JP5059698B2 - 加工対象シートの加工方法およびフレキシブルダイ - Google Patents

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本発明は、例えば紙シートやプラスチックシート(フィルム)などのシート材等の打抜加工(押切加工)やハーフカット加工に実施される加工対象シートの加工方法およびフレキシブルダイ(シート状刃板)に関する。
従来、打抜加工やハーフカット加工を行う方法としては、ベニヤ板等のダイボードに、打抜パターンに応じた溝切加工を行い、その加工した溝に帯状の刃(トムソン刃)を嵌め込んだダイを作製し、このダイをプレス加工機などに装着してプラスチックシート等の打抜加工やハーフカットを行うという方法が採用されている。
最近では、ロータリ加工装置を使用して、紙シートやプラスチックシートなどの加工対象シートの打抜加工やハーフカット加工を行う方法も採用されている(例えば、特許文献1参照。)。具体的には、フレキシブルベース(強磁性体)の片面に、カッティングラインの形状に応じたパターンの押切刃を有するフレキシブルダイを作製し、このフレキシブルダイを、ロータリ加工装置のマグネットロールに巻き付けて、該マグネットロールに隣接するアンビルロール(受胴)との間に、加工対象シートを通過させて、マグネットロールとアンビルロールとの回転にともなって加工対象シートに押切刃による切り込みを与え、加工対象シートの打抜加工やハーフカットを行っている。
特開2002−221220号公報
前記押切刃を有するフレキシブルダイを使用した打抜加工やハーフカット加工においては、長尺状の加工対象シートがマグネットロールとアンビルロールとの間を通過するため、押切刃と加工対象シートとの加工対象シート流れ方向のずれが生じ易くなる。かかるずれは、加工ピッチが不安定となり加工精度を低下させる問題がある。
そこで、長尺状の加工対象シートの送り方向にテンションを付与する場合もあるが、かかる場合には、別途専用のテンションを付与する装置が必要となる。しかも、かかる装置で加工対象シートの送り方向に一定のテンションを付与するのは困難である。
また、フィルム等のように伸長し易い加工対象シートの場合には、加工対象シートの送り方向にテンションを掛けながら加工するのは望ましくない。特に、携帯電話等の小型機器用の液晶シートや両面テープを抜く装置では、テンションを掛けて抜くことができない場合がある。このように加工対象シートにテンションを掛けずに抜き加工を行うと、加工対象シートが押切刃およびアンビルロールとの間で滑ったりして、加工寸法精度がでないという問題があった。
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、任意の材質および種類の加工対象シートの打抜加工やハーフカット加工を安定して行うことができ、加工精度を向上させることを課題とする。
本発明のフレキシブルダイは、受胴と対向配置されるローラに巻き付けられるフレキシブルベースと、該フレキシブルベースの表面に設けられた突起状の押切刃とを備えたフレキシブルダイにおいて、前記フレキシブルベース表面で且つ前記押切刃のローラに巻き付け方向と直交する幅方向の両外側には、前記受胴と前記ローラとの間を通過する加工対象シートに食い込ませる捨刃が設けられ、前記捨刃は、多数の線状の凸刃を所定のピッチを有してローラに巻き付け方向に配置することにより構成され、前記凸刃は、加工対象シートの送り方向上流端から下流端に向けて前記押切刃と離れる外側方向に傾斜しており、一方の凸刃の上流端と、該一方の凸刃と隣接する他方の凸刃の下流端とは、幅方向に間隔を有し、且つ、加工対象シートの送り方向に対して不連続とならないように、重なるかまたは同一に配置されたことにある。
本発明の加工対象シートの加工方法は、前記フレキシブルダイを、受胴と対向配置されるローラに巻き付け、前記フレキシブルダイと受胴との間に、加工対象シートを通過させて、前記ローラおよび受胴の回転にともなって前記加工対象シートに前記押切刃による切り込みを与える加工対象シートの加工方法であって、前記捨刃を、前記加工対象シートの送り方向に連続して食い込ませ、前記加工対象シートの弛んだ状態を解消して緊張した状態で、前記加工対象シートに前記押切刃による切り込みを与えることにある。
