以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係るエンジン制御システムの概略構成図であり、図2は前記エンジン制御システムの吸気系および排気系の構成を示す模式図である。
各図を参照して、このエンジン制御システムは、シリンダヘッド10およびシリンダブロック11を備えたエンジン本体1と、該エンジン本体1を制御するためのコントロールユニット(ECU)2とを備えている。
前記エンジン本体1には、4つの気筒12A〜12Dが設けられていて、該各気筒12A〜12Dの内部には、図1に示すように、クランクシャフト3に連結されるピストン13がそれぞれ嵌挿され、これにより、前記各気筒12A〜12D内部でピストン13の上方には燃焼室14が形成されている。
一般的に、多気筒4サイクルエンジンにおいては、各気筒が所定の位相差をもって吸気、圧縮、膨張、排気の各行程からなる燃焼サイクルを行うようになっている。本実施形態の4気筒エンジンの場合、気筒列方向一端側から1番気筒12A、2番気筒12B、3番気筒12C、4番気筒12Dと呼ぶと、1番気筒(#1)、3番気筒(#3)、4番気筒(#4)、2番気筒(#2)の順にクランク角で180度ずつの位相差をもって燃焼が行われるようになっている。さらに本実施形態では、エンジンの自動停止中に圧縮行程にあった気筒を停止時圧縮行程気筒、膨脹行程にあった気筒を停止時膨脹行程気筒と称する(同様に吸気行程にあった気筒を停止時吸気行程気筒、排気行程にあった気筒を停止時排気行程気筒と称する)。
図1を参照して、前記各気筒12A〜12Dのそれぞれの燃焼室14の頂部には、該燃焼室14内の混合気に点火して燃焼させるための点火プラグ15が設けられている。各点火プラグ15先端の電極は、前記燃焼室14に臨むように配置されている。また、前記燃焼室14の側方(図1の右方向)には、先端の噴孔を燃焼室14に臨ませた燃料噴射弁16が設けられている。この燃料噴射弁16は、図示しないニードル弁およびソレノイドを内蔵し、前記コントロールユニット2からのパルス信号の入力によりそのパルス幅に対応する時間だけ開弁駆動されて、その駆動時間に応じた量の燃料を各気筒12A〜12D内に直接筒内に噴射するように構成されている。そして、その燃料の噴射方向が前記点火プラグ15の電極付近に向かうように調整されている。
また、前記燃料噴射弁16には、図示しないが、燃料ポンプにより燃料供給通路等を介して燃料が供給されるようになっており、その燃料供給圧は、各気筒12A〜12Dの圧縮行程中期以降で高圧の気筒内燃焼室14に燃料を噴射できるように、その燃焼室14の圧力よりも高い値に設定されている。
前記各気筒12A〜12Dの燃焼室14の上部には、該燃焼室14に向かって開口する吸気ポート17および排気ポート18が設けられている。これらのポート17、18に吸気弁19および排気弁20がそれぞれ配設されている。これらの吸気弁19および排気弁20は、図示省略のカムシャフト等からなる動弁機構により駆動されるものである。前記動弁機構による吸気弁19および排気弁20の開弁タイミングは、各気筒12A〜12Dが所定の位相差をもって燃焼サイクルを行うように気筒12A〜12D毎に設定されている。
図2に示すように、吸気ポート17および排気ポート18には、それぞれ吸気通路21および排気通路22が連通している。吸気ポート17に近い吸気通路21の下流側は、気筒12A〜12D毎に独立した分岐吸気通路21aを構成しており、各分岐吸気通路21aの上流端は、それぞれサージタンク21bに連通している。このサージタンク21bよりも上流の吸気通路21は各気筒12A〜12Dに共通の共通吸気通路21cである。この共通空気通路21cには、例えばバタフライ弁により通路断面積を調節して吸気流を絞るスロットル弁23と、このスロットル弁23を駆動するアクチュエータ24とが配設されている。さらに、スロットル弁23の上流側および下流側には、吸気量を検出するためのエアフローセンサ25と吸気圧力(負圧)を検出するための吸気圧センサ26とが配設されている。
次に、エンジン本体1には、ベルト等によりクランクシャフト3に駆動連結されたオルタネータ28が付設されている。このオルタネータ28には、フィールドコイルの電流を制御することによって出力電圧を変更し、これにより発電量を調整するレギュレータ回路28aが内蔵されており、このレギュレータ回路28aに前記コントロールユニット2からの制御指令(例えば電圧)が入力されることで、基本的には車両の電装品の電気負荷と車載バッテリ電圧とに応じて発電量が制御されるようになっている。このようにしてオルタネータ28の発電量が変更されるときには、これに伴いその駆動力、即ちエンジン本体1の外部負荷の大きさが変化することになる。
次に、図1および図2に示すように、各気筒12A〜12Dの排気通路22の集合部下流には、排気を浄化するための触媒37が配設されている。この触媒37は、例えば、排気の空燃比状態が理論空燃比近傍にあるときにHC、CO、NOxの浄化率が極めて高い、いわゆる三元触媒であり、これは排気中の酸素濃度が比較的高い酸素過剰雰囲気でこれを吸蔵する酸素吸蔵能を有し、酸素濃度の比較的低いときには吸蔵している酸素を放出して、HC、CO等と反応させるものである。なお、触媒37は、三元触媒に限らず、前記のような酸素吸蔵能を有するものであればよく、例えば、酸素過剰雰囲気でもNOxを浄化可能ないわゆるリーンNOx触媒であってもよい。
次に、エンジン本体1には、クランクシャフト3の回転角を検出する2つのクランク角センサ30、31が設けられ、一方のクランク角センサ30から出力される検出信号に基づいてエンジン回転速度Neが検出されるとともに、両クランク角センサ30、31から出力される位相のずれた検出信号に基づいてクランクシャフト3の回転方向および位相が検出されるようになっている。
次に、エンジン本体1には、カムシャフトに設けられた気筒識別用の特定回転位置を検出するカム角センサ32と、エンジンの冷却水温度を検出する水温センサ33とが設けられ、また車体側には運転者のアクセル操作量に対応したアクセル開度を検出するアクセル開度センサ34が設けられている。
さらに、前記クランクシャフト3には、図略のフライホイールと、このフライホイールに固定されたリングギア35が、回転中心に対して同心に設けられている。リングギア35は、電動駆動手段としてのスタータモータ36の入力部材であり、後述するように、スタータモータ36のピニオンギア36dと噛合されるように構成されている。
図3は、スタータモータの構成を示す一部破断断面略図である。
図3を参照して、スタータモータ36は、モータ36aと、モータ36aと平行に配置された電磁駆動式のプランジャ36bと、このプランジャ36bによってシフトレバー36cを介し、モータ36aの出力軸上にて相対回転不能な状態で往復移動するピニオンギア36dとを有し、エンジンの再始動時に、前記ピニオンギア36dを図3の実線で示す待機位置から仮想線で示す噛合位置に移動させてリングギア35に噛合させることにより、クランクシャフト3を回転駆動してエンジンを再始動させるように構成されている。
本実施形態に採用されているスタータモータ36のピニオンギア36dは、スクリュー状に捩れているとともに、リングギア35との係脱を容易にするために、リングギア35が停止しているときに、当該リングギア35と逆方向に約60rpmの速度で回転しながら噛合する仕様になっている。
図1を参照して、コントロールユニット2は、エンジンの運転を統括的に制御するマイクロプロセッサである。この本実施形態のエンジンは、予め設定された自動停止条件が成立したときに各気筒12A〜12Dへの燃料噴射を所定のタイミングで停止(燃料カット)して自動的にエンジンを停止させる制御(アイドルストップ制御)を実行するとともに、エンジンの自動停止後に運転者によるアクセル操作が行わる等により再始動条件が成立したときにエンジンを自動的に再始動させる制御(燃焼再始動制御)を実行するように構成されている。かかる制御を実現するために、コントロールユニット2には、エアフローセンサ25、吸気圧センサ26、吸気温センサ29、クランク角センサ30、31、カム角センサ32、水温センサ33およびアクセル開度センサ34からの各検知信号が入力されるとともに、燃料噴射弁16、スロットル弁23のアクチュエータ24、点火装置27およびオルタネータ28のレギュレータ回路28a、スタータモータ36のそれぞれに各駆動信号を出力する。これにより、コントロールユニット2は、電動駆動制御手段、運転状態検出手段、ピストン停止位置識別手段、停止位置矯正手段、燃料噴射制御手段、並びに点火制御手段を機能的に構成している。
図4はエンジンの自動停止制御についての停止時膨張行程気筒および停止時圧縮行程気筒のピストン停止位置を示す説明図であり、図5は停止時膨張行程気筒および停止時圧縮行程気筒と空気量との関係を示す説明図である。
図4および図5を参照して、コントロールユニット2のメモリには、予め燃焼による再始動が可能な下死点限界(停止時圧縮行程気筒12Aのθ1、停止時膨張行程気筒のθ4)と上死点限界(停止時圧縮行程気筒12Aのθ4、停止時膨張行程気筒のθ1)とによって決定される燃焼再始動可能範囲Aが決定されている。このピストン13は、上述した制御に基づき、この燃焼再始動可能範囲A内で停止するのであるが、この燃焼再始動範囲の中でも、停止時圧縮行程気筒については、上死点前90°CAよりも僅かに上側の範囲に停止していることが好ましい。本実施形態の例では、図4のθ2からθ3で示すように、停止時圧縮行程気筒が上死点前60°CAから80°CA(従って停止時膨張行程気筒が上死点後100°CAから120°CA)の範囲にあるときを単独燃焼停止範囲R、この単独燃焼停止範囲Rよりも図4のθ1までの上死点側(停止時膨張行程気筒にあっては下死点側)とθ4までの下死点側(停止時膨張行程気筒にあっては上死点側)の所定範囲を併用燃焼停止範囲、残余の範囲を燃焼再始動不能範囲NG1、NG2としてコントロールユニット2に判定基準を設定している。
単独燃焼停止範囲Rとは、再始動時に、スタータモータ36を使用せずに、燃焼のみによってエンジン本体1の再始動が可能な停止位置をいう。停止時膨張行程気筒のピストン13がこの単独燃焼停止範囲Rにある場合には、当該気筒の空気量が多くなって充分な燃焼エネルギーが得られる。またエンジン停止動作期間中にスロットル弁23の開度Kを増大させることにより掃気が促進されるので、触媒37に充分な量の新気が供給される。従ってエンジン停止中は触媒37の酸素吸蔵量が充分に多い状態となっている。また、停止時圧縮行程気筒内に所定量の空気が確保されて前記初回の燃焼によりクランクシャフト3を少しだけ逆転方向させ得る程度の燃焼エネルギーが得られることになる。しかも、停止時膨張行程気筒内に多くの空気量を確保することにより、クランクシャフト3を正転方向させるための燃焼エネルギーを充分に発生させてエンジンを確実に再始動させることが可能となる。
そこで本実施形態では、アイドル時にエンジン本体1を自動で停止させるときに、まず、各気筒12A〜12Dの掃気が十分に行われるように、アイドル回転速度よりもやや高い所定回転速度で燃料カットを行うとともに、その後の所定期間、スロットル弁23を開いて、予め設定した開度になるように制御する。そして、そのスロットル弁23を予め設定した適切なタイミングで閉じるようにしている。これにより停止時膨張行程気筒12Bおよび停止時圧縮行程気筒12Aへそれぞれ吸入される空気量が十分に多くなり、且つ該膨張行程気筒12Bの空気量が圧縮行程気筒12Aよりもやや多くなる。この結果、再始動時に駆動される2つの気筒12A、12B内の空気の圧縮圧力のバランスによって、膨張行程気筒12Bのピストン13が行程中央部から多少、下死点寄りの再始動に好適な単独燃焼停止範囲R内に停止するようになる。
次に、併用燃焼停止範囲A1、A2とは、再始動時にスタータモータ36を併用することによって、再始動が可能な停止範囲をいう。
さらに、燃焼再始動不能範囲NG1、NG2とは、燃焼による逆転再始動ができない停止範囲をいう。
なお、以下の説明では、併用燃焼停止範囲A1、A2並びに燃焼再始動不能範囲NG1、NG2のうち、行程の前半側と後半側でそれぞれ添え字1、2を付すこととする。
