JP5062973B2 - 水処理装置及び方法 - Google Patents
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Description
リンは富栄養化の原因物質の一つであり、閉鎖水域で規制が強まっている。閉鎖系水域のリンの排水基準は0.5〜2mg/リットル以下に規制されている。
ホウ素は、直物の育成にとって必須の元素であるが、過剰に存在すると植物の成長に悪影響を及ぼすことが知られている。さらに、人体に対しても、飲料水中に含まれると健康への影響、特に生殖機能の低下等の健康障害を起こす可能性が指摘されている。
フッ素は、金属精錬、ガラス、電子材料工業等からの排水に多く含まれることが多い。フッ素の人体への影響が懸念されており、過剰に摂取すると、斑状歯、骨硬化症、甲状腺障害等の慢性フッ素中毒症を引き起こすことが知られている。水質基準として水道水の場合には0.8mg/リットル以下としなければならない
このような有害イオンを除去する従来技術としては、希土類吸着剤を固定床式吸着塔に充填して、水中のフッ素イオンを選択的に吸着除去する技術が特許文献1に記載されている。
吸着塔が1塔のみであるため、吸着剤の再生工程の間は、廃水を受け入れて処理することができない。すなわち、連続した水処理が不可能である。また、受け入れる廃水に突発的な水質変動がある場合、吸着塔が1塔では、その変動幅に対処できずにイオンをリークしてしまい、最終的な処理水質を悪化して、排水基準を超過してしまうという問題点を有している。
本発明は、このような問題点を鑑み、特定の構造を有する多孔性成形体からなる吸着剤を充填したイオン吸着手段を複数、直列に設置することにより、イオンを低濃度まで確実に除去することができる水処理装置及び方法を提供することを目的とする。
特定の構造を有する多孔性成形体が充填されたイオン吸着手段を、複数直列に配置した水処理装置を用いて、複数直列に接続されたイオン吸着手段がメリーゴーランド方式をとることにより、イオンを低濃度まで確実に除去できることを見出し、本発明をなすに至った。
1. 多孔性成形体が充填された複数の直列に接続されたイオン吸着手段を含む水処理装置であって、
該イオン吸着手段がメリーゴーランド方式であり、かつ該多孔性成形体が、有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含んでなるフィブリルが三次元網目構造を形成してなり、外表面に開口する連通孔を有する多孔性成形体であり、フィブリル間の隙間が連通孔を形成し、かつ前記フィブリルが内部に空隙を有していて、かつ、該空隙の少なくとも一部はフィブリルの表面で開孔しており、該フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に無機イオン吸着体が担持されていることを特徴とする水処理装置。
2.前記水処理装置において、最前段のイオン吸着手段の処理水中のイオン濃度を監視するイオン検出手段を設けたことを特徴とする1.記載の水処理装置
3.前記連通孔が成形体表面付近に最大孔径層を有する1又は2記載の水処理装置。
4.前記有機高分子樹脂が、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルホン(PS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選ばれる一種以上を含んでなる多孔性成形体である1.〜3.のいずれか一項に記載の水処理装置。
MNxOn・mH2O (I)
(式中、xは0〜3、nは1〜4、mは0〜6であり、MおよびNは、Ti、Zr、Sn、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Si、Cr、Co、Ga、Fe、Mn、Ni、V、Ge、Nb及びTaからなる群から選ばれる金属元素であり、互いに異なる。)
6.前記無機イオン吸着体に含有される式(I)で表される金属酸化物が、
水和酸化チタン、水和酸化ジルコニウム、水和酸化スズ、水和酸化セリウム、水和酸化ランタン、水和酸化イットリウム;チタン、ジルコニウム、スズ、セリウム、ランタン、イットリウムからなる群から選ばれる金属元素と、アルミニウム、珪素、鉄からなる群から選ばれる金属元素との複合金属酸化物、および活性アルミナからなる群から選ばれる金属酸化物である5に記載の水処理装置。
