図1は、この発明の実施例に係る汎用内燃機関の全体図である。
図1において、符号10は汎用内燃機関(以下「エンジン」という)を示す。エンジン10は空冷4サイクルの単気筒OHV型エンジン(排気量は例えば440cc)であり、発電機や農業機械など様々な用途で駆動源として使用される。
エンジン10は1個の気筒(シリンダ)12を備え、その内部にピストン14が往復動自在に収容される。エンジン10の燃焼室16を臨む位置には吸気バルブ20と排気バルブ22が配置され、燃焼室16と吸気ポート24あるいは排気ポート26の間を開閉する。
ピストン14はクランクシャフト30に連結され、クランクシャフト30はカム用ギヤ機構32を介してカムシャフト34と連結される。また、クランクシャフト30の一端には発電機などの図示しない負荷が接続される一方、他端にはフライホイール36が取り付けられる。
フライホイール36の内側には複数個の永久磁石38が配置されると共に、フライホイール36の内側において永久磁石38に対向するようにパワーコイル(発電コイル)40とフューエルカット・ソレノイドバルブ用コイル(後述の図4に示す。以下「FSコイル」という)が、外側において永久磁石38に対向するようにパルサコイル42が設置される。パワーコイル40、パルサコイル42およびFSコイルは、クランクシャフト30の回転に同期した出力(交流電流)を生じる。また、クランクシャフト30には、操作者の手動操作によってエンジン10を始動するリコイルスタータ44が取り付けられる。
また、吸気ポート24にはキャブレタ46が接続される。
図2は、図1に示すキャブレタ46の拡大断面図である。
図2に示す如く、キャブレタ46は、吸気路50と、モータケース52と、キャブレタアセンブリ54とを一体的に備える。吸気路50はその下流側がインシュレータ56を介して吸気ポート24に接続されると共に、上流側がエアクリーナエルボ58を介して図示しないエアクリーナに接続される。吸気路50にはスロットルバルブ60が配置されると共に、吸気路50においてスロットルバルブ60よりも上流側にはチョークバルブ62が配置される。さらに、吸気路50はスロットルバルブ60とチョークバルブ62の間で縮径され、ベンチュリ64が形成される。
モータケース52にはカバー66が取り付けられると共に、モータケース52とカバー66によって形成される内部空間には、スロットルバルブ60とチョークバルブ62を駆動する電動モータ(アクチュエータ)70が配置される。電動モータ70は具体的にはステッピングモータであり、コイルが巻回されたステータとロータとを備える。電動モータ70は、スロットルバルブ60にスロットルバルブ開閉機構(ギヤ機構)72を介して接続される。
図3は、図2に示すキャブレタ46の、モータケース52のカバー66を取り外した状態を示す部分断面平面図である。尚、図3は、想像線で示す如く、スロットルバルブ60が全閉位置に、チョークバルブ62が全開位置にある状態を示す。
図2,3に示すように、スロットルバルブ開閉機構72は4個のギヤを備える。各ギヤはいずれも外歯車である。具体的には、電動モータ70の出力軸70Sには第1のギヤ74が取り付けられ、第1のギヤ74はモータケース52の内部に回動自在に支持された第2のギヤ76と噛合される。第2のギヤ76と同軸上には、第2のギヤ76と一体的に回動する第3のギヤ(偏心ギヤ)78が取り付けられる。図3から分かるように、第3のギヤ78の歯は第3のギヤ78の外周の一部(第4のギヤ(後述)に接続される部位)にのみ形成される。
第3のギヤ78は、スロットルバルブ60を支持するスロットルシャフト80に取り付けられた第4のギヤ(偏心ギヤ)82と噛合される。これにより、電動モータ70の出力は、各ギヤ74,76,78,82のギヤ比に応じて減速されつつスロットルシャフト80に伝達され、よってスロットルバルブ60を開閉する。この実施例に係るスロットルバルブ開閉機構72において特徴的なことの1つは、電動モータ70の動作に応じてスロットルバルブ60を全閉位置と全開位置を所定開度超えた位置の間で開閉、即ち、スロットルバルブ60を全開位置からさらに開弁方向に所定開度超えた位置まで開閉させることであるが、それについては後述する。
