JP5062971B2 - 水処理装置および水処理方法 - Google Patents
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Description
しかし、各処理法の特性と処理に供する原水中に含有される塩、イオン類の濃度との関係等から、ある種の塩、イオン類が所望するレベルまで除去できない場合がしばしば発生する。
例えば、海水を逆浸透膜装置で処理して得られる処理水(淡水)は、WHO水質ガイドライン値をほぼ満たす水質を有しているが、唯一ホウ素についてはWHOの推奨値(0.5ppm)以下にすることが困難である。
しかし、ホウ素選択性イオン交換樹脂はそのホウ素吸着容量があまり大きくないために、イオン交換装置の規模が大きくなる、イオン交換樹脂の再生頻度や交換頻度が高くなる等の経済性の面で問題がある。
1.脱塩処理手段と、多孔性成形体を吸着剤として用いたイオン吸着処理手段を含む水処理装置であって、該多孔性成形体が、有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含んでなるフィブリルが三次元網目構造を形成してなり、外表面に開口する連通孔を有する多孔性成形体であり、フィブリル間の隙間が連通孔を形成し、かつ前記フィブリルが内部に空隙を有していて、かつ、該空隙の少なくとも一部はフィブリルの表面で開孔しており、該フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に無機イオン吸着体が担持されていることを特徴とする水処理装置。
2.前記連通孔が、成形体表面付近に最大孔径層を有することを特徴とする1.記載の水処理装置。
3.前記多孔性成形体が平均粒径100〜2500μmの球状粒子であることを特徴とすることを特徴とする1.または2.に記載の水処理装置。
4.前記多孔性成形体が、有機高分子樹脂としてエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルホン(PS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選ばれる一種以上を含んでなる多孔性成形体であることを特徴とする1.〜3.のいずれか一項に記載の水処理装置。
MNxOn・mH2O (I)
(式中、xは0〜3、nは1〜4、mは0〜6であり、MおよびNは、Ti、Zr、Sn、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Si、Cr、Co、Ga、Fe、Mn、Ni、V、Ge、Nb及びTaからなる群から選ばれる金属元素であり、互いに異なる。)
(a)水和酸化チタン、水和酸化ジルコニウム、水和酸化スズ、水和酸化セリウム、水和酸化ランタン、および水和酸化イットリウム
(b)チタン、ジルコニウム、スズ、セリウム、ランタン、およびイットリウムからなる群から選ばれる金属元素と、アルミニウム、珪素、および鉄からなる群から選ばれる金属元素との複合金属酸化物
(c)活性アルミナ
8.脱塩処理工程と、多孔性成形体を吸着剤として用いたイオン吸着処理工程をこの順に含む水処理方法であって、該多孔性成形体が、有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含んでなるフィブリルが三次元網目構造を形成してなり、外表面に開口する連通孔を有する多孔性成形体であり、フィブリル間の隙間が連通孔を形成し、かつ前記フィブリルが内部に空隙を有していて、かつ、該空隙の少なくとも一部はフィブリルの表面で開孔しており、該フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に無機イオン吸着体が担持されていることを特徴とする水処理方法。
本発明でいう脱塩処理手段とは、逆浸透膜装置、電気脱イオン装置、蒸留装置、イオン交換樹脂等を用いたイオン交換装置等による従来公知の脱塩処理手段である。この処理手段は、各装置を単独で用いて実施しても良いし、逆浸透膜装置を直列に多段に設ける等同一種類の複数の装置を多段に組み合わせて実施しても良い。また複数の種類の装置を組み合わせて実施しても良い。複数の装置を組み合わせて処理する場合は任意の順番で組み合わせることができる。
