JP5062972B2 - イオン除去装置およびイオン除去方法 - Google Patents
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Description
工業廃水中のこれらのイオンを除去する方法としては、従来凝集沈殿処理やイオン吸着処理が知られている。凝集沈澱処理は除去対象イオンを比較的高濃度で含有する廃水の処理が可能であるが、処理後の除去対象イオンの濃度を1mg/L以下にするような、いわゆる高度処理を目的とするような場合には多量の薬剤添加が必要になり、発生する汚泥も大量になるという問題点があった。
1.凝集沈殿処理手段と、多孔性成形体を用いたイオン吸着処理手段とを組み合わせて、水中に含有されるイオンを除去するイオン除去装置であって、該多孔性成形体が、有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含んでなるフィブリルが三次元網目構造を形成してなり、外表面に開口する連通孔を有する多孔性成形体であり、フィブリル間の隙間が連通孔を形成し、かつ前記フィブリルが内部に空隙を有していて、かつ、該空隙の少なくとも一部はフィブリルの表面で開孔しており、該フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に無機イオン吸着体が担持されていることを特徴とするイオン除去装置。
2.前記イオン吸着処理手段で用いた多孔性成形体を再生処理する際に生じる除去対象イオンを含有する再生排液を、前記凝集沈降処理手段に返送する手段を備えていることを特徴とする1.に記載のイオン除去装置。
4.前記多孔性成形体が、有機高分子樹脂としてエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルホン(PS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選ばれる一種以上を含んでなる多孔性成形体であることを特徴とする1.〜3.のいずれか一項に記載のイオン除去装置。
MNxOn・mH2O (I)
(式中、xは0〜3、nは1〜4、mは0〜6であり、MおよびNは、Ti、Zr、Sn、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Si、Cr、Co、Ga、Fe、Mn、Ni、V、Ge、Nb及びTaからなる群から選ばれる金属元素であり、互いに異なる。)
(a)水和酸化チタン、水和酸化ジルコニウム、水和酸化スズ、水和酸化セリウム、水和酸化ランタン、および水和酸化イットリウム
(b)チタン、ジルコニウム、スズ、セリウム、ランタン、およびイットリウムからなる群から選ばれる金属元素と、アルミニウム、珪素、および鉄からなる群から選ばれる金属元素との複合金属酸化物
(c)活性アルミナ
8.前記イオン吸着処理工程で用いた多孔性成形体を再生処理する際に生じる除去対象イオンを含有する再生排液を、前記凝集沈降処理工程に返送する工程を含むことを特徴とする7.に記載のイオン除去方法。
本発明でいう凝集沈殿処理には、工業廃水処理や下水処理等で実施されている従来公知の方法が何れも使用できる。
例えば、リンが除去対象イオンである場合には、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等のアルミニウム塩や、硫酸第一鉄、塩化第二鉄等の鉄塩、及び消石灰に代表される無機凝集剤を添加してリンを凝集沈殿させる方法がある。
ホウ素が除去対象イオンである場合には、アルミニウム塩、鉄塩、マグネシウム塩、カルシウム塩を添加して凝集沈殿させる方法や、アルミニウム塩と消石灰を併用して添加して凝集沈殿させる方法等がある。
また、ヒ素が除去対象イオンである場合には、鉄塩を添加して凝集沈殿させる方法等がある。
本発明でいうイオン吸着処理とは、イオン吸着能を有する成形体を吸着剤として用いて、該成形体を水と接触させて該水中に含有されるイオンを吸着除去する処理であるが、イオン吸着処理工程は、凝集沈降処理工程の後段に設ける。
