JP5055371B2 - レンズおよびそれを用いた光学ユニット - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、ポリカーボネート共重合体からなるレンズを含む光学ユニットに関する。詳しくは、複屈折が極めて小さく、透明性に優れたポリカーボネート共重合体からなるレンズを有する光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメチルメタクリレートは、良好な透明性と低い複屈折特性を有するので、レンズや導光板などの光学材料として数多く使用されている。しかしながら、近年電子機器の高密度化や安全性の観点から樹脂の耐熱性向上の要求が高まる中で、ポリメチルメタクリレートは充分な耐熱性を有しているとは言い難い。
一方、ビスフェノールAからのポリカーボネートは、透明性、耐熱性、機械的特性、寸法安定性に優れ、光学材料をはじめ様々な用途へ利用されている。しかし、ビスフェノールAからのポリカーボネートは、分子鎖の配向により生じる複屈折が大きく、また成形時の残留応力によって生じる光学歪みも大きいため、光学的精度が要求されるレンズへの適用は簡単ではなかった。
ポリカーボネートの複屈折を改良する方法として、スチレン系樹脂とグラフト共重合する方法が提案されている(特許文献1、2)。しかし、ポリカーボネートとスチレン系樹脂とのグラフト共重合体は、機械強度が低く、極めて脆い。また、熱安定性が悪く成形が困難であるため、機械強度を向上させるためには分子量を高くする必要がある。但し、分子量を高くすると成形性や表面精度が悪化し、実用的なレンズは得られないという欠点があった。
この点を改良したものとして、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパンからのポリカーボネートとアクリロニトリル−スチレン共重合体を混合する方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、この樹脂組成物は透明性や複屈折は改善されるものの、熱安定性が低く、成形が非常に困難であるという欠点があった。
【0003】
一方、耐熱性に優れ、高い屈折率を有する、フルオレン骨格を含むポリカーボネート共重合体をレンズに利用することが提案されている(特許文献4)。しかし、このポリカーボネート共重合体は複屈折が高いという欠点がある。
一方、フルオレン骨格を含むポリカーボネート共重合体を用いた、吸水性、高速回転時の変形を改良した光ディスクが提案されている(特許文献5および6)。
また、複数のレンズによって構成される光学ユニットとして、脂環式ポリオレフィンからなるプラスチックレンズと、フルオレン骨格を含むポリカーボネート共重合体からなるレンズとを組み合わせることで色収差を補正することが提案されている(特許文献7)。しかし、このポリカーボネート共重合体は、フルオレン骨格の含有量を増やすと複屈折は低下するが、複屈折の最も低くなる領域ではガラス転移温度が高くなり成形性が悪化するという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】
特開昭61−19630号公報
【特許文献2】
特開昭63−15822号公報
【特許文献3】
特開平05−027101号公報
【特許文献4】
特開平06−018701号公報
【特許文献5】
特開2005−272691号公報
【特許文献6】
特開2006−328106号公報
【特許文献7】
特開2005−309109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、複屈折が小さく、高い屈折率を有するレンズ含む光学ユニット提供することにある。また本発明の目的は、透明性および耐熱性に優れたレンズを含む光学ユニット提供することにある。また本発明の目的は、色収差が補正され、高い解像度を有する光学ユニットを提供することにある。
本発明者は、フルオレン環を含有する単位(A)と、ビスフェノールAのアルキリデン部位を長鎖アルキルで変性した単位(B)とからなるポリカーボネート共重合体(I)は、複屈折が極めて小さく、屈折率が高いことを見出した。またポリカーボネート共重合体(I)は、単位(A)を55〜80モル%という高い割合で含有していても、溶融粘度が低く、成形し易く、レンズの素材として極めて優れていることを見出した。また、ポリカーボネート共重合体(I)はフルオレン環を高い割合で含有するので、耐熱性に優れていることも判明した。
また、ポリカーボネート共重合体(I)からなるレンズは、アッベ数が20〜30程度で、アッベ数が45〜60のレンズと組み合わせると、色収差が補正され、高い解像度を有する光学ユニットが得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち本発明は、(I)下記式
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、R1〜R4は各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜9の炭化水素基、またはハロゲン原子である。)
で表される単位(A)と、下記式
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、R5、R6は各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を表す。R7およびR8は各々独立に、水素原子または炭素原子数1〜9のアルキル基を表す。ただし、R7およびR8の炭素原子数の合計は9または10である。)
で表される単位(B)とから構成され、全単位中の単位(A)の割合が55〜80モル%であるポリカーボネート共重合体(I)からなるレンズ、および
(II)脂環式ポリオレフィンからなりアッベ数が45〜60のレンズ、
を含む光学ユニットである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のレンズは、複屈折が小さく、高い屈折率を有している。本発明のレンズは、透明性および耐熱性に優れる。また本発明の光学ユニットは、色収差が補正され、高い解像度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】 レンズをホルダにより一体化した光学ユニットを示す概略図である。
【図2】 光学ユニットにおける解像度の評価システムである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を以下に詳細に説明する。
【0004】
〈ポリカーボネート共重合体(I):PC(I)〉
(単位(A))