これらの停止範囲R、A1、A2、NG1、NG2は、コントロールユニット2が停止範囲を推定した後、設定される停止範囲判定フラグFSTによって識別され、次に説明するエンジン本体1の再始動制御において、それぞれの場合に応じて、再始動制御が実行されるようにしている。さらに本実施形態においては、併用燃焼停止範囲A1、A2のうち、停止時圧縮行程気筒12Aのピストン13が単独燃焼停止範囲Rよりも圧縮上死点前にある場合には、後述するピストン位置強制処理を実行することにより、再始動処理に先立って、ピストン13の位置を強制するようにしている。
なお、本実施形態において、燃焼再始動制御の際、圧縮行程中期で燃料噴射する場合には、圧縮行程気筒12Aのピストンが圧縮行程においてたとえば、図4のθ2からθ3の範囲にあるときに実行されるようになっている。
次に、前記コントロールユニット2によりエンジン本体1を自動で停止する制御について説明する。
図6は、燃料カットから慣性で回転するエンジン本体1が停止するまでの間(以下、停止動作期間ともいう)におけるエンジン回転速度Ne、クランク角および各気筒12A〜12Dの行程の変化を互いに対応づけて示すとともに、その間に行われるスロットル開度の制御と、これによる吸気圧力(吸気管負圧)の変化とを模式的に示す説明図である。図7は、前記停止動作期間において徐々に回転が低下するエンジン本体1の上死点時の回転速度ne(後述)と、停止後の膨張行程気筒12におけるピストン停止位置との相関関係を示す図である。
図6に示すように、エンジン本体1の運転中に所定の設定回転速度(図例では800rpm)で燃料カットが行われると(タイミングt0)、そのときにクランクシャフト3等の運動部分が有する運動エネルギーが機械的な摩擦や各気筒12A〜12Dのポンプ仕事によって消費されることで、エンジン回転速度Neが徐々に低下し、エンジン本体1は慣性で数回転した後に停止することになる。詳しくは、エンジン本体1が慣性で回転する間、エンジン回転速度Neは、微視的には各気筒12A〜12Dの圧縮上死点(上死点)を迎える毎に一時的に大きく落ち込み、上死点を越えると再び上昇する、というようにアップダウンを繰り返しながら低下して行く。そして、例えば図示の如く約800rpmで燃料カットした場合には、通常は上死点を8、9回越えて、その最後の上死点を越えた後に(タイミングt3)、その次の上死点を越えることができなくなって、停止に至る(タイミングt4〜t6)。この過程では、圧縮行程気筒12および膨張行程気筒12のピストン13にそれぞれ逆向きに作用する圧縮反力によって、各気筒12A〜12Dのピストン13はそれぞれ数回、往復作動した後に停止することになるが(タイミングt6)、その停止位置は、前記圧縮および膨張行程気筒12の圧縮反力のバランスによって概略決定されるとともに、エンジン本体1の摩擦等の影響を受けて、停止前に最後に上死点を越えるときのエンジン本体1の回転慣性、即ち最後に上死点を越えるときのエンジン回転速度Neの高低に応じて変化することになる。従って、停止時膨張行程気筒12Bのピストン13を再始動に適した単独燃焼停止範囲R内に停止させるためには、まず、その停止時膨張行程気筒12および停止時圧縮行程気筒12の圧縮反力がいずれも十分に大きくなり、且つ膨張行程気筒12の圧縮反力が圧縮行程気筒12よりも所定以上、大きな適切なバランスとなるように、両方の気筒12への吸入空気量を調節する必要がある。このために、本実施形態では、燃料カット後に直ちに開いたスロットル弁23(タイミングt1)を所定期間の経過後に閉じて(タイミングt2)、一時的に吸気管負圧を減少させる(吸気量は増大)ことで、停止時の圧縮および膨張行程気筒12にそれぞれ所要量の空気が吸入されるようにしている。
但し、実際のエンジン本体1ではスロットル弁23自体や吸気ポート17、分岐吸気通路21a等の形状に個体ばらつきがあり、それらを流通する空気流の挙動が変化することもあって、エンジン本体1の停止動作期間に各気筒12A〜12Dに流入する空気の量には或る程度のばらつきを生じるから、上述のようなスロットル弁23の開閉制御を行ったとしても、それだけではエンジン停止時に圧縮行程や膨張行程になる気筒12のピストン停止位置を正確に目標とする単独燃焼停止範囲R内に収めることは難しい。
この点、本実施形態では、図7に一例を示すように、停止動作期間においてエンジン回転速度Neが徐々に低下する過程で、各気筒12A〜12Dが順次、上死点を通過するときのエンジン回転速度Ne(以下、上死点時の回転速度neともいう)と、エンジン停止後に膨張行程にある気筒12のピストン停止位置との間に明確な相関関係があることに着目して、図6に示すようにエンジン回転速度Neが低下する過程で180°CA毎の上死点時の回転速度neをそれぞれ検出し、この検出値に応じてオルタネータ28の発電量を制御することにより、エンジン回転の落ち具合を調整するようにしている。
図7に示す例では、上述のようにエンジン回転速度Neが略800rpmのときに燃料カットを行い、その後の所定期間、スロットル弁23を開状態に維持するようにして、慣性で回転するエンジン本体1の各気筒12A〜12Dが上死点を越える度に、上死点時の回転速度neを計測するとともに、そうして停止した後の膨張行程気筒12のピストン位置を調べて、このピストン位置を縦軸に、また、前記上死点時の回転速度neを横軸に取って、両者の関係を表している。このような作業を所定回数、繰り返すことで、図7に示すように、エンジン停止動作期間における上死点時の回転速度neと停止後の膨張行程気筒12におけるピストン停止位置との間の相関関係を表す分布図が得られる。
図7の例では、エンジン停止前の最後の上死点を越えるときの回転速度は示されておらず、燃料カット直後の上死点時の回転速度(図7の例では最後から数えて9番目のもの)neから最後の1つ前の上死点時の回転速度ne(最後から数えて2番目のもの)までのデータが示されている。この最後から9〜2番目の上死点時の回転速度neは、それぞれ一かたまりとなって分布しており、特に図示の6〜2番目のものにおいて明らかなように、上死点時の回転速度neが或る特定の範囲(図に斜線を入れて示す範囲)にあれば、ピストン停止位置が再始動に好適な単独燃焼停止範囲R(図の例では、停止時膨張行程気筒12Bの圧縮上死点後100〜120°CA)に入ることが分かる。
前記の如く、膨張行程気筒12のピストン13がエンジン本体1の再始動に好適な単独燃焼停止範囲Rに停止することになる上死点時の回転速度neの特定の範囲を以下、この明細書では適正回転速度範囲と呼ぶものとする。そして、この実施形態では、エンジン回転速度Neがアップダウンを繰り返しながら低下するときに、気筒12A〜12D毎の上死点時の回転速度neをそれぞれ検出し、この検出値と前記適正回転速度範囲とを比較して、両者の速度偏差に応じてオルタネータ28の発電量を制御するようにしている。
まず、燃料カット直後の所定期間は、各気筒12A〜12Dの掃気等のためにスロットル弁23を比較的大きく開いており、このスロットルの開度をさらに調整しても気筒12のポンプ仕事量があまり変化しないから、これによるエンジン回転速度Neの調整は難しい。そこで、この間は意図的にオルタネータ28を発電作動させるとともに、その発電量を変更制御して、そのための発電駆動力の大きさを変化させることにより、エンジン回転速度Neの低下度合いを調整する。この際、上死点時の回転速度neが適正回転速度範囲の下限寄りになるように、即ちエンジン回転がやや落ち気味になるように、オルタネータ28の発電量を大きめに制御する。
そのように、オルタネータ28の発電制御によってエンジン回転速度Neの低下の度合いを調整して、遅くとも最後の上死点を通過するまでに上死点時の回転速度neが前記適正回転速度範囲に収まるようにすれば、この時点でクランクシャフト3、或いはピストン13、コネクティングロッド等の運動部分が有する運動エネルギーや圧縮行程気筒12の高圧空気が有する位置エネルギー等が、その後に作用する摩擦等と見合うものになって、エンジン本体1の停止時に膨張行程にある気筒12のピストン13を前記の再始動に適した単独燃焼停止範囲R内に停止させることができるのである。
次に、自動停止の具体的な制御例を図8および図9を参照しながら説明する。
図8および図9は停止制御の手順を示すフローチャート図である。
図8を参照して、コントロールユニット2は、エンジン運転中の所定のタイミングで自動停止の条件(アイドルストップ条件)が成立したか否かの判定を行う(ステップS1)。この判定は、車速、ブレーキの作動状況、エンジン水温等に基づいて行うもので、例えば車速が所定速度よりも小さく、ブレーキが作動していて、エンジン水温が所定範囲内にあり、さらにエンジン本体1を停止させることに特に不都合のない状況であれば、自動停止条件が成立したものとする。
ステップS1で自動停止条件が成立したとき(YESの場合)、コントロールユニット2は、いずれか1つの気筒12(例えば1番気筒12A)を特定して、エンジン本体1を停止させる所定の条件が成立したかどうかの判定を行う(ステップS2)。この制御では、エンジン回転速度Neが燃料カットの設定回転速度(この実施形態では略800rpm)であるかどうか、前記特定した気筒12が予め設定した行程(例えば吸気行程)にあるかどうか等が判定される。ステップS1、S2の条件が成立してYESと判定されれば、コントロールユニット2は、各気筒12A〜12Dへの燃料噴射を停止させる(ステップS3)。
次いで、図6のt1で示すように、スロットル弁23を設定開度になるように開く(ステップS4)。これにより、各気筒12A〜12Dへの吸気量が増大し、十分な掃気が行われるとともに、排気通路22に配設された触媒37にも多量の新気が供給されることになり、この触媒37に吸蔵される酸素の量が十分に多くなる。
続いて、コントロールユニット2は、クランク角センサ30からの信号により求められる上死点時の回転速度neが、適正回転速度範囲にあるかどうか判定する(ステップS5)。
ステップS5の判定がYESであれば、コントロールユニット2は、今度はエンジン回転速度Neが所定回転速度以下かどうか判定する(ステップS6)。この所定回転速度は、吸気の輸送遅れを考慮して、図6に示すように停止時膨張行程気筒(図示の例では#2気筒)12Bへの吸気量が停止時圧縮行程気筒(図示の例では#1気筒)12Aよりも多くなるようなタイミングでスロットル弁23を閉じるためのものであって、同図のタイミングt2に対応し、この実施形態では例えば約500〜600rpmの範囲に設定されている。そして、コントロールユニット2は、エンジン回転速度Neが前記所定回転速度以下になれば(ステップS8の判定がYESの場合)スロットル弁23を閉じ(ステップS7)、エンジン回転速度Neが所定回転速度よりも高ければ(NOの場合)、ステップS5にリターンする。
ステップS5において、上死点回転速度が適正回転速度範囲から外れていると判定された場合(NOの場合)、コントロールユニット2は、上死点回転速度と適正回転速度範囲との間の回転速度の偏差に基づいてオルタネータ28の発電量を算出する(ステップS8)。この発電量は、例えばエンジン回転速度Ne、適正回転速度範囲からの速度偏差および現在の発電量に応じて予め設定されたマップから読み出され、例えば上死点回転速度が適正回転速度範囲の上限よりも高いときには、エンジン本体1の負荷が増えるようにオルタネータ28の発電量を増大させる一方、上死点回転速度が適正回転速度範囲の下限よりも低いときには、エンジン本体1の負荷が減るように発電量を減少させるものである。また、前記マップにおいて発電量の目標値は、上死点回転速度が適正回転速度範囲の下限付近になるよう大きめに設定されている。次に、コントロールユニット2は、ステップS6での算出結果に応じてオルタネータ28のレギュレータ回路28aに制御指令を出力する(ステップS9)。このオルタネータ28の発電作動によってエンジン本体1の負荷が調整されることで、慣性で回転するエンジン本体1の回転速度の軌跡は高回転側または低回転側のいずれかにシフトされて、徐々に目標とする軌跡に近づいて行く。そうして、コントロールユニット2は、エンジン回転速度Neが前記ステップS6の所定回転速度以下になれば(YESの場合)、ステップS7に進み、スロットル弁23を閉じる。
