JP4444457B2 - リン回収方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、下水、し尿、産業排水などのリン含有有機性排水を生物学的に処理することにより得られた汚泥、または前記リン含有有機性排水からリンを回収する方法に関し、特に、リンを効率よく回収することができる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、閉鎖系水域などの富栄養化防止を目的として、富栄養化の原因物質である窒素およびリンの環境基準が制定され、下水などの有機性排水の処理方法は、窒素およびリンを除去する高度処理法へと転換されつつある。
高度処理法では、排水中の窒素は生物の脱窒作用により窒素ガスとして大気中に放出されることにより除去されるが、リンは生物への取り込みなどにより除去されるため、生成する汚泥は高濃度のリンを含むものとなる。
このようなリン含有汚泥では、濃縮、脱水等の工程においてリンが汚泥から溶出することがあるため、この工程からの排水を再処理することが必要となる問題がある。
またリン含有量の高い汚泥を焼却、溶融処理した場合、リンが排ガス中に揮散して、排ガス処理装置内壁に付着し腐蝕や閉塞の原因となることがあった。
さらには、汚泥の焼却灰をセメント原料として再利用する場合、リン含有量が高い汚泥を用いると、硬化性などの点でセメント原料としての特性に劣るものとなるなどの不都合が生じることがあった。
このように、汚泥中のリンは、汚泥の処理や再利用に悪影響を及ぼすことから、除去することが望まれている。
一方、国内において使用されるリン原料は、全量を輸入に依存しているのが現状であり、リン含有有機性排水や汚泥からの安定的なリン回収が検討されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
汚泥からリンを除去回収する方法としては、特開平8−238499号公報に記載された方法がある。この公報に記載された方法は、生物学的にリンを取り込んだ汚泥を嫌気条件下におくことによってリンを汚泥から溶出させ、溶出したリンを金属塩などとして回収する方法である。
しかしながら、上記従来方法では、リンの回収率が低い問題がある。
また、特開平8−24872号公報、特開平9−299977号公報には、リン含有汚泥からアルカリ処理によりリンを溶出させ、金属塩などとして回収する方法が記載されている。
しかしながらこの方法では、アルカリ処理により汚泥の脱水性が悪化するため、溶出したリンの回収が難しくなり、しかも、回収したリンに不純物が混入しやすくなる問題がある。
また特開平7−251141号公報には、汚泥焼却灰から酸抽出および溶媒抽出によってリンを回収する方法が開示されている。
しかしながら、この方法では、抽出操作が煩雑である上に、リン回収率が低い問題がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、不純物含有量が低いリンを効率よく、かつ容易に回収することができる方法を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明のリン回収方法は、リン含有有機性排水を生物学的に処理する水処理工程により得られた汚泥、または前記リン含有有機性排水に、酸添加処理と加熱処理のうち少なくともいずれかを行うことによりリンを可溶化する可溶化工程と、可溶化工程により得られた可溶化処理物から固形物を分離する固液分離工程と、固液分離工程により固形物を分離した分離液中のリンを吸着剤に吸着させる吸着工程と、吸着剤に吸着したリンを吸着剤から脱着させる脱着工程と、脱着工程により得られたリン脱着液中のリンを晶析により分離回収する晶析工程とを有することを特徴とするリン回収方法である。
この方法によれば、可溶化工程において、被処理物中に有機性リン、ポリリン酸、金属塩などの形態で存在するリンの加水分解や解離を促進して溶出しやすい状態とし、リン回収率を高めることができる。
また可溶化工程において被処理物中の有機物などの不純物を分解し、しかも吸着工程においてリンを吸着剤に選択的に吸着させることができるため、純度の高いリンを容易に回収することができる。