本発明で用いる多孔性成形体は、連通孔を有し多孔質な構造を有する。さらに、外表面にはスキン層が無く、表面の開口性に優れる。さらに、連通孔を形成するフィブリル内部にも空隙を有し、その空隙の少なくとも一部はフィブリル表面で開孔している。
本発明の多孔性成形体の外表面開口率は、走査型電子顕微鏡で表面を観察した視野の面積中に占める全ての孔の開口面積の和の割合をいう。本発明では10,000倍で成形体の表面を観察し外表面開口率を実測した。
本発明の多孔性成形体の外表面開口径は、走査型電子顕微鏡で表面を観察して求める。孔が円形の場合はその直径、円形以外の場合は、同一面積を有する円の円相当直径を用いる。好ましい表面開口径の範囲は、O.005μm〜100μmであり、特にO.01μm〜50μmが好ましい。O.005μm未満では、リンやホウ素等の吸着対象物質の成形体内部への拡散速度が遅くなりやすく、一方、100μmを超えると成形体の強度が不足しやすい。
本発明で用いる多孔性成形体は、このように吸着基質が担持されている部分も多孔質であるため、吸着基質とバインダを練り込んでつくる従来の方法の欠点であった、吸着基質の微細な吸着サイトがバインダで塞がれるといったことが少なく、吸着基質を有効に利用することができる。
フィブリル表面の開孔径は、O.001μm〜5μmが好ましい。
本発明で用いる多孔性成形体の構造が発現するメカニズムを考察する。
さらに、成形体構造の決定(凝固)は、貧溶媒の内部への拡散により、外表面から内部へと順次進行していく。この方法では、成形体の表面にはスキン層と呼ばれる緻密な層が形成されるのが一般的である。
これに対し、本発明では、後述する水溶性高分子を添加することにより、相分離の過程で、ポリマーの絡み合いの間に水溶性高分子が分散し、介在することで、細孔同志が互いに連通し、フィブリル内部も多孔質となり、さらにフィブリル表面も開孔する。さらに、成形体の外表面においても開孔し、スキン層のない成形体が得られるものと考えられる。
さらに、水溶性高分子は、フィブリルの表面からその分子鎖を一部、あたかもヒゲのように伸ばすため、フィブリルの表面は親水性に保たれ、疎水的吸着などからの防汚効果が期待できる。
表面付近とは、外表面から中心部へ向かって、成形体の割断径の25%まで内側を意味する。
最大孔径層が成形体表面付近にあることによって、吸着対象物質の内部への拡散を速める効果を有する。よって、リンやホウ素といった吸着対象物質を素早く成形体内部に取り込み、処理水中から除去することができる。
孔径は、孔が円形の場合はその直径、円形以外の場合は、同一面積を有する円の円相当直径を用いる。
成形体の形態は、粒子状、糸状、シート状、中空糸状、円柱状、中空円柱状等の任意の形態をとることができる。
粒子状の成形体の成形方法は特に限定されないが、流体ノズルから、ポリマー溶液を噴霧して凝固浴中で凝固する方法が挙げられる。
ノズルの径は、0.1mm〜1Ommの範囲が好ましく、0.1mm〜5mmの範囲がより好ましい。O.1mmより小さいと液滴が飛散しにくい傾向があり、10mmを超えると、粒度分布が広くなる傾向がある。
なかでも、成形体を水処理分野において吸着剤として使用する場合には、カラム等に充填して通水する際の圧力損失、接触面積の有効性の点、取り扱い易さの点から粒子状が好ましく、特に球状粒子(真球状のみならず、楕円球状であってもよい)が好ましい。
Pr=(W1-WO)/(W1-WO+W0/ρ)×100
含水時の重量は、十分に水に濡れた成形体を、乾いたろ紙上に拡げ、余分な水分をとってから含水時の重量を測定すればよい。乾燥は、水分をとばすために、室温下で真空乾燥を行えばよい。成形体の比重は、比重瓶を用いて簡便に測定することができる。
好ましい空孔率Pr(%)の範囲は、50%〜90%であり、特に60〜85%が好ましい。50%未満ではリンやホウ素等の吸着対象物質と吸着基質である無機イオン吸着体との接触頻度が不十分となりやすい。90%を超えると、成形体の強度が不足しやすい。
担持量(%)=Wa/Wd×100
ここで、灰分とは成形体を800℃で2時間焼成したときの残分をいう。