一方で、前記のようなオルタネータ28の制御によって、燃料カット後のエンジン回転速度Neの低下度合いを調整することで、図6に示すようにアップダウンを繰り返しながら徐々に低下するエンジン回転速度Neの軌跡を徐々に修正して、遅くとも最後の上死点までには適正回転速度範囲に収めることが可能になる。そのため、本実施形態では、スロットル弁23のアクチュエータ24を駆動した後、ステップS23に進むようになっている。
その後は、各々圧縮行程および膨張行程にある2つの気筒12A、12Bの圧縮反力によって正転側および逆転側に数回、回転作動した後に、停止することになる。そこで、図9を参照して、コントロールユニット2は、ステップS24に進んで、クランク角センサ30、31からの信号に基づいてエンジン本体1の停止位置を予測する。
このとき、コントロールユニット2は、ピストン13の停止位置が、単独燃焼停止範囲R内であるか否かを判定し(ステップS25)、推定された停止位置が単独燃焼停止範囲Rに入っていると判定した場合には、コントロールユニット2は、停止位置判定フラグFSTを初期値0から1に設定する(ステップS26)。他方、ステップS25の判定で、推定された停止位置が適正な範囲から外れていると判定した場合には、コントロールユニット2は、さらに、停止時圧縮行程気筒12Aのピストン13が併用燃焼停止範囲A1、A2内で停止するか否かを判定する(ステップS27)。仮に併用燃焼停止範囲A1、A2内である場合、コントロールユニット2は、さらに停止位置が圧縮行程の前半であるか後半であるかを判別し(ステップS28)、前半であれば、停止位置判定フラグFSTを2に(ステップS29)、後半であれば3に(ステップS30)、それぞれ設定する。他方、ステップS27で、停止時圧縮行程気筒12Aのピストン13が許容範囲外で停止すると判定した場合には、コントロールユニット2は、さらに停止位置が圧縮行程の前半であるか後半であるかを判別し(ステップS31)、前半であれば、停止位置判定フラグFSTを4に(ステップS32)、後半であれば5に(ステップS33)、それぞれ設定し、各停止位置判定フラグFSTの値をコントロールユニット2のメモリに記憶して、エンジン停止制御を完了する。
ここで、停止位置判定フラグFSTは、後述する表1に列挙されているものである。
次に、アイドル時に自動で停止したエンジン本体1を自動で再始動する場合について説明する。
エンジン本体1が上述したように強制的に停止した場合、停止時膨張行程気筒を燃焼させた後に圧縮行程を迎える気筒(主として停止時吸気行程気筒)で自着火が生じると、その気筒でピストンが大きな反力を受け、ノッキングが生じて再始動に失敗することになる。特に、スタータモータ36を併用して再始動を実行しなければならない場合、スタータモータ36のピニオンギア36dとエンジン本体1のリングギア35の噛合時に自着火が生じると、その逆トルクによって両ギア35、36dがロックしてするおそれもある。そこで本実施形態では、燃焼再始動時の自着火を防止するために、種々の対策がなされている。
図10は、エンジン停止からの経過時間と筒内温度との関係を示すグラフであり、エンジン停止時(タイミングt5)の筒内温度が80℃であった場合の筒内温度変化の推定値である。図10を参照して、エンジンが完全に停止すると、各気筒12A〜12Dの筒内温度は、同図に示す温度特性で変化する。
まず、自着火の対策の一つとしては、筒内温度の管理がある。すなわち、エンジン本体1の自動停止後、エンジン本体1が完全に停止すると冷却水の流れも停止するので、停止直後に筒内温度が急速に上昇する。そしてエンジン停止後約10秒でピークとなり、以後は徐々に低下して行く。この特性は冷却水の温度(エンジン水温)や外気温(吸気温度)等によって異なるが、エンジン本体1の仕様毎に実験等で決定することも可能であることから、コントロールユニット2には、エンジン本体1の仕様毎に図10の特性をマップ化したデータを記憶させて、エンジン停止後の約10秒前後の範囲を所定停止時間範囲とし、この所定停止時間範囲では、当該エンジン本体1の吸気通路の空気温度が急上昇する運転状態のときに前記所定の温間状態であると判定するとともに、この所定停止時間範囲に再始動時間に近いほど、筒内温度が高いと判定するように設定して、自着火防止のために対策処理を実行することとしている。
図11は自動停止したエンジンの停止位置と自着火発生タイミングとの関係を示すグラフである。
次に、図11を参照して、温間時(warm-up:例えば、吸気温センサ29の検出値が100℃以上の場合)において、停止時圧縮行程気筒12Aの停止位置が上死点前90よりも下死点側にある場合、停止時圧縮行程気筒12Aに未燃燃料が存在すると、その空燃比に殆ど関係なく、停止時膨張行程気筒12Bの燃焼後に停止時圧縮行程気筒12Aで自着火が生じやすくなることが、本件発明者が実験した結果、明らかになった。このため、本実施形態では、図4で示したピストン停止位置の許容範囲のうち、ピストン13がθ3を超えてθ4までのところに存在する場合には、ピストン位置を強制してからエンジン本体1の再始動を実行するようにしている。また、停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼が終了した後、停止時圧縮行程気筒12Aに対して燃料を噴射することにより、噴射された燃料の気化霧化によって筒内圧力を低減することが実行されることになるが、一定の場合には、その燃料噴射を停止したり、或いは、自着火防止のために追加燃料を噴射して停止時圧縮行程気筒12Aでの自着火防止を図るようにしている。
次に再始動時の燃料噴射タイミングについて説明する。
図12は前記エンジン制御システムにおけるエンジンの始動手順を示す模式図である。
図12を参照して、エンジンの再始動時には、原則として、スタータモータ36の力を借りることなく、エンジン本体1を自力で始動させるのであるが、この実施形態では、図12(A)〜図12(D)に模式的に示すように、まず、停止時圧縮行程気筒12Aで最初の燃焼を行わせて、ピストン13を押し下げることにより、クランクシャフト3を少しだけ逆転させ(図12(A)参照)、これにより、停止時膨張行程気筒12Bのピストン13を上昇させて、この気筒12B内の混合気を圧縮する(図12(B)参照)。そして、そのようにして圧縮されて温度および圧力の高くなった停止時膨張行程気筒12B内の混合気に点火して、燃焼させることにより、クランクシャフト3に正転方向のトルクを与えて、エンジン本体1を始動するようにしている。そのようにエンジン本体1を自力で始動させるためには、停止時膨張行程気筒12Bの燃焼によってクランクシャフト3にできるだけ大きな正転方向のトルクを与え、これにより、図12(C)に示すように停止時圧縮行程気筒12Aが、その圧縮反力(圧縮圧力)に打ち勝って上死点を越えるようにしなければならない。そのために、エンジン本体1の確実な始動のためには停止時膨張行程気筒12B内に燃焼のための空気を十分に確保しておく必要がある。他方、再始動の際に、停止時膨張行程気筒12B内に相当な空気が存在していることは、逆転時にその空気を強く圧縮することの妨げとなる。圧縮された空気の圧縮反力が停止時膨張行程気筒12Bのピストン13を押し戻す方向に作用するからである。
そこで本実施形態では、停止時膨張行程気筒12Bへの燃料噴射タイミングを遅らせることにより、停止時膨張行程気筒12B内の空気の圧縮量を増大(密度を増大)させる制御を行っている。燃料噴射タイミングを遅らせると、ある程度筒内空気が圧縮された状態の気筒内に燃料を噴射することになり、その気化潜熱によって圧縮圧力が減少する。従って同じエンジン逆転方向のエネルギーであればピストン13がより上死点近くまで移動することができ(ピストンストローク増大)、圧縮空気の密度をより高めることができるからである。
次に、正転後においては、停止時圧縮行程気筒に残存する既燃ガスの反力が、正転後のトルクを下げる原因となり得る。そのため、本実施形態では、停止時膨張行程気筒に対する燃焼の後に、停止時圧縮行程気筒12Aに対して燃料を噴射することにより、気化潜熱で逆転後の停止時圧縮行程気筒12A内の圧力を下げ、トルクの低減を抑制するようにしている(図12(C)参照)。
さらに、停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼後に圧縮行程を迎える停止時吸気行程気筒12Cにおいては、点火タイミングを圧縮上死点後にリタードさせて、いわゆる吹き上がりを防止している(図12(D)参照)。
次に、始動制御の手順について説明する。なお以下の説明では、表1に基づくフラグを使用して、制御を実行するようにしている。なお、これらフラグは、本実施形態の動作を説明する上で論理的に構築されているものであり、必ずしも、プログラム上で設定されていることを要する訳ではない。
停止位置判定フラグFSTは、エンジン本体1が自動停止した場合の停止状態を示すものであり、1の場合には、ピストン13が単独燃焼停止範囲Rで停止していることを示し、2の場合には、行程前半側の併用燃焼停止範囲A1内で停止していることを示し、3の場合には、行程後半の併用燃焼停止範囲A2内で停止していることを示し、4の場合には、ピストン13が行程前半の燃焼再始動不能範囲NG1内で停止していることを示し、5の場合には、ピストン13が行程後半の燃焼再始動不能範囲NG2内で停止していることを示している。初期値は1に設定されている。
矯正判定フラグFEXPは、停止時膨張行程気筒12Bの燃焼によってピストン停止位置を矯正する場合を示すものであり、0の場合には、矯正処理がない場合(すなわち、ピストン13は未燃状態である場合)、1の場合には、矯正処理を実行し、矯正動作に成功した場合、2の場合には、矯正処理を実行し、矯正に失敗した場合(失火)である。初期値は0に設定されている。
逆転判定フラグFREVは、停止時圧縮行程気筒12Aの燃焼による逆転動作に成功したか否かを識別するフラグであり、0の場合には、逆転動作がない場合、1の場合には、逆転動作に成功した場合、2の場合には、逆転動作を行い、失火した場合を示すものである。初期値は0に設定されている。
再始動判定フラグFRSは、再始動後に2番目の圧縮行程を迎えた気筒が圧縮上死点を超えたか否かを判定するフラグであり、0の場合は、判定前の状態、01の場合は、停止時膨張行程気筒において、逆転から正転のための点火に成功した状態、02の場合は、停止時膨張行程気筒において、逆転から正転のための点火に失敗した状態、11の場合は、停止時膨張行程気筒での燃焼終了後、所定タイミングで検出されたエンジン回転速度Neが所要の速度以上であった状態(すなわち、最初の圧縮上死点を越え得る状態)、12の場合は、停止時膨張行程気筒での燃焼終了後、所定タイミングで検出されたエンジン回転速度Neが所要の速度未満であった状態(すなわち、最初の圧縮上死点を越え得ない状態)、21の場合は、最初の圧縮上死点を越えた後、所定の判定タイミングにおいてエンジン本体1が2番目の圧縮上死点を超えた状態、22の場合は、最初の圧縮上死点を越えた後、所定の判定タイミングにおいて、2番目の圧縮上死点を超えなかった場合を示すものである。初期値は0である。
図13は再始動制御のメインフローを示すフローチャートである。
図13を参照して、本実施形態のエンジン本体1の再始動制御は、上述したようにエンジン本体1を自力で始動させることを基本としているが、フェールセーフ機能として、スタータモータ36を併用する場合のみならず、最初からスタータモータ36を併用する場合も含められている。
このフローでは、再始動条件が成立するか否かをコントロールユニット2が最初に判定する(ステップS60)。この再始動条件とは、停車状態から発進するためにブレーキが解除された場合やアクセル操作等が行われた場合、エアコン等の動作のためにエンジンの運転が必要になった場合等である。再始動条件が成立すると、エンジン本体1が停止しているか否かが判定される(ステップS61)。仮にエンジンが停止していない状態でアクセルが踏み込まれた場合、その時点でのエンジン回転速度Neが、所定の許容回転速度Neminに達しているか否かが判定される(ステップS62)。このフローで仮にエンジンが所定の回転速度に達していない場合には、図8、図9で示したフローチャートが実行され、エンジンが停止するのを待機し、許容回転速度以上であれば、そのまま通常運転に切り変えて(ステップS63)、処理を終了する。
