以下、本発明の反射型光結合装置及びこの反射型光結合装置を搭載した電子機器の実施形態について説明する。
[実施形態1]
まず初めに、本発明の実施形態1に係る反射型光結合装置の概要について説明する。
なお、本明細書においては、照度センサが組み込まれたハイブリッド構造の反射型光結合装置を例に挙げて説明を行う。また、本明細書では、当該ハイブリッド構造の反射型光結合装置のうち、反射型光結合装置として機能する部位を反射型光結合装置部位といい、照度センサとして機能する部位を照度センサ部位という。
本実施形態の反射型光結合装置は、金属配線(不図示)が形成された薄板形状の基板と、当該基板の表面に実装されており、第1の光の一例である赤外線を発光する発光チップ及び当該赤外線を受光する第1受光チップ、ならびに第2の光の一例である可視光線を受光する第2受光チップと、発光チップ表面を覆う発光チップ樹脂部(後述の第1赤外線透過樹脂部5)と、第1受光チップ表面を覆う第1受光チップ樹脂部(後述の第2赤外線透過樹脂部6)と、第2受光チップ表面を覆う第2受光チップ樹脂部(後述の可視光線透過樹脂部7)と、第1赤外線透過樹脂部と第2赤外線透過樹脂部とを隔てる第1遮光部材(後述の第1遮光部材8a)を少なくとも備えた遮光ブロックとから構成されている。さらに、この反射型光結合装置は、前記遮光ブロックが第2受光チップ樹脂部を形成する際に用いられる樹脂を用いて形成されていることを特徴としている。
なお、このような構成において、発光チップ、第1受光チップ、発光チップ樹脂部及び第1受光チップ樹脂部は反射型光結合装置部位を構成し、第2受光チップ及び第2受光チップ樹脂部は照度センサ部位を構成している。
本実施形態によれば、遮光ブロックが第2受光チップ樹脂部を形成する際に用いられる樹脂を用いて形成されているため、製造手順及び構成を簡単化できる。その結果、製造時のコストを低減できる。さらに、遮光ブロックによって発光チップから第1受光チップへの赤外線の直達を防止できるため、高感度の反射型光結合装置を提供できる。
<実施形態1の具体例1>
次に、本実施形態における反射型光結合装置の具体例1について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施形態1における反射型光結合装置の具体例1を示す説明図であり、図2は、図1に示す反射型光結合装置の製造過程の一例を示す説明図である。
本具体例の反射型光結合装置は、金属配線(不図示)が形成された薄板形状の基板1の表面1aに、赤外線を発光する発光チップ2と、当該赤外線を受光する第1受光チップ3と、可視光線を受光する第2受光チップ4とがそれぞれ所定の位置に実装され、かつ、発光チップ2の表面には第1赤外線透過樹脂部5が被覆され、第1受光チップ4の表面には第2赤外線透過樹脂部6が被覆され、第2受光チップ4の表面には可視光線透過樹脂部7で被覆されている。さらに、これら第1赤外線透過樹脂部5、第2赤外線透過樹脂部6、及び可視光線透過樹脂部7をそれぞれ隔てるようにして、横向き略略T字形状に形成された遮光ブロック8が配置されている。
すなわち、遮光ブロック8は、一体形成された第1遮光部材8aと第2遮光部材8bとから構成されている。第1遮光部材8aは、第1赤外線透過樹脂部5と第2赤外線透過樹脂部6との境界部分に形成されており、当該第1赤外線透過樹脂部5と第2赤外線透過樹脂部6とを隔てる部材である。また、第2遮光部材8bは、第1赤外線透過樹脂部5及び第2赤外線透過樹脂部6と可視光線透過樹脂部7との境界部分に形成されており、当該第1赤外線透過樹脂部5及び第2赤外線透過樹脂部6と可視光線透過樹脂部7とを隔てる部材である。
このような構成において、発光チップ2及び第1赤外線透過樹脂部5によって発光部が構成されており、第1受光チップ3及び第2赤外線透過樹脂部6によって第1受光部が構成されており、第2受光チップ4及び可視光線透過樹脂部7によって第2受光部が構成されている。これら発光部及び第1受光部は、反射型光結合装置として機能する部位であり、第2受光部は、照度センサとして機能する部位である。
