以下、本発明の第1実施形態について、図1乃至図3を参照しつつ説明する。
図1に示すように、スパッタ装置1は、内部空間Sを有する真空容器(チャンバー)2と、被成膜対象物である基板Bの被成膜面B’に成膜するための第1成膜部P1及び第2成膜部P2と、基板Bを保持した状態で、少なくとも第1成膜部P1における基板Bへの成膜位置である第1成膜位置L1から、第2成膜部P2における基板Bへの成膜位置である第2成膜位置L2まで、真空容器2内を移動可能な(矢印A方向)基板ホルダー3とを備える。
また、スパッタ装置1は、第1成膜部P1にスパッタ電力を供給するための第1スパッタ電力供給用電源4aと、第2成膜部P2にスパッタ電力を供給するための第2スパッタ電力供給用電源4bと、真空容器2内(内部空間S)の排気を行うための排気装置5と、真空容器2内にスパッタガスを供給するためのスパッタガス供給装置6とを備える。尚、真空容器2は、基板B近傍に反応性ガスを供給するための反応性ガス供給装置7を備える場合もある。
真空容器2は、基板ホルダー3側(図中下端側)端部の両側に連絡通路(基板搬送ラインバルブ)8,8’を介して他のプロセス室又はロードロック室9,9’が連接されている。
真空容器2の内部空間Sは、第1成膜部P1を配設するための第1成膜領域F1と、第2成膜部P2を配設するための第2成膜領域F2とで構成され、第1成膜部P1と第2成膜部P2とが並設されている。
第1成膜部P1は、第1ターゲット10a,10bをそれぞれ先端に有する一対の第1カソード(第1ターゲットホルダー)11a,11bを備え、該一対の第1カソード11a,11bは、第1ターゲット10a,10bの表面10a’,10b’が間隔をおいて互いに対向するように配設されている。
第1カソード11a,11bは、該第1カソード11a,11bの先端部にバッキングプレート12a,12bを介して固定される第1ターゲット10a,10bと、バッキングプレート12a,12bの裏面側(第1ターゲット10a,10bが固定されている面と反対の面側)に配設されると共に第1ターゲット表面(対向面)10a’,10b’側に弧状に湾曲した磁場空間を発生させる第1湾曲磁場発生手段20a,20bと、一方の第1カソード11a(11b)の先端部に外嵌されると共に、他方の第1カソード11b(11a)の先端部周辺との間に筒状の磁場空間を発生させる第1筒状補助磁場発生手段30a,30bと、を備える。
詳細には、第1ターゲット10a,10bの両対向面10a’,10b’は、何れも、一対の第1ターゲット10a,10b間の側方位置で、且つ後述する第1成膜部P1において基板Bに成膜する位置である第1成膜位置L1方向を向いて傾斜するように配設されている。このとき、両対向面10a’,10b’のなす角θ1、詳細には、両対向面10a’,10b’に沿う方向に伸びる面のなす角θ1が0°〜60°となるように配設される。かかる角度(なす角)θ1は、スパッタリングの際に発生するプラズマ及び二次電子等の荷電粒子が基板Bの被成膜面B’に許容量以上のダメージを与えないような小さな角度に設定される。本実施形態において、なす角θ1は、0°〜45°で、好ましくは、5°〜20°である。
尚、第1実施形態及び後述の他実施形態において、ターゲット対向面に湾曲磁場空間を発生させるカソードを「マグネトロンカソード」と称し、前記マグネトロンカソードに前記筒状補助磁場発生手段を備えたカソードを「複合型カソード」と称し、また、前記複合型カソードに配置されたターゲットの両対向面が略V字状となる配置の一対のカソードを「複合V型カソード」と称することがある。
一対の第1ターゲット10a,10bは、本実施形態においては、何れもインジウム錫合金(ITO:Indium Tin Oxide)で構成されている。この第1ターゲット10a,10bは、それぞれの大きさが幅125mm×長さ300mm×厚み5mmの矩形の板状体に形成されている。そして、この第1ターゲット10a,10bは、真空容器2内の第1成膜部P1(第1成膜領域F1)に対向配置され、対向面(スパッタされる面)10a’,10b’が所定の間隔(ここでは、対向面10a’,10b’の中心T1a,T1b間距離がd1=160mmの間隔)を有して配置されている。
第1湾曲磁場発生手段20a,20bは、第1ターゲット10a,10bの対向面10a’,10b’近傍に磁力線が弧状となるような磁場空間(湾曲磁場空間W1,W1’:図1の矢印W1,W1’参照)を発生させる(形成する)ための手段であり、本実施形態においては、永久磁石で構成されている。
第1湾曲磁場発生手段(永久磁石)20a,20bは、フェライト系、ネオジウム系(例えば、ネオジウム、鉄、ボロン)磁石やサマリウム・コバルト系磁石等の強磁性体で構成されており、本実施形態においては、フェライト系磁石で構成されている。
第1湾曲磁場発生手段20a,20bは、図2にも示すように、枠状磁石21a,21bと、該枠状磁石21a,21bと反対の磁極を有する中心磁石22a,22bとが、ヨーク23a,23bに配置されることで形成されている。より詳細には、第1湾曲磁場発生手段20a,20bは、正面視矩形の枠状に形成された枠状磁石21a,21bと、その開口中心に位置する正面視矩形状の中心磁石22a,22bとが正面視枠状磁石21a,21bと外周縁が同形状である一定厚さの板状のヨーク23a,23bにそれぞれ固定されることで形成されている(図2(ロ)及び(ハ)参照)。
そして、一方の第1湾曲磁場発生手段20aは、バッキングプレート12a側端部(ヨーク23a側端部)において、枠状磁石21aがN極(S極)で中心磁石22aがS極(N極)となるようにバッキングプレート12aの裏面に配置され、他方の第1湾曲磁場発生手段20bは、バッキングプレート12b側端部(ヨーク23b側端部)において、枠状磁石21bがS極(N極)で中心磁石22bがN極(S極)となるようにバッキングプレート12bの裏面に配置されている。このようにして、一方の第1ターゲット10aには、磁力線が該第1ターゲット表面(対向面)10a’の外周部から中心部に向かって弧状となるような内向湾曲磁場空間W1が形成され、他方の第1ターゲット10bには、磁力線が該第1ターゲット表面(対向面)10b’の中心部から外周部に向かって弧状となるような外向湾曲磁場空間W1’が形成される。尚、内向湾曲磁場空間W1と外向湾曲磁場空間W1’とを併せて、単に、「湾曲磁場空間W」と称する場合がある。
第1筒状補助磁場発生手段30a,30bは、第1湾曲磁場発生手段20a,20bと同様に永久磁石で形成されており、図3にも示すように、第1カソード(ターゲットホルダー)11a,11b先端部の外周に沿うような(外嵌可能な)角筒状に形成されている。本実施形態においては、第1筒状補助磁場発生手段30a,30bは、ネオジウム系のネオジウム・鉄・ボロン磁石等で構成され、正面視矩形の枠状に形成されると共に前後方向に沿った周壁の厚みが一定(図3(ロ)及び(ハ)参照)となるような角筒状に形成されている。そして、第1筒状補助磁場発生手段30a,30bを構成する周壁の厚みは、天壁31が一番薄く、次いで側壁32,32が薄く、後述のように、第1カソード11a,11bに外嵌した際に基板B側となる底壁33が最も厚くなるように形成されている。尚、本実施形態においては、第1筒状補助磁場発生手段30a,30bは、角筒状に形成されているが、円筒形状等であってもよく、第1ターゲット10a,10bを囲むように配置されていればよい。
この周壁の厚みは、一対の第1筒状補助磁場発生手段30a,30bの先端の対応する部分同士の中間位置における磁場強度が一定となるよう、その厚みが設定されている。従って、両対向面10a’,10b’のなす角θ1の値によって、厚みの差が変化する。そのため、前記なす角θ1の値が大きくなる場合には、側壁32,32の厚みが天壁31から底壁33に向かって徐々に厚くなるように設定される場合もある(図3(イ)の点線参照)。
そして、第1筒状補助磁場発生手段30a,30bは、先端側の磁極が第1湾曲磁場発生手段20a,20bの枠状磁石21a,21bと同じとなるように、第1カソード11a,11bの先端側外周に外嵌するように配置されている(図3(ニ)参照)。このように配置することで、第1ターゲット10a,10b間に形成される空間(ターゲット間空間)K1を筒状に囲うと共に、磁力線の向きが前記一方の第1ターゲット10aから他方の第1ターゲット10bへ向かうような筒状補助磁場空間t1が形成される(図1の矢印t1参照)。
第2成膜部P2は、第2ターゲット110a,110bをそれぞれ先端に有する一対の第2カソード(第2ターゲットホルダー)111a,111bを備え、該一対の第2カソード111a,111bは、第2ターゲット110a,110bの表面110a’,110b’が間隔をおいて互いに対向するように配設されている。
第2カソード(第2ターゲットホルダー)111a,111bは、第1成膜部P1における第1カソード11a,11bと同様に、第2カソード111a,111bの先端部にバッキングプレート112a,112bを介して固定される第2ターゲット110a,110bと、バッキングプレート112a,112bの裏面側に配設されると共に第2ターゲット表面(対向面)110a’,110b’側に弧状に湾曲した磁場空間を発生させる第2湾曲磁場発生手段120a,120bと、一方の第2カソード111a(111b)の先端部に外嵌されると共に他方の第2カソード111b(111a)の先端部周辺との間に筒状の磁場空間を発生させる第2筒状補助磁場発生手段130a,130bと、を備える。
