JP5073966B2 - 時効硬化型フェライト系ステンレス鋼板およびそれを用いた時効処理鋼材 - Google Patents

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Description

本発明は、プレス成形等の加工用に適する時効硬化型フェライト系ステンレス鋼板、およびそれを用いて加工および時効処理された鋼材に関する。
フェライト系ステンレス鋼は高価なNiを多量に含まないためオーステナイト系鋼種より一般に安価であり、各種分野で広く使用されている。またフェライト系ステンレス鋼はオーステナイト系鋼種で問題となる応力腐食割れに対しても優れた抵抗力を有するので、加工材を塩化物環境等で使用する場合には信頼性が高い。
しかし、フェライト系ステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼より加工硬化特性が劣る。このため、加工後の強度が求められる用途では、従来、オーステナイト系鋼種が選択されることが多かった。このような用途で上記のような長所を有するフェライト系ステンレス鋼を適用するには、加工性を阻害することなく高強度化を図ることが重要となる。
そのような高強度化の手法として析出強化を利用する方法が挙げられる。例えば特許文献1には、Nb、Mo、Cu等を含有させ、M6X(XはCまたはN)型、A2B(A:主としてFe、B:主としてNb、Mo)型の析出物や、ε−Cuの析出物を分散させたフェライト系ステンレス鋼が記載されている。
特開2005−89850号公報
特許文献1の強化手段によると、いくつかの種類の析出物を同時に利用することにより、時効処理後の硬さが165HV以上のものを得ることができ、効率的にフェライト系ステンレス鋼の強度向上を図ることが可能になった。しかしながら、従来オーステナイト系鋼種が使用されていた加工用途、例えばプレス成形により絞り加工を施して作られる部品などでは、165HV程度以上の強度レベルでは必ずしも十分ではなく、時効処理後に200HV以上の強度が安定して得られるようなフェライト系材料が強く望まれている。加えて、鋼板素材の段階では軟質で加工性に富み、特に板内の歪み分布に異方性が少なく、寸法精度の高い加工品が得られる材料に対する要求が高まっている。
本発明はこのような現状に鑑み、プレス成形で高い寸法精度が得られる加工性を具備し、かつ時効処理によって200HV以上の強度レベルが安定して実現できるフェライト系ステンレス鋼板を提供しようというものである。
発明者らは詳細な研究の結果、Ni、Al、Cuの3元素を所定量複合添加した組成構成のフェライト系ステンレス鋼において、時効処理後の強度レベルを従来より顕著に向上させることができることを見出した。また、これらの3元素を複合添加し、さらにNb等の含有量を適正化することによって、異方性の少ない優れた加工性が得られることがわかった。本発明ではこれらの知見に基づいて以下のフェライト系ステンレス鋼板を提供する。
すなわち、本発明のステンレス鋼板は、質量%で、C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.1%以下、S:0.02%以下、Cr:9〜25%、Ni:0.5〜3.0%、Al:0.4〜3.0%、Cu:0.4〜3.0%、Nb:0.1〜1.0%、N:0.03%以下であり、必要に応じてさらにTi:0.5%以下、Mo:2.0%以下の1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する。そして、この鋼板は、500〜800℃の雰囲気に0.3〜1h保持したのち冷却する時効処理実験に供したとき200HV以上の硬さに硬化する性質を有するものである
また、本発明のステンレス鋼板は、下記(A)の条件で円筒絞り加工が可能であり、かつ、このとき得られた成形体円筒部の真円度が0.05以下となる加工性を有するものである。
(A)初期ブランク径D0=76mm、パンチ径Dp=40mm、パンチ先端丸み半径Rp≧3t、ダイス肩部丸み半径Rd≧3t、クリアランス=25%、しわ押さえ力=3kN、絞り速度Vp=60mm/min、成形高さ=25mm、ただしtは当該ステンレス鋼板の板厚(mm)
上記において、特にRp=3t、Rd=3t(tは板厚)とすることができる。
