JP5067819B1 - タイル外壁補修方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】タイル外壁の簡単な補修方法を提供する。
【解決手段】建物躯体の表面に接着剤でタイルを貼り付けてなるタイル外壁の補修方法は、タイル10の浮きを確認する確認工程a、浮きが確認されたタイルを含む浮き領域12の中で選択された選択タイル10a又は該選択タイルの一部10bを囲む一対の縦線18L,18Rと一対の横線18U,18Dに沿ってタイル外壁に切溝21L,21R、21U,21Dを形成する切溝形成工程b、切溝で囲まれた選択タイル及び選択タイルの一部を剥ぎ取る工程c、選択タイル及び選択タイルの一部を剥ぎ取った跡に形成された空隙27に接着剤28,30,32を介して補修タイル31を充填し固定するタイル充填工程dを有する。切溝形成工程では、一対の縦線と一対の横線に沿って形成する4つの切溝の少なくとも一つは、タイル外壁から建物躯体に向かうにしたがって空隙の中心に近づくように傾斜させた傾斜溝とする。
【選択図】図10

Description

本発明は、タイル外壁を補修する方法に関する。
建物の外壁を覆うタイルは、通常、建物の躯体(例えば、コンクリート)にモルタル(下地モルタル、敷モルタル、張付モルタル)を介して接着される。また、隣接するタイル間の隙間は、目地モルタルによって埋められる。したがって、施工後は見た目にも綺麗な外壁を構成している。
しかし、目地材の経年劣化や壁面に作用する鉛直方向の荷重等により、目地やタイルにクラックが発生し、それが更に発展するとタイルの背後にいわゆる“浮き”(剥離)を形成する。また、施工時における、躯体とモルタル、モルタル同士、モルタルとタイルの接着不良によっても、それらの境界に浮きが発生し得る。
ただし、目地やタイルにクラックが発生したからといって、そのこと自体がすぐにタイルの崩落に繋がる可能性は極めて低い。しかし、クラックを通じてタイル背後の浮きに侵入した水は、躯体コンクリートの鉄筋を腐食し、構造物の耐久性を著しく低下させる原因になる。また、地震等の外力を受けたときに浮きタイルが崩落することも十分に考えられる。
そこで、従来、タイルをハンマー等で打診し、その反響音をもってタイルの浮きを確認することが行われている。また、赤外線カメラを用いてタイルの浮きを確認する手法が特許文献1に開示されている。
特開平05−312745号公報
しかし、本発明者らが行った実験によれば、打診または赤外線カメラを使って浮きが確認されたタイルについて、その周辺目地にカッターで切り込みを入れた後、タイルに垂直な力を加えることによって剥ぎ取ったところ、確かにタイル背後に浮きが存在することは確認されたが、その大きさや発生箇所は様々であった。具体的に、大きさについては、浮きがタイル全体に広がっているものよりも、タイル背後の一部領域に浮きが発生しているものが多かった。また、発生箇所については、タイル裏足、裏足間のタイル背面とモルタルとの境界、または塗り重ねたモルタルの境界に浮きが見られた。そのため、タイルの剥ぎ取りに要した力もばらばらで、例えば、全面にわたって浮きが存在したタイルの剥ぎ取り力はほぼゼロであったが、タイル背後に部分的にのみ浮きが存在したタイルの剥ぎ取り力は浮きの面積等に応じて異なり、相当な割合のタイルは十分に自立できる程度の接着力(例えば、剥ぎ取り力が0.4N/mm以上)を有していた。
また、本発明者らが行った別の研究によれば、タイルは、縦方向及び横方向に連続した一群のタイルについて、それを囲む縦方向と横方向に連続した格子状のクラックが発生した場合に崩落の危険が高く、単に縦方向又は横方向のクラックが存在するだけでは容易に崩落するものでない、ことが確認された。
そこで、本発明は、浮きが確認された外壁部分(浮き領域)のタイルをすべて剥ぎ取って交換するのではなく、浮き領域におけるタイルを部分的に剥ぎ取って補修し、その補修をもって周囲のタイルを同時に補強する新たな補修方法を提供することを目的とする。
