JP5081068B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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本発明は、燃料電池と二次電池とを併用して負荷に電力を供給する燃料電池システムに関する。
燃料電池(Fuel Cell:FC)と二次電池(以下、バッテリという)とを並列接続して負荷に電力を供給する電源システムは燃料電池ハイブリッドシステムとも呼ばれているが、以下の説明では燃料電池システムということにする。このような燃料電池システムにおいて、低負荷では燃料電池の発電効率が急激に低下するため、所定の低負荷領域では燃料電池の発電出力(以下、FC出力という)に下限リミットを設け、それ以下の領域では燃料電池を発電させないように設定されている。その下限リミットは、あらかじめ取得した燃料電池のFC出力と発電効率との関係を示す発電効率特性から、発電効率が低下し始めるポイント(つまり、発電効率が最大となる燃料電池のFC出力の値)に設定されている。したがって、燃料電池を発電させない低負荷領域においてはバッテリから負荷へ電力を供給している。また、バッテリのSOC(State Of Charge:残容量)が所定の値より低下したときには、燃料電池の発電電力を充電することによってバッテリのSOCの確保を図っている。このようにして、燃料電池からの電力供給とバッテリからの電力供給との電力配分を適正に行うことにより、燃料電池システムとしての電力効率(以下、システム効率という)を高い状態に維持して燃料電池の運転を行うことができる。
また、燃料電池とバッテリとを併用して負荷(例えば、モータ)に電力を供給するとき、燃料電池からの出力系統とバッテリからの出力系統とを独立して(つまり、燃料電池とバッテリとを並列接続しないで)、1つの負荷(モータ)へ電力を供給する燃料電池システムも開示されている。この燃料電池システムの場合も、発電効率の高い領域で燃料電池を定常運転し、発電効率の低い領域ではバッテリから負荷(モータ)へ電力を供給することにより、燃料電池システムのシステム効率を高い状態に維持することができる(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1には、燃料電池を効率よく運転可能な出力範囲の上限値及び下限値として設定する旨の記載がある。
特開平08−331705号公報
従来の燃料電池システムでは、前記したように燃料電池の発電出力の下限値(下限発電電力)を、予め取得しておいたシステムの発電効率から、その発電効率が低下し始める領域(例えば、発電効率が最大となる点)において設定している。つまり、システム発電効率が比較的良好な点を下限発電電力としている。しかしながら、発電効率が最大でも、低負荷走行時や回生電力が多いなどの理由で燃料電池システムの消費電力が少ない場合、燃料電池の出力電力は、ほとんどバッテリへまわされるため、結局バッテリが過充電状態となる。このため、バッテリの寿命を低下させる要因となる。このとき、余分な充電エネルギはバッテリから放電回路へ放電され、熱損失として消費されることになる。すなわち、燃料電池からバッテリへ充電しながら、そのバッテリから放電回路へ放電することは、発電電力で車両を直接走行させる場合に対して、バッテリの放電損失やDC(Direct Current)/DCコンバータと変圧器による変換損失などが発生するため、結果的に、燃料電池システムのシステム効率が悪化することになる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、燃料電池とバッテリとを併用して負荷へ電力を供給する電力系統において、低負荷時に燃料電池からバッテリへ必要以上の充電を行わないような燃料電池システムを提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明の燃料電池システムは、燃料電池と、この燃料電池の出力電力により充電される蓄電装置と、燃料電池及び蓄電装置から供給される電力により、燃料電池システムの動作時において常時駆動するシステム負荷と、蓄電装置の残容量を検出する残容量検出手段と、残容量検出手段が検出した残容量に応じて、燃料電池の下限発電電力を変化させることにより、燃料電池の下限発電電力を決定する下限発電電力決定手段と、システム負荷の消費電力の所定期間に亘る平均値を算出してシステム平均消費電力を求める電力平均値算出手段と、下限発電電力決定手段が決定した下限発電電力が、電力平均値算出手段の求めたシステム平均消費電力以下になるように制限する下限出力制限手段と、を備え、下限出力決定手段が決定した下限発電電力以上で燃料電池の出力電力を制御する構成を採っている。