スロットルシャフト80の外周には、スロットル用リターンスプリング84(図2に示す)が配置される。スロットル用リターンスプリング84は、ねじりコイルバネからなる。スロットル用リターンスプリング84の一端は、スロットルシャフト80に取り付けられた第4のギヤ82に接続されると共に、他端は、モータケース52の内部に突設されたフックピン86(図2に示す)に接続される。尚、スロットル用リターンスプリング84の巻き方向は、スロットルシャフト80を介してスロットルバルブ60を開弁する方向に設定される。
上記のように構成されたスロットルバルブ開閉機構72には、チョークバルブ開閉機構90を介してチョークバルブ62が接続される。従って、電動モータ70は、スロットルバルブ開閉機構72を介してスロットルバルブ60に接続されると共に、スロットルバルブ開閉機構72とチョークバルブ開閉機構90を介してチョークバルブ62にも接続されることとなる。
チョークバルブ開閉機構90は、チョークバルブ62を支持するチョークシャフト92に取り付けられてチョークシャフト92を回動させるアーム94と、アーム94とスロットルバルブ開閉機構72(正確には、スロットルバルブ開閉機構72の第3のギヤ78)を連結するリンク96からなる。
リンク96は、モータケース52の内部に回動軸100を中心に回動自在に支持される。リンク96においてアーム94側の端部(一端)96aには、第1のピン96bが図2において上方に向けて伸びるように設けられる。第1のピン96bは、アーム94に穿設された長孔94aに挿通される。
リンク96において第3のギヤ78側の端部(他端)96cには、第2のピン96dが図2において上方に向けて突設される。第2のピン96dは、第3のギヤ78の外周において歯が形成されない部位に当接される。第3のギヤ78の外周において歯が形成されない部位(即ち、第2のピン96dが当接する部位)は、略円盤状を呈すると共に、凹状に形成された部位を備える。以下、第3のギヤ78の外周において凹状に形成された部位を「第1の当接部」といい、符号78aで示す。また、第3のギヤ78の外周の歯が形成されない部位において第1の当接部78a以外の残余の部位(略円盤状の部位)を「第2の当接部」といい、符号78bで示す。尚、第3のギヤ78の外周において第1、第2の当接部78a,78bが形成される位置については後述する。
チョークシャフト92の外周には、図2に示す如く、チョーク用リターンスプリング102が配置される。チョーク用リターンスプリング102も、スロットル用リターンスプリング84と同様、ねじりコイルバネからなる。チョーク用リターンスプリング102の一端は、アーム94に接続されると共に、他端は、モータケース52の内部に突設されたフックピン104に接続される。チョーク用リターンスプリング102の巻き方向は、チョークシャフト92を介してチョークバルブ62を閉弁する方向に設定される。
チョークバルブ開閉機構90にあっては、チョークバルブ62を閉弁方向(全閉位置)に付勢するチョーク用リターンスプリング102を設けるように構成したので、その付勢力はアーム94を介してリンク96に伝達される。従って、リンク96には回動軸100を中心に反時計回りの力が作用し、よってリンク96の第2のピン96dは第3のギヤ78の外周面(具体的には、第1あるいは第2の当接部78a,78b)に押圧されつつ(押し付けられつつ)当接することとなる。
このように、リンク96は、その一端96aが第1のピン96b、アーム94を介してチョークシャフト92に接続されると共に、他端96cが第2のピン96dを介してスロットルバルブ開閉機構72(正確には、第3のギヤ78の第1の当接部78aあるいは第2の当接部78b)に接続(当接)される。
モータケース52の内部にはさらに、チョークバルブ62の開度を調節するチョークバルブ開度調節機構106(図3に示す)が設けられる。チョークバルブ開度調節機構106は具体的にはサーモワックスであり、周囲温度に応じて膨張・収縮するワックス(正確には、周辺温度が上昇するに連れて体積が膨張する一方、周辺温度が低下するに連れて収縮するワックス。図示せず)が充填されるワックス部106aと、ワックス部106aに接続され、ワックスの膨張・収縮によって直線変位するロッド106bと、ワックス部106aにロッド106bとフランジ106cを介して接続され、ロッド106bの変位に連動して直線変位する駆動ピン106dと、それらを収容するケース106eとからなる。尚、図3は、ワックスが収縮した状態のときのチョークバルブ開度調節機構106を示す。