ここで、成形高さ=25mmとは、ダイス面を基準にしたパンチの運動距離を25mmとすることを意味する。クリアランスは、{(ダイス径Dd−パンチ径Dp)/(初期板厚t×2)}×100によって算出される。
成形体の円筒部(高さの中央付近)について、直径(外径)を周方向360°にわたって測定し、そのときの(最大径−最小径)の値を真円度とする。
「円筒絞り加工が可能である」とは、割れを生ずることなく上記成形体が得られることをいう。
本発明のステンレス鋼板の金属組織は、マトリクスが平均結晶粒径40μm以下のフェライト相であり、そのフェライト相マトリクスは、500〜800℃の雰囲気に0.3〜1h保持したのち冷却する時効処理実験に供したときNi−Al系化合物相とCu相が当該マトリクス中に分散析出する性質を持つものである。なお、時効処理実験に供する前の当該ステンレス鋼板として、150HV以下の軟質なものが対象となる。
Ni−Al系化合物相はNiとAlの金属間化合物を主体とするものである。Cu相はε−Cu等のメタルCuを主体とする相である。
また本発明では、これらのステンレス鋼板にプレス成形による絞り加工を施したのち400〜800℃で0.1〜1h保持して硬さ200HV以上とする時効処理を施してなる、Ni−Al系化合物相とCu相が分散析出した組織を有するステンレス鋼材が提供される。
本発明のフェライト系ステンレス鋼板は軟質であり、例えばプレス成形により絞り比2以上の加工が可能である。また、板内の歪み分布に異方性が少ないことから寸法精度の高い加工品を得ることができる。さらに、時効処理後には200HV以上に高強度化が可能であり、従来の加工用フェライト系ステンレス鋼に比べ大幅な強度レベルの向上が実現できる。したがって本発明は、従来オーステナイト系鋼種が選択されていた加工用途へのフェライト系ステンレス鋼の適用を可能にし、部品コストの低減および応力腐食割れの回避等に寄与しうる。
本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、軟質なフェライト組織を有するものであるが、その成分元素としてNi、Al、Cuが各々所定量複合添加されている。これらの元素は時効処理によってNi−Al系化合物相およびCu相を形成する。これら2種類の析出相が分散した組織状態においては、M6X型やA2B型の析出物に依存していた従来の時効硬化型フェライト系ステンレス鋼と比べ、顕著な強度向上が実現される。そのメカニズムについては現時点で十分に解明されていないが、発明者らがNi、Al、Cuの複合添加による加工性(特にプレス成形性)と時効硬化性への影響を詳細に検討したところ、以下のようなことが明らかとなった。
すなわち、Ni単独添加、Al単独添加、Cu単独添加の場合や、NiとCuのみの複合添加、あるいはAlとCuのみの複合添加の場合は、いずれも強度向上への影響はほとんど認められなかった。NiとAlのみを複合添加した場合は、Ni単独添加やAl単独添加の場合より強度向上への影響は大きかった。これはNi3Alを主体とするNi−Al系化合物相の形成によるものであると推察された。ところが、Ni、Al、Cuの3元素を複合添加した場合は、Cu単独添加の場合に強度向上への影響がほとんど認められなかった(前記)にもかかわらず、NiとAlのみの複合添加の場合より大幅に強度が向上した。このことから、Ni−Al系化合物相とCu相の、種類の異なる析出相が同時に分散したマトリクスにおいては、これらの析出相同士が何らかの相乗作用を呈し、結果的に顕著な強度向上がもたらされたものと考えられる。
以下、本発明を特定するための事項について説明する。
〔組成〕
C、Nは、再結晶フェライトのランダム化に有効な再結晶核となる炭化物または窒化物を形成する。再結晶粒のランダム化は円筒絞り成形体の真円度向上、すなわち歪み分布の均一化にも有利に働く。しかし、過剰なCあるいはNの含有は鋼板の耐食性、延性、低温靱性、溶接性等に悪影響を及ぼす。また、NbやTiの増量が必要になる場合もある。したがってC含有量の上限は0.02質量%に、N含有量の上限は0.03質量%に制限される。
Siは、脱酸剤として使用される成分元素である。しかし、Siは固溶強化能が高く、過剰の含有は材質硬化、延性低下を招くので、Si含有量の上限は1.0質量%に制限される。0.5質量%以下が一層好ましい。