PC(I)は、下記式で表される単位(A)を有する。
【0015】
【化3】
【0016】
単位(A)中のR1、R2、R3およびR4は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜9の炭化水素基またはハロゲン原子である。炭素原子数1〜9の炭化水素基として、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基が挙げられる。アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、へキシル基、オクチル基などが挙げられる。アリール基としてフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。R1、R2、R3およびR4は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜3のアルキル基またはフェニル基であることが好ましい。
好ましい単位(A)の具体例としては、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、および9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン等から誘導される単位が挙げられる。
【0017】
(単位(B))
PC(I)は下記式で表される単位(B)を有する。
【0018】
【化4】
【0019】
単位(B)中、R5、R6は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を表す。炭素原子数1〜6のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、へキシル基などが挙げられる。炭素原子数6〜10のアリール基として、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。炭素原子数1〜6のアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、へキシルオキシ基などが挙げられる。
R7およびR8は各々独立に、水素原子または炭素原子数1〜9のアルキル基を表す。ただし、R7およびR8の炭素原子数の合計は9または10である。炭素原子数1〜9のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、へキシル基、オクチル基などが挙げられる。
単位(B)として、R5、R6が水素原子である単位が好ましい。単位(B)として、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(2,3−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)デカンから誘導される単位が挙げられる。
PC(I)は、単位(A)が、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、単位(B)が1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカンから誘導された単位であることが好ましい。
【0020】
また、全単位中の単位(A)の割合は、好ましくは55〜80モル%、より好ましくは55〜75モル%、さらに好ましくは65〜75モル%である。単位(A)の割合が55モル%未満の場合、ガラス転移温度が低くなり成形性は向上するが、固有複屈折の絶対値、および光弾性係数は大きくなり複屈折が大きくなる。また単位(A)の割合が80モル%を超える場合、光弾性係数は小さくなるが、固有複屈折値の絶対値が大きくなるため、結果として複屈折が大きくなる。また、ガラス転移温度が高くなるためレンズとするには成形性が不十分である。単位(A)と単位(B)とは、固有複屈折値の正負符号が異なり、これらが共存することにより、配向に起因する複屈折を低減させることが可能である。
【0021】
(PC(I)の製造方法)
PC(I)は、単位(A)を誘導する二価フェノールおよび単位(B)を誘導する二価フェノールをカーボネート前駆体と、溶液重合法または溶融重合法によって反応させることよって製造することができる。PC(I)は、溶液重合法、即ち界面重合法により製造されたものが好ましい。かかる二種類の二価フェノールはカーボネート前駆体と同時に反応させても、種類毎に順次反応させてもよい。
【0022】
また他の二価フェノールから誘導される単位を、本発明の目的および特性を損なわない限り、10モル%以下の割合、好ましくは5モル%以下の割合で共重合させてもよい。かかる他の二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール−A)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
【0023】
カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が挙げられる。具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。特に、ホスゲンまたはジフェニルカーボネートが好ましい。二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法または溶融重合法によって反応させてポリカーボネートを製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、および二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤を使用してもよい。
界面重合法による反応は、二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0024】
(末端停止剤)
また、重合反応において、通常、末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネートは、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる単官能フェノール類としては、ポリカーボネートの末端停止剤として使用されるものであればよく、一般にはフェノール或いは低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式で表される単官能フェノールを示すことができる。
【0025】
【化5】
【0026】
