JP5081175B2 - 鋼材の耐水素割れ性の評価方法 - Google Patents

鋼材の耐水素割れ性の評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼材の耐水素割れ性の評価方法に関するものであり、特に、引張強度が800MPa以下と比較的低強度を示す鋼材の耐水素割れ性の評価方法に関するものである。
尚、以下では、比較的低強度を示す鍛造用鋼(例えばクランク軸に使用される鍛造用鋼)を例に説明するが、本発明は、上記強度の鋼材の具体的種類まで限定されない。
船舶や発電機用等の動力伝達用大型クランク軸等に使用される鍛造用鋼として、従来から、ISO規格の36CrNiMo6、DIN規格の32CrMo12、またはISO規格の42CrMo4に代表されるいわゆるCr−Mo鋼が使用されている。
船舶のエンジンや発電機の高性能化に伴い、より軽量で高性能の品質、つまりより高疲労強度を示す製品が求められている。特にクランク軸は、その使用中に過酷な繰り返し応力が付加される。よって、疲労強度を高める改善策として、疲労破壊の起点となる介在物(MnS等)の極力低減された高清浄なCr−Mo鋼を該クランク軸に用いることが挙げられる。しかし、この様に高清浄度化を進めると、水素割れが発生しやすいといった問題がある。
そこで、水素割れを抑制すべく、製錬技術改善および鋼の材質改善の両方から検討されている。精錬技術の改善として、例えば溶鋼の精錬時における水素量の上限値を規制し、それを超えるときには脱水素処理することが行われている。また材質の改善として、鋼中S量を増加させ、鋼中に水素トラップサイトとなるMnSを疲労破壊の原因とならない形態で存在させる技術などが知られている。現在これらの技術を適用することにより、耐水素割れ性のより高いCr−Mo鋼からなる大型の鍛造加工品(鍛工品)が製造されている。
この様に、耐水素割れ性の改善技術は材質および精錬技術の両方から進んでいるが、該改善後の鋼の耐水素割れ性を、精度よく迅速かつ簡便に評価することができなければ、上記技術による耐水素割れ性の改善効果を確認することができず、最終製品の品質を保証することが難しい。
従って、耐水素割れ性に優れた鋼材を製造するにあたっては、上記改善技術を確立すると共に、改善効果を確認するための評価技術が必要である。
これまでにも、高強度鋼の水素脆性を評価する方法(この場合、鋼製品の使用中に、外界から鋼中に侵入する「外部起因型水素」が影響を与えると言われており、一般的に「遅れ破壊」と言われる現象の評価方法である)が、種々提案されている。
例えば非特許文献1には、高力ボルトや線材を対象に、ボルト形状や棒状の試験片を酸等に浸漬して水素チャージした後、大気雰囲気中で一定荷重を負荷する定荷重試験を行って、限界水素量や限界応力等を求め、耐遅れ破壊性を評価する方法が提案されている。
しかし上記定荷重試験では、導入させる拡散性水素量に限界がある。また、非特許文献1の様な定荷重試験では、定荷重試験中に歪みの局在化が試験時間の経過と共に緩和してしまい、実環境に即した試験が行えない、といった問題がある。更に上記方法では、20%の塩酸溶液に浸漬後、大気中で遅れ破壊試験を行っているため、チャージされた試験片中の水素が時間の経過と共に減少し、試験時に希望する拡散性水素量を確保することが難しいといった問題がある。
非特許文献2では、棒状の試験片を電解質(チオシアン酸アンモニウム)溶液中に浸漬して水素チャージしながら、一定荷重を付加する定荷重試験を行い、破断時間を求めて遅れ破壊特性を評価する方法が提案されている。しかしながらこの方法では、電解質溶液の濃度を変化させたとしても導入できる水素量に限界がある。また、試験片中の拡散性水素量を任意の量に調整することが難しいため、条件として拡散性水素量を変化させる試験には採用できない、といった問題がある。
特許文献1には、ボルト(試験片)に張力を加えた状態で電解質を含む水溶液に浸漬し、負の電圧を周期的に変動させながら付与することにより、上記試験片の耐遅れ破壊性を評価する技術が開示されている。
しかしこの方法は、付与する張力が鋼の降伏点の80%以上と高い領域のみを対象としているため、大型鍛工品で問題となる低応力下における割れ(いわゆる置き割れなど)を含めた評価を行うことが難しい。また、評価に必要な時間が720時間と長時間であるため、迅速に評価できるとは言い難い。更に、試験時間が長時間化すると、試験片表面が不活性化して水素導入量が低下するなどの問題が生じる。
特許文献2では、Hv250以上の硬さを有する鋼材から採取した試験片、および該試験片と同一形状のダミー試験片に対し、同一条件の電解処理により同一量の拡散性水素をチャージしながらまたはチャージした後めっき膜を形成し、定荷重試験または変動荷重試験を実施する方法が開示されている。
しかしながらこの方法では、鋼材の耐遅れ破壊性を評価する試験片の他に、同一形状のダミー試験片が必要なため、加工・分析を行うのに必要な作用が倍となり、簡便性、迅速性に乏しい。また、上記特許文献2に示された周波数領域では疲労試験相当の振幅が付与されてしまうため、鋼中に導入した水素以外の影響(例えば粗大介在物等の影響)を含んでしまい、水素のみの影響を評価することができない。
また、低歪み速度で応力を負荷して試験片(高強度鋼)を強制破断させ、該高強度鋼の遅れ破壊を迅速に評価する、SSRT(Slow Strain Rate Technique)法(低歪み速度引張試験法)が提案されている。しかし、上記方法では、水素が鋼中で濃化する前に塑性領域まで応力が加わるため、本発明で対象とするような弾性域での評価が行えない等の問題がある。
更に、大型鍛工品の水素割れは、鋼中に存在するMnS等の粗大介在物(大きさ300〜400μm程度)を起点として生じる。詳細には、大型鍛工品に繰り返しねじり応力が付与されることで、鋼中に存在する粗大介在物(例えばMnS等)に歪みが集中し、破壊の起点となる。粗大介在物の中でもMnSは、割れ起点となるだけでなく鋼中水素トラップサイトとしても働くため、歪みが加わった場合に割れの起点となりやすい。よって、上記MnS等の粗大介在物が水素割れに及ぼす影響も考慮する必要がある。
特開2004−309197号公報 特開2006−029977号公報
N.Suzuki et al.,「Wire J.International」,1986年,Vol.19,p.36−47 高井、他3名,「鉄と鋼」,1993年,Vol.79,p.685−691
耐水素割れ性の評価方法として種々提案されているが、上述した様な問題が依然として残っている。また上記方法は、いずれも高強度鋼材(引張強度が980MPaを超えるような高力ボルトや高強度鋼線、高強度鋼板)を評価対象としたものであるが、これらの方法を、引張強度が800MPa以下の、通常、遅れ破壊が問題とならないような強度レベルの鋼材(例えば大型鍛工品に用いられる鋼材)に適用した場合、試験条件が実情に沿わず、耐水素割れ性の評価方法の信頼性や、鋼材が実際に示す耐水素割れ性との相関性が低下する、といった問題がある。
