JP3140929B2 - 乾式絞りしごき加工缶用樹脂被覆鋼板 - Google Patents

乾式絞りしごき加工缶用樹脂被覆鋼板

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JP3140929B2 JP06337764A JP33776494A JP3140929B2 JP 3140929 B2 JP3140929 B2 JP 3140929B2 JP 06337764 A JP06337764 A JP 06337764A JP 33776494 A JP33776494 A JP 33776494A JP 3140929 B2 JP3140929 B2 JP 3140929B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、しごき加工を含む加工
により製造するツーピース缶用の材料に関する。詳しく
は、水、あるいは水系潤滑剤などによる冷却あるいは潤
滑をすることなく、製缶後の缶の洗浄を必要としない、
しごき加工を含む加工により薄肉缶壁のツーピース缶を
製造するに適した熱可塑性樹脂被覆鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、缶胴部と缶底部が一体のツーピー
ス缶としては、ぶりき板、アルミニウム板、アルミニウ
ム合金板、電解クロム酸処理鋼板等を素材とするDRD
缶(Drawn and Redrawn Can)、
DI缶(Drawn andIroned Can)が
一般的であり、近年、DTR缶(DrawーThin/
Redraw Can)も実用化されている。DRD缶
は、絞り加工、再絞り加工により製造されるため、缶高
さに比例して缶壁厚さが厚くなる。したがって経済性の
点から、一般的に缶高さの低い缶に適用され、下地金属
板としては電解クロム酸処理鋼板、ぶりき板、アルミニ
ウム合金板が用いられている。一方、絞り加工後、しご
き加工で製造されるDI缶は、その缶壁厚さが元板厚の
1/3程度にできるため、缶高さの高い缶にも経済的に
適用でき、現在、ぶりき板、アルミニウム合金板が用い
られている。また、DRD缶とDI缶では、DRD缶が
予め有機皮膜で被覆された金属板が絞り加工されるのに
対し、DI缶はしごき加工後、塗装される点が大きく異
なる。これはDRD加工とDI加工では、加工度、加工
時の応力状態が大きく異なるためである。有機皮膜被覆
金属板を、加工度、缶壁への面圧が極めて大きな加工で
あるDI加工に適用した場合、有機皮膜の金型への焼き
付き、内外面の有機皮膜の損傷などのため、実用化に至
っていない。
【0003】一方、DTR缶は、再絞り加工時の肩アー
ルを小さなものとし、その肩部での曲げ、曲げ戻しを大
きな引っ張り力を加えながら、缶壁を薄くする加工によ
って製造される。DTR缶は絞り加工に酷似する加工に
よって製造されるが、缶壁を引き伸ばし加工するため、
缶壁は元板厚より若干薄いものとなる。また、しごき加
工のように、ダイスとポンチ間で缶壁に大きな面圧が負
荷されることがないため、有機皮膜への負荷がそれほど
大きくなく、有機皮膜の損傷を起こしにくく、有機皮膜
被覆金属板が適用でき、現在、熱可塑性樹脂を被覆した
電解クロム酸処理鋼板が工業的に用いられている。しか
しながら、DTR缶の場合、引っ張り力を主体とした加
工によるため、加工時に、缶壁の破断が起こりやすく、
缶壁厚さは元板厚の80%程度であり、DI缶の缶壁に
比べ厚いものとなっている。
【0004】以上述べたように、DRD缶、DI缶およ
びDTR缶、およびそれらの製造方法はそれぞれ一長一
短を有する。ここで、本発明は、DI缶のように缶高さ
が缶径の2倍程度と高く、かつ缶壁厚さが元板厚の70
〜40%程度と薄い缶を得るのに適した、両面を熱可塑
性樹脂で被覆した鋼板を提供することにあり、とりわけ
本発明が重要とする点は、このような缶を製造する加工
において、現在、DI缶の製造おいて、冷却、潤滑のた
め使用されているエマルジョン系、水溶性潤滑剤などの
使用を省略できる熱可塑性樹脂被覆鋼板を提供すること
にある。予め、熱可塑性樹脂を積層した鋼板を用いるこ
とにより、製缶工程における塗装焼き付けの省略およ
び、溶剤の飛散を防止することができ、さらに、冷却剤
および潤滑剤の不使用により、以後の洗浄、乾燥、廃液
処理なども省略できる。すなわち、このような水系の冷
却、潤滑剤を用いず、製缶後の缶の洗浄を必要としな
い、缶高さが高く、かつ缶壁厚さの薄い缶を製造可能な
熱可塑性樹脂金属板に関する開示は見受けられず、もち
ろん、そのような缶、および缶の製造に関する開示も見
受けられない。本発明と目的を同じくするものでない
が、関連するものとして以下のようなものがある。
【0005】特開昭62ー275172号はツーピース
缶用有機樹脂被覆金属板に関するものであるが、しごき
加工において、加工の厳しい外面側におけるクーラント
(水系冷却、潤滑剤)の保持性を高めることを課題の一
つとしている。すなわち、水系冷却、潤滑剤の使用を前
提としたものであり、本発明の目的と大きく異なるもの
である。また、特公表平2ー501638号も金属シー
トの一方、または両方の面に、ポリエステル樹脂フィル
ムを積層したものをDI缶に加工するものであるが、こ
の金属板のDI成形においては、製缶後の缶の洗浄工程
が簡略化されているものの、製缶後の缶の洗浄を必要と
する潤滑剤の使用を絞り工程で必要としており、製缶後
の缶の洗浄が全く排除されたものではないと考えられ
る。また、特開平4ー91825号は、熱可塑性樹脂被
覆金属板を水系冷却、潤滑剤を用いることなく、すなわ
ち、高温揮発性潤滑性物質を潤滑剤とし、曲げ、曲げ戻
しにより缶壁を薄肉化するもの、いわゆるDTR加工に
関するものであるが、実施例に示されるように、薄肉化
の程度は20%程度であり、本発明の目標とする値に比
べ小さいものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、缶高さが缶
径の2倍程度と高く、かつ、缶壁の厚さが元板厚の70
〜40%程度の厚さの薄いツーピース缶を、水系冷却、
