JP5080126B2 - 缶ボディ用アルミニウム合金板 - Google Patents
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Description
2ピースアルミ缶ボディの製缶工程は、一般的には、まず、缶ボディ用アルミニウム合金板からブランク材を打ち抜いて大径のカップに成形する工程と、次に、カップ絞り(DRAWING)としごき(IRONING)を組み合わせたDI成形工程と、開口部のトリミング工程と、潤滑剤及びクーラントを完全に除去する洗浄工程と、外面の塗装・印刷工程及び焼付け工程と、内面コーティング及び焼き付け工程と、さらに開口部のネッキング及びフランジング工程とからなる。
1%軽量化のための素材の薄肉化の方法としては、しごき加工後の缶壁部を薄くする方法と、元板を薄くして缶底部を軽量にする方法がある。
そこで、一般的に、元板の厚みを薄くし、缶底部を薄くする方法がとられる。
但し、元板厚を薄くしすぎると、缶底部の反転強度(耐圧強度)が不足する問題が発生し、缶の外観上の不良としてチャイム部のしわが問題となる場合がある。
加工硬化指数を高めることは、冷間圧延の上がり温度を制御することや、安定化処理等を追加することで改善するが、n値がある程度以上になると明確な効果が得られない。また、コストアップとなる。
しかしながら、このしわ押さえ圧に影響するのは潤滑特性であるが、潤滑油の種類や量を規定しておらず、また、摩擦への板面形態の影響を明確にしていない。また、当時は、今よりも材料が厚めであったことなどから、現在及び、今後の更なる薄肉軽量化を考えると、この技術ではチャイム部のしわを抑制し難い。
Mg:0.9〜1.3%、
Cu:0.15〜0.25%、
Si:0.15〜0.40%、
Fe:0.25〜0.50%を含有し、
Znの含有量は、0.25%以下であり、
残部が不可避的不純物とアルミニウムからなり、
板面の圧延方向に対して90°方向の最大高さがRzで2.0〜3.0μmであり、
板面の圧延方向に対して90°方向の平均長さがRSmで50〜150μmであり、
動粘度が30〜100cSt(at40℃)のリオイル油を100〜300mg/m2塗布してあり、
板面の圧延方向に対して90°方向の摩擦係数が0.11〜0.18であることを特徴とする缶ボディ用アルミニウム合金板にある(請求項1)。
すなわち、上記缶ボディ用アルミニウム合金板は、化学組成を限定することによって安全性を保つことができる材料強度とし、表面粗さとリオイル油の種類及び塗油量を限定することによって板面の潤滑特性を制御している。
なお、上記缶ボディ用アルミニウム合金板の化学組成は、上記アルミニウム合金鋳塊の化学組成からほとんど変化することがない。
上記缶ボディ用アルミニウム合金板の板厚は、用途により異なるが、缶体強度(缶底耐圧、座屈強度等)や成形性(DI、ネッキング等)を確保すること及びコストの観点から、0.25mm〜0.40mmが好ましい。
上記缶ボディ用アルミニウム合金板は上述したように、Mnを0.8〜1.3%含有する。
Mnは、強度に寄与する主要元素であるとともに、α相化合物(Al−Mn−Fe−Si系)の生成によるしごき加工時の焼き付き防止に効果のある成分である。また、0−180°耳の抑制効果の観点からも所定の量以上の添加が好ましい。
上記Mnの含有量が0.8%未満の場合には、上述の効果を十分に得ることができない。一方、上記Mnの含有量が1.3%を超える場合には、MgやFeの添加量によっては、鋳造時に巨大な初晶化合物が生じてDI加工時のパンチスルーやピンホール、フランジ成形時の割れなど生産性や内容物漏洩につながる重大な問題となる。
Mgは、Mnと共に強度を付与する不可欠な添加元素であり、固溶して合金を硬化する。
上記Mg含有量が0.9%未満の場合には、十分な強度を得ることができず、また、固溶量の減少に伴い均一成形性も低下するため、チャイム部のしわも発生しやすくなる。一方、1.3%を越える場合には、強度が高くなりすぎ、DI成形性が劣る。また、酸化抑制しフローマークを出にくくするため、添加量は抑制した方がよい。
Cuは、Mgと共に低温熱処理等により、Al−Mg−Cu系化合物を形成して強度を高め、塗装焼付け等の加熱による軟化を抑制する効果を持つ。