(式中、Aは水素原子または炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはアリールアルキル基を示し、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数を示す。)
単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
また、他の単官能フェノールとして、長鎖のアルキル基或いは脂肪族エステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類を使用することができる。これらを用いてポリカーボネート共重合体の末端を封鎖すると、これらは末端停止剤または分子量調節剤として機能するのみならず、樹脂の溶融流動性が改良され、成形加工が容易となるばかりでなく、基板としての物性も改良される。特に樹脂の吸水率を低くする効果があり、好ましく使用される。これらは下記一般式[I−a]〜[I−h]で表される。
【0027】
【化6】
【0028】
各式中、Xは−R−O−、−R−CO−O−または−R−O−CO−である。ここでRは、単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示す。Tは、単結合またはXと同様の結合を示す。nは、10〜50の整数を示す。
Qは、ハロゲン原子または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の一価の脂肪族炭化水素基を示す。pは、0〜4の整数を示す。Yは、炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示す。W1は、水素原子、−CO−R13、−CO−O−R14またはR15である、ここでR13、R14およびR15は、それぞれ炭素数1〜10、好ましくは1〜5の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜8、好ましくは5〜6の一価の脂環族炭化水素基または炭素数6〜15、好ましくは6〜12の一価の芳香族炭化水素基を示す。
lは、4〜20、好ましくは5〜10の整数を示す。mは、1〜100、好ましくは3〜60、特に好ましくは4〜50の整数を示す。Zは、単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示す。W2は、水素原子、炭素数1〜10、好ましくは1〜5の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜8、好ましくは5〜6の一価の脂環族炭化水素基または炭素数6〜15、好ましくは6〜12の一価の芳香族炭化水素基を示す。
【0029】
これらの内、特に好ましいのは、[I−a]および[I−b]の置換フェノール類である。この[I−a]の置換フェノール類としては、nが10〜30、特に10〜26のものが好ましい。その具体例としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノールなどを挙げることができる。
また、[I−b]の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適である。その具体例としては、ヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。
式[I−a]〜[I−g]で示される置換フェノール類または置換安息香酸クロライドにおいて置換基の位置は、パラ位またはオルト位が一般的に好ましく、その両者の混合物が好ましい。
【0030】
単官能フェノール類は、得られたPC(I)の全末端に対して少なくとも5モル%、好ましくは少なくとも10モル%末端に導入されることが望ましく、また単官能フェノール類は単独でもしくは2種以上混合して使用してもよい。
溶融重合法による反応は、二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応が代表的であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を1,300Pa〜13Pa(10〜0.1Torr)程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
カーボネートエステルとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のアラルキル基あるいは炭素原子数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0031】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができる。重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、ホウ素やアルミニウムの水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ金属の有機酸塩、アルカリ土類金属の有機酸塩、亜鉛化合物、ホウ素化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、有機錫化合物、鉛化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物などの通常エステル化反応やエステル交換反応に使用される触媒が挙げられる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせ使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10−9〜1×10−5当量、より好ましくは1×10−8〜5×10−6当量の範囲で選ばれる。
また、かかる重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートなどを加えることが好ましい。特に2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく使用される。
【0032】
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後のポリカーボネートに対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩などが好ましく挙げられる。前記以外の反応形式の詳細についても、各種の文献および特許公報などで良く知られている。
【0033】
(樹脂ペレットの製造)