このような構成によれば、下限出力制限手段は、燃料電池の下限発電電力がシステム平均消費電力以下になるように制限しているので、燃料電池システムの低負荷運転時に不要に高い下限出力で発電することがなくなる。これによって、蓄電装置が充電過多となるおそれがなくなり、燃料電池システムのシステム効率を向上させることができる。
また、このような構成によれば、蓄電装置の残容量(SOC)を適切に維持するように下限発電電力を設定した後に、この下限発電電力をシステム平均消費電力以下に制限するため、不要に高い下限発電電力の防止を優先しつつ、蓄電装置の残容量に対応した下限発電電力を設定することができる。
請求項2に係る発明の燃料電池システムは、前記発明の構成において、電力平均値算出手段は、システム負荷の消費電力をローパスフィルタに通過させた後にシステム平均消費電力を求めている。
これにより、定常時の安定したシステム負荷の消費電力によってシステム平均消費電力を求めることができるので、燃料電池の下限発電電力を安定したシステム平均消費電力以下に制限することが可能となる。
請求項に係る発明の燃料電池システムにおいては、下限発電電力決定手段は、燃料電池を駆動するための補機の消費電力を含めた燃料電池の発電効率が最大となる出力電力を下限発電電力としている。
このような構成によれば、発電効率がよい燃料電池の出力電力を下限発電電力として設定した後に、下限発電電力をシステム平均消費電力以下に制限しているため、不要に高い下限発電電力の防止を優先しつつ、燃料電池の発電効率がよい下限発電電力を設定することができる。
請求項に係る発明の燃料電池システムは、前記各発明の構成に加えて、燃料電池システムの運転終了時におけるシステム負荷のシステム平均消費電力を記憶するシステム平均消費電力記憶手段を備え、下限出力制限手段は、燃料電池システムの運転再開時において、システム平均消費電力記憶手段に記憶されたシステム平均消費電力を初期値とする構成を採っている。
このような構成によれば、燃料電池システムを停止したときには、前回運転時のシステム平均消費電力を記憶しておくので、燃料電池システムを再起動したときには、記憶されているシステム平均消費電力を燃料電池の下限発電電力の上限値として設定することができる。これによって、燃料電池システムの再起動時において、不要に高い下限発電電力で運転が再開されるおそれがないので、蓄電装置が充電過多となるおそれはなくなり、燃料電池システムのシステム効率を向上させることができる。
本実施形態の燃料電池システムによれば、燃料電池の下限発電電力の上限リミットである上限値をシステム平均消費電力とすることにより、燃料電池の発電電力を減少させることができるので、低負荷時において燃料電池からバッテリへ必要以上の充電を行わないようにすることができる。これによって、蓄電装置の充電過多の防止や、燃料電池システムのシステム効率が悪化することを防止することができる。
本発明の燃料電池システムは、燃料電池の下限発電電力を発電効率の最大点に固定しないで、燃料電池の下限発電電力の上限値を燃料電池システムで常時消費される消費電力の平均値(以下、システム平均消費電力という)とすることにより、低い発電効率領域でも燃料電池を作動させ、必要以上にバッテリへ充電させないように構成されている。言い換えれば、燃料電池の下限発電電力の値を、燃料電池システムのシステム平均消費電力の値で上限することにより、バッテリへの過充電を防止するように構成されている。すなわち、燃料電池が、低負荷時においてシステム平均消費電力に相当する発電電力を出力すれば、燃料電池からバッテリへ必要以上の充電が行われなくなるため、燃料電池システムのシステム効率が向上する。以下、本発明の燃料電池システムにおける技術的手法について実施形態で詳細に説明する。
《実施形態》
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック図である。この燃料電池システムは、例えば、燃料電池1とバッテリ(高圧バッテリ2)とを電源として走行する電気自動車や船舶や航空機などに利用される。
図1に示すように、燃料電池システム20は、燃料電池1、蓄電装置としての高圧バッテリ2、電力分配装置3、インバータなどで構成されるPDU(Power Drive Unit)4、電気負荷としての走行モータ5、走行モータ5の駆動力をタイヤ7に伝達するトランスミッション6、燃料電池システム20全体の制御を行うECU(Electronic Control Unit:制御手段)8、燃料電池1へ燃料ガスや酸化剤ガスを供給するガス供給装置9、ダウンコンバータ10、エアコンディショナ(A/C)11、低圧バッテリ12、及びカーラジオやナビゲータなどのアクセサリ13等を有してなる。