駆動ピン106dの先端106d1は、ケース106eに穿設された孔106e1から外方に向けて突出させられると共に、チョークバルブ開閉機構90(正確には、チョークバルブ開閉機構90のリンク96であって回動軸100と一端96aの間の側面96e)に当接自在とされる。駆動ピン106dは通常、駆動ピン106dをケース106eに収容する方向、即ち、先端106d1の突出量(突出長さ)Lが短くなる方向(紙面下方)に、リターンスプリング106fによって付勢される。従って、駆動ピン106dの突出量Lは、図3に示すようにワックスが収縮しているとき、逆に言えば膨張していないとき、リターンスプリング106fの付勢力によって最小とされる。
チョークバルブ開度調節機構106は、さらに、ワックス部106aを加熱するヒータ106gを備える。ヒータ106gは、図示は省略するが、ニクロム線などの発熱線と、それを被覆する絶縁材および保護管などからなり、前記したパワーコイル40から動作電流が供給されて通電されるときに発熱する電熱器である。
図2の説明に戻ると、キャブレタアセンブリ54は、図示は省略するが、燃料タンクに接続されるフロートチャンバーと、フロートチャンバーにメインジェットとメイン燃料通路を介して接続されるメインノズルと、メイン燃料通路から分岐したスロー燃料通路に接続されるアイドルポートおよびスローポートとを備える。メインノズルはベンチュリ64を臨む位置に配置される一方、アイドルポートとスローポートはスロットルバルブ60付近を臨む位置に配置される。
スロットルバルブ60の開度が大きいときは、ベンチュリ64を通過する吸入空気の負圧によってメインノズルから燃料が噴射され、混合気が生成される。一方、スロットルバルブ60の開度が小さいときは、スロットルバルブ60を通過する吸入空気の負圧によってアイドルポートあるいはスローポートから燃料が噴射される。また、チョークバルブ62が閉弁されると、ピストン14の下降によって生じる吸気路50内の負圧が増大するため、燃料噴射量が増加して空燃比がリッチ化される。以下、吸気路50内の空燃比がリッチ化された状態を「リッチ空燃比状態」という。
尚、図2で符号108はフューエルカット・ソレノイドバルブ(以下「FSバルブ」という)を示す。FSバルブ108のバルブ部(図示せず)はフロートチャンバーとメインジェットの間に配置され、コイル(後述の図4に示す)に通電されたときに閉弁して燃料の通過を遮断する。
図1の説明に戻ると、上記の如く生成された混合気は吸気ポート24と吸気バルブ20を通って燃焼室16に吸入される。燃焼室16に吸入された混合気は、点火プラグ(後述の図4に示す)によって点火されて燃焼し、よって生じた燃焼ガスは排気バルブ22と排気ポート26と図示しない消音器などを介してエンジン10の外部に排出される。
操作者によって操作自在な位置には回転数設定ボリューム110が配置され、操作者の操作に応じて目標エンジン回転数を示す出力を生じる。上記したパワーコイル40、パルサコイル42および回転数設定ボリューム110の出力は、マイクロ・コンピュータからなるECU(Electronic Control Unit。電子制御ユニット)112に入力される。
また、操作者によって操作自在な位置には、コンビネーション・スイッチ114が配置される。コンビネーション・スイッチ114は、ECU112に接続される。ECU112は、操作者によるコンビネーション・スイッチ114の位置と各種入力に基づき、エンジン10の動作(例えば電動モータ70やヒータ106gなどの動作)を制御する。
図4は、ECU112とコンビネーション・スイッチ114の構成を示す説明図である。
