に制限はなく、従来からの各種成形法、例えば射出成形、ブロー成形、プレス成形、押出成形、カレンダー成形などにより成形することができる。
[多層フィルム]
本発明の多層フィルムは、基材層と本発明の樹脂組成物(E)よりなる粘着材層とを少なくとも有する。以下、本発明の多層フィルムで用いられる基材層について説明する。
[基材層]
基材層としては特に限定されるものではないが、非晶性樹脂からなるものが好ましい。本明細書において「非晶性樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)曲線において明確な融点を持たない樹脂を意味する。
非晶性樹脂としては、例えばポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、日本ゼオン製のゼオノア(登録商標)、ゼオネックス(登録商標)およびJSR製のアートン(登録商標)などが挙げられる。中でも耐候性、表面光沢性、耐擦傷性の観点から、(メタ)アクリル系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、日本ゼオン製のゼオノア(登録商標)、ゼオネックス(登録商標)等およびJSR製のアートン(登録商標)が好ましく、透明性および表面光沢性の観点から(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
上記基材層に用いられる(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂と弾性体(R)を含む(メタ)アクリル系樹脂組成物であることがより好ましい。
本発明に用いる(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を80質量%以上、好ましくは90質量%以上有する。換言すると、(メタ)アクリル系樹脂のメタクリル酸メチル以外の単量体に由来する構造単位を20質量%以下、好ましくは10質量%以下とする。(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルのみを単量体とする重合体であってもよい。
(メタ)アクリル系樹脂の製造方法は特に限定されず、メタクリル酸メチルを80質量%以上含む単量体(混合物)を重合するか、またはメタクリル酸メチル以外の単量体と共重合することによって得られる。また、(メタ)アクリル系樹脂として市販品を用いてもよい。かかる市販されているメタクリル樹脂としては、例えば「パラペットH1000B」(MFR:22g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットGF」(MFR:15g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットEH」(MFR:1.3g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットHRL」(MFR:2.0g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットHRS」(MFR:2.4g/10分(230℃、37.3N))および「パラペットG」(MFR:8.0g/10分(230℃、37.3N))[いずれも商品名、株式会社クラレ製]などが挙げられる。
弾性体(R)としてはブタジエン系ゴム、クロロプレン系ゴム、ブロック共重合体、多層構造体などが挙げられ、これらを単独でまたは組み合わせて用いてもよい。これらの中でも透明性、耐衝撃性、分散性の観点からブロック共重合体または多層構造体が好ましい。
多層構造体は内層および外層の少なくとも2層を含有し、内層および外層が中心層から最外層方向へこの順に配されている層構造を少なくとも一つ有している。多層構造体は内層の内側または外層の外側にさらに架橋性樹脂層を有してもよい。
上記内層は、アクリル酸アルキルエステルおよび架橋性単量体を有する単量体混合物を共重合してなる架橋弾性体から構成される層である。係るアクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が2〜8の範囲であるアクリル酸アルキルエステルが好ましく用いられ、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが挙げられる。内層の共重合体を形成させるために使用される全単量体混合物におけるアクリル酸アルキルエステルの割合は、耐衝撃性の点から、好ましくは70〜99.8質量%の範囲であり、より好ましくは80〜90質量%である。
上記外層は基材層の耐熱性の点からメタクリル酸メチルを80質量%以上、好ましくは90質量%以上含有する単量体混合物を重合してなる硬質熱可塑性樹脂から構成される。また、硬質熱可塑性樹脂は他の単官能性単量体を20質量%以下、好ましくは10質量%以下含む。他の単官能性単量体としては、例えばメチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸;メタクリル酸などが挙げられる。
多層構造体における内層および外層の含有率は、得られる基材層の耐衝撃性、耐熱性、表面硬度、取扱性および溶融混練の容易さなどの観点から、多層構造体の質量(例えば2層からなる場合は内層および外層の総量)を基準として、内層の含有率が40〜80質量%の範囲から選ばれ、外層の含有率が20〜60質量%の範囲から選ばれることが好ましい。
