JP5085484B2 - 撥液膜形成方法、ノズルプレート、インクジェットヘッド、及び電子機器 - Google Patents

撥液膜形成方法、ノズルプレート、インクジェットヘッド、及び電子機器 Download PDF

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Description

本発明は、撥液膜形成方法、ノズルプレート、インクジェットヘッド、及び電子機器に係り、特に、孔部を有する基材の表面に撥液性を有する撥液膜を形成する技術に関するものである。
インクジェット記録装置で用いられる記録ヘッド(インクジェットヘッド)では、ノズルプレートの表面(特にノズルの開口周辺部)にインクが付着していると、ノズルから吐出されるインク液滴が影響を受けて、インク液滴の吐出方向にばらつきが生じ、記録媒体上の所定位置にインク液滴を着弾させることが困難となり、画像品質が劣化する要因となる。
そこで、ノズルプレート表面にインクが付着することを防止するために、ノズルプレート(以下、「ノズル形成基板」ともいう。)の表面に撥液膜を形成する方法が各種提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特許文献1には、ノズル形成基板(基材)の表面にプラズマ重合膜で構成される中間層(下地層)を形成する第1の工程と、露点が−40〜20℃であるガス雰囲気下で、中間層の表面に酸化処理を施し、水酸基及び/又は吸着水を導入する第2の工程と、酸化処理が施された中間層に撥液膜を形成する第3の工程とを有する方法が記載されている。
特許文献2には、ノズル形成基板の全体(表面及びノズル孔の内壁面を含む)に撥液膜を形成した後、ノズル形成基板の表面側(即ち、撥液膜上)に再剥離型アクリル系粘着剤を有するマスキングテープを貼り付け、当該マスキングテープを貼り付けた状態でノズル形成基板の裏面側からプラズマ処理してノズル孔の内壁面の撥液膜を除去し、ノズル形成基板からマスキングテープを剥離する方法が記載されている。
特許文献3には、ノズル形成基板(ノズル板)の表面をマスキングテープ(被覆材)で被覆する工程と、ノズル孔内に充填材を充填する工程と、マスキングテープを除去する工程と、ノズル形成基板の表面に撥液膜(撥インク性樹脂皮膜)を形成する工程と、充填材を除去する工程とからなる方法が記載されている。
特開2008−105231号公報 特開2007−261070号公報 特開2000−108359号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、ノズル形成基板にノズル孔が形成されているため、該ノズル形成基板の表面にプラズマ重合膜で構成される中間層(下地層)を形成する際、ノズル孔の内壁面にも中間層(プラズマ重合膜)が形成されてしまい、その中間層の表面に撥液膜が形成されると、本来親液性が要求されるノズル孔の内壁面の一部(又は全部)に撥液性がもたられることになる。その結果、ノズル毎にインクの吐出性能がばらついてしまい、信頼性の低下を招いてしまう。
また、特許文献1に記載の方法では、ノズル形成基板の構成材料の1つとしてシリコン系材料が用いられているが、シリコン系材料で構成されるノズル形成基板(即ち、シリコン基板)に対して酸素プラズマ処理が行われると、シリコン露出面が酸化されてしまい、シロキサン結合が形成しやすくなる。このため、中間層(プラズマ重合膜)の有無にかかわらず、ノズル孔の内壁面に撥液膜が形成されてしまうことになり、上述と同様の問題を引き起こす。
一方、特許文献2に記載の方法では、ノズル形成基板の表面に撥液膜が直接形成されているため、ノズル形成基板に対する撥液膜の密着性は低く、耐擦性の面で問題がある。
また、特許文献2に記載の方法では、図6(a)に示すように、ノズル形成基板900の表面(図6において上面)及びノズル孔902の内壁面に撥液膜904を形成した後、ノズル形成基板900の表面側(即ち、撥液膜904上)にマスキングテープ906を貼り付けて、ノズル形成基板の裏面(図6において下面)側からプラズマ処理を行ってノズル孔902における撥液膜904を除去する際、プラズマ処理による除去が進みすぎると、図6(b)に示すように、ノズル孔902の開口周辺部902aの撥液膜904までも過剰に除去されてしまい、インクの吐出性能及び信頼性を低下させる要因となる。
更に、特許文献2に記載の方法では、ノズル形成基板の表面に形成された撥液膜上にマスキングテープを貼る場合、撥液膜の特性からマスキングテープが撥液膜に完全に密着しない場合があり、その結果、撥液性にムラが生じやすいという問題もある。
また、特許文献1に記載の方法と特許文献2に記載の方法とを組み合わせても、以下のような問題がある。
まず、特許文献1及び特許文献2を組み合わせた方法について、図7を参照しながら説明する。
まず、ノズル形成基板900の表面にプラズマ重合膜で構成される中間層910を形成する(図7(a))。このとき、ノズル形成基板900にノズル孔902が形成されているため、ノズル孔902の内壁面にも中間層(プラズマ重合膜)910が形成される。