従って、上記高強度鋼材の評価方法とは別個独立に、引張強度が800MPa以下である比較的低強度の鋼材独自の耐水素割れ性の評価方法を確立する必要がある。
本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、引張強度が800MPa以下と比較的引張強度が低くかつ降伏強度の低い鋼材(例えば大型鍛工品の製造に用いる鍛造用鋼)の耐水素割れ性を、精度よく迅速かつ簡便に評価する方法を提供することにある。
本発明に係る耐水素割れ性の評価方法とは、引張強度(TS)が800MPa以下である鋼材の耐水素割れ性の評価方法であって、
上記鋼材に水素チャージしながら、または上記鋼材に水素チャージ後水素逃散防止処理を施してから、
該鋼材に対し、歪み速度10−6〜10−2/minにて、下記式(1)および式(2)を満たす狙い付加応力σ(MPa)±1〜30%の振幅応力を付加し、
鋼材に割れが生じるまでの時間で該鋼材の耐水素割れ性を評価するところに特徴を有する(以下、「第1評価方法」ということがある)。
σ=YS×α …(1)
σ<TS …(2)
[式(1)(2)において、σ:狙い付加応力(MPa)、YS:鋼材の降伏強度(MPa)、TS:鋼材の引張強度(MPa)、α:係数(但し、0.5≦α<1.2)である。]
本発明に係る別の耐水素割れ性の評価方法は、引張強度(TS)が800MPa以下である鋼材の耐水素割れ性の評価方法であって、
上記鋼材に水素チャージしながら、または上記鋼材に水素チャージ後水素逃散防止処理を施してから、
該鋼材に対し、歪み速度10−6〜10−2/minにて、下記式(3)および式(4)を満たす狙い付加応力σu(MPa)±1〜30%の振幅応力を付加し、
鋼材に割れが生じるまでの時間で該鋼材の耐水素割れ性を評価するところに特徴を有する(以下、「第2評価方法」ということがある)。
σu=(YS×α)×(1+T) …(3)
σu<TS …(4)
[式(3)(4)において、σu:狙い付加応力(MPa)、YS:鋼材の降伏強度(MPa)、TS:鋼材の引張強度(MPa)、α:係数(但し、0.5≦α<1.2)、T=t×β、t:試験開始からの経過時間(hr)、β:係数(但し、0.0001≦β≦0.1)である。]
本発明に係る別の耐水素割れ性の評価方法は、引張強度(TS)が800MPa以下である鋼材の耐水素割れ性の評価方法であって、
上記鋼材に水素チャージしながら、または上記鋼材に水素チャージ後水素逃散防止処理を施してから、
該鋼材に対し、
(i)歪み速度10−6〜10−2/minにて、下記式(1)および式(2)を満たす狙い付加応力σ(MPa)±1〜30%の振幅応力を1〜50時間付加した後、
(ii)歪み速度10−5〜10−3/minで引張試験を行い、
破断強度または鋼材に割れが生じるまでの時間で、該鋼材の耐水素割れ性を評価するところに特徴を有する(以下、「第3評価方法」ということがある)。
σ=YS×α …(1)
σ<TS …(2)
[式(1)(2)において、σ:狙い付加応力(MPa)、YS:鋼材の降伏強度(MPa)、TS:鋼材の引張強度(MPa)、α:係数(但し、0.5≦α<1.2)である。]
本発明に係る更に別の耐水素割れ性の評価方法は、引張強度(TS)が800MPa以下である鋼材の耐水素割れ性の評価方法であって、
上記鋼材に下記式(5)で表される電流密度Idの電流を通電して電気化学的手法で水素チャージしながら、
該鋼材に対し、歪み速度10−6〜10−2/minにて、下記式(1)および式(2)を満たす狙い付加応力σ(MPa)±1〜30%の振幅応力を付加し、
鋼材に割れが生じるまでの時間で該鋼材の耐水素割れ性を評価するところに特徴を有する(以下、「第4評価方法」ということがある)。
σ=YS×α …(1)
σ<TS …(2)
[式(1)(2)において、σ:狙い付加応力(MPa)、YS:鋼材の降伏強度(MPa)、TS:鋼材の引張強度(MPa)、α:係数(但し、0.5≦α<1.2)である。]
Id=γ(1+t)S …(5)
[式(5)において、Id:電流密度(mA/mm)、γ:係数(但し、0.001≦γ≦0.1)、t:試験開始からの経過時間(hr)、S:試験片の試験部面積(mm)である。]
本発明に係る更に別の耐水素割れ性の評価方法は、引張強度(TS)が800MPa以下である鋼材の耐水素割れ性の評価方法であって、
上記鋼材に水素チャージしながら、または、上記鋼材に水素チャージ後水素逃散防止処理を施してから、
該鋼材に対し、
(i)歪み速度10−6〜10−2/minにて、下記式(1)および式(2)を満たす狙い付加応力σ(MPa)±1〜30%の振幅応力を1〜50時間付加した後、
(ii’)トルク値4〜8kN・m、トルクを付与する周波数10−4〜10−2Hz、かつ振り角度±10°の両振りの条件でねじり応力を与え、
上記鋼材に割れが生じるまでの時間で、該鋼材の耐水素割れ性を評価するところに特徴を有する(以下、「第5評価方法」ということがある)。
σ=YS×α …(1)
σ<TS …(2)
[式(1)(2)において、σ:狙い付加応力(MPa)、YS:鋼材の降伏強度(MPa)、TS:鋼材の引張強度(MPa)、α:係数(但し、0.5≦α<1.2)である。]
本発明によれば、引張強度が800MPa以下(特には700MPa以下)と比較的低強度の鋼材の耐水素割れ性を、精度よく迅速かつ簡便に評価することができる。よって、例えば引張強度が800MPa以下の鍛造用鋼(特には、船舶・発電機等の動力伝達用大型クランク軸の製造に用いる鍛造用鋼)の耐水素割れ性の評価に大変有効である。
実施例で用いる低歪み速度引張試験機の模式側面図である。
本発明者らは、例えば大型鍛工品の製造に用いる鍛造用鋼の様に、引張強度が800MPa以下と引張強度が比較的低くかつ降伏強度も比較的低い鋼材の耐水素割れ性を、精度よく迅速かつ簡便に評価する方法を確立すべく鋭意研究を行った。
具体的には、まず、従来法である一定荷重を試験片に付与する定荷重試験では、上述の通り水素拡散/水素濃化が十分に促進されない、といった問題を解消すべく検討を行った。その結果、鋼中での水素拡散/水素濃化を促進させるには、歪み速度を一定以上とすると共に、狙いの付加応力に対して一定以上の振幅幅を有する応力(振幅応力)を試験片に付加しながら、試験を行うようにすればよいことを見出した。
この様に、応力として一定応力でなく振幅応力を付加することにより、鋼中の水素存在サイト(例えば転位や欠陥など)に変化が生じ続けて水素拡散/水素濃化が促進されると考えられる。
