JP3033678B2 - 法面安定化工法用の支圧金物および法面安定化工法 - Google Patents

法面安定化工法用の支圧金物および法面安定化工法

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JP3033678B2
JP3033678B2 JP7293548A JP29354895A JP3033678B2 JP 3033678 B2 JP3033678 B2 JP 3033678B2 JP 7293548 A JP7293548 A JP 7293548A JP 29354895 A JP29354895 A JP 29354895A JP 3033678 B2 JP3033678 B2 JP 3033678B2
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崇之 水原
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,地中に貫入され
てアンカー機能を果たす引張り部材の地上突出部に装着
され,前記引張り部材に与えた緊張力を法面に伝達して
法面の安定化を行う法面安定化工法用の支圧金物,およ
びこの法面安定化工法用の支圧金物を用いて行う法面安
定化工法に関する。
【0002】
【従来の技術】上記の引張り部材と支圧金物を用いて行
う従来の法面安定化工法の一例を図11に示す(特公昭
49ー9482号参照)。この安定化工法は,法面1の
地中に貫入し基礎岩盤等に定着させたアンカー体2にア
ンカーロッドやアンカーロープ等の引張り部材3を接続
し,この引張り部材3の地上突出部に支圧盤(支圧金物
に相当)4を装着し,引張り部材3の上端部に形成した
ねじ部に螺合させたナット6を締め付ける等して引張り
部材3に緊張力を与え,この緊張力を支圧盤4が法面に
伝達して法面の安定化を行う工法である。この工法は,
支圧盤4を法面の安定化区域に適宜の間隔をあけて配置
する施工法を採用することで,法面に自生する樹木を伐
採することなく当該法面の崩壊を防止することが可能と
なる,等の特長を有する(ただし,特公昭49−948
2号の発明自体は他の目的を持つ)。
【0003】従来の法面安定化工法における支圧盤4は
図示の通り,単なる平板状である。なお,平板状の支圧
盤を用いる法面安定化工法は,例えば特開平5−112
945号にも見られる。なお,従来工法では一般に,コ
ンクリート造りの支圧盤が用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで,コンクリー
ト造りの支圧盤であれば,上記従来の支圧盤4のように
平板状であっても,支圧盤に必要な強度を確保すること
は容易である。しかし,コンクリート製の支圧盤は必然
的に重量が大となり,傾斜面である施工現場で行う作業
は困難な作業となる。
【0005】また,この工法は前述の通り,法面に自生
する樹木を伐採することなく施工するために,支圧盤4
を法面の安定化区域に適宜の間隔をあけて配置するが,
その際,法面に施工された複数の支圧盤4相互間を図示
略のワイヤで緊張連結することも行われている。このよ
うにワイヤで支圧盤相互間を緊張連結すると,法面の安
定化区域全体として地盤強度の向上が図られることが知
られている。しかし,従来の支圧盤4では,ワイヤで支
圧盤相互間を緊張連結することが容易な構造にはなって
いない。
【0006】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で,鋼製の支圧金物を用いて軽量化を図り,傾斜面で行
う施工現場の作業を容易にするとともに,支圧金物相互
間をワイヤ等で緊張連結することを容易に行うことが可
能な法面安定化工法用の支圧金物,およびこの法面安定
化工法用の支圧金物を用いて法面安定化工法を提供する
ことを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明は,地中に貫入されてアンカー機能を果たす引張り部
材の地上突出部に装着され,前記引張り部材に与えた緊
張力を法面に伝達して法面の安定化を行う法面安定化工
法用の支圧金物であって,鋼製の接地板の中央部に前記
引張り部材を貫通させることができる孔を設けるととも
に鋼製の短管を立設固定し,前記接地板上面と短管外周
面との間に両者に垂直に当接し接合される鋼製の補強用
の脚板を設けたことを特徴とする。
【0008】請求項2は,請求項1の法面安定化工法用