本発明の水処理装置を構成するイオン吸着処理に吸着剤として用いる多孔性成形体は、有機高分子樹脂を適当な良溶媒に溶解させ、さらに、該良溶媒に可溶で該有機高分子樹脂に親和性のある水溶性高分子を溶解混合させたポリマー溶液に、吸着基質である無機イオン吸着体粉末を縣濁させ、貧溶媒を凝固浴として成形する方法を採ることにより得られ、連通孔を有した多孔質な構造を有する。また、外表面にはスキン層が無く、表面の開口性に優れる。さらに、連通孔を形成するフィブリル内部にも空隙を有し、その空隙の少なくとも一部はフィブリル表面で開孔している。
好ましい表面開口率の範囲は、10〜90%であり、特に15〜80%が好ましい。10%未満では、吸着対象イオンの成形体内部への拡散速度が遅くなる傾向があり、一方90%を超えると成形体の強度が不足し、カ学的強度に優れた成形体を実現しにくい
本発明で用いる多孔性成形体は、このように吸着基質が担持されている部分も多孔質であるため、吸着基質の微細な吸着サイトがバインダで塞がれるといったことが少なく、吸着基質を有効に利用することができる。
フィブリルの太さは、O.01μm〜50μmが好ましい。
フィブリル表面の開孔径は、O.001μm〜5μmが好ましい。
一般に、ポリマーとポリマーの良溶媒の混合物を貧溶媒の中に浸漬して、溶媒交換によりポリマーのゲル化を行わせて多孔体を形成する方法を湿式相分離法という。これらの過程で良溶媒の比率が減少し、それにつれてミクロ相分離が生じ、ポリマーの小球が形成し、成長し、絡み合い、フィブリルが形成され、フィブリルの隙間が連通孔となる。
さらに、成形体構造の決定(凝固)は、貧溶媒の内部への拡散により、外表面から内部へと順次進行していく。この方法では、成形体の表面にはスキン層と呼ばれる緻密な層が形成されるのが一般的である。
さらに、水溶性高分子は、相分離の過程で一部は貧溶媒側に溶けだしていくが、一部は、有機高分子樹脂の分子鎖と絡みあったまま、フィブリルの中に残る。この残存した水溶性高分子は、無機イオン吸着体である吸着基質とフィブリルの隙間をコーティングして、吸着基質の活性点を塞がない役目をすると考えられる。したがって、本発明で吸着剤として用いる多孔性成形体は、担持した無機イオン吸着体の吸着能力のほぼ全てを使うことができ、効率が高い。そのために、極めて高い吸着性能を有する。
本発明で用いる多孔性成形体は、連通孔が、成形体表面付近に最大孔径層を有することが好ましい。ここで、最大孔径層とは、成形体の表面から内部に至る連通孔の孔径分布中で最大の部分をいう。ボイドと呼ばれる円形又はだ円形(指状)の大きな空隙がある場合には、ボイドが存在する層を最大孔径層という。
表面付近とは、外表面から中心部へ向かって、成形体の割断径の25%まで内側を意味する。
最大孔径及び最大孔径層の位置は、成形体の表面及び割断面を走査型電子顕微鏡で観察して求める。
孔径は、孔が円形の場合はその直径、円形以外の場合は、同一面積を有する円の円相当直径を用いる。
成形体の形態は、粒子状、糸状、シート状、中空糸状、円柱状、中空円柱状等の任意の形態をとることができる。
特に、粒子状で粒度分布がそろったものが得られる点で、下記の回転ノズル法が特に好ましい。回転ノズル法とは、高速で回転する回転容器の側面に設けたノズルから、遠心力で、ポリマー溶液(有機高分子樹脂と、該有機高分子樹脂の良溶媒と、無機イオン吸着体と、水溶性高分子の混合スラリー)を飛散させて液滴を形成させる方法である。
ノズルの径は、0.1mm〜1Ommの範囲が好ましく、0.1mm〜5mmの範囲がより好ましい。O.1mmより小さいと液滴が飛散しにくい傾向があり、10mmを超えると、粒度分布が広くなる傾向がある。
糸状及びシート状成形体は、該当する形状の紡口、ダイスからポリマー溶液を押しだし、貧溶媒中で凝固させる方法を採ることができる。また、中空糸状成形体は、環状オリフィスからなる紡口を用いることで同様に成形できる。円柱状及び中空円柱状成形体は、紡口からポリマー原液を押し出す際、切断しながら貧溶媒中で凝固させてもよいし、糸状に凝固させてから後に切断しても構わない。
Pr=(W1-WO)/(W1-WO+W0/ρ)×100
含水時の重量は、十分に水に濡いた成形体を、乾いたろ紙上に拡げ、余分な水分をとってから含水時の重量を測定すればよい。乾燥は、水分をとばすために、室温下で真空乾燥を行えばよい。成形体の比重は、比重瓶を用いて簡便に測定することができる。
