JP5074155B2 - 盛土崩落防止工法 - Google Patents
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Description
この軽量法枠工法とは、コンクリート二次製品、木材、廃プラスチックのリサイクル品等からなる梁体を、盛土法面上に格子枠状に組み上げることにより、盛土法面を小ブロックに分け、降雨による集中流下水の発生を防いで盛土表面の浸食防止を図るものである。
面的な浸食を防ぐことにより、雨裂浸食の発生、およびその拡大による盛土法面の不安定化を防ぎ、法面の安定と保護を図る梁体のなかには、排水構造を有するものも知られている。
また、盛土法面は平らな箇所だけでなくカーブ箇所もあり、直線的な規格品では細やかな対応が困難であることも、現在その施工例が減っている大きな要因のひとつになっている。
このような将来の老朽化を見越して表層の崩壊や抜け落ちを防止するには、盛土の深層まで到達する長さのロックボルトやグラウンドアンカーを併用する必要があるが、この崩落防止工は施工コストが極めて高くつくといった問題がある。
この工法は、発芽や生育の速い牧草の種子と副資材を用水中に分散させ、ポンプを用いて盛土法面の表面に散布することで、急速に法面の緑化を図り、法面を被覆した植物体によって雨滴による法面の浸食を防ぎ、併せて、植物根系の土壌緊縛力を活用して表流水による法面の浸食を防ぐ工法である。
軽量法枠工の既設法面への適用を想定した場合、植生の根茎を除去しつつ施工しなければならず、施工に多大の労力と時間を要するため、既設法面へ適用することが困難である。
さらに本発明の他の目的は、力学的な評価が可能な盛土崩落防止工法を提供することにある
さらに本発明の他の目的は、部分的な変状を簡易な計測により察知し、追加補強可能な盛土崩落防止工法を提供することにある。
さらに本発明の他の目的は、施工の簡略化を図って工費と工期の削減が可能な盛土崩落防止工法を提供することにある。
本願の第2発明は、前記第1発明において、複数のアンカーの基部の間、または複数の受圧板の間を力伝達部材で連結して、既設盛土の法面表層の変状土塊を複数のアンカーと複数の受圧板とにより分散支持することを特徴とする、盛土崩落防止工法を提供する。
本願の第3発明は、前記第1発明において、前記アンカーが支線用アンカーであることを特徴とする、盛土崩落防止工法を提供する。
(1)従来工法では実施が困難であった既設盛土の表層崩壊を簡易な手法によって低コストで防止することができる。
(2)簡易なアンカーと受圧板を使用するだけで、アンカーとアンカーの間に位置する盛土法面の崩落や抜け落ちを抑制できるから、従来工法と比較して施工の簡略化が図れて、工費と工期の大幅削減が可能となる。
(3)本発明は既設盛土の表層を硬質部材で覆い浸食防止や表層崩落を防止するものではなく、受圧板とアンカーの定着部との間で土砂を待ち受けて支持(拘束)するものである。
したがって、土砂の拘束範囲が広くなるだけでなく、既設盛土の表層の弛み防止効果に対する信頼性を長期間に亘って保証することができる。
(4)複数のアンカー間や複数の受圧板の間を相互に連結することにより、法面の部分的な押し出し変状による変形力を、相互に連結関係にある複数のアンカーと受圧板とにより分散して効果的に支持することができる。
そのため、ロックボルト、アンカー工のような大がかりで高価な方法を用いなくとも、簡易なアンカーで以って盛土法面の抜け落ちを抑制できると同時に、盛土法面全体としての安定性を確保できる。
(5)アンカー耐力と受圧板の支圧面積を把握できるので、既設盛土の崩落防止性能を力学的に評価することが可能となる。
(6)アンカーの翼体を土中で鶴翼して直接定着させることができるため、施工が簡便であり、アンカーの締め付けを直ちに行なうことができる。
(7)トルクレンチを用いて締め付け受圧板と地山のなじみを図るため、従来工法では対応が困難であった、軟質盛土の法面沈下による変形に追随させることができる。
