JP5062974B2 - イオン処理装置および方法 - Google Patents
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Description
本発明は、このような問題点を鑑み、特定の構造を有する多孔性成形体からなる吸着剤を使用することにより、リンを低濃度まで除去可能とし、厄介な凝集沈殿物の発生がなく、吸着したリンを再資源化できるイオン処理装置及び方法を提供することを目的とする。
1.少なくとも、多孔性成形体が充填されたイオン吸着手段、および該多孔性成形体と接触した脱着液の冷却手段を含むイオン処理装置であって、
該多孔性成形体が、有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含んでなるフィブリルが三次元網目構造を形成してなり、外表面に開口する連通孔を有する多孔性成形体であり、フィブリル間の隙間が連通孔を形成し、かつ前記フィブリルが内部に空隙を有していて、かつ、該空隙の少なくとも一部はフィブリルの表面で開孔しており、該フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に無機イオン吸着体が担持されていることを特徴とするイオン処理装置。
3.前記有機高分子樹脂が、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルホン(PS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選ばれる一種以上を含んでなる多孔性成形体である1.又は2.に記載のイオン処理装置。
4.前記無機イオン吸着体が、下記式(I)で表される金属酸化物を少なくとも一種含有している1.〜3.のいずれか一項に記載のイオン処理装置。
MNxOn・mH2O (I)
(式中、xは0〜3、nは1〜4、mは0〜6であり、MおよびNは、Ti、Zr、Sn、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Si、Cr、Co、Ga、Fe、Mn、Ni、V、Ge、Nb及びTaからなる群から選ばれる金属元素であり、互いに異なる。)
水和酸化チタン、水和酸化ジルコニウム、水和酸化スズ、水和酸化セリウム、水和酸化ランタン、水和酸化イットリウム;チタン、ジルコニウム、スズ、セリウム、ランタン、イットリウムからなる群から選ばれる金属元素と、アルミニウム、珪素、鉄からなる群から選ばれる金属元素との複合金属酸化物、および活性アルミナからなる群から選ばれる金属酸化物である4.に記載のイオン処理装置。
7.前記吸着処理されるイオンが、リン酸イオン、フッ化物イオン、ヒ酸イオン、亜ヒ酸イオン、ホウ酸イオン、ヨウ素イオン、塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、及び有機酸のイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、カドミウムイオン、鉛イオン、クロムイオン、コバルトイオン、ストロンチウムイオン、及びセシウムイオンよりなる冷却によって液体から晶析してくるイオン群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする6.に記載のイオン処理方法。
本発明の多孔性成形体について以下に詳細に説明する。
まず、本発明の成形体の構造について説明する。
本発明の成形体は、連通孔を有し多孔質な構造を有する。さらに、外表面にはスキン層が無く、表面の開口性に優れる。さらに、連通孔を形成するフィブリル内部にも空隙を有し、その空隙の少なくとも一部はフィブリル表面で開孔している。
さらに、無機イオン吸着体粉末は、フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に担持されている様子が観察される。フィブリルの太さは、O.01μm〜50μmが好ましい。フィブリル表面の開孔径は、O.001μm〜5μmが好ましい。
Pr=(W1-WO)/(W1-WO+W0/ρ)×100
含水時の重量は、十分に水に濡れた成形体を、乾いたろ紙上に拡げ、余分な水分をとってから含水時の重量を測定すればよい。乾燥は、水分をとばすために、室温下で真空乾燥を行えばよい。成形体の比重は、比重瓶を用いて簡便に測定することができる。