本発明は、ダイロール表面に設けられた捨刃を加工対象シートに食い込ませた状態で、加工対象シートに押切刃による切り込みを与えるので、加工対象シートが押切刃からずれたり、被加工部のピッチが不安定となったりすることはない。その結果、フィルム等のように伸長し易い加工対象シートであっても、その加工対象シートの打抜加工やハーフカット加工を安定して行うことができ、加工精度を向上させるこが可能となる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に本発明に係るフレキシブルダイの一例を示し、図2に本実施形態のロータリ加工装置を示す。
ロータリ加工装置1は、図2に示すように、装置フレーム2に円筒状のローラとしてのマグネットロール5と、円筒状の受胴(アンビルロール)6とが、互いに対向するように図示省略の軸受を介して回転自在に支持されている。マグネットロール5には、フレキシブルダイ10が巻き付けられている。なお、マグネットロール5と受胴6とは、図示省略のモータにより連動して所定速度で回転駆動するようになっている。また、マグネットロール5とフレキシブルダイ10とにより、ダイロール7が構成されている。
フレキシブルダイ10のフレキシブルベース12の表面には、図1に示すように、線条の押切刃13を矩形状に構成してなるカットパターンPが、マグネットロール巻き付け方向R(巻き付け方向R)に所定の間隔をおいて複数個配列されている。なお、カットパターンPは、ロール巻き付け方向Rと直交する方向(フレキシブルダイ幅方向)に所定の間隔をおいて複数個配列することも可能である。
押切刃13は図3(b)に示すように、刃先13aが先鋭となっており、加工対象シートを所定深さまで切り込むための刃である。この押切刃13の刃高は、打抜加工用刃かまたはハーフカット加工用刃に応じて適宜設定される。
フレキシブルベース12における押切刃13と同じ表面には、捨刃15が設けられている。捨刃15は、前記押切刃13に対してフレキシブルダイ幅方向の両側(押切刃13の両外側)で且つローラ巻き付け方向Rとなるフレキシブルダイ10の長手方向全長に設けられている。
捨刃15は、図1および図3(a)に示すように、多数の傾斜直線状の凸刃16を所定のピッチを有して配置することにより構成されている。すなわち、凸刃16は、内側端(上流端)16aから外側端(下流端)16bに向けて加工対象シートの送り方向(図1に示すX方向)下流側に傾斜している。凸刃16の傾斜角度αは、フレキシブルダイ幅方向に対して10°〜80°に設定されており、好ましくは、略60°または略45°に設定されている。
しかも、図3(a)に示すように、凸刃16の内側端16aと、隣接する凸刃16の外側端16bとは、加工対象シートの送り方向Xに対して不連続とならないように、所定距離L1だけ重なっている。なお、凸刃16の上流端16aと、隣接する凸刃16の下流端16bとは、加工対象シートの送り方向Xに対して同一であって、重なり合わない場合であってもよい。
また、図3(b)に示すように、凸刃16の刃先16cは、加工対象シートに食い込む程度の先細形状に形成され、凸刃16の刃高は、刃先16cが被加工シートに所定量食い込むように、押切刃13の刃高よりも所定長L2だけ低く設定されている。ここで、刃先16cが被加工シートに食い込むとは、刃先16cが被加工シートを所定量切り込む場合や、被加工シートを切り込むことはないが、被加工シートを受胴6側に押圧させる場合をいう。
また、凸刃16の刃高は、押切刃13の刃高と同等であっても、あるいは、凸刃16の刃高は、押切刃13の刃高よりも高くすることも可能である。
