JPH1130577A - 鋼材の遅れ破壊性評価方法、評価装置及び侵入水素量の測定方法 - Google Patents

鋼材の遅れ破壊性評価方法、評価装置及び侵入水素量の測定方法

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JPH1130577A
JPH1130577A JP19913297A JP19913297A JPH1130577A JP H1130577 A JPH1130577 A JP H1130577A JP 19913297 A JP19913297 A JP 19913297A JP 19913297 A JP19913297 A JP 19913297A JP H1130577 A JPH1130577 A JP H1130577A
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JP
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steel material
hydrogen
delayed fracture
fatigue
bending
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JP19913297A
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Munekatsu Shimada
宗勝 島田
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Nissan Motor Co Ltd
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  • Investigating Strength Of Materials By Application Of Mechanical Stress (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 微量水素侵入下での鋼材の遅れ破壊性を評価
できる評価方法、評価装置及び微量の侵入水素量を簡易
に測定できる測定方法を提供すること。 【解決手段】 円周状の切欠を有する棒状鋼材を疲労さ
せ、疲労破壊するまでの回数を求め、遅れ破壊性を評価
する方法である。鋼材に静的な曲げ荷重を一定時間加
え、更に曲げ疲労させて破断させる。遅れ破壊性の評価
の際、鋼材中の侵入水素量を測定する方法である。鋼材
に水素侵入処理を施し、本発明の評価方法を適用して、
処理した鋼材の疲労破断回数を測定し、類似形状の他の
鋼材を曲げ疲労させて疲労破断回数を測定し、疲労破断
回数同士を対比する。評価装置は、試験片10の一端を
保持する第1把持部材20と、他端を保持する第2把持
部材22と、回転軸30とを備える。第2把持部材に
は、カップリング52を介して竿40が連結されてい
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼材の遅れ破壊性
を評価する方法及び装置に係り、更に詳細には、微量水
素侵入下での鋼材の遅れ破壊性を評価できる破壊性評価
方法及び破壊性評価装置、並びに鋼材の遅れ破壊性に影
響を与える侵入水素量を簡易に測定できる侵入水素量の
測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鋼材に微量の水素が侵入すると、鋼材が
脆化現象を起こすため、従来から、その対策に精力的な
努力がなされてきている。特に、近年の分析技術の進歩
に伴い、鋼の遅れ破壊についての現象の解明がなされつ
つあるが、まだ解明し尽くされているわけではない。遅
れ破壊についての近年までの研究成果は、松山晋作著
『遅れ破壊』日刊工業新聞社、1989(以下、「文献
1」とする。)にまとめられている。また、(社)日本
鉄鋼協会主催の高強度鋼の遅れ破壊研究会の成果は、
『遅れ破壊解明の新展開』1997(以下、「文献2」
とする。)として、ごく最近まとめられた。
【0003】即ち、鋼材の遅れ破壊に関する従来技術で
は、分析技術の進歩により、鋼中の水素は0.01pp
mのレベルまで分析できるようになってきており、ま
た、遅れ破壊促進試験法についても様々な試みがなされ
ており、かかる試験法は文献1や2に詳述されている。
【0004】ここで、鋼材の遅れ破壊促進試験法の代表
