JP5057959B2 - ポリエステル樹脂の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ボトルをはじめとするフィルム、シート成形用などの用途に好適に用いられるポリエステル樹脂の製造方法に関する。
ポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレートは、機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリア性に優れており、ジュース、清涼飲料、炭酸飲料などの飲料充填容器の素材をはじめとしてフィルム、シート、繊維などの素材として好適に使用されている。
このようなポリエステル樹脂は、通常、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸と、エチレングリコールなどの脂肪族ジオールとを原料として製造される。具体的には、まず、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのエステル化反応により低次縮合物(エステル低重合体)を形成し、次いで重縮合触媒の存在下にこの低次縮合物を脱グリコール反応(液相重縮合)させて、高分子量化している。また、飲料充填容器の素材として用いる場合には、通常、固相重縮合を行い、さらに分子量を高めるとともに、飲料の味に悪影響を与えるアセトアルデヒドなどの低分子量副生物を揮散除去している。さらにこのポリエステル樹脂は、例えば射出成形機械などの成形機に供給して中空成形体用プリフォームを成形し、このプリフォームを所定形状の金型に挿入し延伸ブロー成形し、あるいはさらに熱処理(ヒートセット)して中空成形容器に成形される。
このようなポリエステル樹脂の製造方法では、重縮合触媒として、従来アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物などが使用されている。
しかしながら、アンチモン化合物やゲルマニウム化合物などは、該金属の単位重量あたりの重合活性が高くないため、ポリエステル樹脂を工業的に満足する生産速度で製造しようとした場合、比較的高濃度で使用する必要があるのが現状である。
したがって、触媒活性を上げ、金属の使用量を低減することは重要な課題であり、種々の助触媒成分を用いて触媒活性を向上させる検討が行われている。
一般に、金属触媒を用いる化学反応においては配位子を導入して金属を錯体化することが、金属触媒の活性を制御する手法として行われる。ところが、ポリエステルの重縮合においては、ポリエステル樹脂の液相重縮合時の高温(通常250℃以上)、無溶媒の条件下では、通常の金属錯体は分解してしまうため配位子を導入した効果が表れにくい。そのため、ポリエステルの重縮合に関しては、金属錯体触媒の適用が試みられた例は比較的少なかった。
ポリエステル樹脂の重縮合に際して触媒として配位子を金属触媒とともに用いる例としては、二酸化ゲルマニウムとともにこれと錯化合物を形成しうる化合物を用いる例(特許文献1)、二酸化ゲルマニウムとともにこれと錯化合物を形成しうる有機カルボン酸化合物を用いる例(特許文献2)、チタン化合物と、窒素原子、硫黄原子および酸素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子を含んでいる少なくとも2座以上で配位可能な配位化合物との反応生成物を用いる例(特許文献3)などがある。
これらのうち、特許文献1には、二酸化ゲルマニウムとともにこれと錯化合物を形成しうる化合物を触媒に用いることにより、異物が少なく色調および透明性に優れ、結晶化速度変動が少ない成形体を与えるポリエステル樹脂が得られることが示されており、錯化合物を形成しうる化合物として蓚酸、酒石酸、クエン酸が例示されている。しかしながら、重縮合速度については言及がなく、何ら検討されていない。
特許文献2には、二酸化ゲルマニウムとともにこれと錯化合物を形成しうる有機カルボン酸化合物を触媒に用いることにより、異物が少なく色調および透明性に優れ、その内容物に異味異臭を生じない、また結晶化速度変動が少ない成形体を与えるポリエステル樹脂が得られることが示されており、錯化合物を形成しうる化合物として蓚酸、酒石酸、クエン酸が例示されている。しかしながら、重縮合速度については言及がなく、何ら検討されていない。
特許文献3には、チタン化合物と、窒素原子、硫黄原子および酸素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子を含んでいる少なくとも2座以上で配位可能な配位化合物との反応生成物を触媒に用いることにより、異物が少なく色調が良好なポリエステル樹脂が得られることが示されており、配位化合物としてインダンスロン類、アンスラキノン類、メチン類、フタロシアニン類が例示されている。しかしながら、重縮合速度については言及がなく、何ら検討されていない。
特開2003−137996号公報 特開2003−147066号公報 特開2004−143439号公報
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであって、ジカルボン酸類とジオール類とをエステル化反応またはエステル交換反応させた後、高い重縮合速度で反応させることができるようなポリエステル樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを、エステル化反応またはエステル交換反応させた後、重縮合触媒の存在下に重縮合反応を行いポリエステル樹脂を得るポリエステル樹脂の製造方法であって、該重縮合触媒が、金属成分および2個以上の水酸基が環式化合物内の同一の環骨格に直接結合している構造を有する多水酸基含有環式化合物から形成される重縮合触媒であることを特徴とする。
前記多水酸基含有環式化合物が、非芳香族環骨格に2個以上の水酸基が直接結合した構造を有することが好ましい。
