JP5048145B2 - 有機発光素子及び有機発光素子の製造方法 - Google Patents

有機発光素子及び有機発光素子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、有機発光素子及び有機発光素子の製造方法に関し、さらに詳細には、酸化物半導体を含む画素部の積層構造を持つ有機発光素子及び有機発光素子の製造方法に関する。
有機発光素子は、電圧を印加することで自発光する物質を用いた素子であって、液晶素子に比べて高輝度、広視野角、高速応答という特性を示し、バックライトが不要であるため素子自体を薄くすることができるという長所を有する。
有機発光素子の発光層を含む有機層の積層構造は、発光効率を向上させるための重要な構造である。有機発光素子の積層構造は、p型とn型との有機半導体層を積層させて発光層に電子と正孔との均衡的な電荷をもたらす。
積層型素子は、正極から正孔を注入し、注入された正孔を発光層に輸送する正孔輸送層(hole transport layer:HTL)、負極から電子を注入し、注入された電子を発光層に輸送する電子輸送層(electron transport layer:ETL)、及び正孔と電子とを再結合させて発光を表す発光層(emitting layer:EML)に大別される。正孔輸送層に加えて、正極から正孔を注入する正孔注入層(hole injection layer:HIL)を更に含んでもよく、電子輸送層に加えて、負極から電子を注入する電子注入層(electron injection layer:EIL)を更に含んでもよい。このような有機層の積層構造は、発光効率を高めて駆動電圧を低める役割を行う。
米国特許出願公開第2002/0187366号明細書
しかしながら、有機発光素子の大面積化と共に高い輝度が要求されるため、消費電力が大きくなり、これに伴い有機半導体物質の寿命が短くなるという問題があった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、電流効率が向上して寿命が長くなり、また発光特性が向上した有機発光素子及び有機発光素子の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、正極層と、前記正極層上に位置し、酸化物半導体からなる正孔充電層と、前記正孔充電層上に位置する一つ以上の有機層と、前記有機層上に位置する負極層と、を含む有機発光素子が提供される。
前記正孔充電層は、インジウム、ガリウム及び亜鉛を含む酸化物半導体、又は、インジウム、亜鉛及びハフニウムを含む酸化物半導体であることが好ましい。
前記酸化物半導体のバンドギャップエネルギーは3〜3.5eVであり、前記酸化物半導体の価電子帯エネルギーは、前記正極層の仕事関数と、前記酸化物半導体層と接する前記有機層のHOMOエネルギーとの間に存在することが好ましい。
前記インジウム、ガリウム及び亜鉛を含む酸化物半導体は、前記ガリウムの含有量が30〜50原子%であり、前記インジウムの含有量が30〜50原子%であり、前記亜鉛の含有量が10〜35原子%であってもよい。また、前記インジウム、ガリウム及び亜鉛を含む酸化物半導体は、前記ガリウムの含有量が20〜40原子%であり、前記インジウムの含有量が20〜40原子%であり、前記亜鉛の含有量が20〜40原子%であってもよい。
前記インジウム、亜鉛及びハフニウムを含む酸化物半導体は、前記インジウムの含有量が35〜55原子%であり、前記亜鉛の含有量が35〜55原子%であり、前記ハフニウムの含有量が5〜15原子%であってもよい。
前記酸化物半導体のエネルギー状態は、バンドテールを有し、深いエネルギー準位にエネルギー状態が存在してもよい。
前記有機層は、発光層を含むことが好ましい。また、前記酸化物半導体層と前記発光層とが、発光領域を共有してもよい。
前記有機発光素子は、400nm〜700nm領域で発光することが好ましい。
前記有機層は、前記酸化物半導体層と前記発光層との間に、正孔注入層及び正孔輸送層のうちの少なくとも何れか一つを更に含んでもよい。
前記発光層と前記負極層との間に、電子輸送層及び電子注入層のうち少なくとも何れか一つを更に含んでもよい。
前記正極層は、酸化インジウムスズ(ITO)又は酸化インジウム亜鉛(IZO)を含むことが好ましい。
前記有機発光素子は、青色光、赤色光又は緑色光を発光することが好ましい。
基板と、前記基板上に位置するゲート電極、前記ゲート電極及び前記基板上に位置するゲート絶縁層、前記ゲート絶縁層上に位置し、前記ゲート電極と対向する活性層、前記活性層と電気的に連結されたソース電極及びドレイン電極を含む薄膜トランジスタと、絶縁層と、を更に備え、前記正極層は、前記絶縁層を貫通して前記ソース電極又は前記ドレイン電極と接触するようにしてもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、正極層を形成する段階と、前記正極層上に酸化物半導体からなる正孔充電層を形成する段階と、前記正孔充電層上に少なくとも一つ以上の有機層を形成する段階と、前記有機層上に負極層を形成する段階と、を含む有機発光素子の製造方法が提供される。