好ましい空孔率Pr(%)の範囲は、50%〜90%であり、特に60〜85%が好ましい。50%未満ではリン等の吸着対象物質と吸着基質である無機イオン吸着体との接触頻度が不十分となりやすい。90%を超えると、成形体の強度が不足しやすい。
担持量(%)=Wa/Wd×100
ここで、灰分は本発明の成形体を800℃で2時間焼成したときの残分をいう。
好ましい担持量の範囲は、30〜95%であり、さらに好ましくは、40〜90%であり、特に65〜90%が好ましい。30%未満だと、リン等の吸着対象物質と吸着基質である無機イオン吸着体との接触頻度が不十分となりやすく、95%を超えると、成形体の強度が不足しやすい。
本発明の方法によると、従来技術の添着法とは異なり、吸着基質と有機高分子樹脂を練り込んで成形するため、担持量を多く保ちかつ強度の強い成形体を得ることができる。
比表面積(m2/cm3)=SBET×かさ比重(g/cm3)
ここで、S BET は、成形体の単位重量あたりの比表面積(m2/g)である。
比表面積の測定方法は、成形体を室温で真空乾燥した後、BET法を用いて測定する。
かさ比重の測定方法は、粒子状、円柱状、中空円柱状等の形状が短いものは、湿潤状態の成形体を、メスシリンダー等を用いて、みかけの体積を測定する。その後、室温で真空乾燥して重量を求める。
好ましい比表面積の範囲は、5m2/cm3〜500m2/cm3である。5m2/cm3未満だと、吸着基質の担持量及び吸着性能が不十分となりやすい500m2/cm3を超えると、成形体の強度が不足しやすい。
一般的に、吸着基質である無機イオン吸着体の吸着性能(吸着容量)は、比表面積に比例する場合が多い。単位体積あたりの表面積が小さいと、カラムやタンクに充填したときの吸着容量、吸着性能が小さく、高速処理を達成しにくい。
本発明の多孔性成形体の製造方法は、有機高分子樹脂とその良溶媒と無機イオン吸着体と水溶性高分子とを混合した後、成形し、貧溶媒中で凝固させることを特徴とする。
含有量(%)=Ws/Wd ×100
水溶性高分子の含有量は、水溶性高分子の種類、分子量に左右されるが、0.001〜10%が好ましく、より好ましくは、0.01〜1%である。0.001%未満では、成形体の表面を開口させるのに効果が必ずしも十分でなく、10%を超えると相対的にポリマー濃度が薄くなり、強度が十分でない場合がある。
さらに、フィブリル中に残存して抽出されなかった水溶性高分子がある場合は、本発明の多孔性成形体を、有機高分子樹脂と水溶性高分子の両方の良溶媒で溶解後、無機イオン吸着体をろ過して除いた液を作成し、次いで、該液体をGPC等を用いて分析して水溶性高分子の含有量を定量することができる。
本発明で用いられる無機イオン吸着体とは、イオン吸着現象を示す無機物質をいう。
例えば、天然物ではゼオライトやモンモリロナイト、各種の鉱物性物質があり、合成物系では金属酸化物等がある。前者はアルミノケイ酸塩で単一層格子をもつカオリン鉱物、2層格子構造の白雲母、海緑石、鹿沼土、パイロフィライト、タルク、3次元骨組み構造の長石、ゼオライトなどで代表される。後者は、金属酸化物、多価金属の塩、不溶性のヘテロポリ酸塩、不溶性ヘキサシアノ鉄酸塩などが主要なものである。
M2+ (1−X)M3+ x(OH-)(2+x-y)(An−)y/n (II)
〔式中、M2+はMg2+、Ni2+、Zn2+、Fe2+、Ca 2+及びCu2+からなる群から選
ばれる少なくとも1種の二価の金属イオンを示し、M3+はAl3+及びFe3+からなる群から選ばれる少なくとも1種の三価の金属イオンを示し、An-はn価のアニオンを示し、0.1≦x≦ 0.5であり、0.1≦y≦0.5であり、nは1または2である。〕
MNxOn・mH2O (I)
(式中、xは0〜3、nは1〜4、mは0〜6であり、MおよびNは、Ti、Zr、Sn、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Si、Cr、Co、Ga、Fe、Mn、Ni、V、Ge、Nb及びTaからなる群から選ばれる金属元素であり、互いに異なる。)
本発明でいう金属酸化物とは、式(I)中のmが0で表せる未水和(未含水)の金属酸化物であっても良いし、mが0以外の数値で表せる水和(含水)金属酸化物であっても良い。
また、硫酸アルミニウム添着活性アルミナ、硫酸アルミニウム添着活性炭等も好ましい。