(8)トルクレンチを用いて締め付けできるため、盛土法面の変状を容易に確認することができるとともに、変状箇所が確認された場合は最適な対策を選択して迅速に対処することができる。
以下、図1〜8を参照しながら本発明に係る実施の形態1について説明する。
アンカーの打設位置を定め、既設盛土Gに生えている既存植生を刈り払う。
従来工法ではボーリングしたアンカー孔内にアンカーテンドンを挿入して定着したグラウンドアンカーやロックボルトを反力源としていた。
これらの工法は、グラウト材が固化しないと締め付けができず、施工手順が多く、施工時間を短縮することは困難であった。
これに対して本発明では、簡易な鶴翼式のアンカー10を使用する。
鶴翼式のアンカー10を使用するのは、設置直後に支圧版を締め付けできて工期の短縮を図ることと、アンカー機能だけでなく、引抜き方向と直交する方向に対する土砂との接触面積を増して、変形しようとする土砂の待ち受け支持機能を付与するためである。
小型で鶴翼式のアンカー10を使用するのは、アンカー10とその設置機材の現場への搬入性と設置作業性を改善するためである。
ミニテーアンカーは二枚の翼体11に分岐して接続する操作用棒体と、定着用の棒体の2本の鋼棒を有し、操作用棒体を牽引操作することで閉じられていた二枚の翼体11が外方に拡翼する構造になっている。
貫入操作と拡翼操作はアンカー10に差し込んだガイドパイプ16をロッドハンマで叩くだけで、穴掘りの手間をかけずに貫入・拡翼できる。
また定着用の棒体の基端はリング12が形成されている(図4参照)。
一般にミニテアンカーの使途は園芸用ハウス等の固定に限られていたが、本発明のように土木分野で特に待ち受け型補強資材として用いられた例は皆無である。
尚、市販のミニティーアンカーは全長が1mと1.5mの2タイプだけであるが、鋼棒の長さを変えてアンカー10の全長を変更することは簡単である。
またアンカー10は、非拡翼式の定着部を有する公知のアンカーを適用する場合もある。
本発明で使用するアンカー10は深層の滑りに対して対応することを目的としていない。
多数の盛土法面の崩落現場を検証したところ、老朽化した法面の崩落の大半は1m以内の浅い範囲で、しかも局所的に生じていることが判明した。
そこで、本発明では過去の崩落深度に対処できる長さの短いアンカー10を使用することした。
具体的には、公知のSH型貫入試験機を使用して予め把握した既設盛土Gの潜在すべり面を考慮して、アンカー10の全長を適宜選択することが望ましい。
その後に、鶴翼操作用棒体を操作する等してアンカー10の先端部の閉じられていた翼体11を側方へ拡翼して地中に定着する。
翼体11が拡翼することでアンカー10の引抜き抵抗が大きくなる。
アンカー10の先端部の拡翼後、アンカー基部に受圧板20を設置し、受圧板20をアンカー10の基端側と固定する。
受圧板20はコンクリート、硬質樹脂等のプレキャスト製品を使用できる。
受圧板20の平面形状や大きさについて特に制約はないが、アンカー10の翼体11による土砂の受圧面積等を考慮して適宜選択するものとする。
すなわち、アンカー10の基端のリング12にフックボルト等の延長棒13を接続して延長し、受圧板20の貫通孔21に挿通させて受圧板20の表面側に突出した延長棒13のボルト部にナット14を取り付けてアンカー10の基端に受圧板20を接続する。
さらに、受圧板20が地山になじむまでナット14を締め付ける。ナット14の締結にあたっては、トルクレンチ等を使用し一定荷重に締め付けておくとよい。
部分的な崩落による押し出しを、周辺のアンカー10に伝達して分散を図るために、力伝達材30により複数のアンカー10の基部間を相互に連結する。
複数のアンカー10の基部間の相互の連結は、例えばワイヤーロープや鋼材、アラミド等の高強度繊維製ロープを用いて行うことができる。
これらの力伝達材30は、帯状であってもよい。
