JP4102145B2 - 乾式絞りしごき加工缶用樹脂被覆鋼板およびシームレス缶体 - Google Patents

乾式絞りしごき加工缶用樹脂被覆鋼板およびシームレス缶体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、しごき加工を主体とする加工により製造するシームレス缶用の材料およびこれによるシームレス缶に関する。詳しくは、水、あるいは水系潤滑剤などによる冷却あるいは潤滑をすることなく、製缶後の缶洗浄を必要としない、しごき加工を主体とする加工により薄肉缶壁のシームレス缶を製造するに適した樹脂被覆鋼板およびこれによるシームレス缶に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、缶胴部と缶底部が一体のシームレス缶としては、ぶりき板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、電解クロム酸処理鋼板等を素材とするDRD缶(Drawn and Redrawn Can)、DI缶(Drawn and Ironed Can)が一般的であり、近年、DTR缶(Draw−Thin/Redraw Can)も実用化されている。DRD缶は、絞り加工、再絞り加工により製造されるため、缶高さに比例して缶壁厚さが厚くなる。したがって経済性の点から、一般的に缶高さの低い缶に適用され、下地金属板としては電解クロム酸処理鋼板、ぶりき板、アルミニウム合金板が用いられている。
【0003】
一方、絞り加工後、しごき加工で製造されるDI缶は、その缶壁厚さが元板厚の1/3程度にできるため、缶高さの高い缶にも経済的に適用でき、現在、ぶりき板、アルミニウム合金板が用いられている。また、DRD缶とDI缶では、DRD缶が予め有機皮膜で被覆された金属板が絞り加工されるのに対し、DI缶はしごき加工後、塗装される点が大きく異なる。これはDRD加工とDI加工では、加工度、加工時の応力状態が大きく異なるためである。有機皮膜被覆金属板を、加工度、缶壁への面圧が極めて大きな加工であるDI加工に適用した場合、有機皮膜の金型への焼き付き、内外面の有機皮膜の損傷などが起こるので、実用化に至っていない。
【0004】
一方、DTR缶は、再絞り加工時の肩アールを小さなものとし、その肩部での曲げ、曲げ戻しを大きな引っ張り力を加えながら、缶壁を薄くする加工によって製造される。DTR缶は絞り加工に酷似する加工によって製造されるが、缶壁を引き伸ばし加工するため、缶壁は元板厚より若干薄いものとなる。また、しごき加工のように、ダイスとポンチ間で缶壁に大きな面圧が負荷されることがないため、有機皮膜への負荷がそれほど大きくなく、有機皮膜の損傷を起こしにくく、有機皮膜被覆金属板が適用でき、現在、熱可塑性樹脂を被覆した電解クロム酸処理鋼板が工業的に用いられている。しかしながら、DTR缶の場合、引っ張り力を主体とした加工によるため、加工時に、缶壁の破断が起こりやすく、缶壁厚さは元板厚の80%程度であり、DI缶の缶壁に比べ厚いものとなっている。
【0005】
以上述べたように、DRD缶、DI缶およびDTR缶、およびそれらの製造方法はそれぞれ一長一短を有する。ここで、本発明は、DI缶のように缶高さが缶径の2倍程度と高く、かつ缶壁厚さが元板厚の50〜25%程度と薄い缶を得るのに適した、内面を熱可塑性樹脂で被覆した鋼板を提供することにあり、とりわけ本発明が重要とする点は、このような缶を製造する加工において、現在、DI缶の製造において、冷却、潤滑のため使用されているエマルジョン系、水溶性潤滑剤などの使用を省略できる熱可塑性樹脂被覆鋼板を提供することにある。
【0006】
予め、熱可塑性樹脂を積層した鋼板を用いることにより、製缶工程における塗装焼き付けの省略および、溶剤の飛散を防止することができ、さらに、冷却剤および潤滑剤の不使用により、以後の洗浄、乾燥、廃液処理なども省略できる。すなわち、このような水系の冷却、潤滑剤を用いず、製缶後の缶の洗浄を必要としない、缶高さが高く、かつ缶壁厚さの薄い缶を製造可能な熱可塑性樹脂金属板に関する開示は見受けられず、もちろん、そのような缶、および缶の製造に関する開示も見受けられない。本発明と目的を同じくするものでないが、関連するものとして以下のようなものがある。