前記多水酸基含有環式化合物が、芳香族環骨格に2個以上の水酸基が直接結合した構造を有することが好ましい。
前記金属成分が、3族、4族、5族、7族、9族、12族、13族の各金属元素、ゲルマニウムおよびアンチモンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素の単体および/または化合物を含むことが好ましい。
前記金属成分が、アルカリ金属元素の単体および/または化合物を含むことが好ましい。
前記多水酸基含有環式化合物が、レゾルシン、ハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、およびイソソルバイド、ならびにそれらの構造を分子骨格内に含む化合物ではないことが好ましい。
本発明により、ジカルボン酸類とジオール類とをエステル化反応またはエステル交換反応させた後、高い重縮合速度で反応させることにより、工業的に満足する生産速度でポリエステル樹脂を製造することができる。
本発明は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを、エステル化反応またはエステル交換反応させた後、重縮合触媒の存在下に重縮合反応を行いポリエステル樹脂を得るポリエステル樹脂の製造方法であって、該重縮合触媒が、金属成分および多水酸基含有環式化合物(2個以上の水酸基が環式化合物内の同一の環骨格に直接結合している構造を有するものをいう。以下同じ。)から形成される重縮合触媒であることを特徴とする。
さらに詳しくは、まず、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを、エステル化反応またはエステル交換反応により低次縮合物を形成する。なお、エステル化反応は、エステル化反応触媒を用いてもよい。次いで、金属成分および多水酸基含有環式化合物から形成される重縮合触媒を用いて、前記低次縮合物を液相重縮合によりポリエステル樹脂を製造する。このようにして製造されたポリエステル樹脂を、さらに予備結晶化工程および固相重縮合工程に供してもよい。
<原料>
本発明において、ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを原料として製造される。
(ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体)
本発明において、前記ジカルボン酸のエステル形成性誘導体とは、ジカルボン酸の塩、エステル、酸無水物または酸塩化物などを指す。
本発明において、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体を用いることができ、好ましくは芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を用いる。
前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4'−スルホンビス安息香酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、4,4'
−スルフィドビス安息香酸、4,4'−オキシビス安息香酸などが挙げられる。これらの
中では、テレフタル酸、イソフタル酸などを用いることが好ましい。
前記脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などが挙げられる。これらの中では、コハク酸、アジピン酸などを用いることが好ましい。
前記脂環族ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。
本発明において、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、特にテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体が用いられることが好ましい。テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体は、前記ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体100モル%に対して、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上用いられる。
(ジオールまたはそのエステル形成性誘導体)
本発明において、前記ジオールのエステル形成性誘導体とは、ジオールのアルコキシド、エステルまたはエーテルなどを指す。
本発明において、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体としては、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族基を含むジオールなどを用いることができ、好ましくは脂肪族ジオールを用いる。
前記脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ドデカメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどが挙げられる。これらの中では、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどを用いることが好ましい。
前記脂環族ジオールとしては、シクロヘキサンジメタノール、イソソルバイドなどが挙げられる。
前記芳香族基を含むジオールとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのビスフェノール類、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ハイドロキノン、レゾルシンなどが挙げられる。これらの中では、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどを用いることが好ましい。