的なものは、切欠を設けた試験片に曲げ応力を与え、切
欠部を酸に浸漬することにより水素を添加し、試験片が
破断するまでの時間を求めるものであり、曲げ応力のレ
ベルを高くすることにより、破断までの時間を短縮でき
るが、縦軸に応力、横軸に時間をプロットして、遅れ破
壊性を評価する方法である。
【0005】また、鋼材の遅れ破壊性を簡易的に調べる
方法として、低歪速度試験(SSRT)もよく行われて
いる。この試験は、試験片に水素を予め添加するか又は
水素を添加しながら、試験片を1日程度かけて徐々に引
っ張り、破断するまでの歪−応力線を求めるものであ
り、遅れ破壊し易い鋼材の場合、水素添加したものは非
添加のものに比し十分には歪まない状態で破断してしま
うことから、その破断までの様子を比較して、遅れ破壊
性を評価する方法である。
【0006】更に、かかる促進試験の際に、AE(アコ
ースティック・エミッション)を測定することにより、
微小亀裂の発生をとらえたり、電気抵抗値の変化によ
り、亀裂の進展をとらえる試みもなされている。以上、
従来技術について簡単に述べたが、これらの詳細は上記
文献1や2に詳細に記載されているので、ここでは割愛
する。
【0007】なお、鋼材の強度レベルと遅れ破壊性の関
係については、強度レベルが増すほど遅れ破壊し易くな
ることが知られている。また、ボルト・ナットには、防
錆を目的に電気亜鉛メッキがなされるが、電気亜鉛メッ
キの際に水素が侵入することがよく知られており、詳細
な研究もなされている。かかる現象については、文献2
の第238、239頁及び当該箇所での引用文献に詳し
く述べられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来技術には、以下のような課題がある。即ち、鋼中
に侵入している微量の水素は、高価な分析装置を使用す
れば、0.01ppmのレベルで分析可能であるが、多
大な時間と費用とを費やし、実施するには制限が付きま
とう。また、酸浸漬等による曲げ遅れ破壊試験法では、
鋼材の遅れ破壊性の評価はできるが、メッキの際に鋼に
侵入する水素量については、情報が得られない。
【0009】更に、低歪速度試験でも、メッキの際に鋼
に侵入する水素量が微量である場合には、水素の有無を
判別しにくい。更にまた、AEや電気抵抗の測定におい
ても、メッキの際に鋼に侵入する微量の水素による亀裂
の発生についての判別は、水素量が多量でないと困難で
ある。以上のように、従来技術では、メッキの際に鋼に
侵入する微量の水素を簡易に評価できないという課題が
あった。
【0010】本発明は、このような従来技術の有する課
題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところ
は、メッキのような微量水素侵入下での鋼材の遅れ破壊
性を評価できる破壊性評価方法及び破壊性評価装置、並
びにかかる微量の侵入水素量を簡易に測定できる侵入水
素量の測定方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意研究した結果、鋼に侵入した微量の水
素を集め、水素の濃度を部分的に高めることにより、鋼
材に微小な亀裂を生じさせればよいことを知見した。即
ち、曲げ応力を与えることにより、応力誘起拡散を利用
して、引っ張り応力部に水素を集結させたところ、引っ
張り応力下でもあるため、ある程度の濃度に達すると微
小亀裂が生じ、疲労までの回数を減少させることができ
ることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】即ち、本発明の鋼材の遅れ破壊性評価方法
は、円周状の切欠を有する棒状鋼材を疲労させ、疲労破
壊するまでの回数を求めることにより、鋼材の遅れ破壊
性を評価するに当たり、上記棒状鋼材に静的な曲げ荷重
を一定時間加え、次いで、曲げ疲労させて破断させるこ
とを特徴とする。
【0013】また、本発明の侵入水素量の測定方法は、
円周状の切欠を有する棒状鋼材を疲労させ、疲労破壊す
るまでの回数を求める鋼材の遅れ破壊性を評価する際、
上記棒状鋼材に侵入している水素量を評価するに当た
り、上記棒状鋼材に水素侵入処理を施した後、上述の評
価方法を適用して、この水素侵入処理した棒状鋼材の疲
労破断回数を測定し、上記棒状鋼材と実質的に同一な他
の棒状鋼材を、曲げ疲労させて疲労破断回数を測定し、
得られた疲労破断回数同士を対比することにより、侵入
水素量を算出することを特徴とする。