さらに、上記赤外線透過樹脂部5、第2赤外線透過樹脂部6、可視光線透過樹脂部7、及び遮光ブロック8が形成されている部分を除く基板1の表面1a上の露出部分には、金属配線を保持するための保護樹脂部9が設けられている。この保護樹脂部9は、絶縁性を有する材料で形成されており、例えば可視光線透過樹脂部7と同様の可視光線透過樹脂を用いて形成されたものであってもよい。また、基板1の側面には、反射型光結合装置に電気信号を供給するまたは反射型光結合装置から電気信号を取り出すための外部接続用端子10が複数設けられている。これら外部接続用端子10は、前記金属配線を介して、発光チップ2、第1受光チップ3及び第2受光チップ4の各電極部に電気的に接続されている。
<反射型光結合装置の製造手順例>
次いで、本具体例の反射型光結合装置を製造する手順の一例について説明する。
本具体例の反射型光結合装置を製造する際には、まず初めに、図2(a)に示すように、基板1の表面1a上に発光チップ2、第1受光チップ3及び第3受光チップ4を実装する。この実装は、例えば、外部接続用端子10及び金属配線が予め形成されている基板1の表面1a上に、発光チップ2、第1受光チップ3及び第2受光チップ4をダイボンドした後、前記金属配線と、発光チップ2、第1受光チップ3及び第3受光チップ4の各電極部(不図示)との間を導電性のワイヤ部(不図示)を用いてワイヤボンドすることによって実施される。
続いて、図2(b)に示すように、赤外線を透過する樹脂である赤外線透過樹脂を用いて発光チップ2及び第1受光チップ3をモールドし、発光チップ2の発光部に対向する位置に第1レンズ部5aを備えた第1赤外線透過樹脂部5を、第1受光チップ3の受光部に対向する位置に第2レンズ部6aを備えた第2赤外線透過樹脂部6をそれぞれ形成する。
最後に、図1に示すように、可視光線を透過する樹脂である可視光線透過樹脂を用いて第2受光チップ4をモールドして、第2受光チップ4の受光部に対向する位置に第3レンズ部7を備えた可視光線透過樹脂部7を形成すると同時に、基板1の表面1a上に遮光ブロック8を形成することにより、ハイブリッド構造の反射型光結合装置を得る。なお、このとき、保護樹脂部9を同時に形成してもよい。
このような製造手順により第1赤外線透過樹脂部5、第2赤外線透過樹脂部6、可視光線透過樹脂部7及び遮光ブロック8を形成する際には、例えば基板1の表面1a側に配置される第1型と基板1の裏面(不図示)側に配置される第2型とからなる金型が用いられる。
ここで、前記金型の一例について説明する。
第1赤外線透過樹脂部5及び第2赤外線透過樹脂部6は、金型を用いて同時に形成される。この金型は、硬化後に第1赤外線透過樹脂部5を形成する赤外線透過樹脂が充填される第1凹部、及び硬化後に第2赤外線透過樹脂部6を形成する赤外線透過樹脂が充填される第2凹部を備えた第1型と、薄板形状の(または基板1が嵌合する凹部を備えた)第2型とからなる。
そして、モールド時には、第1型と第2型とで基板1を挟み込むことによって、基板1の表面1a側に第1型が基板1の裏面側に第2型が押し付けられ、第1凹部内に発光チップ2が第2凹部内に第1受光チップ3が配置される。このような配置状態で、第1凹部及び第2凹部に赤外線透過樹脂が充填され、さらに、充填された赤外線透過樹脂が硬化することによって、第1赤外線透過樹脂部5及び第2赤外線透過樹脂部6が形成される。
一方、可視光線透過樹脂部7及び遮光ブロック8は、金型を用いて同時に形成される。この金型は、硬化後に可視光線透過樹脂部7を形成する可視光線透過樹脂が充填される第1凹部、及び硬化後に遮光ブロック8を形成する可視光線透過樹脂が充填される第2凹部を備えた第1型と、薄板形状の(または基板1が嵌合する凹部を備えた)第2金型とからなる。なお、前記保護樹脂部9を可視光線透過樹脂部7と同じ材料(可視光線透過樹脂)を用いて形成する場合、前記第1型は、硬化後に保護樹脂部9を形成する可視光線透過樹脂が充填される凹部も備えている。
そして、モールド時には、第1型と第2型とで基板1を挟み込むことによって、基板1の表面1a側に第1型が基板1の裏面側に第2型が押し付けられ、第1凹部内に第2受光チップ4が配置される。このような配置状態で、第1凹部及び第2凹部に可視光線透過樹脂が充填され、さらに、充填された可視光線透過樹脂が硬化することによって、可視光線透過樹脂部7及び遮光ブロック8が同時に形成される。
<遮光ブロックの一例>
