JP5048724B2 - ホログラフィック・ノッチフィルターの製造方法、及びその方法によって製造されたホログラフィック・ノッチフィルター - Google Patents
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Description
ラマン散乱光は入射光の振動数に対し、試料固有の振動数が結合したものである。またラマン散乱光の強度は、入射光の強度と試料濃度に比例する。したがって、ラマン散乱光を分光分析することにより、試料中の成分の同定と定量が可能となる。
すなわち、ラマン散乱光のラマンシフトが微少である場合、該ラマン散乱光とレーリ散乱光との波長の差も当然微少となるため、レーリ散乱光に混ざった微弱なラマン散乱光を検出することは非常に困難である。このため、前記レーリ散乱光を除去するために各種フィルターが用いられているが、一般的なものとしてホログラフィック・ノッチフィルターがある。
この屈折率変調層の位置xにおける屈折率の大きさn(x)は、次の数式1で表される。
(数1)
n(x)=nA+(1/2)nPsin(2πx/P)
ここで、nAは平均屈折率(=(nH+nL)/2)、nHは最大屈折率、nLは最小屈折率、nPは屈折率の変調幅(=(nH−nL))、Pは屈折率変調の周期である。
ここで、ホログラフィック・ノッチフィルターにおける吸光度、バンド幅、及び層数との関係は次の数式2で表される。
(数2)
吸光度(O.D.)= log(100/T)
=(1.36×BW×N)−log(4/ns)
ここで、Tは最小透過率、BWは以下に示すバンド幅、Nは屈折率変調層の層数、nsは基板の屈折率である。
またバンド幅は次の数式3で表される。
(数3)
バンド幅(BW)=(np)/(2nA)
上記の数式2及び数式3から分かるように屈折率の変調幅npを大きくすれば吸光度もそれに比例して大きくなるが、バンド幅も大きくなってしまう。したがって、バンド幅が狭く、かつ吸光度の高いホログラフィック・ノッチフィルターを製造するためにはバンド幅を変えず屈折率変調層の層数Nを増やすことによって吸光度を大きくすることになる。
それらの問題に対処するために、特許文献1においては、二次以上の高次の干渉を生ずるノッチフィルターが製造されている。高次の干渉を利用するのは、製造されたフィルターに対して試料からの散乱光を照射すると、得られる透過率曲線において狭いバンド幅で高い吸光度を示す吸光ピークが得られるからである。
このとき、除去したい光の波長域に吸光ピークP2が生じない場合は、吸光ピークP2を望ましい波長域に生じるように調整することを要する。
吸光ピークP1を長波長側にシフトし、吸光ピークP2を除去したい光の波長域に発生させるために、特許文献1においては、記録光に対する記録材料の角度を調整して露光している。これにより、除去したい光の波長の位置に二次の干渉が生じるよう干渉縞を記録することができる。そうして製造されたフィルターは、バンド幅が非常に狭く、しかも強い吸光度を示す吸光ピークP2が長波長側にシフトされて除去したい光の波長域に吸光ピークP2を生じさせることができる。
ここで吸光ピークP2を正確に除去したい光の波長域に生じさせるためには、記録材料への入射角と波長シフトの関係を把握しておくことを要する。吸光ピークを除去したい光の波長域の中心に生じさせるには入射角をどの程度にすべきかあらかじめ計算しておくことが必要となるためである。例えば、図8(A)のように二光束の記録光20を記録材料16に対して垂直に露光し、記録光20を互いに干渉させて記録することにより製造されたノッチフィルターは、図8(B)のように吸光ピークが一定の波長域λ2に現れる。そして二次干渉による吸光ピークを長波長側にシフトするには図9(A)のように記録材料16を傾けて露光することを要する。なお、前記記録材料中へ入射された記録光の進行方向と前記記録材料の厚さ方向との角度を記録材料中での記録光の傾斜角度と定義する(以下、同様である。)。
(数4)
λ2s=λ2/cosθt
一次干渉を長波長側にシフトさせて、二次干渉による吸光ピークが除去したい特定光の波長位置に生じるように、この数式4の関係を利用する。すなわち、除去したい光の波長域に吸光ピークP2が生じるようλ2Sの位置を調整するために、記録光20の記録材料16への入射角度をあらかじめ計算しておく。次に、この計算した入射角度となるよう記録材料16の傾斜を調整して、記録光20を照射する。そして、記録材料16に干渉縞を記録する。こうしてホログラフィック・ノッチフィルターが製造される。
上記のように高次の干渉を利用した場合に、吸光度とバンド幅を同一としたときの層数Nを決定するために、ホログラフィック・ノッチフィルターを設計する上で目安が必要となる。吸光度と層数Nが同一という条件で、干渉の次数が増えるにつれバンド幅がどの程度狭まるかについて以下のような事実が得られている。
また、高次の干渉を所定の波長域に生じさせるために吸光ピークが生じる波長と記録材料への入射角の関係を知っておく必要がある。
