JP5053488B2 - 医用テーブル装置、ガントリ装置、およびx線ctシステム並びに制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医用テーブル装置、ガントリ装置、およびX線CTシステム並びに制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
X線CT(Computerized Tomography)システムは、大別すると、ドーナツ状の空洞部を有する装置(一般に、ガントリ装置とよばれている)、ガントリ装置に対して各種制御信号を与えるとともに、ガントリ装置より得られた信号(データ)に基づいてX線断層像を再構成し、表示する操作コンソール、そして、被検体(患者)をガントリ装置の空洞部内に固定支持するため、および、被検体を空洞部に向けて搬送するためのテーブル装置で構成される。
【0003】
ガントリ装置は、上記空洞部を挟んで設けられたX線発生源(X線管)とこのX線発生源より照射されたX線を検出するX線検出部とを内蔵する回転部を備える。
【0004】
X線CTシステムは、被検体を透過したX線より得られる投影データを収集して、その投影データからX線断層像を再構成することを主目的とする。具体的には、まず、被検体を上記のテーブル装置上に横たえさせて、ガントリ装置に向けて搬送する。そして、X線管を駆動しながらガントリ装置の回転部(X線管とX線検出器)を回転駆動して、異なる角度から被検体に向けてX線を照射し、各角度での被検体を透過したX線を検出する。そして、その検出されたデータ(投影データ)を操作コンソールが受信し、算術演算によってX線断層像を再構成する、という工程を踏むことになる。上記のX線を検出する一連の工程が、一般にスキャンとよばれるものである。
【0005】
X線CTシステムにおけるテーブル装置は一般に、患者がテーブル装置への乗り降りが容易にできるようにするため、また、ガントリ装置の空洞部内に正確に搬送するために、テーブル高さを調整する機構を備えている。
【0006】
また、X線CTシステムにおけるガントリ装置は一般に、被検体に対するスキャンのスライス角を調整するためにガントリ傾斜(チルト)機構を備えている。
【0007】
上記のテーブル高さの調整速度およびガントリチルトの動作速度は、安全性と患者スループットの見地から妥当な速度に設定される。これらの動作速度は一般に、単一の速度である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、スループットを向上させるために、より高速にテーブル高さの調整および/またはガントリチルトを行わせたい場合があるが、単一の速度ではそのようなことを実現することはできない。このとき、単に設定速度を上げるように設計しただけでは安全性が損なわれる危険もある。また、正確な位置合わせが確保できないことになる可能性もある。
【0009】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、安全性および正確な位置合わせ性能を確保しつつ、天板の昇降動作および/またはガントリチルトを高速に行うことのできる医用テーブル装置、ガントリ装置、およびX線CTシステム並びに制御方法を提供し、もって患者スループットの向上を実現することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、例えば本発明の医用テーブル装置は、以下の構成を備える。すなわち、
被検体を載置するための天板を有し、当該天板を垂直方向に移動させる移動手段を備える医用テーブル装置であって、
前記天板の移動の実行を指示する移動指示手段と、
当該天板の移動動作の継続時間長を計測する計測手段と、
当該天板の位置を検出する位置検出手段と、
前記計測手段で計測された当該天板の移動動作の継続時間長と、前記位置検出手段で検出された当該天板の位置とに基づいて、当該天板の移動速度を制御する移動速度制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、例えば本発明のガントリ装置は、以下の構成を備える。すなわち、被検体のX線投影データを収集するスキャンを行うためのガントリおよび、当該ガントリを傾斜させるガントリ傾斜手段を備えるガントリ装置であって、