好ましい担持量の範囲は、30〜95%であり、さらに好ましくは、40〜90%であり、特に65〜90%が好ましい。30%未満だと、リンやホウ素等の吸着対象物質と吸着基質である無機イオン吸着体との接触頻度が不十分となりやすく、95%を超えると、成形体の強度が不足しやすい。
本発明に用いる多孔性成形体の製造方法は、従来技術の添着法とは異なり、吸着基質と有機高分子樹脂を練り込んで成形するため、担持量を多く保ちかつ強度の強い成形体を得ることができる。
比表面積(m2/cm3)=S BET×かさ比重(g/cm3)
ここで、S BET は、成形体の単位重量あたりの比表面積(m2/g)である。
比表面積の測定方法は、成形体を室温で真空乾燥した後、BET法を用いて測定する。
かさ比重の測定方法は、粒子状、円柱状、中空円柱状等の形状が短いものは、湿潤状態の成形体を、メスシリンダー等を用いて、みかけの体積を測定する。その後、室温で真空乾燥して重量を求める。
糸状、中空糸状、シート状の形状が長いものについては、湿潤時の断面積と長さを測定して、両者の積から体積を算出する。その後、室温で真空乾燥して重量を求める。
一般的に、吸着基質である無機イオン吸着体の吸着性能(吸着容量)は、比表面積に比例する場合が多い。単位体積あたりの表面積が小さいと、カラムやタンクに充填したときの吸着容量、吸着性能が小さく、高速処理を達成しにくい。
本発明で用いる多孔性成形体の製造方法は、有機高分子樹脂とその良溶媒と無機イオン吸着体と水溶性高分子とを混合した後、成形し、貧溶媒中で凝固させることを特徴とする。
本発明で用いる有機高分子樹脂は、特に限定されないが、湿式相分離による多孔化手法が可能なものが好ましい。たとえば、ポリスルホン系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン系ポリマー、ポリ塩化ビニリデン系ポリマー、アクリロニトリル系ポリマー、ポリメタクリル酸メチル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、セルロース系ポリマー、エチレンビニルアルコール共重合体系ポリマー等、多種類が挙げられる。
また、本発明に用いる良溶媒は有機高分子樹脂および水溶性高分子を共に溶解するものであればいずれでもよい。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)等である。これらの良溶媒は1種又は混合溶媒としてもよい。
本発明に用いる水溶性高分子は有機高分子樹脂と相溶性のあるものであれば特に限定されない。
天然高分子では、グアーガム、ローカストビーンガム、カラーギナン、アラビアゴム、トラガント、ペクチン、デンプン、デキストリン、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン等が挙げられる。
さらに、合成高分子では、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、さらに、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール等のポリエチレングリコール類が挙げられる。
これらの水溶性高分子の中でも、耐生分解性を有する点で合成高分子が好ましい。
ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、2,000〜2,000,000の範囲が好ましく、2,000〜1,000,000の範囲がより好ましく、2,000〜100,000の範囲がさらに好ましい。重量平均分子量が2,000より小さいと、フィブリル内部に空隙を有する構造を発現させる効果が低くなる傾向があり、2,000,000を超えると、成形する時の粘度が上昇して、成形が難しくなる傾向がある。
含有量(%)=Ws/Wd ×100
水溶性高分子の含有量は、水溶性高分子の種類、分子量に左右されるが、0.001〜10%が好ましく、より好ましくは、0.01〜1%である。0.001%未満では、成形体の表面を開口させるのに効果が必ずしも十分でなく、10%を超えると相対的にポリマー濃度が薄くなり、強度が十分でない場合がある。
含有量(%)=Ws/Wd ×100