【0014】更に、本発明の遅れ破壊性評価装置は、上
述の評価方法に用いられる鋼材の遅れ破壊性評価装置で
あって、上記棒状鋼材の端部を支持する第1把持部材及
び第2把持部材と、第1把持部材に連結しこの棒状鋼材
を回転させる回転軸及び回転駆動部と、第2把持部材と
連結しこの棒状鋼材に曲げ荷重を印加する竿部材とを備
えることを特徴とする。
【0015】
【作用】本発明の評価方法においては、円周状の切欠を
有する棒状鋼材に、曲げ疲労させる前に静的な曲げ荷重
を一定時間加えるので、鋼材に微量の水素が含まれてい
る場合には、切欠部の引っ張り応力が働いている部分
に、応力誘起により水素が集積してきて、かなりの濃度
に達し、且つ引っ張り応力が働いているので、微小亀裂
が発生することになる。そして、かかる微小亀裂が生じ
ると、曲げ疲労によって鋼材が早期に破断するので、遅
れ破壊の評価を確実且つ迅速に行うことができる。
【0016】また、上述のようにして得られる疲労破断
回数を、水素侵入処理の有無や侵入水素の有無で比較す
ることにより、鋼材中に侵入している水素量を簡易的に
評価することができる。
【0017】更に、遅れ破壊性や侵入水素量を調査しよ
うとするボルト類に対し、ボルトのネジ底とほぼ同一形
状の切欠を有する棒状鋼材を当該ボルトと同時にメッキ
し、この棒状鋼材に、上述の遅れ破壊性評価方法や侵入
水素量測定方法を適用することにより、ボルト類の遅れ
破壊性評価や、メッキの際にボルトに侵入する微量の水
素量を簡易的に測定することができる。
【0018】また、上記遅れ破壊性評価方法や侵入水素
量の測定において、曲げ疲労を回転曲げにより行うこと
にすれば、より短時間で微小亀裂の発生状況や水素量を
評価できることになる。
【0019】更に、本発明の評価装置においては、第1
把持部及び第2把持部を棒状鋼材から脱着することな
く、静的曲げ荷重の印加と曲げ疲労を行うことができる
ので、作業性・取扱い性を向上することができる。
【0020】また、連結部材を用いて、第1把持部材及
び回転軸と回転駆動部とを切り離し自由な状態で連結す
れば、装置設計の自由度を増大し、メンテナンスを容易
にすることができる。更にまた、回転駆動部の個数を上
記荷重印加部の個数より少なくし、1個の回転駆動部で
複数個の荷重印加部を作動させることも可能であり、こ
のようにすることにより、装置全体としてのコストを低
減することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、図面を参照して
詳細に説明する。まず、本発明の評価方法について説明
する。図1は、本発明の効果を検証するために試作した
棒状の試験片を示す側面図である。まず、鋼材としてS
CM435を用い、HRC31狙いで焼入れ・焼戻しを行
った。その後、図示の寸法に加工し、次いで、中央部に
塑性加工を施し、切欠底径が約φ7mmになるように、
切欠を設けた。
【0022】切欠部の開き角は約90°で、切欠底のR
は、0.01R程度となった。なお、この試験片は、引
っ張り強さが90kgf/mm2のボルト、いわゆる9
Tボルトを想定して作成したものである。また、切欠
は、ボルトのねじ底を模擬することを狙ったが、切欠底
のRは、ねじ底よりも若干鋭利になってしまっている。
【0023】なお、確認のため、試験片作製後に断面組
織観察及び芯部硬さ測定を行ったところ、組織は焼戻し
マルテンサイトとなっており、芯部硬さは、323Hv
であった。また、切欠部には、塑性加工によるフローが
観察された。また、この試験片より、引張試験片を切り
出して測定した引張強度は、108kgf/mm2であ
った。
【0024】図2は、本発明の評価装置の概略を示す断
面図である。本装置の詳細な説明は後述するが、同図に
示すように、図1の試験片10の一端を固定し、他端に
図示したような竿40を取り付ける。竿40の先には、
重り70により荷重が負荷できるようになっている。な
お、切欠部12から重り70までの長さLは、450m
mである。
【0025】ここで、図2中の矢印Aの位置、即ち試験
片10の端から40mmの位置において、変位と荷重と
の関係を求めた一例を図3に示す、図3では、変位を横
軸、荷重を縦軸にとってプロットしてある。同図には、
荷重10kg付近から、変位と荷重との関係が直線から
外れてくることが示されており、即ち、この例では、荷
重10kg付近から塑性変形が始まっていること分か
る。
【0026】一方、図2において、切欠部12を酸に浸