この目的を達成するために、本発明は、建物躯体の表面に接着剤でタイルを貼り付けてなるタイル外壁の補修方法に関し、タイル(10)の浮きを確認する確認工程(a)、浮きが確認されたタイル(11)を含む浮き領域(12)の中で選択された選択タイル(10a)又は該選択タイル(10a)の一部を囲む一対の縦線(18L,18R)と一対の横線(18U,18D)に沿ってタイル外壁に切溝(21L,21R、21U,21D)を形成する切溝形成工程(b)、切溝で囲まれた選択タイル(10a)及び選択タイルの一部(10b)を剥ぎ取る工程(c)、選択タイル(10a)及び選択タイルの一部(10b)を剥ぎ取った跡に形成された空隙(27)に接着剤(28,30,32)を介して補修タイル(31)を充填し固定するタイル充填工程(d)を有する。切溝形成工程(b)では、一対の縦線(18L,18R)と一対の横線(18U,18D)に沿って形成する4つの切溝(21L,21R、21U,21D)の少なくとも一つは、タイル外壁から建物躯体に向かうにしたがって空隙(27)の中心に近づくように傾斜させた傾斜溝とする。
この補修方法によれば、浮き領域に含まれるすべてのタイルを剥ぎ取る必要がない。そのため、実際に剥ぎ取るべきタイルの数が著しく減少するとともに、それに伴って廃材の発生が著しく減少する。また、選択タイル又は選択タイルの一部を剥ぎ取った後に形成された空隙に充填した部材(補修タイル、接着剤)が楔のごとく機能し、選択タイル又は選択タイルの一部を囲む周囲のタイルを安定的に保持する。
本発明に係るタイル補修方法の工程を示す図。 外壁タイル上に確認された浮き領域を示す図。 外壁タイルの断面図で浮きの位置を例示する図。 浮き領域に設定された小領域を示す図。 浮き領域に設定された小領域と該小領域に含まれる選択タイルの周囲に形成した切溝を示す図。 他の形態の浮き領域を示す図。 図6に示す浮き領域に設定される小領域を示す図。 他の形態の浮き領域とそこに設定される小領域を示す図。 選択タイルを含むタイル外壁の縦断面図。 選択タイルを含むタイル外壁の横断面図。 選択タイルを剥ぎ取る状態を示す図。 選択タイルを剥ぎ取った跡に形成されるボイドの縦断面図。 選択タイルを剥ぎ取った跡に形成されるボイドを横断面図。 選択タイルを剥ぎ取った跡の躯体に形成されたアンカーホールを示す断面図。 選択タイルを剥ぎ取った跡に接着剤、中間タイル、補修タイルを貼り付けるプロセスを説明するための縦断面図。 中間タイルの斜視図と横断面図。 補修後のタイル外壁の横断面図。 中間タイルの他の形態を示す縦断面図。 左右に隣接する2枚の選択タイルの一部を剥ぎ取る他の方法を説明するための図。
以下、添付図面を参照して本発明のタイル外壁の補修方法を説明する。
図1は、本発明に係るタイル外壁の補修方法の工程図である。図示するように、本発明のタイル外壁の補修方法は、概略、診断工程と補修工程からなる。
診断工程は、建物のタイル外壁に剥離箇所(浮き)が有るか否か確認するもので、一般的には、例えば、打診法(直接診断法)、赤外線法(間接診断法)によって行われる。打診法は、建物の外壁に沿って組み立てた足場、建物の屋上から吊り下げたスカイチェア若しくはゴンドラ、又は高所作業車に取り付けたゴンドラに乗った作業員が一枚一枚のタイルをハンマー等の専用工具で打診してその反響音からタイルの浮きを確認するものである。赤外線法は、建物の外壁を赤外線カメラで撮影し、外壁の浮き(外壁の背後に存在する空隙、水等の存在)を原因とするタイル表面の温度差情報からタイルの浮きを確認するものである。
図2は、タイル10で被覆された建物外壁(タイル外壁)Wの一部を示し、そこには診断工程で剥離箇所(浮き)が確認された浮きタイル11が網点で表示してあり、それら浮きタイル11を囲む浮き領域12が点線で囲って示してある。図面上、説明を簡略化するために、浮き領域12は長方形で表されているが、実際の浮き領域は種々の平面形状となって表れる。