図4に示すように、ECU112は、整流回路116と、NE(エンジン回転数)検出回路120と、制御回路122とを備える。パワーコイル40の出力は整流回路116に入力されて12Vの直流電流に変換され、図示しない回路を介し、ECU112やヒータ106gを含めたエンジン10の各部に動作電流として供給される。パワーコイル40の出力はNE検出回路120にも入力され、パルス信号に変換される。パルス信号は制御回路122に入力され、そこでエンジン回転数が検出される。ECU112は、さらに信号成形回路124と点火回路126とを備える。パルサコイル42の出力は信号成形回路124に入力され、そこでクランクシャフト32の回転に同期した点火信号に成形されて点火回路126と制御回路122に入力される。
コンビネーション・スイッチ114は、第1、第2のスイッチ114a,114bを備える。尚、図4で、コンビネーション・スイッチ114がオフ・ポジションに操作されたときのスイッチ114a,114bを実線で示し、オン・ポジションに操作されたときのそれらを想像線で示す。
第1のスイッチ114aは、FSコイル130とFSバルブ(具体的にはそのコイル)108の間に介挿される。第2のスイッチ114bはオンされるとき、パワーコイル40の出力から生成された12Vの直流電流を制御回路122とDC/DCコンバータ132に入力する。DC/DCコンバータ132はコンデンサ134を介してイグニッション・コイル136の1次コイルに接続され、コンデンサ134を充電する。イグニッション・コイル136の2次コイルは点火プラグ140に接続されると共に、コンデンサ134はサイリスタ142を介して接地させられる。
点火回路126は信号成形回路124または制御回路122からの点火信号に応じてサイリスタ142のゲートに通電し、コンデンサ134に充電された電荷を放電させてイグニッション・コイル136の1次コイルを通電する。それに伴って2次コイルには高電圧が発生して点火プラグ140の電極間にスパークを生じて燃焼室16内の混合気を点火する。
制御回路122には、回転数設定ボリューム110が接続される。制御回路122は、回転数設定ボリューム110およびNE検出回路120などの出力に基づいてスロットルバルブ60とチョークバルブ62の目標開度を決定すると共に、決定した目標開度に応じた制御信号をモータドライバ144に出力して電動モータ70を動作させ、各バルブ60,62を開閉させてエンジン回転数やエンジン10に供給される燃料量を調節する。さらに、制御回路122はNE検出回路120などの出力に基づいてヒータ106gの動作も制御する。
コンビネーション・スイッチ114が操作者によってオン・ポジションに操作されると、第1のスイッチ114aがオフされ、FSバルブ108への動作電流の供給が遮断される。FSバルブ108はノーマルオープン型であり、動作電流の供給が遮断されているときはキャブレタ46からの燃料噴射を可能とする。他方、第2のスイッチ114bはオンされ、その状態でリコイルスタータ44が操作されると、クランクシャフト32の回転に伴ってパワーコイル40とパルサコイル42が出力を生じて12Vの直流電流と点火信号が生成され、ECU112が起動させられると共に、エンジン10が始動させられる。
コンビネーション・スイッチ114がオフ・ポジションに操作されると、第2のスイッチ114bはオフされ、それによって動作電流の供給が遮断された制御回路122は、点火カットを行ってエンジン10を停止させる。また、第1のスイッチ114aがオンしてFSコイル130とFSバルブ108の間が導通され、フューエルカットが行われる。即ち、点火カットを行ってもクランクシャフト32の回転は直ちには停止しないため、FSコイル130の発電は継続されることとなり、よってFSバルブ108はFSコイル130から動作電流の供給を受けて所定期間閉弁(フューエルカット)する。
次いで、スロットルバルブ60とチョークバルブ62の開閉動作について、電動モータ70、スロットルバルブ開閉機構72、チョークバルブ開閉機構90およびチョークバルブ開度調節機構106の動作を中心に、図3と図5以降を参照して説明する。
図5は、スロットルバルブ60とチョークバルブ62の開閉動作の特性を示す説明図である。
