JP5074967B2 - 木造住宅 - Google Patents

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Description

本発明は、軸組工法を用いた木造住宅に係り、とくに耐震強度を高める技術に関する。
在来工法(軸組工法)の木造住宅は、種々の利点をもっており、また地震の横揺れにも比較的強いとされるが、直下型の地震には弱いという問題がある。伝統的な軸組工法で用いる筋交は木製であるため、直下型地震の発生時のように強い荷重が一気にかかると、良質の木材を用いている場合はともかくとして、使用木材の品質が悪いと損傷や倒壊の可能性があるからである。
このため、近時、引用文献1のように、軸組工法の木造住宅において金属製の筋交を用いることが提案されるようになった。外壁を構成する軸組の枠部(外周柱間)に金属製の筋交をたすきがけ(クロス)に配すれば、木製の筋交よりも格段に強度を高めることが出来るからである。
特開2005−213905
問題は、木造住宅の外壁部分に金属製の筋交を設けると、金属製である筋交に結露が生じ、これが繰り返されると、筋交と木材との固定点の木材部分が腐食することにある。
このような事情があるため、在来工法(軸組工法)では、強度を高めるという目的のためにも金属製の筋交は用いなかった。金属製の筋交は頑丈でも、その固定点の木材が結露によって腐ってしまえば、強度の保証は出来ないからである。むしろ、木製の筋交の方が結露による腐食を起こしにくいので、地震の横揺れに対しても縦揺れに対しても安定した強度保証が出来る。
しかしながら、結露さえ生じなければ、金属製の筋交は、耐震強度の点では優れている。
そこで、本発明の目的は、木造住宅における結露を防ぐことによって、軸組工法に金属製の耐震用の補強材を組み込むことを可能とする点にある。
前記目的を達成して、課題を解決するため、本発明に係る木造住宅は、木造住宅の床下および間仕切壁の内部に、温水管または電熱線を配設するとともに、温水管または電熱線を配した床下および間仕切壁の内部空間を砂によって満たす一方、木造住宅の外壁を構成する軸組の枠部に、該軸組の枠部に見合う大きさをもった枠材に筋交を設けてなる金属製の補強材を嵌合固定する(請求項1)。
請求項1は、床下と間仕切壁の内部に加熱手段(温水管または電熱線)を配して砂を充填し、砂に蓄えた熱を輻射熱のかたちで自然に発散させ室内を暖房する。おだやかに放出される輻射熱は室内の空気をゆっくりと均等にあたため、空気の対流を生じさせない。
結露が生ずる大きな原因は、ストーブ等の強制的な暖房設備による空気の対流である。空気の対流により、暖房による温かい空気と、窓や押し入れなどの冷たい空気が混じり合うと、室内の空気に含まれる水分が水滴となって結露する。しかし、空気の対流を抑えると、水分の結露は生じない。この結果として、外壁の構成物に金属製の補強材を使用しても当該補強材には結露が生じにくい構造となる。
床下の空間を砂で満たすのは、床下に溜まりやすい冷気をなくするためである。床下の冷気を排除することによって、間仕切壁の内部に設けた加熱手段による暖房効果を高めることができる。
また、床下の冷気を排除することによって、木造住宅の基礎まわりの結露を防止し、いわゆる基礎の根腐れを防止して耐震性を高める。
請求項2は、筋交に金属製のコイルを配するものである。筋交に金属製のコイルを設けると、地震発生時に金属製の補強材が振動を吸収緩和するため、駆体全体の揺れを低減させ、建物の損壊や倒壊を最大限に防止する。
本発明に係る木造住宅によれば、結露を防ぎつつ、軸組工法に金属製の耐震用の補強材を組み込むことが可能となる。
図1は、本発明に係る木造住宅の一実施形態を示すものである。
1は、コンクリート製の基礎、2は、一階の床(根太)である。一階の床2の下の空間(床下空間)には、砂3を充填し、床下空間の隙間を埋める。4は、地表面(地面)、5は、床下に配した温水管(電熱線でもよい)である。温水管5は、砂3によって上下左右が端部まで完全に被覆された状態(隙間なく被覆された状態)とすることが望ましい。符号Pは、温水管5の設置面より下方に打ち込んだ伝熱管である。伝熱管Pは、地中の暖かい空気(いわゆる地熱)を上方に伝えて、砂3を充填した床下空間の温度を低下させない機能を果たす。