次に、ノズル形成基板900の表面側(即ち、中間層910上)にマスキングテープ906を貼り付けて、ノズル形成基板900の裏面側から酸素プラズマ処理を行い、ノズル孔902における中間層(プラズマ重合膜)910を除去する(図7(b))。そして、ノズル形成基板900からマスキングテープ906を剥離する。
次に、中間層910に酸化処理を施し、水酸基及び/又は吸着水を導入した後、酸化処理が施された中間層910に撥液膜904を形成する(図7(c))。このとき、ノズル形成基板900がシリコン系材料で構成される場合には、上述のとおり、酸素プラズマ処理が行われると、シリコン露出面が酸化されてしまい、シロキサン結合が形成しやくなる。その結果、ノズル孔902の内壁面にも撥液膜904が形成されてしまう。
次に、ノズル形成基板900の表面側(即ち、撥液膜904上)にマスキングテープ912を貼り付けて、ノズル形成基板900の裏面側から酸素プラズマ処理を行い、ノズル孔902の内壁面に付着している撥液膜904を除去する(図7(d))。そして、ノズル形成基板900からマスキングテープ912を剥離する。
こうして、ノズル形成基板900の表面に中間層(プラズマ重合膜)910を挟んで撥液膜904を形成することができる(図7(e))。
このような方法によれば、ノズル形成基板900の表面側に形成される撥液膜904の密着性が高く、また、ノズル孔902の内壁面に形成される中間層910や撥液膜904は酸素プラズマ処理によって確実に除去されるので、インクの吐出性能及び信頼性の向上を期待することができる。
しかしながら、上記方法では、製造プロセスの増加や複雑化を招くことなり、結果的にコストアップを招く要因となる。また、図7(b)に示すように、中間層910上に貼り付けたマスキングテープ906を剥離する際、中間層910の表面にテープ残渣が残り、その結果、撥液膜904の密着性、均一性を低下させてしまう。同様に、図7(d)に示すように、撥液膜904上に貼り付けたマスキングテープ912を剥離する際、撥液膜904の表面にテープ残渣が残り、その結果、吐出面における均一な撥液性が損なわれ、インクの吐出性能やメンテナンス性を低下させてしまう。更に、ノズル孔902の内壁面に形成された中間層910や撥液膜904を除去する際、プラズマ処理による過剰な除去によって、図8(a)、(b)に示すように、ノズル孔902の開口周辺部における中間層910や撥液膜904を除去してしまい、インクの吐出性能及び信頼性の低下をもたらす要因となる。
また、ノズル孔の内壁面に中間層(プラズマ重合膜)や撥液膜が形成されるのを防止するために、特許文献3に記載の方法の如く、中間層や撥液膜を形成する前に、ノズル形成基板の裏面側(吐出面側と反対側)から充填剤を充填しておく方法も考えられるが、充填剤の硬化のための紫外線照射による対象物の形状限定や、熱処理による対象物の素材限定などの問題が生じる。また、充填剤を充填する方法では、保護膜を形成する方法に比べて、材料消費の面で不利である。更に、撥液膜形成後に充填剤を除去する際に、完全な除去が困難であり、且つ、有機溶剤等の環境に影響のある薬液を使用する必要があるという問題もある。
また、図9に示すように、複数のノズル孔902に連通するインク流路920から充填剤を投入して、各ノズル孔902に充填剤を充填する場合、インク流路920から離れた遠端側(図9において右側)のノズル孔902には充填剤が十分に充填されなかったり、近端側(図9において左側)のノズル孔902から充填剤がはみだしたりする可能性がある。このように、各ノズル孔902に充填剤が均一に充填されないと、ノズル毎に撥液特性が異なり、その結果、インクの吐出性能及び信頼性の低下を招く要因となる。
また、ノズル孔の内壁面に付着したフッ素樹脂を除去する方法として、撥液膜を有するノズル形成基板の表面側にシリコーンゴムやフッ素ゴムからなる弾性体板を貼付した後、プラズマ環境にさらしてノズル孔内部及びノズル形成基板裏面側の撥液膜を除去する方法や、撥液膜を有するノズル形成基板の表面をドライフィルムでマスキングし、プラズマ環境にさらしてノズル孔内部及びノズル形成基板裏面側の撥液膜を除去し、その後、酢酸ブチルによってドライフィルムを溶解除去する方法等がある。撥液膜を有するノズル形成基板表面にシリコーンゴムやフッ素ゴムからなる弾性体板を貼付する技術を採用すると生産性が悪く、また、酢酸ブチルによってドライフィルムを溶解除去する方法を採用すると、環境負荷の問題が生じる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、孔部を有する基板(ノズル形成基板など)の表面側に、密着性が高く、耐擦性に優れる撥液膜を均一に形成することができ、生産性を向上させることができる撥液膜形成方法を提供することを目的とする。