浮きの大きさ(二次元の広がり)や発生箇所は様々である。例えば、図3に示すように、コンクリートからなる建物躯体13の表面に接着剤(例えば、下地モルタル14,張付モルタル15)でタイル10を貼り付けてなるタイル外壁Wの場合、タイル(一枚のタイル)下面全域に亘って存在する浮き16aもあれば、タイルの一部領域に存在する浮き16b、16c、16dもある。浮きが発生する箇所も様々で、浮きは、タイル10とモルタル(張付モルタル14)との境界(符号16b、16cで示す浮き)、張付モルタル14と下地モルタル15の境界(符号16dで示す浮き)、モルタル(下地モルタル15)とコンクリートの躯体13との境界(符号16aで示す浮き)に発生する。
補修工程は、浮き領域12に含まれるすべてのタイルを補修するのではなく、図4に示すように、タイル施工方法として、タイル間の各目地が上下方向に直線状に連続して形成される芋目地(通し目地)が採用されている場合、浮き領域12に対して縦3行×横3列の小領域17を設定する。しかし、図6に示すように、浮き領域12は必ずしも縦3M行、横3N行(M,N:正の整数)の格子配置(タイル配置)で構成されるものでない。その場合、図7に示すように、浮き領域12が小領域17で埋められるように、小領域17を設定する。なお、図2,7では、複数の小領域17が格子状に設定されているが、小領域17は非格子状(上下左右の隣接する小領域が上下又は左右にずれている)に設定してもよい(図8参照)。
次に、各小領域17の中で、剥ぎ取るべき領域、すなわち補修領域を選択する。図2、4に示す実施例では、小領域17の中央に位置するタイル10aを補修領域としている。以後、タイル10aを選択タイルという。
選択タイルの補修について説明する。まず、選択タイル10aを剥ぎ取るにあたって、図2に示すように、選択タイル10aを囲む、左右の上下方向に伸びる縦線(目地18L,18R)と上下の水平方向に伸びる縦線(目地18U,18D)にカッター(図示せず)で切溝21L,21R、21U,21Dを入れる。図9に示すように、上側切溝21Uは、選択タイル10aの背後に存在するモルタル(張付モルタル14と下地モルタル15)をほぼ貫通して躯体13の近くまでに達していることが好ましい。下側切溝21Dは、モルタルを貫通して、下端(底)が躯体13に進入していることが好ましい(以下、躯体13に進入した切溝部分を「躯体切溝21C」という。)。躯体13に進入する深さは、約5〜10mmとすることが好ましい。図10に示すように、左右の切溝21L,21Rは、タイル外壁Wから建物躯体13に向かうにしたがって選択タイル10aの中心に近づくように傾斜させた傾斜溝とする。
次に、図11に示すように、選択タイル10aの表面に剥取用アタッチメント22を接着剤で接着して固定する。そして、接着剤の乾燥後、アタッチメント22にボルト23を連結し、専用の剥取用加圧装置24でボルト23に引抜力25を加えて、選択タイル10aを剥ぎ取る。なお、図11に示す剥取用アタッチンメントは単なる一例であって、例えば、傾斜溝(切溝21L,21R)に斜めに挿入できる爪を剥取用アタッチメントに設けてもよい。この場合、剥取用アタッチンメントを接着剤でタイルに接着する必要がないため、選択タイルの剥ぎ取りに要する時間を短縮できる。
例えば、選択タイルの全域又はほぼ全域に亘って広がる大きな浮きが存在する場合、選択タイルは実質的に剥ぎ取り力がゼロで簡単に剥ぎ取ることができる。剥取力がゼロでない場合、一般には、図12に示すように、タイル10aはその背後にモルタル26が付着した状態で剥ぎ取られる。そのため、躯体側には、タイル10aよりも大きなタイル跡(空隙、ボイド)27が形成される。また、浮きの位置によってモルタルの分離位置が異なり、一部のモルタル26’は躯体に付着したまま残る。したがって、補修にあたっては、後に塗布される接着剤と躯体との接着力を確保するために、躯体13上に残存するモルタル26’を除去して躯体表面を綺麗に清掃することが好ましい(図13参照)。