Mnは、固溶強化能が小さく材質への悪影響はあまりないが、多量に含有すると介在物を形成して表面性状が劣化し、また、溶製時にヒュームが発生しやすくなり製造性の低下を招く。したがって、Mn含有量は1.0質量%以下とすることが望ましく、0.5質量%以下が一層好ましい。
Crは、フェライト相を安定させるとともに、耐食性を付与する上で必須の元素であり、そのためには少なくとも9質量%以上のCr含有が必要であり、11質量%以上を確保することがより好ましい。しかし、Cr含有量が高くなると靱性や加工性が低下するので、上限は25質量%に制限される。一般的な室内環境では18質量%以下、屋外環境では16質量%以上のCr含有量とすることが望ましい。
Niは、本発明では重要な元素である。すなわち、時効処理に供したときAlとともにNi−Al系化合物相を形成し、これが、Cu相との相乗作用により、顕著な強度向上をもたらすものと考えられる。そのためには少なくとも0.5質量%のNi含有量が必要である。0.6質量%を超えるNi含有量とすることがより好ましい。ただし、Niはオーステナイト形成元素であり、過剰の含有は材料の硬質化、コスト上昇の原因となる。したがって本発明ではNi含有量を3.0質量%以下に規定する。
Alは、一般的には脱酸剤として使用されるが、本発明では上記NiとともにNi−Al系化合物相を形成するための元素として重要である。そのためには0.4質量%以上のAl含有量を確保する必要がある。しかし、過剰なAl含有は表面性状の劣化や、溶接性、低温靱性の低下を招くので、3.0質量%以下の含有量に規制される。
Cuは、時効処理に供したときにCu相として析出し、本発明においてはNi−Al系化合物相との相乗作用で強度レベルを顕著に引き上げる効果を奏すると考えられる。また、耐食性向上にも寄与する。したがって本発明では重要な成分元素である。ステンレス鋼の析出強化に利用される元素としてNbやMoが挙げられるが、Nbは600℃以上、Moは700℃以上の温度域で析出する。これに対し、Cuは400〜700℃の比較的低温域で時効硬化が可能であるという特長を有する。このようなCuの作用を引き出すには0.4質量%以上のCu含有量を確保する必要があり、より高強度化が必要な用途では0.5質量%以上を確保することが望ましい。しかし、過剰なCu添加は低温靱性、溶接高温割れ感受性にとって好ましくないため、Cu含有量は3.0質量%以下の範囲に規定される。これらのCuの弊害を特に嫌う場合は2.0質量%以下とすることが好ましい。
Nbは、結晶粒の粗大化を抑制し、C、Nを炭窒化物として固定する作用を有する。特に結晶粒粗大化の抑制は、板内の歪み分布を均一化して、異方性の少ない加工性を実現するうえで重要である。このような作用を十分に発揮させるためには0.1質量%以上のNb含有量を確保することが望ましい。C、Nの固定に消費された残りのNbは、熱処理条件に応じてFe2Nb型の金属間化合物やFe3Nb3C型の炭化物等として微細析出し、高強度化に寄与しうる。しかし、過剰のNb添加は低温靱性を低下させるため、Nb含有量は1.0質量%以下の範囲に規制される。
Tiは、C、Nを固定することにより加工性や耐食性を向上させるので、必要に応じて添加することができ、0.05質量%以上含有させると特に効果的である。ただし、Ti含有量が多いと生成したTiNが鋼板の表面性状を劣化させる要因になり、低温靱性にも悪影響が現れる。したがってTiを添加する場合は0.5質量%以下の範囲で行う。
Moは、熱処理条件に応じて固溶状態からFe2Mo型の金属間化合物を微細析出し、鋼板の強度向上に寄与しうる。また耐食性を向上させる作用を呈する。このため、Moは必要に応じて添加することができる。0.3質量%以上のMoを含有させることが特に効果的である。ただし、Moは高価な元素であり、またMoの過剰添加は熱間加工性や低温靱性を低下させることがあるので、Moを添加する場合は2.0質量%以下の範囲で行う。
その他、V、Zrはそれぞれ0.3質量%以下の範囲で含まれていても本発明の効果は阻害されない。P、Sは少ない方がよく、Pは0.1質量%以下好ましくは0.05質量%以下、Sは0.02質量%以下に規制することが望ましい。Ca、Mg、Co、REM(希土類元素)等も原料から混入することがあるが、過剰に含まれない限りプレス成形性には特に悪影響を及ぼさない。これらの元素は本発明の効果を阻害しない範囲(例えば0.1質量%以下)で含有が許容される。