また、前記撥液膜方法により形成された撥液膜を備え、インクの吐出性能及び信頼性に優れたノズルプレート、インクジェットヘッド、及び電子機器を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明に係る撥液膜形成方法(請求項1に記載の発明)は、孔部を有する基材の表面に撥液性を有する撥液膜を形成する撥液膜形成方法であって、前記基材の表面にマスキングテープを貼り付け、前記孔部の内壁面に窒素含有化合物からなる保護膜を形成し、前記マスキングテープを除去する保護膜形成工程と、前記基材の表面にプラズマ重合膜で構成される中間層を形成する中間層形成工程と、前記中間層に酸化処理を施し、水酸基及び又は吸着水を導入する酸化処理工程と、前記酸化処理が施された前記中間層に前記撥液膜を形成する撥液膜形成工程と、を含み、前記中間層及び/又は前記撥液膜はプラズマ重合法によって形成され、前記中間層及び/又は前記撥液膜の形成と同時に前記保護膜の除去が行われ、前記撥液膜の形成完了まで保護膜が残存することを特徴とする。
本発明によれば、中間層及び撥液膜を形成する前に孔部の内壁面に窒素含有化合物からなる保護膜が形成されるので、孔部の内壁面に中間層及び撥液膜が形成されるのを防ぎつつ、密着性が高く、耐擦性に優れる撥液膜を基材の表面側に均一に形成することができる。また、中間層及び/又は撥液膜の形成と同時に保護膜の除去が行われ、撥液膜の形成完了まで保護膜が残存するので、生産性を向上させることができる。
なお、本明細書において、「A及び/又はB」とは「A及びBの少なくとも一方」を意味する。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の撥液膜形成方法の一態様に係り、前記撥液膜の形成完了と同時に前記保護膜の全てが除去されることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の撥液膜形成方法の一態様に係り、前記保護膜形成工程は、前記撥液膜の形成完了と同時に前記保護膜の全てが除去されるように、前記保護膜に必要な膜厚を算出し、該膜厚を有する保護膜を形成することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撥液膜形成方法の一態様に係り、前記保護膜、前記中間層、及び前記撥液膜はプラズマ重合法によって形成されるとともに、前記中間層はプラズマ照射によって酸化処理が行われることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の撥液膜形成方法の一態様に係り、前記保護膜、前記中間層、及び前記撥液膜の形成、並びに前記中間層の酸化処理は、同一のプラズマ処理装置を用いて行われることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撥液膜形成方法において、前記保護膜は、アセトニトリル膜からなることを特徴とする。
また、前記目的を達成するために、本発明に係るノズルプレート(請求項に記載の発明)は、請求項1乃至のいずれか1項に記載の撥液膜形成方法によって形成された撥液膜を備えたことを特徴とする。
また、前記目的を達成するために、本発明に係るインクジェットヘッド(請求項に記載の発明)は、請求項に記載のノズルプレートを備えたことを特徴とする。
また、前記目的を達成するために、本発明に係る電子機器(請求項に記載の発明)は、請求項に記載のインクジェットヘッドを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、中間層及び撥液膜を形成する前に孔部の内壁面に窒素含有化合物からなる保護膜が形成されるので、孔部の内壁面に中間層及び撥液膜が形成されるのを防ぎつつ、密着性が高く、耐擦性に優れる撥液膜を基材の表面側に均一に形成することができる。また、中間層及び/又は撥液膜の形成と同時に保護膜の除去が行われ、撥液膜の形成完了まで保護膜が残存するので、生産性を向上させることができる。
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置を示した全体構成図である。同図に示すように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数のインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」ともいう。)12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、各ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラー31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が平面をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラー31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー34が設けられており、この吸着チャンバー34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラー31、32の少なくとも一方にモータ(不図示)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1において、時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は、図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。