【0007】
特許文献1は、ツーピース缶用有機樹脂被覆金属板に関する技術を開示したものであるが、しごき加工において、加工の厳しい外面側におけるクーラント(水系冷却、潤滑剤)の保持性を高めることを課題の一つとしている。すなわち、水系冷却、潤滑剤の使用を前提としたものであり、この技術は、本発明の目的と大きく異なるものである。また、特許文献2も金属シートの一方、または両方の面に、ポリエステル樹脂フィルムを積層したものをDI缶に加工する技術を開示したものであるが、この技術による金属板のDI成形においては、製缶後の缶の洗浄工程が簡略化されているものの、製缶後の缶の洗浄を必要とする潤滑剤の使用を絞り工程で必要としており、製缶後の缶の洗浄が完全に省略されたものではないと考えられる。
【0008】
また、特許文献3は、熱可塑性樹脂被覆金属板を水系冷却、潤滑剤を用いることなく、すなわち、高温揮発性潤滑性物質を潤滑剤とし、曲げ、曲げ戻しにより缶壁を薄肉化するもの、いわゆるDTR加工に関する技術を開示したものであるが、実施例に示されるように、薄肉化の程度は20%程度であり、本発明の目標とする値に比べ小さいものである。
【0009】
特許文献4は、電解クロム処理鋼板の両面に熱可塑性樹脂を被覆した高温揮発性潤滑性物質を塗布してなる乾式絞りしごき加工缶用樹脂被覆鋼板を提案しているが、目的とする缶壁の厚さが元板厚の70〜40%と厚い水準でありながら、実際には缶体外面の印刷鮮映性が不十分であり、成型後に白色塗装を行う必要があり、この鋼板は、コスト上課題を有している。
【0010】
【引用文献】
(a)特許文献1(特開昭62−275172号公報)
(b)特許文献2(特公表平2−501638号公報)
(c)特許文献3(特開平4−91825号公報)
(d)特許文献4(特開平7−258794号公報)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、缶高さが缶径の2倍程度と高く、かつ、缶壁厚さが元板厚の50〜25%厚さのシームレス缶を、水系冷却、潤滑剤を用いることなく(以下、乾式という)成形可能で、製缶後の缶の洗浄を必要としない熱可塑性樹脂被覆鋼板を提供することを目的とする。缶壁厚さを元板厚の50〜25%の厚さに薄肉化することにより、薄肉化の程度に比例して缶高さは高くなる。この点は、本発明の目的に叶うものではあるが、薄肉化の程度が増大するに従い、缶壁外面と金型の凝着、表面樹脂層の損傷、缶壁の破断が起こりやすくなる。
【0012】
特に、水系冷却、潤滑剤を使用しないことを特徴とする本発明においては、缶外面の樹脂層の損傷、それに起因する缶壁の破断は起こりやすく、これらを防止することが課題である。また、加工度が大きくなるにしたがい、皮膜の隠蔽率が低下することになり、母材が鋼板であると印刷鮮映性が低下することから、外面塗装を省略してなおかつ印刷鮮映性に優れた缶体を提供できることも本発明の課題とする点である。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決するために、種々の検討を行い本発明に至ったものであり、その要旨とするところは、
(1)質量%で、C:0.001〜0.10%、Mn:0.05〜0.60%、Al:0.015〜0.13%、Si≦0.2%、P≦0.03%、S≦0.03%で、残部がFeおよび付随的及び/または不可避的不純物からなり、結晶粒径:6〜30μm、鋼板表面の中心線平均粗さ:0.05〜1.0μm、鋼板の降伏強度が25〜70kg/mm2 、抗張力が25〜73kg/mm2 、降伏比が0.7以上、1未満、時効指数が5kg/mm2 以下、板厚:0.15〜0.30mmの鋼板あるいは表面処理鋼板において、缶内面相当側中心線平均粗さが0.05〜0.6μmで、缶外面相当側中心線平均粗さが0.2〜1.0μmで、缶外面相当側に金属フィラー5mass%以上を含有する厚さ1〜20μmのポリエステルメラミン系またはアクリルフェノール系の熱硬化性樹脂皮膜を有し、缶内面相当側に厚さ10〜40μmの結晶性ポリエステル樹脂系の熱可塑性樹脂を有し、前記缶外面側の熱硬化性樹脂皮膜の熱機械分析による没入深さが3.5μm以下であり、かつ熱天秤での質量変化が10%以下であり、缶外面相当側と缶内面相当側の表面に高温揮発性潤滑剤が塗布されたことを特徴とする乾式絞りしごき加工缶用樹脂被覆鋼板。