好ましい空孔率Pr(%)の範囲は、50%〜90%であり、特に60〜85%が好ましい。50%未満では吸着対象物質と吸着基質である無機イオン吸着体との接触頻度が不充分となりやすい。90%を超えると、成形体の強度が不足しやすい。
担持量(%)=Wa/Wd×100
ここで、灰分は本発明の成形体を800℃で2時間焼成したときの残分をいう。
好ましい担持量の範囲は、30〜95%であり、さらに好ましくは、40〜90%であり、特に65〜90%が好ましい。30%未満だと、吸着対象イオンと吸着基質である無機イオン吸着体との接触頻度が不十分となりやすく、95%を超えると、成形体の強度が不足しやすい。
本発明に用いる多孔性成形体の製造方法は、従来技術の添着法とは異なり、吸着基質と有機高分子樹脂を練り込んで成形するため、担持量を多く保ちかつ強度の強い成形体を得ることができる。
比表面積(m2/cm3)=S BET×かさ比重(g/cm3)
ここで、S BET は、成形体の単位重量あたりの比表面積(m2/g)である。
比表面積の測定方法は、成形体を室温で真空乾燥した後、BET法を用いて測定する。
かさ比重の測定方法は、粒子状、円柱状、中空円柱状等の形状が短いものは、湿潤状態の成形体を、メスシリンダー等を用いて、みかけの体積を測定する。その後、室温で真空乾燥して重量を求める。
好ましい比表面積の範囲は、5m2/cm3〜500m2/cm3である。5m2/cm3未満だと、吸着基質の担持量及び吸着性能が不十分となりやすく、500m2/cm3を超えると、成形体の強度が不足しやすい。
一般的に、吸着基質である無機イオン吸着体の吸着性能(吸着容量)は、比表面積に比例する場合が多い。単位体積あたりの表面積が小さいと、カラムやタンクに充填したときの吸着容量、吸着性能が小さく、高速処理を達成しにくい。
上述した特定の構造を有する多孔性成形体が、種々のイオンに対して極めて高い吸着性能を有しているために、この多孔性成形体を吸着剤に用いたイオン吸着処理を、脱塩処理と組み合わせて構成される本発明の水処理装置及び水処理方法は、塩、イオン類が充分に除去された水質レベルの極めて高い水を経済的に製造することができる。
また、この多孔性成形体は、アルカリ水溶液と接触することで、吸着した陰イオンを脱離させ、次いでこの吸着剤を酸性水溶液で処理することにより、再び陰イオンを吸着することができる(再利用)。特に、この多孔性成形体は、繰り返し使用に対する耐久性にも極めて優れるため、再利用を繰り返すことにより、本発明の水処理装置による処理の経済性をさらに高めることができる。また、廃棄物を減らせるという効果もある。
この多孔性成形体の製造方法は、有機高分子樹脂とその良溶媒と無機イオン吸着体と水溶性高分子とを混合した後、成形し、貧溶媒中で凝固させることを特徴とする。
製造に用いる有機高分子樹脂は、特に限定されないが、湿式相分離による多孔化手法が可能なものが好ましい。たとえば、ポリスルホン系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン系ポリマー、ポリ塩化ビニリデン系ポリマー、アクリロニトリル系ポリマー、ポリメタクリル酸メチル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、セルロース系ポリマー、エチレンビニルアルコール共重合体系ポリマー等、多種類が挙げられる。
また、製造に用いる良溶媒は有機高分子樹脂及び水溶性高分子を共に溶解するものであればいずれでもよい。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)等である。これらの良溶媒は1種又は混合溶媒としてもよい。
製造に用いる水溶性高分子は有機高分子樹脂と相溶性のあるものであれば特に限定されない。
天然高分子では、グアーガム、ローカストビーンガム、カラーギナン、アラビアゴム、トラガント、ペクチン、デンプン、デキストリン、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン等が挙げられる。
さらに、合成高分子では、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、さらに、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール等のポリエチレングリコール類が挙げられる。
これらの水溶性高分子の中でも、耐生分解性を有する点で合成高分子が好ましい。
ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、2,000〜2,000,000の範囲が好ましく、2,000〜1,000,000の範囲がより好ましく、2,000〜100,000の範囲がさらに好ましい。重量平均分子量が2,000より小さいと、フィブリル内部に空隙を有する構造を発現させる効果が低くなる傾向があり、2,000,000を超えると、成形する時の粘度が上昇して、成形が難しくなる傾向がある。
含有量(%)=Ws/Wd ×100
水溶性高分子の含有量は、水溶性高分子の種類、分子量に左右されるが、0.001〜10%が好ましく、より好ましくは、0.01〜1%である。0.001%未満では、成形体の表面を開口させるのに効果が必ずしも十分でなく、10%を超えると相対的にポリマー濃度が薄くなり、強度が十分でない場合がある。
本発明で吸着剤として用いる多孔性成形体に用いられる無機イオン吸着体とは、イオン吸着能を示す無機物質をいう。
例えば、天然物ではゼオライトやモンモリロナイト、各種の鉱物性物質があり、合成物系では金属酸化物等がある。前者はアルミノケイ酸塩で単一層格子をもつカオリン鉱物、2層格子構造の白雲母、海緑石、鹿沼土、パイロフィライト、タルク、3次元骨組み構造の長石、ゼオライトなどで代表される。後者は、多価金属の塩、金属酸化物、不溶性のヘテロポリ酸塩、不溶性ヘキサシアノ鉄酸塩などが主要なものである。
M2+ (1−X)M3+ x(OH-)(2+x-y)(An−)y/n (II)
〔式中、M2+はMg2+、Ni2+、Zn2+、Fe2+、Ca 2+及びCu2+からなる群から選
ばれる少なくとも1種の二価の金属イオンを示し、M3+はAl3+及びFe3+からなる群から選ばれる少なくとも1種の三価の金属イオンを示し、An-はn価のアニオンを示し、0.1≦x≦ 0.5であり、0.1≦y≦0.5であり、nは1または2である。〕
金属酸化物とは、下記式(I)で表せる。
MNxOn・mH2O (I)
(式中、xは0〜3、nは1〜4、mは0〜6であり、MおよびNは、Ti、Zr、Sn、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Si、Cr、Co、Ga、Fe、Mn、Ni、V、Ge、Nb及びTaからなる群から選ばれる金属元素であり、互いに異なる。)
また式(I)中のxが0以外の数値である場合の金属酸化物は、含有される各金属元素が規則性を持って酸化物全体に均一に分布して、例えば、ペロブスカイト構造、スピネル構造等を形成し、ニッケルフェライト(NiFe2O4)、ジルコニウムの含水亜鉄酸塩(Zr・Fe2O4・mH2O mは0.5〜6)のごとく金属酸化物に含有される各金属元素の組成比が一定に定まった化学式で表される、複合金属酸化物である。
(a)水和酸化チタン、水和酸化ジルコニウム、水和酸化スズ、水和酸化セリウム、水和酸化ランタン、および水和酸化イットリウム
(b)チタン、ジルコニウム、スズ、セリウム、ランタン、およびイットリウムからなる群から選ばれる金属元素と、アルミニウム、珪素、および鉄からなる群から選ばれる金属元素との複合金属酸化物
(c)活性アルミナ
また、硫酸アルミニウム添着活性アルミナ、硫酸アルミニウム添着活性炭等も好ましい。
本発明で用いる無機イオン吸着体は、式(I)で表せる金属酸化物を複数種含有していても良い。各金属酸化物の分布状態については特に制限はないが、各金属酸化物の有する特性を有効に活用し、よりコストパフォーマンスに優れる無機イオン吸着体を得るためには、特定の金属酸化物の廻りを、他の金属酸化物が覆った混合体構造にすることが好ましい。このような構造としては、四三酸化鉄の廻りを水和酸化ジルコニウムが覆った構造が例示できる。
上述の例においては、水和酸化ジルコニウムはリン、ホウ素、フッ素、ヒ素等のイオンに対する吸着性能や繰り返し使用に対する耐久性能は高いが、高価である。一方、四三酸化鉄は、水和酸化ジルコニウムに比較してリン、ホウ素、フッ素、ヒ素等のイオンに対する吸着性能や繰り返し使用に対する耐久性能は低いが、非常に安価である。
なお、本発明の無機イオン吸着体は、その製造方法等に起因して混入する不純物元素を本発明の目的の達成を逸脱しない範囲で含有していても良い。混入する可能性がある不純物元素としては窒素(硝酸態、亜硝酸態、アンモニウム態)、ナトリウム、マグネシウム、イオウ、塩素、カリウム、カルシウム、銅、亜鉛、臭素、バリウム、ハフニウム等が考えられる。
