JP5224717B2 - 缶ボディ用アルミニウム合金板 - Google Patents
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Description
2ピースアルミ缶ボディの製缶工程は、一般的には、まず、缶ボディ用アルミニウム合金板からブランク材を打ち抜いて大径のカップに成形する工程と、次に、カップ絞り(DRAWING)としごき(IRONING)を組み合わせたDI成形工程と、開口部のトリミング工程と、潤滑剤及びクーラントを完全に除去する洗浄工程と、外面の塗装・印刷工程及び焼付け工程と、内面コーティング及び焼き付け工程と、さらに開口部のネッキング及びフランジング工程とからなる。
上記検査工程では、缶口側からフランジ部、缶内面、缶底をライトで照らしてCCDカメラで撮影し、画像処理により異物(汚れ)、割れ等の欠陥を検査している。また、最近では、最終だけでなく、工程の途中に検査機を入れる場合もある。
缶底や缶内面における異物等の検査では、異物を確実に除去するための検査技術も向上しているため、板の反射特性によっては、異物が存在しないにも関わらず、誤ってリジェクト(誤排出)される場合があり、生産性を阻害する。そのため、より精度の高い板面品質制御が必要となっている。
Mn:0.8〜1.3%(質量%、以下同じ)、
Mg:0.9〜1.3%、
Cu:0.15〜0.25%、
Si:0.15〜0.40%、
Fe:0.25〜0.50%、
Zn:0.25%以下を含有し、
残部が不可避的不純物とアルミニウムからなり、
上記缶内面に成形される側の板面が、
板面の圧延方向に対して90°方向の粗さ曲線の平均長さRSmが50〜150μmであり、
板面の圧延方向に対して0°方向の正反射率が35〜50%であり、
板面の圧延方向に対して90°方向の正反射率が10〜25%であり、
板面の圧延方向に対して0°方向の正反射率と90°方向の正反射率の比率(0°方向の正反射率/90°方向の正反射率)が3.2以下であることを特徴とする缶ボディ用アルミニウム合金板にある(請求項1)。
このように、本発明によれば、製缶後の缶内面検査による誤排出がなく、生産性の向上が可能な缶ボディ用アルミニウム合金板を得ることができる。
なお、上記缶ボディ用アルミニウム合金板の化学組成は、上記アルミニウム合金鋳塊の化学組成からほとんど変化することがない。
上記缶ボディ用アルミニウム合金板は、上述したように、Mnを0.8〜1.3%含有する。
Mnは、強度に寄与する主要元素であるとともに、α相化合物(Al−Mn−Fe−Si系)の生成によるしごき加工時の焼き付き防止に効果のある成分である。また、0−180°耳の抑制効果の観点からも所定の量以上の添加が好ましい。
Mgは、Mnと共に強度を付与する不可欠な添加元素であり、固溶して合金を硬化する。
上記Mg含有量が0.9%未満の場合には、十分な強度を得ることができない。一方、1.3%を越える場合には、強度が高くなりすぎ、DI成形性が劣る。また、酸化抑制しフローマークを出にくくするため、添加量は抑制した方がよい。
Cuは、Mgと共に低温熱処理等により、Al−Mg−Cu系化合物を形成して強度を高め、塗装焼付け等の加熱による軟化を抑制する効果を持つ。
上記Cuの含有量が0.15%未満の場合には、上述の効果が十分に得られない。一方、0.25%を超える場合には、成形加工時の加工硬化性が大きくなりすぎて成形性が低下し、また、耐食性が低下する。また、現行の国内の缶ボディ材には、Cuが0.20〜0.25%含まれている材料が大半のため、リサイクルの観点からも、上記範囲の量のCuを添加した合金が好ましい。
Siは、Mn、Feと共に、しごき成形時の素材と工具の焼き付き防止に効果のあるα相化合物(Al−Mn−Fe−Si系)形成に必要な成分である。また、この他にAl−Mn−Si相も形成し、Mnの固溶量を低下させて、より均一な変形を促進する。
Feは、Mnと共に鋳造時にAl6(Mn、Fe)相、α相化合物(Al−Fe−Mn−Si系)、Al−Fe−Si系の化合物を形成する。これは、上述したように、しごき成形時に不可欠である。また、Feを添加すると、Mnの固溶度を減少させ、再結晶温度を下げるため、結晶粒微細化に有利である。
上記Feの含有量が0.25%未満の場合には、均一変形に寄与する金属間化合物の形成が不十分になり、また、結晶粒が細かくならない。一方、0.50%を超える場合には、粗大な化合物を生じ易く、成形加工時に破断の起点となりうる。
Znは、絞り及びしごき加工性、並びにネック・フランジ成形性の向上に効果がある。
上記Znを多量に添加すると、耐食性を損なうという問題があり、コスト的にも不利となる。そこで、本発明では、現在、缶ボディ材に一般的に使用されているA3004やA3104と同範囲である0.25%とした。
上記粗さ曲線の平均長さRSmは、JIS B0601−2001に示されている輪郭曲線要素の平均長さであり、JIS B0601−2001の基準に準じて2次元粗さ測定器により測定する。
そして、2次元粗さ測定について、圧延方向に対して0°の方向では、圧延ロール(ワークロール)面の表面形態から転写された板面の凹凸の断面曲線が得られないため、圧延方向に対して90°方向を測定する。