基材層を構成する非晶性樹脂は各種の添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、高分子加工助剤着色剤、耐衝撃助剤などを含有してもよい。
また、上記非晶性樹脂は他の重合体と混合して使用できる。係る他の重合体としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネンなどのポリオレフィン樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;メチルメタクリレート−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド;ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンービニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン変性樹脂;アクリルゴム、シリコーンゴム;スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン/ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体などのスチレン系熱可塑性エラストマー;イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴムなどのオレフィン系ゴムなどが挙げられる。
基材層を構成する非晶性樹脂を調製する方法は特に制限されないが、該非晶性樹脂を構成する各成分の分散性を高めるため、溶融混練して混合する方法が好ましい。混合操作は、例えばニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの既知の混合または混練装置を使用でき、混練性、相溶性を向上させる観点から、二軸押出機を使用することが好ましい。混合・混練時の温度は使用する非晶性樹脂の溶融温度などに応じて適宜調節すればよく、通常110〜300℃の範囲である。二軸押出機を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し、減圧下でおよび/または窒素雰囲気下で溶融混練することが好ましい。
[その他の層]
本発明の多層フィルムは、基材層および/または粘着材層に絵柄、文字、図形などの模様または色彩が印刷されていてもよい。模様は有彩色のものであっても無彩色のものであってもよい。印刷の方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、転写印刷、インキジェット印刷など公知の印刷法が挙げられる。印刷においては、係る印刷方法で一般的に使用される、ポリビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、セルロース樹脂などの樹脂をバインダーとして、顔料または染料を着色剤として含有する樹脂組成物を使用することが好ましい。
本発明の多層フィルムに用いられる基材層は、着色されていてもよい。着色法としては、前記非晶性樹脂自体に、顔料または染料を含有させ、フィルム化前の樹脂自体を着色する方法;非晶性樹脂フィルムを、染料が分散した液中に浸漬して着色させる染色法などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明の多層フィルムは、基材層に金属または金属酸化物が蒸着されてもよい。係る金属または金属酸化物としてはスパッタや真空蒸着などに使用される金属または金属酸化物を特に制限なく使用でき、例えば金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、クロム、インジウムやこれらの酸化物などが挙げられる。また、これらの金属または金属酸化物は単独で使用してもよく、2以上の混合物として使用してもよい。基材層に金属または金属酸化物を蒸着する方法としては、蒸着やスパッタなどの真空成膜法や、電解メッキ、無電解メッキなどが挙げられる。
本発明の多層フィルムの基材層側の表面は、鉛筆硬度でHBまたはそれよりも硬いことが好ましく、Hまたはそれよりも硬いことがより好ましい。鉛筆硬度がHBよりも硬いと多層フィルムが傷つき難く、意匠性の要求される成形品の表面の加飾兼保護フィルムとして好適に用いられる。
本発明の多層フィルムの厚さは好ましくは20〜1,000μmの範囲であり、より好ましくは50〜500μmの範囲であり、さらに好ましくは75〜300μmの範囲である。多層フィルムの厚さが20μm以上であれば製造が容易となり、耐衝撃性および加熱時の反り低減に優れ、着色時に隠蔽性を有する。多層フィルムの厚さが1,000μm以下であれば、ハンドリング性が良くなる傾向となる。
本発明の多層フィルムにおいて、基材層の厚さは、500μm以下であることが好ましい。500μmより厚くなると、ラミネート性、ハンドリング性、切断性・打抜き性などの二次加工性が低下し、フィルムとしての使用が困難になるとともに、単位面積あたりの単価も増大し、経済的に不利であるため好ましくない。基材層の厚さとしては40〜300μmがより好ましく、50〜250μmが特に好ましい。