詳細には、一対の第2ターゲット110a,110bの両対向面110a’,110b’は、何れも、一対の第2ターゲット110a,110b間の側方位置で、且つ後述する第2成膜部P2において基板Bに成膜する位置である第2成膜位置L2を向いて傾斜するように配設されている。このとき、両対向面110a’,110b’のなす角θ2が、45°〜180°且つ第1ターゲット10a,10bの両対向面10a’,10b’のなす角θ1よりも大きな値(即ち、θ1<θ2)となるように配設(設定)される。かかる角度(なす角)θ2は、スパッタリングした際に、なす角θ1よりも、基板B側へのプラズマの影響及び基板B側に飛来する二次電子等の荷電粒子が増加するが、成膜速度がなす角θ1の場合よりも速くなるような角度であって、60°〜120°(θ1が5°〜20°且つθ1<θ2の場合)がより好ましく、本実施形態においては、45°(θ1が20°の場合)である。
一対の第2ターゲット110a,110bは、本実施形態においては、第1成膜部P1における一対の第1ターゲット10a,10b同様、何れもインジウム錫合金(ITO:Indium Tin Oxide)で構成されている。また、第2ターゲット110a,110bの大きさも第1ターゲット10a,10b同様に幅125mm×長さ300mm×厚み5mmの矩形の板状体に形成されている。そして、第2ターゲット110a,110bは、真空容器2内の第2成膜部P2(第2成膜領域F2)に対向配置され、対向面(スパッタされる面)110a’,110b’が所定の間隔(ここでは、対向面110a’,110b’の中心T2a,T2b間距離が図中d2=160mm(=d1)の間隔)を有して配置されている。尚、本実施形態においては、第1ターゲット10a,10bと第2ターゲット110a,110bとが同一形状となるように構成されているが、これに限定される必要はなく、大きさ若しくは形状が互いに相違してもよい。また、本実施形態においては、d1=d2となるように第1及び第2ターゲット10a,10b,110a,110bが第1及び第2カソード11a,11b,111a,111bによって第1及び第2成膜領域F1,F2にそれぞれ配置されているが、d1とd2とが異なる距離となるよう、配置されてもよい。
第2湾曲磁場発生手段120a,120bは、第2ターゲット110a,110bの対向面110a’,110b’近傍に磁力線が弧状となるような磁場空間(湾曲磁場空間W2,W2’:図1の矢印W2,W2’参照)を発生させる(形成する)ための手段であり、本実施形態においては、永久磁石で構成されている。
第2湾曲磁場発生手段(永久磁石)120a,120bも、第1湾曲磁場発生手段20a,20bと同様、フェライト系、ネオジウム系磁石やサマリウム・コバルト系磁石等の強磁性体で構成されており、本実施形態においては、フェライト系磁石で構成されている。
第2湾曲磁場発生手段120a,120bは、第1湾曲磁場発生手段20a,20bと同様の構成であり、枠状磁石121a,121bと、該枠状磁石121a,121bと反対の磁極を有する中心磁石122a,122bとが、ヨーク123a,123bに配置されることで形成されている。より詳細には、第2湾曲磁場発生手段120a,120bは、正面視矩形の枠状に形成された枠状磁石121a,121bと、その開口中心に位置する正面視矩形状の中心磁石122a,122bとが正面視枠状磁石121a,121bと外周縁が同形状である一定厚さの板状のヨーク123a,123bにそれぞれ固定されることで形成されている。
そして、一方の第2湾曲磁場発生手段120aは、バッキングプレート112a側端部(ヨーク123a側端部)において、枠状磁石121aがN極(S極)で中心磁石122aがS極(N極)となるようにバッキングプレート112aの裏面に配置され、他方の第2湾曲磁場発生手段120bは、バッキングプレート112b側端部(ヨーク123b側端部)において、枠状磁石121bがS極(N極)で中心磁石122bがN極(S極)となるようにバッキングプレート112bの裏面に配置されている。このようにして、一方の第2ターゲット110aには、磁力線が該第2ターゲット表面(対向面)110a’の外周部から中心部に向かって弧状となるような内向湾曲磁場空間W2が形成され、他方の第2ターゲット110bには、磁力線が該第2ターゲット表面(対向面)110b’の中心部から外周部に向かって弧状となるような外向湾曲磁場空間W2’が形成される。
第2筒状補助磁場発生手段130a,130bは、第1成膜部P1における第1湾曲磁場発生手段20a,20bと同様に永久磁石で形成され、第1筒状補助磁場発生手段30a,30bと同様の構成であり、第2カソード(ターゲットホルダー)111a,111b先端部の外周に沿うような(外嵌可能な)角筒状に形成されている。本実施形態においては、第2筒状補助磁場発生手段130a,130bは、ネオジウム系のネオジウム・鉄・ボロン磁石等で構成され、正面視矩形の枠状に形成されると共に前後方向に沿った周壁の厚みが一定となるような角筒状に形成されている。そして、第2筒状補助磁場発生手段130a,130bを構成する周壁の厚みは、天壁が一番薄く、次いで側壁が薄く、底壁が最も厚くなるように形成されている。尚、第2筒状補助磁場発生手段130a,130bは、第1筒状補助磁場発生手段30a,30bと同様に、第2ターゲット110a,110bを囲むように配置されていれば角筒状でなく、他の形状であってもよい。
この周壁の厚みは、第1成膜部P1における一対の第1筒状補助磁場発生手段30a,30bと同様に、一対の第2筒状補助磁場発生手段130a,130bの先端の対応する部分同士の中間位置における磁場強度が一定となるよう、その厚みが設定されている。
そして、第2筒状補助磁場発生手段130a,130bは、先端側の磁極が第2湾曲磁場発生手段120a,120bの枠状磁石121a,121bと同じとなるように、第2カソード111a,111bの先端側外周に外嵌するように配置されている。このように配置することで、第2ターゲット110a,110b間に形成される空間(ターゲット間空間)K2を筒状に囲うと共に、磁力線の向きが前記一方の第2ターゲット110aから他方の第2ターゲット110bへ向かうような筒状補助磁場空間t2が形成される(図1の矢印t2参照)。
以上のように、第1成膜部P1と第2成膜部P2とは、一対のターゲット10a,10b(111a,111b)の両対向面10a’,10b’(110a’,110b’)のなす角θ1(θ2)以外は、同一の構成である。このような構成の第1成膜部P1と第2成膜部P2とが真空容器2内に並設されている。詳細には、第1成膜部P1の第1カソード11a,11bと第2成膜部P2の第2カソード111a,111bとが真空容器2内に一列となるように並設されている。より詳細には、各第1及び第2ターゲット10a,10b,110a,110bの中心T1a,T1b,T2a,T2bが同一線上に位置し、且つ、傾斜して対向配置された一対のターゲット10a,10b(111a,111b)の後述する第1中央面C1と第2中央面C2とが平行若しくは略平行となるように並設されている。
第1スパッタ電力供給用電源4aは、DCの定電力若しくは定電流を印加可能な電源であり、接地電位(アース電位)にある真空容器2を陽極(アノード)とし、第1ターゲット10a,10bを陰極(カソード)としてスパッタ電力を供給するものである。また、第2スパッタ電力供給用電源4bは、DCの定電力若しくは定電流を印加可能な電源であり、接地電位(アース電位)にある真空容器2を陽極(アノード)とし、第2ターゲット110a,110bを陰極(カソード)としてスパッタ電力を供給するものである。
尚、本実施形態において、第1及び第2スパッタ電力供給用電源4a,4bは、共にDCの定電力を印加可能な電源としているが、これに限定される必要はない。即ち、スパッタ電力供給用電源4a,4bは、ターゲットの材質と製作する薄膜の種類(金属膜、合金膜、化合物膜等)によって適宜変更可能である。変更可能な電源としては、RF電源、MF電源等があり、DC電源にRF電源を重畳して用いることも可能である。また、各カソードにそれぞれDC電源又はRF電源を各1台ずつ接続してもよい。さらに、第1及び第2スパッタ電力供給用電源4a,4bは、同一種類の電源である必要はなく、互いに異なる種類の電源であってもよい。
基板ホルダー3は、基板Bを保持すると共にその状態(保持状態)で、少なくとも第1成膜部P1から第2成膜部P2まで、詳細には、第1成膜部P1において基板Bが成膜される位置である第1成膜位置L1から、第2成膜部P2において基板Bが成膜される位置である第2成膜位置L2まで移動可能な移動手段(図示せず)を備える。また、前記移動手段によって基板ホルダー3が移動する際、第1及び第2成膜位置L1,L2においては、基板ホルダー3は、保持した基板Bの被成膜面B’が第1成膜部P1の一対の第1カソード11a,11b、第2成膜部P2の一対の第2カソード111a,111b方向をそれぞれ向くように移動する。
本実施形態の場合、基板ホルダー3は、真空容器2の一方側の他のプロセス室(ロードロック室)9から基板Bを真空容器2内に搬入し、第1及び第2成膜部P1,P2において被成膜面B’に成膜した後、他方側の他のプロセス室(ロードロック室)9’へ基板Bを搬出する。そのため、基板ホルダー3は、真空容器2の内部空間Sを、第1成膜領域F1から第2成膜領域F2方向へ横断するように、一方側の他のプロセス室9と他方側の他のプロセス室9’とを結ぶ線上を移動する。
第1成膜位置L1及び第2成膜位置L2は、真空容器2の両側部に連接された他のプロセス室9,9’をそれぞれ結ぶ線上に位置(存在)する。詳細には、第1成膜位置L1は、基板Bを保持した基板ホルダー3が配置された場合、基板Bの被成膜面B’が、第1ターゲット10a,10b間の中央を向くと共に、対向面10a’,10b’のなす角θ1を2等分する面(第1中央面)C1と直交し、且つ第1ターゲット10a,10bの両対向面10a’,10b’の中心T1a,T1bを結ぶ直線(T1−T1線)と被成膜面B’中央との最短距離がe1=175mmとなるような位置である。