PC(I)は、その使用目的がレンズであることを考えると、従来公知の常法(溶液重合法、溶融重合法など)により製造した後、溶液状態において濾過処理を行い未反応成分等の不純物や異物を除去することが好ましい。さらに、射出成形(射出圧縮成形を含む)に供するためのペレット状ポリカーボネートを得る押出工程(ペレット化工程)においても、溶融状態の時に、焼結金属フィルターを通すなどして異物を除去することが望ましい。フィルターとしては濾過精度10μm以下のものが好ましく使用される。いずれにしても射出成形(射出圧縮成形を含む)前の原料樹脂は異物、不純物、溶媒などの含有量を極力低くしておくことが必要である。
更にかかる低異物のペレットを製造するためには、上記以外にも押出機やペレタイザー等の製造装置を清浄な空気の雰囲気下に設置すること、冷却バス用の冷却水を異物量の少ないものにすること、並びに原料の供給ホッパー、供給流路、および得られたペレットの貯蔵タンク等をより清浄な空気等で満たすことが好ましい。例えば、特開平11−21357号公報に提案されているのと同様な方法をとることが適当である。また押出機内に窒素ガスに代表される不活性ガスを流し込み、酸素を遮蔽する方法も、色相の改善手段として好適に利用できる。
【0034】
更にかかるペレットの製造においては、既に提案されている様々な方法を用いて、ペレットの形状分布の狭小化、ミスカット物の更なる低減、運送または輸送時に発生する微小粉の更なる低減、並びにストランドやペレット内部に発生する気泡(真空気泡)の低減を適宜行うことができる。これらの処方により成形のハイサイクル化、およびシルバーの如き不良発生割合の低減を更に行うことができる。
またペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱(楕円柱を含む)である。かかる円柱の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.3mmである。楕円柱において長径に対する短径の割合は、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上である。一方、円柱の長さは好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜5mm、さらに好ましくは2.5〜3.5mmである。
【0035】
(リン系安定剤)
PC(I)は、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸およびこれらのエステルよりなる群から選らばれる少なくとも一種のリン化合物を、PC(I)に対して0.0001〜0.05重量%の割合で含有してもよい。このリン化合物を配合することにより、PC(I)の熱安定性が向上し、成形時における分子量の低下や色相の悪化が防止される。
リン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸およびこれらのエステルよりなる群から選択される少なくとも一種のリン化合物が挙げられる。好ましくは下記式(1)〜(4)よりなる群から選択された少なくとも1種のリン化合物である。
【0036】
【化7】
【0037】
ここで、R1〜R12は、それぞれ独立して、水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどの炭素数1〜20のアルキル基、フェニル、トリル、ナフチルなどの炭素数6〜15のアリール基またはベンジル、フェネチルなどの炭素数7〜18のアラルキル基を表わす。また1つの化合物中に2つのアルキル基が存在する場合は、その2つのアルキル基は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0038】
式(1)で示されるリン化合物としては、例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。上記式(2)で示されるリン化合物としては、例えばトリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどが挙げられる。上記式(3)で示されるリン化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイトなどが挙げられる。また上記式(4)で示される化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピルなどが挙げられる。なかでも、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリエチルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく使用される。
【0039】
かかるリン化合物の含有量は、PC(I)に対して、好ましくは0.0001〜0.05重量%、より好ましくは0.0005〜0.02重量%、さらに好ましくは0.001〜0.01重量%である。含有量が0.0001重量%未満では上記効果が得られ難く、0.05重量%を超えると、逆にPC(I)の熱安定性に悪影響を与え、また耐加水分解性も低下するので好ましくない。
【0040】
(酸化防止剤)
PC(I)は、酸化防止の目的で酸化防止剤を含有していてもよい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤が挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、具体的には例えば、トリエチレングリコール−ビス(3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。
またラクトン系酸化防止剤としては、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン、5,7−ジ−t−ブチル−3−(2,3−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン等が挙げられる。これら酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート共重合体に対して、0.0001〜0.05重量%である。
【0041】
(離型剤)
PC(I)は、離型剤として、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステルを含有していてもよい。一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステルを配合することにより、PC(I)の成形時の金型からの離型性が改良され、光学部品の成形においては、離型荷重が少なく離型不良による成形品の変形を防止できる。また、PC(I)の溶融流動性が改善される利点もある。