該多孔性成形体が、有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含んでなるフィブリルが三次元網目構造を形成してなり、外表面に開口する連通孔を有する多孔性成形体であり、フィブリル間の隙間が連通孔を形成し、かつ前記フィブリルが内部に空隙を有していて、かつ、該空隙の少なくとも一部はフィブリルの表面で開孔しており、該フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に無機イオン吸着体が担持されていることを特徴とする水処理方法。
本発明の多孔性成形体について以下に詳細に説明する。
まず、本発明の成形体の構造について説明する。
本発明の成形体は、連通孔を有し多孔質な構造を有する。さらに、外表面にはスキン層が無く、表面の開口性に優れる。さらに、連通孔を形成するフィブリル内部にも空隙を有し、その空隙の少なくとも一部はフィブリル表面で開孔している。
含水時の重量は、十分に水に濡れた成形体を、乾いたろ紙上に拡げ、余分な水分をとってから含水時の重量を測定すればよい。乾燥は、水分をとばすために、室温下で真空乾燥を行えばよい。成形体の比重は、比重瓶を用いて簡便に測定することができる。
好ましい空孔率Pr(%)の範囲は、50%〜90%であり、特に60〜85%が好ましい。50%未満ではリン等の吸着対象物質と吸着基質である無機イオン吸着体との接触頻度が不十分となりやすい。90%を超えると、成形体の強度が不足しやすい。
担持量(%)=Wa/Wd×100
ここで、灰分は本発明の成形体を800℃で2時間焼成したときの残分をいう。
好ましい担持量の範囲は、30〜95%であり、さらに好ましくは、40〜90%であり、特に65〜90%が好ましい。30%未満だと、リン等の吸着対象物質と吸着基質である無機イオン吸着体との接触頻度が不十分となりやすく、95%を超えると、成形体の強度が不足しやすい。
本発明の方法によると、従来技術の添着法とは異なり、吸着基質と有機高分子樹脂を練り込んで成形するため、担持量を多く保ちかつ強度の強い成形体を得ることができる。
比表面積(m2/cm3)=SBET×かさ比重(g/cm3)
ここで、S BET は、成形体の単位重量あたりの比表面積(m2/g)である。
比表面積の測定方法は、成形体を室温で真空乾燥した後、BET法を用いて測定する。
かさ比重の測定方法は、粒子状、円柱状、中空円柱状等の形状が短いものは、湿潤状態の成形体を、メスシリンダー等を用いて、みかけの体積を測定する。その後、室温で真空乾燥して重量を求める。
好ましい比表面積の範囲は、5m2/cm3〜500m2/cm3である。5m2/cm3未満だと、吸着基質の担持量及び吸着性能が不十分となりやすい500m2/cm3を超えると、成形体の強度が不足しやすい。
本発明の成形体は、多孔質でありフィブリルが複雑に絡み合った三次元網目構造をとる。さらに、フィブリル自体も空隙を有するため、表面積が大きいという特徴を有する。これに、更に大きい比表面積をもつ吸着基質(無機イオン吸着体)を担持させるので、単位体積あたりの表面積も大きくなるのが特徴である。
本発明の多孔性成形体の製造方法は、有機高分子樹脂とその良溶媒と無機イオン吸着体と水溶性高分子とを混合した後、成形し、貧溶媒中で凝固させることを特徴とする。
含有量(%)=Ws/Wd ×100
水溶性高分子の含有量は、水溶性高分子の種類、分子量に左右されるが、0.001〜10%が好ましく、より好ましくは、0.01〜1%である。0.001%未満では、成形体の表面を開口させるのに効果が必ずしも十分でなく、10%を超えると相対的にポリマー濃度が薄くなり、強度が十分でない場合がある。
例えば、天然物ではゼオライトやモンモリロナイト、各種の鉱物性物質があり、合成物系では金属酸化物等がある。前者はアルミノケイ酸塩で単一層格子をもつカオリン鉱物、2層格子構造の白雲母、海緑石、鹿沼土、パイロフィライト、タルク、3次元骨組み構造の長石、ゼオライトなどで代表される。後者は、金属酸化物、多価金属の塩、不溶性のヘテロポリ酸塩、不溶性ヘキサシアノ鉄酸塩などが主要なものである。
M2+ (1−X)M3+ x(OH-)(2+x-y)(An−)y/n (II)
〔式中、M2+はMg2+、Ni2+、Zn2+、Fe2+、Ca 2+及びCu2+からなる群から選
ばれる少なくとも1種の二価の金属イオンを示し、M3+はAl3+及びFe3+からなる群から選ばれる少なくとも1種の三価の金属イオンを示し、An-はn価のアニオンを示し、0.1≦x≦ 0.5であり、0.1≦y≦0.5であり、nは1または2である。〕
金属酸化物とは、下記式(I)で表せる。