【0014】
)熱硬化性樹脂皮膜が1.0〜20.0mass%のインナーワックスを含有する前記(1)に記載の乾式絞りしごき加工缶用樹脂被覆鋼板。
)前記(1)または)に記載された樹脂被覆鋼板をしごき加工したシームレス缶体にある。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の限定理由、作用などについて詳細に説明する。本発明は、乾式で缶壁厚さを元板厚の50〜25%に減厚加工でき、かつ、缶外面の印刷鮮映性に優れる乾式絞りしごき加工缶用樹脂被覆鋼板である。
先ず加工の課題を解決するため加工発熱を小さくすることが重要である。加工による発熱は、金属板の変形および摩擦が影響し、変形による発熱は加工度および変形抵抗が小さいほど少なく、しごき加工においても、変形抵抗が小さいほど面圧が低く、面圧×摩擦係数に比例する摩擦発熱も小さくなる。
【0016】
また、樹脂層の温度が同じであっても、面圧が小さいほど該樹脂層の損傷は軽減される。それゆえこの樹脂層の損傷に関し、加工度が同じであっても変形量が少ない方が、また、材料の変形抵抗は、でき得る限り小さい方が該樹脂層の損傷は軽減される。ここで、しごき加工に至るまでに、材料は絞り加工、再絞り加工を受けるため、加工による硬化が少ない方が本発明の目的に適する。このように、加工後も変形抵抗が小さいといった点から、鋼板の化学組成、結晶粒径、時効指数を定める。
【0017】
まず、鋼板の化学組成を限定する理由について説明する。C量が0.1%超では鋼の加工硬化が大きくなり、本発明の目的とする乾式加工に適さず、一方、C量が0.001%未満になると結晶粒が大きくなり、本発明が適用を前提とする再絞り、しごき加工においても肌荒れが生じやすく、積層された熱可塑性樹脂層との加工密着性、肌荒れによる応力集中が生じ、加工時、破断が起こりやすい。
【0018】
Mnは、鋼を硬質化する元素であり、過剰に含有させることは望ましくなく、その上限を0.6%に限定する。一方、Mnは鋼中のSによる熱間脆性を防止する効果を有するので、0.05%以上を含有させる。
Alは、脱酸剤として添加するが、脱酸残査が0.015%未満であると、脱酸が不安定であり、一方、0.13%超では硬質化する。S量が増加すると、硫化物系介在が増加し加工性を悪くするとともに、耐食性も低下するため、その上限を0.03%とする。
【0019】
Si、Pは、いずれも鋼を硬質化し、乾式加工性を阻害するため、それぞれの上限を0.2%、0.03%とする。更に、時効性改善及び強度調整を目的としてTi:0.10%以下、B:0.01%以下、Nb:0.10%以下を含有させてもよい。
また、不純物(トランプエレメント)として、Ni:0.10%以下、Cr:0.10%以下、Sn:0.05%以下、Cu:0.10%以下が含有される場合もある。
【0020】
つぎに、鋼の結晶粒径は6〜30μmに限定する。本発明における結晶粒径はつぎのように定義する。すなわち、鋼板の圧延方向に平行な断面を観察面とし、倍率200倍の視野における3cm×3cm(実際の寸法:150μm×150μm)の範囲で観察される最大結晶粒3個の結晶粒径の平均値を、鋼の結晶粒径とする。ここで各結晶粒の結晶粒径は、それぞれの結晶粒断面の長寸法と短寸法の平均値とする。ここで長寸法は、結晶粒の中心を通る線分のうち、最も長い線分の長さとする。また、結晶粒の中心を通り、長寸法線分と直交する線分の長さを短寸法とする。以上に示したように、鋼断面の観察面で観察されるより大きな結晶粒の寸法をもって結晶粒径を定義するのはつぎに示す理由による。
【0021】
