JP5077637B2 - 紫外線硬化型オーバープリントワニス組成物 - Google Patents
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前記したように、擬似エンボス加工をした箱の表面にはオーバープリント層が形成されている。擬似エンボス加工ではない通常のオーバープリント層に用いるワニス皮膜への滑り性の付与は、シリコーンやワックスを該ワニスに添加することによって行われる。
しかし擬似エンボス加工に用いるオーバープリント層用ワニスにシリコーンやワックスを添加すると、下刷り層の上でのオーバープリント層のハジキ性が悪くなる問題があり、通常は添加されない。従って擬似エンボス加工をした印刷物の表面は滑り性が悪い場合があった。
またオーバープリント層を形成するワニスを着色することにより、優れた意匠性が得られる紫外線硬化型オーバープリントワニス組成物を提供することをも課題とする。
紫外線硬化型下刷りインキによる下刷り層の形成も、同様に平版オフセット印刷、フレキソ印刷又はスクリーン印刷等を用いることができる。
本発明の紫外線硬化型ワニスによるオーバープリント層の形成には、ロールコーター、チャンバーコーター、フレキソコーター等を用いることができる。
また着色されたワニス組成物を用いることにより、優れた意匠性を得ることができる。
本発明の紫外線硬化型オーバープリントワニス組成物は、紫外線硬化型インキで印刷された絵柄や文字の上に、紫外線硬化型下刷りワニスにより下刷り層を形成し、さらにその上に紫外線硬化型ワニスによるオーバープリント層をコーティングすることにより、前記の下刷り層と重なる部分のオーバープリント層がハジキ現象によって凹凸模様を形成し、重ならない部分が光沢部分となる印刷加工方法に用いられる。
下刷りワニスは必ずしも印刷された絵柄の上に形成される必要は無く、紙、プラスチックフィルム、金属箔等の基材に直接下刷り層を印刷等によって部分的若しくは全面に形成し、その上にオーバープリント層を形成することによって擬似エンボス加工をすることもできる。
オーバープリント層のワニスへのシリコーンの添加は、下刷り層上でのオーバープリント層のハジキ性に影響を与えるため、その添加量はハジキ性と滑り性の両方を考慮して決定することが好ましい。添加量が多いと滑り性は向上するが、ハジキ性は低下する。
シリコーンは0.01〜0.15質量%の範囲内で添加することが好ましく、下刷り層上での安定したハジキ性を考慮すると、0.01〜0.12質量%の範囲内で添加する方がより好ましい。
パラフィンワックスは0.1〜2質量%の範囲内で添加することが望ましいが、下刷り層の上のオーバープリント層のハジキ部分と、下刷り層と重ならないオーバープリント層の光沢部分の差をより持たせるためには、0.1〜1質量%の範囲内で添加する方がより好ましい。
水素引き抜き型光重合開始剤として、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、o−メチルベンゾイルベンゾエート及びベンジル等が挙げられるが、残留臭気、価格及び安全性などを考慮すると、o−メチルベンゾイルベンゾエートが優れている。
また、増感剤としては、ジエタノールアミン、4,4−エチルアミノベンゾフェノン、P-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、アミン変性ポリエステルアクリレートオリゴマー、アミン変性エポキシアクリレートオリゴマー、アミン変性アクリレートモノマーなどが挙げられる。
これらの中では、残留臭気、価格、安全性、紫外線硬化型ワニス自体の着色及びその硬化皮膜の着色などを考慮すると、アミン変性ポリエステルアクリレートオリゴマーやアミン変性アクリレートモノマーが優れている。
また増感剤としてアミン変性(ポリエステル)アクリレートオリゴマー及び又はアミン変性アクリレートモノマーはその合計量が、ワニス全量の0.1〜80質量%の範囲内で添加することが好ましい。
紫外線硬化型オーバープリントワニスをコーティングする際の適正な粘度及び流動性を考慮した場合には、前記の増感剤はワニスの全量中に0.1〜70質量%の範囲内で添加することがより好ましい。
また同じくモノマーとして、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、ビスフェノールA・EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF・EO変性ジアクリレート、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレートなどが挙げられる。尚、EOはエチレンオキサイドを示す。