このように捨刃15は、凸刃16を連続的でなく、ピッチを有して配置することにより、フレキシブルダイ10をマグネットロール5に巻き付けるときに、凸刃16の形成部分の曲げ剛性(ローラ巻き付け方向Rの曲げ剛性)が強くなるのを防止できる。これによって、フレキシブルダイ10をマグネットロール5の外周面に沿って湾曲変形するようになるので、フレキシブルダイ10をマグネットロール5に容易に装着することが可能になる。
前記フレキシブルダイ10は、金属板をエッチング加工したり、機械加工したりして製造することができる。なお、エッチング加工により押切刃13および捨刃15を形成した場合には、必要であれば、NC加工機等を使用して、さらに押切刃13および捨刃15を機械加工してもよい。
次に、以上の構成からなるフレキシブルダイ10を備えたロータリ加工装置1を使用する場合について説明する。
かかるロータリ加工装置1で加工される加工対象シートSとして、二層構造の積層シートを例示する。すなわち、上層が製品となるシートS1で下層が剥離紙(セパレータ)S2である。
かかる加工対象シートSを加工するに際して、先ず、フレキシブルダイ10を上方のマグネットロール5に巻き付ける(図4参照)。このように、各フレキシブルダイ10をマグネットロール5に装着することにより、それぞれのカットパターンPを受胴6に対向させることができる。
さらに、マグネットロール5と受胴6とを連動して回転駆動させ、これら回転するマグネットロール5と受胴6との間に、長尺状の加工対象シートSを通過させる(図6および図7参照)。
かかる加工対象シートSは、フレキシブルダイ10の押切刃13と、受胴6との協働により、カットパターンPの形状に打抜加工またはハーフカット加工される。具体的には、加工対象シートSの一端が、フレキシブルダイ10と受胴6との間に供給されると、捨刃15の凸刃16は、上流端16aから下流端16bに向けて順次加工対象シートSに順次食い込む(図5参照)。
このとき、凸刃16は、シートS1を通過してセパレータS2の中途まで食い込む。凸刃16が強度のあるセパレータS2に食い込むことにより、食い込み力が強化される。また、凸刃16の内側端16aと、隣接する凸刃16の外側端16bとは、所定距離L1だけ重なっているので、凸刃16を加工対象シートSの送り方向に連続して食い込ますことができる。このように両側の捨刃15が食い込むため、加工対象シートSは弛んだ状態が解消されテンションを掛けた状態(加工対象シートSを送り方向および幅方向の任意の方向に緊張させた状態)を維持できる。
この結果、押切刃13は、捨刃15によりフレキシブルダイ10に対して所定位置で固定され且つ弛まない状態にされた加工対象シートSを切り込むこととなり、加工位置(加工ピッチ)がずれることがなく、安定した加工が可能となり加工精度が向上する。
図8および図9に、フレキシブルダイ10の他の実施の形態を示す。かかる実施の形態の捨刃15は、平行な一対のミシン目状の内外凸刃16A、Bから構成されている。なお、前記実施の形態と同一部材は、同一符号を付してそれぞれの説明は省略する。具体的には、内外凸刃16A、16Bはローラ巻き付け方向Rに沿って等ピッチで設けられ、しかも、内側の凸刃16Aと、外側の凸刃16Bとは、ローラ巻き付け方向Rにずれている。捨刃15をミシン目状の内外凸刃16A、Bから構成した場合には、加工対象シートSの流れ方向は、特に限定されない。なお、凸刃16A、Bは、2条に限らず、3条以上の複数条や単数条が可能である。
また、捨刃15は、線条凸刃16を湾曲した曲線状に形成したもの(図10(a)参照)や、波状に屈曲させたもの(図10(b)参照)であってよい。また、捨刃15は、線条凸刃16を凹凸形状に連続させたもの(図10(c)参照)や、L字状の凸刃16を一定のピッチで設けたもの(図10(d)参照)であってもよい。
なお、本発明で使用されるシートは、紙、プラスチックシートなどの樹脂製シートをはじめ、裏面に剥離紙が貼着されたラベルなど種々のシートが使用できるものである。また、かかる加工対象シートは、三層構造以上の積層シートであっても、打抜加工の場合には、単層シートであってもよい。