前記正孔充電層は、インジウム、ガリウム及び亜鉛を含む酸化物半導体、又は、インジウム、亜鉛及びハフニウムを含む酸化物半導体であることが好ましい。
前記酸化物半導体のバンドギャップエネルギーは、3〜3.5eVであり、前記酸化物半導体の価電子帯エネルギーは、前記正極層の仕事関数と前記酸化物半導体層と接する前記有機層のHOMOエネルギーとの間に存在することが好ましい。
前記インジウム、ガリウム及び亜鉛を含む酸化物半導体は、前記ガリウムの含有量が30〜50原子%であり、前記インジウムの含有量が30〜50原子%であり、前記亜鉛の含有量が10〜35原子%であってもよい。また、前記インジウム、ガリウム及び亜鉛を含む酸化物半導体は、前記ガリウムの含有量が20〜40原子%であり、前記インジウムの含有量が20〜40原子%であり、前記亜鉛の含有量が20〜40原子%であってもよい。
前記インジウム、亜鉛及びハフニウムを含む酸化物半導体は、前記インジウムの含有量が35〜55原子%であり、前記亜鉛の含有量が35〜55原子%であり、前記ハフニウムの含有量が5〜15原子%であってもよい。
以上説明したように本発明によれば、正極層上の酸化物半導体層が、発光層への正孔注入に必要な正孔を充電してから供給することによって、有機発光素子の発光効率を向上させることができる。
また、青色光に対する発光効率を向上させることができる一方、酸化物半導体層が発光層と直接接して発光領域を共有しつつ発光層と異なるスペクトルを作ることによって、白色光を形成することもできる。
本発明の一実施形態に係る有機発光素子の積層構造を示す断面図である。 本発明の他の実施形態に係る有機発光素子の積層構造を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る有機発光素子を示す断面図である。 実施例1及び比較例1の有機発光素子の電流効率を測定して比較したグラフ図である。 実施例2及び比較例2の有機発光素子の電流効率を測定して比較したグラフ図である。 実施例3及び比較例3の有機発光素子の電流効率を測定して比較したグラフ図である。 実施例3及び比較例3の有機発光素子の経時的な輝度を測定して比較したグラフ図である。 実施例1及び比較例1の有機発光素子に電圧パルスを印加した後に示される経時的な発光強度を測定して比較したグラフ図である。 本発明の実施例1及び実施例4の有機発光素子の発光スペクトルを示したグラフ図である。 酸化物半導体層の形成時の熱処理温度及び酸素分圧による光電流の変化を示したグラフ図である。 薄膜トランジスタの活性層に本実施の形態の酸化物半導体層を使用したときの電流―電圧特性を示すグラフである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る有機発光素子の積層構造を示す断面図である。
図1を参照すれば、本実施形態に係る有機発光素子は、正極層(anode)11上に酸化物半導体層12が形成されており、酸化物半導体層12上に正孔注入層(hole injection layer:HIL)13、正孔輸送層(hole transfer layer:HTL)14、発光層(emisision layer:EML)15、電子輸送層(electron transfer layer:ETL)16及び電子注入層(electron injection layer:EIL)17が順次形成されている。そして、電子注入層(EIL)17上に、負極層(cathode)18が形成されている。
正極層11は、酸化インジウム(InO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、これらの複合体の酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)または金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、銅(Cu)などで形成することができる。
酸化物半導体層12は、例えば、インジウム(In)、亜鉛(Zn)及びガリウム(Ga)を含む酸化物、または、インジウム(In)、亜鉛(Zn)及びハフニウム(Hf)を含む酸化物等を用いて形成することができる。
前記酸化物半導体層12の価電子帯のエネルギー準位は、正極層11の仕事関数のエネルギー準位と、隣接有機層である正孔注入層(HIL)13のHOMO(highest occupied molecular orbital)のエネルギー準位との間に位置することができる。