次にステップS61において、エンジン本体1が停止していると判定された場合、コントロールユニット2は、メモリから停止位置判定フラグFSTを読み出し、エンジン本体1の停止状態を識別する(ステップS64)。
仮に停止位置判定フラグFSTの値が1であった場合、さらに始動アシストが必要な運転状態であるか否かが判定され(ステップS65)、この判定に基づいて、燃焼再始動制御サブルーチン(ステップS110)、アシスト併用再始動制御サブルーチン(S120)が実行されることになる。また、停止位置判定フラグFSTの値が1以外であった場合、コントロールユニット2は、直ちにアシスト併用再始動制御サブルーチンS120を実行する。
図14から図16は、燃焼再始動制御サブルーチンS110を示すフローチャートである。
まず、コントロールユニット2は、水温、停止時間、吸気温度等から、各気筒12A〜12Dの筒内温度を推定する(ステップS1101)。そして、コントロールユニット2は、検出されたピストン13の停止位置に基づいて停止時圧縮行程気筒12Aおよび停止時膨張行程気筒12B内の空気量を算出する(ステップS1102)。つまり、上記ピストン13の停止位置から停止時圧縮行程気筒12Aおよび停止時膨張行程気筒12Bの燃焼室容積が求められ、また、エンジン停止の際には燃料噴射の停止後にエンジンが数回転してから停止するので停止時膨張行程気筒12Bも新気で満たされた状態にあり、且つ、エンジン停止中に停止時圧縮行程気筒12Aおよび停止時膨張行程気筒12Bの内部は略大気圧となっているので、上記燃焼室容積から新気量が求められることとなる。
次に、コントロールユニット2は、停止位置判定フラグFSTの値を読み取ることにより、ピストン停止位置が、停止時圧縮行程気筒12Aにおける単独燃焼停止範囲R(圧縮上死点前60〜80°CA)のうち、比較的下死点側であるか否かを判定する(ステップS1103)。
比較的空気量が多く、ステップS1103でYESと判定した場合、コントロールユニット2は、ステップS1104に移行して、上記ステップS1102で算出された停止時圧縮行程気筒12Aの空気量に対してλ(空気過剰率)>1なる空燃比(例えば空燃比=20程度)となるように燃料を噴射させる(1回目の燃料噴射)。この空燃比はピストンの停止位置に応じて予め設定された圧縮行程気筒1回目用空燃比マップM1から求められる。λ>1というリーン空燃比とすることにより、比較的停止時圧縮行程気筒12A内の空気量が多いときであっても、逆転方向のための燃焼エネルギーが過多となることなく、逆転し過ぎる(停止時圧縮行程気筒12Aにおいて、下死点側に動いたピストン13が下死点を通過して、吸気行程まで逆転方向してしまう)ことを防止している。
一方、比較的空気量が少なく、ステップS1103でNOと判定した場合、コントロールユニット2は、ステップS1105に移行して、ステップS1102で算出された停止時圧縮行程気筒12Aの空気量に対してλ≦1なる空燃比となるように燃料を噴射させる(1回目の燃料噴射)。この空燃比はピストンの停止位置に応じて予め設定された停止時圧縮行程気筒12Aの1回目用空燃比マップM2から求められる。λ≦1という理論空燃比ないしはそれよりリッチ空燃比とすることにより、比較的停止時圧縮行程気筒12A内の空気量が少ないときであっても、逆転方向のための燃焼エネルギーを充分得ることができる。
次に、コントロールユニット2はステップS1106に移行し、停止時圧縮行程気筒12Aへの1回目燃料噴射から気化時間を考慮して設定した時間の経過後に、当該気筒に対して点火を行う。そして、点火してから所定時間TLT内にクランク角センサ30、31のエッジ(クランク角信号の立ち上がり又は立ち下がり)が検出されたか否かにより、コントロールユニット2はピストン13が動いたか否かを判定する(ステップS1107)。
このステップS1107において、YESと判定されてピストン13が動いたことが確認すると、コントロールユニット2は、逆転判定フラグFREVを1に更新し(ステップS1108)、次のステップに進む。
他方、ステップS1107において、NOと判定されて失火によりピストン13が動かなかったことを確認した場合には、コントロールユニット2は、点火後の経過時間Tが所定時間TLTだけ経過していないかどうかを判断し(ステップS1109)、経過していない場合には、停止時圧縮行程気筒12Aに対して再点火を繰り返し行う(ステップS1110)。他方、ステップS1109において、点火後の経過時間Tが所定時間を経過してしまった場合には、コントロールユニット2は逆転判定フラグFREVを2に更新し(ステップS1111)、ステップS120のアシスト併用再始動における始動時正転制御サブルーチンS220に移行する。
図15を参照して、ステップS1107において、YESと判定されてピストン13が動いたことが確認され、逆転判定フラグFREVが更新されると、コントロールユニット2は、ピストン停止位置およびステップS1101で推定した筒内温度に基づいて、停止時膨張行程気筒12Bに対する分割燃料噴射の分割比(前段噴射(1回目)と後段噴射(2回目)との比率)を算出する(ステップS1112)。停止時膨張行程気筒12Bにおけるピストン停止位置が下死点寄りであるほど、また筒内温度が高いほど、後段の噴射比率を大きくする。
次に、コントロールユニット2は、ステップS1102で算出した停止時膨張行程気筒12Bの空気量に対して所定の空燃比(λ≦1)となるように燃料噴射量を算出する(ステップS1113)。この際の空燃比はピストンの停止位置に応じて予め設定された膨張行程気筒用空燃比マップM3から求められる。
次に、コントロールユニット2は、ステップS1112で算出された分割比とステップS1113で算出された停止時膨張行程気筒12Bへの燃料噴射量とによって、停止時膨張行程気筒12Bに対する前段(1回目)の燃料噴射量を算出し、噴射する(ステップS1114)。
次に、コントロールユニット2は、ステップS1101で推定された筒内温度に基づき、停止時膨張行程気筒12Bに対する後段(2回目)の燃料噴射タイミングを算出する(ステップS1115)。この2回目の噴射タイミングは、ピストン13が上死点側への移動(エンジンの逆転方向)を開始した後の、筒内空気が圧縮されている時期であるとともに、噴射燃料の気化潜熱が圧縮圧力を効果的に減少させる(ピストン13を可及的に上死点へ近づける)ように、且つこの2回目の噴射燃料が点火時期までに気化する時間が可及的に長くなるように設定される。
次に、コントロールユニット2は、ステップS1115で算出された2回目の噴射タイミングの燃料噴射量を算出し、燃料噴射弁16に算出した量の燃料を噴射させる(ステップS1116)。この停止時膨張行程気筒12Bへの2回目の燃料噴射後、コントロールユニット2は、所定のディレー時間経過後に点火プラグ15を駆動する(ステップS1117、S1118)。所定のディレー時間はピストンの停止位置に応じて予め設定された膨張行程気筒点火ディレーマップM4から求められる。この点火による停止時膨張行程気筒12Bでの初回燃焼により、エンジンは逆転方向から正転方向に転ずる。従って停止時圧縮行程気筒12Aのピストン13は上死点側に移動し、内部のガス(ステップS1106の点火によって燃焼した既燃ガス)を圧縮し始める。
ステップS1118による停止時膨張行程気筒12Bでの点火後、コントロールユニット2は、再度、点火してから所定時間TLT内にクランク角センサ30、31のエッジ(クランク角信号の立ち上がり又は立ち下がり)が検出されたか否かにより、ピストン13が動いたか否かを判定する(ステップS1119)。このステップS1118において、YESと判定されてピストン13が動いたことを確認すると、コントロールユニット2は、停止位置判定フラグFSTを01に設定し、次のステップに移行する(ステップS1120)。
他方、ステップS1119において、NOと判定されて失火によりピストン13が動かなかったことを確認した場合には、コントロールユニット2は、点火後の経過時間Tが所定時間TLTだけ経過していないかどうかを判断し(ステップS1121)、経過していない場合には、停止時圧縮行程気筒12Aに対して再点火を繰り返し行う(ステップS1122)。ここで、ステップS1121において、点火後の経過時間Tが所定時間を経過してしまった場合には、コントロールユニット2は、停止位置判定フラグFSTを02に設定し、ステップS120のアシスト併用再始動における始動時正転制御サブルーチンS220に移行する。
次に、図16を参照して、ステップS1119において、YESと判定されてピストン13が動いたことが確認されると、コントロールユニット2は、停止時圧縮行程気筒12Aに対し、燃料気化時間を考慮に入れた量の2回目の燃料を燃料噴射弁16に噴射させる(ステップS1124)。この際の燃料噴射量は、1回目の噴射量と合計した量に基づく全体の空燃比が可燃空燃比(下限は7〜8)よりもさらにリッチ(例えば6程度)になるように、ピストンの停止位置に応じて予め設定された停止時圧縮行程気筒12Aへの2回目用空燃比マップM5から求められる。この停止時圧縮行程気筒12Aへの2回目の噴射燃料の気化潜熱によって、停止時圧縮行程気筒12Aの1回目の圧縮上死点付近の圧縮圧力が低減するので、当該1回目の圧縮上死点を容易に越えることができる。
なお、この停止時圧縮行程気筒12Aへの2回目の燃料噴射は、専ら筒内の圧縮圧力を低減させるためになされるものであって、これに対する点火、燃焼は行われない(可燃空燃比よりもリッチなので自着火も起こらない)。この不燃燃料は、その後、排気通路22の触媒37において吸蔵されている酸素と反応し、無害化される。
次に、上述したように、停止時圧縮行程気筒12Aでの2回目の噴射燃料は燃焼しないので、停止時膨張行程気筒12Bでの最初の燃焼に続く次の燃焼は、停止時吸気行程気筒12Cでの燃焼である。停止時吸気行程気筒12Cのピストン13が2回目の圧縮上死点を越えるためのエネルギーとして、停止時膨張行程気筒12Bにおける初回燃焼のエネルギーの一部が充てられる。つまり停止時膨張行程気筒12Bにおける初回燃焼のエネルギーは、停止時圧縮行程気筒12Aが1回目の圧縮上死点を乗り超えるためと、その後、停止時吸気行程気筒12Cが2回目の圧縮上死点を越えるためとの両方に供される。
従って、円滑な始動のためには停止時吸気行程気筒12Cが2回目の圧縮上死点を越える際の負荷が小さいことが望ましい。その場合には、小さなエネルギーで2回目の圧縮上死点を超えることができる。以下のフローは、次の停止時吸気行程気筒12Cでの燃焼を行うにあたり、可及的に小さなエネルギーで2回目の圧縮上死点を越えるための制御である。
まず、コントロールユニット2は筒内空気密度を推定し、その推定値から停止時吸気行程気筒12Cの空気量を算定する(ステップS1125)。次にコントロールユニット2は、ステップS1101で推定した筒内温度に基づいて、自着火防止のための空燃比補正値を算出する(ステップS1126)。すなわち自着火が起こると、その燃焼によって2回目の圧縮上死点に至る前にピストン13を下死点側に押し戻す力(逆トルク)が発生する。これはその分2回目の圧縮上死点を越えるためのエネルギーを多く消費するので望ましくない。そこでこの逆トルクを抑制するために空燃比をリーン寄りのリッチに補正し、自着火が起こらないようにするのである。
次に、コントロールユニット2は、ステップS1125で算定した停止時吸気行程気筒12Cの空気量と、ステップS1126で算出した空燃比補正値を考慮した空燃比とから、停止時吸気行程気筒12Cへの燃料噴射量を算出する(ステップS1127)。
そして停止時吸気行程気筒12Cに対する燃料噴射が実行される。この燃料噴射は、その気化潜熱によって圧縮圧力が低減するように(つまり2回目の圧縮上死点を越えるための必要エネルギーを低減するように)、圧縮行程の後期まで遅延してなされる(ステップS1128)。その遅延量は、エンジンの自動停止期間、吸気温度、エンジン水温等に基いて算出される。
他方、コントロールユニット2は、ステップS1119において、クランク角センサ30、31のエッジを検出したタイミングを起点として検査タイミングを算出し(ステップS1129)、このタイミングに至るのを待機する(ステップS1130)。