樹脂組成物からなる層の厚さ(x)に対する基材層の厚さ(y)の比(y/x)は、好ましくは0.2〜5の範囲であり、より好ましくは0.5〜4の範囲であり、さらに好ましくは0.8〜3の範囲である。上記比(y/x)の値が0.2未満だと表面硬度が低くなる傾向となり、5よりも大きいと多層フィルムが破断しやすくなる傾向となり、4よりも大きいとより延伸性が低くなる傾向となる。
[多層フィルムの製造方法]
本発明の多層フィルムは、基材層と粘着材層とを有するものであり、基材層の一方の面に前記樹脂組成物からなる層を積層して得ることができる。
前記基材層の製造方法は特に制限はなく、例えば非晶性樹脂を用いる場合は、Tダイ法、インフレーション法、溶融流延法、カレンダー法等の公知の方法を用いて行うことができる。良好な表面平滑性、低ヘイズのフィルムが得られるという観点から、基材層を構成する非晶性樹脂の溶融混練物をTダイから溶融状態で押し出し、その両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形する工程を含む方法が好ましい。この際に用いるロールまたはベルトは、いずれも金属製であることが好ましい。このように押し出された溶融混練物の両面を鏡面に接触させて製膜する場合には、フィルム両面を鏡面ロール若しくは鏡面ベルトで加圧し挟むことが好ましい。鏡面ロール若しくは鏡面ベルトによる挟み込み圧力は、高いほうが好ましく、線圧として10N/mm以上であることが好ましく、30N/mm以上であることがさらに好ましい。
なお、基材層は、延伸処理が施されたフィルムであってもよい。延伸処理によって、機械的強度が高まり、ひび割れし難くなる。延伸方法は特に限定されず、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チュブラー延伸法、圧延法などが挙げられる。
上記のようにして得られた基材層に対する粘着材層の積層は、基材層に前記樹脂組成物(E)の溶液を塗布する方法、剥離基材に形成された前記樹脂組成物(E)からなるフィルムを基材層にラミネートする方法等を挙げることができる。
また、基材層を構成する非晶性樹脂と樹脂組成物(E)とをTダイ法を用いた共押出し成形法により製造することもできる。特に、マルチマニホールドダイを用いた共押出し成形法が好ましい。
[成形体]
本発明の成形体は、本発明の多層フィルムが前記粘着材層を介して被着体に貼合されてなるものである。より好ましくは、本発明の多層フィルムが、他の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、木質基材または非木質繊維基材等の被着体の表面に貼合されてなるものである。
該成形体に用いられる他の熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、他の(メタ)アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合)樹脂などが挙げられる。他の熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。また、成形体は、本発明の多層フィルムが、木製基材やケナフなどの非木質繊維の表面に設けられてなるものであってもよい。
成形体の製法は、特に制限されない。例えば、本発明の多層フィルムを、他の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、木製基材および非木質繊維基材等の被着体の表面に、室温下で圧着・ラミネート、加熱下で真空成形・圧空成形・圧縮成形等して貼合することにより、本発明の成形体を得ることができる。成形体は、本発明の多層フィルムにおける粘着材層を介して貼合されており、すなわち、基材層が成形体の最表層に配されており、それによって、表面硬度、表面光沢などに優れる。
成形体の製法のうち、別の好ましい方法は、射出成形同時貼合法と一般に呼ばれている方法である。
この射出成形同時貼合法は、本発明の多層フィルムを射出成形用雌雄金型間に挿入し、その金型に該フィルムの粘着材層側の面から溶融した熱可塑性樹脂を射出して、射出成形体を形成すると同時に、その成形体の表面に前記多層フィルムを貼合する方法である。
金型に挿入される多層フィルムは、平らなものそのままであってもよいし、真空成形、圧空成形等で予備成形して凹凸形状に賦形されたものであってもよい。
多層フィルムの予備成形は、別個の成形機で行ってもよいし、射出成形同時貼合法に用いる射出成形機の金型内で予備成形を行ってもよい。
本発明の多層フィルムまたは該多層フィルムを具備する成形体は、多層フィルムの良好な延伸性および成形加工性、優れた両極性接着性および表面平滑性を活かして、意匠性の要求される物品に適用することができる。例えば、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板等の看板部品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイ等のディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリア等の照明部品;家具、ペンダント、ミラー等のインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根等の建築用部品、自動車内外装部材、バンパーなどの自動車外装部材等の輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、自動販売機、携帯電話、パソコン等の電子機器部品;保育器、定規、文字盤、温室、大型水槽、箱水槽、浴室部材、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、壁紙;マーキングフィルム、各種家電製品の加飾用途に好適に用いられる。本発明の多層フィルムは上記特性を備えるため、特に加飾フィルムとして好適に用いることができる。