また、第2成膜位置L2は、基板Bを保持した基板ホルダー3が配置された場合、基板Bの被成膜面B’が、第2ターゲット110a,110b間の中央を向くと共に、対向面110a’,110b’のなす角θ2を2等分する面(第2中央面)C2と直交し、且つ第2ターゲット110a,110bの両対向面110a’,110b’の中心T2a,T2bを結ぶ直線(T2−T2線)と被成膜面B’中央との最短距離がe2=175mm(=e1)となるような位置である。
排気装置5は、真空容器2内を排気できるように真空容器2に接続され、真空容器2内を排気することで内部空間Sの圧力を下げるために用いられる。
スパッタガス供給装置6は、ターゲット間に放電用ガス(スパッタガス)を供給するために真空容器2に接続されている。スパッタガス供給装置6は、第1ターゲット10a,10bの近傍に配置される不活性ガス(本実施形態においては、アルゴン(Ar)ガス)を供給するための第1不活性ガス導入パイプ6’と第2ターゲット110a,110bの近傍に配置される第2不活性ガス導入パイプ6”とを含んでいる。尚、スパッタガス供給装置6は、不活性ガスを第1不活性ガス導入パイプ6’及び第2不活性ガス導入パイプ6”の両方へ供給することができると共に不活性ガスを第1不活性ガス導入パイプ6’又は第2不活性ガス導入パイプ6”のどちらか一方だけへ切換可能に供給することもできる。
また、第1成膜位置L1及び第2成膜位置L2それぞれの近傍には、酸化物、窒化物等の誘電体薄膜を製作するために、反応性ガス供給装置7と、該反応性ガス供給装置7からO2、N2等の反応性ガスを第1成膜位置L1に向かって導入する第1反応性ガス導入パイプ7’,7’及び第2成膜位置L2に向かって導入する第2反応性ガス供給パイプ7”,7”とを配設することも可能である。尚、反応性ガス供給装置7は、反応性ガスを第1反応性ガス導入パイプ7’,7’及び第2反応性ガス導入パイプ7”,7”の両方へ供給することができると共に、反応性ガスを第1反応性ガス導入パイプ7’,7’又は第2反応性ガス導入パイプ7”,7”のどちらか一方だけへ切換可能に供給することができる。
基板Bは、その被成膜面B’上に薄膜が形成される被成膜対象物である。本実施形態において、通常、スパッタリングを行う基板Bの大きさとターゲット10a,10b寸法との関係は、要求される基板面(被成膜面)B’内の膜厚分布均一性に関係する。膜厚分布均一性が膜厚分布±10%以内程度の場合、基板Bにおけるターゲット10a,10bの長手方向の長さである基板幅SW(mm)と、ターゲット10a,10bにおける基板Bの幅方向の長さである長手方向寸法TL(mm)との関係は、SW≦TL×0.6〜0.7で示される。従って、本実施形態に係るスパッタ装置1においては、幅125mm×長さ300mm×厚み5mmの矩形ターゲットを使用していることから、基板B寸法は、上記関係より、基板幅SWが200mm程度の大きさの基板Bに対して成膜可能である。また、スパッタ装置1は、基板通過成膜の(図1における左右方向に基板Bを搬送しつつ、スパッタリングする)装置構成から、基板Bの長さは、装置寸法の制約(制限)はあるが、基板幅以上の大きさまで成膜可能である。例えば、本実施形態においては、幅200mm×長さ200mm、幅200mm×長さ250mm、又は幅200mm×長さ300mmの大きさの基板Bに対して、膜厚分布±10%以内で成膜可能である。この時、スパッタリングにより被成膜面B’に薄膜を形成する基板Bとしては、有機EL素子、有機薄膜半導体等の低温・低ダメージ成膜が必要な基板Bが用いられる。
尚、本実施形態においては、基板Bの幅は、ターゲット10a,10bの長手方向に沿った方向の長さとし、基板Bの長さは、ターゲット10a,10bの長手方向と直交する方向(図1における左右方向)の長さとする。
また、本実施形態において、スパッタリングにより被成膜面B’に薄膜を形成する基板Bとしては、有機EL素子、有機半導体等の低温・低ダメージ成膜が必要とされる基板を用いることができる。
第1実施形態に係るスパッタ装置1は、以上の構成からなり、次に、スパッタ装置1における薄膜形成の動作について説明する。
基板Bにおける被成膜面B’への薄膜形成にあたり、本実施形態においては、低温・低ダメージ成膜可能な(成膜速度が遅い)スパッタリングにより初期層(第1層)を形成した後、成膜速度を速くしたスパッタリングによって第2層を形成することで被成膜面B’上に必要な膜厚の薄膜が形成される。以下、詳細に説明する。尚、初期層(第1層)と第2層とは、形成する薄膜の膜厚方向において、成膜速度が異なる部分を仮想面によって分けて説明しているだけであって、膜厚方向において、薄膜が層として分かれているのではなく、連続した一体の薄膜として形成されている。
先ず、初期層を形成するに際し、基板Bを基板ホルダー3に保持させ、その状態で基板ホルダー3を第1成膜位置L1(図1の実線で描かれた基板B及び基板ホルダー3の位置)に配置する。
次に、排気装置5により真空容器(チャンバー)2内を排気する。その後、スパッタガス供給装置6により第1不活性ガス導入パイプ6’及び第2不活性ガス導入パイプ6”からアルゴンガス(Ar)を導入して所定のスパッタ操作圧力(ここでは、0.4Pa)とする。
そして、第1スパッタ電力供給用電源4aによって第1ターゲット10a,10bにスパッタ電力を供給する。この時、永久磁石によって第1湾曲磁場発生手段20a,20b及び第1筒状補助磁場発生手段30a,30bが構成されていることから、第1湾曲磁場発生手段20a,20bによって第1ターゲット10a,10bの対向面10a’,10b’にそれぞれ第1湾曲磁場空間(第1内向及び外向湾曲磁場空間)W1,W1’が形成されており、さらに、第1筒状補助磁場発生手段30a,30bにより該第1ターゲット10a,10bの対向面10a’,10b’間に形成される柱状の空間K1を囲む(包む)ように筒状の補助磁場空間t1が形成されている。
すると、第1湾曲磁場空間W1,W1’内には、プラズマが形成され、第1ターゲット10a,10bの対向面10a’,10b’がスパッタされて、(第1)スパッタ粒子が飛散する。そして、第1湾曲磁場空間W1,W1’からはみ出したプラズマや飛び出した二次電子等の荷電粒子は、第1筒状補助磁場空間t1によって、該第1筒状補助磁場空間t1に囲まれた空間(第1ターゲット間空間)K1内に閉じ込められる。
こうして、第1ターゲット10a,10bのスパッタ面(対向面)10a’,10b’から飛び出した(叩き出された)スパッタ粒子(第1スパッタ粒子)を、前記第1ターゲット間空間K1の側方位置(第1成膜位置L1)において、該第1ターゲット間空間K1に被成膜面B’が向くように基板ホルダー3によって配置されている基板Bに付着させて薄膜(薄膜の初期層)が形成される。
このとき、一般に、一対のターゲットを対向するように配置して行うスパッタリングにおいては、ターゲットの中心間距離が同一であれば、一対のターゲットの対向面のなす角θが小さいほど(対向面同士が平行に近づくほど)、ターゲット間空間の磁場強度が大きく(強く)なることから、基板側に飛来する二次電子等の荷電粒子が減少すると共にプラズマのターゲット間空間への閉じ込め効果も向上する。しかし、両対向面が平行に近づくことから、基板側に飛来するスパッタ粒子も減少する。そのため、基板に対し低温・低ダメージ成膜が可能となるが、基板に形成される薄膜の成膜速度が遅く(小さく)なる。
一方、一対のターゲットの対向面のなす角θが大きいほど(対向面が基板方向へ向くほど)、対向面の基板側端部間の距離が大きくなり、かかる部分のターゲット間空間の磁場強度が小さく(弱く)なるため、かかる磁場強度が小さくなった部分からプラズマや二次電子等の荷電粒子が飛び出しやすくなり、基板側に飛来する二次電子等の荷電粒子が増加すると共にプラズマのターゲット間空間への閉じ込め効果が悪くなる。しかし、対向面が基板方向に向いていることから、基板に到達するスパッタ粒子も増加するため、基板Bの温度上昇及び基板に対する荷電粒子によるダメージが、なす角θが小さいときよりも増加するが成膜速度は大きくなる。
そのため、上記のように、第1ターゲット10a,10bの対向面10a’,10b’のなす角θ1は、スパッタリングの際に、プラズマ及び二次電子等の荷電粒子が基板Bに許容量以上のダメージを与えないような平行に近い(小さな)角度に設定され、そうすることで、第1ターゲット間空間K1へのプラズマ及び二次電子等の荷電粒子の閉じ込め効果を良好にすることができる。
さらに、第1筒状補助磁場発生手段30a,30bが第1カソード11a,11bに配置されていることで、第1ターゲット間空間K1の外側には、第1筒状補助磁場空間t1が形成される。そのため、第1ターゲット表面(対向面)10a’,10b’に形成される第1湾曲磁場空間W1,W1’と基板Bとの間に第1筒状補助磁場空間t1が形成され、第1湾曲磁場空間W1,W1’からはみ出したプラズマは、第1筒状補助磁場空間t1によって閉じ込められ(基板B側へはみ出すのを妨げられ)て、該プラズマによる基板Bへの影響をさらに減少させることができる。
また、前記第1湾曲磁場空間W1,W1’から基板B側に飛び出してくる二次電子等の荷電粒子も、前記第1筒状補助磁場空間t1が第1ターゲット間空間K1を囲うと共に、第1湾曲磁場空間W1,W1’と基板Bとの間に形成されているため、第1ターゲット間空間K1内への荷電粒子の閉じ込め効果が大きくなる。即ち、荷電粒子の第1ターゲット間空間K1内からの基板B側への飛び出しがさらに減少する。
また、第1筒状補助磁場発生手段30a,30bは、厚みの大きい底壁33,33が一対の第1ターゲット10a,10bにおける互いに対向する面同士の距離が大きくなる側(基板B側)となるよう、配置されていることから、第1筒状補助磁場発生手段30a,30b近傍における磁場強度は、一対の第1ターゲット10a,10bにおける互いに対向する面同士の距離が大きくなるに従って強くなる。