次に、図14に示すように、タイル跡(ボイド)27に露出した躯体13の中央(ボイド底面)に所定深さのアンカーホール41をドリルで形成する。アンカーホール41の深さは約5〜10mmとすることが好ましい。
次に、図15(a)に示すように、ボイド底面に接着剤28を塗布する。このとき、接着剤としては、変成シリコーン系接着剤が好適に利用できる。接着剤に代えてモルタルを接着剤及び充填材として使用してもよい。このとき、ボイド底面の中央アンカーホール41と躯体切溝21Cにも接着剤28を充填する。
次に、図15(a)に示すように、躯体切溝21Cに下部アンカー42を差し込む。下部アンカー42は、棒状又は板状の金属からなるピン又はプレートである。この金属には、耐食性の金属、例えばステンレスを用いることが好ましい。躯体切溝21Cに差し込む下部アンカー42の数は一つであってもよいし、複数であってもよい。
次に、図15(b)に示すように、接着剤28の上に中間タイル29を張り付ける。中間タイル29は、タイル10aの大きさに応じた縦横寸法のものが用意される。厚さの異なる複数の中間タイル29を用意し、タイル跡27の深さに応じて適当な厚みの中間タイルを選択してもよい。中間タイル29はその中央に表面と裏面を貫通する、中央アンカー用の貫通孔43を有する。図16に示すように、中間タイル29の縦方向の端部は、傾斜溝21L,21Rの傾斜に対応して、表面から裏面に向かって次第に内側(タイル中央部)に傾斜した傾斜端面29L,29Rとしてもよい。
次に、図15(b)、(c)に示すように、中間タイル29の中央アンカー用貫通孔43と躯体13の中央アンカーホール41に中央アンカー44を差し込む。
次に、中間タイル29の上に接着剤30を塗布する。接着剤30は、接着剤28と同じであってもよい。
次に、図15(c)、(d)に示すように、補修タイル31の裏面に接着剤32を塗布し、接着剤32を塗布した補修タイル31を中間タイル29の上に貼り付ける。接着剤32は、接着剤28と同じであってもよい。ただし、補修タイル31の背面に接着剤32を塗布することは必須ではない。
最後に、タイル29,31の周囲の空隙(切溝21L,21R,21U,21Dに相当する箇所)に接着剤34を充填する。接着剤34は、接着剤28と同じであってもよい。
このようにしてタイルが交換されることにより、浮き領域12のタイルは補強される。具体的に説明すると、図5に示すように、タイル10aを剥ぎ取るにあたって、タイル10aを囲む周囲の目地(タイル10a縁に沿ってそこから上下左右に伸びる目地分)にカッターを入れて切溝が形成される。通常カッターには円盤形回転カッターが使用され、その場合、切溝21は、上下左右の隣接タイルの間の目地にも及ぶ。そのため、補修対象タイルのタイル跡や目地に充填された接着剤は、補修対象タイルに隣接するタイルをも補強する。したがって、一つのタイルを補強すると、そのタイル10aを含む小領域17の一群のタイル群40が一体的に補強されることになる。結果、浮き領域12の中の選択タイル10aを補強すれば、その周辺の非選択タイルを含めた一群のタイル群40が補強されるとともに、補修タイル31が躯体13に対するアンカーとなって、浮き領域の全体を躯体13に対して安定的に保持させる。