従って、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹きつけ、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている。印字部12を構成する各ヘッド12K、12C、12M、12Yは、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている(図2参照)。
記録紙16の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図1の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応したヘッド12K、12C、12M、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出するヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色のヘッド12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(不図示)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成されている。
また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
〔ヘッドの構造〕
次に、ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造について説明する。なお、各ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造は共通しているので、以下では、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
図3(a)は、ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b)は、その一部の拡大図である。また、図3(c)は、ヘッド50の他の構造例を示す平面透視図である。図4は、インク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図3(a)、(b)中、IV−IV線に沿う断面図)である。
記録紙面上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図3(a)、(b)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙搬送方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
紙搬送方向と略直交する方向に記録紙16の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図3(a)の構成に代えて、図3(c)に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドブロック(ヘッドチップ)50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙16の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
図4に示すように、各ノズル51は、ヘッド50のインク吐出面50aを構成するノズルプレート60に形成されている。ノズルプレート60は、例えば、Si、SiO2、SiN、石英ガラスのようなシリコン系材料、Al、Fe、Ni、Cuまたはこれらを含む合金のような金属系材料、アルミナ、酸化鉄のような酸化物材料、カーボンブラック、グラファイトのような炭素系材料、ポリイミドのような樹脂系材料で構成されている。
また、ノズルプレート60の表面(インク吐出側の面)には、インクの付着を防止するために、インクに対して撥液性を有する撥液膜62が形成されている。このような撥液膜62の形成方法については、後で説明する。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインク供給タンク(不図示)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
圧力室52の天面を構成し共通電極と兼用される振動板56には個別電極57を備えた圧電素子58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによって圧電素子58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