アミン変性(ポリエステル)アクリレートオリゴマー及び又はアミン変性アクリレートモノマーはその合計量が、ワニス全量の0.1〜80質量%の範囲内で添加することが好ましい。紫外線硬化型ワニスをコーティングする際の適正な粘度・流動性を考慮した場合には、0.1〜70質量%の範囲内で添加することがより好ましい。
同じくモノマーとして、パラクミルフェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールPO変性アクリレート、ポリエチレングリコール300ジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレートなどが挙げられる。尚、POはプロピレンオキサイドを示す。
ポリエチレングリコール400ジアクリレートは、紫外線硬化型ワニスに0.1〜70質量%の範囲内で添加することが好ましいが、該ワニスをコーティングする際の適正な粘度・流動性を考慮した場合には、0.1〜50質量%の範囲内で添加することがより好ましい。
下刷りワニスやオーバープリントワニス組成物を着色する場合、着色顔料として、溶性アゾ、不溶性アゾ、フタロシアニン、カーボンブラック、酸化チタン、パール顔料等を使用することができる。
着色顔料の配合量は、印刷層の画像が適度に透ける程度になるような添加量が好ましい。
<印刷層及び下刷り層を形成した基材の作製>
(1)基材として板紙(UFコート紙270g/m2、王子製紙株式会社製)を用いた。
(2)この基材に、紫外線硬化型オフセットインキである「ダイキュアセプターDTプロセス藍N」(大日本インキ化学工業株式会社製)を展色する。これは印刷層に相当する。
展色にはJIS K5701−1の附属書3(簡易展色法)に記載の展色装置を用いた。展色用ゴムロールとして、2分割ローラーを用いた。紫外線硬化型インキの量は、基材上で1〜2g/m2となるように、インキ0.150mlをゴムローラーに付けて展色した。
(3)紫外線硬化型オフセットインキを展色した基材に紫外線を照射して硬化させた後、紫外線硬化型下刷りワニスを同じく展色機で塗布した。紫外線硬化型下刷りワニスはオフセット印刷用である「ダイキュアセプターDT OPニスEM」(大日本インキ化学工業株式会社製)を用いた。紫外線硬化型下刷りワニスの塗布量は、展色物上で1〜2g/m2となるように、0.150mlをゴムローラーに付けて展色した。
(4)次に紫外線を照射して硬化させ、印刷層および下刷り層が形成された積層体である基材A−1を得た。
(5)以上の(1)〜(4)と同手順であって、紫外線硬化型オフセットインキに換えて紫外線硬化型フレキソインキ(大日本インキ化学工業株式会社製「ダイキュアFXプロセス藍」)を使用し、紫外線硬化型下刷りワニスとしてフレキソ印刷用の大日本インキ化学工業株式会社製「ダイキュアFXOPニスEM2」を用いた積層体を作製した。これを基材A−2とする。
前記の手順により作製した基材A−1に、表1に示す配合で作製した紫外線硬化型オーバープリントワニス10種類を塗布して、紫外線を照射して硬化させ、オーバープリント層を形成した積層体を作製した。
また同様に、基材A−2に、表2に示す配合で作製した紫外線硬化型オーバープリントワニス9種類を塗布し、紫外線を照射して硬化させた。
表1の実験例1〜9のワニスと、表2の実験例10〜18のワニスは同一配合である。実験例9−2は着色剤としてパール顔料を添加している。
そして前記したJIS K5701−1の附属書3(簡易展色法)に記載の展色装置を用いて塗布量が展色物上で4〜6g/m2となるように、紫外線硬化型ワニス0.5mlをゴムローラーに付けてそれぞれ基材に展色し、紫外線を照射して硬化させた。
以上の手順で得られた積層体を用いて下記の評価を行った。その評価結果を同じく表1及び表2に示す。
用いた原料を以下に記す。
アミン変性ポリエステルアクリレートオリゴマー・・・ダイセルサイテック株式会社製EBECRYL3703。
ポリエチレングリコール400ジアクリレート・・・第一工業製薬株式会社製ニューフロンティアPE−400。
アクリレートオリゴマーA・・・ダイセルサイテック株式会社製EBECRYL600。
アクリレートモノマーA・・・東亜合成株式会社製M−350。
アクリレートモノマーB・・・ダイセルサイテック株式会社製TPGDA。
o−メチルベンゾイルベンゾエート・・・ダイセルサイテック株式会社製OBM−100。
パラフィンワックス・・・ハネウェル社製アキュミスト1204。