この燃料電池システム20の主要な電力系統は、燃料電池1と高圧バッテリ2とが電力分配装置3を介して並列に接続され、電力分配装置3から出力された直流電圧がPDU4によって三相交流電圧に変換されて走行モータ5を駆動するように構成されているところである。そして、走行モータ5の駆動力がトランスミッション6を介して駆動輪であるタイヤ7に伝達され、車両を走行させるように構成されている。なお、高圧バッテリ2は、リチウム−イオン電池やニッケル水素電池などの単位セルが組み合わされた組電池によって高圧電圧を発生する。
また、高圧バッテリ2の出力側は、ガス供給装置9、ダウンコンバータ10、及びA/C11などが接続されており、またダウンコンバータ10によって高圧バッテリ2の高圧電圧(例えば、250V)を低圧電圧(例えば、12V)に降圧して低圧バッテリ12を充電すると共に、アクセサリ13に低圧電圧を供給するように構成されている。
なお、ガス供給装置9、ダウンコンバータ10、A/C11、アクセサリ13、走行モータ5、PDU4などをシステム負荷と記載することとする。
燃料電池1は、ガス供給装置9を構成するアノードガス供給装置から供給される燃料ガス(水素ガス)と、同様にガス供給装置9を構成するエアコンプレッサから供給される酸化剤ガス(酸素)との化学反応によって発電し、システム負荷に対し電力供給可能なものである。高圧バッテリ2は、燃料電池1と並列に接続され、電力分配器3を介して、燃料電池1から発電電力(FC出力)を受けることによって充電可能であると共に、システム負荷に対して電力供給可能なものである。
電力分配装置3は、ECU8による出力電力の配分指令(配分割合)に基づいて、走行モータ5へ供給する燃料電池1と高圧バッテリ2との出力電力の配分を行う。したがって、電力分配装置3にはDC/DCコンバータが内蔵されているが特に図示はされていない。なお、請求項1に述べる下限発電電力以上で燃料電池1の出力電力を制御する手段は、このECU8及び電力分配装置3によって実現される。
また、走行モータ5は、トランスミッション6を介して、タイヤ7を回転駆動させて車両を走行させる駆動力を発生させるものである。なお、車両の降坂中や減速中などにおいてはタイヤ7、トランスミッション6を介して走行モータ5が回転させられ、走行モータ5に回生電力が発生する。この回生電力はPDU4によって直流電圧に変換され、電力分配装置3を介して高圧バッテリ2に充電されるように構成されている。
ECU8は、高圧バッテリ2から電流I、電圧V、温度Tempなどを検出して高圧バッテリ2のSOC(残容量)を計算し、そのSOCの値に基づいて、電力分配装置3に対して燃料電池1の出力電力と高圧バッテリ2の出力電力の配分指令を行う。さらに、ECU8は、燃料電池システム20のシステム負荷で常時消費される消費電力(システム消費電力)を計算して、その平均値(システム平均消費電力)を求め、燃料電池1の下限発電電力の上限値をシステム平均消費電力の値とする動作を行う。すなわち、ECU8は、燃料電池1の下限発電電力を、発電効率が最大点から低下するシステム平均消費電力の値まで減少させる動作を行う。
なお、ECU8が、システム消費電力からシステム平均消費電力を求める方法は、システム負荷(ガス供給装置9、ダウンコンバータ10、A/C11、アクセサリ13、走行モータ5など)が常時消費するシステム消費電力の過去の所定期間の平均値によって求めている。
図2は、燃料電池の発電出力と発電効率との関係を示す発電効率特性図であり、横軸に燃料電池の発電出力(FC出力)を表わし、縦軸にシステムにおける発電効率を表わしている。図2に示すように、燃料電池は所定のFC出力P2のときに最大発電効率となり、FC出力が増加するにしたがって発電効率が徐々に低下していく。また、最大発電効率となるFC出力P2からFC出力の値を減少させていくと急激に発電効率が低下する。通常は、最大発電効率となるFC出力P2をFC出力下限値(下限発電電力)とし、FC出力を増加させていき発電効率が所定の値まで低下したときのFC出力P3をFC出力の上限値(上限発電電力)としている。そして、燃料電池はFC出力P2(FC出力の下限値)からFC出力P3(FC出力の上限値)までの範囲で発電電力を発生させ、その範囲を超えた領域(つまり、FC出力P2以下の領域とFC出力P3以上の領域)では、燃料電池の運転を停止している。
ところが、FC出力P2が燃料電池1の下限発電電力であると、たとえ、発電効率が良好でも、負荷容量が少ないとき(例えば、低負荷走行や、回生電力が多いとき、すなわちシステム消費電力が小さいとき)に、燃料電池1の出力電力のほとんどは、高圧バッテリ2へまわされるため高圧バッテリ2が過充電状態になってしまうおそれがある。