前述の製造法において用いられる鉄の塩としては、硫酸第一鉄(FeSO4)、硝酸第一鉄(Fe(NO3)2)、塩化第一鉄(FeC12)等の第一鉄塩が挙げられる。これらもFeSO4・7H2Oなどの含水塩であってもよい。これらの第一鉄塩は通常、固形物で加えられるが、溶液状で加えてもよい。
酸化性ガスを吹き込む場合、その時間は、酸化性ガスの種類などによって異なるが、通常約1〜10時間程度である。酸化剤としては、たとえば過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムなどが用いられる。
粒子径が0.01μmより小さいと、製造時のスラリー粘度が上昇し、成形しにくい傾向があり、100μmより大きいと、比表面積が小さくなるため、吸着性能が低下する傾向にある。
ここでいう粒子径とは、一次粒子と、一次粒子が凝集した二次粒子の両方又は混合物の粒子径をいう。本発明の無機イオン吸着体の粒子径は、レーザー光による回折の散乱光強度の角度分布から求めた球相当径のモード径(最頻度粒子径)である。
本発明で用いる多孔性成形体が吸着対象とするイオンは、陰イオン、陽イオンと特に限定されない。例えば、陰イオンでは、リン(リン酸イオン)、フッ素(フッ化物イオン)、ヒ素(ヒ酸イオン、亜ヒ酸イオン)、ホウ素(ホウ酸イオン)、ヨウ素イオン、塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、及び酢酸等の各種有機酸のイオンが挙げられる。また、陽イオンでは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、カドミウム、鉛、クロム、コバルト、ストロンチウム、及びセシウム等が挙げられる。
容器の材質は、特に限定されるものではないが、ステンレス、FRP(ガラス繊維入り強化プラスチック)、ガラス、各種プラスチックが挙げられる。耐酸性を考慮して、内面をゴムやフッ素樹脂ライニングとすることもできる。
円筒状の多孔性成形体の充填層に円周方向外側から内筒へ通水する外圧方式、その逆方向に通水する内圧方式、箱型の充填層に水平方向に通水する方式等が例示できる。また、多孔性成形体の充填層を流動床方式としても良い。
例えば、液体中のリンを吸着対象とし、水和酸化ジルコニウムまたは四三酸化鉄を水和酸化ジルコニウムで覆った構造の無機イオン吸着体を用いた場合のpH調整範囲は、pH1.5〜10の範囲が好ましく、さらに好ましくは、pH2〜7である。
また、液体中のフッ素を吸着対象とし、水和酸化セリウムまたは四三酸化鉄を水和酸化ジルコニウムで覆った構造の無機イオン吸着体を用いた場合のpH調整範囲は、pH1〜7の範囲が好ましく、さらに好ましくは、pH2〜5である。
また、液体中のヒ素を吸着対象とし、水和酸化セリウムまたは四三酸化鉄を水和酸化セリウムで覆った構造の無機イオン吸着体を用いた場合のpH調整範囲は、pH3〜12の範囲が好ましく、さらに好ましくは、pH5〜9である。
アルカリ溶液のpHの範囲は、pH10以上であれば陰イオンを脱離させることができるが、好ましくはpH12以上、より好ましくはpH13以上である。アルカリ濃度は、O.1wt%〜30wt%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.5〜20wt%の範囲である。O.1wt%より薄いと脱着効率が低くなり、30wt%より濃いと、アルカリの薬剤コストが増えてしまう傾向にある。
難溶性沈殿物すなわち溶解度の低い沈殿が得られる点で、多価金属の水酸化物が好ましく、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムが特に好ましい。特に、コストの点で水酸化カルシウムが好ましい。
2NaF+Ca(OH)2→2NaOH+CaF2↓
同様に、リン酸ナトリウムとして存在する場合は、下記反応式にしたがって、アルカリを回収できる。さらに、晶析したリン酸カルシウムは、肥料等に再資源化が可能である。
6Na3PO4+10Ca(OH)2→18NaOH+Ca10(OH)2(PO4)6↓
金属の水酸化物の添加量は、特に制限は無いが対象とするイオンに対して1〜4倍当量である。添加量が等モル以下では、沈殿除去効率が低くなるし、4倍当量を超えると、除去効率はほとんど変わらないので経済的に不利になる傾向がある。
