JP5062926B2 - ガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は難燃性ポリアミド樹脂組成物に関する。特に、電気、電子分野のコネクター、ブレーカー、マグネットスイッチ等の部品、自動車分野の電装部品等の部品材料に好適に用いられるガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物に関する。とりわけ、本発明は難燃性が極めて高く、燃焼時に腐食性の高いハロゲン化水素ガスの発生がなく、かつ優れた電気特性と機械的特性を兼ね備えたガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリアミド樹脂は、機械的強度、耐熱性などに優れることから、自動車部品、機械部品、電気、電子部品などの分野で使用されている。特に、電気、電子部品用途において、ますます難燃性に対する要求レベルが高くなり、本来ポリアミド樹脂の有する自己消火性よりもさらに高度な難燃性が要求されている。この為、アンダーライターズ・ラボラトリーのUL94V−0規格に適合する難燃レベルの高度化検討が数多くなされ、それらは一般にハロゲン系難燃剤やトリアジン系難燃剤を添加する方法が取られている。
【0003】
例えば、ポリアミド樹脂への塩素置換多環式化合物の添加(特開昭48−29846号公報)や臭素系難燃剤、例えば、デカブロモジフェニルエーテルの添加(特開昭47−7134号公報)、臭素化ポリスチレンの添加(特開昭51−47044号公報、特開平4−175371号公報)、臭素化ポリフェニレンエーテルの添加(特開昭54−116054号公報)、臭素化架橋芳香族重合体の添加(特開昭63−317552号公報)、臭素化スチレン−無水マレイン酸重合体の添加(特開平3−168246号公報)等が知られている。
【0004】
特にこれらハロゲン系難燃剤をガラス繊維等で強化したポリアミド樹脂に配合した組成物は高度の難燃性と高い剛性から、電気、電子部品用途、特にプリント積層板に搭載されたり接続されたりするコネクター用途に多用されてきた。しかしながら、ハロゲン系難燃剤は燃焼時に腐食性のハロゲン化水素及び煙を発生したり、有毒な物質を排出する疑いがもたれ、これら環境問題からハロゲン系難燃剤の配合されたプラスチック製品の使用を規制する動きがある。
【0005】
このことから、ハロゲンフリーのトリアジン系難燃剤が注目され数多く検討がなされている。例えば難燃剤としてメラミンを使用する技術(特公昭47−1714号公報)、シアヌル酸を使用する技術(特開昭50−105744号公報)、シアヌル酸メラミンを使用する技術(特開昭53−31759号公報)が良く知られている。これらの技術で得られた非強化のポリアミド樹脂組成物はUL94V−0規格に適合する高度の難燃レベルを有するものの、ガラス繊維等の無機強化材で強化し剛性を高めた組成においては、難燃剤を多量に配合した場合であっても、燃焼時、綿着火現象があり、UL94V−0規格に適合しない場合がある。
【0006】
一方、イントメッセント型難燃剤であるリン酸メラミン、ピロリン酸メラミンあるいはポリリン酸メラミンをガラス繊維強化ポリアミド樹脂に使用するハロゲンフリーの難燃技術(特表平10−505875号公報)、無機質強化ポリアミド樹脂にポリリン酸メラミンに加えチャー化触媒及び/又はチャー形成剤を併用する難燃技術(WO98/45364)が提案され、1/16inchの成形品において難燃規格UL94V−0規格を満足することが知られている。
【0007】
しかし、これらの技術では、電気、電子部品のコネクター用途で特に要求される1/32inchの薄肉成形品でのUL94V−0規格を満足するためにはリン酸メラミン系難燃剤を多く用いる必要があり、この為、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の機械的特性が低下するばかりでなく、電気特性、とりわけ高い電圧環境下に於いて使用される電気部品に要求される耐トラッキング性に劣る傾向がある。さらには成形加工時の離型性にも劣る傾向があり、又、高い成形温度で長期間成形すると金型腐食も起こり易くなり、必ずしも電気、電子部品用の成形材料として満足されるものではなかった。
【0008】