スロットルバルブ60を全閉位置にするとき、電動モータ70は、スロットルバルブ開閉機構72の第1から第4のギヤ74,76,78,82を介してスロットルシャフト80を回動させ、スロットルバルブ60を図3および図5(a)に示す全閉位置まで閉弁させる。このとき、図3から分かるように、リンク96の第2のピン96dは第3のギヤ78の第2の当接部78bに当接した状態であり、チョークバルブ62は全開位置とされる。
スロットルバルブ60を全閉位置から全開位置に開弁する場合、電動モータ70は、第1から第4のギヤ74,76,78,82を、図6に矢印で示す方向に回転させることで、スロットルシャフト80を反時計回りに回動させ、スロットルバルブ60を全開位置まで開弁させる。このとき、第2のピン96dは、第1の当接部78aの近傍まで摺動するが、未だ第2の当接部78bに当接した状態であるため、図5(b)にも示すように、チョークバルブ62は全開位置のまま保持される。このように、チョークバルブ開閉機構90は、スロットルバルブ60が全閉位置と全開位置の間にあるとき、チョークバルブ62を全開位置に保持する。
また、エンジン10の始動時などチョークバルブ62を閉弁して空燃比をリッチ化させるとき、電動モータ70はスロットルバルブ開閉機構72を動作させ、それに連動してリンク96を変位させてチョークシャフト92を回動することでチョークバルブ62を開閉する。具体的には、電動モータ70は、各ギヤ74,76,78,82を、図7に矢印で示す方向に回転させてスロットルシャフト80を反時計回りにさらに回動させ、スロットルバルブ60を全開位置を所定開度(図7に符号αで示す)超えた位置(以下「オーバー全開位置」という)まで開弁させる。
このとき、第2のピン96dは第3のギヤ78の回動によって第1の当接部78aまで摺動する。それにより、リンク96は回動軸100を中心に反時計回りに変位させられ、第1のピン96bは長孔94a内を摺動しつつアーム94を変位させる。アーム94の変位によってチョークシャフト92は図において時計回りに回動させられ、よって図5(c)にも示す如く、チョークバルブ62は全閉位置まで閉弁される。
このように、第3のギヤ78において第1、第2の当接部78a,78bが形成される位置は、第2のピン96dが第2の当接部78bに当接するとき、即ち、図3あるいは図6に示す状態のとき、チョークバルブ62は全開位置になると共に、第3のギヤ78が電動モータ70によって図において時計回りに回動させられ、第2のピン96dが第1の当接部78aに当接するとき(図7に示す状態のとき)、チョークバルブ62が全閉位置となるように設定される。
上記および図5の(a)から(c)に示すように、チョークバルブ開閉機構90は、スロットルバルブ開閉機構72の動作に連動してチョークバルブ62を開閉する、より具体的には、スロットルバルブ60が全閉位置と全開位置の間にあるとき、チョークバルブ62を全開位置に保持する一方、スロットルバルブ60が全開位置とオーバー全開位置(全開位置を所定開度α超えた位置)の間にあるとき、チョークバルブ62を全開位置と全閉位置の間で開閉するように構成される。
尚、上記において、チョークバルブ62の動作を全開位置と全閉位置の2種類で説明したが、第1の当接部78aは凹状に形成されるため、第2のピン96dと第1の当接部78aとの当接位置を適宜に調整することで、チョークバルブ62を任意の開度にすることができる。即ち、スロットルバルブ60を全開位置とオーバー全開位置の間で適宜に調整することで、チョークバルブ62を全開位置と全閉位置の間で開閉自在とすることができる。
ここで、チョークバルブ開度調節機構106の動作について図3および図7,8を参照して説明する。図7は、図3と同様、ワックスが収縮した状態のときのチョークバルブ開度調節機構106を示すと共に、図8はワックスが膨張した状態のときのそれを示す。
前述した如く、チョークバルブ開度調節機構106において、周囲温度が比較的低い、具体的にはサーモワックスであるチョークバルブ開度調節機構106の作動温度未満のとき、ワックス部106aのワックスは収縮するため、駆動ピン106dの突出量Lは最小とされる。このときの駆動ピン106dは、図3および図7に示す如く、リンク96の側面96eに当接しない、あるいは僅かに接触する程度とされる。即ち、ワックスが収縮しているときの駆動ピン106dの先端106d1は、チョークバルブ62を全開位置に保持するリンク96(図3)と、全閉位置に保持するリンク96(図7)のいずれの状態であっても、その側面96eに当接しないように構成される。