前記ガントリの傾斜の実行を指示する傾斜指示手段と、
当該ガントリの傾斜動作の継続時間長を計測する計測手段と、
当該ガントリの傾斜角度を検出する角度検出手段と、
前記計測手段で計測された当該ガントリの傾斜動作の継続時間長と、前記角度検出手段で検出された当該ガントリの傾斜角度とに基づいて、当該ガントリの傾斜の動作速度を制御する傾斜速度制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明は、以下の構成を備えるX線CTシステムも提供する。すなわち、
被検体のX線投影データを収集するスキャンを行うためのガントリおよび、当該ガントリを傾斜させるガントリ傾斜手段を備えるガントリ装置と、被検体を載置するための天板を有し、当該天板を垂直方向に移動させる移動手段を備えるテーブル装置と、を備えるX線CTシステムであって、
前記天板の移動の実行を指示する移動指示手段と、
当該天板の移動動作の継続時間長を計測する移動時間計測手段と、
当該天板の位置を検出する位置検出手段と、
前記移動時間計測手段で計測された当該天板の移動動作の継続時間長と、前記位置検出手段で検出された当該天板の位置とに基づいて、当該天板の移動速度を制御する移動速度制御手段と、
前記ガントリの傾斜の実行を指示する傾斜指示手段と、
当該ガントリの傾斜動作の継続時間長を計測する傾斜時間計測手段と、
当該ガントリの傾斜角度を検出する角度検出手段と、
前記傾斜時間計測手段で計測された当該ガントリの傾斜動作の継続時間長と、前記角度検出手段で検出された当該ガントリの傾斜角度とに基づいて、当該ガントリの傾斜の動作速度を制御する傾斜速度制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。
【0014】
(システム構成)
図1は、実施形態におけるX線CTシステムを示す外観斜視図である。100がスキャンを行うためのガントリ装置、200がテーブル装置である。300は操作コンソールであり、ガントリ装置100およびテーブル装置200とは別室に設置されている。
【0015】
ガントリ装置100において、150がいわゆるガントリであって、その内部には、空洞部(開口部)101を挟んだ対向する位置に、ここでは図示しないが、X線管とX線検出器が設けられ、これらX線管およびX線検出器がその位置関係を保ったまま、空洞部101の周りを回転する構造をなしている。したがって、この空洞部内101に被検体を位置させた状態で、この回転を行いながら、X線管の駆動およびX線検出器の検出動作を行うことにより、異なる方向(投影角度)からのX線照射および透過X線の検出(スキャン)を行うことを可能にしている。このガントリ150は床面に固設されているベース160上に取り付けられている。
【0016】
また、ガントリ装置100は、図2、図3に示すようにガントリ150を傾斜(チルト)させる構造を有している。
【0017】
102は操作パネルであり、ここから後述するテーブル装置200におけるスライド操作および昇降操作、ならびにガントリ150のチルト操作を行うことが可能になっている。
【0018】
テーブル装置200は、天板(クレードルともよばれる)201の上に被検体を載置させた後、その天板201をガントリ装置100の空洞部101内に向けてスライドさせる構造および、天板201の高さ(図中矢印yの方向)を調整するための構造を有する。被検体を載置する天板201には、X線透過率が高い材質(例えば、アクリル等の発泡材をCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)等で包んで補強されたもの)が使用される。
【0019】
300は操作コンソールであって、ガントリ装置100と通信する機能、および、ガントリ装置100から転送されてきた投影データを受信し、X線断層像を再構成する機能を有する。また、上記した操作パネル102ではなく、この操作コンソール300からガントリ150のチルト指令を送出することも可能である。
【0020】
図4は、図1の操作パネル102の一例を示す図である。図中、41は天板201をガントリ装置100側にスライドするよう指示するボタンであり、42は天板201をガントリ装置100から遠ざける側に移動するよう指示するボタンである。43は天板201の位置を上昇させるよう指示するボタン、44は逆に下降させるよう指示するボタンである。また、45はテーブル装置200側へのチルトを指示する第1のチルトボタン、46はその逆側へのチルトと指示する第2のチルトボタンである。この操作パネル102の41から46までの各ボタンを押している間、対応する動作が行われ、ボタンを離すとその動作が停止するようになっている。