この冷却による脱着イオンの回収工程は、特に、リン酸イオンを吸着した多孔性成形体を、水酸化ナトリウムを用いて脱着した場合に好適に適用できる。
冷却温度は、脱着したイオンを晶析できる温度であれば特に制限されないが、5〜25℃の範囲が好ましく、5〜10℃の範囲がさらに好ましい。5℃未満では、冷却エネルギーが多く必要で経済的に不利になる傾向があり、10℃より高いと沈殿物を晶析させる効果が低い傾向がある。
本発明における、溶離液中の沈殿物の固液分離方法は、膜分離方法が好ましい。
膜分離法は、設置面積が少なくて、清澄なろ過水を得ることができるため、本発明のようなクローズシステムに適している。
膜分離法としては、特に限定されないが、限外ろ過膜(UF)、精密ろ過膜(MF)、透析膜等が挙げられる。膜の形態も、平膜、中空糸、プリーツ、チューブ状等、限定されない。好ましい膜分離法としては、ろ過スピードとろ過精度の点で、限外ろ過膜(UF)、精密ろ過膜(MF)等が好ましい。
酸性水溶液は、特に限定されないが、硫酸、塩酸等の水溶液が用いられる。濃度は、O.001〜10wt%程度であればよい。O.001wt%より薄いと、活性化終了までに大量の水ボリュームが必要になり、10wt%より濃いと、酸性水溶液の取り扱い上の危険性等の点で問題が生じるおそれがある。
通液速度は、特に制限はないが、通常SV0.5〜30(hr-1)の範囲が好ましい。SV0.5より低いと、活性化時間が長時間になり非効率になる傾向があり、SV30より大きいと、多孔性成形体と酸性水溶液の接触時間が短くなり、活性化効率が低下する傾向がある。
この構成をとることにより、脱着操作でアルカリ側にシフトしたカラム中の多孔性成形体のpHを、無機イオン吸着体の耐酸性を考慮して、ゆるやかに所定のpHに戻すことができる。
例えば、酸化鉄はpH3以下では酸による溶解が著しいことが知られている。このような酸化鉄を多孔性成形体に担持した場合、従来の活性化方法は、先の鉄の溶解という問題があるため、pH3以上という薄い酸で処理するしか方法がなかった。しかし、この方法では、大量の水ボリュームが必要となるため、経済的に許されるものではなかった。
この時の通液速度は、通常SV1〜200(hr-1)の範囲で選ばれる。さらに好ましくは、SV1O〜100の範囲である。SV1より低いと、活性化時間が長時間になり非効率になる傾向があり、SV200より大きいと、大きなポンプ動カが必要であり非効率になる傾向がある。
この一連の脱着、活性化操作はカラムに吸着剤を充填したまま行うことができる。すなわち、吸着剤を充填したカラムに、吸着操作が終了後、アルカリ性水溶液、酸性水溶液を順番にカラムに通水することにより容易に再生を行うことができる。この場合、通液方向は、上向流、下向流のいずれでもよい。
本発明の水処理装置において、脱塩処理とイオン吸着処理とを組み合わせる順序は、特に限定されないが、脱塩処理の後段にイオン吸着処理を実施することが好ましい。
本発明の水処理装置及び水処理方法の処理対象となる原水を例示すると、水道水、飲料水、工業用水、工場の工程水、河川水、湖沼水、海水、かん水、灌漑水、地下水、さらに、下水、工場廃水、下水処理場や排水処理施設の活性汚泥、火力発電所の脱硫排煙処理水等が挙げられるが、海水やかん水の淡水化処理、河川水、湖沼水、地下水の浄化処理、上水化処理、水道水、地下水の超純水化処理、下水、工場廃水の廃水処理等に特に好ましく使用できる。
・走査型電子顕微鏡による成形体の観察
走査型電子顕微鏡(SEM)による成形体の観察は、目立製作所製のS-800型走査型電子顕微鏡で行った。
・成形体の割断
成形体を室温で真空乾燥し、乾燥した成形体をイソプロピルアルコール(IPA)に加えて、成形体中にIPAを含浸させた。次いで、IPAと共に成形体を直径5mmのゼラチンカプセルに封入し、液体窒素中で凍結した。凍結した成形体をカプセルごと彫刻刀で割断した。割断されている成形体を選別して顕微鏡試料とした。
走査型電子顕微鏡を用いて撮影した成形体の表面の画像を、画像解析ソフト(三谷商事(株)製ウインルーフ(商品名))を用いて求めた。さらに詳しく説明すると、得られたSEM像を濃淡画像として認識し、色が濃い部分を開口部、色が薄い部分をフィブリルとして、しきい値を手動で調整し、開口部分とフィブリル部分に分割して、その面積比を求めた
・表面の開口径