MNxOn・mH2O (I)
(式中、xは0〜3、nは1〜4、mは0〜6であり、MおよびNは、Ti、Zr、Sn、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Si、Cr、Co、Ga、Fe、Mn、Ni、V、Ge、Nb及びTaからなる群から選ばれる金属元素であり、互いに異なる。)
また式(I)中のxが0以外の数値である場合の金属酸化物は、含有される各金属元素が規則性を持って酸化物全体に均一に分布して、例えば、ペロブスカイト構造、スピネル構造等を形成し、ニッケルフェライト(NiFe2O4)、ジルコニウムの含水亜鉄酸塩(Zr・Fe2O4・mH2O mは0.5〜6)のごとく金属酸化物に含有される各金属元素の組成比が一定に定まった化学式で表される、複合金属酸化物である。
また、硫酸アルミニウム添着活性アルミナ、硫酸アルミニウム添着活性炭等も好ましい。
本発明で用いる無機イオン吸着体は、式(I)で表せる金属酸化物を複数種含有していても良い。各金属酸化物の分布状態については特に制限はないが、各金属酸化物の有する特性を有効に活用し、よりコストパフォーマンスに優れる無機イオン吸着体を得るためには、特定の金属酸化物の廻りを、他の金属酸化物が覆った混合体構造にすることが好ましい。このような構造としては、四三酸化鉄の廻りを水和酸化ジルコニウムが覆った構造が例示できる。
上述の例においては、水和酸化ジルコニウムはリン、ホウ素、フッ素、ヒ素等のイオンに対する吸着性能や繰り返し使用に対する耐久性能は高いが、高価である。一方、四三酸化鉄は、水和酸化ジルコニウムに比較してリン、ホウ素、フッ素、ヒ素等のイオンに対する吸着性能や繰り返し使用に対する耐久性能は低いが、非常に安価である。
なお、本発明の無機イオン吸着体は、その製造方法等に起因して混入する不純物元素を本発明の目的の達成を逸脱しない範囲で含有していても良い。混入する可能性がある不純物元素としては窒素(硝酸態、亜硝酸態、アンモニウム態)、ナトリウム、マグネシウム、イオウ、塩素、カリウム、カルシウム、銅、亜鉛、臭素、バリウム、ハフニウム等が考えられる。
前述の製造法において用いられる鉄の塩としては、硫酸第一鉄(FeSO4)、硝酸第一鉄(Fe(NO3)2)、塩化第一鉄(FeC12)等の第一鉄塩が挙げられる。これらもFeSO4・7H2Oなどの含水塩であってもよい。これらの第一鉄塩は通常、固形物で加えられるが、溶液状で加えてもよい。
酸化性ガスを吹き込む場合、その時間は、酸化性ガスの種類などによって異なるが、通常約1〜10時間程度である。酸化剤としては、たとえば過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムなどが用いられる。
粒子径が0.01μmより小さいと、製造時のスラリー粘度が上昇し、成形しにくい傾向があり、100μmより大きいと、比表面積が小さくなるため、吸着性能が低下する傾向にある。
ここでいう粒子径とは、一次粒子と、一次粒子が凝集した二次粒子の両方又は混合物の粒子径をいう。本発明の無機イオン吸着体の粒子径は、レーザー光による回折の散乱光強度の角度分布から求めた球相当径のモード径(最頻度粒子径)である。
本発明の多孔性成形体は、液体と接触させて水中のイオンを吸着除去する吸着剤として使用するのに適している。
本発明の多孔性成形体が吸着の対象とするイオンは、陰イオン、陽イオンと特に限定されない。例えば、陰イオンでは、リン(リン酸イオン)、フッ素(フッ化物イオン)、ヒ素(ヒ酸イオン、亜ヒ酸イオン)、ホウ素(ホウ酸イオン)、ヨウ素イオン、塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、及び酢酸等の各種有機酸のイオンが挙げられる。また、陽イオンでは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、カドミウム、鉛、クロム、コバルト、ストロンチウム、及びセシウム等が挙げられる。
具体的には、リン、ホウ素、フッ素、ヒ素イオンの除去には、無機イオン吸着体に水和酸化チタン、水和酸化ジルコニウム、水和酸化スズ、水和酸化セリウム、水和酸化ランタン、水和酸化イットリウム;チタン、ジルコニウム、スズ、セリウム、ランタン、イットリウムからなる群から選ばれる金属元素と、アルミニウム、珪素、鉄からなる群から選ばれる金属元素との複合金属酸化物;活性アルミナ;硫酸アルミニウム添着活性アルミナ;及び硫酸アルミニウム添着活性炭からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物を選択するのが好ましい。