これは、一対の第1ターゲット10a,10bの周縁に沿って配置されている第1筒状補助磁場発生手段30a,30b近傍における磁場強度が全て同じ磁場強度であれば、一対の第1ターゲット10a,10bの互いに対向する対向面(スパッタ面)10a’,10b’が前記基板Bの成膜面B’に向くように傾斜させてそれぞれ配置された際に(なす角θ>0°の場合に)、一方の第1ターゲット10aから他方の第1ターゲット10bまでの中間点の磁場強度は、対向する面同士の距離が大きくなるに従って弱くなる。そのため、この磁場強度が小さくなった部分(基板B側)からプラズマがはみ出し、また、二次電子等の荷電粒子が飛び出してしまうことで基板Bにダメージが加わる。
しかし、第1筒状補助磁場発生手段30a,30bが上記構成であれば、前記対向する面同士の距離が大きくなるに従って第1筒状補助磁場発生手段30a,30b近傍における磁場強度が大きくなるように設定されているため、前記中間点における磁場強度は、常に一定の磁場強度を得ることができる。
従って、基板B側(第1成膜位置L1側)に傾斜させて配置した(所謂、V型対向配置の)第1ターゲット10a,10bであっても、対向面10a’,10b’の距離が大きくなったところからのプラズマのはみ出しや二次電子等の荷電粒子が飛び出すことを効果的に抑制でき、ターゲット間のプラズマ及び二次電子等の荷電粒子の閉じ込め効果が良好となる。
尚、第1筒状補助磁場発生手段30a,30bは、アース電位、マイナス電位、プラス電位、フローティング(電気的に絶縁状態)の何れかに設定されていてもよく、或いは、アース電位とマイナス電位、又はアース電位とプラス電位を時間的に交互に切り換えように設定されていてもよい。第1筒状補助磁場発生手段30a,30bの電位を上記の何れかに設定することで、第1筒状補助磁場発生手段30a,30bを備えていない一対のマグネトロンカソードを、ターゲットの対向面が基板側に傾斜するように配置したV型対向配置のマグネトロンスパッタ装置(従来のマグネトロンスパッタ装置)よりも放電電圧の低電圧化が実現できる。
以上より、第1成膜部P1においては、第1ターゲット間空間K1への、スパッタリングにより発生するプラズマ及び二次電子等の荷電粒子の閉じ込め効果が極めて良好な状態でスパッタリングを行うことができる。そのため、基板Bの被成膜面B’に対し、プラズマの影響及びスパッタ面10a’,10b’から飛来する二次電子等の荷電粒子による影響を極めて小さくすることができ、低温・低ダメージ成膜による薄膜の初期層の形成を行うことができる。本実施形態において、初期層は、10〜20nm程度の膜厚となるように成膜される。
次に、第2層を成膜するが、その前に第1成膜部P1におけるスパッタリングを停止する。このスパッタリング停止後、基板ホルダー3を、被成膜面B’に初期層が成膜された基板Bを保持した状態で、第1成膜位置L1から第2成膜位置L2まで移動手段によって移動させる。基板ホルダー3が第2成膜位置L2に移動後、第2成膜部P2において、第2層を成膜するためにスパッタリングを開始する。このとき、真空容器2内の気圧等のスパッタ条件は変更する必要がないため、基板ホルダー3が第1成膜位置L1から第2成膜位置L2に移動後、直ぐに第2成膜位置L2において、スパッタリングを開始することができる。
第2成膜部P2おいて、第1成膜部P1と同に、第2スパッタ電力供給用電源4bによって第2ターゲット110a,110bにスパッタ電力を供給する。この時、永久磁石によって第2湾曲磁場発生手段120a,120b及び第2筒状補助磁場発生手段130a,130bが構成されていることから、第2湾曲磁場発生手段120a,120bによって第2ターゲット110a,110bの対向面110a’,110b’にそれぞれ第2湾曲磁場空間(第2内向及び外向湾曲磁場空間)W2,W2’が形成されており、さらに、第2筒状補助磁場発生手段130a,130bにより該第2ターゲット110a,110bの対向面110a’,110b’間に形成される柱状の空間K2を囲む(包む)ように筒状の補助磁場空間t2が形成されている。
すると、第2湾曲磁場空間W2,W2’内には、プラズマが形成され、第2ターゲット110a,110bの対向面110a’,110b’がスパッタされて、(第2)スパッタ粒子が飛散する。そして、該第2湾曲磁場空間W2,W2’からはみ出したプラズマや飛び出した二次電子等の荷電粒子は、第2筒状補助磁場空間t2によって、該第2補助磁場空間t2に囲まれた空間(第2ターゲット間空間)K2内に閉じ込められる。
こうして、第2ターゲット110a,110bのスパッタ面(対向面)110a’,110b’から飛び出した(叩き出された)スパッタ粒子(第二スパッタ粒子)を、前記第2ターゲット間空間K2の側方位置(第2成膜位置L2)において、該第2ターゲット間空間K2に被成膜面B’が向くように基板ホルダー3によって配置されている基板Bに付着させて薄膜(薄膜の第2層)が形成される。
このとき、第2成膜部P2における一対の第2ターゲット110a,110bの両対向面110a’,110b’のなす角θ2は、第1成膜部F1におけるなす角θ1よりも大きな角度、即ち、より対向面110a’,110b’が基板B側に向いているため、基板Bへのプラズマの影響及び飛来する荷電粒子の量が増加する。
しかし、上記のように、対向面110a’,110b’がより基板B側に向いていることから、スパッタ面(対向面)110a’,110b’がスパッタされて飛散する(第2)スパッタ粒子が基板B(被成膜面B’)へ到達する量も増加するため、成膜速度が速くなる。
このようにして、第2成膜部P2においては、初期層の成膜時よりも成膜速度を速くして、第2層を初期層の上に形成する。本実施形態においては、第2層は、100〜150nm程度の膜厚に成膜する。
このように、被成膜面B’に初期層(第1層)と第2層とを、一対のターゲットの対向面のなす角θを変更することで成膜速度を変えた第1成膜部P1(対向面10a’,10b’のなす角θ1)と第2成膜部P2(対向面110a’,110b’のなす角θ2)とで順に成膜した場合、なす角がθ1<θ2で、第1ターゲット10a,10b及び第2ターゲット110a,110bへの投入電力が同じであれば、第2層成膜時の成膜速度を第1層成膜時の成膜速度に比べ約20%〜50%増加させることができる。また、さらに、なす角θ2での第2カソード111a,111bへの投入電力を増加させることで、2倍以上の成膜速度を実現することができる。
以上より、第1成膜領域F1の第1成膜部P1において、第1カソード11a,11bの先端部外側に外嵌するよう、第1筒状補助磁場発生手段30a,30bを備えることで、一方の第1ターゲット10a周辺から他方の第1ターゲット10b周辺までを筒状に結び、磁力線が一方の第1ターゲット10a周辺から他方の第1ターゲット10b周辺へ向くような第1筒状補助磁場空間t1が形成されるため、スパッタリングの際に第1ターゲット対向面10a’,10b’上の第1湾曲磁場空間W1,W1’内からはみ出したプラズマ及び飛び出してくる二次電子等の荷電粒子は、該第1筒状補助磁場空間t1内に閉じ込められる。
即ち、筒状の第1筒状補助磁場空間t1の両端を、対向面10a’,10b’を内側にした第1ターゲット10a,10bでそれぞれ蓋をしたような配置となるため、第1ターゲット表面(対向面)10a’,10b’に形成される第1湾曲磁場空間W1,W1’からはみ出したプラズマが第1筒状補助磁場空間t1によって閉じ込められ(基板側へはみ出すのを妨げられ)て、該プラズマ等による基板Bへの影響を減少させることができる。
また、第1湾曲磁場空間W1,W1’から基板B側に飛び出してくる二次電子等の荷電粒子も、第1筒状補助磁場空間t1内への前記基板B側に飛び出してくる荷電粒子の閉じ込めを行うことができ、基板Bへ到達する荷電粒子が減少する。
また、第1カソード11a,11bは、マグネトロンカソードの先端部外周に第1筒状補助磁場発生手段30a,30bを備えた複合型カソードであるため、マグネトロンカソードと同様に、スパッタリングの際に第1カソード(複合型カソード)11a,11bへ投入する電流値を大きくしても、対向ターゲット型カソードの様に、プラズマが中心部に集中する現象が現れて放電が不安定とならず、ターゲット表面10a’,10b’近傍に形成されるプラズマが長時間安定放電することができる。
さらに、第1湾曲磁場空間W1,W1’よりも第1筒状補助磁場空間t1の方が磁場強度が大きいことから、対向面10a’,10b’近傍における磁場強度は、第1ターゲット10a,10bの中心側が弱く、第1ターゲット10a,10b周辺部が最も強くなるような磁場分布を得ることができ、第1筒状補助磁場空間t1内への湾曲磁場空間W1,W1’からはみ出したプラズマの閉じ込め効果、及び飛び出した二次電子等の荷電粒子の閉じ込め効果がより良好となる。
そのため、一対の第1ターゲット10a,10bの中心間距離を短くすることなく、被成膜対象である基板Bへのプラズマの影響及びスパッタ面(対向面)10a’,10b’から飛来する二次電子等の荷電粒子による影響を極めて小さくすることができる。また、膜質が第1筒状補助磁場空間t1を発生させないスパッタリングにより形成される薄膜の膜質と同程度であれば、前記一対の第1ターゲット10a,10bの対向面10a’,10b’のなす角θをより大きくすることができる。
従って、第1成膜部P1において、一対の第1ターゲット10a,10bの対向面10a’,10b’のなす角θが小さい角度θ1に設定された第1カソード(複合V型カソード)11a,11bを用いてスパッタリングすることで、スパッタリングにより発生するプラズマ及び荷電粒子の第1ターゲット間空間K1への閉じ込め効果が非常に向上する。そのため、成膜速度は遅いが、基板Bの被成膜面B’に対し、低温・低ダメージ成膜を行うことができ、所定の厚さの初期層(第1層)を形成することができる。