潤滑剤を用いることなく(以下、乾式という)成形可能
で、製缶後の缶の洗浄を必要としない熱可塑性樹脂被覆
鋼板を提供することを目的とする。缶壁厚さを元板厚の
70〜40%の厚さに薄肉化することにより、薄肉化の
程度に比例して缶高さは高くなる。この点は、本発明の
目的に叶うものではあるが、薄肉化の程度が増大するに
従い、缶壁外面と金型の凝着、表面樹脂層の損傷、缶壁
の破断が起こりやすくなる。特に、水系冷却、潤滑剤を
使用しないことを特徴とする本発明においては、缶外面
の樹脂層の損傷、それに起因する缶壁の破断は起こりや
すく、これらを防止することが最大の課題である。ま
た、加工度が大になるにしたがい、下地鋼板と積層され
た樹脂層の密着性が低下するが、十分な密着性を確保す
ることも本発明の課題とする点である。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、缶壁厚さの薄
いツーピース缶への乾式での加工が容易であり、加工さ
れた缶は、十分な耐圧強度、耐食性を有し、加工された
後も鋼板と被覆樹脂層の密着性が十分である熱可塑性樹
脂被覆鋼板を導くことにある。この乾式加工性を高め、
缶の強度を本発明の目的に適するものとするため、鋼板
の化学組成を定め、さらに、結晶粒径を6μm 以上、
降伏強度を25〜70kg/mm2、抗張力を25〜7
3 kg/mm2、板厚を 0.15〜0.30mm、降伏
比を0.7以上、1未満、時効指数を5kg/mm2
下とする。また、鋼板と積層される熱可塑性樹脂との加
工密着性を問題なきものとするため、鋼板には電解クロ
ム酸処理を施し、さらに加工後の密着性をより優れたも
のとするため、鋼板の結晶粒径を30μm以下とし、中
心線平均粗さを0.05〜0.6μmとする。また、積層
される熱可塑性樹脂のなかでも結晶性ポリエステル樹脂
が好ましく、その厚さは10〜50μm、その融点は1
80〜260℃をより好ましい範囲とする。これらの種
々の特性を定めることにより、乾式加工性および加工後
の耐食性が優れたものとなる。さらに、熱可塑性樹脂と
しては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレンテ
レフタレート単位を主体とする共重合ポリエステル樹脂
がより適している。また、積層された熱可塑性樹脂層の
上面に高温揮発性潤滑剤を塗布するのは乾式加工性を高
めるためであり、該高温揮発性潤滑剤を成形加工後の加
熱により除去することができ、脱脂、水洗、乾燥などの
工程を省略することができる。以上のように、鋼板の化
学組成および特性、さらに、積層される熱可塑性樹脂の
特性を定め、高温揮発性潤滑剤を塗布することなどによ
り乾式加工性、缶強度、加工後の密着性、耐食性に優れ
た乾式絞りしごき加工缶用樹脂被覆鋼板が得られる。こ
こで、乾式加工をより大きな加工度で、問題なく実施す
るためには、加工方法についても本発明の目的に適する
ものとすることが望ましい。本発明の樹脂被覆鋼板の加
工を、再絞り加工としごき加工を特定の条件下で行う複
合加工方法、すなわち、内外面に積層された熱可塑性樹
脂層の損傷および缶壁の破断が起こりにくい減厚加工方
法で加工することにより、本発明の樹脂被覆鋼板の特徴
が、より効果的に発揮される。
【0008】
【作用】以下、本発明の限定理由、作用などについて詳
細に説明する。本発明は、乾式で缶壁厚さを元板厚の7
0〜40%に減厚加工でき、かつ、缶強度、耐食性、密
着性に優れる樹脂被覆鋼板を得ることを目的とし、その
加工方法も含めて、多くの研究を重ねた結果、導き得た
ものである。本発明は、両面に熱可塑性樹脂を積層した
鋼板を、乾式、かつ大きな加工度で缶壁を減厚加工する
ことを課題とするが、その課題を解決するため一番問題
となることは、加工による発熱、その熱による積層され
た熱可塑性樹脂層の軟化、溶融、その結果としての下地
鋼板と金型の直接接触、さらには缶壁の破断である。加
工による発熱は、金属板の変形および摩擦が影響し、変
形による発熱は加工度および変形抵抗が小さいほど少な
く、また図3に示す本発明が望ましいとする複合加工に
おけるしごき加工においては、変形抵抗が小さいほど面
圧が低く、面圧×摩擦係数に比例する摩擦発熱も小さく
なる。また、積層された樹脂層の温度が同じであって
も、面圧が小さいほど該樹脂層の損傷は軽減される。そ
れゆえこの樹脂層の損傷に関し、加工度が同じであって
も変形量が少ない方が、また、材料の変形抵抗は、でき
得る限り小さい方が該樹脂層の損傷は軽減される。ここ
で、図3におけるしごき加工に到るまでに、材料は絞り
加工、再絞り加工を受けるため、加工による硬化が少な
い方が本発明の目的に適する。このように、加工後も変
形抵抗が小さいといった点から、鋼板の化学組成、結晶
粒径、時効指数を定める。
【0009】まず、鋼板の化学組成を定める理由につい
て説明する。Cは、その量の増加により鋼を硬質化し、
かつ結晶粒を微細化する。結晶粒が微細であると、加工
による肌荒れが少なく、積層された熱可塑性樹脂層との
密着性の点において望ましいが、結晶粒が小さいと加工
による硬化が大きくなる。鋼の硬化は、本発明の目的と
する乾式加工に適さず、C量の上限を0.1%とする。
一方、C量が0.001%以下になると、加工硬化は小
さいものの、結晶粒が大きくなり、本発明が適用を前提
とする再絞り、しごき加工においても肌荒れが生じやす
く、積層された熱可塑性樹脂層との加工密着性、肌荒れ
による応力集中が生じ、加工時、破断が起こりやすい。
【0010】Mnも鋼を硬質化するため、少ない方が望
ましく、その上限を 0.5%に限定する。一方、Mnは
鋼中のSによる熱間脆性を防止するために必要であり、
その下限を0.05%とする。Alは脱酸剤として添加
するが、脱酸残査が0.015%以下であると、脱酸が
不安定であり、一方、0.13 %を越えると硬質化し、
かつ、コストアップをも招く。S量が増加すると、硫化
物系介在物が増加し加工性を悪くするとともに、耐食性
も低下するため、その上限を0.03 %とする。Si、
Pはいずれも鋼を硬質化し、本発明が課題とする乾式加
工性を阻害するため、それぞれの上限を0.05%、0.