ただし、試験片に振幅幅の過度に大きい振幅応力を付与すると、試験片に疲労が生じて疲労試験となってしまう。また、本発明で対象とする鋼材の水素割れは、従来より検討されている高強度鋼の水素脆性のように、降伏強度以上の応力が付加された状態で生じるのではなく、通常は、降伏強度よりも低い応力が付加された状態で生じることから、弾性域で評価することも必要である。この様な観点から、上記応力の振幅幅と歪み速度をコントロールすることも重要であることを見出した。
以上の思想に基づき、本発明者らは、第1評価方法を確立すると共に、該第1評価方法をもとに、より迅速に評価できる第2〜第5の評価方法を確立した。以下、第1〜第5評価方法について詳細に述べる。
本発明では、まず、第1評価方法として、
引張強度(TS)が800MPa以下の鋼材を対象に、
・鋼材に水素チャージしながら、または、
・鋼材に水素チャージ後水素逃散防止処理を施してから、
該鋼材に対し、歪み速度10−6〜10−2/minにて、下記式(1)および式(2)を満たす狙い付加応力σ(MPa)±1〜30%の振幅応力を付加し、
鋼材に割れが生じるまでの時間で該鋼材の耐水素割れ性を評価すればよいことを見出した。
σ=YS×α …(1)
σ<TS …(2)
[式(1)(2)において、σ:狙い付加応力(MPa)、YS:鋼材の降伏強度(MPa)、TS:鋼材の引張強度(MPa)、α:係数(但し、0.5≦α<1.2)である。]
まず、歪み速度について、鋼中での水素拡散/水素濃化が促進され、かつ試験片に付与された歪み速度により試験が疲労試験とならないよう検討した。その結果、歪み速度を10−6〜10−2/minの範囲内とすればよいことを見出した。
歪み速度の下限値が、10−6/minを下回ると、試験中に鋼中での水素拡散/水素濃化が促進されず、従来法である定荷重試験の結果と差異が生じず、評価に多大な時間を要するか、または鋼材間での耐水素割れ性の優劣の判断ができない、といった問題が生じる。一方、歪み速度が10−2/minを上回ると、試験後の試験片破面を観察した場合に、疲労試験に特有の破面(fisheyeなど)が観察される、即ち、実質水素を添加して行う疲労試験となってしまうため好ましくない。よって、この様な水素添加の疲労試験とならないよう、歪み速度の上限値を10−2/min以下とした。
狙い付加応力と、該狙い付加応力に対する振幅幅(以下、単に「振幅幅」ということがある)を設定するにあたっては、鋼中での水素拡散/水素濃化を促進させると共に、比較的低強度の引張強度および降伏強度を示す鋼材を対象とする観点から、主に弾性域(降伏強度以下)でかつ応力/歪み集中部における耐水素割れ性を評価すべく一部塑性域で評価できるように設定するのがよい。
この様な観点から、本発明では狙い付加応力(σ)を、σ(MPa)=YS(降伏強度)×α(但し、0.5≦α<1.2、かつσ<TS(引張強度))とする。αが0.5(狙い付加応力が0.5YS)を下回る場合、試験時間が非常に長時間に及び、鋼材の種類によっては水素を多量にチャージした場合であっても割れが生じず耐水素割れ性の評価を行えない場合がある。また、αが1.2(狙い付加応力が1.2YS)以上の場合、鋼材には、後述する振幅幅を考慮しても、常に塑性域となる応力が付加され、試験条件が実環境に沿わなくなる。また、狙い付加応力が引張強度(TS)を上回ると、強制的に破断させてしまうこととなり、この場合も実環境に即した比較的マイルドな環境下での耐水素割れ性を評価することができない。
また振幅幅は、上述の通り鋼中での水素拡散/水素濃化が促進されるようにすると共に、鋼中での歪みの局在化が緩和しないよう設定する必要がある。この様な観点から、本発明では、狙い付加応力(σ)に対する振幅幅を±1〜30%とする。上記振幅幅がσに対して±1%を下回った場合、鋼中での水素拡散/水素濃化が促進されないため、試験時間が非常に長時間に及んだり、鋼材の種類によっては水素チャージ条件を厳しくしても割れが生じず耐水素割れ性の評価を行えないことがあるなど、鋼材の耐水素割れ性を迅速に評価することができない。また、振幅幅がσに対して±30%を超えた場合、水素以外の原因(例えば介在物等)が割れの支配的な原因となり、鋼中水素の鋼材特性への悪影響を正確に評価することができない。
〈対象とする鋼材について〉
本発明で対象とする鋼材は、引張強度が800MPa以下(特には700MPa以下)であり、かつ降伏強度が600MPa以下と比較的低強度を示すものであって、水素脆化が通常問題とならない強度レベルのものである。
水素脆化は、引張強度980MPa以上の高強度鋼で問題となるが、この様な引張強度が980MPaを超える高強度鋼の水素脆化の評価は、例えば先行技術に例示されている手法を適宜用いて行えばよいため、本発明で評価する鋼材からは除外する。
上記の通り、比較的低強度を示すものであればよく、鋼材の具体的種類についてまで限定されないが、特に、鍛造用鋼(特には、船舶・発電機等の動力伝達用大型クランク軸の製造に用いる鍛造用鋼)を対象とすれば、その耐水素割れ性を、精度よく迅速かつ簡便に評価することができる。
上記鍛造用鋼としては、上述した様なISO規格の36CrNiMo6、DIN規格の32CrMo12、またはISO規格の42CrMo4に代表されるいわゆるCr−Mo鋼が挙げられる。
評価に供する鋼材(試験片)の形状と寸法も、本発明では特に限定されないが、試験中に試験片が破断する箇所を制御する観点からは、試験片の形状として、中心部が試験機への取り付け部より細径(板状評価試験材の場合は細幅)であるダンベル型(または例えばJIS1号、JIS5号などに規定されるような試験片中央部に平行部を有する形状の引張試験片)とすることが好ましい。
また、試験目的に応じて試験片の細径部(細幅部)に切り欠きを適宜付与しても良い。試験片は、試験前に砥粒番号#600以上の研削材を用いて表面仕上げを行うことが好ましい。この様に表面仕上げを行うことによって、表面状態の影響(例えば試験片作製時の切り出しキズ)を低減でき、水素チャージ量のバラツキを低減することができる。
〈水素チャージ方法について〉
第1評価方法、ならびに後述する第2評価方法、第3評価方法および第5評価方法では、
(a)試験片(鋼材)に水素チャージしながら、評価(試験)を行うか、または
(b)試験片(鋼材)に水素チャージ後水素逃散防止処理を施してから、評価(試験)を行う。
上記(a)の方法として、具体的には、電気化学的手法で、または塩酸水溶液等に浸漬させるなどの酸浸漬法で、鋼材に対して連続的に水素チャージしながら、試験を行う方法が挙げられる。また、腐食反応(例えば、腐食サイクル試験)により鋼中に水素を導入させてもよい。腐食反応による水素チャージ法としては、複合サイクル腐食試験、大気暴露などが挙げられる。