周囲温度がエンジン10の排熱やヒータ106gの発熱によって上昇して作動温度以上になると、ワックスは膨張し、図8に示すように、ロッド106bとフランジ106cを紙面上方に押し出す。それに伴って駆動ピン106dはリターンスプリング106fの付勢力に抗して紙面上方に変位し、突出量Lが増加する。尚、作動温度は例えば約70℃に設定される。
従って、チョークバルブ62が全閉位置にあるとき(図7)、上記したワックスの膨張による駆動ピン106dの変位が生じると、図8に示す如く、駆動ピン106dがリンク96の側面96eを押圧し、リンク96は回動軸100を中心に時計回りに変位させられる。それによって第2のピン96は第3のギヤ78の外周面から離間する一方、第1のピン96bは長孔94a内を摺動しつつアーム94を変位させる。アーム94の変位によってチョークシャフト92は図において反時計回りに回動させられ、チョークバルブ62は全開位置まで開弁される。このように、駆動ピン106dは、ワックスの膨張・収縮に応じてチョークバルブ開閉機構90(リンク96やアーム94など)を駆動してチョークバルブ62の開度を調節する。
上記した如くこの実施例にあっては、チョークバルブ62を、スロットルバルブ開閉機構72の動作に連動するチョークバルブ開閉機構90によって開閉すると共に、チョークバルブ開閉機構90によって開閉されたチョークバルブ62の開度を、チョークバルブ開度調節機構106を用いて周囲温度に応じて調節可能とするようにした。
次いで、エンジン10の始動時におけるスロットルバルブ60とチョークバルブ62の開閉動作について説明する。
図9は、ECU112の動作の内、エンジン10の始動時におけるスロットルバルブ60などの動作の制御を示すフロー・チャートである。尚、図示のプログラムは、エンジン10が始動されたとき、1回だけ実行される。また、エンジン10の始動前において、スロットルバルブ60とチョークバルブ62は図7および図5(c)に示す状態、詳しくはスロットルバルブ60はスロットル用リターンスプリング84の付勢力によってオーバー全開位置とされると共に、チョークバルブ62はチョーク用リターンスプリング102によって全閉位置とされる。また、エンジン10においては、前回の停止後所定時間経過した、いわゆる冷間始動とし、チョークバルブ開度調節機構106の周囲温度が比較的低く、ワックスは収縮しているものとする。
以下、図9フロー・チャートを参照してスロットルバルブ60とチョークバルブ62の開閉動作を説明する。操作者によってコンビネーション・スイッチ114がオン・ポジションに操作された後、リコイルスタータ44が操作され、パワーコイル40が発電を開始してECU112が起動させられると、先ずS10においてスロットルバルブ60がオーバー全開位置と全開位置の間で駆動(開閉)するように、電動モータ70の動作を制御する。スロットルバルブ60を上記の如く駆動することで、図5(b)(c)に示すように、チョークバルブ62は全閉位置と全開位置の間で開閉させられる。これにより、吸気路56における空燃比はリッチ化され(リッチ空燃比状態とされ)、エンジン10の始動性が向上する。
次いで、S12に進んでチョーク不要か否か、換言すれば、暖機運転が終了してチョークバルブ62によるリッチ空燃比状態を中止する必要があるか否か判断する。S12の判断はNE検出回路120の出力に基づいて行われ、エンジン回転数が所定値(例えば3000rpm)を超えたとき、チョーク不要と判断する。
S12で否定されるときはS10の処理に戻る、即ち、S12でチョーク不要と判断されるまでS10の処理を繰り返す。このとき、エンジン回転数の上昇に伴ってエンジン10の排熱も増加する。エンジン10の排熱によってチョークバルブ開度調節機構106の周囲温度が上昇して作動温度以上になると、前記したようにワックスは膨張して駆動ピン106dを徐々に突出させる。それにより、駆動ピン106dはリンク96を変位させてチョークバルブ62を開弁方向に徐々に回動させる、換言すれば、エンジン回転数の上昇による周囲温度の上昇に伴って燃料噴射量を減少させ、リッチ化された空燃比を徐々にリーンにする。このように、ECU112が起動して暖機運転が終了するまでの間、チョークバルブ62の開度はチョークバルブ開度調節機構106によって周囲温度に応じて適宜に調節される。