かかる高級脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の一価または多価アルコールと、炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。
また、かかる一価または多価アルコールと、飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、2−エチルヘキシルステアレートなどが挙げられるが、なかでもステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましく用いられる。
【0042】
離型剤の含有量は、PC(I)に対して、好ましくは0.01〜2重量%、より好ましくは0.015〜0.5重量%、さらに好ましくは0.02〜0.2重量%である。含有量が0.01重量%未満では上記効果が得られず、2重量%を超えると成形時における金型表面の汚れの原因ともなる。
PC(I)には、さらに光安定剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤などの添加剤を、耐熱性や透明性を損なわない範囲で含有していてもよい。ポリカーボネート共重合体に添加剤を混合するには、任意の方法で実施することができる。例えばタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機などで混合する方法が適宜用いられる。
【0043】
(比粘度)
PC(I)は、その0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し20℃で測定した比粘度が、好ましくは0.17〜0.55、より好ましくは0.21〜0.45の範囲である。比粘度が0.17未満では成形品が脆くなり、0.55より高くなると溶融粘度および溶液粘度が高くなり、取扱いが困難になる。
【0044】
(ガラス転移温度)
PC(I)は、昇温速度20℃/minにて測定したガラス転移温度(Tg)が、好ましくは150℃〜250℃、より好ましくは160〜245℃である。Tgが150℃以下では、PC(I)を用いて形成した光学部品の使用する用途によっては耐熱性が十分でなく、一方Tgが250℃以上では溶融粘度が高くなり、成形が困難となる。
【0045】
(光弾性係数)
PC(I)の光弾性係数は、好ましくは45×1013cm2/dyne以下、より好ましくは40×1013cm2/dyne以下である。光弾性係数が45×1013cm2/dyneより大きい場合、成形の際に生じる成形歪みが大きくなり、光学部材として使用することが困難となる。
【0046】
(配向複屈折率)
PC(I)の後述する方法で測定した配向複屈折率の絶対値は、好ましくは1.0×10−3未満、より好ましくは0.5×10−3未満である。かかる範囲内の複屈折率の値を有すると配向に起因する複屈折が小さくなり、レンズなどの光学部材では画像低下なく、高解像度が得られる。
【0047】
(吸水率)
PC(I)は、ASTM D−570に従い、φ45mm成形プレートを水中浸漬し重量変化率(重量%)により求められた24時間後における吸水率が0.25%以下であることが好ましい。0.25%より大きい場合、吸水によるレンズの寸法変化により画像低下が生じるため、好ましくない。
【0048】
(アッベ数)
PC(I)は、589nmにおける屈折率が、1.600〜1.650であることが好ましい。PC(I)は、アッベ数が20〜35であることが好ましい。PC(I)は、589nmにおける屈折率が、1.600〜1.650であり、アッベ数が20〜35であることが好ましい。PC(I)は、589nmにおける屈折率が、1.610〜1.650であり、アッベ数が20〜30であることがより好ましい。589nmにおける屈折率およびアッベ数は、JIS−K7142に準拠して、光源に波長選択フィルターを有するアッベ屈折計を用い、波長をC線(656nm)、D線(589nm)、F線(486nm)に変えて屈折率を測定し、得られた値から次式により求める。
【0049】
【数1】
【0050】
νD:アッベ数
nD:波長589nmに対する光の屈折率
nF:波長486nmに対する光の屈折率
nC:波長656nmに対する光の屈折率
【0051】
(レンズ)
本発明におけるレンズとは、光学機器用の部品となる光学素子であるピックアップレンズ、カメラレンズ、マイクロアレーレンズ、プロジェクターレンズおよびフレネルレンズなどを指す。具体的には、レンズとしては二つの球面もしくは非球面の屈折表面を持ち、光を透過させうるものを指し、これを満たすものであれば特に限定されるものではない。例えば、球面レンズ,非球面レンズ,ピックアップレンズ、カメラレンズ、マイクロアレーレンズ、プロジェクターレンズおよびフレネルレンズ等の種類が挙げられる。
本発明のレンズは、射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、溶液キャスティング法などにより成形される。成形の容易性やコストの面から特には射出成形法あるいは射出圧縮成形法により成形されることが好ましい。
【0052】
(レンズの光線透過率)
本発明のレンズは、成形板の550nmにおける全光線透過率が80%以上であることが好ましい。更には85%以上であることが好ましい。透過率が80%より低いと、光学部材として使用することは困難である。
【0053】
(レンズの複屈折)
また、本発明のレンズは、成形板の550nmにおけるリターデーションをRe550(nm)、透過率およびリターデーションの測定部位の厚みをd(mm)としたとき、
Re550(nm)/d(mm)≦10×10−6
を満たしていることが好ましい。一般的なビスフェノールAタイプのポリカーボネートからなる光学素子はリターデーションが大きい。成形条件によりその値を低減することは可能な場合もあるが、通常その条件幅は非常に小さく、従って成形が非常に難しくなり、多くの場合、上記式を満たすことができない。本発明におけるPC(I)は、樹脂の配向により生じるリターデーションが小さく、また成形歪みも小さいため、成形条件を厳密に設定しなくても良好な光学素子を得ることができる。
【0054】
<光学ユニット>
本発明の光学ユニットは、第1のレンズとして前述のPC(I)からなるレンズ、並びに第2のレンズとしてアッベ数が45〜60であるレンズを含む。第2のレンズのアッベ数は、好ましくは50〜60である。
第2のレンズとして、PC(I)からなるレンズとはアッベ数が異なり、且つ複屈折の低いレンズを用いることにより、色収差を補正する効果が得られる。第1、第2のレンズの複屈折は、厚さ0.8mmの平凸レンズの垂直入射による位相差が100nm以下であることが好ましい。