〔時効処理後の硬さ〕
加工後の強度が要求され、従来主としてオーステナイト系ステンレス鋼板が使用されていた部品の用途においては、時効処理後に安定して200HV以上の硬さが得られる鋼板を素材に使用することが望まれる。本発明のフェライト系ステンレス鋼板は時効処理に供する前の軟質な素材鋼板であるが、これを適正な条件で時効処理することにより硬さ200HV以上に強度を向上することができる。その適正な時効処理条件は400〜800℃×0.1〜1hの範囲で設定できるが、具体的に本発明鋼板の有する時効硬化性能を確認するには、本発明の鋼板に対して「500〜800℃の雰囲気に0.3〜1h保持→冷却(例えば650℃の雰囲気に0.5h保持→炉外で放冷)」の条件で時効処理実験を行い、時効後の鋼板の硬さが200HV以上であることを確かめればよい。硬さの測定は、鋼板表面についてJIS Z2244に準拠してビッカース硬さを測定することにより行える。
〔時効処理後の組織状態〕
本発明のフェライト系ステンレス鋼板を適正条件で時効処理した場合、Ni、Al、Cuが複合添加されていることにより、Ni−Al系化合物相およびCu相が形成される。前述のように、種類の異なるこれらの析出相が何らかの相乗作用をもたらし、顕著な強度向上が達成されるものと考えられる。これらの析出相の存在は、材料の断面組織を電子顕微鏡等のミクロ的観察手段で観察し、析出相に電子ビームを照射する分析法によって確認できる他、抽出残渣法を用いて特定することも可能である。
〔加工性〕
円筒絞りにおいて高い真円度の成形体が得られるフェライト系ステンレス鋼板は、歪み分布が均一化されており、寸法精度の高い部品に加工可能である。本発明鋼板の加工性は、円筒絞りが可能であることに加え、真円度の高い円筒絞り成形体が得られることによって確認できる。具体的に本発明鋼板の有する加工性を確認するには、本発明の鋼板に対して前記(A)の条件で円筒絞り加工の実験を行い、このとき、得られた成形体に割れが認められず、かつ、この成形体円筒部の真円度が0.05以下となることを確かめればよい。
この評価方法は板厚が概ね0.5〜2.5mmのフェライト系ステンレス冷延焼鈍鋼板に適用できる。
クリアランスは、初期板厚に応じてダイス径を調整することによって25%に設定する。
しわ押さえ力については3kNという低い値で実施する。発明者らによるフェライト系ステンレス冷延焼鈍鋼板を用いた広範な実験によれば、しわ押さえ力を高くするほど成形体の真円度は良好になる(小さい値となる)傾向を示すことが確かめられた。このため、低いしわ押さえ力での真円度が良好であれば、その鋼板はプレス成形時の「しわ」と「割れ」の同時改善を実現する上で極めて有利な、均一化された歪み分布を有していると評価できる。
このような加工性を付与するには、上記のように組成調整すること、および適正な条件(後述)で製造することが重要である。
種々検討の結果、しわ押さえ力を3kNとする上記(A)の条件で作製した成形体円筒部の真円度が0.05を超えるような異方性の大きい歪み分布をもつフェライト系ステンレス鋼板は、従来オーステナイト系ステンレス鋼板が選択されていた種々の加工用途での代替材としては、加工性が不十分である。
〔平均結晶粒径〕
鋼板のフェライト結晶粒径は、できるだけ微細化していることが歪み分布の均一化に有利である。平均結晶粒径が40μm以下の組織を呈するものが対象となる
〔鋼板の硬さ〕
本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、プレス成形などの加工に適用できるよう、軟質であることが望ましく、具体的には硬さ150HV以下であるものが対象となる
〔製造方法〕
以上のような均一化された歪み分布をもつ軟質なフェライト系ステンレス鋼板は、前述の組成を有するフェライト系ステンレス鋼を対象として、例えば以下のような工程で製造することができる。
溶製→熱間圧延(850〜1250℃)→熱延板焼鈍(800〜1100℃)→冷間圧延→中間焼鈍(850〜1000℃)→冷間圧延→仕上焼鈍(8500〜1000℃)
工程中には必要に応じて酸洗を行うことができる。また、仕上焼鈍後の表面は酸洗仕上としてプレス成形用途に供すればよい。