次いで、算出された検査タイミングにおけるエンジン回転速度Ne(検査時エンジン回転速度Ne)Neが所定の必要エンジン回転速度Ne(例えば200rpm)を下回っていないかどうか判定する(ステップS1130)。この判定で、検査時エンジン回転速度Neが必要エンジン回転速度Ne以上である場合(ステップS1131でYES)、コントロールユニット2は、2回目の圧縮上死点を超えると判断し、再始動判定フラグFRSの値を11に更新する(ステップS1132)。他方、ステップS1130の判定で、必要エンジン回転速度Neに満たないと判定した場合には、再始動判定フラグFRSを12に更新し(ステップS1133)、スタータモータ併用駆動サブルーチン(ステップS220)に移行する。
次に図17を参照して、コントロールユニット2は、エンジンが2番目の圧縮上死点を超えるのを待機する(ステップS1134)。このステップにおいて、2番目の圧縮上死点を超えた場合には、コントロールユニット2は、再始動判定フラグFRS の値を21に更新し(ステップS1135)、所定タイミングで点火プラグ15をスパークさせる(ステップS1136)。他方、仮にエンジンが回転速度による判定にも拘わらず、2番目の圧縮上死点を超えることができなかった場合には、コントロールユニット2は、再始動判定フラグFRSの値を22に更新し(ステップS1137)、スタータモータ併用駆動サブルーチン(ステップS220)に移行する。このように本実施形態では、停止時吸気行程気筒12Cへの点火時期を2回目の圧縮上死点以降に遅延しているので、逆トルクの発生を抑制することが可能になる。また停止時吸気行程気筒12Cにおいて、2回目の圧縮上死点まではその圧縮圧力を小さくして上死点を越えやすくし、上死点を過ぎたタイミングで燃焼エネルギーによる正転方向のトルクが発生するようになる。そして、2回目の圧縮上死点移行においては、再始動開始後、停止時排気行程気筒12Dが圧縮行程を迎えることになる。この停止時排気行程気筒12D移行の制御については、メインルーチンに復帰し、通常制御によって吸気行程で燃料を噴射し、圧縮上死点経過前に点火することにより、高いトルクを得るようにしている。
次に、図18を参照して、アシスト併用再始動制御サブルーチンについて説明する。
まず、コントロールユニット2は、アシスト併用再始動制御サブルーチンにおいては、停止位置判定フラグFSTを参照する(ステップS1201)。この停止位置判定フラグFSTの値が初期値(=1)である場合、コントロールユニット2は、始動時逆転制御サブルーチン(ステップS210)を実行する。この始動時逆転制御サブルーチン(ステップS210)は、エンジン本体1を正転させる前の逆転動作であり、その内容は、スタータモータ36を併用するための処理(ステップS1109、S1111)が省略されている他は、実質的に上述した燃焼再始動制御サブルーチン(ステップS110)におけるステップS1101から1108まで同じであるので、その詳細については説明を省略する。
他方、ステップS1201において、停止位置判定フラグFSTの値が1初期値(=0)以外である場合には、コントロールユニット2は、エンジン水温、停止時間(自動停止からの経過時間)、吸気温度などから筒内温度を推定し(ステップS1202)、推定された筒内温度が所定温度以上であるか否か、すなわち温間(warm-up)であるか、冷間(cold-start)であるかを判定する(ステップS1203)。仮にステップS1203において、エンジン本体1の運転状態が温間であると判定された場合、コントロールユニット2は、さらに停止位置判定フラグFSTを参照し(ステップS1204)、停止位置判定フラグFSTの値が2であると判定した場合、コントロールユニット2は、ピストン位置矯正制御サブルーチンを実行し(ステップS200)、その後、始動時正転制御サブルーチン(ステップS220)を実行し、メインルーチンに復帰して通常運転制御を実行する。
他方、ステップS1203において、冷間であると判定された場合、或いは、ステップS1204において、停止位置判定フラグが3から5であると判定された場合、コントロールユニット2は、ピストン位置矯正制御200をバイパスして、始動時正転制御サブルーチン(ステップS220)を実行する。
図19は、ピストン位置矯正制御サブルーチンS210のフローチャートである。
上述したように、ピストン13の停止位置が不適切であると、圧縮行程を迎える気筒で自着火が発生しやすくなる。他方、再始動制御に先立ってピストン13を矯正することができれば、自着火を来すことなく、再始動制御を成功させることが可能になる。ここで、ピストン13の停止位置を矯正する方法としては、スタータモータ36でエンジン本体1を直接駆動することも考えられる。しかし、その場合には、停止しているエンジン本体1を駆動するときの騒音が大きくなり、操縦者に不快感を与えるおそれがある。しかも、下死点側に停止している停止時圧縮行程気筒のピストンを上死点側に駆動するとなると、吸気弁19、排気弁20のカムの反力を受けてスタータモータ36がロックするおそれもある。そこで、本実施形態では、停止時膨張行程気筒12Bを燃焼させることにより、ピストン13の位置を変更し、自着火の防止を図ることとしている。
図19を参照して、このサブルーチンS200が実行されると、コントロールユニット2は、停止位置に応じて、停止時膨張行程気筒12Bに対する燃料噴射量を制御マップM20に基づいて設定する(ステップS2001)。
次に、コントロールユニット2は、停止時膨張行程気筒12Bに燃料を噴射する(ステップS2002)。その後、燃料の気化時間を考慮した所定時間経過後に停止時膨張行程気筒12Bに点火する(ステップS2003)。ここで、停止時膨張行程気筒12Bでは、燃焼速度を促進するため、多点点火を実行することとしている。そのため、本実施形態では、点火回数NIgをカウントし(ステップS2004)、カウントされた点火回数NIgが所定の必要点火回数NIg_endに至ったか否かを判定し(ステップS2005)、必要点火回数NIg_endに至らなかった場合には、再点火して(ステップS2006)ステップS2004にリターンし、必要点火回数NIg_endに至った場合には、最後に点火してから所定時間TLT内にクランク角センサ30、31のエッジ(クランク角信号の立ち上がり又は立ち下がり)が検出されたか否かにより、ピストン13が適正範囲に移動したか否かを判定する(ステップS2007)。このステップS2007において、YESと判定した場合には、矯正判定フラグFEXPの値を1に変更し(ステップS2008)、メインルーチンに復帰する。
他方、ステップS2007において、NOと判定されて失火によりピストン13が動かなかったことが確認された場合には、コントロールユニット2は、点火後の経過時間Tが所定時間TLTだけ経過していないかどうかをさらに判断し(ステップS2009)、経過していない場合には、停止時膨張行程気筒12Bに対して再点火を繰り返し行う(ステップS2010)。他方、ステップS2009において、点火後の経過時間Tが所定時間を経過してしまった場合には、コントロールユニット2は、矯正判定フラグFEXPの値を2に変更し(ステップS2011)メインルーチンに復帰する。
図20および図21は、始動時正転制御サブルーチンS220を示すフローチャートである。
図20を参照して、始動アシスト併用再始動制御サブルーチンS120内において、始動時正転制御サブルーチンS220が実行されると、スタータモータ駆動制御サブルーチンS240が並行して実行される。
このスタータモータ駆動制御サブルーチンS240と並行して、コントロールユニット2は、停止位置判定フラグFSTに基づき、停止時膨張行程気筒12Bに対する燃焼の可否を判定する(ステップS2201)。具体的には、停止位置判定フラグFSTの値を読み取り、値が1、3、または4の何れかの場合には次のステップS2202に進み、これらの何れにも該当しない場合には、停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼と、停止時吸気行程気筒12Cでの燃焼をも中止するようにしている(ステップS2203、S2206)。
但し、コントロールユニット2は、ステップS2203で停止時膨張行程気筒12Bへの燃料噴射を中止した後、反転判定フラグFREVの値を参照し、当該反転判定フラグFREVの値が2以外であるか否かを判定する(ステップS2204)。
ピストン位置が適切で、逆転動作を実行した場合でも、この逆転動作で失火し、ステップS1111が実行された場合(逆転判定フラグFREVが2の場合)、未燃燃料が停止時圧縮行程に残っているため、そのままの状態で正転動作を実行すると、温間時には停止時圧縮行程気筒12Aで自着火を来たすおそれがある。そこで、ステップS2204で反転判定フラグFREVの値を参照し、当該反転判定フラグFREVの値が2である場合には、停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼を中止する場合であっても、停止時圧縮行程気筒12Aに対して追加燃料を噴射し、停止時圧縮行程気筒12Aの空燃比をオーバーリッチに設定して、自着火を防止することとしているのである。
ステップS2201において、停止位置判定フラグFSTの値が1の場合は、コントロールユニット2は、自動停止の際、ピストン13が単独燃焼停止範囲Rにあるので、逆転動作の後、正転動作を行うためにこの時点で停止時膨張行程気筒12Bを燃焼する必要のある場合である。停止位置判定フラグFSTの値が3の場合は、ピストン13が併用燃焼停止範囲A1、A2にあって、スタータモータ36でエンジン本体1を駆動することにより停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼が可能な場合である。停止位置判定フラグFSTの値が4の場合は、ピストン13が燃焼再始動不能範囲NG1、NG2にあるものの、スタータモータ36でエンジン本体1を駆動することにより、ピストン13を適正停止位置に変位させ、その後、停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼が可能な場合である。従って、これらの場合には、他の条件を満たすことで、停止時膨張行程気筒12Bに燃料を噴射し、燃焼によるトルクを得るようにしているのである。
これに対し、ステップS2201において、停止位置判定フラグFSTの値が2の場合は、上述したピストン位置矯正制御サブルーチン(ステップS200)が実行されているので、停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼は実行しないようにしている。また、停止位置判定フラグFSTの値が5の場合は、ピストン13が図4で示したθ0からθ1の間にあるので、停止時膨張行程気筒12Bに燃料を噴射しても気化霧化するまでに排気弁20が開いてしまい、トルクを得ることができなくなる。従ってこの場合でも、停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼は実行しないようにして、無駄な燃料噴射/点火動作を回避しているのである。
次に、ステップS2201において、停止位置判定フラグFSTの値が1、3、または4の何れかの場合、コントロールユニット2は、再始動判定フラグFRSを参照する(ステップS2202)。ステップS2202において、再始動判定フラグFRSの値が0以外の値の場合、停止時膨張行程気筒12Bでは、燃焼再始動制御サブルーチンS110において、既に燃焼が実行されているか、失火が生じている場合である。停止時膨張行程気筒12Bが既燃である場合には、燃料を噴射して点火しても、新気がないためトルクを出力できる燃焼を実行することはできない。また、停止時膨張行程気筒12Bで失火が生じている場合には重ねて燃料を噴射してもオーバーリッチとなるため、失火するおそれが大きい。そこで再始動判定フラグFRSの値が0以外の値の場合には、当該気筒での燃焼を中止しているのである。
仮にステップS2202での判定がYESの場合、停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼制御サブルーチンS230が実行される。他方、ステップS2202での判定がNOである場合、停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼は中止される。なお、燃焼制御サブルーチンS230の実行内容は、燃料噴射タイミングが、スタータモータ36によってピストン13が駆動された後になる点と、スタータモータ36を併用するための処理(ステップS1121、S1123)が省略されている他は、実質的に図20で説明した停止時膨張行程気筒12Bの燃料噴射制御と同じであるので、その詳細については説明を省略する。