次いで、遮光ブロック8の一例について説明する。
図1では、基板1の表面上のうち、紙面右上側の領域に第1赤外線透過樹脂部5が、紙面右下側の領域に第2赤外線透過樹脂部6が、紙面左下側の領域に可視光線透過樹脂部7がそれぞれ配置されているため、反射型光結合装置は基板1の表面に対向する方向から見て横向きT字形状となっている遮光ブロック8を備えている。
さらに詳細に説明すると、基板1の表面の紙面左側の領域が照度センサ領域であり、紙面右側の領域が反射型光結合装置領域であるため、遮光ブロック8の第2壁部材8bは、前記表面の紙面左側の領域と紙面右側の領域とを隔てるように、前記表面の中央部に紙面上下方向に沿って設けられている。一方、第1壁部材8aは、第2壁部材8bと一体形成されており、基板1の表面の紙面右上側の領域(第1赤外線透過樹脂部5が設けられている領域)と紙面右下側の領域(第2赤外線透過樹脂部6が設けられている領域)とを隔てるように、第2壁部材8bの紙面右側中央部から基板1の表面の紙面右端辺まで紙面左右方向に沿って設けられている。
一般に、発光部から出射された赤外線の物体での反射率は約10%未満であり、さらに、赤外線は物体表面で乱反射することから、物体が存在している場合においても第1レンズ部5aから出射された全ての赤外線のうちの0.1〜1.0%しか反射光として第2レンズ部6aに入射しない。
さらに、発光チップが発光ダイオードであった場合、発光チップの発光エネルギーを1とすると、発光チップから出射された全ての赤外線のうち第1赤外線透過樹脂部5を透過し第1レンズ部5a外部へ取り出せる赤外線のエネルギーは0.9である。
従って、当該赤外線のエネルギーのうちの、5%である4.5×10-2が直達光のエネルギーとなりうるとともに、0.1%である9×10-4が被検出対象(物体)からの反射光のエネルギーの最小値となりうる。
なお、本明細書において、「直達光」とは、発光部から送出された光が被検出対象物等の表面で反射することなく受光部(即ち、第1受光部または第2受光部)へ直接到達した光を言う。
また、被検出対象の検出を正確に行うためには、一般に、信号対雑音比(反射光のエネルギー/直達光のエネルギー)を20以上に調整する必要がある。即ち、第2レンズ部6aに到達する直達光のエネルギーを4.5×10-5以下にする必要がある。従って、遮光ブロック8の赤外線透過率を1×10-3以下に設定する必要がある。
ここで、第1赤外線透過樹脂部5、第2赤外線透過樹脂部6及び可視光線透過樹脂部7を形成する際に用いられる各樹脂の波長別透過率特性の一例を示す。
図3は、図1に示す反射型光結合装置を構成する第1赤外線透過樹脂部、第2赤外線透過樹脂部及び可視光線透過樹脂部の波長別透過率特性の一例を、発光チップから出射される赤外線のスペクトルとともに示すグラフである。
図中、実線B1は発光チップ2から出射された赤外線のスペクトルを示しており、横軸は波長、縦軸は相対強度を示している。また、破線B2は第1赤外線透過樹脂部5及び第2赤外線透過樹脂部6の波長別透過率特性を、一点鎖線B3は可視光線透過樹脂部7の波長別透過率特性をそれぞれ示しており、横軸は波長、縦軸は透過率を示している。
図3中に破線B2で示すように、第1赤外線透過樹脂部5及び第2赤外線透過樹脂部6は、発光チップ2から出射された赤外線をほぼ透過し、可視光線を遮光する材料(赤外線透過樹脂)を用いて形成されている。
実施形態1の反射型光結合装置の特徴は、第1赤外線透過樹脂部5と第2赤外線透過樹脂部6とを隔てる第1壁部材8aが、可視光線透過樹脂部7と同一の可視光線透過樹脂を用いて形成されていることにある。即ち、本具体例では、遮光ブロック8は、波長別透過率特性が、図3中に一点鎖線B3で示す可視光線透過樹脂部7の波長別透過率特性と同一の部材である。
反射型光結合装置部位を構成する第1受光チップ3及び照度センサ部位を構成する第2受光チップ4は例えばSi系フォトダイオードからなり、このSi系フォトダイオードの受感波長帯はおよそ400nm〜1100nmである。従って、Si系フォトダイオードを用いた場合、第1受光チップ3及び第2受光チップ4自体は可視光線から赤外線までを検出するが、目的に応じて表面を覆う樹脂である第2赤外線透過樹脂部6及び可視光線透過樹脂部7を変更しており、この変更によって特定の波長の光のみを検出する。