そこで、燃料電池1は、走行モータ5などが停止していても、燃料電池システム20を運転継続させるための最小限のシステム負荷(ガス供給装置9、A/C11、及びアクセサリ13など)へシステム消費電力を常時供給していることに着目し、本実施形態では、燃料電池1の下限発電電力の上限値をシステム消費電力の平均値(システム平均消費電力)としている。すなわち、燃料電池1の下限発電電力(FC出力下限値)の上限値を図2のFC出力P1(システム平均消費電力)とすることにより、下限発電電力を最大発電効率における発電電力から低下させて、燃料電池1から必要以上に高圧バッテリ2へ充電させないようにしている。なお、システム平均消費電力は、システム負荷へ供給するシステム消費電力の過去の所定期間の平均値(例えば、移動平均)をとって求められている。
このようにして、本実施形態の燃料電池システム20においては、燃料電池1の下限発電電力の上限値をシステム平均消費電力(FC出力P1)とすることにより、燃料電池1の下限発電電力がシステム平均消費電力以下になるように制限しているので、燃料電池システム20の低負荷運転時に不要に高い下限出力で発電することがなくなる。これによって、蓄電装置が充電過多となるおそれがなくなり、燃料電池システムのシステム効率を向上させることができる。
次に、図1を参照しつつ、図3に沿って本実施形態に係るECU8の説明をする。図3は、本実施形態に係る燃料電池システムにおけるECUの機能構成を示すブロック図である。図3において、本実施形態に係るECU8の機能は、SOC算出部21、下限発電電力算出部22、LPF(Low Pass Filter)23、電力平均値算出部24、下限出力制限部25、及びシステム平均消費電力記憶部26などを有してなる。
SOC算出部(残容量検出手段)21は、燃料電池1の下限発電電力(FC出力下限値)の上限値を決定するために、高圧バッテリ2に設置してある各センサから電流I、電圧V、及び温度Tempなどを検出して、その高圧バッテリ2のSOC(残容量)の計算を行う。下限発電電力算出部(下限発電電力決定手段)22は、SOC算出部21が算出したSOCの値に基づいて、燃料電池1の下限発電電力(FC出力下限値)を決定する。
LPF23は、システム負荷より取得したシステム消費電力の過度変動分やノイズなどを除去するための平滑処理を行う。電力平均値算出部(電力平均値算出手段)24は、ガス供給装置9、ダウンコンバータ10、A/C11、アクセサリ13、走行モータ5などのシステム負荷の消費電力(システム消費電力)の所定期間に亘る平均値を算出してシステム平均消費電力を求める。
下限出力制限部(下限出力制限手段)25は、下限発電電力算出部22が算出した下限発電電力が、電力平均値算出部24の求めたシステム平均消費電力(上限値)以下になるよう、下限発電電力を制限する。言い換えると、下限出力制限部25は、燃料電池1の下限発電電力の上限値をシステム平均消費電力とすることによって、低い燃料電池1の発電電力でも燃料電池1を作動させ、必要以上に高圧バッテリ2へ充電させないようにしている。具体的には、下限出力制限部25は、下限発電電力がシステム平均消費電力(上限値)を超えると、下限発電電力の値をシステム平均消費電力とする。また、電力平均値算出部24は、システム平均消費電力記憶部(システム平均消費電力記憶手段)26に燃料電池システム20の運転終了時におけるシステム負荷のシステム平均消費電力を記憶させる。
次に、図1及び図3を参照しつつ、図4に沿って本実施形態に係るECU8の動作について説明する。図4は、図3に示すECUが燃料電池の発電電力下限値を求める処理の流れを示すフローチャートである。図4において、まず、電力平均値算出部24が、ガス供給装置9、ダウンコンバータ10、A/C11、アクセサリ13、走行モータ5などのシステム負荷の消費電力(システム消費電力)を検出し(ステップS1)、このシステム消費電力の所定期間の平均値を算出することによって、システム平均消費電力を算出する(ステップS2)。なお、このシステム平均消費電力は、電力平均値算出部24によってシステム平均消費電力記憶部26に記憶され、次回の燃料電池1の起動時に発電電力下限値として利用してもよいが、この詳細な説明は後述する。
次に、SOC算出部21が、高圧バッテリ2に設置されている各センサから電流I、電圧V、及び温度Tempを検出して、高圧バッテリ2のSOC(残容量)を算出する(ステップS3)。そして、下限発電電力算出部22が、SOC算出部21によって算出されたSOCの値に基づいて図5に示すようなMAPを検索し、燃料電池1における下限発電電力を算出する(ステップS4)。