ステップS230が実行された場合、或いはステップS2204において反転判定フラグFREVの値が2である場合には、コントロールユニット2は、燃料気化霧化時間を考慮し、停止時圧縮行程気筒12Aに燃料を噴射させる(ステップS2207)。
他方、ステップS2205で停止時圧縮行程気筒12Aへの燃料噴射が中止された場合、コントロールユニット2は、再度、停止位置判定フラグFSTの値を参照する(ステップS2208)。参照された停止位置判定フラグFSTの値が12または22の場合、コントロールユニット2は、停止時吸気行程気筒12Cへの燃料噴射をも中止する(ステップS2209)。停止位置判定フラグFSTの値がこれら12または22の場合には、既に停止時吸気行程気筒12Cでの燃焼が実行されているからである。
図21を参照して、次に、ステップS2207を実行することにより停止時圧縮行程気筒12Aに燃料が噴射された場合、またはステップS2208で停止時吸気行程気筒12Cでの燃料噴射が実行前であることを判定した場合、コントロールユニット2は、停止時吸気行程気筒12Cの筒内空気密度を推定し、その推定値から停止時吸気行程気筒12Cの空気量を算定する(ステップS2220)。次に、ステップS2101で推定した筒内温度に基づいて、自着火防止のための空燃比補正値を算出する(ステップS2221)。
次に、ステップS2220で算定した停止時吸気行程気筒12Cの空気量と、ステップS2221で算出した空燃比補正値を考慮した空燃比とから、停止時吸気行程気筒12Cへの燃料噴射量を算出する(ステップS2222)。
そして停止時吸気行程気筒12Cに対する燃料噴射を行うが、この燃料噴射は、その気化潜熱によって圧縮圧力が低減するように、圧縮行程の後期まで遅延してなされる(ステップS2223、S2224)。その遅延量は、エンジンの自動停止期間、吸気温度、エンジン水温等に基づいて算出される。
次いで、コントロールユニット2は、再始動判定フラグFRSを参照し、値が22であるか否かを判定する(ステップS2225)。仮に停止時吸気行程気筒12Cが最初に圧縮行程を迎えた時点で、再始動判定フラグFRSの値が22であった場合、既に燃焼再始動制御S110において、再始動制御が実行されており、その結果、2番目の圧縮上死点を超えることができなかったわけであるから(図17参照)、その場合には、最も自着火が発生しやすい停止時吸気行程気筒12Cにおいて、自着火防止対策を講じる必要がある。かかる自着火防止対策として、本実施形態では、回転速度の影響について配慮している。すなわち、回転速度が低い場合には、熱伝導時間が長くなり、温間再始動時には、停止時吸気行程気筒12Cの筒内が高温状態になり、燃料の噴射タイミングを上述のように遅延させたとしても、自着火が生じやすい状況になっている。
そこで、本実施形態では、クランキング用空燃比と回転速度のマップM14をコントロールユニット2のメモリに記憶しておき、このマップM14を参照しながら、エンジン回転速度Neに応じて、空燃比がリッチになるように追加燃料の噴射量を設定し(ステップS2226)、スタータモータ36のピニオンギア36dがリングギア35と噛合するタイミングを検出し(ステップS2227)、噛合時に停止時吸気行程気筒12Cに追加燃料を噴射することとしている(ステップS2228)。後述するように、スタータモータ36のピニオンギア36dがリングギア35に噛合するタイミングは、ピストン13が上死点を超えずにクランクシャフト3が逆転し、その後、エンジン回転速度Neが0に落ちた直後の時点であるので、このタイミングに追加燃料を噴射することにより、再度圧縮行程にある停止時吸気行程での気化霧化が促進され、自着火を回避することが可能となるのである。
その後は、停止時吸気行程気筒12Cが圧縮上死点を超えたか否かを判定し(ステップS2229)、超えた場合には、停止時圧縮行程気筒12Aに点火して(ステップS2230)、元のルーチンに復帰する。
上述したように、アシスト併用再始動制御サブルーチン(ステップS220)においては、燃焼再始動制御(ステップS110)が実行できない場合、または燃焼再始動制御(ステップS110)の実行中にて燃焼再始動に不具合を来した場合には、表2の通り制御される。
表2を参照して、まず、停止位置判定フラグFSTの値が5の場合は、ピストン13が図4で示したθ0からθ1の間にあるので、停止時膨張行程気筒12Bに燃料を噴射しても気化霧化するまでに排気弁20が開いてしまい、トルクを得ることができなくなる。従ってこの場合には、停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼は実行しないようにして、無駄な燃料噴射/点火動作を回避している。
次に、逆転判定フラグFREVが2の場合は、再始動後、逆転時に失火した場合であるので(図14参照)、この場合には、停止時吸気行程気筒12Aに自着火防止用の燃料を噴射して、いわゆる温間ロックを回避するようにしている(図20参照)。
また、再始動判定フラグFRSの値が02の場合は、停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼に失敗した場合であるので(図15のステップS1123)、この場合には図20の制御により、停止時膨張行程気筒12Bへの燃料噴射(従って点火)が、ステップS2202によって中止される一方、停止時圧縮行程気筒12Aに対しては、スタータモータ36による始動時の筒内圧力低減のための燃料が噴射され、停止時吸気行程気筒12Cに対しては、燃料噴射が実行される。
また、停止位置判定フラグFSTの値が12の場合には、停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼に成功したものの、トルクが充分に出力されなかった場合である(図16のステップS1133)。この場合には、既に停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼が終了し、停止時圧縮行程気筒12Aへの燃料噴射が実行されているのであるが、逆転制御(ステップS1101からS1111)が実行されているので、停止時圧縮行程気筒12Aでは、自着火の問題が生じ得ず、温間ロックが生じるおそれはない。そこで、図20のステップS2202の判定により、停止時膨張行程気筒12Bおよび停止時圧縮行程気筒12Aへの燃料噴射が中止されるとともに、ステップS2208の判定により、停止時吸気行程気筒12Cへの燃料噴射も中止される(図20参照)。
さらに、停止位置判定フラグFSTの値が22の場合には、停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼に成功したものの、2番目の圧縮上死点を越えることができなかった場合である(図16のステップS1133)。この場合には、既に停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼が終了し、停止時圧縮行程気筒12A、停止時吸気行程気筒12Cへの燃料噴射が実行されているので、図20のステップS2202の判定により、停止時膨張行程気筒12Bおよび停止時圧縮行程気筒12Aへの燃料噴射が中止されるとともに、ステップS2208の判定により、停止時吸気行程気筒12Cへの燃料噴射も中止される。
次に、図22、図23に基づき、スタータモータ駆動制御サブルーチンS240について説明する。
図22はスタータモータ駆動制御サブルーチンS240のフローチャートであり、図23は、同サブルーチンを実行した場合のタイミングチャートである。
各図を参照して、コントロールユニット2がスタータモータ駆動制御サブルーチンS240を実行すると、まず、現在のエンジン回転速度Neが検出され、0であるか否かが判定される(ステップS2401)。仮にエンジン回転速度Neが0の場合、コントロールユニット2は、直ちにスタータモータ36を駆動すべきタイミングtoutを決定する(ステップS2402)。
他方、エンジン回転速度Neが0ではない場合、コントロールユニット2は、エンジン回転速度Neが減速して最初に0になるクランク角度CA0を検出するのを待機する(ステップS2403)。次いで、エンジン回転速度Neが0の時のクランク角度CA0を起点として、当該クランク角度CAが、それ以降エンジン回転速度Neが減速する所定のクランク角度CA1に到達するのを待機する(ステップS2403)。これは、エンジン回転速度Neが正転から逆転に転じて0になった時点では、信号の検出が困難になるので、回転速度Neが0になり、その後、逆向きに回転していることを検出できるタイミングTCA1を基準とすることにより、確実な制御を図っているのである。
クランク角度CAがCA1に到達すると、コントロールユニット2は、ピストン13の位置がCA1に到達したタイミングTCA1をアシスト起算タイミングとして演算の基準とする(ステップS2404)。
次いで、アシスト基準タイミングTCA1から起算して、エンジン回転速度Neが逆転方向に転じてから再び正転方向に転じた後、0になるスタータモータ36の0速度タイミングtpを算出し(ステップS2405)、さらに0速度タイミングtpに基づき、スタータモータ36の噛合タイミング領域Tsが算出される(ステップS2406)。この噛合タイミング領域Tsは、採用されているスタータモータ36の仕様に基づき、予めコントロールユニット2の記憶領域に記憶されているスタータモータ36の仕様データに基づいて決定される。本実施形態では、リングギア35が停止しているときに、当該リングギア35と逆方向に約60rpmの速度で駆動モータ36aがピニオンギア36dを逆方向に駆動しながら噛合させる仕様であるため、噛合タイミング領域Tsは、エンジン回転速度Neが0rpmから60rpmとなる範囲に設定される。
さらに本実施形態では、バッテリ電圧からスタータモータ36の駆動遅れ時間Tdyを算出する(ステップS2407)。本実施形態では、駆動モータ36aがピニオンギア36dを逆方向に駆動しながら噛合させる仕様であるため、駆動信号の入力を受けてから、両ギア35、36aが噛合するまでの間にタイムラグ(すなわち、駆動遅れ時間Tdy)が生じることとなる。そこで、このステップS2407において、駆動遅れ時間Tdyを織り込んだタイミングtoutを算出することとしている。
ステップS2407の後、コントロールユニット2は、上記演算に基づき、タイミングtoutを演算する(ステップS2408)。なお、ステップS2402における演算においても、ステップS2405から2408と同様の演算を回転速度0として、実行している。
そして、ステップS2402またはステップS2408の後、コントロールユニット2は、タイミングtoutのところで、駆動信号を出力し、スタータモータ36を駆動する(ステップS2409)。この結果、スタータモータ36のピニオンギア36dが駆動モータ36aに駆動されてリングギア35に噛合し、クランクシャフト3は、スタータモータ36からの駆動力でアシストされ、メインフローにリターンする。
燃焼再始動またはスタータモータ併用により、始動開始から2回目の圧縮上死点を超えた後は、回転速度が所定回転数以上になったか否かを検出し(ステップS2410)、所定の回転速度が検出された場合には、スタータモータ36の駆動を解除して処理を終了する(ステップS2411)。
図24は、停止時における停止時膨張行程気筒12Bのピストン停止位置が、燃焼再始動可能範囲(図4において、θ1からθ4までの範囲)から外れている場合の燃料噴射タイミングを示したタイミングチャートである。