砂3は、床下空間に満遍なく均等に配して、隙間の量ができるだけ少なくなるように充填する。なお、建築工事であるから、物理的に完全に床下空間をなくするよう砂3を充填することは困難であるが、可能な限り、隙間が消えるように砂3を充填しておくことが望ましい。隙間を埋めるため砂3の充填後に転圧を行うことが望ましい。
一方、6は、軸組の柱、7は、軸組の間柱、8は、窓用の開口、10は、間仕切壁である。本発明に係る木造住宅は、通常の方法で軸組するが、間仕切壁10には、その内部に熱源、例えば温水管11を配し、内部空間に砂12を充填して温水管11の全体を被覆すると同時に、間仕切壁10の内部空間の隙間を砂12によって埋め尽くす。
間仕切壁10の内部に設ける温水管11は、例えば図2に示すように、上端近傍と下端近傍で管を連結させた、所謂U字パターンの一本管路とし、間仕切壁10の上下および左右の全体に温水管11が放射する熱が均等に拡散するようにしておくことが望ましい。
また、ここで用いる砂12も、床下空間の砂3と同じで、物理的に完全に隙間を埋め尽くすように砂12を充填することは困難であるが、可能な限り、隙間が消えるように砂12を充填しておく。実際の現場では、間仕切壁10の上部に若干の隙間が生じるが、これは、断熱材の配置のためや、重力による引き締め作用に基づくものであり、施工上やむを得ない場合が少なくない。しかしながら、砂12の充填作業時には、少なくとも温水管11の上端部まで砂12が覆うように隙間を埋めることが望ましい。
14は、温水管5、11に温水を循環供給するためのボイラ装置である。ボイラ装置14は、家屋内に配しても良いが、この実施形態では屋外に配するように図示した。ボイラ装置14の温水や排熱を利用して敷地内(例えば駐車スペース等)の融雪を行う場合もあるからである。敷地内の融雪を行うための配管を符号Sで示した。温水管5、11の配設経路は問わない。例えば図1では、温水管11が、基礎1を縦方向や横方向に貫いて設けるように図示してあるが、基礎1を迂回して温水管11を配して良いことは勿論である。
20は、軸組の開口、例えば軸組の柱6と間柱7とで構成する枠部に嵌合し固定した金属製の補強材である。この補強材20は、全体形状が略方形で、軸組の枠部に見合う大きさをもった枠材21と、この枠材21に掛け渡した筋交23とを備える。
枠材21は、軸組の枠部に見合う形状と大きさに成形する。肉薄の金属板でも高い強度を保証できるよう、枠材21は、例えば図3に示すように、断面略L字状の所謂アングル材を用いることが好ましい。また強度保証とコストのバランスからいえば、枠材21は、防錆メッキを施した鉄板を使用することが望ましい。
筋交23は、防錆メッキを施した金属製の丸棒、角棒、内部中空の丸管、角管などを使用できる。鉄を使用することも可能であるが、柔軟性を勘案して、他の金属材を使用しても構わない。
筋交23を枠材21に固定するときは、筋交23の端部を例えば溶接によって強固に固定する。
補強材20を、軸組の枠部に嵌合し固定するときは、例えば図4に示すように、ボルト25を用いる。ボルト25は、それぞれの階において補強材20を固定する。この実施形態でいえば、枠材21の底面二カ所を一階の床2(例えば根太)に固定し、枠材21の左右両側面の二カ所を間柱7に固定し、枠材21の上面二カ所を一階と二階を仕切る梁材26(桁材)に固定する。
二階部分の補強材20も、一階部分の補強材20と無関係に、枠材21の底面二カ所を梁材26に固定し、枠材21の左右両側面の二カ所を間柱7に固定し、枠材21の上面二カ所を最上階(例えば二階)の梁材27に固定しても良い。しかしながら、好ましくは、図4に示すように、二階部分の補強材20(U)と一階部分の補強材20(D)とを同一のボルト25(C)によって連結固定し、両者の結合を一体化させる。このようにすれば、補強材20は、それぞれを独立させて固定した場合と異なり、一階から最上階(この実施形態では二階)までボルト25(C)を介して一体の連結構造となり、地震発生時の横揺れや縦揺れに対して共同して働くことが可能となり、補強材20がバラバラに独立して動いた場合に生じやすい外壁の損傷や家屋の倒壊から構造物を護る可能性を高めることができる。