03%とする。Ti、Nbを添加するのは鋼中の固溶
C、固溶Nを低減し、加工硬化を抑制するためである。
下限以下であると、その効果が不十分であり、上限以上
になると、結晶粒の微細化が進み、加工硬化が大きくな
り乾式加工に適さない。Ti、Nbの添加をより効果的
にするためには、C量を少ないレベルにしておくことが
望ましく、C量は 0.001〜0.05%、さらには、
0.001〜0.01%の範囲がより望ましい。また、N
量についても限定しないが、0.005% 以下とするこ
とが望ましい。なお、Ti、Nb添加による固溶C、固
溶Nの低減効果は、後述する時効指数により評価でき
る。
【0011】つぎに、鋼の結晶粒径は6〜30μmに限
定する。本発明において結晶粒径はつぎのように定義す
る。すなわち、鋼板の圧延方向に平行な断面を観察面と
し、倍率200倍の視野における3cm×3cm(実際
の寸法:150μm×150μm)の範囲で観察される
より大きな3個の結晶粒の結晶粒径の平均値を、鋼の結
晶粒径とする。ここで各結晶粒の結晶粒径は、それぞれ
の結晶粒の断面の長寸法と短寸法の平均値とする。ここ
で長寸法は、結晶粒の中心を通る線分のうち、最も長い
線分の長さを長寸法とする。また、結晶粒の中心を通
り、長寸法線分と直交する線分の長さを短寸法とする。
以上に示したように、鋼断面の観察面で観察されるより
大きな結晶粒の寸法をもって結晶粒径を定義するのはつ
ぎに示す理由による。すなわち、鋼の結晶粒が全て同一
の直径を有する球体である、と仮定したとき、その断面
においては各結晶粒の断面は種々の直径の円として観察
される。これらの種々の直径の円のうち、最大のものが
球体の直径、すなわち真の結晶粒径となる。このことか
ら、鋼断面の観察面で観察されるより大きな結晶粒の寸
法をもって鋼の結晶粒と定義する。本発明においては結
晶粒径が小さい方が加工による肌荒れが少なく、積層さ
れた熱可塑性樹脂との加工密着性の点からは好ましい
が、結晶粒径が小さいほど加工硬化が大きくなり、本発
明が課題とする乾式加工性を悪化させる。本発明の樹脂
被覆鋼板は、缶壁厚さを元板厚の70〜40%とする加
工を前提とするため、DTR缶に比べ一定高さを得るた
めのブランク径は小さくてよく、それゆえ(ブランク径
/最終缶径)で表される絞り比は小さく、そのため肌荒
れは起こり難く、結晶粒径はDTR缶用の材料ほど小さ
くする必要はない。むしろ小さい方が上記のように加工
硬化を大きくし、乾式加工性を阻害し好ましくない。し
かしながら、結晶粒径が30μm以上となると、前記の
絞り比が小さくても肌荒れが生じやすく、積層された熱
可塑性樹脂層の密着不良、缶壁の破断が問題となる。以
上の理由により結晶粒径の上限、下限が限定されるが、
より望ましくは8〜15μmの結晶粒径が本発明の目的
に適する。この鋼の結晶粒径は前記の鋼の化学組成、熱
間圧延の仕上げ温度、熱間圧延後の巻き取り温度、冷間
圧延後の再結晶条件の変更により調整される。
【0012】ついで、時効指数を5kg/mm2 以下と
する理由について説明する。時効指数は鋼中の固溶C
量、固溶N量に比例し、固溶C量、固溶N量が多いと加
工硬化が大きくなる。固溶C量、固溶N量の代用値とし
て時効指数を用いる。時効指数を5kg/mm2 以下と
するのは加工による硬化を抑制するためである。なお、
この時効指数は、鋼板に8〜10%の歪を付加し、10
0℃で1時間加熱後の降伏強度値と加熱前の降伏強度値
の差で示される。なお、この時効指数は熱間圧延後の巻
き取り温度、再結晶焼鈍時の冷却速度、Ti、Nbの添
加などにより調整される。
【0013】一方、加工後の缶は、缶内が陽圧、あるい
は陰圧の状態で用いられるが、そのような圧に耐えるた
めには缶底、缶壁ともに一定以上の強度が必要である。
とりわけ、缶内が陽圧の場合、缶底の耐圧強度が問題と
なるが、耐圧強度は大略(板厚)2 ×降伏強度と正比例
の関係で影響するので、耐圧強度には板厚と降伏強度が
影響する。また、必要耐圧強度は内容物によっても異な
る。鋼板の降伏強度、抗張力および板厚の下限はこの耐
圧強度を考慮して定める。また、降伏強度および抗張力
の上限は、しごき加工時における積層された樹脂層の損
傷の点から限定する。これらの点を考慮すると、本発明
で用いられる鋼板の降伏強度および抗張力は、それぞれ
25〜70kg/mm2、25〜73kg/mm2に限定
される。上限以上であると、該樹脂層の損傷を介して缶
壁の破断が起こりやすくなる。さらに、降伏強度/抗張
力で表される降伏比を0.7 以上、1未満とするのは、
缶底強度に影響する降伏強度は高く、一方しごき加工時
の該樹脂層の損傷に影響する加工時の変形抵抗は小さい
方が本発明の目的に適するためであり、その点から降伏
比の上限、下限を定めた。鋼板の板厚の上限は、得られ
る缶体の耐圧強度の点から、0.3 mm以上必要な例は
少なく、また経済性の点からも上限を 0.3mmとす
る。なお、降伏強度あるいは抗張力が大きい場合、缶強
度の点から鋼板の厚さを薄くすることができる。ここで
降伏強度の高めの鋼板を用いる場合、缶強度が必要以上