の支圧金物における接地板に複数の貫通孔を設けたこと
を特徴とする。
【0009】請求項3は,請求項1の法面安定化工法用
の支圧金物における接地板と短管との当接部分の脚板に
切欠部を設けたことを特徴とする。
【0010】請求項4は,請求項1記載の支圧金物を用
いて行う法面安定化工法であって,ロックボルトを法面
の地中に貫入させてその先端部を基礎岩盤に定着させ,
該ロックボルトの地上突出部に前記支圧金物を嵌装し,
この支圧金物の短管の上端から突出したロックボルトに
座金を介してナットを螺合させ締め付けて当該ロックボ
ルトに緊張力を与え,この緊張力を地盤支持力として受
ける支圧金物により法面を安定化することを特徴とす
る。
【0011】請求項5は,請求項4記載の法面安定化工
法において,法面の安定化区域内に適宜の間隔をあけて
配置された複数の支圧金物のうちの隣接する2つ以上の
支圧金物相互間を,支圧金物の接地板と短管との当接部
分の脚板に設けた切欠部に通したワイヤで緊張連結する
ことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態を図1
〜図10の実施例を参照して説明する。図1において,
1は安定化工法を施工しようとする法面,10は本発明
の一実施例の法面安定化工法用の支圧金物である。この
支圧金物10は,地中に貫入されてアンカー機能を果た
す引張り部材であるロックボルト11の地上突出部に装
着され,前記ロックボルト11に与えた緊張力を法面1
に伝達して法面の安定化を行うものである。
【0013】前記支圧金物10は,図4,図5にも示す
ように,鋼製の接地板12の中央部に前記ロックボルト
11を貫通させることができる孔12aを設けるととも
に鋼製の例えば円形の短管13を溶接により立設固定
し,前記接地板12の上面と短管13の外周面との間に
両者12,13に垂直に当接し接合される鋼製の補強用
の脚板14を設けた構造である。図示例では短管13か
ら直角二方向の四方に伸びる4枚の脚板14を設けてい
る。この実施例の支圧金物10の接地板12は図示の通
り正方形である。さらに,接地板12と短管13との当
接部分の脚板14には,四半円状の切欠部14aを設け
ている。なお,支圧金物10は防錆のため亜鉛メッキを
施すとよい。
【0014】上記の支圧金物10を用いて法面1の安定
化工法を施工する場合,まず,ロックボルト11を図
1,図3に示すように,法面1の地中に貫入させて,そ
の先端部のビット11aを基礎岩盤15に定着させる。
なお,実施例のロックボルト11は,ロックボルト11
の貫入作業を容易にするために,例えば2メートル等の
長さのボルト片11bを,貫入させる深さに応じて必要
な本数だけカプラ11cで順次連結して用いている。こ
のロックボルト11の貫入は,図示略のドリルにこのロ
ックボルト11を装着し,作業者がドリルを手で操作し
て行う。そして,このロックボルト11は,図2に示す
ように法面1の安定化区域内に適宜の間隔をあけて,予
め埋め込んでおく。なお,その配置は樹木等を避けて行
うので,図示例のような格子状配置になるとは限らな
い。そして,各ロックボルト11の先端のビット11a
が掘削した穴1a内にグラウト材を充填する。
【0015】次いで,各ロックボルト11の地上突出部
に前述の支圧金物10を短管13において嵌装する。こ
の作業は斜面での作業なので,支圧金物10の重量が重
いと作業が困難であるが,この鋼製の支圧金物10はそ
れほど重量を大とせずに済むので,人手による作業が可
能であり,作業性は良好である。次いで,この短管13
の上端から突出したロックボルト11に角座金20およ
びねじ付き球面座金21を介してナット22を螺合させ
る。なお,23は施工完了後にナット22の部分を保護
するために被せるキャップであり,ねじ付き座金21の
外面のねじ部に螺着される。
【0016】次いで,ナット22を締め付けて座金20
を押し下げると,ロックボルト11に緊張力が生じる同
時にこの緊張力を短管13において支圧金物10が受
け,接地板12にて法面1に伝達する。これにより地盤
支持力(支圧力)が得られる。この場合,図3に示すよ
うに,支圧金物10による地盤支持力が支圧金物端部か
ら例えば45°程度の角度で分布すると仮定すると,支
圧金物10の配置する間隔を適切に設定することで,基
礎岩盤15の上の地層16が有効に挟圧され,所望の地
盤支持力を確保することができる。なお,地盤支持力は
ロックボルト11の保有する抗張力によって異なるが,