以下、実施例などにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。実施例および比較例中の試験サンプルの作製および各物性の測定または評価は、以下のようにして行い、結果を表にまとめた。
[樹脂組成物(E)の粘弾性評価]
各実施例および比較例に示す樹脂組成物溶液を、重剥離PET(東洋紡社製のK1504)で作製した縦4cm×横4cm×高さ2cmの箱に注ぎ、23℃環境下で24時間静置した。その後、該溶液の入ったPET製箱を80℃のオーブンに5分間入れて溶剤を揮散させ、縦4cm×横4cm×厚さ0.7cmサイズのシート状の樹脂組成物(E)を得た。得られたシートから直径8mmの試験片を切り出し、せん断動的粘弾性測定装置(株式会社レオメトリック サイエンティフィック社製のARES)で25℃環境下における周波数分散測定を行うことで、樹脂組成物(E)の0.1rad/secにおけるG’を測定した。
[樹脂組成物(E)のPP樹脂に対する接着強度評価]
実施例および比較例で得られた樹脂組成物溶液を、それぞれメタクリル樹脂組成物からなるシート(30cm×20cm×厚み0.125mm)にwet厚み100μm、dry厚み40μmとなるように塗布した。PP樹脂シート(日本ポリプロ社製のMA3、縦75mm×横100mm×厚さ0.2mm)、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製カプトンフィルム、縦40mm×横150mm×厚さ0.05mm)をこの順で重ね、塗布したシートの樹脂組成物側の面を、ラミネーター(株式会社エム・シー・ケー社製のMRK−650Y)を用いて、圧力0.2MPa、搬送速度3cm/secの条件で貼合した。これにより、PP樹脂、樹脂組成物とメタクリル樹脂組成物の多層フィルムを得た。
該多層フィルムを23℃環境下で24時間養生した後に、25mm幅に切断し、接着強度測定用試験片とし、PP樹脂と樹脂組成物間の剥離強度をJIS K 6854−2に準じて、ピール試験機(島津製作所社製AGS−X)を使用して、剥離角度180°、引張速度50mm/分、環境温度23℃の条件で測定し、樹脂組成物(E)のPP樹脂に対する接着強度とした。
[樹脂組成物塗布膜のタック性評価]
プローブタック試験機(ChemInstruments社製のPMA−1000)を用いて、引き剥がし速度60cm/minで、前記樹脂組成物(E)を塗布したメタクリル樹脂組成物からなるシートの樹脂組成物側のタック値を測定し、樹脂組成物(E)塗布膜のプローブタック値とした。
なお、以下の実施例および比較例で用いた各成分は以下の通りである。
<製造例1>〔スチレン系熱可塑性エラストマー(a−1)の合成〕
予め耐圧容器を窒素置換することで、耐圧容器を乾燥させた。係る耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウムの10.5質量%シクロヘキサン溶液94.1g(sec−ブチルリチウム9.9g当量)、及びルイス塩基としてテトラヒドロフラン300gを仕込んだ。係る溶液を50℃に昇温した。係る溶液に、スチレン(1)1.25kgを加えた後に、1時間の重合反応を行った。引き続いて係る溶液に、イソプレン10.00kgを加えた後に、2時間の重合反応を行った。更に係る溶液に、スチレン(2)1.25kgを加えた後に、1時間の重合反応を行った。以上により、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。
この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボンを、ブロック共重合体100質量%あたり5質量%添加した。なおパラジウムカーボン100質量%あたりのパラジウムの担持量は5質量%である。水素圧力2MPa、150℃の環境下で10時間の反応を行った。反応液を放冷し、かつ放圧した。その後、濾過により反応液からパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、該濃縮液を真空乾燥してスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体の水素添加物であるブロック共重合体(a−1)を得た。
<製造例2> 〔スチレン系熱可塑性エラストマー(a−2)の合成〕
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)61.1g(sec−ブチルリチウム6.42g)を仕込み、50℃に昇温した後、スチレン(1)0.81kgを加えて1時間重合させ、引き続いてイソプレン10.87kgを加えて2時間重合を行い、更にスチレン(2)0.81kgを加えて1時間重合することにより、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。
