JP4901662B2 - 薄鋼板水素脆化評価用試験片及び薄鋼板水素脆化評価方法 - Google Patents

薄鋼板水素脆化評価用試験片及び薄鋼板水素脆化評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、薄鋼板の水素脆化を評価する装置及び方法に関する。
近年、環境問題への対応のため炭酸ガス排出低減や燃費低減を目的に自動車の軽量化が進められ、一方、衝突安全性向上に対する要求は高くなっている。自動車の軽量化や衝突安全性向上のためには鋼材の高強度化が有効な手段であり、近年ではバンパーやドアインパクトビームなどの補強材、シートレールなどの用途に引張強度を1180MPa以上に高めた超高強度鋼板が適用されつつある。
しかし、一般に鋼材を高強度化すると、切欠き感受性が高まり環境の悪影響を受けやすくなる。特に腐食環境下では表面に腐食ピットが形成されると、これが応力集中源となり、更に腐食反応の進行に伴って発生する水素により水素脆化による割れ、いわゆる遅れ破壊が発生する。
遅れ破壊は、薄鋼板よりも前から高強度化が進められているボルトやPC鋼棒などの条鋼部材や、多量の水素が侵入するサワー環境などで使用される油井管やラインパイプなどでは検討されている。そのため、従来から、条鋼、鋼管及び厚鋼板を供試材とする、様々の水素脆化特性評価方法が提案されている(例えば、非特許文献1)。
また、薄鋼板についても、例えば、薄鋼板をU字状に曲げて、水素を電解によって侵入させながら、破断するまでの時間を測定する水素脆化の評価方法が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
この方法は、プレス成形を模擬した曲げ加工を施し、更に曲げによる応力を負荷するため、実部品の水素脆化の評価に適している。しかし、この方法では、鋼材間の相対的な水素脆化特性の優劣の評価は可能であるものの、鋼材の固有の水素脆化特性の評価、例えば、限界拡散性水素量の測定はできなかった。
これに対して、鋼材への応力の負荷と電解による水素侵入(水素チャージという)を同時に行う方法も提案されている(例えば、特許文献3、4)。これらは、加工の影響を受ける前の鋼材の水素脆化を評価する方法であるが、試験結果のばらつきが大きく、薄鋼板の水素脆化特性を精度よく評価することは困難であった。
特開平7−146225号公報 特開2005−134152号公報 特開2001−264240号公報 特開2006−29977号公報 松山晋作、「遅れ破壊」初版、日本工業新聞社、1989年8月31日発行、p.159〜201
本発明は、従来の薄鋼板水素脆化評価方法では、鋼材間の水素脆化特性の優劣を正確に判断することができないという実状に鑑み、薄鋼板、特に引張強度が980MPa以上、更には1180MPa以上である高強度薄鋼板の水素脆化を精度良く評価することが可能な薄鋼板水素脆化評価試験片及びそれを用いた薄鋼板水素脆化評価試験方法の提供を課題とするものである。
本発明者らは、薄鋼板に水素チャージしながら引張応力を負荷し、鋼材の水素脆化を評価する方法や、水素チャージ後、水素の放散を防止するために表面にめっき層を設けて引張応力を負荷する方法の、測定データの精度を向上させる方法について検討を重ねた結果、試験結果のばらつきが薄鋼板に特有の問題であること、試験片に設けた切り欠きの形状を適正なものとすれば精度を著しく向上させることができることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)薄鋼板からなり、平行部の両側面に切り欠きを有し、該切り欠き部の応力集中係数αが3.0〜4.0であり、前記平行部の一側面に設けた前記切り欠きの中心と、他側面に設けた前記切り欠きの中心との長手方向の差が20μm以内であり、さらに試験片の平行部の幅Dと、切り欠きの先端半径r及び底部の幅dとが、
0.5≦d/D≦0.7
0.025≦r/D≦0.05
を満足することを特徴とする薄鋼板水素脆化評価用試験片。
)上記(1)に記載の薄鋼板水素脆化評価用試験片を、電解槽内の治具に取り付け、該薄鋼板水素脆化評価用試験片及び該治具を電解溶液中に浸漬し、電流発生手段と電極により、該薄鋼板水素脆化評価用試験片に水素チャージを行いながら、定荷重発生手段によって応力を負荷し、破断するまでの時間を測定することを特徴とする薄鋼板水素脆化評価方法。