図24に示すように本実施形態では、停止時における停止時膨張行程気筒12Bのピストン停止位置が、燃焼再始動可能範囲Aから外れている場合、すなわち停止位置判定フラグFSTの値が4または5の場合には、図26で示した制御により、図24に示すように、停止時圧縮行程気筒12Aおよび停止時膨張行程気筒12Bには燃料が噴射されないので、トルクが充分に生成されないピストン位置での燃料噴射が抑止され、未燃成分の排出を抑制し、燃費の向上を図ることが可能になる。また、ピストン停止位置に基づいて、燃料の噴射タイミングとスタータモータ36の併用とを決定しているので、いわゆる自動停止後にエンジン本体1を強制燃焼させる自動停止システムでの再始動のみならず、モータとエンジン本体1を併用するハイブリッド車においても本実施形態を適用することが可能になる。
また本実施形態では、図4で示した燃焼再始動可能範囲のうち、停止時膨張行程気筒12Bの上死点限界(停止時圧縮行程気筒12Aにおける下死点限界)θ3と同気筒12Aの上死点限界(停止時膨張行程気筒12Bにおける上死点限界)θ2の間に設定される所定範囲を燃焼のみによって再始動可能な単独燃焼停止範囲Rと識別し、残余の燃焼再始動可能範囲をスタータモータ36とエンジン本体1の燃焼とを併用可能な併用燃焼停止範囲A1、A2と識別するように設定されており、ピストン停止位置が併用燃焼停止位置である場合にスタータモータ36を駆動するものである。このため本実施形態では、ピストン停止位置によって、エンジン本体1の燃焼のみによって再始動することが可能な範囲と、始動アシストとエンジン本体1の燃焼が併用される範囲とが識別されるので、ピストン停止位置に応じて、より好適なエンジン本体1の再始動動作を実現することが可能になり、始動時の安定性、迅速性をエンジン本体1の運転状況に応じて可及的に高めることが可能になる。
また本実施形態では、エンジン本体1の停止位置が前記併用燃焼停止範囲と判定された場合であって、停止時圧縮行程気筒12Aにあるピストン停止位置が当該圧縮行程の前半にある時には、前記ピストン13が圧縮行程の中期に駆動されてから燃料を噴射するものである。このため本実施形態では、ピストン13が停止時圧縮行程気筒12Aの前半にずれている場合において、燃焼による再始動が実行される際、スタータモータ36によるエンジン本体1の駆動によって当該ピストン13が燃料噴射に適切な位置に変位した後、燃料が噴射されるので、当該気筒において、より好適な燃焼特性を得ることができ、燃費を向上させることが可能になる。
また本実施形態では、停止時膨張行程気筒12Bのピストン13が前記燃焼再始動可能範囲のうち単独燃焼停止位置Rよりも上死点側(すなわち併用燃焼停止位置A1)にあると判定された場合であって、運転状態が温間停止時であると判定されたときには、当該停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼により各気筒12A〜12Dの停止位置をエンジン始動に好適な位置に矯正するようにコントロールユニット2が構成されており、コントロールユニット2は、各ピストン位置が矯正された後にスタータモータ36を始動制御するものである。このため本実施形態では、エンジン本体1の停止時に再始動条件が成立した際、各気筒12A〜12Dの停止状態が、燃焼再始動に適しているか否かが判定される。仮に各気筒12A〜12Dの停止状態が燃焼再始動に適していないと判定された場合であって、停止時膨張行程気筒12B(または停止時圧縮行程気筒12A)が当該行程の前半にあるときには、停止時膨張行程気筒12Bで燃焼が行われる。この結果、各気筒12A〜12Dは所定量正転する。この正転によってエンジン本体1は、スタータモータ36によるエンジン始動に好適な位置に移動する。ここで、本実施形態では、停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼によってエンジン本体1の各ピストン位置を矯正しているので、この矯正動作によって、自着火が起こりやすい停止時圧縮行程気筒12Aや停止時吸気行程気筒12Cの筒内が大気圧に戻ってしまう結果、スタータモータ36を駆動させた後は、これらの気筒での過度な圧力上昇を抑制することが可能になり、自着火を効果的に防止することが可能になる。コントロールユニット2が停止時膨張行程気筒12Bを燃焼させるタイミングとしては、自動停止条件成立後再始動条件成立前のエンジン本体1停止時であることが好ましい。尤も、自動停止条件成立後のエンジン本体1停止前に再始動条件が成立する場合もあるので、再始動条件が成立するのを待って停止時膨張行程気筒12Bを燃焼させるようにしてもよい。
また本実施形態では、コントロールユニット2は、少なくともスタータモータ36の作動時に、エンジン本体1停止時に圧縮行程にあった気筒に対して燃料を噴射するものである。このため本実施形態では、スタータモータ36によってエンジン本体1が再始動を開始する際、圧縮行程にある気筒に燃料が噴射されるので、気化潜熱で当該圧縮行程にある気筒の筒内圧力が低下し、より確実に自着火を防止することが可能になる。
また本実施形態では、停止時膨張行程気筒12Bのピストン停止位置が前記燃焼再始動可能範囲よりも上死点側に外れていると判定した場合であって所定温度に満たない冷間時であると判定されたときには、停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼を中止するものである。このため本実施形態では、比較的温間ロックが生じやすい温間運転時にのみ停止時膨張行程気筒12Bでの燃焼が実行され、確実に温間ロックが防止されるとともに、温間ロックが生じにくい冷間時には、通常の燃焼再始動またはスタータモータ36によるアシスト駆動が実行されることにより、迅速且つ確実な再始動を実現することが可能になる。
以上説明したように、本実施形態によれば、停止時膨張行程気筒12Bの燃焼による再始動が可能な燃焼再始動可能範囲から外れている場合には、停止時膨張行程気筒12Bと停止時圧縮行程気筒12Aには燃料が噴射されないので、トルクが充分に生成されないピストン位置での燃料噴射が抑止され、未燃成分の排出を抑制し、燃費の向上を図ることが可能になる結果、エンジン本体1の停止状態に応じて好適な再始動制御を実行することにより、安定性や迅速性の向上を図ることができるという顕著な効果を奏する。
上述した実施形態は、本発明の好ましい具体例に過ぎず、本発明は上述した実施形態に限定されない。
次に本発明の別の実施形態について説明する。
エンジン本体1が強制的に停止した場合、停止時膨張行程気筒を燃焼させた後に圧縮行程を迎える気筒(主として停止時吸気行程気筒)で自着火が生じると、その気筒でピストンが大きな反力を受け、ノッキングが生じて再始動に失敗することになる。特に、スタータモータ36を併用して再始動を実行しなければならない場合、スタータモータ36のピニオンギア36dとエンジン本体1のリングギア35の噛合時に自着火が生じると、その逆トルクによって両ギア35、36dがロックしてするおそれもある。そこで本実施形態では、燃焼再始動時の自着火を防止するために、燃料のリークを自着火防止の対策事項としている。本実施形態のように、燃料噴射弁16が燃焼室14に臨む直噴式のエンジンでは、エンジン本体1の停止時に各気筒12A〜12D内では燃料噴射弁16の噴孔からリーク出した燃料が気化して、混合気が形成されている。そして、再始動時に、停止時吸気行程気筒12C内で自着火を生じる場合が考えられる。
図25および図26は停止時吸気行程気筒12Cの圧縮行程において、燃料リーク量QL毎に噴射タイミングと自着火との関係を示すグラフである。なお各図において、Ag1は、自着火が生じなかった範囲、Ag2〜Ag4は、自着火が発生した燃料噴射タイミングの範囲を示しており、Ag2は、上死点経過後20°CAから10°CA、Ag3は、上死点経過後10°CAから0°CA、Ag4は、上死点経過前0°CAから10°CAであることをそれぞれ示している。また図25はサージタンク21b内の温度が75℃のときのグラフであり、図26は100℃のときのグラフである。
図25(A)〜(F)に示すように、燃料リークが全くない場合、燃料噴射タイミングが圧縮行程中期(約96°CA)のところから前半になるほど、自着火が生じやすい範囲Ag4の面積が広くなる傾向がある。他方、同じ燃料噴射タイミングであっても、燃料リーク量QLが多い場合(A/Fで30以下)には、オーバーリッチになるため、かえって自着火は生じにくくなる。さらに、図25の(A)と図26の(A)、並びに図25(C)と図26の(B)を比較して、リーク量QLが同じであっても、吸気温度が高いと、自着火が生じやすくなる範囲Ag4は、広くなる傾向がある。そこで、本実施形態では、リーク量QLに応じて、停止時吸気行程気筒12Cに追加燃料を噴射することにより、自着火の防止を図っている。
図27は燃料リーク量QLを測定する際のタイミングチャートであり、図28は停止中の各気筒12A〜12Dでの燃料リーク量QLを測定するためのフローを示すフローチャートである。
本実施形態のエンジン制御システムでは、エンジン本体1が手動で停止された後、すなわちイグニションスイッチの操作に応じてエンジン本体1が停止(手動停止)されたときに、時間の経過に応じて各気筒12A〜12D内にリークする燃料の量を学習し、この学習結果に基づいて、再始動の際に各気筒12A〜12D内に新たに噴射する燃料の量を補正できるようにしている。
以下に、エンジン本体1の手動停止後に所定の気筒(図示の例では停止時膨張行程気筒12B)の燃料リーク特性を学習する制御の手順を、主に図28のフローチャート図に基づいて説明する。このフローはエンジン本体1の運転状態からスタートし、まず、図略のイグニションスイッチがオフ操作されたかどうか判定する(ステップS41)。そして、オフ操作されていなければ、操作されるまで待機する一方、オフ操作されれば、コントロールユニット2は、各気筒12A〜12Dへの燃料噴射を停止し(ステップS42)、スロットル弁23を所定期間、開くように制御する(ステップS43)。これにより前記自動停止の場合と同様に各気筒12A〜12Dの十分な掃気が行われ、また、排気通路22の触媒37に多量の新気が供給される。
続いて、クランク角センサ30、31からの信号に基づいてエンジン本体1の停止(完全な停止)を確認する(ステップS44)。エンジン本体1が停止するまでは(NO)待機する一方、エンジン本体1の停止が確認されれば(YES)、エンジン運転中の気筒識別の結果から膨張行程で停止する気筒12Bを検出し、前記クランク角信号に基づいてその気筒12Bにおけるピストンの停止位置を検出する(ステップS45)。
続いて、前記停止時膨張行程気筒12Bのピストン停止位置に基づいて、当該気筒12B内の空気量を算出する(ステップS46)。また、ステップS47では、図27(A)に模式的に示すように、設定時間間隔(例えば25ミリ秒間隔)で前記停止時膨張行程気筒12Bの点火プラグ15に通電し(ステップS47)、クランク角センサ30、31からの信号のエッジが検出されたか否かにより、ピストン13が動いたかどうか判定する(ステップS48)。
エンジン本体1の停止後は、各気筒12A〜12Dにおいてそれぞれ燃料噴射弁16の噴孔から少しずつリークする燃料が高温の気筒12内で気化して混合気を形成する。そして、吸気弁19および排気弁20の閉じている停止時圧縮行程気筒12Aや停止時膨張行程気筒12Bにおいては、図27(B)に示すように燃料のリーク量QLが増加するに従って、当該気筒12内の空燃比が徐々にリッチ側に変化してゆき、着火可能な状態になれば、前記の如く繰り返される点火によって混合気に着火し、燃焼することによりピストン13が動いて、クランク角信号が立ち上がることになる(同図(C)のエッジ検出)。
前記停止時膨張行程気筒12B内にリーク出した燃料の量が未だあまり多くなっておらず、当該気筒12B内の空燃比が着火限界よりもリーンであれば、いくら点火しても混合気には着火せず、前記ステップS48の判定はNOとなって、ステップS47にリターンし、点火を継続する。そして、時間の経過とともに停止時膨張行程気筒12B内にリーク出た燃料の量が多くなって、当該気筒12B内の空燃比が着火限界よりもリッチになれば、混合気に着火してピストン13が動き、これによりクランク角信号のエッジが検出されると(ステップS48でYES)、エンジン本体1の停止からの経過時間を計測しているタイマの値を読み込む(ステップS49)。