本発明において、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体としては、特にエチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体が用いられることが好ましい。エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体は、前記ジオールまたはそのエステル形成性誘導体100モル%(ただし、後述する多水酸基含有環式化合物は含まない。)に対して、好ましくは、90モル%以上、より好ましくは95モル%以上用いられる。
(その他共重合モノマー)
本発明において、全ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、全ジオールまたはそのエステル形成性誘導体との総量100モル%(ただし、後述する多水酸基含有環式化合物は含まない。)に対して、50モル%以下の範囲で用いる限りにおいて、下記に示す共重合モノマーまたはそのエステル形成性誘導体を用いてもよい。
前記共重合モノマーとしては、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3',4'−ビフェニルテトラカルボン酸などの3価以上の多価カルボン酸類;グリセリン、ジグリセリン、(トリスヒドロキシメチル)メタン、1,1,1,−(トリスヒドロキシメチル)エタン、1,1,1,−(トリスヒドロキシメチル)プロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フルクトース、サッカロース、1,3,5−トリスヒドロキシエトキシイソシアヌレートなどの3価以上の多価アルコール類;グリコール酸、乳酸、4−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、5−ヒドロキシ−n−吉草酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、p−ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類などが挙げられる。これらの中では、グリセリン、1,1,1,−(トリスヒドロキシメチル)プロパン、グリコール酸、乳酸などを用いることが好ましい。
<触媒>
(エステル化反応触媒)
本発明において、上記エステル化反応は、原料としてテレフタル酸を用いる場合には、テレフタル酸の酸としての触媒作用により無触媒でも反応させることができるが、後述する重縮合触媒の共存下に実施してもよい。
また、エステル化反応時に、着色防止剤として、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの第3級アミン;テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシドなどの第4級アンモニウムヒドロキシドなどを用いることができる。
(重縮合触媒)
本発明において、上記重縮合触媒は、金属成分および多水酸基含有環式化合物から形成される。
((金属成分))
本発明において、前記金属成分としては、金属元素の単体や該金属元素の化合物を用いることができる。
前記金属元素の単体としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、12族、13族の各金属元素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマスおよびテルルの単体などが挙げられる。これらの中でも、3族、4族、5族、7族、9族、12族、13族の各金属元素、ゲルマニウムおよびアンチモンの単体が好ましく、イットリウム、セリウム、タンタル、マンガン、コバルト、亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウムおよびアンチモンの単体がより好ましい。
ただし、チタンの単体については、単独でも活性がある程度高く、多水酸基含有環式化合物を添加しても触媒活性の向上が十分でないことがあるため、用いないことが好ましい。
前記金属元素の化合物としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、12族、13族の各金属元素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマスおよびテルルの水素化物;酸化物;硫化物;水酸化物;フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物;炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、アルミン酸塩、ホウ酸塩などの無機酸塩;ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩などのカルボン酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩などの有機スルホン酸塩;メトキシド、エトキシド、n−プロポキシド、イソプロポキシド、n−ブトキシドなどのアルコキシド;アセチルアセトナートなどのキレート化合物などが挙げられ、これらの中ではカルボン酸塩、アルコキシドおよびアセチルアセトナートなどが好ましい。
また、前記金属元素の化合物の中でも、3族、4族、5族、7族、9族、12族、13族の各金属元素、ゲルマニウムおよびアンチモンの化合物が好ましく、イットリウム、セリウム、タンタル、マンガン、コバルト、亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウムおよびアンチモンの化合物がより好ましい。