この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。
放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体の水素添加物(a−2−1)を得た。
また上記水素添加物(a−2−1)を得た手順と同様に、窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)420.0g(sec−ブチルリチウム44.1g)を仕込み、50℃に昇温した後、スチレン(1)2.83kgを加えて1時間重合させ、引き続いてイソプレン19.81kgを加えて2時間重合を行い、スチレン−イソプレンジブロック共重合体を含む反応液を得た。
この反応液に、上記と同様に水素添加を行い、スチレン−イソプレンジブロック共重合体の水素添加物(a−2−2)を得た。
上記で得られた(a−2−1)および(a−2−2)をコぺリオン社製二軸押出機ZSK26MegaCompounder(L/D=54)を用いてスクリュー300rpm、混練温度200℃にて溶融混練してスチレン系熱可塑性エラストマー組成物(a−2)を得た。
〔粘着付与剤(b)〕
粘着付与剤(b)として、以下の市販材料を用いた。
粘着付与剤(b−1):YSレジンSX100(スチレン樹脂、ヤスハラケミカル社製)
粘着付与剤(b−2):アルコンP−90(脂環族飽和炭化水素樹脂、荒川化学工業社製)
粘着付与剤(b−3):YSポリスターU115(テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル社製)
〔軟化剤(c)〕
軟化剤(c)として、以下の市販材料を用いた。
軟化剤(c−1):ダイアナプロセスオイルPW90(パラフィン系プロセスオイル、出光興産社製)
軟化剤(c−2):ルーカントHC−10(炭化水素系合成油、三井化学社製)
<製造例3> [(メタ)アクリル系樹脂の合成]
メタクリル酸メチル95質量部、アクリル酸メチル5質量部からなる単量体混合物に重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.1質量部および連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン)0.28質量部を加え溶解させて原料液を得た。
イオン交換水100質量部、硫酸ナトリウム0.03質量部および懸濁分散剤0.45質量部を混ぜ合わせて混合液を得た。耐圧重合槽に、前記混合液420質量部と前記原料液210質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度を70℃にして重合反応を開始させた。重合反応開始後、3時間経過時に、温度を90℃に上げ、撹拌を引き続き1時間行って、ビーズ状共重合体が分散した液を得た。得られた共重合体分散液を適量のイオン交換水で洗浄し、バケット式遠心分離機により、ビーズ状共重合体を取り出し、80℃の熱風乾燥機で12時間乾燥し、ビーズ状の(メタ)アクリル系樹脂を得た。得られた(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は30,000、Tgは128℃であった。
<製造例4> [多層構造体]
攪拌機、温度計、窒素ガス同入管、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器に、イオン交換水1050質量部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.5質量部および炭酸ナトリウム0.7質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換した後、内温を80℃に設定した。そこに過硫酸カリウム0.25質量部を投入して5分間撹拌した後、メタクリル酸メチル:アクリル酸メチル:メタクリル酸アリル=94:5.8:0.2(質量比)からなる単量体混合物245質量部を50分連続的に滴下し、滴下終了後、さらに30分間重合反応を行った。
次いで同反応器にペルオキソ2硫酸カリウム0.32質量部を投入して5分間撹拌した後、アクリル酸ブチル80.6質量%、スチレン17.4質量%およびメタクリル酸アリル2質量%からなる単量体混合物315質量部を60分間かけて連続的に滴下し、滴下終了後、さらに30分間重合反応を行った。
続いて同反応器にペルオキソ2硫酸カリウム0.14質量部を投入して5分間撹拌した後、メタクリル酸メチル:アクリル酸メチル=94:6(質量比)からなる単量体混合物140質量部を30分間かけて連続的に滴下供給し、滴下終了後、さらに60分間重合反応を行って、多層構造体を得た。
<製造例5> [基材層]
製造例4で得られた多層構造体20質量部と、製造例3で得られた(メタ)アクリル系樹脂80質量部とを、二軸押出機(東芝機械社製TEM−28)を用いて230℃で溶融混練した後、ストランド状に押出し、切断することによって、メタクリル樹脂組成物のペレット(P)を製造した。
<実施例1>