漬し、ある一定荷重を印加して放置すると、従来の遅れ
破壊促進試験が実施できる。この場合、酸としては、例
えば0.1N塩酸を用いればよい。なお、上述のような
熱処理を施した試験片10では、概ね10kg荷重を負
荷すると、100時間程度で遅れ破断する。
【0027】このように、遅れ破断させるためには、酸
浸漬などによって水素が多量に供給される必要がある。
ところが、本発明で対象とする微量の水素が侵入してい
る鋼材では、破断しないのである。この点を以下に実証
する。
【0028】上述の試験片10に、電気亜鉛メッキ(以
下、「条件A」とする。)した試料を作成した。この
際、通常は遅れ破壊を回避するために、ベーキングを実
施して水素抜きを行うが、ここでは、ベーキングは省略
した。得られたメッキ済み試料は、曲げ荷重を負荷して
放置する、いわゆる遅れ破壊試験では、曲げ荷重を十分
に高めた場合でも破断しなかった。この現象は、電気亜
鉛メッキの際に侵入した水素が微量であるがために、試
料を破断させるのに十分な大きさの亀裂を発生させるま
でには、亀裂が成長しないことを示していると考えるこ
とができる。なお、切欠底には、割れも見い出せなかっ
た。
【0029】上述のことより、試料(鋼材)が破断する
には、ある大きさの初期亀裂が必要であり、また、微小
亀裂がその大きさにまで成長するためには、これに必要
な水素量が存在するということが推察される。なお、電
気亜鉛メッキをすると、メッキ層は水素の拡散を妨げる
ので、鋼中に侵入した水素は、抜けないことが知られて
いる。本発明は、このような微量の水素を簡易に評価す
る装置を提供することを目的の1つとしている。
【0030】以上の現象及び推察を踏まえて、本発明者
は、微量の水素であっても微小亀裂までは発生させるこ
とができるはずであると考えた。即ち、試料に曲げ荷重
を与えて放置すれば、応力誘起拡散により、水素は切欠
部の引張応力部に集中し、この結果、集中した水素量に
見合った微小亀裂が生じることが推察される。そして、
微小亀裂が生じていれば、疲労させたときに鋼材早期に
破断することになり、遅れ破壊性を確実且つ迅速に評価
できると考えられる。
【0031】以下、上記推論を検証する。上述のような
試験片10において、切欠部12の径をdとするとき、
切欠部の曲げ応力σは、 σ=32M/πd3・・・(1) で与えられる。ここで、Mは曲げモーメントの大きさで
ある。メッキしていない試験片を用い、この試験片を回
転曲げ疲労させて105回程度で破断する曲げ応力を選
択した。この場合、この曲げ応力は、約59kgf/m
2であった。
【0032】次に、電気亜鉛メッキ(条件A)した試験
片に、σ≒122kgf/mm2の曲げ応力を与えたま
ま24時間放置した。その後、約59kgf/mm2
回転曲げ疲労させたところ、104回程度で破断した。
図4にこれらのデータを示す。
【0033】一方、メッキしていない試験片に、σ≒1
22kgf/mm2の曲げ応力を与えてから、約59k
gf/mm2で回転曲げ疲労させても、その破断までの
回数は105程度であった。また、電気亜鉛メッキ(条
件A)した試験片を、約59kgf/mm2で回転曲げ
疲労させても、その破断までの回数は105回程度であ
り、メッキしなかった試験片との有意差は、認められな
かった。上述の結果から、回転曲げ疲労は引張りと圧縮
の繰り返しなので、水素が微量な場合、疲労破断までの
回数には、影響が現れないと考えられる。
【0034】以上の結果から、上記推論が正しかったこ
とが実証された。。なお、参考のため、メッキ及び曲げ
荷重(静的荷重)を施した試験片における破面のSEM
観察を実施し、図5に破面の様子を模式的に示した。同
図において、A部は疲労破面であり、ストライエーショ
ンが観察された。また、B部はディプル状の破面であ
り、B部が最終破断面である。C部には、20μm程度
の微小亀裂の痕跡が数個観察された。粒内割れのいわゆ
る擬劈開破面であった。上述の実験では、この微小亀裂
が引金になって、試験片が早期破断したと考えられる。
なお、C部の位置は、静的に曲げ応力を与えたときの引
張応力部直下である。
【0035】次に、本発明の評価方法における静的曲げ
応力の印加時間について説明する。上述の実験では、静
的曲げ応力を24時間印加したが、この印加時間は、水
素が応力誘起で集まってくる時間以上であればよい。こ
こで、鋼中の水素の拡散係数Dは、1.5×10-6cm
2/secというデータ(室温)が知られている。図1