本発明で用いる無機イオン吸着体は、式(I)で表せる金属酸化物を複数種含有していても良い。各金属酸化物の分布状態については特に制限はないが、各金属酸化物の有する特性を有効に活用し、よりコストパフォーマンスに優れる無機イオン吸着体を得るためには、特定の金属酸化物の廻りを、他の金属酸化物が覆った混合体構造にすることが好ましい。このような構造としては、四三酸化鉄の廻りを水和酸化ジルコニウムが覆った構造が例示できる。
上述の例においては、水和酸化ジルコニウムはリン、ホウ素、フッ素、ヒ素等のイオンに対する吸着性能や繰り返し使用に対する耐久性能は高いが、高価である。一方、四三酸化鉄は、水和酸化ジルコニウムに比較してリン、ホウ素、フッ素、ヒ素等のイオンに対する吸着性能や繰り返し使用に対する耐久性能は低いが、非常に安価である。
前述の製造法において用いられる鉄の塩としては、硫酸第一鉄(FeSO4)、硝酸第一鉄(Fe(NO3)2)、塩化第一鉄(FeC12)等の第一鉄塩が挙げられる。これらもFeSO4・7H2Oなどの含水塩であってもよい。これらの第一鉄塩は通常、固形物で加えられるが、溶液状で加えてもよい。
酸化性ガスを吹き込む場合、その時間は、酸化性ガスの種類などによって異なるが、通常約1〜10時間程度である。酸化剤としては、たとえば過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムなどが用いられる。
本発明の無機イオン吸着体は、可能な限り微粒子であることが好ましく、その粒子径はO.01μm〜100μm、好ましくは、O.01μm〜50μm、さらに好ましくはO.01μm〜30μmの範囲である。
ここでいう粒子径とは、一次粒子と、一次粒子が凝集した二次粒子の両方又は混合物の粒子径をいう。本発明の無機イオン吸着体の粒子径は、レーザー光による回折の散乱光強度の角度分布から求めた球相当径のモード径(最頻度粒子径)である。
本発明のイオン処理方法は、少なくとも、多孔性成形体が充填されたイオン吸着工程、および該多孔性成形体と接触した脱着液の冷却工程を含むイオン処理方法であって、該多孔性成形体が有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含んでなる、外表面に開口する連通孔を有する多孔性成形体であり、連通孔を形成するフィブリルの内部に空隙を有し、かつ、該空隙の少なくとも一部はフィブリルの表面で開孔しており、該フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に無機イオン吸着体が担持されていることを特徴とするイオン処理方法である。
本発明の多孔性成形体が吸着の対象とするイオンは、陰イオン、陽イオンと特に限定されない。例えば、陰イオンでは、リン(リン酸イオン)、フッ素(フッ化物イオン)、ヒ素(ヒ酸イオン、亜ヒ酸イオン)、ホウ素(ホウ酸イオン)、ヨウ素イオン、塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、及び酢酸等の各種有機酸のイオンが挙げられる。また、陽イオンでは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、カドミウム、鉛、クロム、コバルト、ストロンチウム、及びセシウム等が挙げられる。
特に、無機イオン吸着体は、ある特定のイオンに対して特異的な選択性を示す特徴を有することから、下水や産業排水のように雑多なイオンが共存する中から、リンなどのイオンを除去するのに適している。
これらの容器には、容器から多孔性成形体が流出しないような固液分離機構、例えば目皿やメッシュ等を備えていることが好ましい。
多孔性成形体と処理対象水との接触方式についても、多孔性成形体と処理対象の水が接触できるのであれば、特に制限はない。多孔性成形体の充填層を固定床とする場合、円柱状、多角柱状、箱型の多孔性成形体の充填層に上昇流または下降流で通水する方式、または、円筒状の多孔性成形体の充填層に円周方向外側から内筒へ通水する外圧方式、その逆方向に通水する内圧方式、箱型の充填層に水平方向に通水する方式等が例示できる。また、多孔性成形体の充填層を流動床方式としても良い。
例えば、液体中のリンを吸着対象とし、水和酸化ジルコニウムまたは四三酸化鉄を水和酸化ジルコニウムで覆った構造の無機イオン吸着体を用いた場合のpH調整範囲は、pH1.5〜10の範囲であり、さらに好ましくは、pH2〜7である。