従って、工業薬品や肥料の原料として資源化するのに好適な高純度のリンを、効率よく、かつ容易に回収することができる。
【0005】
可溶化工程において加熱処理を行うにあたっては、温度条件を100℃以上とするのが好ましい。
また吸着工程において用いる吸着剤としては、リン吸着効率の点からジルコニウムフェライト系吸着剤が好ましい。
【0006】
また本発明では、吸着工程においてリンが吸着除去された処理液を、水処理工程に返送する方法を採用することができる。この方法を採ることによって、可溶化工程において可溶化した有機物を再度生物学的に処理し、その一部を無機化することができる。このため、余剰汚泥発生量を抑えることができる。
【0007】
また晶析工程においては、リン脱着液からリンを回収するにあたり、リン脱着液を加温し水分の一部を蒸発させることによって、リン脱着液中のリンを析出させて回収する方法を採ることができる。
またリン脱着液からリンを回収するにあたっては、リン脱着液にアルカリ金属の水酸化物溶液を添加し組成を調整するか、またはアルカリ土類金属の可溶性化合物溶液を添加することによってリンを不溶化して回収する方法を採ることもできる。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のリン回収方法の一実施形態を実施するために好適に用いられるリン回収装置を示すもので、ここに示す装置は、被処理物中のリンを可溶化処理する可溶化反応器1と、可溶化反応器1を経た可溶化処理物から固形物を分離する脱水機2と、固形物を分離した分離液中のリンを吸着剤に吸着させる吸着塔3と、吸着剤に吸着したリンを吸着剤から脱着させる吸着剤再生剤を吸着塔3に導入する再生剤導入経路4と、吸着剤から脱着したリンを含むリン脱着液中のリンを晶析により回収する晶析分離装置5と、可溶化反応器1内に酸を添加する酸添加経路6とを備えている。また符号7は、有機性排水を生物学的に処理する生物処理槽を示す。
【0009】
可溶化反応器1としては、内部の圧力を常圧を越える値に設定することができる耐圧性反応器を用いるのが好ましい。
脱水機2としては、スクリューデカンタなどの汎用の脱水機を用いることができる。
【0010】
吸着塔3としては、リンを吸着する吸着剤を充填した充填層を有するものが用いられる。この吸着剤としては、リン吸着効率の点から、アルミナ、水和酸化金属(例えば水和酸化ジルコニウム)を用いるのが好適である。
なかでも特に、リンの吸着効率の点から水和酸化ジルコニウムからなるものが好ましく、特にジルコニウムフェライト系材料からなるものを使用するのが好ましい。このジルコニウムフェライト系吸着剤として好適な市販品としては、武田薬品工業社製セブントールPを挙げることができる。
【0011】
以下、図1に示すリン回収装置を用いた場合を例として、本実施形態のリン回収方法を図2を参照して詳しく説明する。
本実施形態のリン回収方法では、下水、し尿、産業排水などのリン含有有機性排水を、生物処理槽7において生物学的に処理する水処理工程により得られた汚泥、または上記リン含有有機性排水を、処理対象である被処理物とすることができる。
上記排水、汚泥には、リンが金属塩などの形態で含まれる。特に、汚泥中に含まれる細菌などの微生物には、水処理工程においてリンが有機性リン、ポリリン酸、金属塩等の形態で取り込まれるため、汚泥は高濃度のリンを含有するものとなる。
汚泥は、重力沈降、膜濃縮、遠心濃縮などにより、蒸発残留物として10〜50g/l程度となるように濃度を高めたものが好適である。
【0012】
(1) 可溶化工程
汚泥などの被処理物を、可溶化反応器1に導入し、加熱処理を行う。
加熱処理時の温度は高いほど処理時間を短くでき、処理効率を高めることができる。
このため、加熱処理時の温度条件は100℃以上(好ましくは120〜160℃)とするのが好適である。温度条件を100℃以上に設定することによって、加熱処理物中の固形物の脱水性を高め、後述する固液分離工程における固液分離を容易にし、この固液分離工程において凝集剤を不要とすることができる。
加熱処理時間は、例えば5〜120分とすることができる。