に示したように、切欠底径が7mmなので、x=0.3
5cmとし、tを時間とするとき、水素の拡散する距離
はx=(2Dt)1/2で見積もられるので、これよりt
を見積もると、11.3hrとなる。この時間、約12
hr以上については、特に実験データを示さないが、実
験によって確認できた。このように、本発明の評価方法
では、水素が鋼材の切欠底径の半分を拡散するのに要す
る時間以上、静的曲げ応力を加えればよいことが分か
る。
【0036】次に、静的曲げ応力の大きさについて説明
する。実験によって確認してみたところ、105回程度
で試験片(鋼材)回転曲げ疲労破断する際の曲げ応力σ
0の1.5倍〜2.5倍の範囲でよい結果が得られるこ
とが分かった。1.5倍未満では、図4のような顕著な
差がみられなくなってくる。また、2.5倍を超える
と、メッキしないものも早期破断するようになってくる
ため、やはり顕著な差がみられなくなってしまい、好ま
しくない。このことは、静的曲げ応力が2.5倍より大
きいときには、静的曲げ時にクラックが発生してしまう
ことが、その原因であると考えられる。なお、上述の関
係は、静的曲げ応力の印加時間に依存しないことも実験
的に確認された。
【0037】次に、本発明の侵入水素量測定方法につい
て説明する。ここで、回転曲げ疲労の際の曲げ応力をσ
0とし、メッキしない場合の破断までの回数をN0とす
る。また、メッキして静的曲げ応力を一定時間以上印加
してから回転曲げ疲労させ、破断したときの回数をNH
とする(図6参照)。そして、NH/N0なる量を求める
と、NH/N0が鋼中に含まれている微量の水素量の一つ
の指標になると考えられる。図4の場合、σ0=59k
gf/mm2とすると、N0=8.8×104、NH=8.
7×103であるから、NH/N0=0.099となる。
なお、この測定方法に関する実施例は後に示すが、それ
らも含めてまとめたのが表1であり、図7である。
【0038】次に、本発明の評価装置について説明す
る。上述のように、本装置の概略は図2に示されてい
る。同図において、この評価装置は、切欠付き試験片1
0の一端を保持する第1把持部材20と、他端を保持す
る第2把持部材22と、図示しない回転駆動部により回
転する回転軸30とを備えており、第2把持部材には、
カップリング52を介して竿40が連結されている。
【0039】また、第1把持部材20は、カップリング
50により回転軸30と連結しており、試験片10が回
転可能な構成となっており、且つ竿40もカップリング
52を介して試験片10とともに回転可能な構成となっ
ている。なお、回転軸30は、支持台80に回転可能な
状態で取り付けられており、回転軸30と支持台80と
の間には、ベアリング60が設置されている。一方、第
2把持部材に連結された竿40の端部には、試験片10
に曲げ荷重を印加する重り70が吊り下げられている
が、竿40と重り受け72との間にもベアリング62が
設置されている。
【0040】次に、本装置を用いた鋼材の遅れ破壊性評
価について説明する。まず、試験片10に竿40及び重
り70により静的な曲げ応力を与え、そのままの状態で
一定時間保持する。静的な曲げ応力の大きさは、上記
(1)式で算出する。この際、切欠部12の径について
は、直行する二方向で測定しておき、その平均値を用い
るのが好ましく、かかる径を用いると、特に回転曲げ疲
労のデータを整理するときに良好である。
【0041】次に、重り70の重量を減少し、回転軸3
0を回転させて試験片10を回転曲げ疲労させる。回転
曲げ応力も(1)式で算出すればよい(実際には、重り
70をいくら載せるかで管理すればよい。)。かかる回
転は、回転軸30を図示していないカップリングを介し
て回転駆動部の一例であるモータ(図示せず。)で行え
ばよい。まず、重り70を乗せない状態で緩徐に回転さ
せ始め、徐々に回転数を上げていく。目的の回転数(一
定)になってから、重り70を乗せて回数を数え始め
る。図示しない探知装置によって、破断を探知したら、
モータの回転を止め、破断までの回数の記録を残す。こ
れらの動作、即ち破断探知、モータ回転off及び破断
までの回数記録は、自動で行えるようにしてある。
【0042】上述のように、この評価装置では、回転曲
げ疲労の際の回転を与える部分がカップリングにより、
簡単に切り離せる構造になっている。この構成は、回転
曲げ疲労の時間が静的曲げの時間に比べて充分に短いこ
とを考慮したものであり、一例として、回転曲げ疲労の