走査型電子顕微鏡を用いて撮影した成形体の表面の画像から実測して求めた。孔が円形の場合はその直径、円形以外の場合は、同一面積を有する円の円相当直径を用いた。
成形体及び無機イオン吸着体の粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA杜製のLA-910(商品名))で測定した。但し、粒径が1、OOOμm以上の場合には、SEM像を用いて、成形体の最長直径と最短直径を測定し、その平均値を粒径とした。
・空孔率
十分に水に濡れた成形体を乾いたろ紙上に拡げ、余分な水分をとった後に重量を測定し、成形体の含水時の重量(W1)とした。次に、成形体を室温下で真空乾燥に24時間付して乾燥した成形体を得た。乾燥した成形体の重量を測定し、成形体の乾燥時の重量(W0)とした。
下記の計算式に従って、成形体の比重(ρ)、及び、空孔率(Pr)を求めた。
ρ=M/(Ww+M-Wwm)
Pr=(W1-W0)/(W1-W0+W0/ρ)×100
式中、Prは空孔率(%)であり、W1は成形体の含水時の重量(g)、WOは成形体の乾燥後の重量(g)、及び、ρは成形体の比重(g/cm3)、Mは成形体の乾燥後の重量(g)、Wwは比重瓶の満水時の重量(g)、Wwmは比重瓶に含水した成形体と純水を入いたときの重量(g)である。
成形体を室温下で真空乾燥に24時間付して乾燥した成形体を得た。乾燥した成形体の重量を測定し、成形体の乾燥時の重量Wd(g)とした。次に、乾燥した成形体を、電気炉を用いて800℃で2時間焼成して灰分の重量を測定し、灰分の重量Wa(g)とした。下記式より、担持量を求めた。
担持量(%)=Wa/Wd×100
式中、Waは、成形体の灰分の重量(g)であり、Wdは成形体の乾燥時の重量(g)である。
成形体を室温で真空乾燥した後、ベックマン・コールター(株)杜製コールターSA3100(商品名)を用い、BET法で多孔性成形体の比表面積SBET(m2/g)を求めた。
次に、湿潤状態の成形体を、メスシリンダー等を用いてみかけの体積V(cm3)を測定した。その後、室温で真空乾燥して重量W(g)を求める。
本発明の成形体の比表面積は、次式から求めた。
比表面積(m2/cm3)= SBET×かさ比重(g/cm3)
かさ比重(g/cm3)=W/V
式中、SSBETは成形体の比表面積(m2/g) であり、Wは成形体の乾燥重量(g)、Vはそのみかけの体積(cm3)である。
ICP発光法(サーモエレクトロン(株)杜製(米国)、IRIS-INTREPID-II(商品名))により測定した。
硫酸セリウム0.2モル及び硫酸アンモニウム0.5モルを蒸留水2リットルに撹拌しながら溶解した。次いで、アンモニア水を添加して溶液のpHを9に調製して沈殿物を得た。一晩熟成後、ろ過して、脱イオン水で濾液が中性となるまで洗浄した後、60℃で乾燥した。これをボールミルで7時間粉砕し、平均粒径2.0μmの含水酸化セリウム粉末を得た。
次にエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH、日本合成化学工業(株)、ソアノールE3803(商品名))10g、ポリビニルピロリドン(PVP、BASFジャパン(株)、Luvitec K30 Powder(商品名))10g、ジメチルスルホキシド(DMSO、関東化学(株))80gを、セパラフラスコ中にて、60℃に加温して溶解し、均一なポリマー溶液を得た。
このポリマー溶液100gに対し、上述の水和酸化セリウム粉末125gを加え、よく混合してスラリーを得た。
ホウ酸(H3BO4)を蒸留水に溶解し、ホウ酸水溶液(ホウ素として22mg-B/リットル)を作り、硫酸及び水酸化ナトリウムを用いてpHを3、5、7に調整した。この水溶液1リツトルに対して、製造例で製造した多孔性成形体2mlを加えて、しんとう機で撹拌した。撹拌開始2時間後に、該水溶液をサンプリングして、ホウ酸濃度を測定して吸着量を求めた。ホウ素吸着量は、pH3で0.4g-B/リットル、pH5で0.4g-B/リットル、pH7で0.7g-B/リットルであり、ホウ素イオンは、中性領域で吸着量が多いことがわかった。
本装置に被処理用原水として海水(ホウ素濃度 4.4mg/g)を供給した。
前処理用の濾過処理はUF膜(精密濾過膜:分画分子量150,000)を用い、通水流速は5m3/日とした。
なお、この処理は以下の条件で行った。