又、1/32inchの薄肉成形品での難燃規格UL94V0を達成する技術として、イントメッセント型難燃剤である硫酸メラミンをガラス繊維強化半芳香族ポリアミド樹脂に適用した技術(特開2000−11951号公報)も開示されているが、この技術においてもポリアミド樹脂成分量に対して難燃剤を多く配合する必要があり、上記と同様の問題があった。さらには、1/32inchの薄肉成形品での難燃規格UL94V−0を達成しつつ、高い耐トラッキング性を付与する技術として無機質強化ポリアミド樹脂にリン酸メラミン複合難燃剤に加えアルカリ土類金属塩を配合する技術(WO00/09606)も提案されているが、この技術で得られた成形品は脆く、例えば複雑な形状を有するコネクターに適用した際は、取り扱い時や運搬時にコネクターが欠けたり、割れを生じる場合があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、難燃性が極めて高く、燃焼時に腐食性の高いハロゲン化水素ガスの発生がなく、かつ優れた電気特性と機械的特性を兼ね備えたガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、ガラス繊維、リン酸メラミン系難燃剤及びポリアミド樹脂を組み合わせた系に於いて特定の集束剤で表面処理されているガラス繊維を適用した際に、前記目的を達成しうることを見いだし、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0011】
1. (a)ポリアミド樹脂30〜70wt%、(b)リン酸メラミン系難燃剤10〜40wt%及び(c)ガラス繊維5〜50wt%とからなるガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物であって、(c)ガラス繊維が、無水マレイン酸と不飽和単量体とのコポリマー及び/又はスチレンーアクリル酸コポリマー及びシラン系カップリング剤とを含む(d)集束剤で表面処理されていることを特徴とするガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物。
2. (a)ポリアミド樹脂が、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、MXD6ナイロン及びこれらのコポリアミドの中から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする1.に記載のガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物。
【0012】
3. (a)ポリアミド樹脂が、下記(1)〜(4)の中から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする1.に記載のガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物。
(1)ポリアミド66単位70〜95wt%とポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)単位5〜30wt%とからなる共重合体
(2)ポリアミド66単位60〜89wt%とポリアミド6I単位5〜30wt%及び脂肪族ポリアミド単位(但し、ポリアミド66単位を除く)1〜10wt%とからなる3元共重合体
(3)ポリアミド66 70〜95wt%とポリアミド6I 5〜30wt%との混合ポリアミド
(4)ポリアミド66 60〜89wt%とポリアミド6I 5〜30wt%及び脂肪族ポリアミド単位(但し、ポリアミド66単位を除く)を有する重合体1〜10wt%との混合ポリアミド
【0013】
4. (b)リン酸メラミン系難燃剤がリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンの中から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載のガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物。
5. (b)リン酸メラミン系難燃剤の平均粒径が0.5〜20μmであることを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載のガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物。
【0014】
6. (b)リン酸メラミン系難燃剤がポリリン酸メラミンであり、その縮合度が5以上であることを特徴とする1.〜5.のいずれかに記載のガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物。
7. (d)集束剤をガラス繊維100質量部当たり0.1〜2質量部含有することを特徴とする1.〜6.のいずれかに記載のガラス繊維強化難燃燃性ポリアミド樹脂組成物。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明に用いられるポリアミド樹脂に特に制限はないが、例えば、ε−カプロラクタム、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、ビス(3−メチル−4アミノシクロヘキシル)メタン等のポリアミド形成性モノマーを適宜組み合わせて得られるホモポリマー、共重合体及びこれらの混合物を用いることができる。