水溶性高分子の含有量は、水溶性高分子の種類、分子量に左右されるが、0.001〜10%が好ましく、より好ましくは、0.01〜1%である。0.001%未満では、成形体の表面を開口させるのに効果が必ずしも十分でなく、10%を超えると相対的にポリマー濃度が薄くなり、強度が十分でない場合がある。
例えば、天然物ではゼオライトやモンモリロナイト、各種の鉱物性物質があり、合成物系では金属酸化物等がある。前者はアルミノケイ酸塩で単一層格子をもつカオリン鉱物、2層格子構造の白雲母、海緑石、鹿沼土、パイロフィライト、タルク、3次元骨組み構造の長石、ゼオライトなどで代表される。後者は、多価金属の塩、金属酸化物、不溶性のヘテロポリ酸塩、不溶性ヘキサシアノ鉄酸塩などが主要なものである。
M2+ (1−X)M3+ x(OH-)(2+x-y)(An−)y/n (II)
〔式中、M2+はMg2+、Ni2+、Zn2+、Fe2+、Ca 2+及びCu2+からなる群から選
ばれる少なくとも1種の二価の金属イオンを示し、M3+はAl3+及びFe3+からなる群から選ばれる少なくとも1種の三価の金属イオンを示し、An-はn価のアニオンを示し、0.1≦x≦ 0.5であり、0.1≦y≦0.5であり、nは1または2である。〕
MNxOn・mH2O (I)
(式中、xは0〜3、nは1〜4、mは0〜6であり、MおよびNは、Ti、Zr、Sn、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Si、Cr、Co、Ga、Fe、Mn、Ni、V、Ge、Nb及びTaからなる群から選ばれる金属元素であり、互いに異なる。)
本発明でいう金属酸化物とは、式(I)中のmが0で表せる未水和(未含水)の金属酸化物であっても良いし、mが0以外の数値で表せる水和(含水)金属酸化物であっても良い。
また式(I)中のxが0以外の数値である場合の金属酸化物は、含有される各金属元素が規則性を持って酸化物全体に均一に分布して、例えば、ペロブスカイト構造、スピネル構造等を形成し、ニッケルフェライト(NiFe2O4)、ジルコニウムの含水亜鉄酸塩(Zr・Fe2O4・mH2O mは0.5〜6)のごとく金属酸化物に含有される各金属元素の組成比が一定に定まった化学式で表される、複合金属酸化物である
(a)水和酸化チタン、水和酸化ジルコニウム、水和酸化スズ、水和酸化セリウム、水和酸化ランタン、および水和酸化イットリウム
(b)チタン、ジルコニウム、スズ、セリウム、ランタン、およびイットリウムからなる群から選ばれる金属元素と、アルミニウム、珪素、および鉄からなる群から選ばれる金属元素との複合金属酸化物
(c)活性アルミナ
また、硫酸アルミニウム添着活性アルミナ、硫酸アルミニウム添着活性炭等も好ましい。
本発明で用いる無機イオン吸着体は、式(I)で表せる金属酸化物を複数種含有していても良い。各金属酸化物の分布状態については特に制限はないが、各金属酸化物の有する特性を有効に活用し、よりコストパフォーマンスに優れる無機イオン吸着体を得るためには、特定の金属酸化物の廻りを、他の金属酸化物が覆った混合体構造にすることが好ましい。このような構造としては、四三酸化鉄の廻りを水和酸化ジルコニウムが覆った構造が例示できる。
上述の例においては、水和酸化ジルコニウムはリン、ホウ素、フッ素、ヒ素等のイオンに対する吸着性能や繰り返し使用に対する耐久性能は高いが、高価である。一方、四三酸化鉄は、水和酸化ジルコニウムに比較してリン、ホウ素、フッ素、ヒ素等のイオンに対する吸着性能や繰り返し使用に対する耐久性能は低いが、非常に安価である。
なお、本発明の無機イオン吸着体は、その製造方法等に起因して混入する不純物元素を
本発明の目的の達成を逸脱しない範囲で含有していても良い。混入する可能性がある不純物元素としては窒素(硝酸態、亜硝酸態、アンモニウム態)、ナトリウム、マグネシウム、イオウ、塩素、カリウム、カルシウム、銅、亜鉛、臭素、バリウム、ハフニウム等が考えられる。
前述の製造法において用いられる鉄の塩としては、硫酸第一鉄(FeSO4)、硝酸第一鉄(Fe(NO3)2)、塩化第一鉄(FeC12)等の第一鉄塩が挙げられる。これらもFeSO4・7H2Oなどの含水塩であってもよい。これらの第一鉄塩は通常、固形物で加えられるが、溶液状で加えてもよい。