例えば、三層構造の加工対象シートSは、二層目からなるシート基材の上下両面に、粘着剤が塗布され、シート基材の両面には、粘着剤を介して一層目および三層目からなる剥離紙(セパレータ)が剥離可能にそれぞれ貼着されている。シート基材(二層目)は所定形状にカットされ、例えば携帯電話等電子部品を固定する両面テープとして使用される。
かかる加工対象シートSの場合には、第一層目から第三層目のセパレータの中途まで捨刃15が食い込むようにすることができる。また、ハーフカット加工の場合には、押切刃13もシートSを第一層目から第三層目の途中まで切り込まれる。このように、打抜加工またはハーフカット加工の何れの場合であっても、単層または積層シートの所定深さ(下層のセパレータの所定深さ)まで捨刃15を食い込ませることができる。
また、フレキシブルダイ10は、刃高の相違する押切刃13を複数設けることも可能である。かかる場合には、4層以上の積層シートの加工も可能となる。
さらに、打抜加工またはハーフカット加工のカットパターンも前記の矩形形状に限られることなく、例えば、三角形、四角形や丸形状等の他の任意の形状であってもよい。
また、前記実施の形態では、ロータリ加工装置1に使用されるフレキシブルダイを例示したが、フレキシブルダイは、マグネットロールに装着して使用されるフレキシブルダイのほか、マグネット(永久磁石)を備えていないローラに装着されるフレキシブルダイにも適用することができる。
本発明のフレキシブルダイを示す平面図である。 同ロータリ加工装置の概略を示す斜視図である。 同フレキシブルダイに設けた押切刃を示し、(a)は拡大平面図、(b)は図1のY―Y断面図である。 本発明のフレキシブルダイをローラに巻き付ける状態の斜視図である。 本発明のフレキシブルダイを使用して加工対象シートの加工をした状態を示す要部断面図である。 同フレキシブルダイを使用して加工対象シートの加工をする要部側面図である。 本発明の一対のフレキシブルダイを使用して加工対象シートの加工をする概略側面図である。 本発明の他のフレキシブルダイの実施の形態を示す平面図である。 同フレキシブルダイに設けた押切刃の拡大平面図である。 (a)〜(d)は同フレキシブルダイに設けた押切刃の他の例をそれぞれ示す拡大平面図である。
符号の説明
1 ロータリ加工装置
2 装置フレーム
5 マグネットロール
6 受胴
7 ダイロール
10 フレキシブルダイ
12 フレキシブルベース
13 押切刃
15 捨刃
16 凸刃
P カットパターン
S 加工対象シート
X 送り方向

Claims (2)

  1. 受胴と対向配置されるローラに巻き付けられるフレキシブルベースと、該フレキシブルベースの表面に設けられた突起状の押切刃とを備えたフレキシブルダイにおいて、
    前記フレキシブルベース表面で且つ前記押切刃のローラに巻き付け方向と直交する幅方向の両外側には、前記受胴と前記ローラとの間を通過する加工対象シートに食い込ませる捨刃が設けられ、
    前記捨刃は、多数の線状の凸刃を所定のピッチを有してローラに巻き付け方向に配置することにより構成され、
    前記凸刃は、加工対象シートの送り方向上流端から下流端に向けて前記押切刃と離れる外側方向に傾斜しており、
    一方の凸刃の上流端と、該一方の凸刃と隣接する他方の凸刃の下流端とは、幅方向に間隔を有し、且つ、加工対象シートの送り方向に対して不連続とならないように、重なるかまたは同一に配置されたことを特徴とするフレキシブルダイ。
  2. 前記請求項1に記載のフレキシブルダイを、受胴と対向配置されるローラに巻き付け、前記フレキシブルダイと受胴との間に、加工対象シートを通過させて、前記ローラおよび受胴の回転にともなって前記加工対象シートに前記押切刃による切り込みを与える加工対象シートの加工方法であって、
    前記捨刃を、前記加工対象シートの送り方向に連続して食い込ませ、前記加工対象シートの弛んだ状態を解消して緊張した状態で、前記加工対象シートに前記押切刃による切り込みを与えることを特徴とする加工対象シートの加工方法。
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