上記(b)の方法として、具体的には、電気化学的手法、または塩酸水溶液等に浸漬させるなどの酸浸漬法を用いて水素チャージした後に、めっき等の水素逃散防止処理を施したものを試験に供することが挙げられる。
これらの水素チャージ方法の中でも、特に、鋼材(試験片)を陰極として設置し、電流を流す陰極チャージ等の電気化学的手法を採用し、電解溶液の種類や濃度、通電させる電流の密度をコントロールすることによって、所望量の水素を鋼中に導入することが好ましい。
この場合、電解溶液として、試験片に水素を効率よく導入させるべくpH6以下の水溶液を用いることが好ましい。電解溶液には、鋼中への水素導入の触媒作用のあるチオシアン酸塩(チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アンモニウムなど)を用いることができる。上記塩を含む水溶液のpHは約5.5程度である。中性の溶液を用いる場合は該水溶液をそのまま使用すればよいが、水素の導入を促進させる観点からは、この水溶液に硫酸を添加し、pHを1〜3に調整した酸性溶液を用いることが好ましい。
電解溶液におけるチオシアン酸塩の濃度が高すぎると、試験片の腐食による溶出が生じ得るため、その濃度は1M以下とするのが好ましく、より好ましくは0.5M以下である。
陰極チャージする際の電流密度は0.001〜0.1mA/mmとすることが好ましい。電流密度が0.001mA/mmを下回ると、鋼中へ導入される水素量が少なくなるため評価に多大な時間を要する。一方、電流密度が0.1mA/mmを超えると、鋼中へ大量の水素が一度に導入され、また水素導入量にバラツキが生じて、評価結果にバラツキが生じやすくなる。
水素チャージを行うにあたり、目安となる鋼中水素濃度は、鋼の成分組成や鋼組織により異なるため一概には決定できないが、本発明の様に比較的低強度の鋼を対象とする場合、目安となる鋼中水素濃度は大体数ppm程度である。
陰極チャージ方法としては、前述の電解質を含む水溶液中に試験片と対極(例えば白金電極)を配置し、試験片に負の電流を付与すればよい。電流の制御はポテンショスタットなどを用いれば良く、例えば、後述する実施例で用いるような装置で水素チャージすることができる。
陰極チャージ以外の水素チャージ法として、酸浸漬法による水素チャージを行う場合は、目的に応じた濃度に調整した塩酸水溶液等に所定時間浸漬すればよい。
陰極チャージや酸浸漬等の水素チャージを行った試験片に対し、試験中に連続して水素チャージを行わない場合には、試験片中に導入した水素が逃散しないように水素逃散防止処理する。水素逃散防止処理として例えばめっき処理が挙げられる。めっき膜の種類は、例えばZnめっき、Cdめっきなど水素拡散係数が低く緻密で孔のない構造を有するものを選択することが好ましい。ここでCdめっきは人体に有害なこと、および環境負荷が大きいことから、取り扱いが簡便で環境負荷も小さいZnめっきを選択することが好ましい。導入した水素が試験片から逃散するのを極力防止するため、めっき処理作業は出来る限り短時間で行うことが好ましい。めっき方法としては、均一で緻密なめっき膜を形成でき、めっき膜厚などをコントロールし易く、かつ不要な水素侵入を抑制できる電気めっきが好ましい。
〈試験装置について〉
試験装置としては、歪み速度を制御すると共に、振幅応力を付与する必要があるため、例えば、後述する実施例に示す様な低歪み速度引張試験機を用いるのが良い。従来法である定荷重試験でしばしば用いられる、おもりとてこによる応力付与機構を持つ定荷重試験機では、歪み速度や振幅応力を制御することができないため好ましくない。
〈第2評価方法について〉
本発明では、第2評価方法として、
引張強度(TS)が800MPa以下の鋼材を対象に、
・鋼材に水素チャージしながら、または、
・鋼材に水素チャージ後水素逃散防止処理してから、
該鋼材に対し、歪み速度10−6〜10−2/minにて、下記式(3)および式(4)を満たす狙い付加応力σu(MPa)±1〜30%の振幅応力を付加し、鋼材に割れが生じるまでの時間で該鋼材の耐水素割れ性を評価する方法も規定する。
σu=(YS×α)×(1+T) …(3)
σu<TS …(4)
[式(3)(4)において、σu:狙い付加応力(MPa)、YS:鋼材の降伏強度(MPa)、TS:鋼材の引張強度(MPa)、α:係数(但し、0.5≦α<1.2)、T=t×β、t:試験開始からの経過時間(hr)、β:係数(但し、0.0001≦β≦0.1)である。](上記t(試験開始からの経過時間)は変数である。)
この様に第2評価方法では、上記第1評価方法における狙い付加応力を、試験時間の経過と共に増加させることで、第1評価方法の様に狙い付加応力を一定とするよりも、鋼中での水素拡散/水素濃化をより促進させることができ、評価をより迅速に行うことができる。
但し、狙い付加応力の増加速度を制御することが重要であり、狙い付加応力(σu)の増加による効果を十分に発揮させる、即ち、水素拡散/水素濃化を十分に促進させるには、狙い付加応力を(YS×α)×(1+0.0001t)以上(即ち、βを0.0001以上)、好ましくは(YS×α)×(1+0.001t)以上(即ち、βを0.001以上)とするのがよい。
一方、狙い付加応力の増加速度が早すぎると、通常の引張試験となってしまい、実環境に沿わないものとなる。よって第2評価方法における狙い付加応力は、(YS×α)×(1+0.1t)以下(即ち、βを0.1以下)とする。
尚、第2評価方法におけるその他の条件を規定した理由や、対象とする鋼材、水素チャージ方法、試験装置については、上記第1評価方法と同じである。
〈第3評価方法について〉
本発明では、第3評価方法として、
引張強度(TS)が800MPa以下の鋼材を対象に、
・鋼材に水素チャージしながら、または、
・鋼材に水素チャージ後水素逃散防止処理してから、
該鋼材に対し、
(i)歪み速度10−6〜10−2/minにて、下記式(1)および式(2)を満たす狙い付加応力σ(MPa)±1〜30%の振幅応力を1〜50時間付加した後、
(ii)歪み速度10−5〜10−3/minで引張試験を行い、
・破断強度で、または
・鋼材に割れが生じるまでの時間で、
該鋼材の耐水素割れ性を評価する方法も規定する。
σ=YS×α …(1)
σ<TS …(2)
[式(1)(2)において、σ:狙い付加応力(MPa)、YS:鋼材の降伏強度(MPa)、TS:鋼材の引張強度(MPa)、α:係数(但し、0.5≦α<1.2)である。]
この様に第3評価方法では、上記段階(i)に示す通り第1評価方法と同条件の試験を一定時間経た後、上記段階(ii)に示す通り、低歪み速度引張試験を行うことによって、第1評価方法よりもより迅速に評価を行うことができる。