第2のレンズとして、脂環式ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、オレフィン・マレイミド共重合体、ポリ(1,3−シクロヘキサンジエン)からなるレンズが好ましい。特に脂環式ポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0055】
脂環式ポリオレフィン樹脂としては、具体的には、特表2001−072870号等に開示されるノルボルネン系の脂環式ポリオレフィン樹脂、特開2004−51949号等に開示されるメタクリル基含有ノルボルネン系の脂環式ポリオレフィン樹脂、特開2001−26693号等に開示されるエチレンとシクロオレフィンの共重合体からなる脂環式ポリオレフィン樹脂が挙げられる。また、市販品としては、日本ゼオン社製のゼオネックス(ZEONEX)登録商標、JSR株式会社製のアートン(ARTON)登録商標、三井化学株式会社製のアペル(APEL)登録商標、等が挙げられる。
脂環式ポリオレフィンの波長589nm(Na−D線)における屈折率が1.450〜1.550であり、且つアッベ数が45〜60であることが好ましい。
複数のレンズをホルダで一体化した光学ユニットは、小型軽量化、コストダウンが求められており、プラスチックレンズが好適に使用されている。特に、光学特性が良好な脂環式ポリオレフィンが用いられている。但し、脂環式ポリオレフィンからなるレンズを用いて光学ユニットを形成する場合、アッベ数が大きく異なる素材からなるレンズと組み合わせて色収差を補正する光学設計を行う必要がある。脂環式ポリオレフィンは、アッベ数が45〜60程度であるから、アッベ数の低いPC(I)からなるレンズを好適に使用することができる。
【0056】
本発明の光学ユニットは、例えば、射出成形時の配向による複屈折を相殺するために、複数のレンズの組合せ方向を設定した状態で筒状のホルダへ組み込み製造することができる。また、レンズをホルダへ組み込む際に新たな応力、例えば接着固定であれば接着剤の硬化収縮に伴う応力、また、はめ込み固定であればホルダによる締め付け応力といったものが加わり、この応力に基づいて新たな複屈折が生じる。そのため第1のレンズが配置されるホルダと、第2のレンズが配置されるホルダを別々に形成し、一方のホルダを他方のホルダに当接させ、次いでホルダの一方の光軸を回転軸として回転させ、配向複屈折を相殺させた後に、両ホルダを接続固定する方法も利用できる。
光学ユニットは、複数のアッベ数が45〜60のプラスチックレンズを含むことが好ましい。本発明の光学ユニットは、携帯電話、デジタルカメラなどの光学ユニットとして好適に使用できる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、何らこれに限定されるものではない。実施例および比較例において「部」は重量部である。なお評価は下記の方法に従った。
【0058】
(1)比粘度
ポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し20℃の温度で測定した。
【0059】
(2)ガラス転移点(Tg)
ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)社製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定した。
【0060】
(3)吸水率
ポリカーボネート樹脂4.0gを45mmφの金型に投入し、温度280℃の圧縮成形機に1分保持した後、加圧した状態で室温まで冷却し、45mmφ圧縮成形プレートを得た。その後、ASTM D−570に従い、φ45mm圧縮成形プレートを24時間、温度23℃の水中に浸漬し、浸漬前後の重量変化率(重量%)により吸水率を測定した。
【0061】
(4)光弾性係数
塩化メチレン100mlにポリカーボネート共重合体(I)ペレット5gを溶解させ、その溶液を平坦なガラス板上にキャストして一晩放置し、キャストフィルムを作成した。該フィルムを60℃、2時間乾燥させた後、長さ50mm、幅20mm、平均厚み150μmのフィルムを作製し、日本分光(株)製エリプソメータM−220に光弾性ステージをセットして測定を行った。測定条件は、フィルムに1N以下の荷重をかけ、そのときの位相差を測定した。測定は5点行い、下記算出式により、光弾性係数を算出した。
Re=F×c×d
Re:位相差[nm]
F:応力[N/m2]
c:光弾性定数[m2/N]
d:厚み[nm]
【0062】
(5)アッベ数
上記(4)で作成したキャストフィルムを用い、JIS−K7142に準拠して、光源に波長選択フィルターを有するアッベ屈折計を用い、波長をC線(656nm)、D線(589nm)、F線(486nm)に変えて屈折率を測定し、得られた屈折率を用いて、アッベ数を測定した。
【0063】
(6)配向複屈折率
ポリカーボネート共重合体(I)を塩化メチレンに溶解させ、15重量%の塩化メチレン溶液を、平坦なガラス板上にキャストして平均厚み60μm、幅方向の厚さバラツキが1.1μmのフィルムを作製した。得られたフィルムの端部を切り落として幅10mm、長さ100mmとし、塩化メチレン溶液を除去するため該フィルムを120℃、2時間乾燥させた。得られたフィルムを所定延伸温度(ガラス転移温度+10℃)にて長さ方向に延伸速度15mm/minで一軸延伸を行い、幅7.1mm、平均厚み42μm、長さ200mmの2倍延伸フィルムを得た。該フィルムを偏光板にて観察を行ったところ、均一に延伸されていることを確認した。その後、日本分光(株)製エリプソメータ(型式:M−220)に複屈折ステージをセットし、位相差を測定した。得られた位相差から下記式により配向複屈折率を算出した。
Δn×10−3=Ret/d
Δn:配向複屈折率
Ret:位相差[nm]
d:フィルム厚み[μm]
【0064】
(7)全光線透過率(%T)
(株)日本製鋼所製射出成形機N−20Cを用いて厚さ1.0mm、幅1.0mm、長さ2.0mmの成形片を射出成形した。成形片の550nmにおける全光線透過率を、日立製作所(株)製U−4001型分光光度計により測定した。
【0065】
(8)位相差(Re550)
上記(7)で作成した成形片の550nmにおける垂直入射複屈折を、日本分光(株)製M−220型エリプソメータにて測定した。
【0066】
(9)平凸レンズの複屈折評価
(株)日本製鋼所製射出成形機N−20Cを用いて表2に示す成形条件にて外径2.0mm、中心厚0.8mm、焦点距離2.0mmの平凸レンズを射出成形した。成形できたものについては、(株)王子計測機器製、微小面積位相差測定装置KOBRA−CCDを用いて波長590nmにおける中心部分の位相差を測定した。