上記Cuの含有量が0.15%未満の場合には、上述の効果が十分に得られない。一方、0.25%を超える場合には、成形加工時の加工硬化性が大きくなりすぎて成形性が低下し、また、耐食性が低下する。また、現行の国内の缶ボディ材には、Cuが0.20〜0.25%含まれている材料が大半のため、リサイクルの観点からも、上記範囲の量のCuを添加した合金が好ましい。
Siは、Mn、Feと共に、しごき成形時の素材と工具の焼き付き防止に効果のあるα相化合物(Al−Mn−Fe−Si系)形成に必要な成分である。また、この他にAl−Mn−Si相も形成し、Mnの固溶量を低下させて、より均一な変形を促進する。従って、均一変形能の必要なチャイム部のしわの向上には、Si量の最適化が必要である。
Feは、Mnと共に鋳造時にAl6(Mn、Fe)相、α相化合物(Al−Fe−Mn−Si系)、Al−Fe−Si系の化合物を形成する。これは、上述したように、しごき成形時に不可欠である。また、Feを添加すると、Mnの固溶度を減少させ、再結晶温度を下げるため、結晶粒微細化に有利である。
上記Feの含有量が0.25%未満の場合には、均一変形に寄与する金属間化合物の形成が不十分になり、また、結晶粒が細かくならない。一方、0.50%を超える場合には、粗大な化合物を生じ易く、成形加工時に破断の起点となりうる。
Znは、絞り及びしごき加工性、並びにネック・フランジ成形性の向上に効果がある。
上記Znを多量に添加すると、耐食性を損なうという問題があり、コスト的にも不利となる。そこで、本発明では、現在缶ボディ材に使用されているのA3004やA3104と同範囲である0.25%とした。
上記最大高さがRzで2.0μm未満の場合には、DI加工時にリオイルやカップ油を保持することができず、潤滑不良になる。一方、Rzで3.0μmを超える場合には、凹凸が大きくなり、特に、凸部の頂点がDI加工時に金型と擦れ、焼き付き、破断、フローマーク等の問題となりやすい。
そして、2次元粗さ測定について、圧延方向に対して0°の方向では、圧延ロール(ワークロール)面の表面形態から転写された板面の凹凸の断面曲線が得られないため、圧延方向に対して90°方向を測定した。
上記平均長さRSmは、JIS B0601−2001に示されている輪郭曲線要素の平均長さであり、JIS B0601−2001の基準に準じて2次元粗さ測定器により測定した。
カッピング、DI成形に先立って行われるリオイルは、アルミニウム合金板メーカーにおいて、板表面に予め付着されている圧延油等を除去した後の塗油であり、搬送時等での傷付きを防止する以外に、DI成形時の潤滑性を付与するという重要な役割がある。
なお、DI成形時は40℃に温度制御したクーラントを使用し、加工時の温度を一定に保持している。
上記摩擦係数は、上記リオイル油が塗布してある状態の板面の摩擦係数である。
上述のチャイム部のしわは、リドロー成形時の初期に形成されるもので、主にリドローダイスとカップホルダーによる板押さえ(しわ押さえ)による缶の軸方向の引張力の大小に左右される。
この板押さえ力には、カップホルダーの押さえ圧が影響するが、その他には、板と金型(カップホルダー、リドローダイス)との摩擦力が影響する。そして、摩擦力には、潤滑油の粘度、量及び板面形態(表面粗さ)が及ぼす摩擦係数が影響する。
本例は、本発明の缶ボディ用アルミニウム合金板にかかる実施例について説明する。
本例では、製造工程の条件を変化させて、表1に示す化学組成を有するアルミニウム合金を鋳造により造塊し、均質化処理を行い、その後直ちに熱間圧延を行い、板厚0.3mmまで冷間圧延を行うことにより、本発明の実施例として、缶ボディ用アルミニウム合金板(試料E1〜試料E3)を作製した。
<表面粗さ>
表面粗さは缶ボディ用アルミニウム合金板を溶剤にて脱脂洗浄後、Mitutoyo製の2次元粗さ測定機(surftest 402)を用いて、Rz、RSm、Raを測定した。
引張特性についてはJIS5号試験片を用いて、JIS Z 2241金属材料引張試験方法により測定した。また、n値は、JIS Z 2253薄板金属材料の加工硬化指数試験方法により算出した。
<摩擦係数>
板面の摩擦係数は、リオイル油が塗布してある状態の缶ボディ用アルミニウム合金板の上に、平板に固定した3点の剛球(JIS B 1501 玉軸受用剛球の等級5、呼び直径12mmのもの)を置き、前記剛球に均等に荷重がかかるように前記平板に荷重1kgf(9.8N)を負荷し、板の圧延方向に対して90°の方向に16.7mm/sの速度で缶ボディ用アルミニウム合金板を引いた時に働く抵抗力を測定し、前記荷重に対する比(=前記抵抗力/前期荷重)より動摩擦係数として算出した。