そして、真空容器2内の圧力等の条件変更に時間のかかるスパッタ条件を変更することなく、基板ホルダー3を第1成膜部P1の第1成膜位置L1から第2成膜部P2の第2成膜位置L2に移動させることで、第2成膜部において、一対の第2ターゲット110a,110bの対向面110a’,110b’のなす角θが、θ1より大きなθ2に設定された第2カソード111a,111bを用いてスパッタリングすることで、基板B側に飛来する二次電子等の荷電粒子やプラズマの影響は増加するが、成膜速度を速くして短時間で第2層を成膜(形成)することができる。
このように、第1成膜部P1において、低温・低ダメージ成膜により基板Bに初期層が形成されることで、該形成された初期層が保護層として働くため、第2成膜部P2において、成膜時間を短縮するために基板B側へのプラズマの影響や二次電子等の荷電粒子の飛来が増加するが成膜速度を速くした成膜を行っても、前記初期層(保護層)が該プラズマの影響や二次電子等の荷電粒子による基板Bへのダメージを抑制しつつ成膜することができる。さらに、初期層成膜後から第2層を成膜する際に、真空容器2内の圧力等のスパッタ条件を変更する必要がなく、基板ホルダー3を第1成膜部P1から第2成膜位置P2へ移動させるだけでよいことから成膜時間(成膜行程全体の時間)の短縮を図ることができる。特に、複数枚の基板B,B,…に対して連続して薄膜を形成する(成膜処理する)場合、真空容器内における圧力等の前記スパッタ条件を基板B毎に変更する必要はなく、一定の前記スパッタ条件の状態で、基板B,B,…を、順次、第1及び第2成膜部へ基板ホルダー3によって次々に搬送するだけでよいことから、複数枚の基板B,B,…に対する成膜時間を大幅に短縮することができる。
その結果、低温・低ダメージ成膜が必要な基板Bに対して成膜可能であると共に、複数枚の基板B,B,…を連続的に成膜処理する際にも成膜時間の短縮を図ることができる。
次に、本発明の第2実施形態について、図4を参照しつつ説明する。尚、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、図4において同一符号を用いて示すと共に説明を一部省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
スパッタ装置1’は、内部空間Sを有する真空容器(チャンバー)2と、被成膜対象物である基板Bの被成膜面B’に成膜するための第1成膜部P1及び第2成膜部P’2と、基板Bを保持した状態で、少なくとも第1成膜部P1における基板Bへの成膜位置である第1成膜位置L1から、第2成膜部P’2における基板Bへの成膜位置である第2成膜位置L’2まで、真空容器2内を移動可能な(矢印A)基板ホルダー3とを備える。
また、スパッタ装置1’は、第1成膜部P1にスパッタ電力を供給するための第1スパッタ電力供給用電源4aと、第2成膜部P’2にスパッタ電力を供給するための第2スパッタ電力供給用電源4’bと、真空容器2内(内部空間S)の排気を行うための排気装置5と、真空容器2内にスパッタガスを供給するためのスパッタガス供給装置6とを備える。尚、真空容器2は、基板B近傍に反応性ガスを供給するための反応性ガス供給装置7を備える場合もある。
真空容器2は、基板ホルダー3側(図中下端側)端部の両側に連絡通路(基板搬送ラインバルブ)8,8’を介して他のプロセス室又はロードロック室9,9’が連接されている。
真空容器2の内部空間Sは、第1成膜部P1を配設するための第1成膜領域F1と、第2成膜部P’2を配設するための第2成膜領域F2とで構成され、第1成膜部P1と第2成膜部P’2とが並設されている。
第2成膜部P’2は、第2ターゲット110’を先端に有する第2カソード(第2ターゲットホルダー)111’を備え、該第2カソード111’は、第2ターゲット110’の表面110’a’が、第2成膜位置L’2に位置する基板Bの被成膜面B’と平行に対向するよう、配設されている。
第2カソード(第2ターゲットホルダー)111’は、第1成膜部P1における第1カソード11a,11bと同様に、該第2カソード111’の先端部にバッキングプレート112’を介して固定される第2ターゲット110’と、バッキングプレート112’の裏面側に配設されると共に第2ターゲット表面110’a’側に弧状に湾曲した磁場空間を発生させる第2湾曲磁場発生手段120’と、を備える。該第2湾曲磁場発生手段120’は、第1実施形態における第2湾曲磁場発生手段120aと同様に構成されており、第2ターゲット表面110’a’側に内向湾曲磁場空間W’2’を形成する。
尚、第2及び後述の他の実施形態において、マグネトロンカソードを、該マグネトロンカソードが備えるターゲットの表面が基板Bの被成膜面B’と平行になるように配置したカソードを「平行平板マグネトロンカソード」と称することがある。
第2ターゲット110’は、本実施形態においては、第1実施形態と同様に、インジウム錫合金で構成されている。また、第2ターゲット110’の大きさは、幅125mm×長さ300mm×厚み5mmの矩形の板状体に形成されている。そして、第2ターゲット110’は、真空容器2内の第2成膜部P’2における第2成膜位置L’2に基板Bが位置する際に、該基板Bの被成膜面B’と平行に対向し、表面(スパッタされる面)110’a’が被成膜面B’から所定の距離となるように配置されている。
以上のように、第2カソード111’は、第1実施形態の第2成膜部P2における第2カソード111aから第2筒状補助磁場発生手段130aを除いたカソードと同様に構成されている。そして、第1成膜部P1と第2成膜部P’2とは、真空容器2内に並設されている。詳細には、第1成膜部P1の第1カソード11a,11bと第2成膜部P’2の第2カソード111’とが真空容器2内に一列となるように並設されている。より詳細には、各第1及び第2ターゲット10a,10b,111’の中心T1a,T1b,T’2とが同一線上に位置し、且つ、傾斜して対向配置された一対の第1ターゲット10a,10bの第1中央面C1と第2ターゲット110’の表面110’a’とが直交若しくは略直交方向となるように並設されている。
第2成膜位置L’2は、真空容器2の両側部に連接された他のプロセス室9,9’をそれぞれ結ぶ線上に位置する。詳細には、第2成膜位置L’2は、基板Bを保持した基板ホルダー3が配置された場合、基板Bの被成膜面B’が、第2ターゲット110’の正面に位置すると共に表面110’a’と被成膜面B’とが平行に対向し、且つ第2ターゲット110’の表面110’a’における中心T’2と被成膜面B’中央との距離がe’2=175mm(=e1)となるような位置である。尚、本実施形態においては、e’2=e1となるように配置されているが、これに限定される必要はなく、e’2とe1とは、異なる値に設定されてもよい。
第2不活性ガス導入パイプ6”,6”は、第2ターゲット110’の基板B側近傍に設けられており、第2ターゲット110’の表面110’a’近傍にスパッタガス供給装置6から不活性ガスを導入できるように構成されている。
本実施形態に係るスパッタ装置1’は、以上の構成からなり、次に、スパッタ装置1’における薄膜形成の動作について説明する。
先ず、第1実施形態同様に、初期層を形成するに際し、基板Bを基板ホルダー3に保持させ、その状態で基板ホルダー3を第1成膜位置L1(図4の実線で描かれた基板B及び基板ホルダー3の位置)に配置し、排気装置5により真空容器(チャンバー)2内を排気すると共にスパッタガス供給装置6により真空容器2内に第1不活性ガス導入パイプ6’及び第2不活性ガス導入パイプ6”,6”からアルゴンガス(Ar)を導入して所定のスパッタ操作圧力(本実施形態においては、0.4Pa)とする。
その後、第1実施形態同様にして、第1成膜部P1において基板Bに薄膜の形成(成膜)を行う。即ち、低温・低ダメージ成膜によって、基板Bに薄膜の初期層の形成を行う。本実施形態においても、初期層は、10〜20nm程度の膜厚となるように成膜される。
次に、第2層を成膜する前に、第1成膜部P1におけるスパッタリングを停止する。その後、基板ホルダー3を、被成膜面B’に初期層が成膜された基板Bを保持した状態で、第1成膜位置L1から第2成膜位置L’2まで移動手段によって移動させる。基板ホルダー3が第2成膜位置L’2に移動後、第2成膜部P’2において、第2層を成膜するためにスパッタリングを開始する。このとき、真空容器2内の圧力等のスパッタ条件は、第1実施形態同様、変更する必要がないため、基板ホルダー3が第1成膜位置L1から第2成膜位置L’2に移動後、直ぐにスパッタリングを開始することができる。
第2成膜部P’2おいて、第2スパッタ電力供給用電源4’bによって第2ターゲット110’にスパッタ電力を供給する。この時、永久磁石によって第2湾曲磁場発生手段120’が構成されていることから、第2湾曲磁場発生手段120’によって第2ターゲット110’の表面110’a’に第2湾曲磁場空間W’2’が形成されている。
すると、第2湾曲磁場空間W’2’内には、プラズマが形成され、第2ターゲット110’の表面110’a’がスパッタされて、(第2)スパッタ粒子が飛散する。
こうして、第2ターゲット110’のスパッタ面(表面)110’a’から飛びだした(叩き出された)スパッタ粒子(第2スパッタ粒子)を、第2膜位置L’2において、該第2ターゲット110’の表面110’a’と平行に対向するよう、配置されている基板Bに付着させて薄膜(薄膜の第2層)が形成される。