際の回転数を1000rpmとすると、105回でも1
00分間で評価が終了するが、静的曲げは、12時間以
上を要する。このような状況において、この評価装置で
は、図2に示す第1把持部材、試験片10、第2把持部
材22、竿40及び重り70を有する曲げ試験装置を4
つ並べた4連のものでも、モータは1個で足りてしまう
ので、回転を与える部分を切り離せる構造としたわけで
ある。
【0043】また、静的曲げだけを別の曲げ試験装置を
仕立てて行うことも可能である。これにより、静的曲げ
だけパラレルに何本でも実施することが可能となるが、
その際、試験片の脱着は操作が煩雑であるため、試験片
のみ取付け直すのは意外と面倒である。そこで、本発明
の評価装置では、把持部20及び22は、静的曲げ試験
のときと、回転曲げ疲労試験のときにおいて、取り外さ
なくてよいようにしてある。即ち、図2に簡略的に示し
てあるが、カップリング50、52を用いることによ
り、把持部との連結を図るようにしているのである。な
お、以上の説明から明らかなように、本装置は、鋼材の
遅れ破壊性評価のみならず、侵入水素量の測定にも使用
できることは言うまでもない。
【0044】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではな
い。
【0045】(実施例1)電気亜鉛メッキ(MFZn8
C)、条件Aの際に侵入する水素量について検討した。
詳細については、上述の通りである。評価結果を図4に
示した。また、NH/NOも上述した(表1、図7参
照)。更に、水素抜きのベーキングを加えた。条件は、
200℃×4時間である。その後評価した結果、N
Hは、9.0×104で、NH/NOは1.02となった。
即ち、メッキしないものと、ほとんど同じになった。こ
のように、本装置によれば、ベーキング効果も確認でき
る。
【0046】(実施例2)別の条件Bでの電気亜鉛メッ
キについても検討してみた。得られた結果を表1及び図
7に示す。この場合には、条件Aの場合よりも、侵入水
素量が増しているものと考えられる。更に、条件Bにお
いて、故意にメッキ前の酸洗いの時間のみを10倍とし
てからメッキをしてみた。即ち、条件Bでは、酸洗いの
時間が20秒であったが、これを200秒にした。この
ようにして作成した試験片の本評価装置による評価結果
を、表1及び図7にB’として示した。条件Bよりも更
に侵入水素量が増しているわけである。
【0047】なお、B’の条件でメッキした試験片につ
いて遅れ破壊曲げ試験も実施した。静的曲げ破断応力の
90%の曲げ応力で試験した結果、200時間以上経過
後には、切欠底部にはっきりわかる割れが発生したが、
400時間以上経過しても、破断するには至らなかっ
た。
【0048】以上、本発明を好適実施形態及び実施例に
より詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されるも
のではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が
可能である。例えば、上記実施形態及び実施例では、ボ
ルトの9T相当材である焼き入れ・焼き戻しマルテンサ
イト組織を有する鋼材を例に採って説明してきたが、こ
れに限定されるものではなく、他の鋼材についても、微
量の水素量を簡易的に評価できることは言うまでもな
い。
【0049】また、対象となるボルトとほぼ同一のネジ
底形状を有する試験片とを同時にメッキし、この試験片
に本発明の評価方法や水素量測定方法を適用すれば、当
該ボルトの遅れ破壊性や侵入水素量をほぼ確実に予想で
きる。更に、指標NH/NOを実際の侵入水素量測定によ
り校正して検量線を作成しておけば、一層確実に水素量
測定を行うことも可能である。
【0050】
【表1】
【0051】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、曲げ応力を与えることにより、応力誘起拡散を利用
して、鋼に侵入した微量の水素を引っ張り応力部に集結
させ、水素の濃度を高めることにより、微小な亀裂を生
じさせ、疲労までの回数を減少させることとしたため、
メッキのような微量水素侵入下での鋼材の遅れ破壊性を
評価できる破壊性評価方法及び破壊性評価装置、並びに
かかる微量の侵入水素量を簡易に測定できる侵入水素量
の測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験片の形状を示す側面図である。