【0021】
もちろん、その他別の目的のためのボタン類を設けることも可能であるが、ここでは説明を簡単にするためそれらの図示を省略する。
【0022】
また、操作パネル102はこのように天板201のスライド指示用ボタンを含むから、テーブル装置200上に設けてもよい。
【0023】
図5は、図1に示したX線CTシステムにおけるガントリ装置100およびテーブル装置200のブロック構成図である。
【0024】
同図中のテーブル装置200において、202は天板201の高さ(図1の矢印yの方向)を調節するための昇降モータである。昇降モータ202の駆動(駆動速度を含む)は、ガントリ装置100におけるメインコントローラ(後述)の制御の下で駆動する昇降モータドライバ203により制御される。204は昇降モータ202の駆動量を検出するためのエンコーダである。このエンコーダ出力を用いて天板201の高さ方向の位置が計測される。205はガントリ装置100と通信するためのインタフェースである。なお、昇降モータ202およびそれによって移動するための構造そのものは公知のものであるので、その詳述は省略する。また、テーブル装置200はこの他に、天板201をガントリ装置100の空洞部101に向けてスライドさせるためのモータおよびそのドライバを含むものであるがここではそれらの図示を省略している。
【0025】
ガントリ装置100は、その全体の制御をつかさどるメインコントローラ1をはじめ、以下の構成を備える。
【0026】
2aは操作コンソール300との通信を行うためのインタフェース、2bはテーブル装置200との通信を行うためのインタフェースである。ガントリ150内部には、X線発生源であるX線管3(X線管コントローラ4により駆動制御される)、X線の照射範囲を画定するためのスリットを有するコリメータ5が設けられている。
【0027】
また、ガントリ150には、被検体を透過したX線を検出するX線検出部6、およびX線検出部6で得た透過X線より得られる投影データを収集するデータ収集部7も備える。ガントリ150は先に述べたようにチルト構造を有している。このチルトは、モータドライバ8からの駆動信号により駆動されるチルト用モータ9によって行われる。このモータドライバ8によって、チルト用モータ9の駆動速度、すなわちチルトの動作速度も制御されうる。10はチルト用モータ9の駆動量を検出するためのエンコーダである。なお、チルト用モータ9およびそれによってチルトするための構造そのものは公知のものであるので、その詳述は省略する。
【0028】
11は、後述する図8および図10のフローチャートに係るプログラムを記録しているROMである。12は、ワークエリアとして使用されるRAMである。
【0029】
メインコントローラ1は以下の処理を行うことになる。すなわち、
(1)インタフェース2aを介して受信した各種コマンドの解析を行い、それに基づいて上記のX線管コントローラ4、データ収集部7、モータドライバ8、および、テーブル装置200の昇降モータドライバ203に対し、各種制御信号を出力する。
(2)電源投入後に、ROM11に格納された後述する図8および図10のフローチャートに係るプログラムをRAM12にロードし、そのプログラムを実行する。
(3)データ収集部7で収集された投影データを、インタフェース2aを介して操作コンソール300に送出する処理を行う。
(4)エンコーダ10およびテーブル装置200におけるエンコーダ204からの出力を監視する。
(5)内蔵するタイマ13により、操作パネル102における所定の指示ボタンが押され続けている時間を計測する。
【0030】
(天板201の昇降動作の内容)