)破断後の薄鋼板水素脆化評価用試験片から試料を採取し、水素量を測定することを特徴とする上記(2)に記載の薄鋼板水素脆化評価方法。
)薄鋼板水素脆化評価用試験片を、部分安定化ジルコニア又はサイアロンからなる支持ピンによって、定荷重発生手段に連結される治具に取り付けることを特徴とする上記(2)又は(3)に記載の薄鋼板水素脆化評価方法。
)電解溶液のpHが3〜6であることを特徴とする上記(2)〜(4)の何れか1項に記載の薄鋼板水素脆化評価方法。
)水素チャージの電流密度が0.05〜0.1mA/cm2であることを特徴とする上記(2)〜(5)の何れか1項に記載の薄鋼板水素脆化評価方法。
)上記(1)に記載の薄鋼板水素脆化評価試験片に水素チャージを行った後、該薄鋼板水素脆化評価試験片の全面にCdめっき又は亜鉛めっきを施し、定荷重発生手段によって該薄鋼板水素脆化評価試験片に応力を負荷し、破断するまでの時間を測定することを特徴とする薄鋼板水素脆化評価方法。
)破断後の薄鋼板水素脆化評価用試験片から試料を採取し、水素量を測定することを特徴とする上記(7)に記載の薄鋼板水素脆化評価方法。
本発明によれば、薄鋼板の水素脆化特性を精度良く評価することが可能になる。これにより、特に、引張強度が980MPa以上、更には1180MPa以上である高強度の薄鋼板を、水素脆化が問題なる用途、例えば、自動車の骨格用部材に適用することが可能になり、信頼性の高い鋼材の開発が促進されるなど、産業上の貢献が極めて顕著である。
鋼材の水素脆化は、鋼中に水素を含有させた状態で引張応力を負荷し、破断させることによって評価することができる。例えば、試験片を陰極とした電解による水素チャージ(陰極水素チャージ、単に水素チャージともいう。)を行いながら引張応力を負荷して破断させるか、又は、試験片に水素チャージを行った後、引張応力を負荷して破断させる、という方法を選択することができる。
試験片に陰極水素チャージを行いながら引張応力を負荷する方法は、厚鋼板の応力腐食割れ性や腐食疲労特性を評価する方法を応用したものである。例えば、腐食液中で静的な引張応力を負荷すれば応力腐食割れ性を評価することができ、繰り返し応力を負荷すれば腐食疲労特性を評価することができる。また、このような評価では、電解溶液を満たした電解槽中に電極を設けて、腐食電位の測定も同時に行っていた。
この装置を応用すれば、引張応力を負荷しながら、試験片に水素チャージを行うことが可能である。しかし、このような方法を応用した薄鋼板の水素脆化評価方法は、検討されつつあるものの、未だ、確立された技術とは言い難く、測定精度に問題がある。
一方、試験片に陰極水素チャージを行った後、引張応力を負荷する方法は、ボルトやPC棒鋼などの条鋼部材の水素脆化特性評価に用いられている方法である。これは、陰極水素チャージの条件によって鋼中に吸蔵される水素量を変化させ、試験片の表面にCdめっき又は亜鉛めっきを施し、大気中で所定の荷重を負荷し、遅れ破壊が発生しない最大の拡散性水素量を評価するものである。
図1に拡散性水素量と水素脆化割れに至るまでの破断時間の関係について解析した一例を示す。試料中に含まれる拡散性水素量が少なくなるほど水素脆化割れに至るまでの時間が長くなり、拡散性水素量がある値以下では水素脆化割れが発生しなくなる。この水素脆化割れが発生しない最大の水素量を「限界拡散性水素量」と定義する。
限界拡散性水素量は、鋼材の成分、熱処理などの製造条件によって決まる鋼材固有の値であり、これが高いほど鋼材の耐水素脆化特性は良好である。なお、試料中の拡散性水素量はガスクロマトグラフによる昇温水素分析法で測定することができる。本発明では、鋼材を100℃/hの昇温速度で加熱した際に、室温から300℃までに鋼材から放出される水素量を「拡散性水素量」と定義している。
このような限界拡散性水素量の測定方法は、ボルトやPC棒鋼などの条鋼部材の水素脆化特性の評価では実績がある。しかし、薄鋼板の水素脆化の評価法としては、未だ、確立された技術とは言い難く、測定精度に問題がある。
本発明者らは、薄鋼板から試験片を採取し、水素チャージを行いながら引張応力を負荷して破断させる方法と、試験片に水素チャージを行った後、引張応力を負荷して破断させる方法によって、薄鋼板の水素脆化の評価を試みた。