【0013】
この加熱処理により、被処理物中の有機性リンやポリリン酸は加水分解されて可溶化し、液相に溶出する。また金属塩の形態で被処理物中に存在するリンは、高温下において解離することにより可溶化し溶出する。
さらには、加熱処理により被処理物中の微生物の大部分を死滅させるとともに、細胞壁などの外殻構造を脆弱化することができ、微生物体内に取り込まれたリンを溶出しやすくすることができる。
また被処理物中の固形の有機物の一部を分解し低分子化することで可溶化し、固形物を減量化することができる。また固形物の脱水性に悪影響を及ぼす高分子化合物を分解し、固形物の脱水性を高めることができる。また有機物の一部を無機化することができる。
以下、この可溶化反応器1において被処理物中のリンを可溶化して溶出させる工程を可溶化工程(図2に符号st1で示す)と呼ぶ。
【0014】
この可溶化工程では、酸添加経路6を用いて可溶化反応器1内に酸を添加するのが好ましい。この酸としては、硫酸、塩酸、硝酸などを用いることができる。なかでも特に、薬剤コストの点から硫酸が好ましい。
酸の添加量は、可溶化反応器1内のpHが3以下(好ましくは2以下)となるように定めるのが好ましい。
このpHを上記範囲とすることによって、被処理物中の有機性リンやポリリン酸の加水分解を促進するとともに、金属塩の形態で存在するリンの解離度を高め、リン溶出を促進することができる。また微生物の外殻構造をさらに脆弱化し微生物体内からのリンの溶出量を高めることができる。
また被処理物中の有機物分解を促し、汚泥を可溶化しやすくするとともに、固形物の脱水性を更に改善することができる。
なお、可溶化工程では、加熱処理を行わず、常温下で酸の添加のみを行う方法を採用することもできる。この場合にも上記リン溶出促進等の効果を得ることができる。
【0015】
(2) 固液分離工程
次いで、この可溶化工程により得られた可溶化処理物を、脱水機2に導入する。
脱水機2においては、可溶化処理物中の固形物をろ過や遠心分離により分離し、可溶化されたリンを含む分離液を得る。
分離された固形物は、リン溶出によりリン含有量が低くなっているため、焼却時においてリン揮散などの汚泥処理時の問題を起こすことがない。
以下、この脱水機2において可溶化処理物から固形物を分離する工程を固液分離工程(図2に符号st2で示す)と呼ぶ。
【0016】
(3) 吸着工程
次いで、固液分離工程により固形物を分離した分離液を、吸着塔3に導入し、ジルコニウムフェライト系吸着剤などの吸着剤に接触させる。
これによって、分離液中のリンが吸着剤に吸着される。例えば吸着剤としてジルコニウムフェライト系のものを用いる場合には、吸着剤表面の水酸基に分離液中のリン化合物(リン酸等)が吸着される。この吸着反応は特に酸性条件下において効率よく進行する。
以下、この吸着塔3において分離液中のリンを吸着剤に吸着させる工程を吸着工程(図2に符号st3で示す)と呼ぶ。
吸着工程においてリンが吸着除去され、リン濃度が低下した処理液は、返送経路8を通して生物処理槽7に返送し、上記水処理工程に供するのが好ましい。
【0017】
(4) 脱着工程
次いで、吸着剤に吸着したリンを吸着剤から脱着させる吸着剤再生剤を、再生剤導入経路4を通して吸着塔3に導入する。
この再生剤としては、アルカリ剤を用いるのが好適である。このアルカリ剤としては、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、またはアルカリ土類金属の水酸化物(水酸化カルシウム等)の水溶液を用いるのが好ましい。
吸着剤に吸着したリンは、アルカリ剤である再生剤によって吸着剤から脱着(脱離)する。
以下、この吸着剤に吸着したリンを吸着剤から脱着させる工程を、脱着工程(図2に符号st4で示す)と呼ぶ。
【0018】
(5) 晶析工程
次いで、脱着したリンを含むリン脱着液を、吸着塔3から排出し、晶析分離装置5に導入する。晶析分離装置5においては、リン脱着液を加温し水分の一部を蒸発させ、リン脱着液を濃縮させることによって、リン脱着液中のリンをリン化合物(リン酸塩等)として析出させる方法を採ることができる。