上記した構成によって、指示ボタン43または44を押すことで、テーブル装置200の天板201の高さ調整を行うことが可能である。実施形態では、昇降動作の継続時間(タイマ13のカウント値に基づいて計測される指示ボタンが押され続けている時間により特定される)と天板201の現在位置(エンコーダ204の出力に基づいて計測される)とに応じて天板201の昇降速度が自動調整される。実施形態では、昇降速度として低速(例えば15mm/sec)モードと高速(例えば30mm/sec)モードとを用意し、この2つのモードを切り替えることで自動調整するものとする。なお、低速モードから高速モードまたは高速モードから低速モードへの切り替え時の速度遷移ならびに、昇降動作開始/停止時の速度遷移は、患者(被検体)に与える衝撃を考慮して設計されることはいうまでもない。
【0031】
ここで、図6を参照されたい。図6は、テーブル装置200の天板201の高さ方向の位置によって制御される昇降速度について説明するための図である。同図中、フロアレベルを0とする高さ方向(y方向)の座標が示されている。天板201がスライドして空洞部101内に位置している場合における天板201の可動範囲の下限(Lower Limit)位置はLLであり、天板201が空洞部101外にある場合における天板201の可動範囲の下限位置はLLLである。また、ULは天板201の可動範囲の上限(Upper Limit)位置である。天板201は、公知のインターロック機構によりLL−UL間もしくはLLL−UL間の範囲外に移動しないようにされている。
【0032】
LLは、ガントリ150のチルト角度によって異なり、チルト角度0°(ガントリ150が垂直に立っている状態)のときにLL−UL間の距離が最大となることは容易に理解されよう。したがって、チルト角度に応じたLLがRAM12に設定される。このRAM12に設定されるべきLLは、例えば、チルト角度と、LLとの対応関係を記述したテーブル(図7に示すような構造を有し、ROM11内にあらかじめ記憶されている)を参照することで特定される。
【0033】
実施形態では、このLLL−UL間の可動範囲において、
(1)天板201が空洞部101内に位置している場合における、下限位置付近(LLからLL+αの範囲)、
(2)上限位置付近(UL−αからULの範囲)、
(3)ISOセンタ位置より所定距離(例えば、140mm)低い位置付近(C1からC2の範囲)、ならびに、
(4)天板201が空洞部101外にある場合における、下限位置付近(LLLからLLL+αの範囲)(ただし、天板201の上昇時のみ)、
では低速モードでしか動作しないように制御される。その理由は、上記(1)、(2)、(4)の場合には、下限位置または上限位置でインターロックがかかる前に緩衝のために減速して安全を確保する必要があるからである。また、上記(3)の場合には、スキャンのために正確な位置制御を行う必要があるからである。これらの位置範囲のことを「低速限定範囲」とよぶことにする。その他の位置においては昇降動作の継続時間に応じて速度モードが自動的に切り替えられる。
【0034】
以下、実施形態におけるガントリ装置100のメインコントローラ1による天板201の昇降動作に係る制御処理を、図8のフローチャートに従って説明する。図8のフローチャートは、操作パネル102の指示ボタン43または44が押されている間に行われる制御処理であって、当該指示ボタンが離されると直ちに処理を終了するようになっていることに注意されたい。なお、先に説明したとおり、図8のフローチャートに係るプログラムはROM11に格納されていたものであり、電源投入後、RAM12にロードされ、メインコントローラ1によって実行されるものである。
【0035】
まず、メインコントローラ1は、オペレータにより操作パネル102の指示ボタン43または44が押されたことを受けて、タイマ13によるカウントを開始するとともに、現在の天板201の高さ位置Yを、テーブル装置200のエンコーダ204の出力より計測する(ステップS1)。そして、低速モードで昇降動作を開始する(ステップS2)。
【0036】
以降、メインコントローラ1は、タイマ13のカウント値から指示ボタン43または44が押され続けている時間を監視するとともに、エンコーダ204の出力より天板201の現在の高さ位置Yを監視している。
【0037】
次のステップS3では、天板201は現在、ガントリ装置100の空洞部101内に位置しているか否かを判定する。天板201が空洞部101内に位置している場合は、ステップS4に進み、天板201が空洞部101内に位置していなければ、ステップS11に進む。天板201が空洞部101内に位置している場合の天板201の高さの下限位置はLLとなり、そうでなければ下限位置はLLLとなる。
