JP4738230B2 - 斜面安定化工法用の張力計 - Google Patents
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Description
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、アンカー配列及びワイヤロープ連結を図1のようなアンカー三角形配列及び斜面上下方向アンカー間ワイヤロープ連結とした場合について、アンカー間を連結するワイヤロープを斜面安定化に有効に寄与するような適切な張力とする際に、ワイヤロープの張力を容易に計測可能な斜面安定化工法用の張力計を提供することを目的とする。
自然斜面に多数のアンカーを、一辺が斜面傾斜方向をなす三角形の頂点に位置するような三角形配列で設置するとともに、各アンカーに支圧板を取り付け、これを締着して地盤に対する支圧力を与え、かつ前記各アンカー間を、少なくとも斜面上下方向のアンカー間連結がなされるように、ワイヤロープで連結する斜面安定化工法を施工するに際して、前記ワイヤロープの張力を計測する斜面安定化工法用の張力計であって、
アンカー間に連結された前記ワイヤロープの下の斜面に置かれる平板状のベース部材と、前記ベース部材上に間隔をあけて配置された、上方に突出する片持ち縦型の2つのガイドロールと、前記ガイドロール間の中央において両ガイドロールの並び方向に対して直交する方向に出没可能な押し込み部材と、前記押し込み部材に作用する出没方向の荷重を検出することでワイヤロープの緊張力を自動的に検出する張力検出部とを備えた構造であり、前記平板状のベース部材をワイヤロープの下に差し込んで前記2つのガイドロールの同じ側の面にワイヤロープを添わせ、そのワイヤロープの中央部を前記押し込み部材で一定長さだけ押し込み、ワイヤロープからの反力として当該押し込み部材に作用する荷重に基づいて前記張力検出部で緊張力を測定するものであることを特徴とする。
ここで、各アンカー頭部間をワイヤロープで連結するとは、ワイヤロープをアンカーに直接係合させる場合に限らず、直接には支圧板に係合させることで、当該支圧板を介して連結する場合も含む。
また、斜面安定化工法は施工場所が自然斜面であり、通常は凹凸があり樹木もある斜面での作業となるので、測定作業が容易である必要があるが、本発明の張力計によれば、平板状のベース部材をワイヤロープの下に差し込むことで測定可能な状態となるので、作業性が良好である。
図示例のアンカー配列は正三角形配列である。また、図示例の支圧板3は、概ね三角形状の底板3aの中央部に円筒3bを垂直に固定し、底板3aの三方にリブ3cを固定した構造である。支圧板3の円筒3bをアンカー1の頭部に被せ、座金を置いてナット6をアンカー1の頭部のネジ部に螺合させ締め付けて、地盤に対する支圧力を与える。
最適の初期張力の値は、個々の施工現場、施工条件により種々なので、例えば以下に述べるような模型実験から得られた適切な初期張力値を、個別の施工現場、施工条件に対応するよう換算して、個別の施工現場、施工条件に最も適切な初期張力値を求めるとよい。
最適な初期張力値を求めるための基礎となる模型実験の一例について、以下に述べる。
(1)実験装置
図3、図4に示すように、地盤模型である土槽(実験装置)20は、下部土槽21と上部土槽22との上下2段に分かれた構成であり、下部土槽21は2m×0.5m×0.4mで、その上部に0.8m×0.5m×0.4mの上部土槽22が設置されており、この上部土槽22に土砂23を中詰めし、下部土槽21を徐々に持ち上げると、上部土槽22が移動する構造である。
下部土槽21の天端に斜面崩壊時のすべり面に相当する鋼板21aを固定しており、この鋼板21aの所定位置にアンカー1を垂直に固定(鋼板21aの表裏両側でアンカー下端のネジ部に螺合させたナットを締め付けて固定)している。前記鋼板21aは底なし箱形の上部土槽22に詰める土砂を受ける受け板となっている。下部土槽21は図2における不動層6に対応し、上部土槽22の内部土砂は同移動層5に対応する。なお上下土槽21、22同士が接する縁表面は、上部土槽22の移動時に摩擦の影響が小さくなるように、ベアリングを施している。
なお、土砂中詰め時の締め固めは、厚さ10cm投入して、所定の湿潤単位体積重量(含水比4〜5%)を目標にして行った。また、支圧板3は、アンカー下端のナットを締め付けることにより、沈下量1mmになるまで締め付けた。
上記の通りこの実験は、直線的なすべり面を想定しかつそのすべり面が固定された自重崩壊実験によって斜面安定効果を評価するものである。
この地盤模型(土槽20)は概ね実仕様の1/10模型である。すなわち、アンカー1間の距離(正三角形の一辺の長さ)は実際の2mに対して0.2mmである。また、アンカー1、支圧板3、ワイヤロープ2の各部材のサイズは、表1に示した部材仕様の通り、実際の各部材のサイズの1/10のものである。アンカーの外周に接着剤で砂を付着させて、実仕様のアンカーに擬した。
実験条件は次の4通りである。
(イ)無補強の場合(アンカーなし)
(ロ)ワイヤ連結なしの場合(アンカー+支圧板のみ)
(ハ)ワイヤ緩緊張連結(張力1N)の場合(アンカー+支圧板+ワイヤロープ)
(ニ)ワイヤ緊張連結(張力3N)の場合(アンカー+支圧板+ワイヤロープ)