また、液体中のホウ素を吸着対象とし、水和酸化セリウムまたは四三酸化鉄を水和酸化セリウムで覆った構造の無機イオン吸着体を用いた場合のpH調整範囲は、pH3〜10の範囲であり、さらに好ましくは、pH5〜8である。
また、液体中のヒ素を吸着対象とし、水和酸化セリウムまたは四三酸化鉄を水和酸化セリウムで覆った構造の無機イオン吸着体を用いた場合のpH調整範囲は、pH3〜12の範囲であり、さらに好ましくは、pH5〜9である。
吸着能力が低下したイオン吸着手段は、逆洗、脱着、活性化等の工程を順次行い、次の吸着工程の順番がくるまで待機している。また、脱着の頻度が少ない場合は、イオン吸着手段を水処理装置から取り外して、新たに吸着能力を持つイオン吸着手段に取り替えることもできる。
脱着液の種類は、特に制限はないが、通常、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化アンモニウム等の無機アルカリ、及び有機アミン類などが用いられる。
なかでも、廃水中のリンイオンを吸着した多孔性成形体を、水酸化ナトリウムで脱着した場合、脱着液中に含まれるリン酸ナトリウムは、溶解度が比較的小さいという点で、脱着液には水酸化ナトリウムを用いることが特に好ましい。
冷却手段および方法は、特に限定されるものではないが、通常のチラーや熱交換機等を用いて冷却することができる。
また、冷却によるリン酸ナトリウムの晶析を効果的に行うために、新たに水酸化ナトリウムを加えて、脱着液中の水酸化ナトリウム濃度を上げることもできる。
特に、設置面積が少なくて、清澄なろ過水を得ることができる点で膜分離法が好ましい。
膜分離法としては、特に限定されないが、限外ろ過膜(UF)、精密ろ過膜(MF)、透析膜等が挙げられる。膜の形態も、平膜、中空糸、プリーツ、チューブ状等、限定されない。好ましい膜分離法としては、ろ過スピードとろ過精度の点で、限外ろ過膜(UF)、精密ろ過膜(MF)等が好ましい。
酸性水溶液は、特に限定されないが、硫酸、塩酸等の水溶液が用いられる。濃度は、O.001〜10wt%程度であればよい。O.001wt%より薄いと、活性化終了までに大量の水ボリュームが必要になり、10wt%より濃いと、酸性水溶液の取り扱い上の危険性等の点で問題が生じるおそれがある。
活性化方法においてさらに好ましい方法は、カラムとpH調整槽の間で活性液を循環させて行うことである。
この構成をとることにより、脱着操作でアルカリ側にシフトしたカラム中の多孔性成形体のpHを、無機イオン吸着体の耐酸性を考慮して、ゆるやかに所定のpHに戻すことができる。
例えば、酸化鉄はpH3以下では酸による溶解が著しいことが知られている。このような酸化鉄を多孔性成形体に担持した場合、従来の活性化方法は、先の鉄の溶解という問題があるため、pH3以上という薄い酸で処理するしか方法がなかった。しかし、この方法では、大量の水ボリュームが必要となるため、経済的に許されるものではなかった。
この時の通液速度は、通常SV1〜200(hr-1)の範囲で選ばれる。さらに好ましくは、SV1O〜100の範囲である。SV1より低いと、活性化時間が長時間になり非効率になる傾向があり、SV200より大きいと、大きなポンプ動カが必要であり非効率になる傾向がある。
本発明の多孔性成形体は、耐薬品性、強度に優れているため、この再生処理を数十回から数百回以上繰り返してもイオンの吸着性能はほとんど低下しない。
[製造例1]無機イオン吸着体の製造
オキシ塩化ジルコニウム(ZrOC12)のO.15モル水溶液を1リットル調製した。この溶液中にはジルコニウムとして13.7gの金属イオンが含まれていた。この水溶液中に硫酸第一鉄結晶(FeSO4・7H2O)84.Ogを添加し、撹幹しながら溶解した。この量は鉄イオンとしてO.3モルに相当する(F/T(モル比) 0.67)。つぎにこの水溶液に15重量%の水酸化ナトリウム溶液を撹拌しながら液のpHが9になるまで滴下すると青緑色の沈澱が生じた。
エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH、日本合成化学工業(株)、ソアノールE3803(商品名))10g、ポリビニルピロリドン(PVP、BASFジャパン(株)、Luvitec K30 Powder(商品名))10g、ジメチルスルホキシド(DMSO、関東化学(株))80gを、セパラフラスコ中にて、60℃に加温して溶解し、均一なポリマー溶液を得た。このポリマー溶液100gに対し、製造例1で作った無機イオン吸着体粉末92gを加え、よく混合してスラリーを得た。