また、本実施形態では、左右の切溝21L,21Rが、躯体13に向かうにしたがって選択タイル10aの中心に近づくように斜めに形成されているので、そのため、タイル跡(ボイド)27に充填された部材(中間タイル29,補修タイル31,接着剤28,30で構成される一塊の部材)が、あたかも楔のように機能し、補修タイル31の周囲のタイル群を確実に躯体13上に保持する。したがって、補修タイル31を囲むタイル又はタイル群が抜け落ちようとしても、楔となる充填部材によってその抜け落ちが防止される。なお、以上の説明では、傾斜溝21L,12Rはその下端を躯体13までとしたが、その下端部を躯体13内に進入させ、そこに形成された傾斜溝に上述したアンカー42と同様のアンカー(ピン又はプレート)を挿入してもよい。この場合、上述した楔効果が更に増し、タイル群40を更に安定して保持できる。
さらに、中間タイル29、補強タイル31、およびこれら中間タイル29と補強タイル31によって支持される周囲のタイルを含むタイル群40が、接着剤28,30だけでなく、下部アンカー42と中央アンカー44によって一体的に支持される。したがって、タイル群40が時間の経過と共に次第に垂れ下がるということがない。
このように、上述した実施形態のタイル外壁の補修方法によれば、浮き領域12に含まれるすべてのタイルを剥ぎ取る必要がない。そのため、実際に剥ぎ取るべきタイルの数は著しく減少するとともに、それに伴って廃材の発生が著しく減少する。また、中間タイル29を用いることにより、剥ぎ取ったタイルの後にできた空間(ボイド27)の大部分をモルタル又は接着剤で埋める必要が無い。そのため、モルタルや接着剤の乾燥に要する時間が大幅に減少し、施工時間が短縮される。さらに、選択タイル10aを囲む4本の線又は目地の少なくとも一つについてそこに形成する切溝を斜めにしているため、タイル跡に充填した部材が楔のように機能し、これにより周囲のタイルを躯体に安定に止める。さらにまた、下部アンカー又は中央アンカー若しくはそれらの両方によって、補強タイルだけでなく、その周囲に位置するタイルが安定的に支持される。そして、剥ぎ取ったタイルの後にできた空間(ボイド27)が深い場合、複数の中間タイルをボイド27に重ねて充填してもよい。この場合、すべての中間タイルの中央アンカー用貫通孔と躯体13の中央アンカーホールに中央アンカーを差し込む。
なお、中間タイル29と接着剤28との接着力、また、中間タイル29とその上に塗布される接着される接着剤30との接着を良好に保つために、図18に示すように、中間タイル29の表面又は裏面若しくは両面にタイル裏足45,46又はそれに相当する突起又は窪み(突条、溝状、所定の間隔をあけて格子状に点在する突起又は窪み)を形成してもよい。また、中間タイル29の表面と裏面に裏足45,46を設ける場合、それら裏足32,33の位置を違えてもよいし、補修された状態で中間タイル表面側(補修タイル側)裏足46が補修タイル裏足47間に入るようにしてもよい。
また、以上の説明では、選択タイル10aの左右両側に位置する目地に入れる切溝を傾斜溝としたが、選択タイル10aを囲む4本の切溝のうちの少なくとも一つが傾斜溝であればよい。また、選択タイル10aの上下に形成する切溝21U,21Dも傾斜溝としてもよい。
さらに、以上の説明では、タイル跡27を中間タイル29と接着剤(充填材)で充填するものとしたが、中間タイルを用いることなく、接着剤又はモルタルを充填材として充填してもよい。
さらにまた、以上の説明では、下部アンカーは真っ直ぐなピン又はプレートで形成するものとしたが、これらピン又はアンカーの上端部を中間タイル側に向けて折り曲げてL字形状とし、その折り曲げ部を中間タイルの表面側角部に係合させて、該中間タイルを確実に支持するようにしてもよい。この場合、下部アンカーは、中間タイルを貼り付けた後、中間タイルの周囲に充填された接着剤を介して切溝に挿入する。
そして、以上の説明では、選択タイル10aの下縁に沿った目地に形成する切溝21Dを躯体13に進入させ、そこにアンカー42を配置したが、躯体13に進入させる切溝はそれ以外の上側又は左右の切溝であってもよく、その場合、それらの切溝にピン又はプレートを挿入する。この場合も、浮き領域に適当な間隔をあけてアンカーが配置されることになり、補修後のタイルの垂れ下がりが全体として防止される。
