JP4242974B2 - ホログラフィックノッチフィルタ製造方法 - Google Patents

ホログラフィックノッチフィルタ製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はホログラフィックノッチフィルタ製造方法、特にその露光処理の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
レーザ光等の短波長の単色光を試料に照射し、散乱光をレンズで集光し回折格子で分光すると、該散乱光には入射光と同じ波長の光成分の他に、波長の異なった光成分も含まれている。入射光と同じ波長をもつ散乱光をレーリ散乱光といい、波長の異なる散乱光をラマン散乱光という。
ラマン散乱光は入射光の振動数に対し、試料固有の振動数が結合したものである。またラマン散乱光の強度は、入射光の強度と試料濃度(振動数)に比例する。したがって、ラマン散乱光を分光分析することにより、試料中の成分の同定と定量が可能となる。
【0003】
しかし、一般にラマン散乱光は、レーリ散乱光の10−6〜10−12倍と極めて微弱な光であるため、ラマン散乱光を高精度で測定するためには、レーリ散乱光を除去しラマン散乱光のみを取り出さなければならない。
すなわち、ラマン散乱光のラマンシフトが微少である場合、該ラマン散乱光とレーリ散乱光との波長のずれも当然微少となるため、レーリ散乱光に混ざった微弱なラマン散乱光を検出するのが非常に困難である。このため、前記レーリ散乱光を除去するために各種フィルタが用いられており、一般的なフィルタとしてホログラフィックノッチフィルタが汎用される。
【0004】
このホログラフィックノッチフィルタは、例えば図1に示すようにレーザ光の物体光波面L1と参照光波面L2を乾板10を挟んで反対方向より入射させることにより作成される。
この場合には、図2に示すように、前記ホログラム作成用の2光束L1,L2の干渉による干渉縞12は、支持体14に支持された感光層16面とほぼ平行に生じ、干渉縞間隔は、感光層の屈折率をnとすると、使用するレーザの波長の1/2nとなる。
【0005】
この周期的な露光、現像処理により、図3に示すような数十層以上の周期的な屈折率変調をもたせることができる。
この感光層16中の位置xにおける屈折率の大きさn(x)は、次式(1)で表される。
n(x)=n+(1/2)nsin(2πx/P)…………………(1)
ここで、nは平均屈折率(=(n+n)/2)、nは屈折率の変調幅(=(n−n))、Pは周期、nは最大屈折率、nは最小屈折率である。
【0006】
ところで、従来の露光処理では、特定波長λの光を除去するため、フィルタ製作後、該フィルタに光を入射させると、除去する特定の光の波長と同じ波長λの1次光が反射されるように、フィルタ製作中、図4に示すような正弦波的な屈折率変調(例えば最大屈折率n:最小屈折率nが1:1等)を乾板に記録していた。
この周期的な屈折率変調は、図5に示すように、ある特定波長λのみに対して大きい反射率をもつ一種の多層膜干渉フィルタとして働く。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、レーリ散乱光を除去するためには、該レーリ散乱光の波長光のみを除去するフィルタであることが望ましい。すなわち、フィルタにより除去される光の波長のバンド幅が広いと、レーリ散乱光の波長に近い波長のラマンシフトのラマン散乱光をも除去してしまうからである。
したがって、このようなレーリ散乱光を除去する際に用いられるノッチフィルタでは、図6に示すような除去する光の波長λのバンド幅BWを、いかに狭いものにすることができるかが重要な課題になってくる。しかも、その波長λにおいて高い吸光度を示すものでなければならない。
【0008】
ここで、ホログラフィックノッチフィルタの吸光度は、次式(2)で表される。
吸光度(O.D.)=log(100/T)=(1.36×BW×N)−log(4/n)……………………………………………………………………(2)
ここで、Tは最小透過率、Nは周期の全層、nは基板の屈折率である。
また、バンド幅BWは、次式(3)で表される。
バンド幅(BW)=(n)/(2n)…………………………………(3)
前記式(2)より明らかなように、吸光度は、乾板に記録した屈折率変調幅、層数に比例する。また、前記式(3)より明らかなように、バンド幅も、屈折率変調幅に比例する。
【0009】
したがって、吸光度の高いフィルタを作成するためには、変調幅を大きくしなければならない。
しかし、この変調幅を大きくすると、バンド幅も同時に大きくなってしまう。
したがって、バンド幅がさらに狭く、しかも吸光度の高いフィルタを作成するためには、変調幅を小さくして、その分、層数を増加させる必要がある。つまり、厚い乾板になってしまう。
【0010】
しかし、層数を増加させ、なおかつ屈折率を再現性良く制御するのは技術的に非常に困難であり、バンド幅のより狭い特定の光を良好に除去することのできるホログラフィックノッチフィルタの作成に、技術的な限界を生じていた。