リン脱着液の加温には、可溶化反応器1からの排熱を利用することができる。具体的には、可溶化反応器1の排熱により加熱された水などの熱媒体流体を用いてリン脱着液を加温する方法を採用することができる。排熱利用によって、リン晶析に要するコストを低く抑えることができる。
析出したリン化合物は、沈降分離などにより分離、回収する。
以下、この晶析分離装置5においてリン脱着液中のリンを晶析により回収する工程を晶析工程(図2に符号st5で示す)と呼ぶ。
【0019】
晶析工程によって分離、回収されたリンは、吸着剤に一旦吸着した後、脱着したものであるため、吸着剤に吸着しにくい金属イオンなどの不純物をほとんど含まず、純度の高いものとなる。
回収されたリンは、工業薬品(表面処理剤、分散剤など)や肥料の原料として再利用することができる。
【0020】
本実施形態のリン回収方法では、以下の効果を得ることができる。
(1) 可溶化工程において、被処理物中に有機性リン、ポリリン酸、金属塩などの形態で存在するリンの加水分解や解離を促進して溶出しやすい状態とすることができる。このため、リン回収率を高めることができる。
また可溶化工程において被処理物中の有機物などの不純物を分解し、しかも吸着工程においてリンを吸着剤に選択的に吸着させることができるため、純度の高いリンを容易に回収することができる。
従って、工業薬品や肥料の原料として資源化するのに好適な高純度のリンを、効率よく、かつ容易に回収することができる。
(2) 固液分離工程において分離される固形物のリン含有量を低くすることができ、焼却時のリン揮散などの問題を未然に防ぐことができる。
(3) 可溶化工程において、被処理物中の有機物を分解し可溶化させ、固液分離工程において分離される固形物量を少なくすることができる。このため、廃棄物量を低く抑え、廃棄物処理コストを削減することができる。
(4) 可溶化工程において、脱水性悪化の原因となる高分子有機化合物を分解し、固液分離工程における固形物の脱水性を改善することができる。このため、固液分離工程における凝集剤添加を不要とし、運転コスト(ランニングコスト)を低く抑えることができる。
(5) 吸着工程においてリンが吸着除去された処理液を、生物処理槽7(水処理工程)に返送することによって、可溶化工程において可溶化した有機物を再度生物学的に処理し、その一部を無機化することができる。このため、余剰汚泥発生量を抑えることができる。
【0021】
また本発明では、晶析工程(st5)において、リン脱着液からリンを回収するにあたり、リン脱着液にアルカリ剤を好ましくは過剰に添加することにより、リン化合物(リン酸塩等)として不溶化する方法を採ることもできる。
このアルカリ剤としては、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、またはアルカリ土類金属の可溶性化合物(水酸化カルシウム等)の水溶液を用いる。
アルカリ金属の水酸化物溶液(水酸化ナトリウム水溶液等)を添加することによって、リン脱着液の組成を調整し、リンを、リン酸ナトリウム化合物(リン酸ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム等)、リン酸カリウム化合物(リン酸カリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸2水素カリウム等)などの形態で析出させることができる。
またアルカリ土類金属の可溶性化合物溶液(水酸化カルシウム水溶液等)を添加することによって、リンを、リン酸カルシウム化合物(ヒドロキシアパタイトなど)などの形態で析出させることができる。
リンを分離したリン脱着液は、吸着剤再生剤として再利用することもできるし、リン除去後の処理液のpH調整剤として利用することもできる。
【0022】
アルカリ剤として水酸化ナトリウムを用いる場合には、表面処理剤、分散剤などの工業薬品の原料として好適なリン酸ナトリウム化合物を回収することができる。
アルカリ剤として水酸化カルシウム、水酸化カリウムを用いる場合には、肥料として好適なリン酸カルシウム化合物、リン酸カリウム化合物を回収することができる。