【0038】
ステップS4では、天板201の現在の高さ位置Yが下限位置LLまたは上限位置ULに達したか否かを判断する。下限位置LLまたは上限位置ULに達した場合にはインターロックがかかって昇降動作は停止し(ステップS5)、制御処理は終了することになる。
【0039】
天板201の現在の高さ位置Yが下限位置LLまたは上限位置ULに達していない場合は、以下のステップS6からステップS9までの判断処理を経由する低速モード/高速モードの切り替え処理が行われる。ステップS6からステップS9までの判断処理のうちいずれかを満たす場合(yesの場合)には、ステップS2に戻って低速モードで昇降動作が引き続き行われることになる。
【0040】
ステップS6では、高さ位置Yが所定の下限位置付近の範囲(LL<Y≦LL+α)にあるか否かを判断する。
【0041】
ステップS7では、高さ位置YがISOセンタ位置より所定距離低い位置付近の範囲(C1≦Y≦C2)にあるか否かを判断する。
【0042】
ステップS8では、高さ位置Yが所定の上限位置付近の範囲(UL−α≦Y<UL)にあるか否かを判断する。
【0043】
ステップS9では、タイマ13のカウント値に基づいて特定される指示ボタン43または44が押され続けている時間(昇降動作継続時間長)が所定時間T(例えば2秒間)より短いか否かを判断する。
【0044】
そして、上記ステップS5からステップS8までの判断のいずれをも満たさない場合(noの場合)、すなわち、天板201の現在の高さが低速限定範囲内になく、かつ、昇降動作継続時間長が所定時間を経過している場合に、高速モードによる昇降動作が行われることになる(ステップS10)。そして、処理はステップS4に戻って処理が繰り返される。
【0045】
上記したとおり、ステップS3で、天板201が空洞部101内に位置していない場合、ステップS11に進む。ステップS11では、天板201の現在の高さ位置Yが下限位置LLLまたは上限位置ULに達したか否かを判断する。下限位置LLLまたは上限位置ULに達した場合にはインターロックがかかって昇降動作は停止し(ステップS5)、制御処理は終了する。
【0046】
天板201の現在の高さ位置Yが下限位置LLLまたは上限位置ULに達していない場合は、ステップS12に進み、現在の動作は天板201の上昇動作であるか否かを、現在押されているボタンが指示ボタン43であるか否かに基づいて判断する。現在の動作が天板201の上昇動作ではない場合にはそのままステップS7に進む。
【0047】
現在の動作が天板201の上昇動作であるときは、ステップS13に進み、高さ位置Yが下限位置付近の範囲(LLL<Y≦LLL+α)にあるか否かを判断する。高さ位置Yが下限位置付近の範囲(LLL<Y≦LLL+α)にあるときはステップS2に進み、引き続き低速モードで動作させる。一方、高さ位置Yが下限位置付近の範囲(LLL<Y≦LLL+α)にないときは、ステップS7に進む。
【0048】
(ガントリ150のチルト動作の内容)
上記した構成によって、指示ボタン45または46を押すことで、ガントリ150のチルト角度の調整を行うことが可能である。実施形態では、チルト動作の継続時間(タイマ13のカウント値に基づいて計測される指示ボタンが押され続けている時間で特定される)とガントリ150の現在のチルト角度(エンコーダ10の出力に基づいて計測される)とに応じてチルト動作速度が自動調整される。実施形態では、上述した天板201の昇降動作と同様、チルト動作速度として低速(例えば1°/sec)モードと高速(例えば2°/sec)モードとを用意し、この2つのモードを切り替えることで自動調整するものとする。なお、低速モードから高速モードまたは高速モードから低速モードへの切り替え時の速度遷移ならびに、チルト動作開始/停止時の速度遷移は、衝撃を考慮して設計されることはいうまでもない。
【0049】
ここで、図9を参照されたい。図9は、ガントリ150のチルト角度θによって制御されるチルト動作速度について説明するための図である。同図中、Sをチルトの支点とするチルト角度の座標が示されている。BLがチルト可能範囲の後傾限界(Backward Limit)位置、FLがチルト可能範囲の前傾限界(forward Limit)位置である。ガントリ150は、公知のインターロック機構によりこのBL−FL間の範囲を超えてチルトしないようにされている。