本発明のイオン処理装置の実施例を図1に示す。
図1において、まず吸着工程について説明する。
食品工場の排水処理設備において、活性汚泥、沈降処理を行った処理水を、原水供給路1を介して原水貯槽2に一時貯留される。
原水の水質は、濁度は最高20、最低3、平均5.1で推移した。リン酸イオン濃度15mg-P/リットルでほぼ安定して推移した。
次に流路3及びポンプ4を用いて膜分離装置5(旭化成ケミカルズ(株)杜製、精密ろ過膜、公称孔径O.1μm)でろ過して、pH調整槽8に貯留した。
膜ろ過後の水質は、濁度<0.1と濁質が除去され、リン酸イオン濃度に変化はなかった。
pH調整された原水は、配管10、ポンプ11を介してカラム12に送液した。カラム12には、製造例2の多孔性成形体を2L充填して、20リットル/hr(SV1O)で通水した。
リン酸イオンが吸着され浄化された排水は、流路13を介して、処理水槽14に一時貯留され、pH調整剤添加機構15により、水酸化ナトリウムを用いて中和後に放流した。
処理水のリン酸イオン濃度はO.1mg-P/リットル以下であった。
処理水のリン酸イオン濃度が、0.5mg-P/リットルを超えた時点で、弁c及び弁hを閉じて、原水の送液を止めた。次に、弁g及び弁bを開け、処理水槽14の処理水を流路16、ポンプ17を介して、カラム12の下方から、60リットル/hr(SV30)で送液して、カラム12内の多孔性成形体を展開して洗浄した。洗浄液は、流路18を介してpH調整槽8に戻した。
脱着液槽19に貯槽した7wt%の水酸化ナトリウム水溶液を、流路20、ポンプ21を介して、2リットル/hr(SV1)で、カラム12に送液して、多孔性成形体と接触して、吸着したリン酸イオンを水酸化ナトリウム水溶液中に溶離して、流路22を介して、晶析槽23に貯留した。
この時の、晶析槽23中のリン酸イオン濃度は、7000mg-P/リットルであった。
晶析槽23に貯留されたリン酸ナトリウム水溶液を、冷却装置27を用いて8℃に冷却して、リン酸ナトリウムの結晶生成させる晶析反応を行った。
晶析反応終了後、晶析したリン酸ナトリウムを含む白濁した液を、流路28、ポンプ29を介して膜分離装置30(旭化成ケミカルズ(株)杜製、限外ろ過膜、公称分画分子量6、000)に送液して、固液分離した。固液分離後の水酸化ナトリウム水溶液は、リン酸イオン濃度1260mg-P/リツトルであった。
なお、スラリー排出に伴う水酸化ナトリウム水溶液の減少を補うため、晶析薬剤槽24に貯留した水酸化ナトリウム水溶液を、流路25、ポンプ26を用いて晶析槽23に注入した。
回収したリン酸ナトリウムスラリーを乾燥すると、白色のリン酸ナトリウム結晶が得られた。これは、貴重なリン資源として、清かん剤,綿や羊毛の洗剤として,また皮革工業や工業用水処理に再資源化することができる。
pH調整槽33に硫酸でpH3に調整した活性化溶液を10リットル用意した。流路34、ポンプ35を介してカラム12に120リットル/hr(SV60)で送液して、カラム内の多孔性成形体と接触して流路36を介してpH調整槽33に循環させた。活性化液は、カラム12で多孔性成形体と接触してアルカリ性となるので、pH調整槽33内に設置したpHコントローラー37と連動したポンプ40を用いて、活性化液貯留槽38に貯留した50wt%の硫酸水溶液を、流路39を介して、pH貯留槽33に送液してpH3〜5の範囲でコントロールした。この操作を9時間繰り返して、カラム12内のpHを5に安定化した。pHコントロールの精度を高めるために、撹拌機41を用いて、活性化液を撹拌した。
このように、本発明のイオン処理装置及び方法は、リンを低濃度に処理可能で、厄介な凝集沈殿物の発生がなく、また、吸着したリンを再資源化することができることがわかった。
2:原水貯槽
3:流路
4:ポンプ
5:膜分離装置
6:流路
7:循環路
8:pH調整槽
9:pH調整剤添加装置
10:流路
11:ポンプ
12:カラム
13:流路
14:処理水槽
15:pH調整剤添加機構
16:流路
17:ポンプ
18:流路
19:脱着液槽
20:流路
21:ポンプ
22:流路
23:晶析槽
24:晶析薬剤槽
25:流路
26:ポンプ
27:冷却装置
28:流路
29:ポンプ
30:膜分離装置
31:流路
32:流路
33:pH調整槽
34:流路
35ポンプ
36:流路
37:pHコントローラー
38:活性化液貯槽
39:流路