ただし、チタンの化合物については、単独でも活性がある程度高く、多水酸基含有環式化合物を添加しても触媒活性の向上が十分でないことがあるため、用いないことが好まし
い。
本発明において、重縮合触媒を形成する金属成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。金属成分を2種以上併用する場合においては、少なくともアルカリ金属元素の単体またはアルカリ金属元素の化合物を用いることが好ましい。アルカリ金属元素の単体またはアルカリ金属元素の化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムの単体またはそれらの化合物が好ましい。
((多水酸基含有環式化合物))
本発明において、重縮合触媒を形成する多水酸基含有環式化合物とは、2個以上の水酸基が環式化合物内の同一の環骨格に直接結合している構造を有するものをいう。
環式化合物の環骨格としては、シクロプロパン骨格、シクロブタン骨格、シクロブテン骨格、シクロペンタン骨格、シクロペンタジエン骨格、シクロヘキサン骨格、シクロヘキセン骨格、シクロヘプタン骨格、シクロオクタン骨格、シクロオクタジエン骨格、デカリン骨格、ノルボルナン骨格、ノルボルネン骨格、アダマンタン骨格などの非芳香族炭化水素環骨格;テトラヒドロフラン骨格、ピロリジン骨格、ピペリジン骨格などの非芳香族複素環骨格;などの非芳香族環骨格、ならびに
ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、フェナントレン骨格、ピレン骨格、アズレン骨格、トロポロン骨格などの芳香族炭化水素環骨格;フラン骨格、ピロール骨格、インドール骨格、ピリジン骨格、チオフェン骨格などの芳香族複素環骨格;などの芳香族環骨格、が挙げられる。
前記多水酸基含有環式化合物としては、水酸基が非芳香族環骨格に直接結合した構造を有する多水酸基含有環式化合物を用いてもよいし、水酸基が芳香族環骨格に直接結合した構造を有する多水酸基含有環式化合物を用いてもよい。
前記多水酸基含有環式化合物としては、水酸基を分子内に2個以上有すればよいが、3個以上有することが好ましい。また、前記多水酸基含有環式化合物としては、水酸基が結合した炭素原子が2個以上隣り合う構造を有することが好ましい。
前記多水酸基含有環式化合物としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,2,3−シクロヘキサントリオール、エリトロース、イノシトール、カテコール、メトキシカテコール、フルオロカテコール、ピロガロール、および1,2−ジヒドロキシナフタレン、ならびにそれらの構造を骨格内に有する化合物(例えば、3−メチルカテコールなど)が挙げられる。
なお、多水酸基含有環式化合物のなかには、重縮合反応においてポリエステル鎖中に取り込まれるものがある。多水酸基含有環式化合物がポリエステル鎖中に取り込まれると、ポリエステルの物性が変化することがある。したがって、そのような多水酸基含有環式化合物、例えば、レゾルシン、ハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、およびイソソルバイド、ならびにそれらの構造を分子骨格内に含む化合物(例えば、4−メチルレゾルシンなど)は重縮合触媒を形成する多水酸基含有環式化合物としては使用しないことが好ましい。また、前記以外でも、1級炭素に水酸基が結合した基(すなわちメチロール基)を有する多水酸基含有環式化合物も反応性が高くポリエステル鎖中に取り込まれる傾向が強いため、メチロール基を有する多水酸基含有環式化合物も使用しないことが好ましい。
前記多水酸基含有環式化合物は、上記金属成分(ただし、金属原子換算とする。)に対してモル比で0.5〜10倍量用いることが好ましい。
前記多水酸基含有環式化合物を、上記金属成分とともに重縮合触媒として用いることにより、ポリエステル樹脂の重縮合反応に対しての触媒活性が向上する理由については、重縮合反応系内で金属−多座配位子錯体が形成されることにより、金属触媒が高活性化されることによると推測される。多水酸基含有環式化合物を配位子として考えると、該水酸基が金属成分の金属原子に配位し、さらに該水酸基は環骨格により配置が固定されているため金属原子への配位がエントロピー効果により、1個の水酸基を含有する環式化合物や、非環式の多水酸基含有化合物を用いる場合と比べてより安定となり、結果としてポリエステル重縮合条件下でも安定な金属−多座配位子錯体を形成するものと推測される。
また、2個以上の水酸基が同一の環骨格に直接結合していない水酸基含有環式化合物と比べて、本発明において用いられる多水酸基含有環式化合物は、同一の環骨格に2個以上の水酸基が直接結合していることから配置が固定されているため、より安定な金属−多座配位子錯体を形成するものと推測される。
前記多水酸基含有環式化合物を、上記金属成分とともに重縮合触媒として用いることにより、ポリエステル樹脂の重縮合反応に対しての金属触媒の活性が向上するとともに、高分子量で高品質なポリエステル樹脂を製造できる。すなわち、金属成分を単独で重縮合触媒に用いる場合には、重縮合反応と並行してポリエステル樹脂の逐次的な分解も起こることがあり、その結果分子量をある程度以上は上昇させることができず、また好ましくない副生成物が生成することがあるが、多水酸基含有環式化合物を金属成分とともに用いることにより金属触媒のポリエステル樹脂の分解反応や副反応に対する活性が制御され、好ましくないポリエステル樹脂の分解や副生成物の生成が抑制される。
<ポリエステル樹脂の製造工程>
本発明においては、上記原料および重縮合触媒を用いて、エステル化反応またはエステル交換反応により低次縮合物を形成し、次いで該低次縮合物を液相重縮合させて高分子量化することにより、ポリエステル樹脂を製造することができる。