【図2】本発明の評価装置の概略を示す断面図である。
【図3】曲げ試験における変位と荷重の関係を示すグラ
フである。
【図4】本発明を検証するために行った実証データの一
部を示すグラフである。
【図5】電気亜鉛メッキ(条件A)を施した試験片の破
面を示す模式断面図である。
【図6】鋼材中の微量水素量の指標を得るために用いた
説明図である。
【図7】表1に示す指標を整理したグラフである。
【符号の説明】
10 試験片 12 切欠部 20 第1把持部 22 第2把持部 30 回転軸 40 竿 50,52 カップリング 60,62 ベアリング 70 重り 72 重り受け 80 支持台

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 円周状の切欠を有する棒状鋼材を疲労さ
    せ、疲労破壊するまでの回数を求めることにより、鋼材
    の遅れ破壊性を評価するに当たり、 上記棒状鋼材に静的な曲げ荷重を一定時間加え、次い
    で、曲げ疲労させて破断させることを特徴とする鋼材の
    遅れ破壊性評価方法。
  2. 【請求項2】 上記曲げ疲労を回転曲げにより行うこと
    を特徴とする請求項1記載の遅れ破壊性評価方法。
  3. 【請求項3】 上記静的曲げ荷重による曲げ応力の大き
    さσは、上記棒状鋼材が105回程度で疲労破断する際
    の曲げ応力σ0の1.5〜2.5倍であり、この静的曲
    げ荷重を印加している時間は、水素が上記棒状鋼材の切
    欠部の径の半分の長さを拡散するのに要する時間以上で
    あることを特徴とする請求項2記載の鋼材の遅れ破壊性
    評価方法。
  4. 【請求項4】 円周状の切欠を有する棒状鋼材を疲労さ
    せ、疲労破壊するまでの回数を求める鋼材の遅れ破壊性
    を評価する際、上記棒状鋼材に侵入している水素量を評
    価するに当たり、 上記棒状鋼材に水素侵入処理を施した後、請求項1〜3
    のいずれか1つの項に記載の評価方法を適用して、この
    水素侵入処理した棒状鋼材の疲労破断回数を測定し、 上記棒状鋼材と実質的に同一な他の棒状鋼材を、曲げ疲
    労させて疲労破断回数を測定し、 得られた疲労破断回数同士を対比することにより、侵入
    水素量を算出することを特徴とする鋼材の遅れ破壊性評
    価における侵入水素量の測定方法。
  5. 【請求項5】 上記水素侵入処理がメッキであることを
    特徴とする請求項4記載の侵入水素量の測定方法。
  6. 【請求項6】 メッキを施したボルト類の遅れ破壊性を
    評価するに当たり、当該ボルトと、このボルトのネジ底
    と類似の切欠を有する棒状鋼材とを同時にメッキし、得
    られたメッキ済み棒状鋼材に請求項1〜3のいずれか1
    つの項に記載の評価方法を適用することを特徴とするボ
    ルト類の遅れ破壊性評価方法。
  7. 【請求項7】 請求項6記載のボルト類の遅れ破壊性評
    価の際に当該ボルト中の侵入水素量を測定するに当た
    り、 上記メッキ済み棒状鋼材と、上記ボルトのネジ底と類似
    の切欠きを有する他の棒状鋼材とに、請求項4記載の測
    定方法を適用することを特徴とするボルト類の遅れ破壊
    性評価における侵入水素量の測定方法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜3のいずれか1つの項に記載
    の評価方法に用いられる鋼材の遅れ破壊性評価装置であ
    って、 上記棒状鋼材の端部を支持する第1把持部材及び第2把
    持部材と、第1把持部材に連結しこの棒状鋼材を回転さ
    せる回転軸及び回転駆動部と、第2把持部材と連結しこ
    の棒状鋼材に曲げ荷重を印加する竿部材とを備えること
    を特徴とする鋼材の遅れ破壊性評価装置。
  9. 【請求項9】 上記第1把持部材及び回転軸と回転駆動
    部とが、連結部材を介して切り離し自由な状態で連結さ
    れていることを特徴とする請求項8記載の遅れ破壊性評
    価装置。
  10. 【請求項10】 上記回転駆動部の数が、上記第1把持
    部材及び回転軸、第2把持部材及び竿部材を有する曲げ
    荷重印加装置の数より少ないことを特徴とする請求項8
    又は9記載の遅れ破壊性評価装置。
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