しかし、何れの方法でも、薄鋼板試験片の場合には、試験結果のばらつきが非常に大きく、鋼材間の水素脆化特性の優劣を正確に判断することが困難であった。特に問題であったのが、試験片形状である。
切り欠きのない平滑試験片を用いた場合や、切り欠き部の応力集中係数が低い場合には、破断時間が長時間化し、試験結果のばらつきが大きくなる傾向が見られた。また、試験片の掴み部など、切り欠き部以外での破断頻度も高くなった。一方、切り欠き部の応力集中係数が大きい場合には、切り欠き先端部に水素が過度に集積するため、少ない平均水素量でも破断することがあり、精度が低下する。したがって、試験片の寸法精度の影響に対して、鋼種や負荷応力による水素脆化特性の差異が相対的に小さくなり、鋼種間の比較や負荷応力の影響の評価が困難である。
そこで、本発明者らは、試験片に設ける切り欠きの形状を適正なものとし、測定データの精度を向上させる方法を検討した。まず、表1に示す組成(残部はFe及び不可避的不純物)を有する鋼を、表2に示す条件で熱間圧延し、冷間圧延した後、焼鈍し、一部には焼き戻し処理を施した。次に、得られた鋼板から、JIS Z 2201の5号試験片を採取し、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行った。鋼の降伏強度及び引張応力を表2に示す。
Figure 0004901662
Figure 0004901662
これらの鋼A及び鋼Bの薄鋼板を供試材とし、図2に模式的に例示したように、平行部の両側面に切り欠き部を有する試験片を作製した。これらの試験片を、図3に示した装置に取り付けて、陰極水素チャージを行いながら引張応力を負荷して破断させた。破断後、試験片から試料を採取し、ガスクロマトグラフによる昇温水素分析法で水素量を測定した。
この試験の概要は以下のとおりである。図3に示したように、試験片1は、支持ピン2を介して、定荷重発生手段7に連結するチャック4に取り付けられる。試験片1の周囲には電極5を配置し、電解槽3に電解溶液、例えばチオシアン酸アンモニウム溶液を満たす。電流発生手段6は、例えば、定電位定電流電解装置であり、電流密度を調整し、試験片1を陰極として水素チャージを行う。
本発明者らは、測定精度と試験片の形状の関係について検討し、測定精度には平行部の両側面に設けた切り欠きの中心の長手方向の位置、即ち、一方の側面に設けた切り欠きの中心の位置と、他方の側面に設けた切り欠きの中心のずれが大きく影響することを見出した。
図4に、鋼材Aを用いて、切り欠き底部の平均応力が引張強度の0.9倍になるように応力を負荷した際の試験結果、即ち、応力比が0.9である引張応力を負荷した試験の結果を示す。図4は、試験片の両側面の切り欠き中心の長手方向の位置の差と、水素量との関係を示す図である。図4から、試験片の長手方向における切り欠き中心の位置の差を20μm以内とすれば、破断時の水素量の測定値は、ばらつきが極めて小さくなることがわかる。
一方、切り欠きの中心の長手方向の位置の差は、20μmを超えると破断時の水素量の測定値のばらつきが大きくなる。この理由として、切り欠き先端部の応力分布や切り欠き先端部への水素の集積状態の変化が挙げられる。
本発明者らは、測定精度と試験片の形状の関係について更に検討し、測定精度には試験片の切り欠き部の応力集中係数αとの相関があることを見出した。応力集中係数αは切り欠き部の引張軸方向の平均応力(σnom)に対する切り欠き底部の引張軸方向の最大応力(σmax)の比(σmax/σnom)と定義される。即ち、α=σmax/σnomである。切り欠き部の応力集中係数αは、試験片及び切り欠き部の形状から、有限要素法などの数値計算によって求めるか、便覧、例えば、非特許文献2のデータを用いて求めることができる。
R.E.PETERSON、「STRESS CONCENTRATION DESINE FACTORS」、1966年8月 、JOHN WILEY & SONS、INC、 p.1〜28
図5に、鋼Aに応力比が0.6及び0.9の引張応力を負荷した試験の結果と、鋼Bに応力比が0.9の引張応力を負荷した試験の結果とを示す。図5は、応力集中係数αと水素量との関係を示すグラフであり、応力集中係数αが3.0〜4.0であれば、各鋼材の各応力比における破断時の水素量の測定値のばらつきが非常に小さくなることがわかる。