従って、かかる木造住宅によれば、一階と二階の外壁部分に配した金属製の補強材20が一体となって連結されるため、耐震強度を確実に向上させることが出来る。
軸組の枠部に金属製の補強材20を用いるため、本発明に係る木造住宅は結露が発生しにくいよう、床下の空間を砂3で満たし、温水管5を配して床下の冷気を排除するとともに、間仕切壁の内部に砂12を充填して温水管11によって暖め、いわゆる輻射熱によって室内空気をおだやかに暖めることで空気の対流を防ぎ、結露の発生を防止して補強材20と軸組材(柱6、間柱7等)との間に水(結露)が生じないようにした。これにより、金属製の補強材20を使用しても、結露に起因する木造住宅の劣化を防ぐことが可能となる。
また、木造住宅の耐震強度で最も深刻なのは、床下の冷気と室内暖房との関係で生じる結露に起因した床下の柱材の根腐れであるが、本発明に係る木造住宅は床下空間を砂3によって満たし、温水管5によってゆるやかに暖めるため、床下に結露が生じず、耐震強度を考える上で最も大切な基礎(土台)まわりの腐食を防止できる。基礎まわりの腐食を防止した上で、外壁に金属製の補強材20を使用し、補強材20を上下一体に連結固定させるので、従来の木造住宅に較べて格段に耐震性能を高めることが出来る。また伝熱管Pを配していれば、地熱を利用して冬期でも床下空間の温度を低下させずに維持することが出来る。
なお、本発明に係る木造住宅は前記実施形態に限定されない。例えば、基礎まわりの構造強度を高めるため、木製の根太を用いず、一階の基礎と床部分は基礎から床面までをコンクリートによって一体成形してもよい。この場合は、例えば、基礎のコンクリートを打設した後、砂3を充填し、必要な配管(温水管5、11の配管等)を施した後、一階の床面を構成するコンクリートを打設して木材を使用せずにコンクリートによって一階床面を作る。
一階の床面をコンクリート成形すれば、床下に木材が存在しない構造とできるので、柱材の下端部に生じやすい腐食の問題は完全に解消できる。その場合でも床下空間に砂3を充填することによって、床下のコンクリート材の劣化や腐食を確実に防止できる効果がある。
木造住宅には通常小屋裏(傾斜屋根の裏側空間)があるが、本発明を実施するときには小屋裏は設けないことが望ましい。つまり傾斜屋根を作らない木造住宅(例えば所謂無落雪住宅)とする方がよい。小屋裏の冷気による室内への温度影響を排除するためである。
床下や間仕切壁10に設ける温水管5、11は、管路を一本管の連続構造とする必要はない。複数本の管路構成としても作用は同じである。また、温水管5、11に代えて電熱線を用いて床下や間仕切壁10の内部を加温しても良い。温水管5、11と電熱線の両方を配設しておき、加熱手段をいずれか一方に切り替える構成としても良い。
軸組に嵌め込む補強材20の枠材は、L字状とする必要はない。平板であっても板厚が十分にあれば耐震強度を保証できるからである。
筋交23には、金属製のコイルを配しても良い。クロスさせた二本の筋交いの、例えば上下左右の四箇所に金属製のコイルを配しておけば、地震時の縦揺れも横揺れも筋交23が柔軟性をもって振動を吸収緩和するため、外壁への振動ダメージを確実に軽減することが可能となるからである。
実施形態に係る木造住宅の構成を例示する図である。 実施形態に係る間仕切壁内部の温水管の配設状態を示す図である。 実施形態に係る補強材を例示する斜視図である。 実施形態に係る補強材の固定状態を示す図である。
符号の説明
1 基礎
2 一階の床
3、12 砂
5、11 温水管
4 地表面(地面)
6 柱
7 間柱
8 窓用の開口
10 間仕切壁
14 ボイラ装置
20 補強材
21 枠材
23 筋交
25 ボルト
26、27 梁材
P 伝熱管
S 排熱利用の配管

Claims (2)

  1. 木造住宅の床下および間仕切壁の内部に、温水管または電熱線を配設するとともに、
    床下および間仕切壁の内部空間を砂によって満たす一方、
    木造住宅の外壁を構成する軸組の枠部に、
    該軸組の枠部に見合う大きさをもった枠材に筋交を設けてなる金属製の補強材を嵌合固定することを特徴とする木造住宅。
  2. 金属製の補強材は、筋交に金属製のコイルを備えることを特徴とする請求項1記載の木造住宅。
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