これらの容器には、容器から多孔性成形体が流出しないような固液分離機構、例えば目皿やメッシュ等を備えていることが好ましい。
多孔性成形体と処理対象水との接触方式についても、多孔性成形体と処理対象の水が接触できるのであれば、特に制限はない。多孔性成形体の充填層を固定床とする場合、円柱状、多角柱状、箱型の多孔性成形体の充填層に上昇流または下降流で通水する方式、または、円筒状の多孔性成形体の充填層に円周方向外側から内筒へ通水する外圧方式、その逆方向に通水する内圧方式、箱型の充填層に水平方向に通水する方式等が例示できる。また、多孔性成形体の充填層を流動床方式としても良い。
吸着能力が低下したイオン吸着手段は、逆洗、脱着、活性化等の工程を順次行い、次の吸着工程の順番がくるまで待機している。また、脱着の頻度が少ない場合は、イオン吸着手段を水処理装置から取り外して、新たに吸着能力を持つイオン吸着手段に取り替えることもできる。
図1において、現在の各弁の状態は、V1−開、V2−閉、V3−閉、V4−閉、V5−開、V6−閉、V7−開、V8−閉、V9−閉であり、原水は、V1、吸着塔A、V7、検出器1、吸着塔B、V5の順に通水されている。
このとき、吸着容量が一杯になった吸着塔Aは、逆洗、脱着、活性化の工程が行われ、次に吸着塔Bの吸着容量が一杯になり、吸着塔Cが前段、吸着塔Aが後段の順序で通水が始まるまでの間、待機している。
さらに、検出器は前段の吸着塔の吸着容量を検知するのに設置する方が好ましいが、本発明では、この検知器を省略して、通水時間で吸着塔の切り替えを管理することもできる。
本発明の多孔性成形体を吸着剤として水処理用途に用いる場合、その前処理として水中の縣濁物質を固液分離する手段を設けることが好ましい。あらかじめ水中の縣濁物質を除去することで、多孔性成形体の表面の閉塞を防ぐことができ、本発明の多孔性成形体の吸着性能を十分発揮することができる。好ましい固液分離手段としては、凝集沈殿、沈降分離、砂ろ過、膜分離が挙げられる。特に、設置面積が少なくて、清澄なろ過水が得られる膜分離技術が好ましい。好ましい膜分離技術は、逆浸透膜(RO)、限外ろ過膜(UF)、精密ろ過膜(MF)等が挙げられる。膜の形態は、平膜、中空糸、プリーツ、スパイラル、チューブ等、限定されない。
例えば、液体中のリンを吸着対象とし、水和酸化ジルコニウムまたは四三酸化鉄を水和酸化ジルコニウムで覆った構造の無機イオン吸着体を用いた場合のpH調整範囲は、pH1.5〜10の範囲であり、さらに好ましくは、pH2〜7である。
また、液体中のフッ素を吸着対象とし、水和酸化セリウムまたは四三酸化鉄を水和酸化ジルコニウムで覆った構造の無機イオン吸着体を用いた場合のpH調整範囲は、pH1〜7の範囲であり、さらに好ましくは、pH2〜5である。
また、液体中のヒ素を吸着対象とし、水和酸化セリウムまたは四三酸化鉄を水和酸化セリウムで覆った構造の無機イオン吸着体を用いた場合のpH調整範囲は、pH3〜12の範囲であり、さらに好ましくは、pH5〜9である。
アルカリ性水溶液の通液速度は、特に制限はないが、通常SV0.5〜15(hr−1)の範囲が好ましい。SVO.5より低いと、脱着時間が長時間になり非効率になる傾向があり、SV15より大きいと、多孔性成形体とアルカリ水溶液の接触時間が短くなり、脱着効率が低下する傾向がある。
なかでも、廃水中のリンイオンを吸着した多孔性成形体を、水酸化ナトリウムで脱着した場合、脱着液中に含まれるリン酸ナトリウムは、溶解度が比較的小さいという点で、脱着液には水酸化ナトリウムを用いることが特に好ましい。
難溶性沈殿物すなわち溶解度の低い沈殿が得られる点で、多価金属の水酸化物が好ましく、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムが特に好ましい。特に、コストの点で水酸化カルシウムが好ましい。
2NaF+Ca(OH)2→2NaOH+CaF2↓
同様に、リン酸ナトリウムとして存在する場合は、下記反応式にしたがって、アルカリを回収できる。さらに、晶析したリン酸カルシウムは、肥料等に再資源化が可能である。
6Na3PO4+10Ca(OH)2→18NaOH+Ca10(OH)2(PO4)6↓