である限り、鋼板の元板厚はできるだけ薄い方が望まし
い。加工度が同じであっても、元板厚が薄い方が加工量
を少なくでき、かつ加工時の発熱を低減することができ
る。鋼板の板厚の下限を 0.15mmに限定したのは、
均一な厚さの鋼板を連続的に安定して高速生産する点か
らであり、あえて下限を限定することはない。
【0014】つぎに、鋼板に積層する樹脂は熱可塑性樹
脂であり、好ましくは結晶性ポリエステル樹脂とし、そ
の厚さを10〜50μmとし、さらに、180〜260
℃の融点を有するポリエステル樹脂とする。その理由に
ついて説明する。本発明は乾式での加工を前提とする
が、積層される樹脂を熱可塑性樹脂とすることにより、
しごき加工時の潤滑効果がより効果的なものとなる。し
ごき加工時、缶外面はしごきダイスとの摩擦により発熱
するが、その発熱により軟化し、潤滑作用をもたらすも
のと推察される。しごきダイスの温度を高めると、潤滑
作用は顕著となるが、さらに温度を高くすると、しごき
ダイス内の樹脂がさらに軟化し、鋼板の変形抵抗に比例
した面圧に抗しきれず、鋼板としごきダイスが直接接触
し、缶壁の破断を生じる。それゆえ、熱可塑性樹脂が軟
化しすぎることは好ましくなく、しごきダイス温度を適
切な温度範囲、好ましくは25℃〜積層される熱可塑性
樹脂のガラス転移温度とすることが望ましい。一方、積
層される熱可塑性樹脂も低い温度で軟化することは好ま
しくなく、その軟化のしやすさの指標として融点を用い
ると、融点180℃以上の熱可塑性樹脂を用いることが
本発明の樹脂被覆鋼板が対象とする乾式加工での成形性
を改善するので、より好ましい。すなわち、工業生産に
おいて、絞り加工、しごき加工を連続で実施するが、そ
の場合、加工条件にもよるが、缶壁温度は100℃以上
となることがあり、融点が低いと、軟化あるいは溶融
し、得られる缶体の外観が損なわれたり缶内面に鉄露出
部が生じ、耐食性が低下する。さらに、熱可塑性樹脂が
工具に付着して連続生産が困難になる。この点からも1
80℃以上の融点を有する熱可塑性樹脂を用いることが
好ましい。また、積層される熱可塑性樹脂の融点が26
0℃以上であると、加工時の軟化による十分な潤滑効果
が得られない。以上の理由により、積層される熱可塑性
樹脂の融点の上限は260℃に、下限は180℃に限定
することがより好ましい。また、積層された熱可塑性樹
脂層の厚さを10〜50μmとするが、その厚さが10
μm以下の場合、しごき加工時に缶外面はしごきダイス
と下地鋼板が直接接触する危険性が大となり、缶壁の破
断の危険性が増大する。また、缶内面側の耐食性も不十
分となる恐れがある。さらに、熱可塑性樹脂を鋼板上に
連続的に安定して積層することが難しくなる。一方、積
層された熱可塑性樹脂の厚さの上限は、絞り加工時にし
わが発生しやすくなること、および、経済性の点から5
0μmに限定する。
【0015】180〜260℃の融点を有する熱可塑性
樹脂の中で、より好ましい樹脂はポリエステル樹脂であ
り、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブ
チレンテレフタレート、エチレンテレフタレート単位を
主体とした共重合ポリエステル樹脂、あるいはこれらの
混合物からなるポリエステル樹脂があげられる。特に7
5〜95モル%のポリエチレンテレフタレートと5〜2
5モル%のポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン
セバケートあるいはポリエチレアジペートなどからなる
共重合ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート
または上記のポリエステル樹脂に、ポリブチレンテレフ
タレートをブレンドしたポリエステル樹脂が好ましい。
【0016】上記のポリエステル樹脂を鋼板に積層する
方法として、鋼板の両面に直接溶融したポリエステル樹
脂を押し出し積層する方法、溶融押し出し後、常法によ
りフィルム成形した未延伸あるいは延伸配向させたフィ
ルムを熱融着により、または接着剤を介して積層する方
法、およびこれらの方法を併用した方法などがあり、い
ずれの方法も本発明の樹脂被覆鋼板の製造方法として適
用可能であるが、成形加工された缶において、積層され
た樹脂層の耐衝撃加工性、腐食性の強い内容物に対する
耐透過性などの点から、二軸配向ポリエステル樹脂フィ
ルムを用いることが好ましい。その場合、熱融着により
積層したポリエステル樹脂層の面配向係数が、鋼板と非
接触の面(フリー面)で0.01〜0.10、鋼板と接触
する面で0.00〜0.05の範囲にあるように積層条件
を選び積層することがもっとも好ましい。すなわち、積
層後のポリエステル樹脂層の鋼板と接する面における面
配向係数が 0.05以上の場合、積層されたポリエステ
ル樹脂層は加工時に剥離しやすくなり実用的でない。
【0017】一方、積層されたポリエステル樹脂層のフ
リー面における面配向係数が 0.01以下である場合、
ポリエステル樹脂の二軸配向性はほとんど消失した状態
であり、絞りしごき缶に乾式で成形加工すると、積層さ