すなわち、鋼の結晶粒が全て同一の直径を有する球体である、と仮定したとき、その断面においては各結晶粒の断面は種々の直径の円として観察される。これらの種々の直径の円のうち、最大のものが球体の直径、すなわち、真の結晶粒径となる。このことから、鋼断面の観察面で観察されるより大きな結晶粒の寸法をもって鋼の結晶粒と定義する。本発明においては結晶粒径が小さい方が加工による肌荒れが少なく、積層された熱可塑性樹脂との加工密着性の点からは好ましいが、結晶粒径が小さいほど加工硬化が大きくなり、本発明が課題とする乾式加工性を悪化させる。
【0022】
本発明の樹脂被覆鋼板は、缶壁厚さを元板厚の50〜25%とする加工を前提とするため、DTR缶に比べ一定高さを得るためのブランク径は小さくてよく、それゆえ(ブランク径/最終缶径)で表される絞り比は小さく、そのため肌荒れは起こり難く、結晶粒径はDTR缶用の材料ほど小さくする必要はない。むしろ小さい方が上記のように加工硬化を大きくし、乾式加工性を阻害し好ましくない。しかしながら、結晶粒径が30μm超となると、前記の絞り比が小さくても肌荒れが生じやすく、積層された熱可塑性樹脂層の密着不良、缶壁の破断が問題となる。以上の理由により結晶粒径の上限、下限が限定されが、より望ましくは8〜15μmの結晶粒径が本発明の目的に適する。この鋼の結晶粒径は前記の鋼の化学組成、熱間圧延の仕上げ温度、熱間圧延後の巻き取り温度、冷間圧延後の再結晶条件の変更により調整される。
【0023】
ついで、時効指数を5kg/mm2 以下とするのが望ましい理由について説明する。時効指数は鋼中の固溶C量、固溶N量に比例し、固溶C量、固溶N量が多いと加工硬化が大きくなる。固溶C量、固溶N量の代用値として時効指数を用いる。時効指数を5kg/mm2 以下とするのは加工による硬化を抑制するためである。なお、この時効指数は、鋼板に8〜10%の歪を付加し、100℃で1時間加熱後の降伏強度値と加熱前の降伏強度値の差で示される。なお、この時効指数は熱間圧延後の巻き取り温度、再結晶焼鈍時の冷却速度、Ti、Nbの添加などにより調整される。
【0024】
一方、加工後の缶は、缶内が陽圧、あるいは陰圧の状態で用いられるが、そのような圧に耐えるためには缶底、缶壁ともに一定以上の強度が必要である。とりわけ、缶内が陽圧の場合、缶底の耐圧強度が問題となるが、耐圧強度は大略(板厚)2 ×降伏強度と正比例の関係で影響するので、耐圧強度には板厚と降伏強度が影響する。また、必要耐圧強度は内容物によっても異なる。鋼板の降伏強度、抗張力および板厚の下限はこの耐圧強度を考慮して定める。また、降伏強度および抗張力の上限は、しごき加工時における積層された樹脂層の損傷の点から限定する。
【0025】
これらの点を考慮すると、本発明で用いられる鋼板の降伏強度および抗張力は、それぞれ25〜70kg/mm2 、25〜73kg/mm2 が望ましい。上限値超であると、該樹脂層の損傷を介して缶壁の破断が起こりやすくなる。さらに、降伏強度/抗張力で表される降伏比が0.7以上、1未満とするのが望ましいのは、缶底強度に影響する降伏強度は高く、一方、しごき加工時の該樹脂層の損傷に影響する加工時の変形抵抗は小さい方が本発明の目的に適するためであり、その点から降伏比の望ましい範囲の上限、下限を定めた。鋼板の板厚の上限は、得られる缶体の耐圧強度の点から、0.3mm以上必要な例は少なく、また経済性の点からも上限は0.3mmとするのが望ましい。
【0026】
なお、降伏強度あるいは抗張力が大きい場合、缶強度の点から鋼板の厚さを薄くすることができる。ここで降伏強度の高めの鋼板を用いる場合、缶強度が必要以上である限り、鋼板の元板厚はできるだけ薄い方が望ましい。加工度が同じであっても、元板厚が薄い方が加工量を少なくでき、かつ加工時の発熱を低減することができる。
【0027】