例えば、第1受光チップ3は、本来、赤外線を検出することを目的としているため、第2赤外線透過樹脂部6は、図3に破線B2で示すような波長透過率特性を有することが望ましい。
一方、第2受光チップ4は、可視光線のほぼ全域を検出することを目的としているため、可視光線透過樹脂部7は、可視光線のうち波長780nm以下の光に対してフラットな透過特性を有することが望ましい。しかしながら、本実施形態では、赤外線に関する感度を若干落とす(図3では、波長720nmの光に対する透過率を約1/2に落としている。)ことで、赤外線を遮光する機能を実現し、発光チップ2から出射された赤外線のうち第1受光チップ3へ直接到達する光(直達光)の光量(エネルギー)を4.5×10-5未満に抑えている。
本具体例では、可視光線透過樹脂部7を形成する際に使用する樹脂の赤外線透過率を1×10-3以下にするとともに、当該樹脂を用いて可視光線透過樹脂部7と同時に遮光ブロック8も形成している。その結果、本具体例の反射型光結合装置によれば、製造過程で実施されるモールド(トランスファーモールド)を2回に減らすことができ、反射型光結合装置の製造手順及び構成を簡単化することができる。
さらに、基板1の表面1a上の反射型光結合装置領域と照度センサ領域との境界部分に、当該反射型光結合装置領域と照度センサ領域とを隔てる第2壁部材8bが形成されているため、発光チップから第2受光チップへの直達光を遮光することができる。
<実施形態1の具体例2>
次いで、実施形態1における反射型光結合装置の具体例2について図面を参照しつつ説明する。
図4は、本発明の実施形態1における反射型光結合装置の具体例2を示す説明図である。なお、図4では、図1に示す反射型光結合装置と同一の部位に関しては同じ符号を用いて示している。
図1に示す反射型光結合装置において、照度センサ部位を構成する第2受光チップ4は、赤外線透過率の低い樹脂である可視光線透過樹脂を用いて形成された可視光線透過樹脂部7で覆われている。そのため、発光チップ2が図3中に実線B1で示すようなスペクトルの赤外線を出射する場合、発光チップ2から第2受光チップ4へ入射する(回り込む)赤外光は非常に少なく、かつ、この回り込む赤外線の強度に対して本来検出すべき可視光線の強度は充分に大きい状態となっている。
従って、遮光ブロック8のうち、反射型光結合装置領域と照度センサ領域とを隔てる第2壁部材8b(図1参照)は省略してもよい。
図4に示す反射型光結合装置は、図1に示す第2壁部材8bを省略し、遮光ブロック80を第1赤外線透過樹脂部5と第2赤外線透過樹脂部6とを隔てる部材(図1に示す反射型光結合装置においては第1壁部材8aに相当する部材)のみで構成した点が、図1に示す反射型光結合装置と異なっている。
本具体例によれば、図1に示す反射型光結合装置領域と同様の効果が得られるとともに、反射型光結合装置の構成をさらに簡単化することができる。
さらに、本具体例によれば、第1壁部材を省略しているため、反射型光結合装置部位の直近に照度センサ部位を配置することができる。その結果、照度センサ部位によって検出された照度に基づいて反射型光結合装置部位のオンオフ状態を切り替えて低消費電力化を実施する際には、反射型光結合装置部位を効果的にオン/オフすることができる。
<実施形態1の具体例3>
次いで、実施形態1における反射型光結合装置の具体例3について図面を参照しつつ説明する。
図5は、本発明の実施形態1における反射型光結合装置の具体例3を示す断面図である。なお、図5では、図1に示す反射型光結合装置と同一の部位に関しては同じ符号を用いて示している。
本具体例の反射型光結合装置は、反射型光結合装置部位を構成する発光部(発光チップ2及び第1赤外線透過樹脂部5)と第1受光部(第1受光チップ3及び第2赤外線透過樹脂部6)との間に照度センサ部位を構成する第2受光チップ4を配置し、さらに、第2受光チップ4と前記発光チップ2との間に第1遮光ブロック18を、第2受光チップ4と前記第1受光チップ3との間に第2遮光ブロック28を配置した点が、具体例1の反射型光結合装置と異なっている。
これら第1遮光ブロック18及び第2遮光ブロック28は、可視光線透過樹脂部7と同時に同じ樹脂(可視光線透過樹脂)を用いて形成される部材であり、図5では、可視光線透過樹脂部7と一体形成されている。