れたポリエステル樹脂層に亀裂が入ることがあり、腐食
性の強い内容物を充填する缶に用いることは難しい。ま
た、フリ−面における面配向係数が 0.10を越える
と、積層されたポリエステル樹脂層の展延性が乏しくな
り、加工条件が厳しくなると、加工時に該樹脂層に亀裂
が入ることがある。したがって、本発明の樹脂被覆鋼板
において、積層されたポリエステル樹脂層のフリー面に
おける面配向係数は0.01〜0.10、鋼板と接触する
面の面配向係数は0.00〜0.05の範囲にすることが
好ましい。なお、上記のポリエステル樹脂フィルムを接
着剤層を介して鋼板に積層することは腐食性の強い内容
物を充填する缶の内面用には好ましく、その場合、積層
されたポリエステル樹脂層の面配向係数は上記のように
制御することは特に必要としない。用いられる接着剤は
公知のものも使用可能であるが、エポキシ基を分子内に
有する熱硬化性重合組成物がより好ましく、熱可塑性樹
脂フィルムの鋼板と接する面に塗布、乾燥しても、ある
いは鋼板の表面に塗布、乾燥してもよい。
【0018】上記の積層されたポリエステル樹脂層の面
配向係数は、つぎに示す方法で求められる。まずポリエ
ステル樹脂被覆鋼板を希塩酸中に浸漬し、鋼板を溶解さ
せ、ポリエステル樹脂層のみを採取する。つぎに、採取
したポリエステル樹脂層(フィルム)を水洗、乾燥し、
屈折率計を用いて該フィルムの各面(鋼板と接していた
面およびフリー面)における長さ方向、幅方向および厚
さ方向のそれぞれの屈折率を測定する。この屈折率を用
い、フィルムの各面における面配向係数は、つぎの式に
より求められる。 A=(B+C)/2ーD ここで、Aは、フィルムの面配向係数、Bは、フィルム
の長さ方向の屈折率、Cは、フィルムの幅方向の屈折
率、Dは、フィルムの厚さ方向の屈折率を示す。上記の
方法により測定される屈折率はフィルムの各面の表面か
ら5μm以内の厚さにおける平均値を示しているので、
フィルムの各面(鋼板と接していた面およびフリー面)
の面配向係数を区別することが可能である。
【0019】さらに、本発明においては、熱融着により
積層したポリエステル樹脂層の鋼板と非接触の面(フリ
ー面)および鋼板と接する面の面配向係数を好ましい範
囲に制御することを容易にするため、それぞれ融点が異
なる上層樹脂と下層樹脂の二層からなるポリエステル樹
脂の二軸配向フィルムを用いることも可能である。
【0020】上記のポリエステル樹脂フィルムのIV値
(極限粘度、固有粘度)も本発明で用いられるポリエステ
ル樹脂フィルムの重要な要因の一つである。IV値は分
子量と正の相関関係にあり、フィルムの剛直性および樹
脂フィルムの成形性に大きな影響を与える因子である。
すなわち、IV値が 0.50以下の場合、積層後のポリ
エステル樹脂層の面配向係数が好ましい範囲にあって
も、絞りしごき缶に成形したのちの耐衝撃性に乏しく、
衝撃を受けた部分の内面側のポリエステル樹脂層に微細
な亀裂が無数に生じ、鋼表面が露出するようになる。ま
た、IV値が 0.70以上の場合、しごき加工時に粘性
抵抗が高く、実用上問題を生じることがある。
【0021】本発明においては、鋼板の缶外面となる面
に顔料で着色された熱可塑性樹脂を積層することも美的
観点から重要な要因の一つである。すなわち、缶の外面
に印刷されるデザインの鮮映性を向上させるために、酸
化チタン系の白色顔料を樹脂製造工程で含有させること
も可能である。顔料としては、無機系、有機系および白
色以外の色の顔料の適用も可能であり、用途により選択
される。添加量は1〜20%で良好な印刷性が得られ
る。
【0022】また、本発明においてはビスフェノールA
ポリカーボネート、6ーナイロン、6,6ーナイロン、
6ー6,6ーコポリマーナイロン、6,10ーナイロ
ン、7ーナイロン、12ーナイロンなどのポリアミド樹
脂、あるいはポリエチレンナフタレートなどの熱可塑性
樹脂を用いることも可能である。さらに、これらの熱可
塑性樹脂を単独で用いることも可能であり、前記のポリ
エステル樹脂と共押し出しで得られる二層構造、あるい
は三層構造のフィルムの上層、あるいは中間層として、
また、これらの熱可塑性樹脂を前記ポリエステル樹脂に
ブレンドした樹脂を用いることも可能である。また、該
ブレンド樹脂フィルムの上層として上記のポリエステル
樹脂層を設けた二層フィルムの適用も可能である。な
お、上記の熱可塑性樹脂には、必要に応じ他の特性を損
なわない範囲で安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑
剤、腐食防止剤などの添加剤を加えることも可能であ
る。
【0023】熱可塑性樹脂が積層される鋼板には電解ク
ロム酸処理鋼板が好ましく、用いる鋼板の中心線平均粗
さを0.05〜0.5μmとするのは、鋼板と積層される
熱可塑性樹脂との密着性および耐食性を目的に叶うもの
とするためである。電解クロム酸処理により形成される
皮膜は、下層が金属クロム、上層がクロム水和酸化物か
らなる二層構造を有する皮膜であり、下層の金属クロム
量は30〜200mg/m2、上層のクロム水和酸化物