このように、ホログラフィックノッチフィルタには、バンド幅のより狭い特定の光を良好に除去することが要求されるが、前記乾板を厚くすることによりバンド幅の狭いフィルタを製作する従来の方法を用いていたのでは、技術的な限界を生じるため、その代替法の開発が強く望まれていたものの、いまだこれを解決するための適切な技術が存在しなかった。
【0011】
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は乾板を厚くすることなく、バンド幅のより狭い特定の光を良好に除去することのできるホログラフィックノッチフィルタを製造することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、まず、フィルタ製作中、乾板に記録する周期的な屈折率変調を、例えば図7に示すような非正弦的(例えば最大屈折率n:最小屈折率nが3:1等)に制御することにより、ノッチフィルタ製作後、該ノッチフィルタに光を入射させると、充分に狭いバンド幅と強い反射光強度をもつ高次の干渉が発生することを見出した。
【0013】
これは、図7に示す非正弦的な屈折率変調を記録したホログラフィックノッチフィルタの周波数応答曲線を示す図8において、前記波長λにおけるピークP1に加えて、波長域λ2に高い吸光度を示す、該ピークP1に比較し充分に幅の狭いピークP2が生じていることからも確認することができる。
そして、本発明者らは、ノッチフィルタにより特定波長の光を除去するのに、従来の1次干渉に代えて、バンド幅のより狭い2次干渉等の高次干渉を利用することとした。
【0014】
すなわち、このような2次干渉等の高次干渉による吸光度のピークP2を、除去する特定の光の波長と同じ波長λに位置させることにより、乾板を厚くすることなく、従来に比較しバンド幅のより狭い特定の光を良好に除去することのできるホログラフィックノッチフィルタを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明にかかるホログラフィックノッチフィルタ製造方法は、乾板に二光束干渉による干渉縞を露光することにより周期的な屈折率変調を記録し、これを現像定着するホログラフィックノッチフィルタ製造方法において、
前記フィルタ製作後、該フィルタに光を入射すると、除去する光の波長と同じ波長をもつ、所望の高次光が反射されるように、該フィルタ製作中、該乾板に記録する周期的な屈折率変調を制御することを特徴とする。
ここにいう高次光とは、次数が2次以上のものをいうが、その次数は高い程、バンド幅のより狭い特徴波長の光が除去可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
まず、露光処理する。
ここで、露光処理において、ノッチフィルタ製作後、該フィルタに光を入射させると、該フィルタにより除去する光の波長と同じ波長λの1次光が反射回折されるように、乾板に正弦波的な屈折率変調(例えば最大屈折率n:最小屈折率nが1:1等)を記録する方法を採用するのが一般的である。
【0017】
しかし、このような方法を用いると、バンド幅がより狭い光を良好に除去することのできるフィルタを作成するためには、乾板をより厚くする必要があるが、この乾板を厚くするのは技術的に非常に困難であるため、バンド幅のより狭いフィルタを作成するのは事実上不可能であった。
そこで、本発明においては、前述のような方法の代替法として、まず、1次光に比較し充分に狭いバンド幅と極めて強い光強度の高次干渉が発生するように、フィルタ製作中、乾板に記録する屈折率変調を制御することとした。
【0018】
すなわち、本実施形態では、フィルタ製作後、該フィルタに光を入射させると、1次の反射に比較し充分に狭いバンド幅と極めて強い光強度の高次の反射が発生するように、例えば2次の反射が強められるように、乾板に記録する周期的な屈折率変調を、例えば前記図7に示すような非正弦波的(例えば最大屈折率n:最小屈折率nが3:1等)に制御しているのである。
【0019】
ここで、前述のような高次の反射が確認されても、この段階では、例えば前記図8に示すように、除去する光の波長λとは異なる波長λ2に位置する場合があるので、つぎに、この高次の反射を、ノッチフィルタにより除去する光の波長λの位置に生じるように制御する。
例えば、乾板に記録する1次干渉を長波長側へずらすことにより、前記2次干渉等の高次干渉も、フィルタにより除去する光の波長と同じ波長位置に位置させ、これにより、該2次干渉によるバンド幅が非常に狭く、しかも強い吸光度を示すピークP2を、除去する特定の光の波長と同じ波長λに位置させることができる。
【0020】
ここで、前記乾板に記録する1次干渉を長波長側へずらす方法としては、例えば図9に示すように、乾板10を傾けてホログラム作成用の2光束L1,L2を露光することにより、該記録波長より長波長の情報を記録することができる。
このようにして2次干渉等の所望の高次干渉が、フィルタにより除去する光の波長位置に生じるように露光を制御し、これを現像定着すると、本実施形態にかかるホログラフィックノッチフィルタを完成する。