つぎに、鋼板に缶内面相当側に積層する樹脂は熱可塑性樹脂であり、缶壁厚さを元板厚の50〜25%とするようなしごき成型においては内面耐食性および内容物香味性を確保する上で熱可塑性樹脂である。好ましくは結晶性ポリエステル樹脂とし、その厚さを10〜40μmとし、さらに、180〜260℃の融点を有するポリエステル樹脂が好ましい。結晶性ポリエステル樹脂は具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート単位を主体とした共重合ポリエステル樹脂、あるいはこれらの混合物からなるポリエステル樹脂があげられる。その厚さが10μm以下の場合、内面耐食性の確保が難しくなることから、下限は10μmとし、経済性の点から40μm以下に限定する。
【0028】
また、本発明の樹脂被覆鋼板は缶外面相当側に金属フィラー5%以上を含有する厚さ1〜20μm熱硬化性樹脂皮膜を有する。これは、成型缶の印刷鮮映性を確保するためであり、その理由を述べる。鉄はアルミに比較して分光反射率が低いためにその外観は暗く、その上の印刷の鮮映性は劣るものである。そのため、缶外面相当側に熱可塑性樹脂フィルムを積層した熱可塑性樹脂膜とした場合には、熱可塑性樹脂フィルム中に主に白色顔料を加えて、印刷の鮮映性を補ってきた。しかしながら、しごき成型の加工度が大きくなると、しごき加工後の単位面積当たりの顔料量が少なくなるため、印刷の鮮映性の悪さを補いきれなくなる。熱可塑性樹脂フィルムの生産性から含有可能な白色顔料或いは有色顔料の量大きく制限されるため、フィルム中の顔料含有率を高くすることも限界があり、フィルム厚みを厚くすることもコストの点から有利ではない。
【0029】
このことから、発明者らは熱硬化性樹脂皮膜に注目し、その厚みを1〜20μmとし、金属フィラーを5%以上含有させることで成型缶の印刷鮮映性を確保できることを見い出したものである。熱硬化性樹脂皮膜厚みが1μm未満では皮膜が薄すぎてしごき成型後の印刷鮮映性の確保が不十分となるためである。
また、皮膜が20μm超となると成形性が低下するとともに、コストの点から有利ではない。好ましくは2〜8μmである。また、皮膜中の金属フィラーはしごき成型後の印刷鮮映性を確保のために5wt%以上が必要であり、その加工性を考慮するとその上限は望ましくは70%である。
【0030】
また、熱硬化性樹脂皮膜は熱機械分析による没入深さが3.5μm以下であり、かつ熱天秤での重量変化が5%以下であることが望ましい。ここでいう熱機械分析による没入深さとは、分析に影響の出ないようにカッター等で熱可塑性樹脂皮膜を除去した鋼板を試料として、熱硬化性樹脂皮膜側から直径1mmの先端の平坦な石英プローブに1gの荷重をかけて毎分10℃の昇温速度で室温から170℃まで測定した時の170℃の没入深さをいう。没入深さが3.5μm超ではしごき成型性が不良になる場合がある。
【0031】
また、ここでいう熱天秤での質量変化とは、樹脂被覆鋼板から熱硬化性樹脂皮膜をカッター等で採取しこれを試料として、窒素雰囲気で10℃の昇温速度で室温から270℃まで測定した時室温と270℃と差から求められる。質量変化が10%超でも、しごき成型性が不良になる場合がある。望ましくは5%以下である。なお、金属フィラーは印刷鮮映性を確保する上から分光反射率の大きいアルミが好ましく、その形態は加工性確保の点から鱗片状のものが好ましい。さらにその粒子径は平均粒子径として5〜20μmが望ましい。また、皮膜中に1.0〜20.0mass%のインナーワックスを含有することが成型性確保上から望ましい。
【0032】
本発明の樹脂被覆鋼板は、一般的には先ず塗装工程で熱硬化性樹脂皮膜を、ついで熱可塑性樹脂皮膜を積層する工程で製造する。先に熱可塑性樹脂皮膜を積層する工程でも製造可能である。なお、熱可塑性樹脂を鋼板に積層する方法として、直接溶融したポリエステル樹脂を押し出し積層する方法、溶融押し出し後、常法によりフィルム成形した末延伸あるいは延伸配向させたフィルムを熱融着により、または接着剤を介して積層する方法のいずれの方法も本発明の樹脂被覆鋼板の製造方法として適用可能である。
【0033】
樹脂が被覆される鋼板は、表面処理の無い鋼板および電解クロム酸処理、あるいはNi、Snの単独あるいは両方のメッキ鋼板あるいは、その後電解クロム酸処理した鋼板等の公知の鋼板を用いることができる。また、鋼板の中心線平均粗さは1.0μm以上であると、しごき成形時に缶外面側の熱硬化性樹脂皮膜の成形性が低下し、剥離や削れが生じるためであり、また下限は性能面からではなく、経済的に中心線平均粗さ0.05μm以下の鋼板を安定して製造するのが困難であり、この点から望ましい範囲の下限を0.05μmとした。