また、鋼Bは焼入れままの組織であり、鋼Aに比べ強度も高いことから耐水素脆化特性に劣ると考えられる。更に、応力比が小さくなると、水素脆化が生じる水素量が多くなるため、破断時の水素量が高くなることが予想される。図5の結果は、鋼材の材質、応力比から予測される結果と良く一致している。したがって、本発明によれば、鋼種間の比較や負荷応力の影響を、正当に評価することが可能である。
これに対して、応力集中係数αが3.0未満の場合は、応力集中係数αが小さく、切り欠き先端部への応力集中が緩いため、応力集中部への水素の集積効果が再現できていない可能性がある。そのため、破断時間が長時間化し、掴み部など、切り欠き部以外での破断頻度が高くなる傾向も見られ、試験結果のばらつきが大きくなると考えられる。一方、応力集中係数αが4.0を超える場合は、切り欠き先端部に水素が過度に集積し、少ない平均水素量で破断するため、ばらつきが大きくなると考えられる。
また、図2に示した薄鋼板水素脆化評価用試験片の、平行部の幅Dと、切り欠き先端半径rと、切り欠き底部の幅dは、
0.5≦d/D≦0.7
0.025≦r/D≦0.05
を満足することが好ましい。これにより、切り欠き部の応力集中率αを概ね3.0〜4.0とすることができる。
なお、応力集中係数αを3.0〜4.0とすれば、試験精度は向上するが、応力集中係数の増加とともに、破断時間が短くなり、限界拡散性水素量は減少する傾向がある。したがって、切り欠きの形状を略同一とし、応力集中係数αを略同一の値とすることが好ましい。これにより、鋼種による水素脆化特性の相違を正確に評価することが可能になる。
切り欠き部の位置、切り欠きの形状を精度良く制御するためには、試験片を加工する際の、試験片を固定する位置の管理が重要である。したがって、切り欠きを設ける加工、例えば切削加工を行う際に、専用の治具を用いることが好ましい。
次に、本発明の薄鋼板水素脆化評価方法のうち、水素チャージを行いながら引張応力を負荷して破断させる方法に用いる装置の好ましい態様について説明する。図3に示したように、試験片1を、支持ピン2によって電解溶液を満たした電解槽3内の治具4に取り付ける。電流発生手段6により電流密度を変化させ、電極5により、試験片を陰極として水素チャージを行いながら、定荷重発生手段7によって応力を負荷する。電流発生手段6としては、ポテンシオスタットなどの定電位定電流電解装置を使用することができる。
電極5は陽極であり、試験片に均一に水素をチャージするためには、白金線をスパイラル状にしたものが好ましい。これにより、水素の集積が生じる切り欠き先端部を除いて、水素量をほぼ均一にすることができる。また、電極5は、白金線以外に、白金−ロジウム合金線を使用しても良い。白金や、白金−ロジウムは、電解溶液によって腐食され難いため、電極には好適である。なお、強度が必要とされる場合は、白金−ロジウムが好ましい。
試験片1と電流発生手段6との間の電線も、白金線や、白金−ロジウム合金線を使用することが好ましく、電解槽3内の溶液液面以上の高さまでの部位の表面を絶縁材によって被覆することが更に好ましい。これにより、試験片1のみに水素をチャージすることができる。また、電極5は、図3に例示したスパイラル状以外に、網状、複数の棒状、電解槽の高さ方向に複数配置された円状としても良い。
また、試験片に均一に水素をチャージするためには、試験片に接続した電線からの電流が冶具及び支持ピンに流れないように、冶具及び支持ピンを試験片と絶縁することが好ましい。そのため、支持ピン2の素材は、絶縁性高強度材料が好ましい。ステンレス鋼製の支持ピンなどを使用した場合、試験片と支持ピンとの接触部で異種金属腐食が生じ、局部的に水素が侵入することがある。また、強度の高い薄鋼板の水素脆化評価を行う場合には負荷応力も高くなるため支持ピンの強度も高強度のものを使う必要がある。
本発明者らは、支持ピンに使用する、種々の絶縁性高強度材料を検討した結果、部分安定化ジルコニア又はサイアロンが最適であることがわかった。特に、支持ピンの強度と靭性を高めるためには部分安定化ジルコニア又はサイアロンの密度を高めることが有効であり、部分安定化ジルコニアの場合は5.5g/cm3以上、サイアロンの場合は3g/cm3以上とすることが好ましい。
電解溶液は、例えば、チオシアン酸アンモニウム溶液を用いれば良いが、pHが3未満であると試験片表面での腐食が進行することがある。この場合、水素脆化の評価の精度に影響を及ぼす可能性がある。一方、電解溶液のpHは、6を超えると水素チャージ速度が遅くなり、評価の精度が低下することがある。そのため、水素チャージを行う際の電解溶液のpHは3〜6とすることが好ましい。