スチレン系熱可塑性エラストマー(a−1)、粘着付与剤(b−2)および軟化剤(c−1)を表1に示す割合で、トルエン溶媒中で混合することで、樹脂組成物のトルエン溶液を得た。この時、不揮発成分(スチレン系エラストマー(a)、粘着付与剤(b)、軟化剤(c)成分の合計)の、トルエン溶液中濃度は40重量%とした。
得られた樹脂組成物の25℃環境下における粘弾性、PP樹脂に対する接着強度、塗布膜のタック性を、上述の方法により評価した。結果を表1に示す。
<実施例2〜22、比較例1〜12>
スチレン系熱可塑性エラストマー(a)、粘着付与剤(b)および軟化剤(c)を、表1、2に示す割合で混合したこと以外は実施例1と同様の方法で、樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂組成物について上述の方法により評価した。結果を表1、2に示す。
Figure 2018150447
Figure 2018150447
実施例1の樹脂組成物(E)は、PP樹脂との剥離強度は10N/25mm以上と優れた値を示し、プローブタック試験機で測定したタック値は小さかった。また、実施例2〜21においてスチレン系熱可塑性エラストマー(a)、粘着付与剤(b)および軟化剤(c)の配合比を変えても、樹脂組成物の25℃、角速度0.1rad/sにおけるG’が8.0×10Pa〜2.0×10Paの範囲内であれば、実施例1と同様にPP樹脂との高い接着力と、低タック性を両立していた。
一方、比較例1〜10でもスチレン系熱可塑性エラストマー(a)、粘着付与剤(b)および軟化剤(c)の配合比を変えているが、樹脂組成物の25℃、角速度0.1rad/sにおけるG’が8.0×10Paより小さいために、PP樹脂との接着力は高いものの、100g以上という高いタック性を示しており、取扱いが困難であった。また比較例11に示す樹脂組成物は25℃、角速度0.1rad/sにおけるG’が2.0×10Paより大きいために、低タック性であるものの、PP樹脂との接着力は非常に小さかった。また比較例12に示す樹脂組成物は25℃、角速度0.1rad/sにおけるG’が8.0×10Pa〜2.0×10Paの範囲内であるものの、スチレン系熱可塑性エラストマー(a)の合計100質量部に対して、前記粘着付与剤(b)の含有量が少ないために、PP樹脂との接着力は小さかった。
<実施例23>
ポリプロピレン(プライムポリマー社製のJ708UG)を射出成型機(住友重機械工業社製のSG−100)に投入し、230℃で射出することで、縦100mm×横40mm×厚さ3mmのポリプロピレン成形体を得た。
前記ポリプロピレン成形体を被着体として、実施例1で得られた多層フィルムを、該多層フィルムの粘着材層側を前記ポリプロピテン成形体に対向させて重ね、ラミネーター(株式会社エム・シー・ケー社製のMRK−650Y)を用いて圧力0.2MPa、搬送速度3cm/secの条件で貼合することで、多層フィルムとポリプロピレン成形体からなる成形体を得た。

Claims (6)

  1. 基材層および粘着材層を含む多層フィルムであって、前記粘着材層が、少なくとも一種のスチレン系熱可塑性エラストマー(a)および少なくとも一種の粘着付与剤(b)を含む樹脂組成物(E)よりなり、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(a)が、芳香族ビニル化合物に由来する単量体単位からなる重合体ブロック(A)とイソプレンに由来する単量体単位および/または1,3−ブタジエンに由来する単量体単位からなる重合体ブロック(B)とを含み、かつ、水素添加されている水添ブロック共重合体であって、前記重合体ブロック(A)の含有量が、水素添加前におけるブロック共重合体の総量に対して5〜40質量%であり、前記重合体ブロック(B)の水素添加率が70%以上であり、前記樹脂組成物(E)が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(a)の合計100質量部に対して、前記粘着付与剤(b)の合計80〜400質量部を含有し、前記樹脂組成物(E)の25℃、角速度0.1rad/sにおけるG’が8.0×10Pa〜2.0×10Paであることを特徴とする多層フィルム。
  2. 前記樹脂組成物(E)が、さらに軟化剤(c)を含有することを特徴とする請求項1に記載の多層フィルム。
  3. 前記粘着付与剤(b)が、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン系樹脂、スチレン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1または2に記載の多層フィルム。
  4. 前記基材層が非晶性樹脂からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層フィルム。
  5. 前記非晶性樹脂が(メタ)アクリル系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびポリエステル系樹脂のいずれかである請求項4に記載の多層フィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の多層フィルムが、前記粘着材層を介して被着体に貼合されてなる成形体。
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