以下、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを、エステル化反応により低次縮合物を形成し、次いで液相重縮合によりポリエステル樹脂を製造する方法の一例について説明するが、その他の原料を用いる場合や、エステル交換反応などによりポリエステル樹脂を製造する場合においても、反応条件を適宜設定する以外は、本発明をそのまま適用することができる。
なお、エステル化工程と重縮合工程とを含むポリエステル樹脂の製造工程は、バッチ式、半連続式、連続式のいずれでも行うことができる。
(原料スラリー調製工程)
まず、芳香族ジカルボン酸と、脂肪族ジオールとを含むスラリーを調製する。
このようなスラリーには、芳香族ジカルボン酸1モルに対して、通常0.98〜1.3モル、好ましくは1.0〜1.2モルの脂肪族ジオールが含まれる。このスラリーは、エステル化工程に連続的に供給される。
(エステル化工程)
次いで、ポリエステル樹脂を製造するに際して、芳香族ジカルボン酸と、脂肪族ジオールとをエステル化させる。
エステル化反応は、好ましくは2個以上のエステル化反応器を直列に連結した装置を用いて脂肪族ジオールが還流する条件下で、エステル化反応によって生成した水を精留塔で系外に除去しながら行う。
エステル化反応は、通常多段で実施され、第1段目のエステル化反応は、温度が通常240〜270℃、好ましくは245〜265℃であり、圧力が通常0.02〜0.3MPaG(0.2〜3kg/cm2G)、好ましくは0.05〜0.2MPaG(0.5〜2
kg/cm2G)の条件下で行われ、また最終段目のエステル化反応は、温度が通常25
0〜280℃、好ましくは255〜275℃であり、圧力が通常0〜0.15MPaG(0〜1.5kg/cm2G)、好ましくは0〜0.13MPaG(0〜1.3kg/cm2G)の条件下で行われる。
エステル化反応を2段階で実施する場合には、第1段目および第2段目のエステル化反応条件がそれぞれ前記の範囲であり、3段階以上で実施する場合には、第2段目から最終段の1段前までエステル化反応条件は、前記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件であればよい。
例えば、エステル化反応が3段階で実施される場合には、第2段目のエステル化反応の温度は通常245〜275℃、好ましくは250〜270℃であり、圧力は通常0〜0.2MPaG(0〜2kg/cm2G)、好ましくは0.02〜0.15MPaG(0.2
〜1.5kg/cm2G)であればよい。
これらの各段階におけるエステル化反応率は、特に制限はされないが、各段階におけるエステル化反応率の上昇の度合いが滑らかに分配されることが好ましい。さらに最終段目のエステル化反応生成物においては、エステル化反応率は、通常90%以上、好ましくは93%以上に達する。
このエステル化工程により、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのエステル化反応生成物である低次縮合物(エステル低重合体)が得られ、この低次縮合物の数平均分子量は通常500〜5000程度である。
前記のようなエステル化工程で得られた低次縮合物は、次いで液相重縮合工程に供給される。
(液相重縮合工程)
液相重縮合工程においては、エステル化工程で得られた低次縮合物を、減圧下で、かつポリエステル樹脂の融点以上の温度(通常250〜280℃)に加熱することにより重縮合させる。この重縮合反応では、未反応の脂肪族ジオールを反応系外に留去させながら行われることが望ましい。
重縮合反応は、1段階で行ってもよく、複数段階に分けて行ってもよい。例えば、重縮合反応が複数段階で行われる場合には、第1段目の重縮合反応は、温度が通常250〜290℃、好ましくは260〜280℃、圧力が通常0.07〜0.003MPa(500
〜20Torr)、好ましくは0.03〜0.004MPa(200〜30Torr)の条件下で行われ、最終段目の重縮合反応は、温度が通常265〜300℃、好ましくは270〜295℃、圧力が通常1〜0.01kPa(10〜0.1Torr)、好ましくは0.7〜0.07kPa(5〜0.5Torr)の条件下で行われる。
重縮合反応を3段階以上で実施する場合には、第2段目から最終段目の1段前までの重縮合反応は、前記1段目の反応条件と最終段目の反応条件との間の条件で行われる。例えば、重縮合工程が3段階で行われる場合には、第2段目の重縮合反応は、温度が通常260〜295℃、好ましくは270〜285℃で、圧力が通常7〜0.3kPa(50〜2Torr)、好ましくは5〜0.7kPa(40〜5Torr)の条件下で行われる。
重縮合触媒を形成する金属成分および多水酸基含有環式化合物は、液相重縮合反応時に存在していればよい。このため前記金属成分および多水酸基含有環式化合物の添加は、原料スラリー調製工程、エステル化工程、液相重縮合工程などのいずれの工程で行ってもよい。また、前記金属成分および多水酸基含有環式化合物全量を一括添加しても、複数回に分けて添加してもよい。前記金属成分および多水酸基含有環式化合物の添加量は、例えば液相重縮合工程時に添加する場合、低次縮合物に対して、金属成分を金属原子換算で0.001〜50モル/トン、多水酸基含有環式化合物を0.0005〜500モル/トン添加することが好ましい。
金属成分および多水酸基含有環式化合物から形成される重縮合触媒は、直接、反応器に添加されてもよいし、重縮合触媒溶液を調製して反応器に添加されてもよい。
重縮合触媒溶液を調製する場合は、溶媒として例えば、水、グリコール、水とグリコールとの混合溶媒などが挙げられる。前記グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。
以上のような液相重縮合工程で得られる液相重縮合ポリエステル樹脂の固有粘度[IV]は通常0.40〜1.0dl/g、好ましくは0.50〜0.90dl/g、より好ましくは0.50〜0.60dl/gの範囲にある。なお、この液相重縮合工程の最終段目を除く各段階において達成される固有粘度は特に制限されないが、各段階における固有粘度の上昇の度合いが滑らかに分配されることが好ましい。