尚、上記第1評価方法と同条件の段階(i)を実施する時間(Tc)は、1〜50時間の範囲内とする。上記Tcが1時間未満だと、通常の水素チャージSSRT法となってしまい、正確に評価することができない。一方、上記Tcが50時間を超えると、第1評価方法とほとんどかわらなくなるため、第1評価方法よりも迅速に評価することが難しくなる。上記Tcは、試験片の形状(特に厚み)や、鋼中に水素が十分拡散する時間[鋼の水素拡散係数(1×10−5〜10−9cm/s程度)を基に算出したおおよその時間]を考慮して適宜決定すればよい。
上記段階(i)を実施後は、引き続いて低歪み速度引張試験(段階(ii))を行うが、該試験においては歪み速度を制御することが重要である。10−3/minを超えると感受性が低下し、試験結果のバラツキが大きくなるので、この歪み速度を上回らないようにする必要がある。一方、歪み速度が遅いほど感受性は向上するが、あまりに遅いと、第1評価方法の試験(狙い付加応力が一定である振幅応力付加試験)との差異が無くなるため、その下限を10−5/minとする。
尚、第3評価方法における上記段階(i)のその他の条件を規定した理由や、対象とする鋼材、水素チャージ方法、試験装置については、上記第1評価方法と同じである。
〈第4評価方法について〉
本発明では、第4評価方法として、引張強度(TS)が800MPa以下の鋼材を対象に、該鋼材に下記式(5)で表される電流密度Idの電流を通電して水素チャージしながら、該鋼材に対し、歪み速度10−6〜10−2/minにて、下記式(1)および式(2)を満たす狙い付加応力σ(MPa)±1〜30%の振幅応力を付加し、鋼材が破断するまでの時間で該鋼材の耐水素割れ性を評価する方法も規定する。
σ=YS×α …(1)
σ<TS …(2)
[式(1)(2)において、σ:狙い付加応力(MPa)、YS:鋼材の降伏強度(MPa)、TS:鋼材の引張強度(MPa)、α:係数(但し、0.5≦α<1.2)である。]
Id=γ(1+t)S …(5)
[式(5)において、Id:電流密度(mA/mm)、γ:係数(但し、0.001≦γ≦0.1)、t:試験開始からの経過時間(hr)、S:試験片の試験部面積(mm)である。](上記t(試験開始からの経過時間)は変数である。)
この様に第4評価方法では、上記第1評価方法において、水素チャージ方法として特に電気化学的手法(陰極チャージ法)で連続的にチャージする方法を採用し、かつ試験片に印加する電流の密度を試験時間の経過と共に増加させることによって、鋼中水素量を増加させ、第1評価方法よりも迅速に評価を行うものである。
この場合、電流密度の増加の程度を制御することが重要であり、増加量が少なすぎると、電流密度の増加による鋼中水素量の増加が十分でなく、迅速に評価を行うことが難しくなる。よって、第4評価方法では、上記式(5)におけるγを0.001以上、即ち、試験片に印加する電流の密度(Id)を、0.001(1+t)S mA/mm以上とする。一方、上記電流密度が高すぎると、鋼中への水素侵入にバラツキが生じる等の不具合が生じるため、上記式(5)におけるγを0.1以下、即ち、試験片に印加する電流の密度(Id)を0.1(1+t)S mA/mm以下とする。
第4評価方法における水素チャージ方法のその他の条件(電解溶液の種類・濃度やpH)については、上記第1評価方法で述べた条件を採用すればよい。また、水素チャージ(陰極チャージ)を行う装置も、例えば、第1評価方法で述べた様な電解溶液中に試験片と対極(例えば白金電極)を配置し、試験片に負の電流を付与する装置を用いればよく、例えば後述する実施例で用いるような装置で水素チャージすることができる。
尚、第4評価方法におけるその他の条件を規定した理由や、対象とする鋼材、試験装置についても、上記第1評価方法と同じである。
〈第5評価方法について〉
本発明では、第5評価方法として、
引張強度(TS)が800MPa以下の鋼材を対象に、
・鋼材に水素チャージしながら、または、
・鋼材に水素チャージ後水素逃散防止処理してから、
該鋼材に対し、
(i)歪み速度10−6〜10−2/minにて、下記式(1)および式(2)を満たす狙い付加応力σ(MPa)±1〜30%の振幅応力を1〜50時間付加した後、
(ii’)トルク値4〜8kN・m、トルクを付与する周波数10−4〜10−2Hz、かつ振り角度±10°の両振りの条件でねじり応力を付与し、鋼材に割れが生じるまでの時間で、該鋼材の耐水素割れ性を評価する方法も規定する。
σ=YS×α …(1)
σ<TS …(2)
[式(1)(2)において、σ:狙い付加応力(MPa)、YS:鋼材の降伏強度(MPa)、TS:鋼材の引張強度(MPa)、α:係数(但し、0.5≦α<1.2)である。]
この様に第5評価方法では、上記段階(i)に示す通り第1評価方法と同条件の試験を一定時間経た後、上記段階(ii’)に示す通り、両振りのねじり応力を付与することにより、第1評価方法よりもより迅速に、かつ介在物の影響をも考慮した試験を行うことができる。
上記第1評価方法と同条件の段階(i)を実施する時間(Tc)は、1〜50時間の範囲内とする。上記Tcが1時間未満だと、試験中に鋼中に十分に水素が導入されないため、迅速な評価を行うことができない。一方、上記Tcが50時間を超えると、第1評価方法とほとんどかわらなくなるため、第1評価方法よりも迅速に評価することが難しくなる。上記Tcは、試験片の形状(特に厚み)や、鋼中に水素が十分拡散する時間[鋼中の水素拡散係数(1×10−5〜10−9cm/s程度)を基に算出したおおよその時間]を考慮して適宜決定すればよい。
上記段階(i)を実施後は、引き続いて低周波数の繰り返しねじり試験(段階(ii’))を行うが、該試験においてはトルク値とトルクを付与する周波数を制御することが重要である。試験のトルク値が4kN・m未満であると、試験片の試験部に十分なトルクが付与されないため割れに至らず、鋼材の耐水素割れ性を評価することができない。一方、トルク値が8kN・mを超える場合、試験片の試験部に大きなトルクがかかり過ぎてしまい感受性が低下して、試験結果のバラツキが大きくなるので、トルク値は8kN・m以下にする必要がある。またトルクを付与する周波数については、10−4Hzを下回ると、従来の定荷重試験と実質同じであり鋼材の耐水素割れ性を迅速に評価することができない。一方、10−2Hzを上回った場合には、試験後の試験片破面を観察した場合に、疲労試験に特有の破面(fisheyeなど)が観察される、即ち、実質水素を添加して行う曲げ疲労試験となってしまうため好ましくない。
尚、第5評価方法における上記段階(i)のその他の条件を規定した理由や、対象とする鋼材、水素チャージ方法については、上記第1評価方法と同じである。試験装置については、上記第1評価方法で用いる様な低歪み速度引張試験機に、ねじり応力を付与できるような機構(例えば、変換のギア等)を設けた試験装置(試験機)を用いればよい。