【0050】
BLおよびFLは、テーブル装置200の天板201の高さ位置Yによって異なるため、天板201の高さ位置Yに応じたBLおよびFLがRAM12に設定される。このRAM12に設定されるべきBLおよびFLは、例えば、先に示した図7のテーブルを参照することで特定することが可能である。
【0051】
実施形態では、このBL−FL間の可動範囲において、
(1)後傾限界位置付近(BLからBL+γの範囲)、
(2)前傾限界位置付近(FL−γからFLの範囲)、ならびに、
(3)0°付近の一旦停止位置付近(−PからPの範囲)
では、低速モードでしか動作しないように制御される。その理由は、上記(1)、(2)の場合には、後傾限界位置または前傾限界位置でインターロックがかかる前に緩衝のために減速して安全を確保する必要があるからである。また、上記(3)の場合には、スキャンのために正確な位置制御を行う必要があるからである。これらの位置範囲のことを「低速限定範囲」とよぶことにする。その他の位置においてはチルト動作の継続時間に応じて速度モードが自動的に切り替えられる。
【0052】
以下、実施形態におけるガントリ装置100のメインコントローラ1によるガントリ150のチルト動作に係る制御処理を、図10のフローチャートに従って説明する。図10のフローチャートは、操作パネル102の指示ボタン45または46が押されている間に行われる制御処理であって、当該指示ボタンが離されると直ちに処理を終了するようになっていることに注意されたい。なお、先に説明したとおり、図10のフローチャートに係るプログラムはROM11に格納されていたものであり、電源投入後、RAM12にロードされ、メインコントローラ1によって実行されるものである。
【0053】
まず、メインコントローラ1は、オペレータにより操作パネル102の指示ボタン45または46が押されたことを受けて、タイマ13によるカウントを開始するとともに、現在のチルト角度θを、エンコーダ10の出力より計測する(ステップS11)。そして、低速モードでチルト動作を開始する(ステップS12)。
【0054】
以降、メインコントローラ1は、タイマ13のカウント値から指示ボタン45または46が押され続けている時間を監視するとともに、エンコーダ10の出力より現在のチルト角度θを監視している。
【0055】
ステップS13で、現在のチルト角度θが後傾限界位置BLまたは前傾限界位置FLに達したか否かを判断する。後傾限界位置BLまたは前傾限界位置FLに達した場合にはインターロックがかかってチルト動作は停止し(ステップS14)、制御処理は終了することになる。
【0056】
現在のチルト角度θが後傾限界位置BLまたは前傾限界位置FLに達していない場合は、以下のステップS15からステップS18のの判断処理を経由する低速モードおよび高速モードの切り替え処理が行われる。ステップS15からステップS18までの判断処理のうちいずれかを満たす場合(yesの場合)には、ステップS12に戻って低速モードでチルト動作が行われることになる。
【0057】
ステップS15では、チルト角度θが後傾限界位置付近の所定の範囲(BL<θ≦BL+γ)にあるか否かを判断する。
【0058】
ステップS16では、チルト角度θが0°付近の所定範囲(|θ|<P)にあるか否かを判断する。
【0059】
ステップS17では、チルト角度θが前傾限界位置付近の所定の範囲(FL−γ≦θ<FL)にあるか否かを判断する。
【0060】
ステップS18では、タイマ13のカウント値に基づいて特定される指示ボタン45または46が押され続けている時間(チルト動作継続時間長)が所定時間Q(例えば2秒間)より短いか否かを判断する。
【0061】
そして、上記ステップS15からステップS18までの判断のいずれをも満たさない場合(noの場合)、すなわち、現在のチルト角度θが低速限定範囲内になく、かつ、チルト動作継続時間長が所定時間を経過している場合に、高速モードによるチルト動作が行われることになる(ステップS19)。そして、処理はステップS13に戻って処理が繰り返される。
【0062】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、安全性を確保しつつ、天板の昇降動作および/またはガントリチルトを高速に行うことができるように、2段階の速度モードが自動的に切り替えられる。このとき、一定時間以内では低速モードで動作するので、従来からの正確な位置合わせ性能を損なうこともない。