ここで、中間焼鈍は完全再結晶が起こり、最終的に均一化された歪み分布をもつ温度で行うことが重要であり、850℃以上、好ましくは900℃以上で行う。上記工程において中間焼鈍前の冷間圧延率は30〜50%とすることが望ましく、中間焼鈍後の冷間圧延率は50〜80%とすることが望ましい。
このようにして得られた本発明のフェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍鋼板は、部品に加工されたのち、時効処理によって高強度化される。時効処理条件は400〜800℃の雰囲気中で0.1h以上保持したのち冷却(炉外で放冷または水冷)する条件範囲内で設定でき、好ましくは500〜800℃の雰囲気に0.3〜1h保持したのち冷却する条件が採用できる。
表1に示す組成のフェライト系ステンレス鋼を溶製し、熱間圧延(1230℃抽出、仕上げ温度900℃以上、板厚4.0mm)→焼鈍(800〜1050℃、水冷)→冷間圧延(板厚2.0mm)→中間焼鈍(850〜1000℃、水冷)→冷間圧延(板厚1.2mm)→仕上焼鈍(850〜1000℃、水冷)の工程により、板厚1.2mmの冷延焼鈍鋼板を得た。最終仕上は酸洗である。
Figure 0005073966
各鋼板について、圧延方向と板厚方向に平行な断面(L断面)の金属組織観察を行い、フェライト相マトリクスの平均結晶粒径を切片法により求めた。
各鋼板から採取した76mm径のブランクを用い、前記(A)の条件で円筒絞りを行い、絞り加工の可否および成形体の真円度を調べた。ただし、しわ押さえ力を3kN、7kN、12kNの3通りとして行った。また、(A)条件においてRp=3.6mm、Rd=3.6mmとした。
絞り加工の可否については、所定の成形高さ(25mm)まで絞り加工ができなかったものを×(絞り加工不可)、所定高さの成形体が得られたが目視観察にて割れの発生が認められたものを△(不良)、所定高さの成形体が得られかつ目視観察にて割れの発生が認められなかったものを○(良好)と評価した。
真円度については、得られた成形体の円筒部(高さの中央付近)について、直径(外径)を周方向360°にわたって測定し、そのときの(最大径−最小径)の値を真円度とした。
結果を表2に示す。
なお、鋼板表面についてビッカース硬さを測定したところ、本発明例のものはいずれも150HV以下の軟質なものであった。
Figure 0005073966
表2からわかるように、本発明例のものはいずれも良好な絞り加工性を有し、かつ、しわ押さえ力が3kNと小さい場合でも成形体の真円度は0.05以下と良好であった。
これに対し、比較例であるNo.21はNb含有量が低すぎたことにより平均結晶粒径が40μmを超えて大きくなり、良好な真円度が得られなかった。No.24および25はそれぞれSiおよびMnの含有量が高すぎたことにより素材の硬さが硬くなり、絞り加工ができなかった。なお、No.22、23は絞り加工性に関しては良好であったが、後述のように時効処理後に十分な高強度が得られない。
実施例1で得た各冷延焼鈍鋼板について、500〜800℃の雰囲気に0.3〜1h保持後、炉外で放冷する条件で時効処理を施した。得られた時効処理鋼板について表面のビッカース硬さを測定した。
結果を表3に示す。
なお、各時効処理鋼板から採取した試料について透過型電子顕微鏡に付属のEDX装置にて、析出物の組成分析を行ったところ、本発明例のものはいずれもNi−Al系化合物相とCu相が分散していることが確かめられた。
Figure 0005073966
表3からわかるように、本発明例のものはいずれも時効処理後に200HV以上の高強度が得られた。
これに対し、比較例であるNo.2はCu含有量が少なく、No.2はNi含有量が少なく、No.2はAl含有量が少なかったことにより、これらは十分な時効硬化が得られなかった。なお、No.24および25の鋼は時効硬化性については良好であったが、実施例1で示したとおり、これらは加工性に劣るものである。