【0016】
具体的にはポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、MXD6ナイロン及びこれらのコポリアミド及びこれらの混合物が耐熱性の点で好ましい。
又、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)単位及びポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)単位を主たる構成成分とする半芳香族ポリアミド樹脂、特にポリアミド6I単位を5〜30wt%含む半芳香族ポリアミド樹脂がリン酸メラミン系難燃剤と組み合わせた際に高度の難燃性を発現するので更に好ましい。
【0017】
かかる半芳香族ポリアミド樹脂として具体的には、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)単位70〜95wt%とポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)単位5〜30wt%との共重合体(ポリアミド66/6I)が耐熱性、成形品外観性、成形加工性、電気特性を満足するので好ましく、とりわけポリアミド66単位70〜90wt%とポリアミド6I単位10〜30wt%との共重合体が上記特性に加え、難燃性と成形時の良離型性を有するので特に好ましい。
また、ポリアミド66 70〜95wt%とポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)5〜30wt%との混合ポリアミドは耐熱性が高く、耐ハンダ性を要求される用途には好ましい。
【0018】
又、ポリアミド66単位の一部を他の脂肪族ポリアミド単位で置き換えた、ポリアミド66単位60〜89wt%、ポリアミド6I単位5〜30wt%及び他の脂肪族ポリアミド単位1〜10wt%からなる3元共重合体は成形流動性に優れる。かかる3元共重合体としては、例えばカプロアミド単位(ポリアミド6単位)、ウンデカアミド単位(ポリアミド11単位)、ドデカアミド単位(ポリアミド12単位)、ヘキサメチレンセバカミド単位(ポリアミド610単位)、ヘキサメチレンドデカミド単位(ポリアミド612単位)でポリアミド66単位の一部を置換した3元共重合体(ポリアミド66/6I/6)、(ポリアミド66/6I/11)、(ポリアミド66/6I/12)、(ポリアミド66/6I/610)、(ポリアミド66/6I/612)が例示できる。
【0019】
また、ポリアミド66 60〜89wt%、ポリアミド6I 5〜30wt%及び他の脂肪族ポリアミド単位を有する重合体1〜10wt%からなる混合ポリアミドであっても本発明の目的を達成できる。ポリアミド6Iは、耐熱性、成形加工性、電気特性の観点から30wt%以下が好ましく、難燃性の観点から5wt%以上が好ましい。
本発明の共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体のどちらであっても良く、又、これら共重合体は本願発明の目的を損なわない範囲で他の芳香族ポリアミド樹脂を共重合成分として含んでいても良い。又、混合ポリアミドとは、2成分以上からなるポリアミドをブレンド、溶融混練等の重合以外の一般に使われる方法により混合したポリアミドのことである。本発明の半芳香族ポリアミド樹脂の分子量は成形可能な範囲の物であれば良く、JIS K6810に示される硫酸相対粘度が1.5〜3.5の範囲にあるポリアミド樹脂が成形流動性が良好でかつ高度な難燃レベルを保持できるので特に好ましい。
【0020】
本発明で用いられるリン酸メラミン系難燃剤(b)とは化学式C3H6N6・H3PO4、又は、(C3H6N6・HPO3)n、(ここでnは縮合度を表し、n≧3)で示されるものが好ましく、メラミンとリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸との実質的に等モルの反応生成物であるリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン等を挙げることができる。リン酸メラミン系難燃剤の製法には特に制約はない。好ましいリン酸メラミン系難燃剤としては耐熱性の点で、リン酸メラミンを窒素雰囲気下、加熱縮合して得られるポリリン酸メラミンを挙げることができる。
【0021】