本具体例によれば、図1に示す反射型光結合装置領域と同様の効果が得られるとともに、発光チップから第1受光チップへの直達光を低減できる。また、反射型光結合装置部位を構成する発光チップから照度センサ部位を構成する第2受光チップへの赤外線の回り込みをさらに抑えることもできる。
[電子機器の一実施形態]
次に、本発明の電子機器の一実施形態について説明する。
本実施形態の電子機器は、前述の実施形態1の具体例1〜3に係る反射型光結合装置のうちのいずれか1つの反射型光結合装置を搭載したものであり、ここでは、図1に示す反射型光結合装置を搭載した電子機器を例に挙げて説明を行う。
図6は、本発明の電子機器の一実施形態を示す説明図であり、図7は、図6に示す電子機器に搭載された反射型結合装置の動作例を示す説明図である。
電子機器としては、人体を検知しセキュリティを強化したパーソナルコンピュータ、人体を検知し安全性を高めた電子レンジまたはタッチパネル式携帯電話等があげられるが、ここでは、タッチパネル式携帯電話を用いて本発明の電子機器の一実施形態について説明する。
図6に示すように、タッチパネル式携帯電話は、筐体22の表面22aにタッチパネルを備えたディスプレイ11を備えており、さらに、筐体22の表面22aのうちディスプレイ11周辺部(図6ではディスプレイ11の紙面下方)に窓部12が設けられている。
また、筐体22内部には、図7に示すように、第1赤外線透過樹脂部5、第2赤外線透過樹脂部6及び可視光線透過樹脂部7の各レンズ部(第1レンズ部5a、第2レンズ部6a及び第3レンズ部7a)を窓部12に対向させた状態で、図1に示す反射型光結合装置が配置されている。即ち、反射型光結合装置は、第1レンズ部5a、第2レンズ部6a及び第3レンズ部7aが窓部12の外側を向くように配置されている。なお、図7では二点鎖線を用いて窓部12を概略的に示している。
このような配置状態において、発光チップの発光部から出射した赤外線A1は、第1レンズ部5a及び窓部12を介して、筐体22外部へ出射する。
このとき、窓部12の近傍に物体13が存在している場合には、赤外線A1が物体13の表面で反射し、反射光A2となって窓部12及び第2レンズ部6aを介して受光チップの受光部で受光される。一方、図示していないが、窓部12の近傍に物体13が存在していない場合には反射光A2は生じないので、受光部で反射光A2が受光されることはない。
即ち、反射型光結合装置は、受光部で反射光A2が受光されるかまたは受光されないかによって、物体13の存在の有無を検出している。
また、反射型光結合装置の検出距離(検出可能な位置に在る物体13から窓部12までの間の距離)は、窓部12に対する反射型光結合装置の配置、及び発光チップ及び受光チップの配置等によって変更可能であるが、例えば0.0cm(物体13が窓部12に接触している状態)〜3.0cmに設定してもよい。
なお、図示していないが、第1レンズ部5aから出射された全ての赤外線のうちの約5%程度の赤外線は、窓部12を介して筐体外部へ出射せず、筐体内部で例えば基板1の表面に対して平行な方向に沿って伝搬する。従って、遮光ブロック8が設けられていない場合には、前記した約5%程度の赤外線が直達光として第2レンズ部6aに直接入射してしまい、その結果、反射型光結合装置が誤動作してしまうといった問題が生じる。
しかしながら、本実施形態においては、遮光ブロック8が設けられているため、直達光は、遮光ブロック8の第1壁部材8aにより遮光され、第2レンズ部6aに入射されない。その結果、反射型光結合装置が誤動作してしまうことを防止できるので、電子機器の動作精度を高めることができる。
[実施形態2]
次に、本発明の実施形態2に係る反射型光結合装置の概要について説明する。
本実施形態の反射型光結合装置は、遮光ブロックが、第1赤外線透過樹脂部及び第2赤外線透過樹脂部を形成する際に用いられる赤外線透過樹脂と、可視光線透過樹脂部を形成する際に用いられる可視光線透過樹脂とを用いて形成された2層構造の部材である点が、実施形態1に示す反射型光結合装置と異なっている。
本実施形態によれば、発光チップから第2受光チップへの赤外線の入射をより確実に防止できるので、さらに高感度の反射型光結合装置を提供できる。