このように、この方法では、回収したリンの利用法に応じてアルカリ剤を適宜選択使用し、目的に応じた形態の回収物を得ることができる。
【0023】
【実施例】
以下、具体例に基づいて本発明のリン回収方法の効果を明確化する。
(1) 可溶化工程
下水処理場の余剰汚泥に硫酸を添加してpHを1〜2に調整し、オートクレーブを用いて120℃、60分間の条件で加熱処理を行った。
(2) 固液分離工程
得られた可溶化処理物中の固形物を、遠心分離機(2000G、5分間)により分離した。
(3) 吸着工程
固形物を分離した分離液を、0.5ml分離液/ml吸着剤・hrの条件で吸着剤に接触させ、分離液中のリンを吸着剤に吸着させた。
吸着剤としては、武田薬品工業社製セブントールP(形状:球状、平均粒径:0.7mm、表面積:約150m2/g、真密度:約2.8g/ml、充填密度:約1.2g/ml)を用いた。
(4) 脱着工程
吸着剤を3倍量の再生剤(7%NaOH水溶液(%:重量%))に浸漬し攪拌することにより、吸着剤に吸着したリンを吸着剤から脱着させる脱着操作を行った。
上記吸着および脱着操作については、▲1▼吸着、脱着操作を一定時間おきに交互に行う交互脱着(脱着操作は吸着剤が破過する前に行う)と、▲2▼吸着剤が破過するまで吸着操作を行った後に脱着操作を行う破過脱着の2つの方法を行った。
(5) 晶析工程
脱着工程により得られたリン脱着液を90℃以上に加温して2倍に濃縮し、室温まで放冷してリン化合物を析出させ、ろ過により回収した(析出物1)。またこの析出物を分離した後のリン脱着液についても再び90℃以上に加温して濃縮することによりリン化合物を析出させ、ろ過により回収した(析出物2)。
【0024】
図3は、吸着工程における分離液中のリンの減少量(%)の経時変化を示すものであり、図4は、吸着剤へのリンの累積吸着量(吸着剤容積100mlあたりのリン吸着量)を示すものである。
【0025】
表1は、▲1▼交互脱着(Run1)および▲2▼破過脱着(Run2)時の試験結果を示すものである。
【0026】
【表1】
【0027】
表1より、吸着剤が破過する前に脱着操作を行う交互脱着では、分離液中の90%以上が吸着され、そのうち約75%が脱着されたことがわかる。また破過脱着では吸着剤が破過するまで吸着操作を行うため吸着効率が低い結果が得られているが、脱着効率は約70%と十分に高い値となることがわかる。
【0028】
表2は、分離液(吸着前)とリン脱着液(Run1)との成分分析結果を示すものである。
【0029】
【表2】
【0030】
表2より、リン以外の成分は吸着剤に吸着しにくく、リンが選択的に吸着されたことがわかる。
なお、Naは再生剤であるNaOH水溶液の成分であり、Zrは吸着剤の成分である。Zrが脱着液中に多量に検出されたのは、脱着時の攪拌などにより破砕した吸着剤の破砕片が脱着液中に混入したためであると考えられる。
【0031】
表3は、晶析工程において得られた析出物の成分分析結果を示すものである。
【0032】
【表3】
【0033】
表3より、晶析工程によって得られた析出物、特に析出物1は、有害な重金属含有量が低く、純度の高いリン化合物であることがわかる。
【0034】
以下、本発明のリン回収方法の一例を用いて下水処理場の濃縮混合生汚泥からリンを回収する際に必要なコストを、従来法(比較例)におけるリン回収コストと比較した結果を示す。
表4は、上述の試験結果に基づいて設定した処理条件を示すものである。
表5は、この処理条件に基づいて算出された実施例および比較例のリン回収コスト試算結果を示すものである。
比較例では、上記濃縮混合生汚泥に高分子系凝集剤を添加し凝集物を分離回収することでリンを回収する方法を採用した。
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
表5より、実施例では、従来法を用いた比較例に比べ、低コストでのリン回収が可能となることがわかる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のリン回収方法は、以下の効果を得ることができる。