ここでポリリン酸メラミンを構成するリン酸としては、具体的にはオルトリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等が挙げられるが、特にオルトリン酸、ピロリン酸を用いたメラミンとの付加物を縮合したポリリン酸メラミンが難燃剤としての効果が高く、好ましい。
特に耐熱性の点からかかるポリリン酸メラミンの縮合度nは5以上が好ましい。また、ポリリン酸メラミンはポリリン酸とメラミンの等モルの付加塩であっても良く、メラミンとの付加塩を形成するポリリン酸としては、いわゆる縮合リン酸と呼ばれる鎖状ポリリン酸、環状ポリメタリン酸等が挙げられる。これらポリリン酸の縮合度nには特に制約はなく通常3〜50が好ましいが、得られるポリリン酸メラミン付加塩の耐熱性の点でここに用いるポリリン酸の縮合度nは5以上がより好ましい。
【0022】
かかるポリリン酸メラミン付加塩は例えば、メラミンとポリリン酸との混合物を水スラリーとし、よく混合して両者の反応生成物を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、洗浄、乾燥し、さらに必要であれば焼成し、得られた固形物を粉砕して得られる粉末である。
本発明の組成物を成形して得られる成形品の機械的強度、成形品外観の点でリン酸メラミン系難燃剤の粒径は100μm以下が好ましく、より好ましくは50μm以下に粉砕した粉末を用いるのが良い。0.5〜20μmの粉末を用いると高い難燃性を発現するばかりでなく成形品の強度が著しく高くなるので特に好ましい。又、リン酸メラミン系難燃剤はは必ずしも完全に純粋である必要はなく、未反応のメラミンあるいはリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸が多少残存していても良い。リン酸メラミン系難燃剤中にリン原子として10〜18wt%含有するものが、成形加工時に成形金型に汚染性物質が付着する現象が少なく特に好ましい。
【0023】
リン酸メラミン系難燃剤は、シアヌル酸メラミンに代表されるトリアジン系難燃剤に比較して、ガラス繊維等の無機質強化材と併用して使用した際に、高度の難燃化効果を発揮し、特にポリアミド66とポリアミド6Iとの共重合体及び又は混合ポリアミドに配合した際には更に高度な難燃化効果を発現する。
本発明に用いる(c)ガラス繊維は、ポリアミド樹脂の補強材となるものであれば何でも良いが、ガラス繊維をポリアミド樹脂に配合する際の供給精度の点からガラス繊維長さ1〜10mm、平均ガラス繊維直径3〜30μmのチョップドタイプの短繊維が好ましい。特に好ましいガラス繊維の形状は補強効果とガラス繊維分散性の点から、繊維長さ2〜7mm、平均繊維直径5〜15μmのガラス繊維である。更に、ガラス繊維はポリアミド樹脂用の集束剤(d)(これにはいわゆるサイジングを目的とした集束成分とポリアミド樹脂との接着性を目的とした表面処理成分を含む)で表面処理されているものが好ましい。
【0024】
ここで用いる集束剤としては、無水マレイン酸と不飽和単量体とのコポリマー及び/又はスチレンーアクリル酸コポリマー及びシラン系カップリング剤を含むものであるが、電気特性、特に耐トラッキング性や機械的特性への改善効果の点から無水マレイン酸と不飽和単量体とのコポリマーとアミノ系シランカップリング剤を主たる構成成分とするものが最も好ましい。集束剤を構成する無水マレイン酸と不飽和単量体とのコポリマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン等の不飽和単量体と無水マレイン酸とのコポリマーが具体的に挙げられ、その中でもブタジエン、スチレンとのコポリマーが特に好ましい。そしてこれら単量体は2種以上併用してもよい。上記無水マレイン酸と不飽和単量体とのコポリマーは平均分子量2,000以上であることが好ましい。又、無水マレイン酸と不飽和単量体との割合は特に制限されない。更に無水マレイン酸コポリマーに加えてアクリル酸系コポリマーやウレタン系ポリマーを併用して用いても何ら差し支えない。
【0025】
本発明の集束剤を構成するもう一つの成分であるシラン系カップリング剤としては通常ガラス繊維の表面処理に用いられるシラン系カップリング剤がいずれも使用できる。
具体的にはγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤、
【0026】
γ−メタクリロキプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキプロピルトリエトキシシラン等のメタクロキシシラン系カップリング剤、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン等のビニルシラン系カップリング剤が挙げられる。これらカップリング剤は2種以上併用して用いることもできる。これらの中で特にポリアミド樹脂との親和性からアミノシラン系カップリング剤が最も好ましい。
