JP7337461B2 - 中抜き用のスリッタ装置 - Google Patents

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本発明は、帯状の被切断部材を長さ方向に沿って複数の狭幅帯体に切断するためのスリッタ装置に関する。被切断部材としては、エレクトロニクス、自動車、エネルギー、メディカル、食品包装等の幅広い分野で用いられる、プラスチックフィルム、金属箔、紙、布、または、それらの複合材が挙げられ、特に、それらを帯状にした被切断部材を、切断幅寸法や切り口の品質を高精度に保ちながら切断する中抜き用のスリッタ装置に関する。
中抜き用のスリッタ装置としては、例えば、特許文献1の図5に示すように、第2の回転軸2にスペーサ(スペーサー)6を挟んで両側に1対の下刃 (厚刃)55が軸装され、第1の回転軸1に皿ばねのような傾斜を僅かに有する形状をなしている一対の上刃 (薄刃)56をその上刃 (薄刃)56の周側面10が互いに外側となって1対の下刃 (厚刃)55に当接して狭い部位L2に挿入されている。そして広い部位の長さL1と2枚の 下刃(厚刃)55、55、の刃厚の合計長さL3が製品となる金属箔シート等の切断幅に対応し、狭い部位L2に位置するシート状物を中抜き屑として廃棄するようにしたものである。
この場合、本明細書の図3(a)に示したように、切断された被切断部材は、その断面が両面ともダレ面が発生しない左右対称の垂直面101、垂直面102で形成され、切り口の品質を保つことができるので製品9bとして使用される。一方、中抜き屑9aは特許文献1の図5に示す上刃 (薄刃)56の鎬面(傾斜面、特許文献1では凌ぎと記載)によって本明細書の図3(b)に示したように、両方の切断面にダレ面103,104が形成され、中抜き屑として廃棄されることになる。つまり、特許文献1の図5に示すスリッタ装置は、切断幅寸法や切り口の品質を高精度に保つことができる製品が要求される場合に用いられる中抜き用のスリッタ装置である。
ところで、中抜き用のスリッタ装置において、中抜き幅を狭くしてできるだけ中抜き屑を少なくすることで帯状の被切断部材の無駄をできるだけなくすようにしている。また、その場合に生じる問題として、中抜き屑が下刃の間に挟まってしまうことがあげられる。それを解決する手段として、0.1mm~0.5mm程度の厚みのある平面印刷版(PS版)の中抜き用のスリッタ装置が文献2に開示されている。これは、下刃(中抜下刃)36の間に算盤玉状の中抜ホルダー48を配置して、中抜きされた中抜き屑(中抜屑)12Bを折り曲げることで、中抜き屑(中抜屑)12Bと下刃(中抜下刃)36間に隙間が生まれるので、中抜き屑(中抜屑)12Bが下刃(中抜下刃)36間に挟まれなくなるというものである。
特開平8-318494号公報 特開2000-108536号公報
ところが、被切断部材(ウエブ)12を複数の狭幅帯体に切断する場合、算盤玉形状をした中抜ホルダー48が複数必要となる。また、算盤玉形状の中抜ホルダー48で中抜き屑(中抜屑)12Bを支えて屈曲させるためには、中抜き屑(中抜屑)12Bを算盤玉形状の中抜ホルダー48に食い込ませるようにしなければならない。そのためには、被切断部材(ウエブ)12の搬送ラインに対して上刃(中抜上刃)52を深く食い込ませて下刃(中抜下刃)36とのオーバーラップ量を大きくする必要がある。しかし、この場合、所定のオーバーラップ量を超えることで、刃先の寿命や、製品の切断面に悪影響を及ぼすことが考えられる。
その他、上刃(中抜上刃)52の鎬面(傾斜面)もしくは上刃(中抜上刃)52の間に設けたスペーサを算盤玉形状の中抜ホルダー48に合わせたV字状の形状にして中抜き屑(中抜屑)12Bを抑えて屈曲させ塑性変形させる必要があるため、構造が複雑になる。また、中抜き屑(中抜屑)12Bの幅を狭くすると中抜き屑(中抜屑)12BをV字状に屈曲させるのは難しくなる。また、複数の狭幅帯体に切断する場合、中抜き屑(中抜屑)12Bが屈曲したままで複数排出されるため嵩張って収容され、後処理に手間がかかることが考えられる。また、塑性変形しやすいアルミ箔には有効であるが、塑性変形しにくいプラスチック類は切断されて算盤玉形状の中抜ホルダー48から外れた時点で平坦な形状に復帰して、中抜き屑(中抜屑)12Bが下刃(中抜下刃)36の間に挟まってしまうことが考えられ、塑性変形しにくいプラスチック類には適していないと言える。