S12で肯定されるときはS14に進み、ヒータ106gへの通電を開始してワックス部106aを加熱する。これにより、ワックスはより一層膨張して駆動ピン106dをさらに駆動(突出)させ、チョークバルブ62を全開位置まで強制的に開弁させることで、チョークバルブ62によるリッチ空燃比状態を中止する。
次いで、S16に進み、スロットルバルブ60の通常制御を実行する。具体的には、スロットルバルブ60を全閉位置と全開位置の間で駆動するように(正確には、回転数設定ボリューム110で入力された目標エンジン回転数を維持するべく、スロットルバルブ60が目標開度になるように)電動モータ70の動作を制御する。スロットルバルブ60を全閉位置と全開位置の間で駆動することで、図5(a)(b)に示すように、チョークバルブ62は全開位置に保持されると共に、チョークバルブ開度調節機構106の駆動ピン106dによっても全開位置に保持されるため、エンジン運転中にチョークバルブ62が閉弁することはない。
次いで、エンジン10の停止時におけるスロットルバルブ60とチョークバルブ62の開閉動作について説明する。
図10は、ECU112の動作の内、エンジン10の停止時におけるスロットルバルブ60などの動作の制御を示すフロー・チャートである。図示のプログラムは、ECU112において所定の周期(例えば100msec)ごとに実行される。
先ずS100において、エンジン10の停止指示が入力されたか否か、具体的には、コンビネーション・スイッチ114がオフ・ポジションに操作されたか否か判断する。S100で否定されるときは以降の処理をスキップする一方、肯定されるときはS102に進んでヒータ106gへの通電を停止し、ワックス部106aの加熱を終了する。
次いで、S104に進んでスロットルバルブ60がオーバー全開位置まで駆動(開弁)するように、電動モータ70の動作を制御する。スロットルバルブ60を上記の如く駆動することで、チョークバルブ開閉機構90のリンク96は、チョークバルブ62を全閉位置まで閉弁させるように駆動する。しかしながら、S102においてヒータ106gへの通電を停止した直後であるため、ワックスは未だ膨張した状態である。従って、ワックスの膨張によって突出させられた駆動ピン106dはリンク96に当接した状態であり、よってチョークバルブ62は駆動ピン106dによって全開位置に保持されることとなる。即ち、チョークバルブ62はエンジン停止後、直ぐに全閉位置まで閉弁されない。
エンジン10を停止した後、チョークバルブ62は直ちに全閉位置まで閉弁されないため、例えば短時間でエンジン10を再始動させる温間始動時であっても、チョークバルブ62は全開位置あるいはその近傍にあることとなり、エンジン10を、空燃比を過度にリッチ化させることなく始動させることができる。
尚、エンジン停止後所定時間経過してチョークバルブ開度調節機構106の周囲温度が低下すると、ワックスは収縮して駆動ピン106dの突出量Lを徐々に減少させる。それによってチョークバルブ62は、図5(c)や図7に示すように、全閉位置まで閉弁させられ、次回のエンジン10の始動に備える。
以上の如く、この発明の実施例にあっては、吸気路50に配置されるスロットルバルブ60およびチョークバルブ62と、前記スロットルバルブ60にギヤ機構(スロットルバルブ開閉機構)72を介して接続されて前記スロットルバルブ60を開閉するアクチュエータ(電動モータ)70と、前記ギヤ機構72と前記チョークバルブ62に接続され、前記ギヤ機構72の動作に連動して前記チョークバルブ62を開閉するチョークバルブ開閉機構90と、周囲温度が上昇するに連れて膨張し、前記周囲温度が低下するに連れて収縮するワックスが充填されるワックス部106aと、前記ワックス部106aに接続され、前記ワックスの膨張・収縮に応じて前記チョークバルブ開閉機構90を駆動して前記チョークバルブ62の開度を調節する駆動ピン106dと、