このとき、第2成膜部P’2における第2カソード111’は、第2ターゲット110’の表面110’a’が基板Bの被成膜面B’と平行となるように対向した平行平板マグネトロンカソード111’である。そして、一般に、マグネトロンカソードは、ターゲット表面側に形成される磁場空間(湾曲磁場空間)の形状により、ターゲット中心部の磁場強度が小さくなるため、かかる部分からターゲット表面と直交する方向にプラズマや二次電子等の荷電粒子が飛び出し(はみ出し)易くなる。そのため、第2成膜位置P’2においては、平行平板マグネトロンカソード111’から基板B側へのプラズマの影響及び飛来する荷電粒子の量が増加する。
しかし、上記のように、平行平板マグネトロンカソード111’は、第2ターゲット110’の表面110’a’が基板Bの被成膜面B’と平行に対向するよう、配置されている。そのため、スパッタ面(表面)110’a’がスパッタされて飛散するスパッタ粒子の基板B(被成膜面B’)へ到達する量は、基板Bに対してスパッタ面が傾斜して配置されるターゲット(所謂、V型対向配置のターゲット)に比べて極めて多いため、成膜速度が著しく増加する。
このようにして、第2成膜部P’2においては、初期層の成膜時よりも成膜速度を速くして、第2層を初期層の上に形成する。本実施形態においては、第2層は、100〜150nm程度の膜厚に成膜する。
このように、被成膜面B’に初期層(第1層)と第2層とを、複合V型カソード11a,11bと、平行平板型マグネトロンカソード111’とで順に成膜した場合、第1ターゲット10a,10b及び第2ターゲット110’への投入電力が同じであれば、第2層成膜時の成膜速度を第1層成膜時の成膜速度に比べ約80%〜100%増加させることができる。また、さらに、平行平板マグネトロンカソード111’への投入電力を増加させることで、3倍以上の成膜速度を実現することができる。
以上より、第1成膜部P1において、複合V型カソード11a,11bを用いることで、第1実施形態同様、第1ターゲット表面(対向面)10a’,10b’に形成される第1湾曲磁場空間W1,W1’からはみ出したプラズマ及び基板B側に飛び出してくる荷電粒子の閉じ込め効果が極めて向上する。
また、複合V型カソード11a,11bは、スパッタリングの際に複合型カソード11a,11bへ投入する電流値を大きくしても、プラズマが中心部に集中する現象が現れて放電が不安定とならず、ターゲット表面10a’,10b’近傍に形成されるプラズマが長時間安定放電することができる。
さらに、第1湾曲磁場空間W1,W1’よりも外磁場空間(第1筒状補助磁場空間)t1の方が磁場強度が大きいことから、より効果的に、第1筒状補助磁場空間t1内へのプラズマ及び二次電子等の荷電粒子の閉じ込めが可能となる。
そのため、第1実施形態同様、第1成膜部P1において、一対の第1ターゲット10a,10bの対向面10a’,10b’のなす角θが小さい角度θ1に設定された第1カソード(複合V型カソード)11a,11bを用いてスパッタリングすることで、スパッタリングにより発生するプラズマ及び荷電粒子の第1ターゲット間空間K1への閉じ込め効果が非常に向上する。そのため、成膜速度は遅いが、基板Bの被成膜面B’に対し、低温・低ダメージ成膜を行うことができ、所定の厚さの初期層(第1層)を形成することができる。
そして、真空容器2内の圧力等の条件変更に時間のかかるスパッタ条件を変更することなく、基板ホルダー3を第1成膜部P1の第1成膜位置L1から第2成膜部P’2の第2成膜位置L’2に移動させる。そして、第2成膜部P’2において、平行平板マグネトロンカソード111’を用いてスパッタリングすることで、基板B側に飛来する二次電子等の荷電粒子やプラズマの影響は増加するが、成膜速度を速くして短時間で第2層を成膜(形成)することができる。
このように、第1実施形態同様、第1成膜部P1において、低温・低ダメージ成膜により基板Bに初期層を形成し、該形成した初期層を保護層として働かせることで、第2成膜部P’2において、第2層を形成する際の基板Bへの二次電子等の荷電粒子によるダメージやプラズマ等の影響が基板Bへ及ぶのを抑制しつつ成膜することができるようになる。さらに、第1実施形態同様、第2層を成膜する際、真空容器2内の圧力等のスパッタ条件を変更する必要がなく、基板ホルダー3を第1成膜部P1から第2成膜位置P’2へ移動させるだけでよいことから成膜時間(成膜行程全体の時間)の短縮を図ることができ、特に、複数枚の基板B,B,…に対して連続して薄膜を形成する(成膜処理する)場合、真空容器内における圧力等の前記スパッタ条件を基板B毎に変更する必要はなく、一定の前記スパッタ条件の状態で、基板B,B,…を、順次、第1及び第2成膜部へ基板ホルダー3によって次々に搬送するだけでよいことから、複数枚の基板B,B,…に対する成膜時間を大幅に短縮することができる。
その結果、低温・低ダメージ成膜が必要な基板Bに対して成膜可能であると共に、複数枚の基板B,B,…を連続的に成膜処理する際にも成膜時間の短縮を図ることができる。
次に、本発明の第3実施形態について、図5を参照しつつ説明する。尚、第3実施形態において、第1又は第2実施形態と同様の構成については、図5において同一符号を用いて示すと共に説明を一部省略し、第1及び第2実施形態と異なる構成について説明する。
スパッタ装置1”は、内部空間Sを有する真空容器(チャンバー)2と、被成膜対象物である基板Bの被成膜面B’に成膜するための第1成膜部P1及び第2成膜部P”2と、基板Bを保持した状態で、少なくとも第1成膜部P1における基板Bへの成膜位置である第1成膜位置L1から、第2成膜部P”2における基板Bへの成膜位置である第2成膜位置L”2まで、真空容器2内を移動可能な(矢印A方向)基板ホルダー3とを備える。
また、スパッタ装置1”は、第1成膜部P1にスパッタ電力を供給するための第1スパッタ電力供給用電源4aと、第2成膜部P”2にスパッタ電力を供給するための第2スパッタ電力供給用電源4”bと、真空容器2内(内部空間S)の排気を行うための排気装置5と、真空容器2内にスパッタガスを供給するためのスパッタガス供給装置6とを備える。尚、真空容器2は、基板B近傍に反応性ガスを供給するための反応性ガス供給装置7を備える場合もある。
真空容器2は、基板ホルダー3側(図中下端側)端部の両側に連絡通路(基板搬送ラインバルブ)8,8’を介して他のプロセス室又はロードロック室9,9’が連接されている。
真空容器2の内部空間Sは、第1成膜部P1を配設するための第1成膜領域F1と、第2成膜部P”2を配設するための第2成膜領域F2とで構成され、第1成膜部P1と第2成膜部P”2とが並設されている。
第2成膜部P”2は、第2ターゲット110”a,110”bをそれぞれ先端に有する第2カソード(第2ターゲットホルダー)111”a,111”bを備え、該第2カソード111”a,111”bは、第2ターゲット110”a,110”bの表面110”a’,110”b’が、第2成膜位置L”2に位置する基板Bの被成膜面B’とそれぞれ平行若しくは略平行になるよう、並設されている。
第2カソード(第2ターゲットホルダー)111”a,111”bは、第1カソード11aと同様に、該第2カソード111”a,111”bの先端部にバッキングプレート112”a,112”bを介して固定される第2ターゲット110”a,110”bと、バッキングプレート112”a,112”bの裏面側に配設されると共に第2ターゲット表面110”a’,110”b’側に備える第2湾曲磁場発生手段120”a,120”bと、を備える。尚、第2湾曲磁場発生手段120”a,120”bは、第1実施形態における第2湾曲磁場発生手段120aと同様に構成されており、第2ターゲット表面110”a’,110”b’側に内向湾曲磁場空間を形成する。
尚、第3実施形態において、一対の平行平板マグネトロンカソードをターゲット表面が同一平面に沿うと共に同方向を向くように並設し、各平行平板マグネトロンカソードに後述する180°位相がずれた交流電源を接続したカソードを「デュアルマグネトロンカソード」と称することがある。
第2ターゲット110”a,110”bは、本実施形態においては、第1実施形態と同様、インジウム錫合金で構成されている。また、第2ターゲット110”a,110”bの大きさは、それぞれ幅125mm×長さ300mm×厚み5mmの矩形の板状体に形成されている。そして、第2ターゲット110”a,110”bは、真空容器2内の第2成膜部P”2における第2成膜位置L”2に基板Bが位置する際に、該基板Bの被成膜面B’と平行若しくは略平行(わずかに基板B方向を向くように)に配置され、表面(スパッタされる面)110”a’,110”b’が被成膜面B’から所定の距離をおいて配置されている。
以上のように、第2カソード111”a,111”bは、第1実施形態の第2成膜部P2における第2カソード111a,111bから第2筒状補助磁場発生手段130a,130bを除き、対向面(表面)110a’,110b’のなす角θ2を180°としたものと同様の構成(但し、第2カソード111”a,111”bの第2湾曲磁場発生手段は、共に第1実施形態の120aと同様の構成)である。そして、第1成膜部P1と第2成膜部P”2とは、真空容器2内に並設されている。詳細には、第1成膜部P1の第1カソード11a,11bと第2成膜部P”2の第2カソード111”a,111”bとが真空容器2内に一列となるように並設されている。より詳細には、各第1及び第2ターゲット10a,10bの中心T1a,T1b,T”2a,T”2bとが同一線上に位置し、且つ、傾斜して対向配置された一対の第1ターゲット10a,10bの第1中央面C1と第2ターゲット110”a,110”bの表面110”a’,110”b’とが直交若しくは略直交方向となるように並設されている。