沈殿除去する場合のpHは6以上であることが好ましく、さらにアルカリ水溶液を回収して、再利用することを考慮するとpH12以上、好ましくはpH13以上に保持するのが好ましい。沈殿処理時のpHが6より低いと、沈殿物の溶解度が大きくなり、沈殿効率が低下する。沈殿除去する場合に、金属の水酸化物の他に、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等の無機系凝集剤や、高分子凝集剤を併用することもできる。
この冷却による脱着イオンの回収工程は、特に、リン酸イオンを吸着した多孔性成形体を、水酸化ナトリウムを用いて脱着した場合に好適に適用できる。
冷却手段および方法は、特に限定されるものではないが、通常のチラーや熱交換機等を用いて冷却することができる。
また、冷却によるリン酸ナトリウムの晶析を効果的に行うために、新たに水酸化ナトリウムを加えて、脱着液中の水酸化ナトリウム濃度を上げることもできる。
本発明の、脱着液中の沈殿物の固液分離方法は、特に限定されないが、通常、沈降分離、遠心分離、ベルトプレス機、スクリュープレス機、膜分離法等が使用できる。
膜分離法としては、特に限定されないが、限外ろ過膜(UF)、精密ろ過膜(MF)、透析膜等が挙げられる。膜の形態も、平膜、中空糸、プリーツ、チューブ状等、限定されない。好ましい膜分離法としては、ろ過スピードとろ過精度の点で、限外ろ過膜(UF)、精密ろ過膜(MF)等が好ましい。
脱着工程が終了したカラム内の多孔性成形体は、アルカリ性であり、このままでは、再び原水中のイオンを吸着する能力は低い。そこで、酸性水溶液を用いて、カラム内のpHを所定値に戻す操作、すなわち活性化処理を行う。
通液速度は、特に制限はないが、通常SV0.5〜30(hr-1)の範囲が好ましい。SV0.5より低いと、活性化時間が長時間になり非効率になる傾向があり、SV30より大きいと、多孔性成形体と酸性水溶液の接触時間が短くなり、活性化効率が低下する傾向がある。
活性化方法においてさらに好ましい方法は、カラムとpH調整槽の間で活性液を循環させて行うことである。
例えば、酸化鉄はpH3以下では酸による溶解が著しいことが知られている。このような酸化鉄を多孔性成形体に担持した場合、従来の活性化方法は、先の鉄の溶解という問題があるため、pH3以上という薄い酸で処理するしか方法がなかった。しかし、この方法では、大量の水ボリュームが必要となるため、経済的に許されるものではなかった。
このような従来技術に対して、本発明の活性化方法は、カラムとpH調整槽を設けて、活性化液を循環するため、酸によって溶解するpH範囲を避けて活性化でき、さらに、活性化に用いる水のボリュームを少なくすることができ、装置をコンパクトにできる。
この一連の脱着、活性化操作はカラムに吸着剤を充填したまま行うことができる。すなわち、吸着剤を充填したカラムに、吸着操作が終了後、アルカリ性水溶液、酸性水溶液を順番にカラムに通水することにより容易に再生を行うことができる。この場合、通液方向は、上向流、下向流のいずれでもよい。
本発明の多孔性成形体は、耐薬品性、強度に優れているため、この再生処理を数十回から数百回以上繰り返してもイオンの吸着性能はほとんど低下しない。
[製造例1]無機イオン吸着体の製造
オキシ塩化ジルコニウム(ZrOC12)のO.15モル水溶液を1リットル調製した。この溶液中にはジルコニウムとして13.7gの金属イオンが含まれていた。この水溶液中に硫酸第一鉄結晶(FeSO4・7H2O)84.Ogを添加し、撹幹しながら溶解した。この量は鉄イオンとしてO.3モルに相当する(F/T(モル比) 0.67)。
次に、この黒色沈澱物を吸引濾別し、脱イオン水で濾液が中性となるまで洗浄した後、70℃以下で乾燥した。これをボールミルで7時間粉砕し、平均粒径2.8μmの無機イオン吸着体粉末を得た。この粉末のBET比表面積は、170 m2/gであった。
エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH、日本合成化学工業(株)、ソアノールE3803(商品名))10g、ポリビニルピロリドン(PVP、BASFジャパン(株)、Luvitec K30 Powder(商品名))10g、ジメチルスルホキシド(DMSO、関東化学(株))80gを、セパラフラスコ中にて、60℃に加温して溶解し、均一なポリマー溶液を得た。このポリマー溶液100gに対し、製造例1で作った無機イオン吸着体粉末92gを加え、よく混合してスラリーを得た。
本発明の水処理装置の実施例を図1に示す。
リン酸三ナトリウム(Na3PO4・12H2O)を蒸留水に溶解し、リン濃度9mg-P/リットルの液を作り、硫酸でpHを7に調整した液を原水として使用した。
製造例2で調製した多孔性成形体8mlを、内径10mmの吸着塔A、B、Cに各々充填した。