【0067】
(10)光学ユニットの作成
図1に示す光学ユニットを、以下の要領で作成した。第1のレンズ(1)を、ポリカーボネート共重合体(I)を射出成形して作成した。第2のレンズ(2)を、脂環式ポリオレフィン(日本ゼオン(株)製、製品名ZEONEXTM480R)を射出成形して作成した。第1のレンズ(1)を、第1のホルダ(3)に組み込み、第2のレンズ(2)を、第2のホルダ(4)に組み込んだ。第1のホルダ(3)と第2のホルダ(4)を接合する構造とした。光軸(6)を中心軸として回転させることで2つのレンズ(1)、(2)の組合せ、光学特性を最適化した後に、接着剤で接続固定し一体化した。得られたレンズユニットの仕様は、焦点距離5.8mm、F値2.0、受光サイズ直径7.2mm、レンズ全長15.4mm、レンズ直径14mmである。
【0068】
(11)レンズユニットの評価
図2に示す評価システムでレンズユニット(7)をアキュートロジック社製MTF(Modulation Transfer Function)測定ユニット(8)にレンズユニット(7)をセットして、ISO12233記載の解像度測定方法に準拠して評価用画像(11)における10本/mmと30本/mmにおける空間周波数特性をコンピュータ(9)で画像解析し測定した。MTF特性において10本/mmが1に近いほどコントラスト特性がよく、30本/mmが1に近いほど高解像力を備えたレンズである。
【0069】
実施例1
(ポリカーボネート共重合体(I)の合成)
温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器に、48%水酸化ナトリウム水溶液69.1部およびイオン交換水301.6部を仕込み、これに9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン51.5部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン23.9部およびハイドロサルファイト0.15部を溶解した後、塩化メチレン231.5部を加え、撹拌下、15〜25℃でホスゲン28.0部を約60分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液8.6部およびp−tert−ブチルフェノール1.41部を加え、撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン0.07部を加え、さらに28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、さらに水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで水洗を繰り返し、ポリカーボネート共重合体(I)の塩化メチレン溶液を得た。
次いで、この溶液を目開き0.3μmのフィルターに通過させ、さらに軸受け部に異物取出口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネート共重合体(I)をフレーク化し、引続き、含液フレークを粉砕・乾燥してパウダーを得た。かかるパウダーに、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いて、ペレット化した。得られたポリカーボネート共重合体(I)(BCF:DED=65モル%:35モル%)の物性値を表1に示す。
【0070】
(成形片)
その後、120℃で5時間乾燥後、(株)日本製鋼所製射出成形機N−20Cを用いて厚さ1.0mm、幅1.0mm、長さ2.0mmの成形片を表2記載の成形条件にて射出成形した。成形片の550nmにおける全光線透過率および複屈折を測定し、表2に示す。
【0071】
(レンズ)
また、同じペレット、同成形機を用いて表2に示す成形条件にて外径2.0mm、中心厚0.80mm、焦点距離2.0mmの平凸レンズを射出成形した。成形できたものについては、(株)王子計測機器製微小面積位相差測定装置KOBRA−CCDを用いて波長590nmにおける位相差を測定し、結果を表3に示した。
【0072】
(光学ユニット)
第1のレンズ(1)として、ポリカーボネート共重合体(I)からなるレンズを用い、第2のレンズ(2)として脂環式ポリオレフィン(日本ゼオン(株)製、製品名ZEONEXTM480R)からなるレンズ(アッベ数56)を用い光学ユニットを作成した。第1のレンズ(1)を、第1のホルダ(3)に組み込み、第2のレンズ(2)を、第2のホルダ(4)に組み込んだ。第1のホルダ(3)と第2のホルダ(4)を接合する構造とした。光軸(6)を中心軸として回転させることで2つのレンズ(1)、(2)の組合せ、光学特性を最適化した後に、接着剤で接続固定し一体化した。
得られた光学ユニットの仕様は、焦点距離5.8mm、F値2.0、受光サイズ直径7.2mm、レンズ全長15.4mm、レンズ直径14mmであった。光学ユニットをアキュートロジック社製MTF(Modulation Transfer Function)測定ユニット(8)にセットして、ISO12233記載の解像度測定方法に準拠して評価用画像(11)における空間周波数特性を測定し、結果を表4に記載した。
【0073】
実施例2
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン55.4部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン20.5部とした以外は全て実施例1と同様にし、表1に記載の特性を有するポリカーボネート共重合体(I)のペレットを得た(BCF:DED=70モル%:30モル%)。さらに、表2および表3に記載の成形条件で成形片および平凸レンズを成形した以外は実施例1と同様にして評価し、結果を表2および表3に併記した。
また、図1に示す光学ユニットを第1のレンズ(1)に上記ポリカーボネート共重合体(I)、第2のレンズ(2)を、脂環式ポリオレフィン(日本ゼオン(株)製、製品名ZEONEXTM480R)を用いて射出成形によって作成した(アッベ数56)。作成した光学ユニットを、アキュートロジック社製MTF(Modulation Transfer Function)測定ユニット(8)にセットして、ISO12233記載の解像度測定方法に準拠して評価用画像(11)における空間周波数特性を測定し、結果を表4に記載した。
【0074】
実施例3