第2成膜位置L”2は、真空容器2の両側部に連接された他のプロセス室9,9’をそれぞれ結ぶ線上に位置する。詳細には、第2成膜位置L”2は、基板Bを保持した基板ホルダー3が配置された場合、基板Bの被成膜面B’が、並設された第2ターゲット110”a,110”bの中間と対向する位置であると共に表面110”a’,110”b’と被成膜面B’とが平行に対向し、且つ第2ターゲット110”a,110”bの表面110”a’,110”b’の中心T”2a,T”2bと被成膜面B’の延長面との最短距離がe”2=175mm(=e1)となるような位置である。
第2スパッタ電力供給用電源4”bは、第2カソード111”a,111”bにそれぞれ180°位相がずれた交流電場を印加可能なAC(交流)電源である。
第2不活性ガス導入パイプ6”,6”,6”,6”は、第2ターゲット110”a,110”bの基板B側近傍にそれぞれ設けられており、第2ターゲット110”a,110”bの表面110”a’,110”b’近傍に不活性ガスを導入できるように構成されている。
本実施形態に係るスパッタ装置1”は、以上の構成からなり、次に、スパッタ装置1”における薄膜形成の動作について説明する。
先ず、第1実施形態同様に、初期層を形成するに際し、基板Bを基板ホルダー3に保持させ、その状態で基板ホルダー3を第1成膜位置L1(図5の実線で描かれた基板B及び基板ホルダー3の位置)に配置し、排気装置5により真空容器(チャンバー)2内を排気すると共にスパッタガス供給装置6により真空容器2内に第1不活性ガス導入パイプ6’及び第2不活性ガス導入パイプ6”,6”,6”,6”からアルゴンガス(Ar)を導入して所定のスパッタ操作圧力(本実施形態においては、0.4Pa)とする。
その後、第1実施形態同様にして、第1成膜部P1において基板Bに薄膜の形成(成膜)を行う。即ち、低温・低ダメージ成膜によって、基板Bに薄膜の初期層の形成を行う。本実施形態においても、初期層は、10〜20nm程度の膜厚となるように成膜される。
次に、第2層を成膜する前に、第1成膜部P1におけるスパッタリングを停止する。その後、基板ホルダー3を、被成膜面B’に初期層が成膜された基板Bを保持した状態で、第1成膜位置L1から第2成膜位置L”2まで移動手段によって移動させる。基板ホルダー3が第2成膜位置L”2に移動後、第2成膜部P”2において、第2層を成膜するためにスパッタリングを開始する。このとき、真空容器2内の圧力等のスパッタ条件は、第1実施形態同様、変更する必要がないため、基板ホルダー3が第1成膜位置L1から第2成膜位置L”2に移動後、直ぐにスパッタリングを開始することができる。
第2成膜部P”2おいて、第2スパッタ電力供給用電源4bによって第2カソード111”a,111”bにそれぞれ180°位相がずれた交流電場を印加。この時、永久磁石によって第2湾曲磁場発生手段120”a,120”bが構成されていることから、第2湾曲磁場発生手段120”a,120”bによって第2ターゲット110”a,110”bの表面110”a’,110”bに、それぞれ第2湾曲磁場空間(内向湾曲磁場空間)W”2’,W”2’が形成されている。
すると、第2湾曲磁場空間W”2’,W”2’内には、プラズマが形成され、第2ターゲット110”a,110”bの表面110”a’,110”b’がそれぞれスパッタされて、(第2)スパッタ粒子が飛散する。
このとき、第2カソード111”a,111”bにそれぞれ180°位相がずれた交流電場を印加されることで、一方の第2ターゲット110”a(第2カソード111”a)に負の電位が印加されたときに、他方の第2ターゲット110”b(第2カソード111”b)に正の電位又はアース電位が印加されることで該他方の第2ターゲット110”b(第2カソード111”b)がアノードの役割を果たし、これによって、負の電位が印加された一方の第2ターゲット110”a(第2カソード111”a)がスパッタされる。また、他方の第2ターゲット110”bに負の電位が印加されたときに、一方の第2ターゲット110”aに正の電位又はアース電位が印加されることで該一方の第2ターゲット110”aがアノードの役割を果たし、他方の第2ターゲット110”bがスパッタされる。このようにターゲット(カソード)印加電位を交互に切り換えることにより、ターゲット表面の酸化物、窒化物のチャージアップがなくなり、長時間、安定放電が可能になる。
こうして、第2ターゲット110”a,110”bのスパッタ面(表面)110”a’,110”bから飛び出した(叩き出された)スパッタ粒子(第2スパッタ粒子)を、第2膜位置L”2において、該第2ターゲット110”a,110”bの表面110”a’,110”b’と平行若しくは略平行に対向するよう、配置されている被成膜面B’に付着させて薄膜(薄膜の第2層)が形成される。
このとき、第2成膜部P”2における第2ターゲット110”a,110”bの表面110”a’,110”b’は、第2実施形態における第2成膜部P’2の第2カソード111’同様に、基板Bの被成膜面B’と平行若しくは略平行となるように対向している。そのため、第2成膜位置P”2においては、基板B側へのプラズマの影響及び飛来する荷電粒子の量が増加するが、スパッタ面(表面)110”a’,110”b’がスパッタされて飛散するスパッタ粒子が基板B(被成膜面B’)へ到達する量が、基板Bに対してスパッタ面が傾斜して配置されるターゲットに比べ、極めて多いため、成膜速度が著しく増加する。
このようにして、第2成膜部P”2において、初期層の成膜時よりも成膜速度を速くして、第2層を初期層の上に形成する。本実施形態においては、第2層は、100〜150nm程度の膜厚に成膜する。
このように、被成膜面B’に初期層(第1層)と第2層とを、複合V型カソード11a,11bと、デュアルマグネトロンカソード111”a,111”bとで順に成膜した場合、第1ターゲット10a,10b及び第2ターゲット110”a,110”bへの投入電力が同じであれば、第2層成膜時の成膜速度を第1層成膜時の成膜速度に比べ約40%〜50%増加させることができる。また、さらに、デュアルマグネトロンカソード111”a,111”bへの投入電力を増加させることで、2倍以上の成膜速度を実現することができる。
以上より、第3実施形態の第1成膜部P1において、複合V型カソード11a,11bを用いることで、第1実施形態同様、第1ターゲット表面(対向面)10a’,10b’に形成される第1湾曲磁場空間W1,W1’からはみ出したプラズマ及び基板B側に飛び出してくる荷電粒子の閉じ込め効果が極めて向上する。
また、複合V型カソード11a,11bは、スパッタリングの際に複合型カソード11a,11bへ投入する電流値を大きくしても、プラズマが中心部に集中する現象が現れて放電が不安定とならず、ターゲット表面10a’,10b’近傍に形成されるプラズマが長時間安定放電することができる。
さらに、第1湾曲磁場空間W1,W1’よりも外磁場空間(第1筒状補助磁場空間)t1の方が磁場強度が大きいことから、より効果的に、第1筒状補助磁場空間t1内へのプラズマ及び二次電子等の荷電粒子の閉じ込めが可能となる。
そのため、第1及び第2実施形態同様、第1成膜部P1において、一対の第1ターゲット10a,10bの対向面10a’,10b’のなす角θが小さい角度θ1に設定された第1カソード(複合V型カソード)11a,11bを用いてスパッタリングすることで、スパッタリングにより発生するプラズマ及び荷電粒子の第1ターゲット間空間K1への閉じ込め効果が非常に向上する。そのため、成膜速度は遅いが、基板Bの被成膜面B’に対し、低温・低ダメージ成膜を行うことができ、所定の厚さの初期層(第1層)を形成することができる。
そして、真空容器2内の圧力等の条件変更に時間のかかるスパッタ条件を変更することなく、基板ホルダー3を第1成膜部P1の第1成膜位置L1から第2成膜部P”2の第2成膜位置L”2に移動させる。そして、第2成膜部P”2において、デュアルマグネトロンカソード111”a,111”bを用いてスパッタリングすることで、基板B側に飛来する二次電子等の荷電粒子やプラズマの影響は増加するが、成膜速度を速くして短時間で第2層を成膜(形成)することができる。
このように、第1実施形態同様、第1成膜部P1において、低温・低ダメージ成膜により基板Bに初期層を形成し、該形成した初期層を保護層として働かせることで、第2成膜部P”2において、第2層を形成する際の基板Bへの二次電子等の荷電粒子によるダメージやプラズマ等の影響が基板Bへ及ぶのを抑制しつつ成膜することができるようになる。さらに、第2層成膜する際、真空容器2内の圧力等のスパッタ条件を変更する必要がなく、基板ホルダー3を第1成膜部P1から第2成膜位置P”2へ移動させるだけでよいことから成膜時間(成膜行程全体の時間)の短縮を図ることができる。特に、複数枚の基板B,B,…に対して連続して薄膜を形成する(成膜処理する)場合、真空容器内における圧力等の前記スパッタ条件を基板B毎に変更する必要はなく、一定の前記スパッタ条件の状態で、基板B,B,…を、順次、第1及び第2成膜部へ基板ホルダー3によって次々に搬送するだけでよいことから、複数枚の基板B,B,…に対する成膜時間を大幅に短縮することができる。
その結果、低温・低ダメージ成膜が必要な基板Bに対して成膜可能であると共に、複数枚の基板B,B,…を連続的に成膜処理する際にも成膜時間の短縮を図ることができる。
尚、本発明のスパッタ方法及びスパッタ装置は、上記第1乃至第3実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