上記では、第1〜第5評価方法について個別に示したが、これら各方法で規定した条件を組み合わせることも可能である。例えば、第2評価方法および第3評価方法の条件を組み合わせる、即ち、第3評価方法における段階(i)の狙い付加応力を、第2評価方法に規定の通りステップアップさせながら1〜50時間付加した後、第3評価方法の段階(ii)に規定する通り低歪み速度引張試験を実施する方法や、第2評価方法および第4評価方法の条件を組み合わせる、即ち、第2評価方法で規定の通り狙い付加応力を増加させると共に、第4評価方法で規定の通り電流密度を増加させながら試験を行う方法、また、第3評価方法および第4評価方法の条件を組み合わせる、即ち、第3評価方法の段階(i)において、第4評価方法で規定する通り電流密度を徐々に増加する水素チャージを行いながら1〜50時間応力付加した後、第3評価方法の段階(ii)に規定する通り低歪み速度引張試験を実施することも可能である。また、第4評価方法で規定する通り電流密度を徐々に増加する水素チャージを行いながら1〜50時間応力付加した後、第5評価方法の段階(ii’)に規定する通りねじり応力を付与する試験を行うことも可能である。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
表1に示す化学成分を含有し、鍛造用鋼を150kg真空炉でスラグ塩基度を3.0に調整して溶製し、鋳造してインゴットを得た。各インゴットを鍛造して冷却後、引張強度が800MPa以下となるように焼き入れ(870℃×1時間)、焼き戻し(600℃×13時間)を行って供試材を得た。得られた供試材の機械的な特性は、JIS5号引張試験片を用いて、降伏強度(YS:MPa)、引張強度(TS:MPa)を測定した。その結果を表1に示す。また、これら各供試材の耐水素割れ性を、予め評価し、表1に記載の通り順位を付けた。即ち、耐水素割れ性は、鋼種Aが最も優れ(1位)、次いで、鋼種B(2位)、鋼種C(3位)の順である。
これら各供試材の耐水素割れ性の試験は、0.5M−HSO+0.01M−KSCN混合水溶液(pH1程度)中にて、電流密度:0.05mA/mmで10時間陰極チャージし、水素逃散防止のためにZnめっき処理を施した後、TS×0.9の応力を付加して割れが生じるまでの時間の長さで順位を評価した(尚、この方法は、評価に長時間を要するというデメリットを有する)。
Figure 0005081175
[従来法の適用]
上記表1に示した鋼種A〜Cを用い、後述する本発明法と対比するため、まず従来法(定荷重試験、SSRT法)で鋼の耐水素割れ性の評価を行った。
上記各供試材から採取した試験片によって耐水素割れ性を評価した。試験片は丸棒型とし、長さ100mm、標点間距離を10mmとしたダンベル状に加工し、中央部分を直径4mmに、両端のつかみ具部分を直径8mmにして長さ15mmにわたってねじを設けた。
定荷重試験は、てこ式定荷重試験機を用い、おもりとてこの原理で試験片の細径部に表2に示す狙い付加応力が付与されるように調整した。そして、この定荷重試験では、試験片に割れが生じるまでの時間を求めた。またSSRT法は、市販の低歪み速度引張試験機(東伸工業(株)製)を用い、表2に示す歪み速度にて試験片に応力を付加し、破断強度で耐水素割れ性を評価した。これらの評価結果を表2に示す(尚、表2における電流密度、狙い付加応力、歪み速度における「−」は、制御していないことを示している)。
尚、試験片への水素チャージは、表2に示す通り、
・陰極チャージ法(酸性溶液:0.5M−HSO+0.01M−KSCN混合水溶液(pH1程度)中、または中性溶液:0.1M−KSCN水溶液中にて、表2に示す種々の電流密度の電流を通電させることによって鋼中に導入する水素量を調整する方法)により水素チャージしながら試験を行う方法;または、
・酸浸漬法により水素チャージしながら試験を行う方法(5%塩酸水溶液中に浸漬させた状態で試験を行う方法);を採用した。
Figure 0005081175
表2より、従来法(定荷重法、SSRT法)を用いて種々の条件で鋼種A〜Cの耐水素割れ性を評価したが、試験開始から100時間経過後も割れが発生せず、互いに耐水素割れ性の差が出ないか、前記予備試験による耐水素割れ性評価試験の順位(表1)と一致(対応)しない結果となっていることがわかる。
[本発明法の適用]
次に、鋼種A〜Cに対して第1〜第5評価方法の各方法を適用して耐水素割れ性の評価を行った。試験片としては、上記従来法と同様のものを用いた。
〈第1評価方法について〉
用いる試験片は、上記従来法と同じく、丸棒型とし、長さ100mm、標点間距離を10mmとしたダンベル状に加工し、中央部分を直径4mmに、両端のつかみ具部分を直径8mmにして長さ15mmにわたってねじを設けた。そして低歪み速度引張試験機(東伸工業(株)製)を用い評価を行った。図1に模式的に示す通り、各試験片1をセル2内の溶液3に陰極として浸漬させ、対極(陽極)に白金電極4を用いた。そして、図1に示す通り、試験片1の両端のつかみ具部分をクロスヘッド6と固定台7に設置し、第1評価方法を適用して、表3に示す通り電流密度が0.05mA/mm2の定電流を、電流制御装置5を用いて通電し、水素チャージを行いながら、表3に示す条件(周波数は8.3×10−7〜8.3×10−2)で試験を行い、試験片(陰極)に割れが生じるまでの時間で鋼種A〜Cの耐水素割れ性を評価した。
尚、上記条件(歪み速度、狙い付加応力、振幅幅)は、パソコン8に接続された制御装置9で制御した。また電解溶液は、各例とも共通して、0.5M−HSO+0.01M−KSCN混合水溶液(酸性溶液、pH1程度)を用いた(後述する第2〜第5評価方法についても同じ)。
これらの結果を表3に示す。表3において、割れ発生時間の欄に「100」と記載しているものは、試験開始から100時間(hr)経過後も割れが発生せず、耐水素割れ性評価試験を途中で中断したものである(後述する表4、表6および表7についても同じ)。
Figure 0005081175
表3より、本発明で規定する方法で耐遅れ水素性を評価した実験No.1−1〜12では、鋼種A〜Cの鋼の耐水素割れ性を、正確かつ迅速、簡便に評価できていることがわかる。これに対し、本発明で規定する以外の方法で耐遅れ水素性を評価した実験No.1−13〜36については以下の不具合を有している。
詳細には、実験No.1−13〜15では、歪み速度が下限値を下回っているため、試験開始100時間後も、いずれの鋼種にも割れが発生せず、優劣の評価ができなかった。
実験No.1−16〜18では、歪み速度が上限値を上回っているため、鋼中での水素拡散/水素濃化が適切に行われなかったため、破断時間の順列が逆転している。
実験No.1−19〜21では、狙い付加応力が下限値を下回っているため、試験開始100時間後もいずれの鋼種にも割れが発生せず、優劣の評価ができなかった。