酸化性ガスを吹き込む場合、その時間は、酸化性ガスの種類などによって異なるが、通常約1〜10時間程度である。酸化剤としては、たとえば過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムなどが用いられる。
粒子径が0.01μmより小さいと、製造時のスラリー粘度が上昇し、成形しにくい傾向があり、100μmより大きいと、比表面積が小さくなるため、吸着性能が低下する傾向にある。
ここでいう粒子径とは、一次粒子と、一次粒子が凝集した二次粒子の両方又は混合物の粒子径をいう。本発明の無機イオン吸着体の粒子径は、レーザー光による回折の散乱光強度の角度分布から求めた球相当径のモード径(最頻度粒子径)である。
本発明のイオン吸着処理は、上述の多孔性成形体を吸着剤として用い、その多孔性成形体を処理対象の水と接触させて該水中に含有されるイオンを、多孔性成形体に吸着させて除去する処理である。通常多孔性成形体は容器内に充填して用いられるが、その容器の形状や多孔性成形体の充填層の形状については、多孔性成形体と処理対象の水が接触できるのであれば、特に制限はなく、例えば、円筒状、円柱状、多角柱状、箱型の容器に充填し、カラム、吸着塔、吸着槽等として用いることができるが、カラムや吸着塔に充填して、被処理水を通液して接触させる方が、多孔性成形体の特徴である接触効率の高さを充分に引き出せる。
容器の材質は、特に限定されるものではないが、ステンレス、FRP(ガラス繊維入り強化プラスチック)、ガラス、各種プラスチックが挙げられる。耐酸性を考慮して、内面をゴムやフッ素樹脂ライニングとすることもできる。
円筒状の多孔性成形体の充填層に円周方向外側から内筒へ通水する外圧方式、その逆方向に通水する内圧方式、箱型の充填層に水平方向に通水する方式等が例示できる。また、多孔性成形体の充填層を流動床方式としても良い。
例えば、液体中のリンを吸着対象とし、水和酸化ジルコニウムまたは四三酸化鉄を水和酸化ジルコニウムで覆った構造の無機イオン吸着体を用いた場合のpH調整範囲は、pH1.5〜10の範囲が好ましく、さらに好ましくは、pH2〜7である。
また、液体中のホウ素を吸着対象とし、水和酸化セリウムまたは四三酸化鉄を水和酸化セリウムで覆った構造の無機イオン吸着体を用いた場合のpH調整範囲は、pH3〜10の範囲が好ましく、さらに好ましくは、pH5〜8である。
また、液体中のヒ素を吸着対象とし、水和酸化セリウムまたは四三酸化鉄を水和酸化セリウムで覆った構造の無機イオン吸着体を用いた場合のpH調整範囲は、pH3〜12の範囲が好ましく、さらに好ましくは、pH5〜9である。
アルカリ性水溶液の通液速度は、特に制限はないが、通常SV0.5〜15(hr−1)の範囲が好ましい。SVO.5より低いと、脱着時間が長時間になり非効率になる傾向があり、SV15より大きいと、多孔性成形体とアルカリ水溶液の接触時間が短くなり、脱着効率が低下する傾向がある。
また、本発明においては、多孔性成形体の再生処理に用いたアルカリ水溶液(再生排液)は、晶析処理を施し、生じた沈殿を除去することも可能である。すなわち、この再生排液は、多孔性成形体から脱着したイオンを含有しているが、これらイオンと沈殿を生じる晶析薬剤を添加し、生じた沈殿を除去することで再利用が可能となる。
また、本発明においては、多孔性成形体から脱着したイオンを含有している再生排液を、凝集沈殿処理に戻して再度処理しても良い。イオン除去処理のイニシャルコストをより下げるという観点からは、再生排液は凝集沈殿処理に戻して再度処理することが好ましい。
酸性水溶液は、特に限定されないが、硫酸、塩酸等の水溶液が用いられる。濃度は、O.001〜10wt%程度であればよい。O.001wt%より薄いと、活性化終了までに大量の水ボリュームが必要になり、10wt%より濃いと、酸性水溶液の取り扱い上の危険性等の点で問題が生じるおそれがある。
活性化方法においてさらに好ましい方法は、カラムとpH調整槽の間で活性液を循環させて行うことである。