一方、酸化物半導体層12は、n型半導体であるため電子が多く、非晶質構造であるので、バンドテール(band tail)及び深い状態(deep state)に位置するエネルギーレベルを持つ。酸化物半導体層12のバンドテール及び深いエネルギー状態は、正極層11から酸化物半導体層12を経る正孔のフロー(すなわち、正孔の移動)に影響を与える。
図1の積層構造で酸化物半導体層12は、正孔注入層13とエネルギー障壁を形成しつつ、電子によって正孔を捕捉することで正孔を酸化物半導体層12内に充電する正孔充電層としての役割を有している。酸化物半導体層12が正孔を充電してから短時間に発光層で供給することによって、素子は発光効率を高めることができる。
酸化物半導体層12がインジウム(In)、亜鉛(Zn)及びガリウム(Ga)を含む酸化物である場合、この酸化物半導体層は、インジウムが30〜50原子%、ガリウムが30〜50原子%、亜鉛が10〜35原子%の組成比を有することができる。
インジウムの含有量が前記範囲より少なければ不導体になり、前記範囲より多ければ伝導性が高くなって導体特性を表すこととなる。ガリウムの含有量が前記範囲より少なければ導体になり、前記範囲より多ければ不導体になる可能性がある。亜鉛の含有量が前記範囲より少なければ導体になり、前記範囲より多ければ不導体になる可能性がある。
かかる酸化物半導体層12は、約10nm〜100nmの厚さに形成することが可能である。
正孔注入層13は、酸化物半導体層12から正孔を引き込む役割を果たすものであり、例えば、m−MTDATA(4、4’、4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、TDATA、2T−NATA、Pani/DBSA(ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸)、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)、Pani/CSA(ポリアニリン/カンファースルホン酸)またはPANI/PSS(ポリアニリン/ポリ(4−スチレンスルホネート))などを使用可能であるが、これらに限定されるものではない。
かかる正孔注入層の厚さは、約100Å〜1000Å(約10nm〜100nm)とすることが可能である。
・・・(m−MTDATA)
・・・(TDATA)
・・・(2T−NATA)
・・・(Pani/DBSA)
・・・(PEDOT/PSS)
正孔輸送層14は、TPD(N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン)、NPD(N,N’−DI(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン)、NPB(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−(1、1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン)などを使用できる。前記正孔輸送層14の厚さは、約50Å〜約1000Å(約5nm〜100nm)とすることが可能である。
・・・(TPD)
・・・(α−NPD)
発光層15は、一つの発光物質を含むか、またはホスト化合物とドーパント化合物との組み合わせを含むことができる。公知のホスト化合物の例としては、Alq、CBP(4,4’−N,N’−ジカルバゾル−ビフェニル)、PVK(ポリ(n−ビニルカルバゾール))、ADN(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン)、TCTA、TPBI(1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン)、TBADN(3−tert−ブチル−9,10−ジ(ナフト−2−イル)アントラセン)、E3、DSA(ジスチリルアリレン)などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
・・・(Alq
・・・(CBP)
・・・(PVK)
・・・(ADN)
・・・(TPBI)
・・・(TBADN)
・・・(E3)
一方、公知の赤色ドーパント化合物として、PtOEP、Ir(piq)、Btp2Ir(acac)などを利用できるが、これらに限定されるものではない。なお、以下の化学構造式は、左から順に、PtOEP、Ir(piq)、BtpIr(acac)を表している。
また、公知の緑色ドーパント化合物として、Ir(ppy)、Ir(ppy)(acac)、Ir(mpyp)などを利用できるが、これらに限定されるものではない。なお、以下の化学構造式は、左から順に、Ir(ppy)、Ir(ppy)(acac)、Ir(mpyp)を表している。