【0027】
上記無水マレイン酸コポリマーとシラン系カップリング剤との使用割合は広範囲にわたって変え得るが、比較的良好な物性バランスを与えるのは前者100質量部に対して後者0.01〜50質量部の割合である。通常、無水マレイン酸コポリマーとシラン系カップリング剤は水溶媒中で混和して集束剤として用いられるが、更に必要に応じて界面活性剤、滑剤、柔軟剤、帯電防止剤等を加えても良い。集束剤はガラス繊維が作られる工程、あるいは作られた後の工程でガラス繊維表面に付着させて用いられるが、これを乾燥させると、上記コポリマーとカップリング剤からなる被覆がガラス繊維表面に形成される。
【0028】
この時の集束剤の乾燥後の最終付着量はガラス繊維100質量部当たり、ガラス繊維の集束性、ガラス繊維強化粒状体の成形品の物性の観点から0.1質量部以上が好ましく、ガラス繊維同士の集束性、成形品外観の観点から2質量部以下の範囲にあることが好ましい。より好ましい集束剤の付着量はガラス繊維100質量部当たり0.2〜1.0質量部の範囲である。ここで、集束剤付着量とはガラス繊維の60分間の灼熱後の灼熱減量として計測されるものでありJIS−R3420に準拠して求められる。
【0029】
本発明のガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物中のポリアミド樹脂(a)の割合は、成形加工性、機械的物性の観点から30wt%以上であり、難燃性、剛性の観点から70wt%以下の範囲である。
リン酸メラミン系難燃剤(b)の割合は、難燃効果の観点から10wt%以上であり、混練時分解ガスの発生、成形金型への汚染性物質の付着、機械的物性、成形品外観の観点から40wt%以下である。好ましくは15〜35wt%の範囲である。
【0030】
又、ポリアミド樹脂(a)とリン酸メラミン系難燃剤(b)との成分比a/bは、電気特性、耐トラッキング性、機械的強度の観点から1.5以上が好ましく、安定した難燃性能の観点から3.5以下の範囲にあることが好ましい。特に好ましい範囲は1.7≦a/b≦2.5の範囲である。
ガラス繊維(c)の割合は、機械的強度、剛性の観点から5wt%以上であり、押出時や射出成形時の成形加工性、物性改良効果の観点から50wt%以下である。好ましくは10〜40wt%である。
【0031】
本発明では、更に無機系の難燃助剤を機械的物性や成形加工性に悪影響を与えない範囲に於いて添加することもできる。好ましい難燃助剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫化亜鉛、酸化鉄、酸化硼素、硼酸亜鉛等が挙げられる。
本発明のガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物の製造方法は特に限定はなく、ポリアミド樹脂、リン酸メラミン系難燃剤、ガラス繊維を常用の単軸または2軸の押出機やニーダー等の混練機を用いて、200〜350℃の温度で溶融混練する方法等が挙げられる。
【0032】
本発明のガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分、例えば顔料、染料等の着色剤や、ポリアミド樹脂の一般的な熱安定剤である銅系熱安定剤(例えばヨウ化銅、酢酸銅等とヨウ化カリウム、臭化カルウムとの併用)、ヒンダードフェノール系酸化劣化防止剤に代表される有機系耐熱剤、耐候性改良剤、滑剤、離型剤、核剤、可塑剤、帯電防止剤等の添加剤、他の樹脂ポリマー等を添加することが出来る。
【0033】
本発明の組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形など公知の方法によってコネクター、コイルボビン、ブレーカー、電磁開閉器、ホルダー、プラグ、スイッチ等の電気、電子、自動車用途の各種成形品に成形される。
以下の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す。
【0034】
[原材料]
(A)ポリアミド樹脂
(a−1);後記する重合例1で得られたポリアミド66/6I(85/15)共重合体
(a−2);後記する重合例2で得られたポリアミド66/6I(80/20)共重合体
(a−3):後記する重合例3で得られたポリアミド66/6I(65/35)共重合体
【0035】
(B)難燃剤
(b−1):ポリリン酸メラミン (株)三和ケミカル製 商品名 アピノンMPP−A
(b−2):リン酸メラミン (株)三和ケミカル製 商品名 アピノンP−7202
【0036】
(C)ガラス繊維