例えば接地板12に接する地盤面には15〜50トン/
2 の地盤支持力を付与できる。
【0017】さらに,前記支圧金物10による地盤支持
力を増大させるために,法面1上に所定間隔をもって配
置された複数の支圧金物10のうちの隣接する2つ以上
の支圧金物10相互間を脚板14に形成した切欠部14
aに通した例えば鋼線のワイヤ25で緊張連結する。こ
のワイヤ25は,図2において,例えばと等の2つ
の支圧金物10間を緊張連結する場合,ととと
等の4つの支圧金物10間を囲むように緊張連結する場
合,と等の対角線方向の2つの支圧金物10間を緊
張連結する場合等が考えられる。なお,鋼線のワイヤに
代えて,FRP(繊維強化プラスチック)等によるロー
プを用いることもできる。
【0018】ワイヤ25を緊張連結するさいのワイヤ両
端を結合する結合手段として,例えば図2のB部の詳細
を示す図6のごときワイヤクリップ26を用いるとよ
い。このワイヤクリップ26は,ワイヤクリップ本体2
7にあけた2つの穴27aにUボルト28の両側のねじ
部を通して,ワイヤクリップ本体27とUボルト28と
でワイヤ25の両端部を重ねて挟持し,Uボルト28の
ねじ部にナット29を螺合させ締め付けて,ワイヤ25
の両端を結合する。
【0019】図7,図8に支圧金物の他の実施例を示
す。この実施例の支圧金物10’は,接地板12’が円
形である。その他の点は,図4,図5等に示した支圧金
物10と同じである。
【0020】図9,図10に支圧金物のさらに他の実施
例を示す。この実施例の支圧金物10”は,接地板1
2”が十字形である。その他の点は,図4,図5等に示
した支圧金物10と同じである。
【0021】なお,図示は省略するが,支圧金物10,
10’,10”(以下では10で代表する)の接地板1
2,12’,12”(以下12で代表する)に多数の貫
通穴を設けることが考えられる。この場合,接地板12
に複数の貫通孔をあけた分だけさらに支圧金物10の軽
量化を実現することができる。また,法面1に設置した
後,接地板12の貫通孔から植物が生長することがで
き,支圧金物10の設置面自体をも植生域として機能さ
せることができる。
【0022】また,ロックボルト11に螺合させたナッ
ト22の締め付け力を受ける座金は,短管13にその締
め付け力を伝えることができればよく,必ずしも別部材
であるものに限定されない。例えば,短管13の上端に
溶接固定したもの又はナット自体に溶接固定したもので
もよいし,さらには,ナットの外径が短管13の外径よ
り大きい場合にナットを直接短管13の上端面に接触さ
せることを除外するものではない。
【0023】また,本発明は地中に貫入されてアンカー
機能を果たす引張り部材としてロックボルトを用いた
が,単なるPC鋼棒を用いることもできる。また,図1
1に示した従来例と同様に,アンカー体を先端に設けた
アンカーロープまたはアンカーロッドを用いることも可
能である。この場合,アンカーロープとして,鋼線など
のワイヤに限らず,FRPのロープ等を用いることもで
きる。
【0024】
【発明の効果】本発明の支圧金物は鋼製であり,中央に
孔をあけた接地板,接地板の中央の短管,補強用の脚板
からなる構造なので,必要な強度を有しながら十分軽量
化された支圧金物を得ることができ,傾斜面で行う施工
現場の作業が極めて容易になる。
【0025】請求項2によれば,接地板に複数の貫通孔
をあけた分だけさらに支圧金物の軽量化を実現すること
ができる。また,法面に設置した後,接地板の貫通孔か
ら植物が生長することができ,支圧金物の設置面自体を
も植生域として機能させることができる。
【0026】請求項3の支圧金物は,これを請求項5の
工法のように用いるが,ワイヤを短管下部にある脚板の
切欠部に通し短管の外周面をめぐらせて支圧金物相互間
を緊張連結することができるので,そのワイヤリング作
業が容易であり,かつワイヤを滑らかに緊張させること
ができる。また,ワイヤには,例えば接地板にあけた穴
に通す等の場合のような苛酷が集中荷重が加わることが
なく,ワイヤ破断等のおそれはない。また,ワイヤによ
る緊張力は短管にすなわち支圧金物の中心部に作用する
ので,支圧金物を斜めに起こしてしまうようなモーメン
トを発生させることがなく,支圧金物相互間をワイヤで
緊張連結することの所望の効果を適切に実現することが
できる。また,ワイヤを通す切欠部が短管と接地板との
当接部分(すなわち接地板に接する低い位置)にあるこ