本例では、ヘッド50に設けられたノズル51から吐出させるインクの吐出力発生手段として圧電素子58を適用したが、圧力室52内にヒータを備え、ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用することも可能である。
かかる構造を有するインク室ユニット53を図3(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
また、本発明の適用範囲はライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、記録紙16の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを記録紙16の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると記録紙16を幅方向と直交する方向(副走査方向)に所定量だけ移動させて、次の印字領域の記録紙16の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して記録紙16の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
〔撥液膜形成方法〕
次に、本発明に係る撥液膜形成方法の一例について説明する。
図5は、本発明に係る撥液膜形成方法を説明するための工程図である。ここでは、図5(g)に示すように、ノズル形成基板100(図4のノズルプレート60に相当)の表面側(インク吐出面側)に撥液膜110(図4の撥液膜62に相当)を形成する場合について説明する。
本発明に係る撥液膜形成方法は、(1)ノズル形成基板100のノズル孔102の内壁面に保護膜106を形成する保護膜形成工程と、(2)ノズル形成基板100の表面にプラズマ重合膜で構成される中間層108を形成する中間層形成工程と、(3)ノズル形成基板100の表面に形成された中間層(プラズマ重合膜)108に酸化処理を施す酸化処理工程と、(4)酸化処理が施された中間層108の表面に撥液膜110を形成する撥液膜形成工程とで構成される。以下、各工程について詳しく説明する。
(1)保護膜形成工程
まず、図5(a)、(b)に示すように、ノズル孔102を有するノズル形成基板100の表面側(インク吐出面側)にマスキングテープ等の吐出面保護部材104を貼り付ける。
ノズル形成基板100におけるノズル孔102の形状は、特に限定されるものではないが、インク吐出方向(図5において上方向)に向かって先細となるテーパ状、或いは、漏斗状(図5では漏斗状のノズル孔を一例として図示)に構成されることが、吐出安定化を図る観点から好ましい。
また、ノズル形成基板100を構成する材料は、特に限定されるものではないが、シリコン系材料、金属系材料、酸化物材料、炭素系材料、樹脂系材料で構成されることが好ましく、その中でもシリコン系材料が特に好ましい。後述する酸化処理工程において酸素プラズマ照射による酸化処理が行われる場合でも、ノズル孔102の内壁面に保護膜106が形成されているので、ノズル形成基板100がシリコン系材料で構成される場合(いわゆるシリコン基板が用いられる場合)であっても、シリコン露出面が酸化されることがない。このため、シロキサン結合が形成されることがなく、ノズル孔102の内壁面に撥液膜110が形成されるのを防止することができる。
吐出面保護部材104として、基材の表面に再剥離型アクリル系粘着剤を有するマスキングテープを用いる態様が好ましい。この場合、弾性体板を貼付する技術ではなく、マスキングテープを貼り付ける技術を採用しているので生産性が高く、酢酸ブチル等の溶剤を用いないので環境負荷の問題が生じず、また、基材の表面に再剥離型アクリル系粘着剤を有するマスキングテープを用いているのでマスキングテープの剥離が容易であり、この点でも生産性が高い。
また、基材がポリエステルフィルム又はポリエチレンフィルムであるマスキングテープを用いる態様が好ましい。本発明の撥液膜形成方法においては、マスキングテープの基材として種々の材質のものを用いることができるが、マスキングテープの基材としてポリエステルフィルム又はポリエチレンフィルムを用いることにより、プラズマ処理の影響を受けても強度を維持できる。
このようにして吐出面保護部材104をノズル形成基板100の表面に貼り付けた後、図5(c)に示すように、ノズル孔102の内壁面に保護膜106を成膜する。
保護膜106としては、中間層108及び撥液膜110の形成完了まで(図5(g)参照)、ノズル孔102の内壁面に存在できる程度のプラズマ耐性、並びに撥液膜形成材料と反応しない表面を有するものを選定する必要がある。
特に本実施形態においては、保護膜106として、撥液膜110とシロキサン結合しないものが好ましく、例えば、アセトニトリル、エチレンジアミン等の窒素含有化合物が好適である。
保護膜106の成膜方法は、特に限定されるものではないが、プラズマ重合法、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などのドライプロセス法が好適である。ドライプロセス法で保護膜106を成膜することにより、ノズル孔102などの微細な流路の内壁面にも均一に成膜でき、且つその後の除去も容易である。