(3)実験
土槽20の片側をチェーンブロックで次第に持ち上げながら、斜面勾配(土槽20の勾配)θが1°増す毎に上部土槽22の移動量を測定した。なお、実験では同時にアンカー及びワイヤロープのひずみを測定し、また、主な移動量における斜面表面の変状を観察したが、それらについては省略する。そして、上部土槽の移動量100mmに達した時点で実験を終了した。
(4)実験結果
実験経過としては、土槽20の片側をチェーンブロックで次第に持ち上げていくと、上部土槽22は斜面勾配θがある角度になると下方に移動し始める。実際の地盤における不動層に相当する下部土槽21の鋼板21aに下部を固定されたアンカー1は、その移動に対して抵抗(補強効果)しながら、図5に示すように曲がっていく。また、支圧板3は土塊(上部土槽22の土砂)を押さえる押さえ込み効果を奏する。そして、図5のように斜面移動によりアンカー1が変形する際には、ワイヤロープ2がアンカー1を引留める引き留め効果や、局所的なアンカーに作用する荷重を分散させる荷重分散効果等を奏することになる。これらの総合的な作用が上部土槽22の移動量に影響すると考えられる。
図6は実験結果を示すグラフであり、土槽持ち上げ角度(斜面勾配θ)と上部土槽移動量との関係を示す。
このグラフに示す通り、ワイヤの緊張力を1Nにした場合、アンカー間をワイヤロープで連結しない場合と比較して、移動量が10mm(斜面ひずみ3%)より大きくなるとワイヤロープによる抑制効果が明確に現れてくる。ただし、移動量35mmを超えてからは抑止効果が小さくなり、移動量60mm以上では支圧板だけの場合と同じ傾向になる。
一方、ワイヤロープの緊張力を3Nにした場合は、上部土槽の移動量が100mmに到るまで(試験終了時まで)支圧板だけの場合より高い抑止効果を維持することができる。
押し込み部材33をワイヤロープ2に対して押し込む押し込み力は、詳細は省略するが例えば、着脱可能なハンドル35を図7、図8で矢印のように回すことで押し込み部材33をワイヤロープ2側に前進駆動させる機構により、得ることができる。ハンドル35の回転を押し込み部材33の前進に変換する変換機構36は、歯車機構、テコ機構、油圧機構その他適宜の機構を採用することができる。
この張力計11は全体として概ね平たい外形をなし、かつ出っ張るハンドル35は取り外しことができる構造としたハンディタイプである。
すなわち、押し込み量から押し込み部材33に作用する荷重を検出することができ、この荷重からワイヤロープ2の張力を検出することができる。なお、押し込み量と張力との関係は、ワイヤロープ2の剛性により異なるので、使用するワイヤロープ2毎に両者の関係のデータを求めておく。また両者の関係は、2つのガイドロール31、32間の距離によっても当然異なるので、ガイドロール間距離が特定の場合のものとして、両者の関係のデータを求めておく。
また、施工場所が自然斜面であり、通常は凹凸があり樹木もある斜面での作業となるので、測定作業が容易である必要があるが、上記の張力計によれば、平板状のベース部材をワイヤロープ2の下に差し込むことで測定可能な状態となるので、作業性が良好である。
なお、上記張力計11を使用してワイヤロープ2の張力を測定する際に、所定の張力が得られていない場合は、ターンバックル7で再緊張を図ることができる。
また、ワイヤ張力が所定の緊張力より大きい場合は、その付近に斜面変状が発生している可能性があると判定することも可能である。
2 ワイヤロープ
3 支圧板
5 移動層
6 不動層
7 ターンバックル
8 ナット
20 土槽(地盤模型(実験装置))
21 下部土槽
21a (すべり面となる)鋼板
22 上部土槽
30 ベース部材
31、32 ガイドロール
33 押し込み部材
34 張力検出部
34a 表示画面
35 ハンドル
36 変換機構
37 ひずみゲージ
Claims (1)
- 自然斜面に多数のアンカーを、一辺が斜面傾斜方向をなす三角形の頂点に位置するような三角形配列で設置するとともに、各アンカーに支圧板を取り付け、これを締着して地盤に対する支圧力を与え、かつ前記各アンカー間を、少なくとも斜面上下方向のアンカー間連結がなされるように、ワイヤロープで連結する斜面安定化工法を施工するに際して、前記ワイヤロープの張力を計測する斜面安定化工法用の張力計であって、
アンカー間に連結された前記ワイヤロープの下の斜面に置かれる平板状のベース部材と、前記ベース部材上に間隔をあけて配置された、上方に突出する片持ち縦型の2つのガイドロールと、前記ガイドロール間の中央において両ガイドロールの並び方向に対して直交する方向に出没可能な押し込み部材と、前記押し込み部材に作用する出没方向の荷重を検出することでワイヤロープの緊張力を自動的に検出する張力検出部とを備えた構造であり、前記平板状のベース部材をワイヤロープの下に差し込んで前記2つのガイドロールの同じ側の面にワイヤロープを添わせ、そのワイヤロープの中央部を前記押し込み部材で一定長さだけ押し込み、ワイヤロープからの反力として当該押し込み部材に作用する荷重に基づいて前記張力検出部で緊張力を測定するものであることを特徴とする斜面安定化工法用の張力計。
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