一方、公知の青色ドーパント化合物として、FIrpic、(Fppy)Ir(tmd)、Ir(dfppz)、ter−フルオレン、DPAVBi(4,4’−ビス(4−ジフェニルアミノスチリル)ビフェニル)、TBPe(2,5,8,11−テトラ−t−ブチルフェリレン)などを利用できるが、これらに限定されるものではない。
ここで、化学構造式は、左から順に、FIrpic、(Fppy)Ir(tmd)、Ir(dfppz)を表している。
・・・(DPAVBi)
・・・(TBPe)
前記発光層がホスト化合物及びドーパント化合物を含む場合、ドーパント化合物の含有量は、通例的にホスト化合物約100質量部を基準として、約0.01〜約15質量部の範囲で選択することが可能であるが、これらに限定されるものではない。発光層13の厚さは、約100Å〜約1000Å(約10nm〜100nm)とすることができる。
電子輸送層16は、公知の電子輸送材料を使用して形成することができる。かかる電子輸送材料として、例えば、Bphen(4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、BAlq、Alq(トリス(8−キノリノレート)アルミニウム)、Bebq(ベリリウムビス(ベゾキノリン−10−オラート)、TPBIなどの材料を使用できるが、これらに限定されるものではない。電子輸送層16の厚さは、約100Å〜約1000Å(約10nm〜100nm)とすることができる。
・・・(Bphen)
・・・(Alq
・・・(BAlq)
電子注入層17は、任意の電子注入物質を含むことができる。例えば、前記電子注入層17は、LiF、NaCl、CsF、LiO及びBaFからなる群から選択された一つ以上を含むことができるが、これらに限定されるものではない。電子注入層17の厚さは、約1Å〜約100Å(約0.1nm〜10nm)とすることが可能である。
図2は、本発明の他の実施形態に係る有機発光素子の積層構造を示す断面図である。
図2の有機発光素子の積層構造は、酸化物半導体層の真上に発光層が形成されている点で、図1の有機発光素子の積層構造と異なる。
図2を参照すれば、かかる有機発光素子では、正極層11上に酸化物半導体層12が形成されており、酸化物半導体層12上に発光層15、電子輸送層16及び電子注入層17が順次に形成されている。そして、電子注入層17上に負極層18が形成されている。
一般的に、有機発光素子の発光層の発光領域は、主に正極層に近い方向に位置する。本実施形態で、正極層11と発光層15との間の酸化物半導体層12は、正孔充電層の役割を担う一方、発光層15と発光領域を共有して、発光層15のみによる発光と異なる発光スペクトルを作る。酸化物半導体層12と発光層15との発光領域を共有する発光は、酸化物半導体層12のエネルギーバンド構造の影響を受けて、可視光領域の広い範囲の波長で起き、したがって、白色光を形成することが可能となる。
図2の実施形態の積層構造の材料は、図1の実施形態と関連して説明した積層構造の材料と同様である。
酸化物半導体層の電荷濃度をはじめとするエネルギー状態の特性は、酸化物半導体層をスパッタリングして蒸着する際に、酸素分圧と熱処理温度とを変化させて調節でき、また、プラズマ処理、紫外線−オゾン処理によっても調節できる。
図3は、本発明の他の実施形態に係る有機発光素子を示す断面図である。
図3を参照すれば、基板101上にゲート電極110及びゲート電極110上のゲート絶縁膜112が形成されている。基板101は、例えば、ガラス、石英、プラスチック材質であり、シリコン、セラミックまたは金属などの他の材質も使用可能である。基板の平滑性及び不純元素の浸透を遮断するために、または、移動性イオンを含むか、導電性の基板を使用する場合に、絶縁のためにバッファ層(図示せず)が使われるか、または、省略されうる。バッファ層(図示せず)は、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物またはシリコン酸化窒化物で形成可能である。ゲート電極110は、例えば、Au、Ag、Cu、Ni、Pt、Pd、Al、Mo、W、Tiまたはこれらの合金から形成可能である。ゲート絶縁膜112は、例えば、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜などの絶縁膜から形成可能である。
ゲート絶縁膜112上に、ゲート電極110と対向するように活性層120が形成されている。活性層120は、多結晶シリコン、非晶質シリコン、酸化物半導体または有機半導体物質から形成可能である。