とも,支圧金物を起こすようなモーメントを発生させな
いために有効である。
【0027】請求項4のように,基礎岩盤に先端を定着
させたロックボルトに支圧金物を嵌装し,短管から突出
したロックボルトに座金を介してナットを螺合させ締め
付けるするという工法は,支圧金物が軽量であることと
もに,ナットの締め付け作業を若干高い位置で行うこと
ができることなどから,作業性が良好である。また,短
管の内径を若干大きめにしておくことでロックボルトの
法面への貫入角度に一定の許容範囲を与えることがで
き,かつその一定許容範囲内では接地板に平均化した地
盤支持力を与えることができる。このように,請求項4
の工法は,本発明の支圧金物の機能をきわめて有効に生
かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の法面安定化工法用の支圧金
物を用いた法面安定化工法を示す断面図である。
【図2】図1の法面安定化工法を施工した法面安定化区
域の平面図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】図1における支圧金物の平面図である。
【図5】図4の正面図である。
【図6】図2のB部分のワイヤ連結部の詳細を示すもの
で,(イ)はワイヤクリップの正面図,(ロ)は同分解
図である。
【図7】本発明の法面安定化工法用の支圧金物の他の実
施例を示す平面図である。
【図8】図7の平面図である。
【図9】本発明の法面安定化工法用の支圧金物のさらに
他の実施例を示す平面図である。
【図10】図9の正面図である。
【図11】従来の法面安定化工法用の支圧金物および法
面安定化工法を説明する図である。
【符号の説明】
1 法面 10 法面安定化工法用の支圧金物 11 ロックボルト(引張り部材) 11a ビット 12 接地板 12a 孔 13 短管 14 脚板 14a 切欠部 15 基礎岩盤 20 角座金 21 ねじ付き座金 22 ナット 25 ワイヤ 26 ワイヤクリップ
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−158075(JP,A) 実開 平5−7733(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) E02D 17/20 E02D 5/54 - 5/80

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 地中に貫入されてアンカー機能を果たす
    引張り部材の地上突出部に装着され,前記引張り部材に
    与えた緊張力を法面に伝達して法面の安定化を行う法面
    安定化工法用の支圧金物であって,鋼製の接地板の中央
    部に前記引張り部材を貫通させることができる孔を設け
    るとともに鋼製の短管を立設固定し,前記接地板上面と
    短管外周面との間に両者に垂直に当接し接合される鋼製
    の補強用の脚板を設けたことを特徴とする法面安定化工
    法用の支圧金物。
  2. 【請求項2】 前記接地板に複数の貫通孔を設けたこと
    を特徴とする請求項1記載の法面安定化工法用の支圧金
    物。
  3. 【請求項3】 前記接地板と短管との当接部分の脚板に
    切欠部を設けたことを特徴とする請求項1記載の法面安
    定化工法用の支圧金物。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の支圧金物を用いて行う法
    面安定化工法であって,ロックボルトを法面の地中に貫
    入させてその先端部を基礎岩盤に定着させ,該ロックボ
    ルトの地上突出部に前記支圧金物を嵌装し,この支圧金
    物の短管の上端から突出したロックボルトに座金を介し
    てナットを螺合させ締め付けて当該ロックボルトに緊張
    力を与え,この緊張力を地盤支持力として受ける支圧金
    物により法面を安定化することを特徴とする法面安定化
    工法。
  5. 【請求項5】 法面の安定化区域内に適宜の間隔をあけ
    て配置された複数の支圧金物のうちの隣接する2つ以上
    の支圧金物相互間を,支圧金物の接地板と短管との当接
    部分の脚板に設けた切欠部に通したワイヤで緊張連結す
    ることを特徴とする請求項4記載の法面安定化工法。
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