実施例1で得られた本発明例の成形体について表3に示した各鋼No.の条件で時効処理を施し、時効処理後の成形体の側面部および底面部から採取した試料について上記と同様の方法で析出物の組成分析を行ったところ、いずれもNi−Al系化合物相とCu相が分散していることが確かめられた。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.1%以下、S:0.02%以下、Cr:9〜25%、Ni:0.5〜3.0%、Al:0.4〜3.0%、Cu:0.4〜3.0%、Nb:0.1〜1.0%、N:0.03%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、マトリクスがフェライト相であり、そのマトリクスは、500〜800℃の雰囲気に0.3〜1h保持したのち冷却する時効処理に供したときNi−Al系化合物相とCu相が当該マトリクス中に分散析出する性質を持つものであり、平均結晶粒径が40μm以下、硬さが150HV以下であり、500〜800℃の雰囲気に0.3〜1h保持したのち冷却する時効処理に供したとき200HV以上の硬さに硬化する性質を有する時効硬化型フェライト系ステンレス鋼板。
  2. 質量%で、C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.1%以下、S:0.02%以下、Cr:9〜25%、Ni:0.5〜3.0%、Al:0.4〜3.0%、Cu:0.4〜3.0%、Nb:0.1〜1.0%、N:0.03%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、マトリクスがフェライト相であり、そのマトリクスは、500〜800℃の雰囲気に0.3〜1h保持したのち冷却する時効処理に供したときNi−Al系化合物相とCu相が当該マトリクス中に分散析出する性質を持つものであり、平均結晶粒径が40μm以下、硬さが150HV以下であり、下記(A)の条件で円筒絞り加工が可能であり、かつ、このとき得られた成形体円筒部の真円度が0.05以下となる加工性を有する時効硬化型フェライト系ステンレス鋼板。
    (A)初期ブランク径D0=76mm、パンチ径Dp=40mm、パンチ先端丸み半径Rp≧3t、ダイス肩部丸み半径Rd≧3t、クリアランス=25%、しわ押さえ力=3kN、絞り速度Vp=60mm/min、成形高さ=25mm、ただしtは板厚(mm)
  3. 質量%で、C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.1%以下、S:0.02%以下、Cr:9〜25%、Ni:0.5〜3.0%、Al:0.4〜3.0%、Cu:0.4〜3.0%、Nb:0.1〜1.0%、N:0.03%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、マトリクスがフェライト相であり、そのマトリクスは、500〜800℃の雰囲気に0.3〜1h保持したのち冷却する時効処理に供したときNi−Al系化合物相とCu相が当該マトリクス中に分散析出する性質を持つものであり、平均結晶粒径が40μm以下、硬さが150HV以下であり、下記(A)の条件で円筒絞り加工が可能であり、かつ、このとき得られた成形体円筒部の真円度が0.05以下となる加工性を有し、500〜800℃の雰囲気に0.3〜1h保持したのち冷却する時効処理に供したとき200HV以上の硬さに硬化する性質を有する時効硬化型フェライト系ステンレス鋼板。
    (A)初期ブランク径D0=76mm、パンチ径Dp=40mm、パンチ先端丸み半径Rp≧3t、ダイス肩部丸み半径Rd≧3t、クリアランス=25%、しわ押さえ力=3kN、絞り速度Vp=60mm/min、成形高さ=25mm、ただしtは板厚(mm)
  4. 組成において、さらにTi:0.5%以下、Mo:2.0%以下の1種以上を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の時効硬化型フェライト系ステンレス鋼板。
  5. 組成において、さらにTi:0.05〜0.5%、Mo:0.3〜2.0%の1種以上を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の時効硬化型フェライト系ステンレス鋼板。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼板にプレス成形による絞り加工を施したのち400〜800℃で0.1〜1h保持して硬さ200HV以上とする時効処理を施してなる、Ni−Al系化合物相とCu相が分散析出した組織を有するステンレス鋼材。
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