本発明は、上述したような従来の中抜き用のスリッタ装置の欠点に鑑みてなされたものであり、より簡素な構造で、製品の切断面に悪影響を与えることなく、且つ、中抜き屑の幅を小さくして無駄を少なくでき、また、中抜き屑の幅を小さくしても中抜き屑が下刃間に挟まることの無い中抜き用のスリッタ装置を提供することを課題とする。
本発明は、前述の課題を解決するため、第1の回転軸と第2の回転軸とが平行に備えられ、前記第1の回転軸には鎬面を有し該鎬面を対向させた2つの上刃を1組とする上刃ユニットとして、該上刃ユニットが少なくとも1つ以上備えられ、前記第2の回転軸には前記上刃ユニットを挟んで前記上刃ユニットの2つの前記上刃の刃先に対向して刃先を有する下刃が備えられ、前記上刃の刃先と前記下刃の刃先とをオーバーラップさせ、前記第1の回転軸と前記第2の回転軸とを互いに反対方向に回転させて、帯状の被切断部材を長さ方向に沿って切断して少なくとも2つ以上の製品と少なくとも1つ以上の中抜き屑を排出する中抜き用のスリッタ装置において、前記上刃ユニットの2つの前記上刃の刃先の外径を異なる寸法としたことを特徴とする中抜き用のスリッタ装置とする。
上刃の2つの刃先の外径を異なる寸法とすることで、複雑な構造を必要とせず、中抜き屑は、刃先の外径の大きい上刃側が刃先の外径の小さい上刃側よりも下がった状態で斜めに排出されるので、上刃ユニットを挟んだ下刃の間に隙間を得て排出されるようになり、下刃の間に挟まることがなくなる。
また、前記上刃ユニットの2つの前記上刃の刃先の外径の異なる寸法の差は前記帯状の被切断部材の切断可能な厚さと2つの前記上刃の刃先間ピッチと2つの前記上刃の刃先の角度によって決定される。
また、前記中抜き屑の最小幅が1mmである中抜き用のスリッタ装置とする
また、前記上刃ユニットを少なくとも2つ以上備えた場合、隣接する前記上刃ユニットの向かい合う前記上刃の刃先の外径を等しくなるように配設した中抜き用のスリッタ装置とする。
本発明によれば、より簡素な構造で製品の切断面に悪影響を与えることなく、且つ、中抜き屑の幅を小さくしても中抜き屑が斜めに排出されて下刃間に挟まることの無い中抜き用のスリッタ装置を提供することができる。
本発明に係る中抜き用のスリッタ装置を説明するための図。 図1のA部拡大図。 中抜き用のスリッタ装置によって切断された被切断部材の断面図。 本発明に係る中抜き用のスリッタ装置の刃先寸法差を説明するためのグラフ
以下、本発明の実施例について図1~図4を用いて説明してゆく。
図1に示すように、中抜き用のスリッタ装置100には第1の回転軸1と第2の回転軸2とが平行に備えられ、第1の回転軸1には鎬面3aと鎬面4aを対向させた2つの上刃3,4を上刃ユニット20としてスペーサ5を挟んで複数組備えられている。上刃ユニット20の上刃3の刃先の外径d1、上刃4の刃先の外径d2とするとd1<d2としている。d1<d2の詳細は後述する。上刃3及び上刃4はそれぞれ刃先3b、刃先4b側に僅かに傾斜して弾性変形可能な環状の皿形形状になっている。第2の回転軸2には上刃ユニット20の上刃3,4を挟むようにして剛性のある円筒形の下刃6,7が備えられている。上刃3の刃先3bと下刃6の刃先6a及び上刃4の刃先4bと下刃7の刃先7aとはそれぞれオーバーラップさせて圧接させている。圧接量は第2の回転軸2に嵌装されたスペーサ8a及びスペーサ8bの軸線方向幅寸法により上刃3,4を弾性変形させることにより決定される。尚、圧接量は上刃3,4が単体の時に弾性変形量との関係をあらかじめ測定しておくことで得られる。
第1の回転軸1と第2の回転軸2は図示しない回転駆動伝達部により互いに反対方向に回転し、第1回転軸1と第2回転軸2との間に送られた帯状の被切断部材9を長さ方向に沿って複数の狭幅帯体に切断する。切断された被切断部材9のうち、図1に示すように、上刃ユニット20の上刃3の鎬面3aと上刃4の鎬面4aを対向させた上刃3,4とそれらを挟み込む下刃6,7の間で切断された被切断部材9が中抜き屑9aとして排出され、図1に示すように、隣り合う上刃ユニット20の刃先4bと刃先4bを対向させた2つの上刃4,4の間、または図示しない隣り合う上刃ユニット20の刃先3aと刃先3aを対向させた2つの上刃3,3の間で切断された被切断部材9が製品9bとして排出される。