本例では図4に示すように、延長棒13のボルト部に係留用のリング付きナット15を取り付け、該リング付きナット15を利用して複数のアンカー10の基部間を複数の力伝達材30で連結する場合について説明するが、力伝達材30の連結手段は公知の各種連結手段を適用できる。
また、力伝達材30を使用したアンカー10または支圧板20間の連結方向は、縦方向、または横方向の連結のみであってもよい。
必要に応じて、既設盛土Gの上面に土砂を吹き付けて、或いは植生マットを敷設して植生する。
植生工は上記した形態に限定されず、各種の公知の植生工法が適用可能である。
従来の「剛構造」の設計思想は、最も危険な箇所を代表値として捉え、その値を基準として法面全面を力により押さえ込もうとするものである。
そのため「剛構造」の強度設計が過剰となり、しかも耐用年数を越えると一挙に「剛構造」の力が解放されて大規模な災害となる。耐用年数到達前に「剛構造」を取り壊す場合も同様である。
本発明は従来までの「剛構造」の設計思想を改め、力を受け流す「柔構造」の設計思想に基づくものである。
そして、その崩落を抑制した局所のみにアンカー10の追加施工等の別途の対策工を施して、全体として盛土法面の安定効果を自足させようとするものである。
したがって、既設盛土Gの表層の弛みによる変状を待ち受けて支持(拘束)することが可能となる。
しかも既設盛土Gの表層の弛みは、鶴翼式のアンカー10に反力を得て受圧板20の単独で支持し、または力伝達材30を介して周囲のアンカー10と受圧板20に分散させて支持することが可能となる。
そのため、荷重が増加する場合は適宜対策を取ることが可能となる。
一般に盛土法面は安定勾配を確保しもり立てたものであるから、法面の不安定化は部分的な抜け落ちによる限定的なものとなる場合が多い。
本発明に係る工法は、大がかりな仮設を要せず簡便な施行が可能であるから、必要最低限のアンカー10を既設盛土Gの法面に配置し、その後、定期点検を行いつつ変状箇所を確認し、アンカー10を追加打設することにより盛土法面の安定を図ることが可能となる。
先の実施の形態1では、力伝達部材30として各種のロープや帯材を用いる場合について説明したが、図9に示すように力伝達部材30は盛土の表面に敷設した網材やで構成してもよい。
網製の力伝達部材30としては、盛土法面に馴染み易い菱形金網や厚層金網等の金網や、樹脂やアラミド繊維等の各種素材で編成したロープ製ネットを使用できる。
本例の場合、受圧板20の設置工程の前に網製の力伝達部材30を既設盛土Gの全面に展開し、アンカーピン等を打設して固定する。
本例は新設盛土の崩落防止に効果的である。
既述した実施の形態1では図5に示すように全長が等しい長さのアンカー10を設置した場合について示したが、全長の異なるアンカー10の組み合わせとしてもよい。
同じ長さのアンカーを打設すると、表層土塊の拘束域が一定の厚さとなるため、底面を滑り面とする滑動が発生しやすいものとなる。
このため、アンカー長を変化させることにより、滑動面に凹凸を形成して滑動し難いものとすることができるといった利点がある。
また本発明は、アンカー10の基部を拘束することにより、盛土地山の部分的な変状を全体に分散させて受け持とうというものであるから、長さの異なるアンカー10を併用することにより、その安全性がより高くなる。
図10に示すように、盛土法面に対するアンカー10の打設角度を水平に打設することが望ましい。
アンカー10を水平にすると、法面に作業足場を設けずにアンカー10の貫入作業を行なうことができる。
さらにアンカー10の打ち込みに使用したガイドパイプの挿入跡の孔を排水パイプの挿入に有効活用することができる。
図5に示すようにアンカー10を盛土法面に対して直角に打設する場合は、アンカー10の打ち込みに使用したガイドパイプの挿入跡に樹木を導入し、ガイドパイプの挿入跡の孔に樹木の根系を誘導するようにしてもよい。
また、地山背面の水分を植物ポンプにより排水させてもよい。
また、ガイドパイプの挿入跡に黒ガス管等を挿入して盛土のせん断力を増すようにしてもよい。