はクロム量として5〜25mg/m2の範囲が適してい
る。中心線平均粗さは 0.6μm以上であると、加工条
件によっては、積層された熱可塑性樹脂の加工密着性が
問題となり、加工度の大きな缶上端部で積層された熱可
塑性樹脂層が剥離することがあり、0.6 μmを上限と
した。また下限は性能面からではなく、経済的に中心線
平均粗さ0.05 μm以下の鋼板を安定して製造するの
が困難であり、この点から下限を 0.05μmとした。
【0024】積層された熱可塑性樹脂層の上面に塗布す
る高温揮発性潤滑剤は、本発明が課題とする乾式加工
を、高加工度で、かつ高速で実施するに際し、重要な役
割を果たす。また、高温揮発性潤滑剤は、加工後200
℃程度の温度で数分の加熱を施した時、50%以上飛散
することが望ましく、具体的には、流動パラフィン、合
成パラフィン、天然ワックスなどの単体、またはこれら
の混合物から加工条件、加工後の加熱条件に応じ選択す
る。塗布される潤滑剤の特性としては、融点が25〜8
0℃、沸点が180〜400℃の範囲にあるものが本発
明の目的を果たすのに望ましい。また、塗布量は缶外面
となる面、缶内面となる面、加工条件、加工後の加熱条
件等を考慮し、決定されるべきであるが、5〜100
mg/m2、好ましくは30〜60mg/m2 の範囲が
適している。
【0025】以上のように、鋼板の化学組成、特性、熱
可塑性樹脂の特性を限定し、さらに積層された熱可塑性
樹脂の上に高温揮発性潤滑剤を塗布することなどによ
り、乾式の絞りしごき加工で缶高さが缶径の2倍程度と
高く、缶壁厚さが元板厚の70〜40%程度の缶壁の薄
い缶を成形するのに適した樹脂被覆鋼板が得られる。
【0026】ここで、絞りしごき加工に関し、以下に説
明する。再絞り加工としごき加工を同時に行う複合加工
により、缶壁厚さの減厚を行えば、本発明の目的が極め
て効果的に達成される。本発明の樹脂被覆鋼板から、前
記複合加工を含む加工により缶高さが高く、缶壁厚さの
薄い缶を製造するためのプロセスの1態様を以下に説明
する。まず、図1に示す樹脂被覆鋼板から図2に示すよ
うに、ブランク5を打ち抜き、絞り缶6とする工程、絞
り缶6を、絞り缶6よりも缶径の小さい再絞り缶7とす
る工程、再絞り缶7をさらに図3に示すように、缶径の
小さい缶に再絞り加工しながら、同時にしごき加工する
複合加工により絞りしごき缶8とする工程、さらに、缶
上端部がトリミングし、トリム缶12とし、ついで缶上
端部をネックイン(缶径を縮小する加工)、フランジ加
工し、図4に示す最終缶に仕上げられる。本発明の樹脂
被覆鋼板が課題とする缶高さが高く、缶壁厚さ薄い缶を
得ることに関し、上記の工程において、複合加工の役割
も少なくなく、複合加工の概略を図3に示すが、複合加
工においては、再絞り加工ダイス14に続き、しごき加
工部16を配置し、再絞り加工を行いながらしごき加工
を行う。このようにしごき加工部に後方張力を効果的に
付加しながらしごき加工を行うことにより、外面の樹脂
層の損傷が起こり難くなる。また、再絞り加工部としご
き加工部間の缶壁10の長さLは、以後のネックイン加
工のため厚くすべき寸法を考慮して定める。また、再絞
りダイス14、しごきダイス15の温度は、25℃〜積
層された樹脂のガラス転移温度の範囲とすれば、本発明
の課題を解決するのに効果的である。ここで、熱可塑性
樹脂を被覆した元板厚 0.20mmの電解クロム酸処理
鋼板を図2の加工工程にしたがって加工し、トリミング
した缶12の缶高さ方向の缶壁厚さ(積層された樹脂層
を剥離した鋼板のみの厚さ)分布の一例を図5に示す。
図5において、缶胴部の厚さは、約0.120mm (元
板厚に対し40%の減厚)と薄く、缶上端部は約 0.1
60mm(元板厚に対し20%の減厚)と厚く、以後の
ネックイン加工に適した状態となっている。また、図3
の加工方法から容易に理解されるが、ポンチ13の外径
を、缶胴に対応する部分と、缶上端部に対応する部分を
同一とした場合、缶胴部と缶上端部の厚み段差は缶外面
側に形成され、DI缶が缶内面側に厚み段差を有するの
とは逆の状態となる。図2、図3、図4、図5は缶外面
側に厚み段差が形成される場合の態様について示す。一
方、DI缶の場合と同じく、缶上端部に対応するポンチ
の外径を細くすれば、缶内面側に厚み段差が形成される
ことは申すまでもない。缶外面側に段差が存在しても、
外観に殆ど影響せず、また、缶内面側に段差が存在して
も、成形後の缶のポンチの取り外し性に殆ど影響しな
い。すなわち、段差が内面側、外面側いずれに形成され
る場合であっても品質、製造上何等問題となるものでは
ない。
【0027】
【実施例】
実施例1 表1に示す化学組成を有する6種類の鋼を転炉で溶製
し、スラブとし熱間圧延を仕上げ温度900℃で終了
し、650℃で巻き取り、1.8 mmの熱延板とした。
該熱延板を酸洗後冷間圧延し、板厚0.2mmと0.3m
mの冷延板とし、それぞれ表2に示す再結晶焼鈍(C
A:連続焼鈍、BA:箱型焼鈍)を実施した。ついで板
厚 0.2mmの鋼板は、圧下率1〜2%でスキンパスを
施したSR材とし、また、板厚 0.3mmの鋼板は 0.