上記施形態においては、第1成膜領域F1と第2成膜領域F2とには、それぞれ第1成膜部P1と第2成膜部P2(P’2,P”2)とがそれぞれ一つずつ配設されているが、これに限定される必要はない。即ち、図6に示すように、第1成膜領域F1に複数の第1成膜部P1,P1,…が並設されてもよく、図6乃至図8に示すように、第2成領域F2に複数の第2成膜部P2,P2,…(P’2,P’2,…又はP”2,P”2,…)が並設されてもよい。このように第1又は第2成膜領域F1,F2に複数の成膜部が並設されることで、該複数の成膜部によって基板Bに薄膜形成するため、基板Bに対してプラズマの影響や荷電粒子によるダメージを増加させることなく、成膜速度を速くすることができる。この場合、基板ホルダー3は、保持する被成膜面B’が、対向ターゲット(一対のターゲット)間又は、平行に対向するターゲット表面方向を常に向くような軌道上を移動する。尚、複数の成膜部は、他のプロセス室9,9’を結ぶ一本の直線上又は曲線上に所定間隔をおいて並設されている。
また、複数の成膜部が並設されている第1又は第2成膜領域F1,F2において基板Bに成膜する際、長尺な基板Bを移動方向A’(成膜部の並設方向)に対して長手方向が直交する方向に基板ホルダー3に取り付けて、該基板ホルダー3を移動させつつスパッタリング(成膜)してもよく、また、図9に示すように、長尺な基板Bを長手方向が移動方向(成膜部の並設方向)に沿った方向に基板ホルダー3’に取り付けて、スパッタリングしてもよい。この場合、上記同様、基板ホルダー3を移動させつつスパッタリングしてもよく、停止状態でスパッタリングしてもよい。このようにしても、複数の成膜部によって同時にスパッタリングされることから、基板Bに対するプラズマや荷電粒子によるダメージを増加させることなく、成膜速度を速くして生産性の向上を図ることができる。
また、第1実施形態において、第2成膜領域F2(第2成膜部P2)は、複合V型カソード111a,111bを用いているが、これに限定される必要もなく、筒状補助磁場発生手段130a、130bを備えない、単なるマグネトロンカソードをV型対向配置したカソードを用いても、第1成膜領域F1よりも成膜速度の速い成膜が行われればよい。即ち、第1成膜領域F1において、低温・低ダメージ成膜により基板Bに初期層が形成されるようにすることで、第2成膜領域F2での成膜において、プラズマや荷電粒子の影響が増加しても前記初期層が保護層(防弾チョッキ)の役目を果たすため、基板Bにダメージが伝わらない。そのため、プラズマや荷電粒子からのダメージを受けやすい基板Bであっても、第2成膜領域F2での成膜において生産性の向上を図るため、基板側に対するプラズマや荷電粒子の影響を考慮することなく成膜速度を速くすることができる。
また、上記施形態において、第1成膜領域F1の第1成膜部P1におけるカソード10a,10bに印加される電力は、図10に示すように、AC電源、具体的には、第3実施形態における第2成膜部P”2で用いられているような、一対のターゲット(カソード)にそれぞれ180°位相がずれた交流電場を印加可能なAC(交流)電源4’aであってもよい。
これは、酸化物、窒化物等の誘電体薄膜を作製する場合(例えば、有機EL素子の保護膜、封止膜等の用途として)、反応性ガス(O2、N2等)を基板B(或いはターゲット10a,10b間)近傍に配設された反応性ガス導入パイプ7’,7’から基板Bに向かって導入して、ターゲット10a,10bから飛来するスパッタ粒子と反応性ガスを反応させて酸化物・窒化物等の化合物薄膜を基板Bに堆積させる方法を利用するが、該反応性スパッタリングの場合、ターゲット10a,10bの表面10a’,10b’が酸化され、また、防着板、アースシールド及びターゲット10a,10bの非エロージョン領域に酸化物、窒化物の反応生成物が付着して、異常アーク放電の発生が頻繁に起こり、安定放電ができなくなる。また、基板Bに堆積した膜質の劣化を引き起こす。さらに、透明導電膜としてITOターゲットによるITO膜作製の場合にも、高品質のITO膜を作製するために、少量のO2ガスを導入してスパッタするが、この場合にも、長時間成膜していると、上記と同じ現象が現れる。
このような、異常アーク放電の発生の原因としては、ターゲット表面10a’,10b’の酸化物、窒化物によるチャージアップとターゲット10a,10bに対するアノードとして作用するアースシールド、チャンバー壁、防着板等が酸化物、窒化物に覆われることにより、アノードの面積が小さくなる、若しくは均一でなくなることが考えられる。
そこで、これら問題を解消すべく、上記構成とすることで、一方のターゲット10aに負の電位が印加されたときに、他方のターゲット10bに正の電位又はアース電位が印加されることで該他方のターゲット10bがアノードの役割を果たし、これによって、負の電位が印加された一方のターゲット10aがスパッタされる。また、他方のターゲット10bに負の電位が印加されたときに、一方のターゲット10aに正の電位又はアース電位が印加されることで該一方のターゲット10aがアノードの役割を果たし、他方のターゲット10bがスパッタされる。このようにターゲット(カソード)印加電位を交互に切り換えることにより、ターゲット表面の酸化物、窒化物のチャージアップがなくなり、長時間、安定放電が可能になる。
例えば、ITOターゲットによる透明伝導膜を作製する場合に、低抵抗(基板加熱なしで比抵抗で6×10-4Ω・cm以下)で透過率の高い(550nm波長で85%以上)高品質な膜を作製する際に、Ar50sccmに対してO2ガスを2〜5sccm導入する。この場合、長時間放電させても、AC電源により一対のターゲット10a,10bに印加した電位を交互に切り換えることにより、ターゲット表面10a’,10b’の酸化によるチャージアップがなくなると共に、各ターゲット10a,10bがカソードとアノードの役割を相互に果たすことで安定放電を行うことができる。
また、他の例として、有機EL素子用の保護膜、封止膜として、Siターゲットを使用し、反応性ガスO2を導入して反応性スパッタリングを行い、SiOx膜を作製する。この場合、通常のDC電源によるDC反応性スパッタリングでは、ITO膜作製の場合より異常アーク放電が発生する回数が多いが、AC電源を接続することにより、上記ITO膜の場合と同様に、ターゲット表面10a’,10b’の酸化によるチャージアップがなくなり長時間安定放電ができるようになる。
尚、第1実施形態において、第2成膜領域の第2成膜部P2におけるカソード110a,110bに印加される電力も、上記同様、一対のターゲット110a,110bにそれぞれ180°位相がずれた交流電場を印加可能なAC(交流)電源4’aでもよい。このようにすることで、第2成膜領域F2においても、上記と同様の効果が生じる。
また、第1施形態において、第1及び第2成膜領域F1,F2の第1及び第2成膜部P1,P2における一対のターゲット10a,10b(110a,110b)は、同一の材質を使用する必要はなく、例えば、一方のターゲット10a(110a)がAlで構成され、他方のターゲット10b(110b)がLiで構成されていてもよい。このように、材質を変えることで、基板Bに複合膜(この場合、Li−Al膜)が成膜される。尚、この場合、各ターゲット10a,10b(110a,110b)に各々個別の電源を接続して個別に投入電力を調節することにより、複合膜の膜組成比を変化させることができる。
また、本実施形態においては、基板Bは、第1又は第2成膜位置L1,L2において成膜時には固定されているがこれに限定される必要はない。即ち、基板Bの被成膜面B’の成膜面積がスパッタ装置の成膜可能な面積範囲より大きい場合や成膜された膜の膜厚分布を均一化するため、図11(イ)に示すように、被成膜面B’がT−T選に沿って移動(矢印A方向)しつつ成膜する構成でもよい。このように構成することで、長尺な基板Bに対しても均一に成膜することが可能となる。また、図11(ロ)に示すように、被成膜面B’がT−T線中央と直交する中央線P上の所定位置に設定された公転中心pを中心にし、且つ被成膜面B’がT−T線に向かって平行となった際、被成膜面B’の中心とT−T線の中間との距離が最短距離eとなるような公転軌道に沿って移動(矢印α)するように構成されてもよい。このように構成しても、長尺な基板Bに対して均一に成膜することが可能となる。また、前記被成膜面B’の移動方向(矢印A及びα)は、一方向に移動してもよく、往復動(若しくは揺動)してもよい。
1,1’,1”…スパッタ装置、2…真空容器(チャンバー)、3…基板ホルダー、4a,4’a,4b,4’b,4”b…スパッタ電力供給用電源、5…排気装置、6…スパッタガス供給装置、6’,6”…不活性ガス導入パイプ、7…反応性ガス供給装置、7’,7”…反応性ガス導入パイプ、8,8’…連通路、9,9’…他のプロセス室(又はロードロック室)、10a,10b,110a,110b,110’,110”a,110”b…ターゲット、10a’,10b’,110a’,110b’,110’a’,110”a’,110”b’…スパッタ面(対向面、表面)、11a,11b、111a,111b,111’,111”a,111”b…カソード(ターゲットホルダー)、12a,12b,112a,112b,112’,112”a,112”b…バッキングプレート、20a,20b,120a,120b,120’,120”a,120”b…湾曲磁場発生手段、21a,21b,121a,121b,121’,121”a,121”b…枠状磁石(永久磁石)、22a,22b,122a,122b,122’,122”a,122”b…中心磁石(永久磁石)、23a,23b,123a,123b,123’,123”a,123”b…ヨーク、30a,30b,130a,130b…筒状補助磁場発生手段(永久磁石)、B…基板、B’…被成膜面、d1,d2…ターゲットの中心間距離、F1…第1成膜領域、F2…第2成膜領域、K1,K2…ターゲット間空間(空間)、L1…第1成膜位置、L2,L’2,L”2…第2成膜位置、P1…第1成膜部、P2,P’2,P”2…第2成膜部、S…内部空間、T1a,T1b,T2a,T2b,T’2、T”2a,T”2b…ターゲットの中心、t1,t2…筒状補助磁場発空間、W1,W1’,W2,W2’,W’2,W”2,W”2’…湾曲磁場空間