【0021】
この結果、本実施形態では、1次干渉に比較し充分にバンド幅が狭く、しかも強い反射光強度をもつ2次干渉等の高い次数の反射を得ることができるので、ノッチフィルタにより特定波長の光を除去するのに、このような高次の反射を利用することが可能となる。
したがって、フィルタ作成後、このフィルタに光を入射させると、前記2次干渉によって幅の非常に狭い特定波長λの光が強く反射回折され、それ以外の光を透過させることができる。
【0022】
これにより、従来極めて困難であった、乾板を厚くすることなく、バンド幅のより狭い特定の光を良好に除去することのできるホログラフィックノッチフィルタを得ることが可能となる。
なお、前記高次干渉の次数としては、前記2次に限定されるものでなく、例えば3次以上を用いることも可能である。
以下に、2次と3次の場合を例に説明する。
【0023】
例えばホログラフィックノッチフィルタの各次数を、同じ膜厚で比較すると、その層数は2次の場合が1次の1/2(1層当りの厚さが2倍)となる。3次の場合は1次の1/3(1層当りの厚さが3倍)となる。
また、屈折率変調Δnが各次数について同じ場合、フィルタの吸光度(O.D.)は2次の場合が1次の1/2となる。3次の場合は1次の1/3となる。
【0024】
つまり、この屈折率変調Δnを2倍にすれば、2次の場合、O.D.が1次と同じ値となる。この屈折率変調Δnを3倍にすれば、3次の場合、O.D.が1次と同じ値となる。
その一例を、下記表1と図10に示す。なお、フィルタの吸光度(O.D.)は各次数で同一の値とした。
【0025】
【表1】
Figure 0004242974
【0026】
前記表1および図10から明らかように、各次数のバンド幅の関係は、1次のバンド幅(W1)=4・2次のバンド幅(W2)=9・2次のバンド幅(W3)となることから、本実施形態にかかる製造方法で製造されるノッチフィルタの次数は、高い程、除去可能なバンド幅をより狭くできることに関して非常に有利であることが理解される。
【0027】
このように通常は、屈折率変調Δnを小さくし、なおかつ、これを全膜厚内で均一につくるのは非常に困難である。また、層数が増加すると、膜厚の許容範囲が小さくなる。つまり、屈折率変調Δnが膜厚内で多少変わっただけで、性能が大きく劣化してしまうにもかかわらず、厚い膜では均一に処理するのが非常に困難であった。
【0028】
これに対し、本実施形態にかかる製造方法を用いることにより、屈折率変調Δnの巾を大きくとれる、層数が少なくても、バンド幅のより狭い特定の光を除去できるノッチフィルタが得られるという利点を有する。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかるホログラフィックノッチフィルタの製造方法によれば、該フィルタ製作後、該フィルタに光を入射すると、除去する光の波長と同じ波長の、所望の高次の干渉による波数の光が反射されるように、該フィルタ製作中、乾板に記録する周期的な屈折率変調を制御することとしたので、1次干渉に比較し充分に狭いバンド幅と高い光強度をもつ高次干渉の反射を、ノッチフィルタによる特定波長の光の除去に利用することが可能となる。
したがって、従来極めて困難であった、乾板を厚くすることなく、バンド幅のより狭い特定の光を良好に除去することのできるホログラフィックノッチフィルタを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】露光処理の説明図である。
【図2】図1に示した露光処理により感光層に干渉縞(周期的な屈折率変調)が記録された乾板の拡大図である。
【図3】乾板中の位置xにおける屈折率の大きさの説明図である。
【図4】従来の製造方法により乾板に記録する周期的な屈折率変調の説明図である。
【図5】図4に示した屈折率変調を記録したノッチフィルタの周波数応答曲線の一例である。
【図6】除去する光の波長のバンド幅の説明図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる製造方法により乾板に記録する周期的な屈折率変調の説明図である。
【図8】図7に示した屈折率変調を記録したノッチフィルタの周波数応答曲線の一例である。
【図9】図7に示した非正弦的な屈折率変調の制御方法の一例である。
【図10】本発明の一実施形態にかかる製造方法により製造されるノッチフィルタで用いられる次数の説明図である。
【符号の説明】
10…乾板
12…干渉縞(周期的な屈折率変調)
14…支持体
16…感光層

Claims (1)

  1. 乾板に二光束干渉による干渉縞を露光することにより周期的な屈折率変調を記録し、これを現像定着するホログラフィックノッチフィルタ製造方法において、
    除去すべき光の波長λに対し、2次以上の高次干渉が波長λで生じるように非正弦的な屈折率変調を記録することを特徴とするホログラフィックノッチフィルタ製造方法。
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