【0063】
なお、上述したガントリ150のチルト動作速度の制御において、チルト指令が操作パネル102からではなく、操作コンソール300から送出されてきた場合には、上述のフローチャートに従う処理を適用せず、低速モードによってのみ動作させるようにすることが好ましい。先に述べたとおり、操作コンソールは一般には別室に設置されているため、安全性を確保するためである。
【0064】
また、前傾限界位置に向けてチルト動作を行う場合において、チルト角度が所定値以上になったときには低速モードで動作させるようにしてもよい。天板201上の患者に恐怖感を与えないためと、安全性を確保するためである。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、安全性および正確な位置合わせ性能を確保しつつ、天板の昇降動作および/またはガントリチルトを高速に行うことのできるX線CTシステムおよびその制御方法を提供し、もって患者スループットの向上を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態におけるX線CTシステムを示す外観斜視図である。
【図2】ガントリのチルト状態の一例を示す図である。
【図3】ガントリのチルト状態の一例を示す図である。
【図4】実施形態における操作パネルの一例を示す図である。
【図5】実施形態におけるガントリ装置およびテーブル装置のブロック構成図である。
【図6】実施形態におけるテーブル装置の天板の昇降速度の制御について説明するための図である。
【図7】実施形態におけるガントリのチルト角度と、テーブル装置の天板の可動範囲との対応関係を記述したテーブルの一例を示す図である。
【図8】実施形態におけるテーブル装置の天板の昇降動作に係る制御処理を示すフローチャートである。
【図9】実施形態におけるガントリのチルト動作速度の制御について説明するための図である。
【図10】実施形態におけるガントリのチルト動作に係る制御処理を示すフローチャートである。
Claims (7)
- 被検体のX線投影データを収集するスキャンを行うためのガントリおよび、該ガントリを傾斜させる傾斜手段を有するガントリ装置と、被検体を載置するための天板および、該天板を昇降させる昇降手段を有するテーブル装置とを備えるX線CTシステムであって、
前記天板の昇降の実行を指示する指示手段と、
前記天板の昇降指示動作の継続時間長を計測する計測手段と、
前記天板の高さ位置を検出する位置検出手段と、
前記ガントリの傾斜角度を検出する角度検出手段と、
前記計測手段で計測された前記天板の昇降指示動作の継続時間長が所定時間を経過しており、かつ、前記位置検出手段で検出された前記天板の高さ位置が、前記角度検出手段で検出された前記ガントリの傾斜角度に応じて定まる前記天板の可動範囲の上限位置付近および下限位置付近にないときに、前記天板の昇降速度を、前記天板の昇降指示動作の継続時間長が前記所定時間より短いときに用いられる第1の昇降速度よりも高速な第2の昇降速度にするよう制御する制御手段とを備えているX線CTシステム。 - 被検体のX線投影データを収集するスキャンを行うためのガントリおよび、該ガントリを傾斜させる傾斜手段を有するガントリ装置と、被検体を載置するための天板および、該天板を昇降させる昇降手段を有するテーブル装置とを備えるX線CTシステムであって、
前記天板の昇降の実行を指示する指示手段と、
前記天板の昇降指示動作の継続時間長を計測する計測手段と、
前記天板の高さ位置を検出する位置検出手段と、
前記ガントリの傾斜角度を検出する角度検出手段と、
前記計測手段で計測された前記天板の昇降指示動作の継続時間長が所定時間を経過しており、かつ、前記位置検出手段で検出された前記天板の高さ位置が、前記角度検出手段で検出された前記ガントリの傾斜角度に応じて定まる前記天板の可動範囲の上限位置付近および下限位置付近並びにISOセンタ位置より所定距離だけ低い位置付近にないときに、前記天板の昇降速度を、前記天板の昇降指示動作の継続時間長が前記所定時間より短いときに用いられる第1の昇降速度よりも高速な第2の昇降速度にするよう制御する制御手段とを備えているX線CTシステム。 - 前記制御手段は、前記天板の昇降速度のモードを、低速モードと高速モードとで切り替える請求項1または請求項2に記載のX線CTシステム。