この重縮合工程で得られる液相重縮合ポリエステル樹脂は、通常、溶融押し出し成形されて粒状(チップ状)に成形される。
この液相重縮合工程においては、得られる液相重縮合ポリエステル樹脂のCOOH基濃度を好ましくは60当量/トン以下、より好ましくは55〜10当量/トン、さらに好ましくは50〜15当量/トンとする。液相重縮合ポリエステル樹脂中のCOOH基濃度を前記範囲にすると、固相重縮合後のポリエステル樹脂の透明性が高くなる。
上記原料スラリー調製工程において脂肪族ジオールと芳香族ジカルボン酸との仕込みのモル比(脂肪族ジオール/芳香族ジカルボン酸)を0.98〜1.3、好ましくは1.0〜1.2とし、かつ液相重縮合反応の最終段の温度を275〜295℃、圧力を1〜0.01kPaとすると、得られる液相重縮合ポリエステル樹脂中のCOOH基濃度を前記範囲に調節することができる。
この液相重縮合工程で得られるポリエステル樹脂は、さらに予備結晶化工程および固相重縮合工程に供してもよい。
(予備結晶化工程)
固相重縮合工程に供給される粒状ポリエステル樹脂は、予め、固相重縮合を行う場合の温度より低い温度に加熱して予備結晶化を行った後、固相重縮合工程に供給してもよい。
このような予備結晶化は、粒状ポリエステル樹脂を乾燥状態で通常、通常120〜200℃、好ましくは130〜180℃の温度に1分から4時間加熱することによって行うことができる。またこのような予備結晶化は、粒状ポリエステル樹脂を水蒸気雰囲気、水蒸気含有不活性ガス雰囲気下、または水蒸気含有空気雰囲気下で、120〜200℃の温度で1分間以上加熱することによって行うこともできる。
予備結晶化されたポリエステル樹脂は、結晶化度が20〜50%であることが好ましい。
ここで、結晶化度はJIS K7112の密度勾配管法で測定した密度を基に計算された
値である。
なお、この予備結晶化処理によっては、いわゆるポリエステル樹脂の固相重縮合反応は進行せず、予備結晶化されたポリエステル樹脂の固有粘度は、液相重縮合後のポリエステル樹脂の固有粘度とほぼ同じであり、予備結晶化されたポリエステル樹脂の固有粘度と予備結晶化される前のポリエステル樹脂の固有粘度との差は、通常0.06dl/g以下である。
(固相重縮合工程)
固相重縮合工程は、少なくとも1段からなり、温度が通常190〜235℃、好ましくは195〜225℃であり、圧力が通常120〜0.001kPa、好ましくは98から0.01kPaの条件下で、窒素、アルゴン、炭酸ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行われる。使用する不活性ガスとしては窒素ガスが望ましい。
不活性ガスの流量は、バッチ式の場合、ポリエステル樹脂1kgに対し、通常0.1〜50Nm3/hrであり、連続式の場合、ポリエステル樹脂1kg/hrに対し、通常0
.01〜2Nm3/hrである。
固相重縮合の雰囲気として使用される不活性ガスとしては、常に純粋な不活性ガスを使用してもよく、また固相重縮合工程から排出される不活性ガスを循環再使用してもよい。固相重縮合工程から排出された不活性ガスには、水、エチレングリコール、アセトアルデヒドなどの縮合物、分解物が含有されている。循環再使用の際には縮合物、分解物を含んだ不活性ガスでもよく、また縮合物、分解物を除去、精製した不活性ガスでもよい。
(水処理工程)
このような固相重縮合工程を経て得られた粒状ポリエステル樹脂には、水処理を行ってもよい。この水処理は、粒状ポリエステル樹脂を40〜180℃の水に3分〜5時間、または40〜180℃の水蒸気もしくは水蒸気含有ガスに5分〜14日間、接触させることにより行われる。
<ポリエステル樹脂>
本発明の製造方法で製造されるポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートを主体とすることが好ましい。前記ポリエステル樹脂はジカルボン酸由来の構成単位とジオール由来の構成単位とを含み、全ジカルボン酸由来の構成単位中にテレフタル酸由来の構成単位を好ましくは90mol%以上、より好ましくは95mol%以上含み、全ジオール由来の構成単位中にエチレングリコール由来の構成単位を好ましくは90mol%以上、より好ましくは95mol%以上含む。
また、前記ポリエステル樹脂は、テレフタル酸由来の構成単位とエチレングリコール由来の構成単位とを前記範囲で含有する限りにおいて、上述したジカルボン酸およびジオール由来の構成単位を含んでいても構わない。
また、前記ポリエステル樹脂は、全ジカルボン酸および全ジオール由来の構成単位の総量100モル%に対して、50モル%以下の範囲で、上述した共重合モノマー由来の構成単位を含んでいても構わない。
本発明の製造方法で製造されるポリエステル樹脂の固有粘度は、通常0.70dl/g以上、好ましくは0.75〜1.0dl/gである。
本発明の製造方法で製造されるポリエステル樹脂のCOOH基濃度は、好ましくは10〜35当量/トン、より好ましくは12〜30当量/トンである。
本発明の製造方法で製造されるポリエステル樹脂の密度は、好ましくは1.37g/cm3以上、より好ましくは1.38〜1.46g/cm3、さらに好ましくは1.39〜1.44g/cm3である。
本発明の製造方法で製造されるポリエステル樹脂には、従来から公知の添加剤、例えば、安定剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、核剤、染顔料などの着色剤などが添加されていてもよい。これらの添加剤はポリエステル樹脂製造時のいずれかの段階で添加してもよく、成形加工前にマスターバッチにより添加したものであってもよい。
これに伴い、前記の添加剤は、粒状ポリエステル樹脂の粒子内部に一様の濃度で含有されていてもよいし、粒状ポリエステル樹脂の粒子表面近傍に濃縮されて含有されていてもよいし、または粒状ポリエステル樹脂の一部の粒子に他の粒子より高濃度で含有されていてもよい。