水素チャージの電流密度は、0.05mA/cm2未満であると水素チャージの速度が遅くなり、評価に時間を要する。一方、水素チャージの電流密度が0.1mA/cm2超であると水素チャージの速度が速すぎて、試験片内の水素分布が不均一な状態で破断し、評価の精度が低下することがある。したがって、水素チャージの電流密度は0.05〜0.1mA/cm2とすることが好ましい。
次に、本発明の薄鋼板の水素脆化評価方法のうち、試験片に陰極水素チャージを行った後、引張応力を負荷して破断させる方法に用いる装置の好ましい態様を図6に示す。試験片1には予め陰極水素チャージを行った後、全面にCdめっき又は亜鉛めっき8を施しておく。これを、定荷重発生手段7に連動する冶具4に取り付け、定荷重発生手段7によって応力を負荷し、試験片が破断するまでの時間及び破断時の鋼中の水素量を測定する。
なお、水素チャージは図7に例示した装置によって行うことができる。即ち、試験片1を電解槽3に満たした電解溶液中に浸漬し、電流発生手段6により電流密度を変化させ、電極5により試験片を陰極として水素チャージを行う。その際、電解溶液の組成、電流密度、チャージ時間によって、試験片に吸蔵させる水素量を変化させることができる。なお、図7に示した電極5は、白金線を複数の円状としたものであるが、スパイラル状、板状、棒状であっても良い。
また、カドミウムめっき及び亜鉛めっきも、図7に例示した水素チャージ装置と同様の電解装置を用いて電気的に行うことができる。なお、めっき層の厚みは、電流密度及び時間によって制御することができる。一方、破断後の試験片からめっき層を除去する場合は、図7に例示した水素チャージ装置と同様の電解装置を用いて、試料を陽極にして電気的に除去すれば良い。
カドミウムめっきは、電解槽3を、例えば、Cd(BF)、NH(BF、HBOからなるめっき浴とし、電極5を棒状のカドミウムとして行えば良い。亜鉛めっきは、例えば、ZnCl、NHClからなるめっき浴を用いて、板状の電極を試験片の周囲に配置して行えば良い。
また、水素チャージを行いながら引張応力を負荷する方法においても、水素チャージ及びめっきを施した試験片に引張応力を負荷する方法においても、破断するまでの時間を測定することにより、所定の応力条件で薄鋼板が破断する限界破断時間を求めることができる。
更に、破断後の試験片から採取した試料の水素量を測定すれば、薄鋼板が破断する限界拡散性水素量を測定することができる。拡散性水素の測定は、試料を100℃/hの昇温速度で加熱し、室温から300℃までに試料から放出される水素量をガスクロマトグラフで測定する、昇温水素分析法で行う。なお、試験片の表面にめっき層を設けて試験を行った場合は、水素量を測定する前にめっき層を除去する。
表1に示す組成を有する鋼を、表2に示す条件で製造した鋼A及びBの薄鋼板から図2に示す切り欠き付き試験片を採取した。表2には、JIS Z 2201の5号試験片を用いて、JIS Z 2241に準拠した引張試験によって測定された降伏強度及び引張強度も示した。
試験片の形状の詳細を表3に示す。これらの試験片の水素脆化特性を、図3に示した装置を用いて評価した。なお、試験片は、部分安定化ジルコニアからなる支持ピンを介して定荷重発生手段に連結された冶具に取り付けた。電解槽には、pHを約5.5としたチオシアン酸アンモニウム溶液を満たし、白金線からなる電線と電極をポテンシオスタットに接続し、0.1mA/cm2の定電流を印加した。
更に、切り欠き底部の平均応力が引張強度の0.9倍になるように、即ち応力比を0.9として定荷重を負荷し、破断時間を測定した。鋼Aについては、応力比を0.6とする試験も行った。破断後、試験片から試料を採取し、ガスクロマトグラフによる昇温水素分析法で鋼中の拡散性水素量を測定した。
各条件についてそれぞれ5回の試験を行った。結果を表4に示す。表4より本発明の評価方法では比較法に比べてばらつきが少なく、鋼材間の水素脆化特性の優劣や負荷応力の影響を正確に判断できることがわかる。
Figure 0004901662