DI成形性は、パンチスルーとチャイムしわとにより評価した。パンチスルーは、成形時にパンチスルーが全く発生しなかった場合は合格(評価○)とし、成形時にパンチスルーが発生した場合は不合格(評価×)とした。チャイムしわは、DI成形して得られた100缶中、チャイム部のしわが全く発生しなかった場合は合格(評価○)とし、チャイム部のしわが発生した場合は不合格(評価×)とし、DI成形時にパンチスルーが発生した試料については、評価不可として−で表記した。
DI成形時にパンチスルーが発生しなかった試料について、DI成形途中の再絞りカップ1を新たに作製し、図1に示すように、チャイム部11のチャイム部のしわ12をMitutoyo製の真円度計2(型式EC−1010A)を用いて測定し、図2に示す最大しわ高さ測定チャートを得た。このチャートは、点Oを中心とした円座標であり、周方向に角度を、径方向にチャイム部の凹凸をとったものである。得られたチャートにおいて、隣り合う山部3と谷部4について、(山部3の外接円31の半径の値−谷部4の外接円41の半径の値)をしわ高さとし、1つのカップ1の全周におけるしわ高さの分布のうち最大のものを最大しわ高さHとした。また、同試料の5缶の最大しわ高さHの平均値を算出し、その試料の最大しわ高さとした。最大しわ高さは、250μm以下であることが好ましい。図2(a)に試料E2の最大しわ高さ測定チャートを示し、図2(b)に後述する試料C2の最大しわ高さ測定チャートを示す。
DI成形時にパンチスルーが発生した試料については、再絞りカップによる評価不可として−で表記した。
これより、本発明によれば、缶体軽量化が可能な缶ボディ用アルミニウム合金板を得ることができることが分かる。
本例は、後述するように、実施例1のワークロールの研磨条件、リオイル油の動粘度、リオイル油の塗油量等の条件を変更し、表3に示す缶ボディ用アルミニウム合金板(試料C1〜試料C9)を作製した例である。
また、試料C2は、ワークロールの研磨条件が#180、リオイル油の動粘度が80cSt(at40℃)、塗油量が160mg/m2の条件で作製した例である。その他は実施例1と同様に行った。
試料C4は、ワークロールの研磨条件が#240、リオイル油の動粘度が80cSt(at40℃)、塗油量が350mg/m2の条件で作製した例である。その他は実施例1と同様に行った。
試料C6は、ワークロールの研磨条件が#240、リオイル油の動粘度が105cSt(at40℃)、塗油量が160mg/m2の条件で作製した例である。その他は実施例1と同様に行った。
また、比較例としての試料C2は、RSmが本発明の上限を上回り、摩擦係数が低くなったため、DI成形性評価でチャイム部のしわが確認され、不合格であった。
また、比較例としての試料C4は、リオイル油量が本発明の上限を上回り、摩擦係数が低くなったため、DI成形性評価でチャイム部のしわが発生し、不合格となった。
また、比較例としての試料C6は、リオイル油粘度が本発明の上限を上回り、摩擦係数が低くなったため、DI成形性評価でチャイム部のしわが発生し、不合格となった。
また、Raは、実施例及び比較例においてほぼ一定であった。このことから、Raによって面形態の良否を評価できないことが判明した。
Claims (1)
- Mn:0.8〜1.3%(質量%、以下同じ)、
Mg:0.9〜1.3%、
Cu:0.15〜0.25%、
Si:0.15〜0.40%、
Fe:0.25〜0.50%を含有し、
Znの含有量は、0.25%以下であり、
残部が不可避的不純物とアルミニウムからなり、
板面の圧延方向に対して90°方向の最大高さがRzで2.0〜3.0μmであり、
板面の圧延方向に対して90°方向の平均長さがRSmで50〜150μmであり、
動粘度が30〜100cSt(at40℃)のリオイル油を100〜300mg/m2塗布してあり、
板面の圧延方向に対して90°方向の摩擦係数が0.11〜0.18であることを特徴とする缶ボディ用アルミニウム合金板。
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JP2007121714A Active JP5080126B2 (ja) | 2007-05-02 | 2007-05-02 | 缶ボディ用アルミニウム合金板 |
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