中抜き用のスリッタ装置100を用いて切断幅寸法や切り口の品質を保ちながら切断するための被切断部材9の材質としては、厚さt=0.3mm以下のアルミ箔や厚さt=0.25mm以下のプラスチックフィルム等が挙げられるが、本実施例では材質として剛性があり中抜き屑9aが下刃の間に挟まりやすいアルミ箔とし、最大厚さとしてt=0.3mmとした。
次に、上刃ユニット20の上刃3,4の刃先の外径をd1<d2と異なる寸法にすることについて説明する。上刃ユニット20の上刃3、4の刃先寸法差をSとしてS=(d2-d1)/2で表わす。切断された中抜き屑9aは傾いて排出されることになるが、中抜き屑9aが下刃6、7の間に挟まらないようにするために、中抜き屑9aが図2に示すような状態で傾いて排出された際の最小刃先寸法差S1を導きだすことができる。その結果からS>S1とすることで、中抜き屑9aが下刃6、7の間に挟まらないようにすることができる。
まず、中抜き屑9aの幅方向の一方(図2の左側)は刃先の外径が大きい上刃4と下刃7で切断され、中抜き屑9aの左上端Aは上刃4の刃先4bに押されて下刃7の側面に沿って押し下げられる。また、中抜き屑9aの幅方向の他方(図2の右側)は刃先の外径が小さい上刃3と下刃6で切断され、中抜き屑9aの右端は上刃3の刃先3bに押されて下刃7の側面に沿って押し下げられるが、最小刃先寸法差S1により中抜き屑9aの右上端Cは上刃3の鎬面3aに当接し、中抜き屑9aの右下端Bは下刃6の側面に当接して傾斜している。つまり、中抜き屑9aの左上端A、右下端B、右上端Cの3か所が上刃3、4または下刃6、7のいずれかに当接して傾斜した状態が最小刃先寸法差S1といえる。その傾斜角は、矩形の中抜き屑9aの対角線10の傾斜角:θとすると2θで表わされる。この状態で最小刃先寸法差S1を導きだし、前述の刃先寸法差SをS=(d2-d1)/2>S1とすることで、中抜き屑9aの左上端A、右下端B、右上端Cの少なくとも1か所が上刃3、4または下刃6、7のいずれかの当接から解放され、中抜き屑9aが下刃6、7の間に挟まらずに排出することができるようになる。
図2において、上刃3の刃先角度:α、上刃3,4の刃先間ピッチ:L0、中抜き屑(被切断部材)9aの厚さ:t、矩形の中抜き屑9aの対角線10の傾斜角:θ、中抜き屑9aの右下端Bから右上端CまでのY方向距離:h、中抜き屑9aの右下端Bから上刃3の刃先D(3b)までのY方向距離:h1、中抜き屑9aの右上端Cから上刃3の刃先D(3b)までのY方向距離:h2、中抜き屑9aの右上端Cから上刃3の刃先D(3b)までのX方向距離:Wとすると、最小刃先寸法差S1は以下の計算式から導き出すことができる。尚、中抜き屑9aは上刃3,4の刃先間で切断されるので、中抜き屑9aの切断幅も中抜き幅:L0として表わされる。
Figure 0007337461000001
式(7)を基に、厚さt=0.1mm、0.2mm、0.3mmの被切断部材(アルミ箔)を用いた場合について、中抜き幅(刃先間ピッチ)L0の値を1.0mm、~20mmまでの1mm毎の異なった値(X軸)にした場合に最小刃先寸法差S1の変化を図4のグラフに示した。図4(a)は上刃3,4の刃先角度:α=30°の場合であり、図4(b)は上刃3、4の刃先角度:α=45°の場合である。但し、厚さt=0.3mmで中抜き幅(刃先間ピッチ)L0=1mmの場合に式(1)、(2)より中抜き屑9aの傾斜角2θ=33.4°となるため、上刃3の刃先角度:α=30°の場合のように2θより小さいと、中抜き屑9aの右上端Cが図2に示すような上刃3に当接しないで上刃3の刃先Dが中抜き屑9aの右下端Bに当接するので、S1=tとした。
図4のグラフより、例えば、厚さt=0.3mmの被切断部材で中抜き幅(刃先間ピッチ)L0=1mmとした場合、刃先寸法差Sを最小刃先寸法差S1=0.3mmより大きくすることで中抜き屑9aが下刃6、7の間に挟まらずに排出することが可能になる。尚、厚さt=0.3mmの被切断部材で中抜き幅(刃先間ピッチ)L0=10mmの場合のように中抜き幅(刃先間ピッチ)L0を大きくしていくと最小刃先寸法差S1≒0.6mm弱に近づいていくので、刃先寸法差SをS>S1として刃先寸法差Sを0.6mmより大きくとると、刃先の外径が大きいほうの上刃4の刃先と下刃7の刃先とのオーバーラップ量が深くなってしまうので、厚さt=0.3mmの被切断部材の刃先寸法差Sは0.6mmが限度といえる。刃先寸法差S=0.6mmとした場合のオーバーラップ量としては、例えば、刃先の外径が大きいほうの上刃4のオーバーラップ量を1mmとして、刃先の外径が小さいほうの上刃3のオーバーラップ量を0.4mmとすることで、中抜き屑9aが下刃の間に挟まらないようになる。