<成形体>
本発明の製造方法で製造されるポリエステル樹脂は、特に色相および透明性に優れ、各種成形体の素材として使用することができる。例えば、溶融成形してボトルなどの中空成形体、シート、フィルム、繊維などに使用されるが、ボトルに使用することが好ましい。
本発明の製造方法によって得られるポリエステル樹脂からボトル、シート、フィルム、繊維などを成型する方法としては、従来公知の方法を採用することができる。
例えば、ボトルを成形する場合には、上記ポリエステル樹脂を溶融状態でダイより押出してチューブ状パリソンを形成し、次いでパリソンを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、金型に着装することにより中空成形体を製造する方法、上記ポリエステル樹脂から射出成形によりプリフォームを製造し、該プリフォームを延伸適性温度まで加熱し、次いでプリフォームを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、金型に着装することにより中空成形体を製造する方法などがある。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(1)ポリエチレンテレフタレートの固有粘度(IV)
ポリエチレンテレフタレート0.5gをフェノール/テトラクロロエタン(1/1重量比)混合溶媒100mlに加熱溶解した後、冷却して25℃で測定された溶液粘度から固有粘度を算出した。
(2)液相重縮合速度(N・m/hr)
液相重縮合工程における重縮合の進行度合は、トルク検出機能つき攪拌機(EYELA社製)を用いて攪拌トルク値を測定することによりモニターした。反応時間(h)に対して攪拌トルク値(N・m)をプロットし(以下、トルク−反応時間曲線ともいう。)、トルク上昇速度が最大となった時点の最大トルク上昇速度(N・m/hr)を算出し、液相重縮合速度の指標とした。
(3)固相重縮合速度(dl/(g・hr))
固相重縮合速度は、固相重縮合前後のポリエステル樹脂の固有粘度差(dl/g)を固相重縮合反応時間(16hr)で除して算出した。
[実施例1]
(エステル化工程)
以下のようにして高純度テレフタル酸とエチレングリコールとの低次縮合物を製造した。
高純度テレフタル酸13kg、エチレングリコール4.93kg、およびテトラエチルアンモニウムヒドロキシド20%水溶液6.88gを、圧力1.7kg/cm2G、温度
260℃の窒素雰囲気下にて6時間、撹拌しながら反応させ、固有粘度0.28dl/gの低次縮合物を得た。この反応により生成した水は常時系外に留去した。
(液相重縮合工程)
(i)上記で得られた低次縮合物50gを、100mlのガラス製重縮合フラスコに入れた。前記低次縮合物に対して重縮合触媒として、酢酸コバルト四水和物をコバルト原子換算で3.0モル/トン、また、myo−イノシトールを9.0モル/トンとなるように添加し、混合物を調製した。前記混合物を40分間、280℃で溶融混合した後、系内を10分かけて1torrまで減圧した。さらにエチレングリコールを系外に留去しながら重縮合を行った。
図1に液相重縮合工程におけるトルク−反応時間曲線を示す。附番10は重縮合触媒としてmyo−イノシトールが添加されている系のトルク−反応時間曲線を示し、附番10aは該曲線のトルク上昇速度が最大となった時点での接線を示す。
(ii)別途、myo−イノシトールを添加せず、酢酸コバルト四水和物だけを重縮合触媒として用いて、(i)と同様に重縮合を行った。
図1の附番20は触媒としてmyo−イノシトールが添加されていない系のトルク−反応時間曲線を示し、附番20aは該曲線のトルク上昇速度が最大となった時点での接線を示す。
重縮合触媒として、myo−イノシトールの添加あり/なしの系での、最大トルク上昇速度の比(図1における接線の傾きの比)を計算し、myo−イノシトールによる液相重縮合工程における重縮合反応速度の活性向上の度合の指標とした。結果を表1に示す。
[実施例2〜7]
実施例1において、酢酸コバルト四水和物のかわりに表1に示した金属成分を加えたこと以外は実施例1と同様に行った。
測定結果を表1に示す。
[実施例8]
(エステル化工程)
実施例1と同様にして、固有粘度0.28dl/gの低次縮合物を得た。この反応により生成した水は常時系外に留去した。
(液相重縮合工程)
上記で得られた低次縮合物50gを、100mlのガラス製重縮合フラスコに入れた。前記低次縮合物に対して重縮合触媒として、リチウムイソプロポキシドをリチウム原子換算で1.0モル/トン、アルミニウム−sec−ブトキシドをアルミニウム原子換算で1.0モル/トン、また、myo−イノシトールを3.0モル/トンとなるように添加し、混合物を調製した。前記混合物を40分間、280℃で溶融混合した後、系内を10分間かけて1torrまで減圧した。さらにエチレングリコールを系外に留去しながら重縮合をおこなった。
測定結果を表1に示す。
[実施例9]
(エステル化工程)
実施例1と同様にして、固有粘度0.28dl/gの低次縮合物を得た。この反応により生成した水は常時系外に留去した。
(液相重縮合工程)
上記で得られた低次縮合物50gを、100mlのガラス製重縮合フラスコに入れた。前記低次縮合物に重縮合触媒として、リチウムイソプロポキシドをリチウム原子換算で0.5モル/トン、ナトリウムエトキシドをナトリウム原子換算で0.5モル/トン、カリウムブトキシドをカリウム原子換算で0.5モル/トン、ジルコニウムテトラエトキシドをジルコニウム原子換算で0.5モル/トン、また、myo−イノシトールを1.5モル/トンとなるように添加し、混合物を調製した。前記混合物を40分間、280℃で溶融混合した後、系内を10分間かけて1torrまで減圧した。さらにエチレングリコールを系外に留去しながら重縮合を行った。
測定結果を表1に示す。