<実施形態2の具体例1>
次に、本実施形態における反射型光結合装置の具体例1について図面を参照しつつ説明する。
図8は、本発明の実施形態2における反射型光結合装置の具体例1を示す説明図であり、同図(a)は斜視図、同図(b)は同図(a)のC−C線断面図である。なお、図8では、図1に示す反射型光結合装置と同一の部位に関しては同じ符号を用いて示している。
本具体例の反射型光結合装置は、図8(a)に示すように、遮光ブロック38が、第1赤外線透過樹脂部5と第2赤外線透過樹脂部6との境界部分に形成された第1壁部材38aと、第1赤外線透過樹脂部5及び第2赤外線透過樹脂部6と可視光線透過樹脂部7との境界部分に形成された第2壁部材38bとからなり、第1壁部材38aと第2壁部材38bとが一体形成されている点において、図1に示す反射型光結合装置と同じ構成となっている。
しかし、本具体例では、遮光ブロック38の第1壁部材38a及び第2壁部材38bが、図8(b)に示すように、赤外線透過層81と可視光線透過層82との2層構造となっている点で、図1に示す遮光ブロックの構成と異なっている。赤外線透過層81は、第1赤外線透過樹脂部5及び第2赤外線透過樹脂部6と同時に赤外線透過樹脂を用いて形成され、可視光線透過層82は、、可視光線透過樹脂部と同時に可視光線透過樹脂を用いて形成されている。
ただし、本具体例では、図8(b)に示すように、赤外線透過層81の表面を可視光線透過層82で覆う構造としているが、各層を入れ換えて、可視光線透過層82の表面を赤外線透過層81で覆う構造としてもよい。
ここで、2層構造の遮光ブロック38の波長別透過率特性について説明する。
図9は、図8に示す反射型光結合装置を構成する第1赤外線透過樹脂部、第2赤外線透過樹脂部及び可視光線透過樹脂部の波長別透過率特性の一例を、発光チップから出射される赤外線のスペクトルとともに示すグラフである。
図中、実線D11は発光チップ2から出射された赤外線のスペクトルを示しており、横軸は波長、縦軸は相対強度を示している。また、破線D12は第1赤外線透過樹脂部5及び第2赤外線透過樹脂部6の波長別透過率特性を、一点鎖線D13は可視光線透過樹脂部7の波長別透過率特性をそれぞれ示しており、横軸は波長、縦軸は透過率を示している。
一般的に、可視光線透過樹脂及び赤外線透過樹脂の波長別透過率特性は、材料の調合を変更することによって調整される。この調整によって、例えば、透過帯域が図3に一点鎖線D3で示す波長別透過率特性よりも20nm程度長波長側にシフトした波長別透過率特性(図9の一点鎖線D13参照)を示す可視光線透過樹脂を用いて可視光透過樹脂部7を形成した場合、赤色光に対する照度センサの感度を向上できる。
しかしながら、この調合の変更は微妙であるため、予め設定された波長別透過率特性を正確に示すように調合を変更することは大変困難である。例えば、図9に一点鎖線D13で示すような波長別透過率特性を示す可視光線透過樹脂部7が得られるように材料の調合を変更しても、図3に一点鎖線D3で示すような波長別透過率特性を示す可視光線透過樹脂部7が形成されてしまう場合がある。
本具体例においては、遮光ブロック38を赤外線透過層81と可視光線透過層82との2層構造とすることによって、発光チップから出射される赤外線のうち、長波長側の成分を可視光線透過層82で吸収すると同時に、短波長側の成分を赤外線透過層81で補完的に吸収している。
その結果、本具体例によれば、遮光ブロックの赤外線に対する透過率を、実施形態1に示す遮光ブロックの透過率の1/4程度まで下げることが可能である。
なお、赤外線透過層81及び可視光線透過層82の厚さは、赤外線を吸収するのに充分な厚さであり、予め設定された波長別透過率特性を得るために厚さを適宜調整すればよい。具体例を示すと、赤外線透過層81及び可視光線透過層82の厚さは0.7mm以上、より好ましくは0.7mm〜1.5mmである。
次いで、照度センサについて説明する。