なお、以上の説明では、タイルが芋目地配置されている場合を例にとって説明したが、図19に示すように、破れ目地配置されている場合、縦方向の切溝51L,51Rについては、上述のように一つのタイルを囲む上下左右の目地に切溝を入れるのではなく、左右に隣接する2つのタイル10b、10b(選択タイル)の縦方向中央線に沿ってそれぞれ縦方向の切溝を入れ、左側の選択タイル10bの右半分と右側の選択タイル10bの左半分を外壁から剥ぎ取ってもよい。この場合、水平方向の切溝51U,51Dについては、選択タイル10bの上下に位置する目地に設ける。
W:外壁(タイル外壁)
10:タイル
10a:選択タイル
11:浮きタイル
12:浮き領域
13:建物躯体
14:張付モルタル
15:下地モルタル
16a,16b,16c,16d:浮き
17:小領域
18L,18R:目地
18U,18D:目地
21L,21R:切溝(傾斜溝)
21U,21D:切溝
22:アタッチメント
23:ボルト
24:引き抜き装置
25:引抜力
26:モルタル
26’:残存モルタル
27:タイル跡(空間、ボイド)
28:接着剤(充填材)
29:中間タイル
30:接着剤
31:補修タイル
32:接着剤
33:裏足
41:アンカーホール
42:下部アンカー
43:中央アンカー用貫通孔
44:中央アンカー

Claims (6)

  1. 建物躯体の表面に接着剤でタイルを貼り付けてなるタイル外壁の補修方法であって、
    前記タイル(10)の浮きを確認する確認工程(a)、
    前記浮きが確認されたタイル(11)を含む浮き領域(12)の中で選択された選択タイル(10a)又は該選択タイル(10a)の一部(10b)を囲む一対の縦線(18L,18R)と一対の横線(18U,18D)に沿ってタイル外壁に切溝(21L,21R、21U,21D)を形成する切溝形成工程(b)、
    前記切溝で囲まれた前記選択タイル(10a)及び前記選択タイルの一部(10b)を剥ぎ取る工程(c)、
    前記選択タイル(10a)及び前記選択タイルの一部(10b)を剥ぎ取った跡に形成された空隙(27)に接着剤(28,30,32)を介して補修タイル(31)を充填し固定するタイル充填工程(d)を有し、
    前記切溝形成工程(b)において、前記一対の縦線(18L,18R)と前記一対の横線(18U,18D)に沿って形成する4つの切溝(21L,21R、21U,21D)の少なくとも一つは、前記タイル外壁から前記建物躯体に向かうにしたがって前記空隙(27)の中心に近づくように傾斜させた傾斜溝とすることを特徴とするタイル外壁の補修方法。
  2. 少なくとも前記一対の縦線に沿って形成する2つの切溝(21L,21R)を前記傾斜溝とすることを特徴とする請求項1のタイル外壁の補修方法。
  3. 前記少なくとも一つの切溝の底部を前記建物躯体(13)に進入させ、
    前記建物躯体(13)に侵入した切溝(21C)に第1のアンカー(42)を差し込むことを特徴とする請求項1又は2のいずれかのタイル外壁の補修方法。
  4. 前記補修タイル(31)の下に中間タイル(29)を配置することを特徴とする請求項1〜3のいずれかのタイル外壁の補修方法。
  5. 前記中間タイル(29)を前記第1のアンカー(42)によって支持することを特徴とする請求項4のタイル外壁の補修方法。
  6. 前記中間タイル(29)は中央にその表面と裏面を貫通する貫通孔(43)を有し、
    前記選択タイル(10a)を剥ぎ取った後に露出した躯体表面にアンカーホール(41)を形成し、
    前記貫通孔(43)を介して前記アンカーホール(41)に第2のアンカー(44)を配置することを特徴とする請求項4又は5のタイル外壁の補修方法。
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