40:ポンプ
41:撹拌機
a、b、c、d、e、f、g、h、i:弁
Claims (8)
- 少なくとも、多孔性成形体が充填されたイオン吸着手段、および該多孔性成形体と接触した脱着液の冷却手段を含むイオン処理装置であって、
該多孔性成形体が、有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含んでなるフィブリルが三次元網目構造を形成してなり、外表面に開口する連通孔を有する多孔性成形体であり、フィブリル間の隙間が連通孔を形成し、かつ前記フィブリルが内部に空隙を有していて、かつ、該空隙の少なくとも一部はフィブリルの表面で開孔しており、該フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に無機イオン吸着体が担持されていることを特徴とするイオン処理装置。 - 前記連通孔が成形体表面付近に最大孔径層を有する請求項1記載のイオン処理装置。
- 前記有機高分子樹脂が、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルホン(PS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選ばれる一種以上を含んでなる多孔性成形体である請求項1又は2に記載のイオン処理装置。
- 前記無機イオン吸着体が、下記式(I)で表される金属酸化物を少なくとも一種含有している請求項1〜3のいずれか一項に記載のイオン処理装置。
MNxOn・mH2O (I)
(式中、xは0〜3、nは1〜4、mは0〜6であり、MおよびNは、Ti、Zr、Sn、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Si、Cr、Co、Ga、Fe、Mn、Ni、V、Ge、Nb及びTaからなる群から選ばれる金属元素であり、互いに異なる。) - 前記無機イオン吸着体に含有される式(I)で表される金属酸化物が、
水和酸化チタン、水和酸化ジルコニウム、水和酸化スズ、水和酸化セリウム、水和酸化ランタン、水和酸化イットリウム;チタン、ジルコニウム、スズ、セリウム、ランタン、イットリウムからなる群から選ばれる金属元素と、アルミニウム、珪素、鉄からなる群から選ばれる金属元素との複合金属酸化物、および活性アルミナからなる群から選ばれる金属酸化物である請求項4に記載のイオン処理装置。 - 少なくとも、多孔性成形体が充填されたイオン吸着工程、および該多孔性成形体と接触した脱着液の冷却工程を含むイオン処理方法であって、吸着処理されるイオンが、脱着液を冷却することによって晶析してくるイオンであり、該多孔性成形体が、有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含んでなるフィブリルが三次元網目構造を形成してなり、外表面に開口する連通孔を有する多孔性成形体であり、フィブリル間の隙間が連通孔を形成し、かつ前記フィブリルが内部に空隙を有していて、かつ、該空隙の少なくとも一部はフィブリルの表面で開孔しており、該フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に無機イオン吸着体が担持されていることを特徴とするイオン処理方法。
- 前記吸着処理されるイオンが、リン酸イオン、フッ化物イオン、ヒ酸イオン、亜ヒ酸イオン、ホウ酸イオン、ヨウ素イオン、塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、及び有機酸のイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、カドミウムイオン、鉛イオン、クロムイオン、コバルトイオン、ストロンチウムイオン、及びセシウムイオンよりなる冷却によって液体から晶析してくるイオン群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項6に記載のイオン処理方法。
- 脱着液の冷却温度を、5〜10℃の範囲に制御することを特徴とする請求項6又は7に記載のイオン処理方法。
Priority Applications (7)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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