この構成をとることにより、脱着操作でアルカリ側にシフトしたカラム中の多孔性成形体のpHを、無機イオン吸着体の耐酸性を考慮して、ゆるやかに所定のpHに戻すことができる。
このような従来技術に対して、本発明の活性化方法は、カラムとpH調整槽を設けて、活性化液を循環するため、酸によって溶解するpH範囲を避けて活性化でき、さらに、活性化に用いる水のボリュームを少なくすることができ、装置をコンパクトにできる。
この時の通液速度は、通常SV1〜200(hr-1)の範囲で選ばれる。さらに好ましくは、SV1O〜100の範囲である。SV1より低いと、活性化時間が長時間になり非効率になる傾向があり、SV200より大きいと、大きなポンプ動カが必要であり非効率になる傾向がある。
本発明に用いる多孔性成形体は、耐薬品性、強度に優れているため、この再生処理を数十回から数百回以上繰り返してもイオンの吸着性能はほとんど低下しない。
次に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
・走査型電子顕微鏡による成形体の観察
走査型電子顕微鏡(SEM)による成形体の観察は、目立製作所製のS-800型走査型電子顕微鏡で行った。
・成形体の割断
成形体を室温で真空乾燥し、乾燥した成形体をイソプロピルアルコール(IPA)に加えて、成形体中にIPAを含浸させた。次いで、IPAと共に成形体を直径5mmのゼラチンカプセルに封入し、液体窒素中で凍結した。凍結した成形体をカプセルごと彫刻刀で割断した。割断されている成形体を選別して顕微鏡試料とした。
走査型電子顕微鏡を用いて撮影した成形体の表面の画像を、画像解析ソフト(三谷商事(株)製ウインルーフ(商品名))を用いて求めた。さらに詳しく説明すると、得られたSEM像を濃淡画像として認識し、色が濃い部分を開口部、色が薄い部分をフィブリルとして、しきい値を手動で調整し、開口部分とフィブリル部分に分割して、その面積比を求めた
・表面の開口径
走査型電子顕微鏡を用いて撮影した成形体の表面の画像から実測して求めた。孔が円形の場合はその直径、円形以外の場合は、同一面積を有する円の円相当直径を用いた。
成形体および無機イオン吸着体の粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA杜製のLA-910(商品名))で測定した。但し、粒径が1、OOOμm以上の場合には、SEM像を用いて、成形体の最長直径と最短直径を測定し、その平均値を粒径とした。
・空孔率
十分に水に濡れた成形体を乾いたろ紙上に拡げ、余分な水分をとった後に重量を測定し、成形体の含水時の重量(W1)とした。次に、成形体を室温下で真空乾燥に24時間付して乾燥した成形体を得た。乾燥した成形体の重量を測定し、成形体の乾燥時の重量(W0)とした。
下記の計算式に従って、成形体の比重(ρ)、および、空孔率(Pr)を求めた。
ρ=M/(Ww+M-Wwm)
Pr=(W1-W0)/(W1-W0+W0/ρ)×100
式中、Prは空孔率(%)であり、W1は成形体の含水時の重量(g)、WOは成形体の乾燥後の重量(g)、および、ρは成形体の比重(g/cm3)、Mは成形体の乾燥後の重量(g)、Wwは比重瓶の満水時の重量(g)、Wwmは比重瓶に含水した成形体と純水を入いたときの重量(g)である。
成形体を室温下で真空乾燥に24時間付して乾燥した成形体を得た。乾燥した成形体の重量を測定し、成形体の乾燥時の重量Wd(g)とした。次に、乾燥した成形体を、電気炉を用いて800℃で2時間焼成して灰分の重量を測定し、灰分の重量Wa(g)とした。下記式より、担持量を求めた。
担持量(%)=Wa/Wd×100
式中、Waは、成形体の灰分の重量(g)であり、Wdは成形体の乾燥時の重量(g)である。
成形体を室温で真空乾燥した後、ベックマン・コールター(株)杜製コールターSA3100(商品名)を用い、BET法で多孔性成形体の比表面積SBET(m2/g)を求めた。
次に、湿潤状態の成形体を、メスシリンダー等を用いてみかけの体積V(cm3)を測定した。
その後、室温で真空乾燥して重量W(g)を求める。
本発明の成形体の比表面積は、次式から求めた。
比表面積(m2/cm3)= SBET×かさ比重(g/cm3)