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表1に示す組成を有する鋼を表5に示す条件で熱間圧延し、冷間圧延した後、焼鈍し、焼き戻しを施した。得られた鋼板の引張試験をJIS Z 2201の5号試験片を用いて、JIS Z 2241に準拠して行った。降伏強度及び引張強度を表5に示す。この鋼板から、表6に示す形状の試験片を作製した。
これらの試験片をチオシアン酸アンモニウム溶液中に浸漬し、電流密度を0.1mA/cm2とし、チャージ時間を18時間として水素チャージを行った。その後、カドミウムめっきは、Cd(BF4)2、NH4(BF42、H3BO3からなるめっき浴を用いて、亜鉛めっきは、ZnCl2、NH4Clからなるめっき浴を用いて行った。
めっき後、24時間放置して試験片中の水素濃度を均一化させた後、図6に示した定荷重試験装置に取り付け、応力比を0.9として引張応力を負荷し、破断までの時間を測定した。また、破断後の試験片からめっき層を電気的に除去し、試料を採取して、100℃/hの昇温速度で加熱し、室温から300℃までに放出される水素量をガスクロマトグラフで測定した。なお、各条件について、それぞれ5回の試験を行った。
表7に示したように、本発明の評価方法では比較法に比べてばらつきが小さく、水素チャージ及びめっきを施した試験片に引張応力を負荷する方法においても、水素脆化特性を正確に判断できることがわかる。
Figure 0004901662
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Figure 0004901662
限界拡散性水素量を示す図である。 本発明の試験片の一態様の模式図である。 本発明の水素チャージ及び応力負荷を行う試験装置の一態様の模式図である。 切り欠き中心の位置と水素量との関係を示す図である。 応力集中係数αと水素量との関係を示す図である。 本発明の応力負荷を行う試験装置の一態様の模式図である。 本発明の水素チャージ又はめっきを行う装置の一態様の模式図である。
符号の説明
1 試験片
2 支持ピン
3 電解槽
4 治具
5 電極
6 電流発生手段
7 定荷重発生手段
8 めっき層
D 試験片の平行部の幅
r 切り欠きの先端半径
d 底部の幅

Claims (8)

  1. 薄鋼板からなり、平行部の両側面に切り欠きを有し、該切り欠き部の応力集中係数αが3.0〜4.0であり、前記平行部の一側面に設けた前記切り欠きの中心と、他側面に設けた前記切り欠きの中心との長手方向の差が20μm以内であり、さらに試験片の平行部の幅Dと、切り欠きの先端半径r及び底部の幅dとが、
    0.5≦d/D≦0.7
    0.025≦r/D≦0.05
    を満足することを特徴とする薄鋼板水素脆化評価用試験片。
  2. 請求項1に記載の薄鋼板水素脆化評価用試験片を、電解槽内の治具に取り付け、該薄鋼板水素脆化評価用試験片及び該治具を電解溶液中に浸漬し、電流発生手段と電極により、該薄鋼板水素脆化評価用試験片に水素チャージを行いながら、定荷重発生手段によって応力を負荷し、破断するまでの時間を測定することを特徴とする薄鋼板水素脆化評価方法。
  3. 破断後の薄鋼板水素脆化評価用試験片から試料を採取し、水素量を測定することを特徴とする請求項に記載の薄鋼板水素脆化評価方法。
  4. 薄鋼板水素脆化評価用試験片を、部分安定化ジルコニア又はサイアロンからなる支持ピンによって、定荷重発生手段に連結される治具に取り付けることを特徴とする請求項2又は3に記載の薄鋼板水素脆化評価方法。
  5. 電解溶液のpHが3〜6であることを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の薄鋼板水素脆化評価方法。
  6. 水素チャージの電流密度が0.05〜0.1mA/cm2であることを特徴とする請求項2〜5の何れか1項に記載の薄鋼板水素脆化評価方法。
  7. 請求項1に記載の薄鋼板水素脆化評価試験片に水素チャージを行った後、該薄鋼板水素脆化評価試験片の全面にCdめっき又は亜鉛めっきを施し、定荷重発生手段によって該薄鋼板水素脆化評価試験片に応力を負荷し、破断するまでの時間を測定することを特徴とする薄鋼板水素脆化評価方法。
  8. 破断後の薄鋼板水素脆化評価用試験片から試料を採取し、水素量を測定することを特徴とする請求項に記載の薄鋼板水素脆化評価方法。
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