前記ワックス部106aを加熱するヒータ106gとからなるチョークバルブ開度調節機構106とを備える汎用内燃機関(エンジン)10において、前記チョークバルブ62によるチョークを続行すべきか否か判断するチョーク判断手段(ECU112,S12)と、前記ヒータ106gへの通電量を制御するヒータ制御手段(ECU112,S14,S102)とを備え、前記ヒータ制御手段は、前記チョーク判断手段によって前記チョークを続行すべきと判断されないとき、前記ヒータ106gへの通電を開始すると共に、前記チョークバルブ62を全開位置まで強制的に開弁させるように前記ヒータ106gへの通電量を制御する(ECU112,S14)ように構成した。
これにより、スロットルバルブ60を駆動する電動モータ70でチョークバルブ62も駆動することができる、換言すれば、1個の電動モータ70でスロットルバルブ60とチョークバルブ62の両方を駆動することができるため、チョークバルブ62を新たな電動モータを用いることなく駆動でき、その電動モータを配置するためのスペースも不要にすることができる。また、特許文献1で用いられるチョークバルブ用の電動モータ、それに対応するモータドライバ(駆動回路)(共に図4に想像線で示す)およびハーネスなどを削減できるため、消費電力やコスト的にも有利である。
また、チョークバルブ開度調節機構106を備えるように構成したので、温間始動時など周辺温度が比較的高いときはチョークバルブ62を開弁して空燃比をリッチ化させないようにすることも可能となる、即ち、チョークバルブ62を周辺温度に応じて適宜な開度に調節でき、燃費を向上させることができる。
また、前記チョークバルブ開度調節機構106は、前記周囲温度に応じて膨張・収縮するワックスが充填されるワックス部106aと、前記ワックス部106aに接続され、前記ワックスの膨張・収縮に応じて前記チョークバルブ開閉機構90を駆動して前記チョークバルブ62の開度を調節する駆動ピン106dとからなるように構成したので、チョークバルブ62の開度の調節を簡易な構成で行うことができ、より一層の省スペース化を図ることができる。
また、前記チョークバルブ開度調節機構106は、さらに、前記ワックス部106aを加熱するヒータ106gを備えるように構成したので、暖機終了後にワックス部106aをヒータ106gで加熱し、ワックスの熱膨張によって駆動ピン106dを介してチョークバルブ開閉機構90を駆動してチョークバルブ62を全開位置に保持する、即ち、暖機終了後にチョークバルブ62を強制的に全開位置にして保持するように構成することも可能となる。従って、エンジン運転中にチョークバルブ62が閉弁するのを確実に防止できると共に、エンジン停止後短時間で再始動される温間始動時であっても、チョークバルブ62は全開位置あるいはその近傍にあるため、空燃比を過度にリッチ化させることがなく、よって燃費をより一層向上させることができる。また、ヒータ制御手段は、操作者から機関停止指示がなされたとき、ヒータへの通電を停止する(ECU112,S102)ように構成したので、エンジン停止後は、ヒータへの通電を停止してもチョークバルブは直ちに全閉状態まで閉弁されないため、例えば短時間でエンジン10を再始動させる温間始動時であっても、チョークバルブ62は全開位置あるいはその近傍にあることとなり、エンジン10を、空燃比を過度にリッチ化させることなく始動させることができる。
尚、上記において、スロットルバルブ60などを駆動するアクチュエータ(電動モータ70)をステッピングモータとしたが、他の電動モータや電磁ソレノイドなどであっても良いし、電動モータでポンプを駆動して動作する油圧機器などであっても良い。
また、燃料の供給をキャブレタ46によって行うように構成したが、それに限られるものではなく、吸気ポート24にインジェクタ(燃料噴射弁)を配置して燃料を供給するように構成しても良い。
10 エンジン(汎用内燃機関)、50 吸気路、60 スロットルバルブ、62 チョークバルブ、70 電動モータ(アクチュエータ)、72 スロットルバルブ開閉機構(ギヤ機構)、90 チョークバルブ開閉機構、106 チョークバルブ開度調節機構、106a ワックス部、106d 駆動ピン、106g ヒータ