(c−1):ガラス繊維平均直径10μm、ガラス繊維平均長さ3mm、集束剤主要成分(ブタジエン−無水マレイン酸コポリマー、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)、集束剤付着量0.4wt%
(c−2):ガラス繊維平均直径13μm、ガラス繊維平均長さ6mm、集束剤主要成分(スチレン−アクリル酸コポリマー、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)、集束剤付着量0.6wt%
(c−3):ガラス繊維平均直径10μm、ガラス繊維平均長さ3mm、集束剤主要成分(エポキシ樹脂、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)、集束剤付着量0.7wt%
【0037】
[測定方法]
(1)薄肉難燃性;
UL94(米国Under Writers Laboratories Incで定められた規格)の方法に従って測定した。なお試験片の厚みは1/16inch及び1/32inchとし射出成形機(東芝機械製:IS50EP)を用いて成形して得た。
(2)硫酸相対粘度
JIS K6810に従って98%硫酸での相対粘度を測定した。
【0038】
(3)機械的特性
射出成形機(東芝機械製:IS50EP)を用いて、試験片を作成し物性は次に述べる方法で測定した。
・引張特性:ASTM D638
・曲げ特性:ASTM D790
・アイゾット衝撃強度:ASTM D648
【0039】
(4)耐トラッキング性
射出成形機(東芝機械製:IS150)を用いて、130×130mm、厚さ3mmの平板を、樹脂温度280℃、金型温度80℃で成形し試験片を得た。この試験片を日立化成(株)製 耐トラッキング試験機 HAT−500−3型にセット、IEC Publication 112規格に従って、100〜600Vの電圧下、0.1%塩化アンモニウム水溶液を30秒毎に滴下し試験片がトラッキングを起こすことなく、50滴で破壊しない最大電圧を求めた。この値が高いものほど耐トラッキング性に優れる。
【0040】
[重合例1]
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの等モル塩2.00kgとイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンの等モル塩0.35kgおよびアジピン酸0.1kg、および純水2.5kgを5Lのオートクレーブの中に仕込み良く撹拌した。充分窒素置換した後、撹拌しながら温度を室温から220℃まで約1時間かけて昇温した。この際、オートクレーブ内の水蒸気による自然圧で内圧はゲージ圧で1.76MPaになったが、1.76MPa以上の圧にならないよう水を反応系外に除去しながら加熱を続けた。更に2時間後内温が260℃に到達した時点で加熱を止め、オートクレーブのバルブを閉止し、約8時間かけて室温まで冷却した。冷却後オートクレーブを開け、約2kgのポリマーを取りだし粉砕した。得られた粉砕ポリマーを、10Lのエバポレーターに入れ窒素気流下、200℃で10時間固相重合した。固相重合によって得られたポリアミドは、融点245℃、硫酸相対粘度2.38であった。
【0041】
[重合例2]
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの等モル塩2.00kgとイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンの等モル塩0.50kg、アジピン酸0.1kg、および純水2.5kgを出発原料とした以外は重合例1と同様の方法でポリアミドを作成した。得られたポリアミドは融点239℃、硫酸相対粘度2.41であった。
【0042】
[重合例3]
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの等モル塩1.67kgとイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンの等モル塩0.88kg、アジピン酸0.1kg、および純水2.5kgを出発原料とした以外は重合例1と同様の方法でポリアミドを作成した。得られたポリアミドは融点219℃、硫酸相対粘度2.45であった。
【0043】
【実施例1】
ポリアミド樹脂a−1が49wt%、難燃剤b−1が26wt%、ガラス繊維c−1が25wt%になるように2軸押出機(東芝機械製TEM35)を用いてシリンダー設定温度260℃、スクリュー回転200rpm、吐出量30kg/hrの条件下で、ポリアミド樹脂a−1および難燃剤b−1をトップフィードし、ガラス繊維c−1はサイドフィードして混練し、ストランド状に取り出し、冷却後カッターで造粒しポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。得られたペレットを前記した測定方法にて諸特性を調べた。その結果を表1にしめす。