【0034】
さらに、缶内面相当側の中心線平均粗さは0.6μm超であると、加工条件によっては、積層された熱可塑性樹脂の加工密着性が問題となり、加工度の大きな缶上端部で積層された熱可塑性樹脂層が剥離することがあり、0.6μmを上限とすることが望ましく、缶外面側相当側の下限値はしごき成形時の熱硬化性樹脂皮膜の密着性から、0.2μmを下限とする事が望ましい。
【0035】
本発明の樹脂被覆鋼板はその両面に高温揮発性潤滑剤が塗布される。高温揮発性潤滑剤は、加工後200℃程度の温度で数分の加熱した時、50%以上飛散することが望ましく、具体的には流動パラフィン、合成パラフィン、天然ワックスなどの単体、またはこれらの混合物から加工条件、加工後の加熱条件に応じ選択する。融点が25〜80℃、沸点が180〜400℃の範囲のものが望ましい。また、塗布量は5〜100mg/m2 、好ましくは30〜60mg/m2 の範囲が良い。
以上のように、鋼板の化学組成、特性、樹脂の特性を限定し、さらに被覆された樹脂の上に高温揮発性潤滑剤を塗布することなどにより、乾式の絞りしごき加工で、缶壁厚さが元板厚の50〜25%程度の缶壁の薄い缶被覆鋼板が得られる。
【0036】
【実施例】
表1の成分の鋼によって、表2の特性を有する母材を製造した。
この母材の缶外面相当面及び缶内面相当面に表3に示した樹脂および高温揮発性潤滑剤を付与した。そして、DI成形性及び印刷鮮映性を評価した。その結果を表3に併せて示す。
【0037】
【表1】
Figure 0004102145
【0038】
【表2】
Figure 0004102145
【0039】
【表3】
Figure 0004102145
【0040】
【発明の効果】
以上述べたように、発明による鋼板の化学組成、特性、樹脂の特性を限定し、さらに被覆された樹脂の上に高温揮発性潤滑剤を塗布することにより、乾式の絞りしごき加工で缶壁厚さが元板厚の50〜25%程度の缶壁の薄い缶被覆鋼板が得られ、極めて優れたしごき加工を主体とする加工による薄肉缶壁のシームレス缶にある。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.001〜0.10%、
    Mn:0.05〜0.60%、
    Al:0.015〜0.13%、
    Si≦0.2%、
    P≦0.03%、
    S≦0.03%で、
    残部がFeおよび付随的及び/または不可避的不純物からなり、結晶粒径:6〜30μm、鋼板表面の中心線平均粗さ:0.05〜1.0μm、鋼板の降伏強度が25〜70kg/mm2 、抗張力が25〜73kg/mm2 、降伏比が0.7以上、1未満、時効指数が5kg/mm2 以下、板厚:0.15〜0.30mmの鋼板あるいは表面処理鋼板において、缶内面相当側中心線平均粗さが0.05〜0.6μmで、缶外面相当側中心線平均粗さが0.2〜1.0μmで、缶外面相当側に金属フィラー5mass%以上を含有する厚さ1〜20μmのポリエステルメラミン系またはアクリルフェノール系の熱硬化性樹脂皮膜を有し、缶内面相当側に厚さ10〜40μmの結晶性ポリエステル樹脂系の熱可塑性樹脂を有し、前記缶外面側の熱硬化性樹脂皮膜の熱機械分析による没入深さが3.5μm以下であり、かつ熱天秤での質量変化が10%以下であり、缶外面相当側と缶内面相当側の表面に高温揮発性潤滑剤が塗布されたことを特徴とする乾式絞りしごき加工缶用樹脂被覆鋼板。
  2. 熱硬化性樹脂皮膜が1.0〜20.0mass%のインナーワックスを含有することを特徴とする請求項1に記載された乾式絞りしごき加工缶用樹脂被覆鋼板。
  3. 請求項1または2に記載された樹脂被覆鋼板をしごき加工したことを特徴とするシームレス缶体。
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