実験No.1−22〜24では、狙い付加応力が上限値以上であるため、鋼中での水素拡散/水素濃化が適切に行われなかったため、破断時間の順列が逆転している。
実験No.1−25〜27では、振幅幅が下限値を下回っているため、試験開始100時間後もいずれの鋼種にも割れが発生せず、優劣の評価ができなかった。
実験No.1−28〜30では、振幅幅が上限値を上回っているため、鋼中での水素拡散/水素濃化が適切に行われず、破断時間の順列が逆転する結果となった。
実験No.1−31〜33では、狙い付加応力が下限値を下回っており、かつ振幅幅が下限値を下回っているため、試験開始100時間後も、いずれの鋼種にも割れが発生せず優劣の評価ができなかった。
実験No.1−34〜36では、狙い付加応力が上限値以上であり、かつ振幅幅が上限値を上回っているため、いずれの鋼種も試験開始直後に割れが生じ、またその順列も逆転している。
〈第2評価方法について〉
第2評価方法を適用し、表4に示す条件で、鋼種A〜Cの耐水素割れ性を評価した。その評価結果を表4に示す。尚、使用した試験片、試験装置は第1評価方法と同じである。また、第2評価方法においても、歪み速度、狙い付加応力、および振幅幅は、パソコン8に接続された制御装置9で制御した。
Figure 0005081175
表4より、次の様に考察できる。即ち、第2評価方法で耐水素割れ性を評価した実験No.2−1〜12は、上記表3の実験No.1−1〜12(第1評価方法)と比較して割れ発生時間が短くなっており、鋼種A〜Cの耐水素割れ性を、第1評価方法よりも迅速に評価できていることがわかる。
尚、βが0.0001を下回る場合には、第1評価方法と評価時間がほとんどかわらず、第1評価方法よりもより迅速に評価するには、βを0.0001以上として狙い付加応力をステップアップさせればよいことが実験No.2−13〜15の結果からわかる。
また、実験No.2−16〜18の通り、βの値が大きすぎる場合には、破断時間の逆転など結果を正確に反映させることができない。
〈第3評価方法について〉
第3評価方法を適用し、表5に示す条件で、鋼種A〜Cの耐水素割れ性を評価した。評価結果を表5に示す。尚、表5におけるTcは、「(i)歪み速度10−6〜10−2/minにて、規定の式(1)および式(2)を満たす狙い付加応力σ(MPa)±1〜30%の振幅応力を付加した時間(hr)」を示している。また、表5における歪み速度、狙い付加応力、振幅幅の欄の「−」は制御していないことを示している。
第3評価方法で使用した試験片、試験装置は第1評価方法と同じである。第3評価方法において、段階(i)および段階(ii)の歪み速度、狙い付加応力、振幅幅、およびTcは、パソコン8に接続された制御装置9で制御しており、段階(i)をTc(時間)経た
後、段階(ii)の歪み速度で行うよう上記制御装置9で制御した。
Figure 0005081175
表5より、第3評価方法で耐遅れ水素性を評価した実験No.3−1〜27では、評価時間が最大でも約70〜80時間程度であり、第1評価方法よりも迅速に鋼種A〜Cの耐水素割れ性を評価できる。
尚、No.3−28〜30の様に、Tcが長すぎる、即ち、第3評価方法における上記段階(i)の実施時間が長すぎると、第1評価方法とほとんどかわらない。
一方、実験No.3−31〜33、実験No.3−40〜42の様に、Tcがゼロ、即ち、第3評価方法における上記段階(i)の実施時間を設けない場合には、通常の水素チャージSSRT法となってしまい、いずれも引張強度の直下で破断が生じ、耐水素割れ性の優劣の判断は行えなかった。
実験No.3−34〜36では、上記段階(ii)の歪み速度が上限値を超えているため、通常の引張試験となってしまい、破断強度の順列が逆転する結果となった。
実験No.3−37〜39では、上記段階(ii)の歪み速度が下限値を下回っているため、いずれも引張強度の直下で破断が生じ、耐水素割れ性の優劣の判断が行えなかった。
実験No.3−43〜45では、上記段階(i)の狙い付加応力、振幅幅、および実施時間が上限を上回っており、かつ上記段階(ii)の歪み速度も本発明の規定上限を上回っているため、いずれも引張強度の直下で破断が生じ、耐水素割れ性の優劣の判断が行えなかった。
〈第4評価方法について〉
第4評価方法を用い、表6に示す条件で、鋼種A〜Cの耐水素割れ性を評価した。電流密度は、電流値制御装置において電流値を試験時間の経過と共にステップアップさせるようにした。尚、使用した試験片、試験装置は第1評価方法と同じである。尚、第4評価方法においても、歪み速度、狙い付加応力、および振幅幅は、パソコン8に接続された制御装置9で制御した。その評価結果を表6に示す。尚、本実施例において、式(5)中のS(試験片の試験部面積)とは、試験片の細径部の表面積をいい、その値は40π(約126)mmである。
Figure 0005081175
表6より、次の様に考察できる。即ち、第4評価方法で耐水素割れ性を評価した実験No.4−1〜12は、上記表3の実験No.1−1〜12(第1評価方法)と比較して割れ発生時間が短くなっており、鋼種A〜Cの耐水素割れ性を第1評価方法よりも迅速に評価できていることがわかる。
尚、実験No.4−13〜15の結果から、γが0.001を下回る場合には、鋼中に水素がほとんど導入されないため、100時間を経過しても割れが生じず評価を行うことができないことがわかる。また、実験No.4−16〜18の通り、γの値が大きすぎる場合には、鋼中への水素侵入量が多くなりバラツキが生じて破断時間の順列が逆転する結果となった。
〈第5評価方法について〉
第5評価方法を適用し、表7に示す条件で、鋼種A〜Cの耐水素割れ性を評価した。評価結果を表7に示す。尚、表7におけるTcは、「(i)歪み速度10−6〜10−2/minにて、規定の式(1)および式(2)を満たす狙い付加応力σ(MPa)±1〜30%の振幅応力を付加した時間(hr)」を示している。また、表7における「割れ発生時間」は、段階(ii’)の試験開始時(トルク付与開始時)から割れが発生するまでの時間を示している。表7における歪み速度、狙い付加応力、振幅幅の欄の「−」は制御していないことを示している。
第5評価方法で使用した試験片は第1評価方法と同じであり、試験装置(試験機)は、繰り返しねじり応力が付与できる様に、第1評価方法の実施に用いた試験機にギアを組み込んだものを用いた。第5評価方法において、段階(i)及び段階(ii’)の歪み速度、狙い付加応力、振幅幅、Tc、トルク値、トルクを付与する周波数、振り角度は、パソコン8に接続された制御装置9で制御しており、段階(i)をTc(時間)経た後、段階(ii’)の繰り返しねじり応力を付与するよう上記制御装置9で制御した。
Figure 0005081175