使用吸着剤 :製造例で製造した多孔性成形体
塔カラム :22Φ×1000Lmm
吸着剤層厚み:600mm
吸着剤量 :228ml
通水速度 :SV20 4.56L/時
イオン交換処理後の水(淡水)中のホウ素濃度は0.01mg/L未満であった。
2 前処理システム(濾過処理装置)
3 逆浸透膜装置
4 イオン吸着装置
401 製造例で製造した多孔性成形体
5 淡水
Claims (8)
- 脱塩処理手段と、多孔性成形体を吸着剤として用いたイオン吸着処理手段を含む水処理装置であって、該多孔性成形体が、有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含んでなるフィブリルが三次元網目構造を形成してなり、外表面に開口する連通孔を有する多孔性成形体であり、フィブリル間の隙間が連通孔を形成し、かつ前記フィブリルが内部に空隙を有していて、かつ、該空隙の少なくとも一部はフィブリルの表面で開孔しており、該フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に無機イオン吸着体が担持されていることを特徴とする水処理装置。
- 前記連通孔が、成形体表面付近に最大孔径層を有することを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
- 前記多孔性成形体が平均粒径100〜2500μmの球状粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の水処理装置。
- 前記多孔性成形体が、有機高分子樹脂としてエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルホン(PS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選ばれる一種以上を含んでなる多孔性成形体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の水処理装置。
- 前記無機イオン吸着体が、下記式(I)で表される金属酸化物を少なくとも一種含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の水処理装置。
MNxOn・mH2O (I)
(式中、xは0〜3、nは1〜4、mは0〜6であり、MおよびNは、Ti、Zr、Sn、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Si、Cr、Co、Ga、Fe、Mn、Ni、V、Ge、Nb及びTaからなる群から選ばれる金属元素であり、互いに異なる。) - 前記式(I)で表される金属酸化物が、下記(a)〜(c)のいずれかの群から選ばれる1種またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項5に記載の水処理装置。
(a)水和酸化チタン、水和酸化ジルコニウム、水和酸化スズ、水和酸化セリウム、水和酸化ランタン、および水和酸化イットリウム
(b)チタン、ジルコニウム、スズ、セリウム、ランタン、およびイットリウムからなる群から選ばれる金属元素と、アルミニウム、珪素、および鉄からなる群から選ばれる金属元素との複合金属酸化物
(c)活性アルミナ - 前記イオン吸着処理手段の吸着対象イオンがリン、ホウ素、フッ素及び/又はヒ素であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の水処理装置。
- 脱塩処理工程と、多孔性成形体を吸着剤として用いたイオン吸着処理工程をこの順に含む水処理方法であって、該多孔性成形体が、有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含んでなるフィブリルが三次元網目構造を形成してなり、外表面に開口する連通孔を有する多孔性成形体であり、フィブリル間の隙間が連通孔を形成し、かつ前記フィブリルが内部に空隙を有していて、かつ、該空隙の少なくとも一部はフィブリルの表面で開孔しており、該フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に無機イオン吸着体が担持されていることを特徴とする水処理方法。
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