- 被検体のX線投影データを収集するスキャンを行うためのガントリおよび、該ガントリを傾斜させる傾斜手段を有するガントリ装置と、被検体を載置するための天板および、該天板を昇降させる昇降手段を有するテーブル装置とを備えるX線CTシステムであって、
前記ガントリの傾斜の実行を指示する指示手段と、
前記ガントリの傾斜指示動作の継続時間長を計測する計測手段と、
前記ガントリの傾斜角度を検出する角度検出手段と、
前記天板の高さ位置を検出する位置検出手段と、
前記計測手段で計測された前記ガントリの傾斜指示動作の継続時間長が所定時間を経過しており、かつ、前記角度検出手段で検出された前記ガントリの傾斜角度が、前記位置検出手段で検出された前記天板の高さ位置に応じて定まる前記ガントリの傾斜可能範囲の前傾限界位置付近および後傾限界位置付近にないときに、前記ガントリの傾斜動作速度を、前記ガントリの傾斜指示動作の継続時間長が前記所定時間より短いときに用いられる第1の傾斜動作速度よりも高速な第2の傾斜動作速度にするよう制御する制御手段とを備えているX線CTシステム。 - 被検体のX線投影データを収集するスキャンを行うためのガントリおよび、該ガントリを傾斜させる傾斜手段を有するガントリ装置と、被検体を載置するための天板および、該天板を昇降させる昇降手段を有するテーブル装置とを備えるX線CTシステムであって、
前記ガントリの傾斜の実行を指示する指示手段と、
前記ガントリの傾斜指示動作の継続時間長を計測する計測手段と、
前記ガントリの傾斜角度を検出する角度検出手段と、
前記天板の高さ位置を検出する位置検出手段と、
前記計測手段で計測された前記ガントリの傾斜指示動作の継続時間長が所定時間を経過しており、かつ、前記角度検出手段で検出された前記ガントリの傾斜角度が、前記位置検出手段で検出された前記天板の高さ位置に応じて定まる前記ガントリの傾斜可能範囲の前傾限界位置付近および後傾限界位置付近並びに0°付近にないときに、前記ガントリの傾斜動作速度を、前記ガントリの傾斜指示動作の継続時間長が前記所定時間より短いときに用いられる第1の傾斜動作速度よりも高速な第2の傾斜動作速度にするよう制御する制御手段とを備えているX線CTシステム。 - 前記制御手段は、前記ガントリの傾斜動作速度のモードを、低速モードと高速モードとで切り替える請求項4または請求項5に記載のX線CTシステム。
- 被検体のX線投影データを収集するスキャンを行うためのガントリおよび、該ガントリを傾斜させる傾斜手段を有するガントリ装置と、被検体を載置するための天板および、該天板を昇降させる昇降手段を有するテーブル装置とを備えるX線CTシステムであって、
前記天板の昇降の実行を指示する昇降指示手段と、
前記天板の昇降指示動作の継続時間長を計測する第1の計測手段と、
前記天板の高さ位置を検出する位置検出手段と、
前記ガントリの傾斜の実行を指示する傾斜指示手段と、
前記ガントリの傾斜指示動作の継続時間長を計測する第2の計測手段と、
前記ガントリの傾斜角度を検出する角度検出手段と、
前記第1の計測手段で計測された前記天板の昇降指示動作の継続時間長が所定時間を経過しており、かつ、前記位置検出手段で検出された前記天板の高さ位置が、前記角度検出手段で検出された前記ガントリの傾斜角度に応じて定まる前記天板の可動範囲の上限位置付近および下限位置付近にないときに、前記天板の昇降速度を、前記天板の昇降指示動作の継続時間長が該所定時間より短いときに用いられる第1の昇降速度よりも高速な第2の昇降速度にするよう制御する昇降速度制御手段と、
前記第2の計測手段で計測された前記ガントリの傾斜指示動作の継続時間長が所定時間を経過しており、かつ、前記角度検出手段で検出された前記ガントリの傾斜角度が、前記位置検出手段で検出された前記天板の高さ位置に応じて定まる前記ガントリの傾斜可能範囲の前傾限界位置付近および後傾限界位置付近にないときに、前記ガントリの傾斜動作速度を、前記ガントリの傾斜指示動作の継続時間長が該所定時間より短いときに用いられる第1の傾斜動作速度よりも高速な第2の傾斜動作速度にするよう制御する傾斜動作速度制御手段とを備えているX線CTシステム。
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