2mmまで圧延を施したDR材とした。該SR材、DR
材に電解クロム酸処理(金属クロム量:120mg/m
2 、クロム水和酸化物中のクロム量: 18mg/m2
を施し、表3に示す11種類の鋼板を熱可塑性樹脂積層
用の原板とした。これらの電解クロム酸処理鋼板に以下
の要領で熱可塑性樹脂を被覆した。まず、これらの原板
を240℃に加熱し、缶内面側となる面にはポリエチレ
ンテレフタレート88モル%、ポリエチレンイソフタレ
ート12モル%からなる二軸延伸した共重合ポリエステ
ル樹脂フィルム(厚さ:25μm、面配向係数:0.1
26 、融点:229℃)、缶外面側となる面には酸化
チタン顔料を添加し白色に着色した前記と同一組成の二
軸延伸した共重合ポリエステル樹脂フィルム(厚さ:2
0μm)を同時に積層し、直ちに水中に浸漬冷却した。
積層後、乾燥し、その両面にパラフィン系ワックスを約
50mg/m2 塗布し、以後の加工を実施した。まず、
直径160mmのブランクに打ち抜き後、缶径が100
mmの絞り缶とした。ついで再絞り加工により缶径80
mmの再絞り缶とした。この再絞り缶を複合加工により
再絞り加工と同時にしごき加工を行い、缶径66mmの
絞りしごき缶とした。この複合加工において、缶の上端
部となる再絞り加工部としごき加工部間の間隔は20m
m、再絞りダイスの肩アールは板厚の 1.5倍、再絞り
ダイスとポンチのクリアランスは板厚の 1.0倍、しご
き加工部のクリアランスは元板厚の55%、となる条件
で加工した。いずれの加工においても水系冷却、潤滑剤
は使用せず、乾式で行い、缶壁の破断の有無、缶外面の
状態、缶内面の金属露出、下地の電解クロム酸処理鋼板
と積層された樹脂層の密着性を評価した。なおこの複合
加工では、矢印方向に成形し、缶上端部にフランジを残
す状態で成形を終了し、ポンチを後退させ、矢印と反対
方向に複合成形後の缶を取り出す。ついで、缶上端をト
リミングし、ネックイン加工、フランジ加工を施すこと
により、本発明の樹脂被覆鋼板が目的とする缶高さが高
く、缶壁厚さの薄く、さらに缶蓋を巻き締め得る状態の
缶となる。缶壁の破断率、缶外面の状態、缶内面の金属
露出、下地鋼板と積層された樹脂層の密着性は以下に示
す基準で評価した。 1)缶壁の破断率 ◎:0%、○:10%未満、△:10%以上、30%未
満、×:30%以上 2)缶外面の状態(きずの発生率で評価) ◎:0%、○:10%未満、△:10%以上、30%未
満、×:30%以上 3)缶内面の金属露出(エナメルレーター値(ERV:
mA)で評価) ◎:0以上、0.05mA未満、○:0.05mA以上、
0.5mA未満、△:0.5mA以上、5mA未満、×:
5mA以上 4)積層された樹脂層の加工密着性(ネックイン加工後
の剥離程度で評価) ◎:まったく剥離なし、○:わずかに剥離するが、実用
上問題ない、△:かなり剥離、×:缶上部全体が剥離
【0028】実施例2 表2に示す鋼板C−1、C−2、D−1、D−2に実施
例1と同様な電解クロム酸処理 (金属クロム量:75
mg/m2、クロム水和酸化物中のクロム量:13mg
/m2) を施し、熱可塑性樹脂積層用の原板とした。こ
れらの電解クロム酸処理鋼板を240℃に加熱し、缶内
面側となる面にはポリエチレンテレフタレート88モル
%、ポリエチレンイソフタレート12モル%からなる二
軸延伸した共重合ポリエステル樹脂フィルム (厚さ:
12μm、面配向係数:0.126、融点:229
℃)、缶外面側となる面には酸化チタン顔料を添加し、
白色に着色した前記と同一組成の二軸延伸した共重合ポ
リエステル樹脂フィルム(厚さ:12μm)を同時に積
層し、直ちに水中に浸漬冷却した。ついで乾燥後、その
両面にパラフィン系ワックス約50mg/m2 塗布し
た。その後、実施例1と同じ条件で成形加工を施し、実
施例1ど同様な方法で評価した。
【0029】実施例3 表2に示す鋼板D−1、D−2に実施例1と同様な電解
クロム酸処理(金属クロム量:135mg/m2、クロ
ム水和酸化物中のクロム量:15mg/m2)を施し、
熱可塑性樹脂被覆用の原板とした。これらの電解クロム
酸処理鋼板を235℃に加熱し、缶内面側となる面には
上層がポリエチレンテレフタレート88モル%、ポリエ
チレンイソフタレート12モル%からなる共重合ポリエ
ステル樹脂層、下層がポリエチレンテレフタレート94
モル%、ポリエチレンイソフタレート6モル%からなる
共重合ポリエステル樹脂層の二軸延伸した二層の共重合
ポリエステル樹脂フィルム(上層の厚さ:15μm、下
層の厚さ:5μm、上層の融点:229℃、下層の融
点:226℃、上層の面配向係数: 0.123、下層の
面配向係数: 0.083)を、缶外面側となる面には実
施例1と同じ組成の白色に着色した二軸延伸共重合ポリ
エステル樹脂フィルム(厚さ:15μm)を同時に積層
し、直ちに水中に浸漬冷却した。ついで、乾燥後、その
両面にパラフィン系ワックスを約50mg/m2 塗布し
た。その後、実施例1と同じ条件で成形加工を施し、実
施例1と同様な方法で評価した。
【0030】実施例4 表2に示す鋼板C−1、C−2、D−1、D−2に実施
例1と同様な電解クロム酸処理(金属クロム量:95
mg/m2、クロム水和酸化物中のクロム量:15 mg
/m2)を施し、熱可塑性樹脂積層用の原板とした。こ
れらの電解クロム酸処理鋼板を240℃に加熱し、缶内
面側となる面には、予めエポキシ・フェノール系プライ