吸光ピークが生じる波長λについての、記録材料の屈折率n、各層の膜厚d、視射角(記録材料への入射角の補角)θiとの関係について、ブラッグの回折の原理に基づき、次の数式5が成り立つ。
(数5)
2dsin(90°−θi)=2dcosθi=mλ/n
ここにおいて、mは干渉の次数である。数式5によれば、視射角θiに応じてλが短波長側へシフトすることが分かる。しかしながら記録材料への視射角θiを0度に限りなく近づけても記録材料中での記録光の傾斜角度は屈折率の影響を受け入射角より小さくなるので、その傾斜角度の最大値は制限されることになる。
(数6)
sinθt=(n1/n2)sinθa
ここで、n1は空気の屈折率、n2は記録材料の屈折率、θaは空気中から直接記録材料に入射させる場合の入射角である。
上記式に空気の屈折率n1に1.0、記録材料の屈折率n2に1.5、および入射角θaに近似値90°を代入すると、sin(41.8°)≒(1.0/1.5)・sin(90°)となる。
そこで、請求項1に記載のホログラフィック・ノッチフィルターの製造方法は、記録材料にレーザ等の単色光を露光することにより形成される干渉縞を周期的な屈折率変調として記録するホログラフィック・ノッチフィルター製造方法において、裏面に銀又はアルミニウムを蒸着してミラー面とした透明な材質よりなる支持体に支持された記録材料の表面に、記録材料と略同一の屈折率を有するプリズムをその底面が密接するように載置し、記録光を所定の角度でプリズムの入射面から入射させ、プリズムと記録材料との界面を通過した記録光と、記録光が前記ミラー面で反射した反射光とを干渉させる一光束露光系を使用して、除去すべき光の波長λに対し、2次以上の高次干渉が波長λで生じるように非正弦的な屈折率変調を記録することを特徴とする。
また、請求項4に記載されているように、プリズムは記録材料の全表面を覆う以上に大きい面積の底面を有するのが好適である。
また、請求項5に記載されているように、プリズムと記録材料との界面に空隙が発生するのを防止するために記録材料と略同一の屈折率を有するオイルを介在させるのが好適である。
また、請求項6に記載されているように、記録材料は、重クロム酸ゼラチン、フォトポリマー、フォトレジスト、または銀塩系感光材料であるのが好適である。
除去すべき光の波長λに対し、二次以上の高次の干渉が波長λで生ずるように非正弦波的な屈折率変調が記録されていることを特徴とする。
(数7)
sinθt ≧ n1/n2
ここで、n1は空気の屈折率、n2は記録材料の屈折率
(数8)
2d≦mλ/n
ここで、nは記録材料の屈折率、dは各層の膜厚、λは干渉を生じさせる波長、mは干渉の次数である。上記の式は、空気中において記録光の記録材料に対する視射角を近似的に0°としたとき{2dcos(0°)=mλ3/n}において得られる高次の吸光ピークの波長λ3よりも、さらにλを長波長側にシフトさせることができることを示すものである。
そして、製造されたホログラフィック・ノッチフィルターは高次の干渉を利用するので透過率曲線に形成される吸光ピークのバンド幅が狭く、当該吸光ピークに対応する波長域での吸光度が高い。それゆえに、屈折率変調層の層数Nを増やす必要がなく、ホログラフィック・ノッチフィルターの薄膜化が可能となる。
本発明は、図11に示すように、支持体14の裏面に銀又はアルミニウムを蒸着した薄膜状のミラー18を形成させており、透明なガラス板である支持体14に支持された重クロム酸ゼラチンよりなる記録材料16の表面に、記録材料16と略同一の屈折率を有するプリズム30を、その底面33が密接するように、載置している。この支持体14は記録材料16を支持することにより記録材料16の反りを防いでいる。
上記の露光系を使用し、図11に示すように、記録光20をプリズム30の入射面31から所定の角度で入射させ、プリズム30と記録材料16との界面を通過させた記録光20と、記録光20が支持体14のミラー18で反射した反射光20rとを干渉させるように一光束露光を行い、除去すべき光の波長λに対し、2次以上の高次の干渉が波長λで生じるように、記録材料16中に図6に示したような非正弦波的な屈折率変調を記録してホログラフィック・ノッチフィルターを製造する。なお、ホログラフィック・ノッチフィルターが製造された後、ノッチフィルターとして不要なミラー18を除去する。
(数7)
sinθt≧n1/n2
また、プリズム30を以下の二つの条件を満たすような形状にするのが好適である。
第一に、記録光20が外からプリズムへ入射するときプリズムの入射面31での反射を避けるため、記録光20が入射面に対して垂直にプリズム30へ入射するようなプリズム形状とするのが好適である。