(1) 可溶化工程において、被処理物中に有機性リン、ポリリン酸、金属塩などの形態で存在するリンの加水分解や解離を促進して溶出しやすい状態とすることができる。このため、リン回収率を高めることができる。
また可溶化工程において被処理物中の有機物などの不純物を分解し、しかも吸着工程においてリンを吸着剤に選択的に吸着させることができるため、純度の高いリンを容易に回収することができる。
従って、工業薬品や肥料の原料として資源化するのに好適な高純度のリンを、効率よく、かつ容易に回収することができる。
(2) 固液分離工程において分離される固形物のリン含有量を低くすることができ、焼却時のリン揮散などの問題を未然に防ぐことができる。
(3) 可溶化工程において、被処理物中の有機物を分解し可溶化させ、固液分離工程において分離される固形物量を少なくすることができる。このため、廃棄物量を低く抑え、廃棄物処理コストを削減することができる。
(4) 可溶化工程において、脱水性悪化の原因となる高分子有機化合物を分解し、固液分離工程における固形物の脱水性を改善することができる。このため、固液分離工程における凝集剤添加を不要とし、運転コスト(ランニングコスト)を低く抑えることができる。
(5) 吸着工程においてリンが吸着除去された処理液を、水処理工程に返送することによって、可溶化工程において可溶化した有機物を再度生物学的に処理し、その一部を無機化することができる。このため、余剰汚泥発生量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のリン回収方法の一実施形態を実施するために用いられるリン回収装置を示す概略構成図である。
【図2】 本発明のリン回収方法の一実施形態を示すフロー図である。
【図3】 試験結果を示すグラフである。
【図4】 試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1・・・可溶化反応器、2・・・脱水機、3・・・吸着塔、4・・・再生剤導入経路、5・・・晶析分離装置、6・・・酸添加経路、7・・・生物処理槽、8・・・返送経路、st1・・・可溶化工程、st2・・・固液分離工程、st3・・・吸着工程、st4・・・脱着工程、st5・・・晶析工程
Claims (6)
- リン含有有機性排水を生物学的に処理する水処理工程により得られた汚泥、または前記リン含有有機性排水に、酸添加処理と加熱処理のうち少なくともいずれかを行うことによりリンを可溶化する可溶化工程と、
可溶化工程により得られた可溶化処理物から固形物を分離する固液分離工程と、
固液分離工程により固形物を分離した分離液中のリンを吸着剤に吸着させる吸着工程と、
吸着剤に吸着したリンを吸着剤から脱着させる脱着工程と、
脱着工程により得られたリン脱着液中のリンを晶析により分離回収する晶析工程とを有することを特徴とするリン回収方法。 - 可溶化工程において加熱処理を行うにあたり、温度条件を100℃以上とすることを特徴とする請求項1記載のリン回収方法。
- 吸着工程において、吸着剤として、ジルコニウムフェライト系吸着剤を用いることを特徴とする請求項1または2記載のリン回収方法。
- 吸着工程においてリンが吸着除去された処理液を、水処理工程に返送することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載のリン回収方法。
- 晶析工程において、リン脱着液からリンを回収するにあたり、リン脱着液を加温し水分の一部を蒸発させることによって、リン脱着液中のリンを析出させて回収することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項記載のリン回収方法。
- 晶析工程において、リン脱着液からリンを回収するにあたり、リン脱着液にアルカリ金属の水酸化物溶液を添加し組成を調整するか、またはアルカリ土類金属の可溶性化合物溶液を添加することによってリンを不溶化して回収することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項記載のリン回収方法。
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