マーを鋼板と接する面に乾燥重量で0.5mg/m2塗布
したポリエチレンテレフテレート88モル%、ポリエチ
レンイソフタレート12モル%からなる二軸延伸した共
重合ポリエステル樹脂フィルム(厚さ:20μm、面配
向係数:0.126、融点:229℃) を、缶外面側と
なる面には、実施例1と同じ組成の酸化チタン顔料を添
加し、白色に着色した二軸延伸共重合ポリエステル樹脂
フィルム(厚さ:15μm)を同時に積層し、直ちに水
中に浸漬冷却した。ついで乾燥後、その両面にパラフィ
ン系ワックスを約50mg/m2 塗布した。その後実施
例1と同じ条件で成形加工を施し、実施例1と同様な方
法で評価した。評価した結果を、表3および表4に示し
たが、本発明の熱可塑性樹脂被覆鋼板は、乾式で成形加
工される、缶高さが高く、缶壁厚さの薄い缶用に適して
いることがわかる。
【0031】
【表1】 注) 表中の符号(−)は、添加せずを意味する。
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【発明の効果】本発明の乾式絞りしごき加工缶用樹脂被
覆鋼板は、乾式で、缶高さが高く、缶壁厚さの薄いしご
き缶を成形加工するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の乾式絞りしごき加工缶用樹脂被覆鋼板
の断面を示す模式図である。
【図2】本発明の乾式絞りしごき加工缶用樹脂被覆鋼板
から、乾式で、缶高さが高く、缶壁の薄い缶を導く工程
の一態様に関する概略図である。
【図3】本発明の乾式絞りしごき加工缶用樹脂被覆鋼板
から、乾式で、缶高さが高く、缶壁の薄い缶を導くに適
した再絞り加工としごき加工を同時に行う複合加工の一
部断面の模式図である。
【図4】本発明の乾式絞りしごき加工缶用樹脂被覆鋼板
から成形された缶の断面図である。
【図5】本発明の乾式絞りしごき加工缶用樹脂被覆鋼板
から成形された缶の缶壁厚みのプロフィルの一例を示す
図である。
【符号の説明】
1 鋼板 2 熱可塑性樹脂層 3 電解クロム酸処理皮膜 4 高温揮発性潤滑剤 5 ブランク 6 絞り缶 7 再絞り缶 8 再絞りしごき缶 9 薄肉缶壁 10 缶上端部 11 残存フランジ 12 トリム缶 13 ポンチ 14 再絞りダイス 15 しごきダイス 16 しごき加工部 17 しわ押さえ 18 矢印 19 缶底 20 ネック L 再絞り加工部としごき加工部の間隔
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22C 38/06 C22C 38/06 38/14 38/14 (56)参考文献 特開 平7−3395(JP,A) 特開 平4−314535(JP,A) 特開 平7−34193(JP,A) 特開 平5−287444(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 B21D 51/18 B32B 15/08,31/20

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C量 :0.001〜0.10%、Mn量
    :0.05〜0.50%、Al量:0.015〜0.13
    %、Si量≦0.05%、P量≦0.03%、S量 ≦0.
    03%で、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    結晶粒径:6〜30μm、中心線平均粗さ:0.05〜
    0.6μm、板厚:0.15〜0.30mmの電解クロム
    酸処理鋼板の両面に厚さ10〜50μmの熱可塑性樹脂
    を被覆し、その表面に高温揮発性潤滑剤を塗布した乾式
    絞りしごき加工缶用樹脂被覆鋼板。
  2. 【請求項2】 C量 :0.001〜0.05%、Mn量
    :0.05〜0.50%、Al量:0.015〜0.13
    %、Si量≦0.05%、P量≦0.03%、S量≦0.
    03%を含有し、さらにNb、Tiの一種、あるいは二
    種を、それぞれ0.001〜0.03%、0.005〜0.
    05%含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からな
    り、結晶粒径:6〜30μm、中心線平均粗さ:0.0
    5〜0.6μm、板厚:0.15〜0.30mmの電解ク
    ロム酸処理鋼板の両面に厚さ10〜50μmの熱可塑性
    樹脂を被覆し、その表面に高温揮発性潤滑剤を塗布した
    乾式絞りしごき加工缶用樹脂被覆鋼板。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2の鋼板の降伏強
    度が25〜70kg/mm2、抗張力が25〜73kg
    /mm2 、降伏比が0.7以上、1未満、時効指数が5
    kg/mm2 以下である乾式絞りしごき加工缶用樹脂被
    覆鋼板。
  4. 【請求項4】 請求項1または請求項2の熱可塑性樹脂
    が、結晶性ポリエステル樹脂である乾式絞りしごき加工
    缶用樹脂被覆鋼板。
  5. 【請求項5】 電解クロム酸処理鋼板と熱可塑性樹脂層
    の間に接着剤層が介在する請求項1または請求項2の乾
    式絞りしごき加工缶用樹脂被覆鋼板。
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