表7より、第5評価方法で耐遅れ水素性を評価した実験No.5−1〜27では、評価時間(Tc+割れ発生時間)が最大でも81時間程度であり、第1評価方法よりも迅速に鋼種A〜Cの耐水素割れ性を評価できることがわかる。
これに対し、実験No.5−28〜30では狙い付加応力が大きすぎるため、鋼中での水素拡散/濃化が適切に行われず、破断時間の順列が逆転する結果となった。
一方、実験No.5−31〜33の様に、Tcがゼロ、即ち、第5評価方法における上記段階(i)の実施時間を設けない場合には、鋼中での水素拡散/濃化が十分に行われず、試験開始100時間後もいずれの鋼種にも割れが発生せず、優劣の評価ができなかった。
実験No.5−34〜36では、上記段階(ii’)のトルクを付与する周波数が上限値を超えているため、通常の曲げ疲労試験となってしまい、水素添加の影響で破断強度の順列が逆転する結果となった。
実験No.5−37〜39では、上記段階(ii’)のトルクを付与する周波数が下限値を下回っているため、試験開始100時間後もいずれの鋼種にも割れが発生せず、優劣の評価ができなかった。
実験No.5−40〜42では、上記段階(ii’)のトルク値が下限値を下回っているため、試験開始100時間後もいずれの鋼種にも割れが発生せず、優劣の評価ができなかった。
実験No.5−43〜45では、上記段階(ii’)のトルク値が上限値を超えているため、介在物に必要以上の歪みが付与され感受性が低下し、破断強度の順列が逆転する結果となった。
1 試験片
2 セル
3 溶液
4 対極(白金電極)
5 電流制御装置
6 クロスヘッド
7 固定台
8 パソコン
9 応力−歪制御装置

Claims (5)

  1. 引張強度(TS)が800MPa以下である鋼材の耐水素割れ性の評価方法であって、上記鋼材に水素チャージしながら、または、
    上記鋼材に水素チャージ後水素逃散防止処理を施してから、
    該鋼材に対し、歪み速度10−6〜10−2/minにて、下記式(1)および式(2)を満たす狙い付加応力σ(MPa)±1〜30%の振幅応力を付加し、
    上記鋼材に割れが生じるまでの時間で該鋼材の耐水素割れ性を評価することを特徴とする鋼材の耐水素割れ性の評価方法。
    σ=YS×α …(1)
    σ<TS …(2)
    [式(1)(2)において、
    σ:狙い付加応力(MPa)、
    YS:鋼材の降伏強度(MPa)、
    TS:鋼材の引張強度(MPa)、
    α:係数(但し、0.5≦α<1.2)である。]
  2. 引張強度(TS)が800MPa以下である鋼材の耐水素割れ性の評価方法であって、上記鋼材に水素チャージしながら、または、
    上記鋼材に水素チャージ後水素逃散防止処理を施してから、
    該鋼材に対し、歪み速度10−6〜10−2/minにて、下記式(3)および式(4)を満たす狙い付加応力σu(MPa)±1〜30%の振幅応力を付加し、
    上記鋼材に割れが生じるまでの時間で該鋼材の耐水素割れ性を評価することを特徴とする鋼材の耐水素割れ性の評価方法。
    σu=(YS×α)×(1+T) …(3)
    σu<TS …(4)
    [式(3)(4)において、
    σu:狙い付加応力(MPa)、
    YS:鋼材の降伏強度(MPa)、
    TS:鋼材の引張強度(MPa)、
    α:係数(但し、0.5≦α<1.2)、
    T=t×β、
    t:試験開始からの経過時間(hr)、
    β:係数(但し、0.0001≦β≦0.1)である。]
  3. 引張強度(TS)が800MPa以下である鋼材の耐水素割れ性の評価方法であって、上記鋼材に水素チャージしながら、または、
    上記鋼材に水素チャージ後水素逃散防止処理を施してから、
    該鋼材に対し、
    (i)歪み速度10−6〜10−2/minにて、下記式(1)および式(2)を満たす
    狙い付加応力σ(MPa)±1〜30%の振幅応力を1〜50時間付加した後、
    (ii)歪み速度10−5〜10−3/minで引張試験を行い、
    上記鋼材の破断強度または上記鋼材に割れが生じるまでの時間で、該鋼材の耐水素割れ性を評価することを特徴とする鋼材の耐水素割れ性の評価方法。
    σ=YS×α …(1)
    σ<TS …(2)
    [式(1)(2)において、
    σ:狙い付加応力(MPa)、
    YS:鋼材の降伏強度(MPa)、
    TS:鋼材の引張強度(MPa)、
    α:係数(但し、0.5≦α<1.2)である。]
  4. 引張強度(TS)が800MPa以下である鋼材の耐水素割れ性の評価方法であって、上記鋼材に下記式(5)で表される電流密度Idの電流を通電して電気化学的手法で水素チャージしながら、
    該鋼材に対し、歪み速度10−6〜10−2/minにて、下記式(1)および式(2)を満たす狙い付加応力σ(MPa)±1〜30%の振幅応力を付加し、
    上記鋼材に割れが生じるまでの時間で該鋼材の耐水素割れ性を評価することを特徴とする鋼材の耐水素割れ性の評価方法。
    σ=YS×α …(1)
    σ<TS …(2)
    [式(1)(2)において、
    σ:狙い付加応力(MPa)、
    YS:鋼材の降伏強度(MPa)、
    TS:鋼材の引張強度(MPa)、
    α:係数(但し、0.5≦α<1.2)である。]
    Id=γ(1+t)S …(5)
    [式(5)において、
    Id:電流密度(mA/mm)、
    γ:係数(但し、0.001≦γ≦0.1)、
    t:試験開始からの経過時間(hr)、
    S:試験片の試験部面積(mm)である。]
  5. 引張強度(TS)が800MPa以下である鋼材の耐水素割れ性の評価方法であって、上記鋼材に水素チャージしながら、または、
    上記鋼材に水素チャージ後水素逃散防止処理を施してから、
    該鋼材に対し、
    (i)歪み速度10−6〜10−2/minにて、下記式(1)および式(2)を満たす
    狙い付加応力σ(MPa)±1〜30%の振幅応力を1〜50時間付加した後、
    (ii’)トルク値4〜8kN・m、トルクを付与する周波数10−4〜10−2Hz、かつ振り角度±10°の両振りの条件でねじり応力を与え、
    上記鋼材に割れが生じるまでの時間で該鋼材の耐水素割れ性を評価することを特徴とする鋼材の耐水素割れ性の評価方法。
    σ=YS×α …(1)
    σ<TS …(2)
    [式(1)(2)において、
    σ:狙い付加応力(MPa)、
    YS:鋼材の降伏強度(MPa)、
    TS:鋼材の引張強度(MPa)、
    α:係数(但し、0.5≦α<1.2)である。]
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