本具体例において、照度センサの受光部である第2受光チップ4は赤外線透過率の低い可視光線透過樹脂部7で覆われているが、反射型光結合装置領域と照度センサ領域との間(即ち、発光チップ2と第2受光チップ3との間)に2層構造の遮光ブロック38の第2壁部材38bがさらに配置されているため、発光チップ2から出射された赤外線が第2受光チップ3へ直接入射することを完全に防止することが可能である。その結果、照度センサは、反射型光結合装置領域の動作状態に係らず、照度を正確に測定することが可能となる。また、照度の高低に従って反射型光結合装置を制御することが可能である。また、低照度となる夜間等であっても、安定して照度検出を実施することが可能である。
[実施形態3]
次に、本発明の実施形態3に係る反射型光結合装置の概要について説明する。
前述の実施形態1,2の反射型光結合装置は、発光チップから第1受光チップ及び第2受光チップへ赤外線が直接入射する(回りこむ)ことを抑えるための遮光手段(遮光ブロック)を備えている。これに対して、本実施形態の反射型光結合装置は、前述の遮光ブロックによって赤外線の回り込みを抑える構成となっているとともに、基板1内部を伝達する赤外線を低減する遮光手段をさらに備えている。
本実施形態によれば、基板1内部を伝達する赤外線を低減することができるので信号対雑音比の低減が可能である。
<実施形態3の具体例1>
次に、本実施形態における反射型光結合装置の具体例1について図面を参照しつつ説明する。
図10は、本発明の反射型光結合装置の実施形態3の具体例1を示す説明図である。
なお、図10では、遮光手段をより明確に示すために、第1赤外線透過樹脂部5、第2赤外線透過樹脂部6、可視光線透過樹脂部7及び遮光ブロック8等といった樹脂で形成された部位の図示を省略している。また、図2に示す反射型光結合装置と同一の部位に関しては同じ符号を用いて示している。
本具体例の反射型光結合装置は、遮光手段として、基板1にスルーホールとして形成された貫通孔41a及び貫通スリット41bのうちの少なくとも一方を備えている点が、前述の実施形態1,2に示す反射型光結合装置と異なっている。
さらに詳細に説明すると、貫通孔41aは、基板1の表面側から裏面側まで貫通しており、発光チップ2が配置された領域と第1受光チップ3が配置された領域との境界部位E1に設けられている。また、貫通孔41aの内面には金メッキが施されている。そのため、基板1を伝搬する赤外線は、この金メッキ部分で反射し完全に遮光される。その結果、発光チップ2から出射された赤外線が基板1内部を伝達して第1受光チップ3に入射することを防止できる。
一方、貫通スリット41bは、基板1の表面側から裏面側まで貫通しており、発光チップ2及び第1受光チップ3が配置された領域と第2受光チップ4が配置された領域との境界部位E2に設けられている。また、貫通スリット41bの内面には金メッキが施されている。そのため、基板1を伝搬する赤外線は、この金メッキ部分で反射し完全に遮光される。その結果、発光チップ2から出射された赤外線が基板1内部を伝達して第2受光チップ4に入射することを防止できる。
なお、貫通孔41aの断面積、断面形状及び個数は、図10に示す形態に限定されず、適宜変更可能である。但し、発光チップ2が配置された領域と第1受光チップ3が配置された領域との境界部位E1において、前記貫通孔41a形成部分を除く基板1が残存している部分(基板残存部位)の幅(残存している部分が複数ある場合は当該部分の幅の和)が、発光チップ2の幅(第1受光チップ3側から見たときの幅)Lの1/2以下となるように貫通孔41aを形成することが、赤外線を完全に遮光することができるため好ましい。
同様に、貫通スリット41bの断面積、断面形状及び個数は、図10に示す形態に限定されず、適宜変更可能である。但し、発光チップ2が配置された領域と第2受光チップ4が配置された領域との境界部位E2において、前記貫通スリット41b形成部分を除く基板残存部位の幅(残存している部分が複数ある場合は当該部分の幅の和)が、発光チップ2の幅(第2受光チップ4側から見たときの幅)の1/2以下となるように貫通スリット41bを形成することが、赤外線を完全に遮光できるため好ましい。
<実施形態3の具体例2>
次に、本実施形態における反射型光結合装置の具体例2について説明する。
本具体例の反射型光結合装置は、各チップを実装する基板が遮光手段としての光散乱物質または光吸収物質を含有している点が、前述の実施形態1,2に示す反射型光結合装置と異なっている。