これらの中でも、プラズマ重合法が特に好ましい。後述するように、保護膜形成から撥液膜形成まで全ての工程を1つのプラズマ処理装置で処理することができ、信頼性、生産性を向上させることができる。
プラズマ重合法は、基板が設置された真空チャンバ内に電界を発生させるとともに、モノマーをガス状でキャリアガスとともに供給し、発生したプラズマをプラズマ重合により基板の表面に成膜する方法である。
例えば、アセトニトリルで構成される保護膜(アセトニトリル膜)をプラズマ重合法で成膜する場合、プラズマ重合膜の重合方式として、RF電源、外部電極方式によるアフターグロー(After glow)方式を使用し、プラズマ処理装置を用いて、流速:20cm3/min、RF:200Wの条件下で3分間、シリコン基板上にアセトニトリルをモノマーとしてプラズマ重合膜を成膜することにより、154nmの膜厚を有する保護膜(アセトニトリル膜)を得ることができる。なお、膜厚測定には、エリプソンメーターを用いて測定した。
このように保護膜106をノズル孔102の内壁面に形成することにより、この後に形成される中間層108や撥液膜110がノズル孔102の内壁面に成膜されるのを防止することができる。
また、上述したように、保護膜106として、プラズマ重合法でアセトニトリル膜を成膜する場合には、アセトニトリル膜の表面に高密度のアミノ基が形成され、中間層や撥液膜にシリコーン材料を使用しても、アセトニトリル膜にシロキサン結合が形成されないので、保護膜(アセトニトリル膜)表面上に中間層や撥液膜が成膜されるのを防ぐことができる。
ところで、プラズマ重合法では、電圧等の成膜条件によって、成膜反応が優先的進行する場合と、エッチング反応が優先的に進行する場合があり、後工程においてプラズマ重合法で中間層108や撥液膜110を形成(成膜)する際、これらの形成と同時に保護膜106を除去することが可能である。
そこで、本実施形態では、保護膜形成工程にて保護膜106を形成する際、撥液膜110の形成完了まで保護膜106が残存するように(より好ましくは、撥液膜110の形成完了と同時に保護膜106の全てが除去されるように)、保護膜106のエッチングレートから必要な膜厚を算出し、当該膜厚を有する保護膜106を形成する態様が好ましい。
このようにしてノズル孔102の内壁面に保護膜106を形成した後、図5(d)に示すように、吐出面保護部材(マスキングテープ)104を除去する。
(2)中間層形成工程
次に、図5(e)に示すように、ノズル形成基板100の表面にプラズマ重合膜で構成される中間層108を成膜する。
中間層(プラズマ重合膜)108の構成材料や形成方法(成膜方法)については、特開2008−105231号公報明細書に記載されている材料、方法を好ましく用いることができる。
即ち、中間層108の構成材料としては、例えば、オルガノポリシロキサン等のシリコーン材料、アルコキシシラン等のシラン化合物が挙げられる。このうち、シリコーン材料が好ましく、オルガノポリシロキサンが特に好ましい。中間層108にオルガノポリシロキサンを用いることにより、シロキサン結合(Si−O)を骨格とした構造を有するので、ノズル形成基板100の構成材料(シリコン系材料など)と結合しやすく、容易にプラズマ重合膜を形成することができる。
オルガノポリシロキサンの中でも、アルキルポリシロキサンを用いることが好ましい。アルキルポリシロキサンは高分子化合物であるため、ノズル形成基板100上に高分子膜を形成することができる。また、高分子中にアルキル基を有するため、高分子構造に立体障害が少なく、分子が規則正しく配列した膜を形成することができる。また、アルキルポリシロキサンの中でも、特にジメチルポリシロキサンが好ましい。ジメチルポリシロキサンは、製造が容易なため、容易に入手することができる。また、反応性が高いため、後述するような酸化処理を中間層108に施したときに、メチル基を簡単に切断することができる。
また、中間層(プラズマ重合膜)108の形成方法としては、プラズマ重合法、蒸着法、シランカップリング剤による処理、ポリオルガノシロキサンを含有する液状材料による処理等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの方法の中でも、プラズマ重合法を用いるのが好適である。プラズマ重合法を用いることにより、オルガノポリシロキサンのプラズマが発生するため、均質かつ均一な膜厚の中間層(プラズマ重合膜)108を形成することができる。
(3)酸化処理工程
次に、露点が−40〜20℃(好ましくは−40〜−20℃)の処理ガス雰囲気下で、中間層(プラズマ重合膜)108の表面に酸化処理を施し、水酸基及び/又は吸着水を導入する。
処理ガスに対する条件や酸化処理の方法などについては、特開2008−105231号公報明細書に記載されている条件、方法などを好ましく用いることができる。
即ち、酸化処理の方法として、紫外線、プラズマなどのエネルギー線を照射する方法を適用することができる。この方法によれば、エネルギー線が照射される領域にのみ酸化処理を施すことができるので、SiO化を効率的に行うことができる。