かさ比重(g/cm3)=W/V
式中、SSBETは成形体の比表面積(m2/g) であり、Wは成形体の乾燥重量(g)、Vはそのみかけの体積(cm3)である。
オキシ塩化ジルコニウム(ZrOC12)のO.15モル水溶液を1リットル調製した。この溶液中にはジルコニウムとして13.7gの金属イオンが含まれていた。この水溶液中に硫酸第一鉄結晶(FeSO4・7H2O)84.Ogを添加し、撹幹しながら溶解した。この量は鉄イオンとしてO.3モルに相当する(F/T(モル比) 0.67)。次にこの水溶液に15重量%の水酸化ナトリウム溶液を撹拌しながら液のpHが9になるまで滴下すると青緑色の沈澱が生じた。次に、この水溶液を50℃に加温しながら10リットル/時の流量で空気を吹き込んだ。空気吹き込みを続けると水溶液のpHが低下するので、この場合は、15重量%の水酸化ナトリウム溶液を滴下してpHを8.5〜9に保持した。吸光光度分析で液相に第一鉄イオンが検出できなくなるまで空気の吹き込みを続けると黒色の沈澱が生成した。次に、この黒色沈澱物を吸引濾別し、脱イオン水で濾液が中性となるまで洗浄した後、70℃以下で乾燥した。これをボールミルで7時間粉砕し、平均粒径2.8μmの無機イオン吸着体粉末を得た。この粉末の
BET比表面積は、170 m2/gであった。
次に、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH、日本合成化学工業(株)、ソアノールE3803(商品名))10g、ポリビニルピロリドン(PVP、BASFジャパン(株)、Luvitec K30 Powder(商品名))10g、ジメチルスルホキシド(DMSO、関東化学(株))80gを、セパラフラスコ中にて、60℃に加温して溶解し、均一なポリマー溶液を得た。このポリマー溶液100gに対し、上述の無機イオン吸着体粉末95gを加え、よく混合してスラリーを得た。
本球状多孔性成形体は、空孔率80%、表面開口径0.1〜10μm、担持量82%、表面開口率56%、比表面積65m2/cm3であった。
さらに得られた多孔性成形体の表面および割断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、スキン層の存在は観察されなかった。また表面付近に最大孔径層(ボイド層)が観察され、フィブリル内部の空隙、およびフィブリル表面の開孔も確認された。さらに、そのフィブリル外表面およびフィブリル内部の空隙表面には無機イオン吸着体粉末が担持されている様子が観察された。
まず、製造例で作った多孔性成形体について、リン吸着試験を以下の条件で実施した。
得られた多孔性成形体8mlを、カラム(内径10mm)に充填して、さきの吸着原液を240ml/hr(SV30)の速度で通水した。カラムからの流出液(処理液)を30分毎にサンプリングして、該処理水中のリン酸イオン濃度(リン濃度)を測定して、0.5 mg-P/リットル(ppm)超過時までの通水量(吸着量)を求めた。
上記の吸着操作後、7wt%の水酸化ナトリウム水溶液に2時間浸漬し、吸着したリン酸を脱着させた後、蒸留水で洗浄した。次に、O.1wt%の硫酸水溶液に5時間浸漬して再生を行った。次に再び蒸留水で洗浄した。
以上の吸着、脱着および再生操作を50回繰り返し、1回目と50回目の吸着量とその変化率を調べた。
吸着量変化率=(50回目の吸着量)/(1回目の吸着量)×100
結果は、1回目吸着量940mg−P/L−吸着剤、50回目吸着量910mg−P/L−吸着剤、吸着量変化率97%であり、吸着容量は1回目と50回目ではほとんど変化がなくであり、本吸着剤の耐久性の高さが確認された。
100mg/Lのフッ素を含有する廃水を本発明のイオン除去装置に供給した。
凝集沈澱処理では、カルシウム塩として水酸化カルシウムを9kg/m3-廃水、アルミニウム塩として硫酸アルミニウムを5kg/m3-廃水を使用した。凝集沈澱処理後の処理水中のフッ素濃度は11mg/Lであった。
この凝集沈澱処理後の処理水をpH11に調整した後、イオン吸着処理を行い、さらにpHを7に調整して最終処理水を得た。最終処理水中のフッ素濃度は1mg/L未満であった。