続いて、前記ステップS46にて求めた停止時膨張行程気筒12B内の空気量と、混合気のリーン側の着火限界に対応づけて予め設定された空燃比(例えばA/Fで40くらい)とに基づいて、停止時膨張行程気筒12B内にリーク出した燃料の量を算出し、この燃料の量と、ステップS49にて読み込んだ計測時間とに基づいて、当該気筒12における燃料リーク量QLの時間変化を推定する(ステップS50)。続いて、ステップS51において、停止時膨張行程気筒12Bの燃料リーク特性テーブルを前記の推定結果により修正して、更新し(ステップS52)、制御終了となる。
ここで、前記の燃料リーク特性テーブルというのは、図27(B)に示されるように、時間の経過に伴って燃料のリーク量QLが増加する様子を、横軸に時間経過を取り、縦軸に燃料のリーク量QLを取って直線乃至曲線のグラフとして表したものである。すなわち、時間当たりの燃料のリーク量QLが略一定であると近似すれば、燃料リーク特性は、図に実線で示すような直線のグラフで表され、そのグラフの傾きが前記推定結果に応じて変更されることになる。なお、時間当たりの燃料のリーク量QLは燃圧の高いときほど多いと考えることもできるので、図に破線で示すような曲線のグラフで表してもよい。そして、こうして気筒12A〜12D毎に修正、更新される燃料リーク特性テーブルからエンジン停止後の経過時間に対応する燃料リーク量QLを読み出せば、該各気筒12内にリーク出した燃料の量を正確に推定することができる。なお、前記のフローでは、エンジン本体1の停止後に膨張行程にある気筒12Bに繰り返し点火して、この気筒12Bにおける燃料リーク特性を推定するようにしているが、この推定は、吸気弁19および排気弁20が閉じている気筒12であれば行うことができるので、圧縮行程にある気筒12Aで行うようにしてもよい。
図28に示した学習制御のフローのステップS42により、イグニションスイッチがオフ操作されたときに各気筒12A〜12Dへの燃料供給を停止して、エンジン本体1を停止させる手動停止手段2dが構成されている。
そして、前記フローのステップS49〜S411により、前記膨張行程気筒12内の空気量と、リーン側の着火限界に対応する設定空燃比とに基づいて、前記着火の判別時点における気筒12内の燃料リーク量QLを算出するとともに、エンジン本体1の停止から前記着火判別時までの時間を計測して、その計測時間と前記燃料リーク量QLとに基づいて当該気筒12の燃料リーク特性(燃料リーク量QLの時間変化特性)を推定し且つ記憶する学習手段2hが構成されている。なお、燃料リーク量QLのデータは、気筒12A〜12D毎に収集され、メモリに記憶されるようになっている。
なお、本実施形態のエンジン制御システムでは、燃料リーク特性の推定をエンジン本体1の手動停止時にのみ行うようにしているが、これに限らず、自動停止等の自動停止のときにも燃料リーク特性を推定することができる。但し、この場合には、上述したように、推定気筒12内の空気が消費され、既燃ガスが発生することで、その後の自力始動が困難になるから、自動停止後の再始動時であっても始動モータによりクランキングを行い、これによりエンジン本体1を確実に始動することが好ましい。また、そのようにエンジン本体1の再始動時にクランキングを行うと、これに伴う振動や騒音が運転者に違和感を与えるおそれがあるので、好ましくは、自動停止のときに燃料リーク特性の推定を行うのは例えば50〜100回に1回(予め設定した回数に1回)程度の割合とすべきである。このように再始動時に時折、燃料リーク特性の推定を行うようにするだけでも、元々、その自動停止の回数が手動停止に比べて格段に多いことから、燃料リーク量QLの学習頻度が大幅に高くなり、これにより、燃料噴射弁16の個体ばらつきやその経年変化を早期に学習して、再始動時の燃料噴射制御に反映させることができる。
次に、リーク量QLを加味した始動制御の手順について説明する。なお以下の説明では、上述した実施形態と同様の事項については、重複する記載を省略し、専ら、変更箇所のみについて説明する。
まず、本実施形態においては、表3に基づくフラグを使用して、制御を実行するようにしている。このフラグもまた、本実施形態の動作を説明する上で論理的に構築されているものであり、必ずしも、プログラム上で設定されていることを要する訳ではない。
リーク量判定フラグFLKは、各気筒のリーク量QLが所定の許容値QLT以内であるか否かを示すフラグであり、0の場合は、判定前の状態、1の場合は、基準範囲内(リーク量QL小)の状態、2の場合は、基準範囲外(リーク量QL大)の状態であることを示すものである。初期値は0である。なお、後述するように、リーク量判定フラグFLKは、停止時圧縮行程気筒12Aと停止時吸気行程気筒12Cとにおいて設定されるので、それらは、添え字「_COM」、「_ITK」でそれぞれ識別されるようになっている。
図29を参照して、本実施形態のエンジン本体1の再始動制御は、ステップS61でエンジン本体1の停止が確認された後、ステップS64の判定に移行する前に、燃料リーク量上の補正制御サブルーチンS100を実行するように構成されている。
図30は、メインルーチンに含まれる燃料噴射量設定制御サブルーチンのフローチャートである。
図30を参照して、燃料噴射量設定制御サブルーチンが実行されると、まず、メモリから停止時圧縮行程気筒のリーク量QLが読み出され(ステップS1001)、基準となる許容値QSTと比較される(ステップS1002)。仮にリーク量QLが許容値QST以内であれば、リーク量判定フラグFLKは、1と設定され(ステップS1003)、許容値QSTを超えている場合には、2と設定される(ステップS1004)。次いで、停止時吸気行程気筒のリーク量QL判定が終了しているか否かが判定され(ステップS1005)、終了している場合には、メインルーチンに戻り、終了していない場合には、メモリから停止時吸気行程気筒のリーク量QLが読み出され(ステップS1001)、ステップS1002にリターンして同様の処理が実行され、メインルーチンに戻る。
図31以下の燃焼再始動制御サブルーチンを参照して、本実施形態における燃焼再始動制御サブルーチンS110では、ステップS1104またはステップS1105での演算に際し、燃料リーク特性テーブルM10に基づいて、燃料リーク量QLに基づく補正がなされるようになっている点が上述した実施形態と異なっている。
次に、図32を参照して、逆転動作から正転動作に移行する際にステップS1112での演算を実行するに当たり、本実施形態では、燃料リーク特性テーブルM10に基づいて、燃料リーク量QLに基づく補正がなされるようになっている。
次に、図33を参照して、始動時正転制御S220を実行するに際し、ステップS230が実行された場合、本実施形態では、コントロールユニット2は、圧縮行程気筒12Aのリーク量判定フラグFLK_COMを参照し、リーク量QLを判定する(ステップS2206)。仮にリーク量判定フラグFLK_COMの値が2である場合、すなわち圧縮行程気筒12Aのリーク量QLが多い場合には、燃料気化霧化時間を考慮し、停止時圧縮行程気筒12Aに燃料を噴射させる(ステップS2207)。他方、図25および図26で説明したように、リーク量QLが比較的少ない場合(ステップS2206においてリーク量判定フラグFLK_COMの値が1である場合)に圧縮行程を迎える気筒に燃料を噴射すると、その燃料噴射によって自着火が生じやすくなる。そこで、ステップS2206において、リーク量QLが少ないと判定された場合(ステップS2206でNOと判定された場合)には、停止時圧縮行程気筒12Aへの燃料噴射を中止することとしている。なおこのステップS2206において、参照されたリーク量判定フラグFLK_COMの値が0である場合、フェールセーフの観点から燃料噴射が実行される。
また、本実施形態では、ステップS2207を実行することにより、停止時圧縮行程気筒12Aに燃料が噴射された場合(ステップS2207)、またはステップS2208で停止時吸気行程気筒12Cでの燃料噴射が実行前であることを判定した場合、コントロールユニット2は、停止時吸気行程気筒12Cに係るリーク量判定フラグFLK_ITKを参照し、その値が1の場合には、停止時吸気行程気筒12Cへの燃料噴射を中止するように設定されている(ステップS2210)。停止時吸気行程気筒12Cは、再始動時に最も自着火が生じやすい気筒であるので、燃料リーク量QLが少ない場合にスタータモータ36を併用する場合は、自着火回避のために停止時吸気行程気筒12Cへの燃料噴射を防止することとしているのである。
以上説明したように、本実施形態では、図33で説明したように、燃料のリーク量QLが比較的少ない状態でスタータモータ36が駆動された場合には、当該スタータモータ36が駆動された後、最初に圧縮行程を迎える気筒に対して燃料がカットされるので、当該気筒において自着火を防止することが可能になる。これは図25および図26で示したように、燃料リーク量QLが比較的少ない場合に圧縮行程を迎える気筒に燃料を噴射すると、その燃料噴射によって自着火が生じやすくなる一方、燃料リーク量QLが比較的多い場合には、燃料噴射によってオーバーリッチとなり、自着火が生じにくくなることに着目して、燃料噴射の是非を燃料リーク量QLに基づいて変更することとしたものである。このような燃料噴射制御により、スタータモータ36を併用して再始動制御を実行する際、スタータモータ36を駆動した後に圧縮行程を迎える気筒において自着火を確実に防止することができるので、温間ロックを回避し、始動性を高めることが可能になる。
また本実施形態では、再始動条件が成立した際、停止時に圧縮行程にあった停止時圧縮行程気筒12Aでの燃焼によってエンジン本体1を逆転させた後、停止時膨張行程気筒12Bにて燃焼を実行するものであり、コントロールユニット2は、停止時に圧縮行程にあった停止時圧縮行程気筒12Bの燃料リーク量QLが前記しきい値未満の場合には、スタータモータ36の作動後に最初に圧縮行程を迎える気筒への燃料噴射を停止し、前記しきい値以上のときは当該気筒の圧縮行程中期に燃料を噴射するものである。このため本実施形態では、最も自着火の生じやすい停止時吸気行程気筒12Cに対しても、所定条件下で燃料がカットされるので、より確実な温間ロックを図ることが可能になる。
また本実施形態では、自動停止時における前記各気筒12A〜12Dのピストン停止位置を識別する機能をコントロールユニット2に持たせ、コントロールユニット2は、停止時に圧縮行程にあった停止時圧縮行程気筒12Aが、前記燃焼再始動可能範囲外(本実施形態では、燃焼再始動不能範囲NG1、NG2)で停止していたときには、リーク量QLに拘わらず当該気筒12Aへの燃料をカットするものである。停止時圧縮行程気筒12Aのピストン位置が燃焼再始動不能範囲NG1、NG2にある場合には、リーク量QLが少なくても自着火が生じにくくなることから、燃料の噴射をカットすることにより、未燃燃料が排出されるのを抑制し、排気性能の向上と自着火防止とを両立させている。
また本実施形態では、コントロールユニット2は、図11で説明した所定時間範囲では、当該エンジン本体1の吸気通路の空気温度が急上昇する運転状態のときに前記所定の温間状態であると判定するものである。このため本実施形態では、例えば、高速運転後のエンジン本体1自動停止時においては、エンジン本体1ルーム内の温度が急上昇するので、吸気通路の空気温度が急上昇する運転状態には、温間状態であると判定して、リーク量QLに基づく燃料噴射の可否を決定することが可能になる。
このように本実施形態においては、燃料リークに起因する自着火を確実に防止することができるので、自動停止システムにおいて、再始動要求があった際にスタータモータ36を併用するに当たり、確実に温間ロックを防止することのできる多気筒4サイクルエンジン本体1の制御装置を提供することができるという顕著な効果を奏する。
上述した実施形態は本発明の好ましい具体例に過ぎず、本発明は上述した実施形態に限定されない。
例えば本発明は、この実施形態のように最初にエンジン本体1を少しだけ逆転させて、停止時膨張行程気筒12の混合気を圧縮した後に点火するようにしたエンジン制御システムだけでなく、最初に停止時膨張行程気筒12に点火して、これによりエンジン本体1を再始動するようにしたものにも適用可能である。
また、スタータモータは、再始動時のトルクを加勢するアシスト手段であってもよく、モータ駆動用車両の駆動用モータであってもよい。
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の変更が可能であることはいうまでもない。