図5は、高圧バッテリのSOCに基づいて下限発電電力を求める特性図であり、横軸にSOCを表わし、縦軸に下限発電電力補正値を表わしている。下限発電電力算出部22は、算出したSOCに対応する下限発電電力補正値を、図5に示す特性図(MAP)を検索することによって取得する。そして、取得した下限発電電力補正値をFC劣化発電電力に加算して下限発電電力を算出する。ここで、FC劣化発電電力は、燃料電池毎に定まる値であり、燃料電池が、これより低い電力を出力しようとすると、燃料電池を構成する部品から電子を供給しはじめることにより、燃料電池の劣化が生じはじめる出力電力である。つまり、SOCがZの値を示したとき、下限発電電力補正値は、0であるので下限発電電力は、FC劣化発電電力と一致する。SOCがZより小さい値を示したとき、下限発電電力算出部22は、対応する下限発電電力補正値(+の値)を加算して下限発電電力を算出する。また、SOCがZより大きい値を示したとき、下限発電電力算出部22は、対応する下限発電電力補正値(−の値)を加算して下限発電電力を算出する。なお、図5に示すMAPは、ECU8に設けられているROM(Read Only Memory)等に記憶されている。
再び図4に戻って、下限出力制限部25が、ステップS2で求めたシステム平均消費電力を、ステップS4で求めた下限発電電力の上限値とするように上限リミット処理を行う。言い換えると、下限出力制限部25は、下限発電電力の上限値をシステム平均消費電力とする上限リミット処理を行い(ステップS5)、燃料電池1の発電電力の下限値を決定する。具体的には、下限出力制限部25は、下限発電電力算出部22が算出した下限発電電力が、電力平均値算出部24によって算出されたシステム平均消費電力(上限値)より大きい値となっているか否かを判定する。そして、判定の結果、下限発電電力がシステム平均消費電力以下であれば、下限発電電力をそのままとし、下限発電電力がシステム平均消費電力より大きければ、下限発電電力の値をシステム平均消費電力の値とする。ECU8は、ステップS1からステップS5の処理をイグニッションがOFFになるまで繰り返す。
このようにして、ECU8は、燃料電池1の下限発電電力の上限値をシステム平均消費電力とすることによって、燃料電池1の下限発電電力がシステム平均消費電力以下になるように制限しているので、燃料電池システム20の低負荷運転時に不要に高い下限出力で発電することがなくなる。これによって、蓄電装置が充電過多となるおそれがなくなり、燃料電池システムのシステム効率を向上させることができる。これにより、低負荷時において、高圧バッテリ2へ必要以上の充電が行われないようになり、結果的に燃料電池システム20のシステム効率を向上させることができる。
なお、ステップS4で述べたSOCの値に基づいて下限発電電力を求める方法とは別に、前述の図2に示した燃料電池のFC出力と発電効率との関係を示す発電効率特性図のように、発電効率が最大となるFC出力の値(P2)を下限発電電力とする方法もある。また、この発電効率が最大となるFC出力の値(P2)を基準として、SOCが高い値を示しているときは、下限発電電力をSOCに応じて低くし、SOCが低い値を示しているときは、下限発電電力をSOCに応じて高くするなどしてもよい。
また、システム平均消費電力記憶部26に過去のシステム平均消費電力を記憶させておけば、次回の燃料電池1の起動時において、燃料電池1の下限発電電力の上限値をシステム平均消費電力記憶部26に記憶されたシステム平均消費電力とすることができる。これによって、燃料電池の起動時においても蓄電装置(高圧バッテリ2)へ必要以上の過充電が行われるおそれがない。
以上説明したように、本実施形態の燃料電池システムによれば、燃料電池の下限発電電力をシステム平均消費電力で上限することで、燃料電池から必要以上に高圧バッテリへ充電させないようにすることができる。これによって、燃料電池システムを高効率制御してシステム効率を向上させることが可能となる。
《実験結果》
図6は、本発明の実施形態に係る燃料電池システムの実験結果による各種特性図であり、横軸に経過時間を表わし、縦軸に電力を表わしている。図6に示すように、燃料電池の駆動中にシステム負荷によって常時消費されるシステム消費電力は、特性(a)に示すように、観測した全時間中に亘って刻々と変動している。特性(a)に示すシステム消費電力の変動のうち、プラスの電力は燃料電池からガス供給装置やA/Cなどへ供給している電力であり、経過時間A1〜A2のところで現われている負の値の電力は燃料電池から高圧バッテリへ充電されている電力である。このような特性(a)のシステム消費電力の所定時間における平均値をとると、特性(b)に示すようなシステム平均消費電力となる。前記したように、本実施形態では、このシステム平均消費電力が下限発電電力の上限値となる。