特に本実施形態においては、エネルギー線を照射する方法の中でも、プラズマ照射を用いて酸化処理を行う方法が好適である。酸化処理としてプラズマ照射を用いる場合、プラズマを発生させるガス種としては、例えば、酸素ガス、窒素ガス、水素、不活性ガス(アルゴンガス、ヘリウムガス等)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
プラズマ照射を行う雰囲気は、大気中または減圧状態のいずれであってもよいが、大気中とするのが好ましい。これにより、アルキル基とSiとの結合が切断されるのとほぼ同時に、大気中に存在する酸素分子から酸素原子が効率よく導入されるため、ポリオルガノシロキサンをより迅速にSiOに変化させることができる。
特に、プラズマ照射には、プラズマを発生するガス種として、酸素ガスを含むガスを用いる酸素プラズマ照射を用いるのが好適である。酸素プラズマ照射によれば、酸素プラズマがアルキル基とSiとの結合を切断するとともに、Siと酸素原子との結合に利用されるため、ポリオルガノシロキサンをより確実にSiOに変化させることができる。
また、プラズマ照射は、密閉条件(例えば、チャンバ内)または開放条件のいずれの条件で行ってもよいが、密閉条件とするのが好ましい。これにより、中間層(プラズマ重合膜)108が、プラズマ密度のより高い状態で酸化処理されるため、より多くの水酸基を中間層(プラズマ重合膜)108に導入することができる。
(4)撥液膜形成工程
次に、図5(f)、(g)に示すように、酸化処理が施された中間層(プラズマ重合膜)108の表面に撥液膜110を形成する。
撥液膜110としては、中間層(プラズマ重合膜)108とシロキサン結合が可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、金属アルコキシド系撥液膜、フッ素含有プラズマ重合膜、シリコーン系プラズマ重合撥液膜などを適用することでき、これらの中でも、フッ素含有プラズマ重合膜、シリコーン系プラズマ重合撥液膜などのプラズマ重合膜が特に好ましい。
プラズマ重合膜で構成される撥液膜の形成方法としては、特開2004−106203号公報明細書に記載される方法を好ましく用いることができる。即ち、プラズマ重合膜(撥液膜)の形成は、従来公知のプラズマ処理装置を用いて行うことができる。原料としては、液状シロキサンの如き低分子量のシロキサンを気化させたものを原料ガスとして用いる。必要に応じて、この原料ガスにアルゴンやヘリウム等の希ガス、酸素や二酸化炭素等の酸化力を有するガスなどを混合させる。これにより、原料を重合させた状態でノズル形成基板100に積層することができる。
プラズマ重合膜で構成される撥液膜は、上述のとおり、低分子量のシロキサン(シロキサン結合を有する化合物)を原料とし、これをプラズマ重合させることにより形成されるもので、金属塩に対する耐性に優れており、該金属塩をインク凝集剤として含有する水性前処理液(金属塩溶液)用のノズルプレートの撥液層として最適である。
また、金属アルコキシド系撥液膜の形成方法としては、特開2008−105231号公報明細書に記載される方法を好ましく用いることができる。即ち、液相プロセスや気相プロセスのような各種プロセスを用いて行うことができ、その中でも液相プロセスを用いることが好ましく、比較的簡単な工程により、金属アルコキシドで構成される撥液膜を形成することができる。
上述した中間層形成工程や撥液膜形成工程において、プラズマ重合法で中間層108及び/又は撥液膜110を形成する場合、そのときに使用するプラズマの効果によって、ノズル孔102の内壁面に形成した保護膜106の除去を中間層108及び/又は撥液膜110の形成と同時に行うことができる。即ち、1つのプラズマ処理装置で中間層108及び/又は撥液膜110の成膜及び保護膜106の除去が可能となる。
図5(d)〜(g)では、プラズマ重合法で中間層108及び撥液膜110が形成され、それに伴って、保護膜106が徐々に除去され、薄膜化されていく様子を一例として示している。
なお、撥液膜110を形成した後、保護膜106が全て除去されずに残存している場合には、保護膜除去工程として、保護膜106の除去を行えばよい。具体的には、プラズマ処理装置を用いて撥液膜110の形成が完了した時点で、当該プラズマ処理装置のモノマー(撥液膜形成材料)の供給を停止して、酸素プラズマのみに変更し、保護膜106を除去する。
こうして、図5(g)に示すように、ノズル形成基板100の表面側(インク吐出面側)に撥液膜110を形成することができる。
本実施形態によれば、ノズル形成基板100の表面に吐出面保護部材(マスキングテープ)104を貼り付け、ノズル孔102の内壁面に保護膜106を形成し、吐出面保護部材104を除去した後に、中間層108や撥液膜110の形成が行われるので、ノズル孔102の内壁面に中間層108や撥液膜110が形成されるのを防ぐことができる。