尚、計算により導き出した最小刃先寸法差S1の値は中抜き屑9aがダレ面の無い矩形の場合であるが、中抜き屑9aは実際には図3(b)に示すように両方の切断面にダレ面103,104が形成されるため、最小刃先寸法差S1の値は計算値より小さい値となる。
また、厚さt=0.3mmより厚い被切断部材になると、最小刃先寸法差S1が0.6mmより大きくする必要があり、刃先の外径が大きいほうの上刃4のオーバーラップ量が1mmより大きくなるので、厚さt=0.3mmが本発明の限度といえる。
尚、図4のグラフから、中抜き幅(刃先間ピッチ)L0が5mm以上になると、上刃3の刃先角度:αが30°と45°との最小刃先寸法差S1の違いが小さくなり、また、中抜き幅(刃先間ピッチ)L0が大きくなると最小刃先寸法差S1変化量も小さくなるのがわかる。
次に、上刃ユニット20を少なくとも2つ以上備えた場合、隣接する上刃ユニット20の向かい合う上刃の刃先の外径を等しくなるように配設することが望ましい。例えば、図1に示すように、製品9bの切断を刃先の外径が等しい上刃4,4の間、または図示しない上刃3,3の間で行うことで、図3(a)に示すように製品9bの垂直面101、垂直面102の切断開始タイミングや切断開始点及びオーバーラップ量等切断条件を等しくすることができ、製品9bの切断面に悪影響を与えることなく、垂直面101、垂直面102の品質を高精度に保つことができる。
尚、本実施例では材質として剛性が比較的高く中抜き屑9aが下刃の間に挟まりやすい硬質アルミ箔としたが、軟質アルミ箔はもちろん、剛性の低いテープやフィルムのプラスチック類も使用可能であることは云うまでもない。
1 第1の回転軸
2 第2の回転軸
3 上刃
4 上刃
d1 上刃3の刃先の外径
d2 上刃4の刃先の外径
3a 上刃3の鎬面
4a 上刃4の鎬面
3b 上刃3の刃先
4b 上刃4の刃先
5 スペーサ
6 下刃
7 下刃
6a 下刃6の刃先
7a 下刃7の刃先
8a スペーサ
8b スペーサ
9 被切断部材
9a 中抜き屑
9b 製品
10 対角線
20 上刃ユニット
100 中抜き用のスリッタ装置
L0 中抜き幅(刃先間ピッチ)
α 上刃3、4の刃先角度
θ 対角線10の傾斜角
S1 最小刃先寸法差
S 刃先寸法差

Claims (4)

  1. 第1の回転軸と第2の回転軸とが平行に備えられ、前記第1の回転軸には鎬面を有し該鎬面を対向させた2つの上刃を1組とする上刃ユニットとして、該上刃ユニットが少なくとも1つ以上備えられ、前記第2の回転軸には前記上刃ユニットを挟んで前記上刃ユニットの2つの前記上刃の刃先に対向して刃先を有する下刃が備えられ、前記上刃の刃先と前記下刃の刃先とをオーバーラップさせ、前記第1の回転軸と前記第2の回転軸とを互いに反対方向に回転させて、帯状の被切断部材を長さ方向に沿って切断して少なくとも2つ以上の製品と少なくとも1つ以上の中抜き屑を排出する中抜き用のスリッタ装置において、前記上刃ユニットの2つの前記上刃の刃先の外径を異なる寸法としたことを特徴とする中抜き用のスリッタ装置
  2. 前記上刃ユニットの2つの前記上刃の刃先の外径寸法差は前記帯状の被切断部材の切断可能な厚さと前記上刃ユニットの2つの前記上刃の刃先間ピッチと2つの前記上刃の刃先の角度によって決定される請求項1に記載の中抜き用のスリッタ装置
  3. 前記中抜き屑の最小幅が1mmである請求項1または請求項2に記載の中抜き用のスリッタ装置
  4. 前記上刃ユニットを少なくとも2つ以上備えた場合、隣接する前記上刃ユニットの向かい合う前記上刃の刃先の外径を等しくなるように配設した請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の中抜き用のスリッタ装置
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