Figure 0005057959
表1の最大トルク上昇速度比からわかるように、重縮合触媒として、金属成分とともにmyo−イノシトールを用いると、ポリエチレンテレフタレートの液相重縮合工程における重縮合速度が大幅に向上する結果となった。
[実施例10]
(エステル化工程)
以下のようにして高純度テレフタル酸とエチレングリコールとの低次縮合物を製造した。
高純度テレフタル酸13kg、エチレングリコール5.09kg、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド20%水溶液6.88gを圧力1.7kg/cm2G、260℃の窒
素雰囲気下にて6時間、撹拌しながら反応させ、固有粘度0.28dl/gの低次縮合物を得た。この反応により生成した水は常時系外に留去した。
(液相重縮合工程)
上記で得られた低次縮合物317gを500mlのガラス製重縮合フラスコに入れた。前記低次縮合物に対して重縮合触媒として、二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液をゲルマニウム原子換算で1.38モル/トン、また、カテコールを4.0モル/トンとなるように添加し、混合物を調製した。前記混合物を1時間260℃で溶融混合した後、系内を1時間かけて1torrまで減圧すると同時に温度を285℃まで昇温した。さらにエチレングリコールを系外に留去しながら、固有粘度が0.54dl/gになるまで重縮合を行った。
重縮合反応終了後、反応物を前記ガラス製重縮合フラスコからストランド状に抜き出し、水中に浸漬、冷却した後、ストランドカッターによりチップ状に裁断した。
(固相重縮合工程)
このように液相重縮合により得られたポリエチレンテレフタレートはさらに、窒素雰囲気下170℃、2時間乾燥するとともに結晶化を行った後、窒素雰囲気下215℃で16時間固相重縮合を行い、固相重縮合速度を測定した。結果を表2に示した。
[実施例11〜12、14〜17、参考例13
実施例10において、カテコールのかわりに表1に示した化合物を加えたこと以外は実施例10と同様に行った。結果を表2に示した。
[比較例1]
実施例10において、カテコールを添加しないこと以外は実施例10と同様に行った。結果を表2に示した。
[比較例2]
実施例10において、カテコールのかわりにフェノールを加えたこと以外は実施例10と同様に行った。結果を表2に示した。
[比較例3]
実施例10において、カテコールのかわりにペンタエリスリトールを加えたこと以外は実施例10と同様に行った。結果を表2に示した。
Figure 0005057959
表2の固相重縮合速度からわかるように、金属成分および多水酸基含有環式化合物から形成される重縮合触媒を用いると、ポリエチレンテレフタレートの固相重縮合工程における重縮合速度が大幅に向上する結果となった。
実施例1におけるトルク−反応時間曲線のプロットと、最大トルク上昇速度を算出するための近似直線(接線)を示す図である。
符号の説明
10・・・実施例1における重縮合触媒としてmyo−イノシトールが添加されている系のトルク−反応時間曲線。
10a・・・図1附番10のトルク−反応時間曲線のトルク上昇速度が最大となった時点での接線。
20・・・実施例1における重縮合触媒としてmyo−イノシトールが添加されていない系のトルク−反応時間曲線。
20a・・・図1附番20のトルク−反応時間曲線のトルク上昇速度が最大となった時点での接線。

Claims (6)

  1. ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを、エステル化反応またはエステル交換反応させた後、重縮合触媒の存在下に重縮合反応を行いポリエステル樹脂を得るポリエステル樹脂の製造方法であって、
    該重縮合触媒が、金属成分および2個以上の水酸基が環式化合物内の同一の環骨格に直接結合している構造を有する多水酸基含有環式化合物(ただし、互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するピロガロール化合物を除く。)から形成される重縮合触媒であることを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
  2. 前記多水酸基含有環式化合物が、非芳香族環骨格に2個以上の水酸基が直接結合した構造を有することを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
  3. 前記多水酸基含有環式化合物が、芳香族環骨格に2個以上の水酸基が直接結合した構造を有することを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
  4. 前記金属成分が、3族、4族、5族、7族、9族、12族、13族の各金属元素、ゲルマニウムおよびアンチモンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素の単体および/または化合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂の製造方法。
  5. 前記金属成分が、アルカリ金属元素の単体および/または化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂の製造方法。
  6. 前記多水酸基含有環式化合物が、レゾルシン、ハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、およびイソソルバイド、ならびにそれらの構造を分子骨格内に含む化合物ではないことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂の製造方法。
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