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン59.4部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン17.1部とした以外は全て実施例1と同様にし、表1に記載の特性を有するポリカーボネート共重合体(I)のペレットを得た(BCF:DED=75モル%:25モル%)。さらに、表2および表3に記載の成形条件で成形片および平凸レンズを成形した以外は実施例1と同様にして評価し、結果を表2および表3に併記した。 また、図1に示す光学ユニットを第1のレンズ(1)に上記ポリカーボネート共重合体(I)、第2のレンズ(2)を、脂環式ポリオレフィン(日本ゼオン社製、製品名ZEONEXTM480R)を用いて射出成形によって作成した(アッベ数56)。作成した光学ユニットを、アキュートロジック社製MTF(Modulation Transfer Function)測定ユニット(8)にセットして、ISO12233記載の解像度測定方法に準拠して評価用画像(11)における空間周波数特性を測定し、結果を表4に記載した。
【0075】
比較例1
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン31.7部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン41.0部とした以外は全て実施例1と同様にし、表1に記載の特性を有するポリカーボネート共重合体のペレットを得た。さらに、表2および表3に記載の成形条件で成形片および平凸レンズを成形した以外は実施例1と同様にして評価し、結果を表2および表3に併記した。 また、図1に示す光学ユニットを第1のレンズ(1)に上記ポリカーボネート共重合体(I)、第2のレンズ(2)を、脂環式ポリオレフィン(日本ゼオン(株)製、製品名ZEONEXTM480R)を用いて射出成形によって作成した(アッベ数56)。作成した光学ユニットを、アキュートロジック社製MTF(Modulation Transfer Function)測定ユニット(8)にセットして、ISO12233記載の解像度測定方法に準拠して評価用画像(11)における空間周波数特性を測定し、結果を表4に記載した。
【0076】
比較例2
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン71.2部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン6.8部とした以外は全て実施例1と同様にし、表1に記載の特性を有するポリカーボネート共重合体のペレットを得た。さらに、表2および表3に記載の成形条件で成形片および平凸レンズを成形した以外は実施例1と同様にして評価し、結果を表2および表3に併記した。 また、図1に示す光学ユニットを第1のレンズ(1)に上記ポリカーボネート共重合体(I)、第2のレンズ(2)を、脂環式ポリオレフィン(日本ゼオン社製、製品名ZEONEXTM480R)を用いて射出成形によって作成した(アッベ数56)。作成した光学ユニットを、アキュートロジック社製MTF(Modulation Transfer Function)測定ユニット(8)にセットして、ISO12233記載の解像度測定方法に準拠して評価用画像(11)における空間周波数特性を測定し、結果を表4に記載した。
【0077】
比較例3
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンより得られたポリカーボネート(帝人化成(株)製パンライトAD−5503)を用い、さらに、表2および表3に記載の成形条件で成形片および平凸レンズを成形した以外は実施例1と同様にして評価し、結果を表2および表3に併記した。 また、図1に示す光学ユニットを第1のレンズ(1)に上記ポリカーボネート樹脂(I)、第2のレンズ(2)を、脂環式ポリオレフィン(日本ゼオン(株)製、製品名ZEONEXTM480R)を用いて射出成形によって作成した(アッベ数56)。作成した光学ユニットを、アキュートロジック社製MTF(Modulation Transfer Function)測定ユニット(8)にセットして、ISO12233記載の解像度測定方法に準拠して評価用画像(11)における空間周波数特性を測定し、結果を表4に記載した。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の光学ユニットは、良好な光学特性を有しているため、携帯電話、デジタルカメラなどの光学ユニットとして好適に使用できる。
【符号の説明】
【0083】
1 第1のレンズ
2 第2のレンズ
3 第1のホルダ
4 第2のホルダ
5 接合面
6 光軸
7 レンズユニット
8 MTF測定ユニット
9 パーソナルコンピュータ
10 ビデオ出力
11 評価用画像
Claims (12)
- (I)下記式
で表される単位(A)と、下記式
で表される単位(B)とから構成され、全単位中の単位(A)の割合が55〜80モル%であるポリカーボネート共重合体(I)からなるレンズ、および
(II)脂環式ポリオレフィンからなりアッベ数が45〜60のレンズ、
を含む光学ユニット。 - ポリカーボネート共重合体(I)の全単位中の単位(A)の割合が65〜75モル%である請求項1記載の光学ユニット。
- ポリカーボネート共重合体(I)の単位(A)が、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンから誘導される単位である請求項1記載の光学ユニット。
- ポリカーボネート共重合体(I)の単位(B)が、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカンから誘導される単位である請求項1記載の光学ユニット。
- ポリカーボネート共重合体(I)の波長589nm(Na−D線)における屈折率が、1.600〜1.650である請求項1記載の光学ユニット。
- ポリカーボネート共重合体(I)のアッベ数が20〜35である請求項1記載の光学ユニット。
- ポリカーボネート共重合体(I)の波長589nm(Na−D線)における屈折率が、1.600〜1.650であり、アッベ数が20〜35である請求項1記載の光学ユニット。
- ポリカーボネート共重合体(I)の複屈折率が、0.3×10−4〜1×10−4である請求項1記載の光学ユニット。
- 脂環式ポリオレフィンの波長589nm(Na−D線)における屈折率が1.450〜1.550であり、且つアッベ数が45〜60である請求項1記載の光学ユニット。
- 複数の、アッベ数が45〜60のプラスチックレンズを含む請求項1記載の光学ユニット。
- 携帯電話用の請求項1記載の光学ユニット。
- デジタルカメラ用の請求項1記載の光学ユニット。
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