【0044】
【実施例2】
ポリアミド樹脂としてa−2を用いた以外は実施例1と同様にしてペレットを得て、諸特性を調べた。その結果を表1にしめす。
【0045】
【実施例3】
ポリアミド樹脂としてa−3を用いた以外は実施例1と同様にしてペレットを得て、諸特性を調べた。その結果を表1にしめす。
【0046】
【実施例4】
難燃剤としてb−2を用いた以外は実施例1と同様にしてペレットを得て、諸特性を調べた。その結果を表1にしめす。
【0047】
【実施例5】
ガラス繊維としてc−2を用いた以外は実施例1と同様にしてペレットを得て、諸特性を調べた。その結果を表1にしめす。
【0048】
【比較例1】
ガラス繊維としてc−3を用いた以外は実施例1と同様にしてペレットを得て、諸特性を調べた。その結果を表1にしめす。
【0049】
【実施例6〜7、比較例2〜3】
ポリアミド樹脂a−2、難燃剤b−1、ガラス繊維c−2の配合量を表1に示す割合にした以外は実施例1と同様にしてペレットを得て、諸特性を調べた。その結果を表1にしめす。
【0050】
【表1】
【0051】
【発明の効果】
本発明の組成物は薄肉成形品においても難燃性が極めて高く、燃焼時に腐食性の高いハロゲン化水素ガスの発生がなく、かつ優れた電気特性と機械的特性を兼ね備えた成形材料であり、家電部品、電子部品、自動車部品等の用途に用いることが出来る。
Claims (7)
- (a)ポリアミド樹脂30〜70wt%、(b)リン酸メラミン系難燃剤10〜40wt%及び(c)ガラス繊維5〜50wt%とからなるガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物であって、(c)ガラス繊維が、無水マレイン酸と不飽和単量体とのコポリマー及び/又はスチレンーアクリル酸コポリマー及びシラン系カップリング剤とを含む(d)集束剤で表面処理されていることを特徴とするガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物。
- (a)ポリアミド樹脂が、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、MXD6ナイロン及びこれらのコポリアミドの中から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1に記載のガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物。
- (a)ポリアミド樹脂が、下記(1)〜(4)の中から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1に記載のガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物。
(1)ポリアミド66単位70〜95wt%とポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)単位5〜30wt%とからなる共重合体
(2)ポリアミド66単位60〜89wt%とポリアミド6I単位5〜30wt%及び脂肪族ポリアミド単位(但し、ポリアミド66単位を除く)1〜10wt%とからなる3元共重合体
(3)ポリアミド66 70〜95wt%とポリアミド6I 5〜30wt%との混合ポリアミド
(4)ポリアミド66 60〜89wt%とポリアミド6I 5〜30wt%及び脂肪族ポリアミド単位(但し、ポリアミド66単位を除く)を有する重合体1〜10wt%との混合ポリアミド - (b)リン酸メラミン系難燃剤がリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンの中から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物。
- (b)リン酸メラミン系難燃剤の平均粒径が0.5〜20μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物。
- (b)リン酸メラミン系難燃剤がポリリン酸メラミンであり、その縮合度が5以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガラス繊維強化難燃性ポリアミド樹脂組成物。
- (d)集束剤をガラス繊維100質量部当たり0.1〜2質量部含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガラス繊維強化難燃燃性ポリアミド樹脂組成物。
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