なお、pH調整には硫酸および水酸化ナトリウムを使用した。
2 イオン吸着処理工程
Claims (8)
- 凝集沈殿処理手段と、多孔性成形体を用いたイオン吸着処理手段とを組み合わせて、水中に含有されるイオンを除去するイオン除去装置であって、該多孔性成形体が、有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含んでなるフィブリルが三次元網目構造を形成してなり、外表面に開口する連通孔を有する多孔性成形体であり、フィブリル間の隙間が連通孔を形成し、かつ前記フィブリルが内部に空隙を有していて、かつ、該空隙の少なくとも一部はフィブリルの表面で開孔しており、該フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に無機イオン吸着体が担持されていることを特徴とするイオン除去装置。
- 前記イオン吸着処理手段で用いた多孔性成形体を再生処理する際に生じる除去対象イオンを含有する再生排液を、前記凝集沈降処理手段に返送する手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のイオン除去装置。
- 前記多孔性成形体の連通孔が、成形体表面付近に最大孔径層を有することを特徴とする請求項1または2に記載のイオン除去装置。
- 前記多孔性成形体が、有機高分子樹脂としてエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルホン(PS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選ばれる一種以上を含んでなる多孔性成形体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のイオン除去装置。
- 前記無機イオン吸着体が、下記式(I)で表される金属酸化物を少なくとも一種含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のイオン除去装置。
MNxOn・mH2O (I)
(式中、xは0〜3、nは1〜4、mは0〜6であり、MおよびNは、Ti、Zr、Sn、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Si、Cr、Co、Ga、Fe、Mn、Ni、V、Ge、Nb及びTaからなる群から選ばれる金属元素であり、互いに異なる。) - 前記式(I)で表される金属酸化物が、下記(a)〜(c)のいずれかの群から選ばれた1種またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項5に記載のイオン除去装置。
(a)水和酸化チタン、水和酸化ジルコニウム、水和酸化スズ、水和酸化セリウム、水和酸化ランタン、および水和酸化イットリウム
(b)チタン、ジルコニウム、スズ、セリウム、ランタン、およびイットリウムからなる群から選ばれる金属元素と、アルミニウム、珪素、および鉄からなる群から選ばれる金属元素との複合金属酸化物
(c)活性アルミナ - 凝集沈殿処理工程と、多孔性成形体を用いたイオン吸着処理工程とを組み合わせて、水中に含有されるイオンを除去するイオン除去方法であって、該多孔性成形体が、有機高分子樹脂及び無機イオン吸着体を含んでなるフィブリルが三次元網目構造を形成してなり、外表面に開口する連通孔を有する多孔性成形体であり、フィブリル間の隙間が連通孔を形成し、かつ前記フィブリルが内部に空隙を有していて、かつ、該空隙の少なくとも一部はフィブリルの表面で開孔しており、該フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に無機イオン吸着体が担持されていることを特徴とするイオン除去方法。
- 前記イオン吸着処理工程で用いた多孔性成形体を再生処理する際に生じる除去対象イオンを含有する再生排液を、前記凝集沈降処理工程に返送する工程を含むことを特徴とする請求項7に記載のイオン除去方法。
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