また、ノズル形成基板100の表面に形成した中間層(プラズマ重合膜)108に酸化処理(好ましくはプラズマ照射による酸化処理)を施し、水酸基及び/又は吸着水を導入し、酸化処理が施された中間層108に撥液膜110を形成する。これにより、ノズル形成基板100の表面側に、密着性が高く、耐擦性に優れた撥液膜110を均一に形成することができる。
また、中間層108及び/又は撥液膜110の形成と同時(好ましくは撥液膜110の形成完了と同時)にノズル孔102の内壁面に形成した保護膜106の除去が行われるので、生産性を向上させることができる。
この結果、インクジェットヘッドにおいて重要なインクの吐出性能及び信頼性を向上させることができ、画像品質の向上を図ることが可能となる。
本実施形態において、保護膜106、中間層108、及び撥液膜110をプラズマ重合法で形成するとともに、中間層108の酸化処理をプラズマ照射(好ましくは酸素プラズマ)を用いて行う態様が好ましく、保護膜形成工程、中間層形成工程、酸化処理工程、及び撥液膜形成工程の全工程を1つのプラズマ処理装置で処理を行うことができる。これにより、撥液膜形成を一貫した生産工程で行うことが可能となり、生産性、信頼性を向上させることができる。
なお、本発明に係る撥液膜形成方法について、ノズル形成基板に対して撥液膜を形成する場合を一例として説明したが、これに限定されず、インク流路などの孔部が形成された基板(構造体)に撥液膜を形成する場合についても好適に適用することが可能である。
以上、撥液膜形成方法、ノズルプレート、インクジェットヘッド、及び電子機器について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
インクジェット記録装置の概略を示す全体構成図 図1に示すインクジェット記録装置の印字部周辺の要部平面図 ヘッドの構造例を示す平面透視図 図3中IV−IV線に沿う断面図 本発明に係る撥液膜形成方法を説明するための工程図 特許文献2に記載の方法における問題点を説明するための図 特許文献1及び2を組み合わせた方法を説明するための図 特許文献1及び2を組み合わせた方法の問題点を説明するための図 充填剤を充填する場合の問題点を説明するための図
符号の説明
10…インクジェット記録装置、50…ヘッド、51…ノズル、52…圧力室、54…インク供給口、55…共通液室、58…圧電素子、60…ノズルプレート、62…撥液膜、100…ノズル形成基板、102…ノズル孔、104…吐出面保護部材、106…保護膜、108…中間層、110…撥液膜

Claims (9)

  1. 孔部を有する基材の表面に撥液性を有する撥液膜を形成する撥液膜形成方法であって、
    前記基材の表面にマスキングテープを貼り付け、前記孔部の内壁面に窒素含有化合物からなる保護膜を形成し、前記マスキングテープを除去する保護膜形成工程と、
    前記基材の表面にプラズマ重合膜で構成される中間層を形成する中間層形成工程と、
    前記中間層に酸化処理を施し、水酸基及び又は吸着水を導入する酸化処理工程と、
    前記酸化処理が施された前記中間層に前記撥液膜を形成する撥液膜形成工程と、を含み、
    前記中間層及び/又は前記撥液膜はプラズマ重合法によって形成され、
    前記中間層及び/又は前記撥液膜の形成と同時に前記保護膜の除去が行われ、前記撥液膜の形成完了まで保護膜が残存することを特徴とする撥液膜形成方法。
  2. 請求項1に記載の撥液膜形成方法において、
    前記撥液膜の形成完了と同時に前記保護膜の全てが除去されることを特徴とする撥液膜形成方法。
  3. 請求項2に記載の撥液膜形成方法において、
    前記保護膜形成工程は、前記撥液膜の形成完了と同時に前記保護膜の全てが除去されるように、前記保護膜に必要な膜厚を算出し、該膜厚を有する保護膜を形成することを特徴とする撥液膜形成方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撥液膜形成方法において、
    前記保護膜、前記中間層、及び前記撥液膜はプラズマ重合法によって形成されるとともに、前記中間層はプラズマ照射によって酸化処理が行われることを特徴とする撥液膜形成方法。
  5. 請求項4に記載の撥液膜形成方法において、
    前記保護膜、前記中間層、及び前記撥液膜の形成、並びに前記中間層の酸化処理は、同一のプラズマ処理装置を用いて行われることを特徴とする撥液膜形成方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撥液膜形成方法において、
    前記保護膜は、アセトニトリル膜からなることを特徴とする撥液膜形成方法。
  7. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の撥液膜形成方法によって形成された撥液膜を備えたことを特徴とするノズルプレート。
  8. 請求項に記載のノズルプレートを備えたことを特徴とするインクジェットヘッド。
  9. 請求項に記載のインクジェットヘッドを備えたことを特徴とする電子機器。
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