一方、燃料電池の下限発電電力は、太い実線の特性(c)に示すように、観測開始から経過時間A3までの時間に亘って、特性(b)のシステム平均消費電力を下回っている。したがって、この期間(観測開始から経過時間A3)においては、燃料電池の下限発電電力は上限リミットされていない。他方、経過時間A3を超えると、上限リミットを施していない燃料電池の下限発電電力(c’)は、システム平均消費電力(b)を上まわるようになる。ここで、下限出力制限部25(図3)が、燃料電池の下限発電電力をシステム平均消費電力(b)に一致させる((b)+(c))ことで上限リミットされる。このようにして、燃料電池の下限発電電力上限値は、経過時間A3以降システム平均消費電力(b)と同じ値となる。このため、ECU8は必要以上の燃料電池から高圧バッテリへの充電を抑えることができ、燃料電池システム8の効率を向上させることができる。
本発明の実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック図である。 燃料電池の発電出力と発電効率との関係を示す発電効率特性図である。 図1に示す燃料電池システムにおけるECUの機能構成を示すブロック図である。 図3に示すECUが燃料電池の発電電力下限値を求める処理の流れを示すフローチャートである。 高圧バッテリのSOCに基づいて下限発電電力を求める特性図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池システムの実験結果による各種特性図である。
符号の説明
1 燃料電池
2 高圧バッテリ(蓄電装置)
3 電力分配装置(制御手段)
4 PDU(Power Drive Unit)
5 走行モータ
6 トランスミッション
7 タイヤ
8 ECU(Electronic Control Unit)
9 ガス供給装置
10 ダウンコンバータ
11 A/C
12 低圧バッテリ
13 アクセサリ
20 燃料電池システム
21 SOC算出部
22 下限発電電力算出部
23 LPF(Low Pass Filter)
24 電力平均値算出部(電力平均値算出手段)
25 下限出力制限部(下限出力制限手段)
26 システム平均消費電力記憶部(システム平均消費電力記憶手段)

Claims (4)

  1. 燃料電池と、
    前記燃料電池の出力電力により充電される蓄電装置と、
    前記燃料電池及び前記蓄電装置から供給される電力により、燃料電池システムの動作時において常時駆動するシステム負荷と、
    前記蓄電装置の残容量を検出する残容量検出手段と、
    前記残容量検出手段が検出した残容量に応じて、前記燃料電池の下限発電電力を変化させることにより、前記燃料電池の前記下限発電電力を決定する下限発電電力決定手段と、
    前記システム負荷の消費電力の所定期間に亘る平均値を算出してシステム平均消費電力を求める電力平均値算出手段と、
    前記下限発電電力決定手段が決定した下限発電電力が、前記電力平均値算出手段の求めたシステム平均消費電力以下になるように制限する下限出力制限手段と、
    を備え、
    前記下限出力決定手段が決定した下限発電電力以上で前記燃料電池の出力電力を制御すること
    を特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記電力平均値算出手段は、前記システム負荷の消費電力をローパスフィルタに通過させた後に前記システム平均消費電力を求めること
    を特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記下限発電電力決定手段は、前記燃料電池を駆動するための補機の消費電力を含めた燃料電池の発電効率が最大となる出力電力を下限発電電力とすること
    を特徴とする請求項1または請求項に記載の燃料電池システム。
  4. 前記燃料電池システムの運転終了時における前記システム負荷のシステム平均消費電力を記憶するシステム平均消費電力記憶手段を備え、
    前記下限出力制限手段は、前記燃料電池システムの運転再開時において、前記システム平均消費電力記憶手段に記憶されたシステム平均消費電力を初期値とすること
    を特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
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