シリコーン・・・共栄社化学株式会社製ポリフローNo.75。
光重合開始剤A・・・チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製イルガキュア184。
光重合開始剤B・・・チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製イルガキュア651。
パール顔料・・・メルク株式会社製イリオジン221。
ハジキ性の評価は、オーバープリントワニスの液滴の長径が30〜1000μmのものがほぼ全部のものを○とし、ハジキが不十分で液滴が流れてつながり、凹凸模様が明瞭でないものを×とした。
<滑り性>
基材を滑り角度試験機HEIDON−10型(新東科学株式会社製)に取り付け、滑り性を比較した。評価基準は、滑り性が良好(よく滑る)ものを○、滑り性がやや劣るものを△、滑り性が不十分であるものを×とした。
<臭気>
基材を小さく刻んだものをガラス瓶につめ、1時間放置した後、瓶を開けて臭覚による官能試験で臭気を評価した。評価基準は、臭気が少なく問題の無いものを○、臭気がわずかに感じられるものを△、臭気があり、問題があると思われるものを×とした。
<意匠性>
意匠性の評価は、ハジキ性と下刷り層に着色した部分のバランスが特に優れるものを◎とし、優れるものを○、不良のものを×とした。
基材を、凹凸部を有し、はめ合わせることができる一組の金型の間に挟み、折り曲げて筋を入れる。展色物の凹凸の型がついたところの角をルーペにて観察して、UVクリヤー硬化皮膜の割れの有無を比較した。
評価基準は、割れやクラックがほとんど無いものを○、割れがわずかに見られるものを△、割れがかなり観察され、問題があると思われるものを×とした。
用いた金型は幅2mm、深さ2mm、長さ100mmの溝が彫られた直方体のブロック(雌型)と、その溝にはまる幅1mm、深さ1mm、長さ100mmの凸部を有する同じく直方体のブロック(雄型)を組み合わせて用いた。雌型の上に基材を置き、上から雄型を押し当てて、基材に凹凸の筋を形成する。
実験例1〜4は、良好な滑り性を得るために、シリコーンとパラフィンワックスとの適正なバランスが重要であることを示す。
実験例6、7は、光重合開始剤としてo−メチルベンゾイルベンゾエートの使用は臭気低減のために好ましいことを示す。
実験例8、9を他の実験例と比較することで、引張り強度が強いオリゴマーであるアミン変性ポリエステルアクリレートオリゴマーと、引張り伸度が大きいオリゴマーであるポリエチレングリコール400ジアクリレートとの併用は皮膜の柔軟性を高めることがわかる。
実験例9−2は着色顔料を添加した実験例であるが、更に意匠性が向上することがわかる。
Claims (7)
- 紫外線硬化型インキを用いる印刷層の表面上に、部分的又は全面に紫外線硬化型下刷りワニスによる下刷り層が設けられ、前記印刷層及び下刷り層の上に紫外線硬化型ワニスによるオーバープリント層が設けられ、前記下刷り層の上のオーバープリント層がハジキ現象によって凹凸模様を形成する印刷物の作製に用いられるワニス組成物であって、シリコーンとしてジメチルポリシロキサン誘導体を0.01〜0.15質量%含有し、ワックスとしてパラフィンワックスを0.1〜2質量%含有する事を特徴とする紫外線硬化型オーバープリントワニス組成物。
- 光重合開始剤としてo−メチルベンゾイルベンゾエートを含有し、増感剤としてアミン化合物を含有する請求項1に記載の紫外線硬化型オーバープリントワニス組成物。
- ポリエステルアクリレート及びポリエチレングリコールジアクリレートを含有する請求項1に記載の紫外線硬化型オーバープリントワニス組成物。
- 紫外線硬化型インキを用いる印刷層の表面上に、部分的又は全面に紫外線硬化型下刷りワニスによる下刷り層が設けられ、前記印刷層及び下刷り層の上に紫外線硬化型ワニスによるオーバープリント層が設けられ、前記下刷り層の上のオーバープリント層がハジキ現象によって凹凸模様を形成する印刷物であって、そのオーバープリント層として請求項1〜3のいずれかに記載の紫外線硬化型オーバープリントワニス組成物を用いた印刷物。
- 前記の印刷層及び又は下刷り層の印刷が平版オフセット印刷方式によるものである請求項4に記載の印刷物。
- 前記の印刷層及び又は下刷り層の印刷がフレキソ印刷方式によるものである請求項4に記載の印刷物。
- 前記のオーバープリント層が更に着色剤を加えたものである請求項1に記載の紫外線硬化型オーバープリントワニス組成物。
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