第二に、記録光20のミラー面における反射光がプリズム30から外へ出射するときプリズム30と空気との屈折率差によりプリズム30の出射面32において出来るだけ反射しないようにする必要がある。なぜなら、反射した記録光20が再度記録材料16に入射し多重干渉する恐れがあるからである。したがって、記録光20が出射面32に対して垂直にするのが好適であり、少なくとも臨界角以下の角度でプリズム30から出射するようなプリズム形状とすることを要する。
また、プリズム30は記録材料16の表面積よりもやや大きい底面33を持つことが好ましい。このことは次の理由による。
記録光の進行方向とプリズムの底面との角度を下記の数式9に記載されている角度θrとして記録光20を入射させると、記録材料16とプリズム30の界面以外のプリズムの底面33の部分に照射された記録光20は、プリズム30と空気の間に屈折率差があるので、図11の点線で示す記録光20のようにプリズムの底面33にて全反射を起こす。したがって、該記録光20は、プリズムの底面33から出射しないので、記録材料16の端面から入射することがなく、界面からの入射した記録光20と多重干渉するのを防ぐことができる。
(数9)
sinθr>n2/n1
ここで、θrは記録光の進行方向とプリズムの底面との角度、n1はプリズム30の屈折率、n2は記録材料16の屈折率である。
上記構成において記録材料16に入射または出射するときにプリズム30と記録材料16の間に空気層が存在すると記録光20が空気層との界面において反射する恐れがある。例えば、記録光20がプリズム30から記録材料16に入射するときにその界面において反射すると鮮明なホログラムが得られない。一方、ミラーからの反射光が記録材料16からプリズム30に出射するときに記録光20の記録材料中での記録光の傾斜角度が大きい場合、記録光20がミラー18で反射した後、記録材料16から出射するときの出射角も当然に大きくなる。そうすると、その反射光が記録材料16からプリズム30に出射するときに、空気層との界面で反射し、多重干渉する恐れもある。
また上記実施の形態で記録材料としてホログラム材料である重クロム酸ゼラチンを使用したが、これに限定されず、フォトポリマー、フォトレジスト、銀塩感光剤等も用いられる。
支持体には記録材料を保持して、かつ透明な材料を用いる必要がある。例えば光学窓材料(BK7、ソーダガラス等)が用いられる。
12 干渉縞(周期的な屈折率変調)
14 支持体
16 記録材料(感光層)
18 ミラー
20 記録光
30 プリズム
31 プリズムの入射面
32 プリズムの出射面
33 プリズムの底面
41 オイル
Claims (6)
- 記録材料にレーザ等の単色光を露光することにより形成される干渉縞を周期的な屈折率変調として記録するホログラフィック・ノッチフィルター製造方法において、
裏面に銀又はアルミニウムを蒸着してミラー面とした透明な材質よりなる支持体に支持された前記記録材料の表面に、前記記録材料と略同一の屈折率を有するプリズムをその底面が密接するように載置して、記録光を所定の角度で前記プリズムの入射面から入射させ、前記プリズムと前記記録材料との界面を通過した記録光と、前記記録光が前記ミラー面で反射した反射光とを干渉させる一光束露光を行い、除去すべき光の波長λに対し、2次以上の高次干渉が波長λで生じるように非正弦的な屈折率変調を前記記録材料に記録することを特徴とするホログラフィック・ノッチフィルターの製造方法。 - 請求項1の製造方法において、
前記プリズムが該プリズムに入射する記録光に対して垂直な入射面を持つものであることを特徴とするホログラフィック・ノッチフィルターの製造方法。 - 請求項1の製造方法において、
前記プリズムが前記記録材料の全表面を覆う以上に大きい面積の底面を有するものであることを特徴とするホログラフィック・ノッチフィルターの製造方法。 - 請求項1の製造方法において、
前記プリズムと前記記録材料との界面に、前記記録材料と略同一の屈折率を有するオイルを介在させることを特徴とするホログラフィック・ノッチフィルターの製造方法。 - 請求項1の製造方法において、
前記記録材料は、重クロム酸ゼラチン、フォトポリマー、フォトレジスト、または銀塩系感光材料であることを特徴とするホログラフィック・ノッチフィルターの製造方法。 - 裏面をミラー面とした透明な支持体に支持されている記録材料の表面に前記記録材料と略同一の屈折率を有するプリズムがその底面を密接して載置されている露光系を使用し、前記プリズムを経由して前記記録材料中へ入射される記録光の進行方向と前記記録材料の厚さ方向との角度であり、数式7で示される角度θtを傾斜角度とする前記記録光と、前記記録光の前記ミラー面からの反射光とを干渉させる一光束露光を行うことにより、
除去すべき光の波長λに対し、二次以上の高次の干渉が波長λで生ずるように非正弦波的な屈折率変調が前記記録材料に記録されていることを特徴とするホログラフィック・ノッチフィルター。
(数7)
sinθt ≧ n1/n2
ここで、n1は空気の屈折率、n2は記録材料の屈折率
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