なお、上記正反射率とは、JIS Z 8741−1997に準拠した方法によって測定する。入射光(入射角60°)の強度に対する、板面で反射された反射光(受光角60°)の強度の百分率である。
板面の正反射率を制御することにより、缶成形時の加工量が小さい内外面底部だけでなく、内面側の側壁部においても缶底からの反射率の影響があるため、缶内面検査時に誤排出を抑制することができる。
上記0°方向の正反射率と90°方向の正反射率がいずれも上記範囲を満たしている場合であっても、0°方向と90°方向の異方性が大きく、圧延90°方向の正反射率に対する圧延0°方向の正反射率の比率(0°/90°正反射率比)が一定値(3.2)を超える場合には、缶内面検査時に誤排出が顕著となる。なお、ワークロール研磨目の転写によってできた圧延板では、正反射率の0°/90°正反射率比は1.0以上となる。
製造中に中間焼鈍を行うと、ベークハードし、DI成形性やフランジ成形性を低下させ、割れなどの原因となる。また、エネルギーを多く使用するため、コスト面でも好ましくない。
本例は、本発明の缶ボディ用アルミニウム合金板にかかる実施例について説明する。
本例は、本発明の一実施例を示したものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
本例では、表1に示す化学組成を有するアルミニウム合金を鋳造により造塊し、均質化処理を行い、その後直ちに熱間圧延を行い、板厚0.3mmまで冷間圧延を行うことにより、本発明の実施例として、缶ボディ用アルミニウム合金板(試料E1〜試料E3)を作製した。
<正反射率>
上記缶ボディ用アルミニウム合金板の板面の圧延方向に対して0°方向と90°方向の正反射率を、村上色彩技術研究所製光沢度計(型式 GM3D)を用いて測定した。
その後、板面の圧延方向に対して0°方向の正反射率と90°方向の正反射率の比率(0°/90°正反射率比)を算出した。
板面の圧延方向に対して0°方向の正反射率が35〜50%であり、板面の圧延方向に対して90°方向の正反射率が10〜25%であり、0°/90°正反射率比が3.2以下である場合を合格とし、0°方向の正反射率、90°方向の正反射率、0°/90°正反射率比のうちいずれか一つでも上記範囲を外れる場合を不合格とした。
Mitutoyo製の2次元粗さ測定機(型式 surftest 402)を用いて、板面の圧延方向に対して90°方向の粗さ曲線の平均長さRSmを測定した。
上記粗さ曲線の平均長さRSmが50〜150μmの範囲内である場合を合格、上記RSmが50〜150μmの範囲から外れる場合を不合格とした。
次に、得られた缶ボディ用アルミニウム合金板から成形した直径85mm、高さ35mmのカップから、連続製缶機を用いて、缶胴径呼称211(2・11/16インチ=68.3mm)、高さ124mm(トリミング後)のDI缶の成形を行い、洗浄を行うことによりDI缶を作製した。各試料につきそれぞれ100缶ずつ製缶した。そして、得られたDI缶について、缶底明度比を測定した。結果を表2に併せて示す。
簡易缶内面反射光量測定装置4は、DI缶11の上方に配置した白色LED照明41(リング型直射光照射、CCS製LDR−132SW−LA)と、その上に配置した白黒CCD42(オムロン製F150−S1A)と、図示していない画像処理装置(オムロン製F160−C10)からなる。上記DI缶11は、開口側12が上方にくるように配置した。
これより、本発明によれば、製缶後の缶内面検査による誤排出がなく、生産性の向上が可能な缶ボディ用アルミニウム合金板を得ることができることが分かる。
本例は、後述するように、実施例1のワークロールの研磨条件を変更し、表3に示す缶ボディ用アルミニウム合金板(試料C1及び試料C2)を作製した例である。
また、試料C2は、ワークロールの研磨条件が#180の条件で作製した例である。その他は実施例1と同様に行った。
また、比較例としての試料C2は、RSmが本発明の上限を上回り、0°方向、90°方向の正反射率が高く不合格であった。
Claims (1)
- 成形後に缶内面検査を行う缶ボディに用いられる缶ボディ用アルミニウム合金板であって、
Mn:0.8〜1.3%(質量%、以下同じ)、
Mg:0.9〜1.3%、
Cu:0.15〜0.25%、
Si:0.15〜0.40%、
Fe:0.25〜0.50%、
Zn:0.25%以下を含有し、
残部が不可避的不純物とアルミニウムからなり、
上記缶内面に成形される側の板面が、
板面の圧延方向に対して90°方向の粗さ曲線の平均長さRSmが50〜150μmであり、
板面の圧延方向に対して0°方向の正反射率が35〜50%であり、
板面の圧延方向に対して90°方向の正反射率が10〜25%であり、
板面の圧延方向に対して0°方向の正反射率と90°方向の正反射率の比率(0°方向の正反射率/90°方向の正反射率)が3.2以下であることを特徴とする缶ボディ用アルミニウム合金板。
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JP2007121715A Active JP5224717B2 (ja) | 2007-05-02 | 2007-05-02 | 缶ボディ用アルミニウム合金板 |
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