前記光吸収物質の一例としては、第1赤外線透過樹脂部及び第2赤外線透過樹脂部を形成する際に用いられる赤外線透過樹脂に含まれる添加剤がある。
本具体例によれば、実施形態1,2のものと比較して信号対雑音比をさらに5dB改善できる。
<実施形態3の具体例3>
次に、本実施形態における反射型光結合装置の具体例3について説明する。
本具体例の反射型光結合装置は、基板のチップ実装面に形成された金属配線を遮光手段として備えており、基板のチップ実装面の少なくとも80%が金属配線によって覆われている点が、実施形態1,2に示す反射型光結合装置と異なっている。
通常、基板のチップ実装面のうち、金属配線(メタル配線)が形成されている部分(配線部)と形成されていない部分(スペース部)との割合は1:1である。即ち、チップ実装面でのメタル被覆比率は50%である。
本具体例においては、グラウンドベタパターン(グラウンド電極部)を形成する部分を多くすることによってメタル比率を80%以上に高めている。
その結果、本具体例によれば、実施形態1,2のものと比較して信号対雑音比をさらに5dB改善できる。
<実施形態3の具体例4>
次に、本実施形態における反射型光結合装置の具体例4について説明する。
本具体例の反射型光結合装置は、各チップを実装する基板が遮光手段として光散乱物質を含有しており、この光散乱物質がガラス粒子、アクリル粒子及びTiO2粒子のうちの少なくとも1つの粒子である点が、前述の実施形態3の具体例2に示す反射型光結合装置と異なっている。
通常、各チップを実装する基板としては、ガラスエポキシ基板が用いられる。このガラスエポキシ基板は、エポキシ樹脂に強度及び耐熱性を確保するためのガラス繊維を織り込み、硬化させることによって形成される。このガラス繊維は、一旦内部に光が入ると高屈折率の導光管の役目を果たす。
本具体例においては、前記ガラス繊維の代わりにガラス粒子、アクリル粒子及びTiO2粒子のうちの少なくとも1つの粒子を用いて基板を形成している。これにより、赤外線が基板内部で無作為な散乱を繰り返すため、基板内部での赤外線の伝達距離が短くなる。
なお、これらガラス粒子、アクリル粒子及びTiO2粒子の粒径は0.5μm〜3.0μmであることが好ましい。
その結果、本具体例によれば、実施形態1,2のものと比較して信号対雑音比をさらに8dB改善できる。
<実施形態3の具体例5>
次に、本実施形態における反射型光結合装置の具体例5について図面を参照しつつ説明する。
図11は、本発明の反射型光結合装置の実施形態3の具体例5を示す説明図である。なお、図11では、図5に示す反射型光結合装置と同一の部位に関しては同じ符号を用いて示している。
本具体例の反射型光結合装置は、各チップを実装する基板21が遮光手段としてのガラス繊維31を含有しており、当該ガラス繊維31の向き(長さ方向)が、発光チップ2から第1受光チップ3及び第2受光チップ4へ向けて基板21内部を伝達する赤外線の伝達方向Fに対して垂直な方向になるように配されている点が、前述の実施形態1の具体例3に示す反射型光結合装置(図5参照)と異なっている。
なお、この反射型光結合装置では、発光チップ2、第1受光チップ3及び第2受光チップ4は基板21上に一方向に沿って実装されている。即ち、前記赤外線の伝達方向Fとこの一方向とは同じ方向となっている。
この基板21は、例えばエポキシ樹脂にガラス繊維31を織り込み、硬化させることによって形成される。
本具体例においては、ガラス繊維31の向きが、赤外線の伝達方向Fに対して垂直な方向になるように配されているため、ガラス繊維31が高屈折率の導光管の役目を果たすことを防止できる。
その結果、本具体例によれば、実施形態1の具体例3のものと比較して信号対雑音比をさらに2dB改善できる。
なお、前述した実施形態1の具体例2,3、実施形態2及び実施形態3に示す反射型光結合装置は、実施形態1の具体例1に示す反射型光結合装置と略同様の製造手順によって製造されるものである。
[電子機器の他の実施形態]
本実施形態の電子機器は、前述した実施形態2及び実施形態3に係る反射型光結合装置のいずれか1つの反射型光結合装置を搭載したものである。この電子機器によれば、実施形態1の具体例1に示す反射型光結合装置を搭載した電子機器と同様に、電子機器の動作精度を高めることができる。