各弁の状態を、V1−開、V2−閉、V3−閉、V4−閉、V5−開、V6−閉、V7−開、V8−閉、V9−閉にして、SV20(hr-1)で通水を開始した。すなわち、原水は、V1、吸着塔A、V7、検出器1、吸着塔B、V5の順に通水されている。
検出器1のリン酸イオン濃度(リン濃度)を測定して、0.5 mg-P/リットル(ppm)を超過した時点で弁を切り替えて、次の吸着工程に移行した。すなわち、各弁の状態をV1−閉、V2−開、V3−閉、V4−閉、V5−閉、V6−開、V7−閉、V8−開、V9−閉として、原水を、V2、吸着塔B、V8、検出器2、吸着塔C、V6順に通水した。すなわち、吸着塔Bを前段、吸着塔Cを後段として通水した。
なお、吸着工程が終了して吸着容量が一杯になった吸着塔は、付属の再生設備(図示なし)によって、脱着、活性化された後、次の吸着工程に入るまで待機している。
この間、処理水のリン濃度は0.1mg-P/リットル以下であり、常にイオンを低濃度まで確実に除去可能であることが示された。
Claims (7)
- 多孔性成形体が充填された複数の直列に接続されたイオン吸着手段を含む水処理装置であって、該イオン吸着手段がメリーゴーランド方式であり、かつ該多孔性成形体が、有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含んでなるフィブリルが三次元網目構造を形成してなり、外表面に開口する連通孔を有する多孔性成形体であり、フィブリル間の隙間が連通孔を形成し、かつ前記フィブリルが内部に空隙を有していて、かつ、該空隙の少なくとも一部はフィブリルの表面で開孔しており、該フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に無機イオン吸着体が担持されていることを特徴とする水処理装置。
- 前記水処理装置において、最前段のイオン吸着手段の処理水中のイオン濃度を監視するイオン検出手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
- 前記連通孔が成形体表面付近に最大孔径層を有する請求項1又は2記載の水処理装置。
- 前記有機高分子樹脂が、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルホン(PS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選ばれる一種以上を含んでなる多孔性成形体である請求項1〜3のいずれか一項に記載の水処理装置。
- 前記無機イオン吸着体が、下記式(I)で表される金属酸化物を少なくとも一種含有している請求項1〜4のいずれか一項に記載の水処理装置。
MNxOn・mH2O (I)
(式中、xは0〜3、nは1〜4、mは0〜6であり、MおよびNは、Ti、Zr、Sn、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Si、Cr、Co、Ga、Fe、Mn、Ni、V、Ge、Nb及びTaからなる群から選ばれる金属元素であり、互いに異なる。) - 前記無機イオン吸着体に含有される式(I)で表される金属酸化物が、
水和酸化チタン、水和酸化ジルコニウム、水和酸化スズ、水和酸化セリウム、水和酸化ランタン、水和酸化イットリウム;チタン、ジルコニウム、スズ、セリウム、ランタン、イットリウムからなる群から選ばれる金属元素と、アルミニウム、珪素、鉄からなる群から選ばれる金属元素との複合金属酸化物、および活性アルミナからなる群から選ばれる金属酸化物である請求項5に記載の水処理装置。 - 多孔性成形体が充填された複数の直列に接続されたイオン吸着工程を含む水処理方法であって、該イオン吸着工程がメリーゴーランド方式であり、かつ
該多孔性成形体が、有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含んでなるフィブリルが三次元網目構造を形成してなり、外表面に開口する連通孔を有する多孔性成形体であり、フィブリル間の隙間が連通孔を形成し、かつ前記フィブリルが内部に空隙を有していて、かつ、該空隙の少なくとも一部はフィブリルの表面で開孔しており、該フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に無機イオン吸着体が担持されていることを特徴とする水処理方法。
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