また、ガイドパイプの挿入跡に膨張性の固化材を流し込み、地中で膨張固化させて定着力の増強、盛土地山内部の強度を改善するようにしてもよい。
本発明は、盛土の法面だけでなく、盛土法面平坦部、下面平坦部までアンカー10を打設し基部を連結することにより、法肩部の表層崩落、法尻部の変形などに対する補強効果を高めることもできる。
これとは逆に軟弱な地山の上に盛土を行った場合、法尻部の変形により崩壊へと発展してゆく。
法面上部、下部の平坦部までアンカー10を打設し基部を連結するならば、例えくさび形崩落が発生したとしても、アンカー10相互に力の分散を図ることができるため、盛土の崩落を抑制、あるいは、法面の変状が発生する程度にとどめることができ、避難時間の確保、あるいは部分的な補強を行うことによる対策が可能となる。
さらに本発明は公知のアースアンカー工やロックボルト工と併用することも可能である。
本実施の形態にあっては、本発明の工法で以って既述したように表層の緩み土層の崩落防止を図りつつ、アースアンカーやロックボルトで以って深部からの崩壊を抑制することが可能となることは勿論であるが、これにくわえてアースアンカーやロックボルトにも表層の緩み土層の崩落防止効果を期待できるから、アンカー10の設置間隔を広げて施工コストの削減が可能となる。
また本発明は盛土に限らす、既存の林地等の緩みの生じている表土層を、本工法で崩落防止を図ることも可能である。
盛土材 :砂質土盛土
盛土形状 :3段盛土 延長・約100m
試験施工箇所:1段、2段法面全面補強箇所 延長各10m
3段目(最下段部)補強箇所 延長40m
アンカー打設:打設間隔 1.5m間隔 法面1段に付き3本
打設総数 153本
打設深度 1m及び1.5m(呼び長さ)
アンカー仕様:標準引抜力 9.8kN(1t)
最大引き抜き力 25kN(2t)
湿潤線は、3段法面の最上段は95cm、中段63cm、最下段27cmであり、盛土法面下段ほど含水量が高く崩落しやすい状態であった。
SH型貫入試験の結果、表層部1mまでの緩みは著しくN値は1〜6の範囲にあり、50cmまでのN値は1〜3と非常に小さいことが判明した(図11参照)。
これにより、最下段の盛土法面に対し本発明の工法を採用した。
台風による豪雨の後、法面の状態を確認したところ、最下段法面の崩壊は抑止できたが、二段目法面に崩落が発生した。
無処理の2段目盛土法面は崩壊したが、2段目盛土法面よりも湿潤線の高い最下段盛土法面の崩落を抑止できたことより、本工法の効果は確認できた。
施工3ヶ月後に、受圧板の締め付けを確認した。
全153箇所中、締め付け力が増加した箇所が11箇所、締め付け力が減少した箇所81箇所、解放された箇所が61箇所であった。
受圧版に対する締め付け力を継続的に計測することにより、現場の状況に即応する情報化施工を行うことができる。
10・・・・・アンカー
11・・・・・翼体
20・・・・・受圧板
30・・・・・力伝達材
Claims (3)
- 既設盛土に設置した複数のアンカーと、各アンカーの基端に接続した複数の受圧板を使用して既設盛土の法面表層の崩落を防止する工法であって、
前記アンカーが先端に拡翼可能な翼体を具備した鶴翼式のアンカーであり、
既設盛土に打設して貫入した前記アンカーの翼体を拡翼して地中に直接定着する工程と、
前記アンカーの基端に設置した受圧板を締め付けて地山となじませる工程とにより構成し、
前記アンカーから反力を得た受圧板により既設盛土の法面表層の変状土塊を待ち受けて支持することを特徴とする、
盛土崩落防止工法。 - 請求項1において、複数のアンカーの基部の間、または複数の受圧板の間を力伝達部材で連結して、既設盛土の法面表層の変状土塊を複数のアンカーと複数の受圧板とにより分散支持することを特徴とする、盛土崩落防止工法。
- 請求項1において、前記アンカーが支線用アンカーであることを特徴とする、盛土崩落防止工法。
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