ソース電極/ドレイン電極131、132は、第1層間絶縁層122を貫通して活性層120と接触している。本発明の実施形態による積層構造140は、第2層間絶縁層134を貫通してドレイン電極131に接触している。ソース電極/ドレイン電極131、132は、例えば、Au、Ag、Cu、Ni、Pt、Pd、Al、Mo、W、Tiまたはこれらの合金を含む多様な材料から形成可能である。第1層間絶縁層122及び第2層間絶縁層134は、例えば、シリコン酸化物またはシリコン窒化物などの絶縁膜から形成可能である。
画素部の積層構造140は、図1と関連して説明したように、正極層/酸化物半導体層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/負極層から形成されうる。または、画素部の積層構造140は、図2と関連して説明したように、正極層/酸化物半導体層/発光層/電子輸送層/電子注入層/負極層から形成されうる。
また、画素定義膜142は、有機膜または無機膜を用いて形成することが可能である。
本発明に係る有機発光素子の画素部積層構造は、赤色、緑色及び青色の発光のための画素部にいずれも適用可能である。また、本発明に係る有機発光素子は、白色発光素子としても使用可能である。
本発明に係る有機発光素子は、正孔充電層に充電されていた正孔が発光層に速く注入され、発光効率が高い。また、正孔充電層が発光層と接する場合、発光層と発光領域を共有して広い波長帯の発光が生じ、白色光として使用できる可能性がある。
本発明に係る有機発光素子の特性を測定して従来の有機発光素子の特性と比較するために、本発明の実施形態に係る有機発光素子と、比較例として従来の有機発光素子とを製作した。なお、以下の実施例及び比較例では、正極層にITO(層厚:450Å)、正孔注入層にm−MTDATA(層厚:600Å)、正孔輸送層にNPD(層厚:400Å)、発光層ホストにAND(発光層の層厚:200Å)、青色ドーパントにDPAVBi、緑色ドーパントにIr(ppy)3、赤色ドーパントにPtOEP、電子輸送層にAlq3(層厚:300Å)、電子注入層にLiF(層厚:10Å)、負極層にAl(層厚:1500Å)を使用した。
<実施例1>
図1の積層構造を使用して、青色発光用有機発光素子を製作した。正極層としてITO層を使用し、酸化物半導体層としてインジウム:ガリウム:亜鉛=2:2:1の組成比を持つGIZO酸化物半導体層(層厚:500Å)を使用した。この時、酸化物半導体のバンドギャップエネルギーは3.0〜3.4eVであり、酸化物半導体の価電子帯エネルギーは−2.0(eV)であり、正孔注入層のHOMOエネルギーは−5.2eV〜−5.5eVである。したがって、酸化物半導体の価電子帯エネルギーは、正極層の仕事関数と正孔注入層または発光層のHOMOエネルギーとの間に存在する。また、実施例1〜4では、酸化物半導体に正孔が注入されるので、正孔注入層または発光層のHOMOエネルギーが酸化物半導体の価電子帯エネルギーにほぼ一致する。酸化物半導体は主に電子を移動させるので、酸化物半導体に正孔が注入された際に、酸化物半導体の価電子帯に存在した電子が正孔注入層または発光層のHOMOに落ちるか、またはLUMOに一旦移動した後、HOMOに落ちうる。
<実施例2>
図1の積層構造を使用して、赤色発光用有機発光素子を製作した。正極層としてITO層を使用し、酸化物半導体層としてインジウム:ガリウム:亜鉛=2:2:1の組成比を持つGIZO酸化物半導体層(層厚:500Å)を使用した。
<実施例3>
図1の積層構造を使用して、緑色発光用有機発光素子を製作した。正極層としてITO層を使用し、酸化物半導体層としてインジウム:ガリウム:亜鉛=2:2:1の組成比を持つGIZO酸化物半導体層(層厚:500Å)を使用した。
<実施例4>
図2の積層構造を使用して、青色発光用有機発光素子を製作した。正極層としてITO層を使用し、酸化物半導体層としてインジウム:ガリウム:亜鉛=2:2:1の組成比を持つGIZO酸化物半導体層(層厚:500Å)を使用した。
<実施例5>
薄膜トランジスタの活性層(層厚:500Å)に、実施例1のGIZO酸化物半導体層、または、ハフニウム:インジウム:亜鉛=1:4.5:4.5の組成比を持つ酸化物半導体層を使用したときの電流―電圧特性を図11に示す。なお、絶縁層には酸化ケイ素(層厚:2000Å)、各電極にはモリブデン及びアルミニウム(層厚:5000Å)(例えば、ソース及びドレインがモリブデンで構成され、ゲートがアルミニウムで構成される)を使用した。この図によれば、実施例1のガリウムをハフニウムに変更した場合にも、同様の電流−電圧特性を示すので、後述する有機ELとしての特性も近似する。
<比較例1>
ITO正極層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/負極層の積層構造を使用して、青色発光用有機発光素子を製作した。
<比較例2>
ITO正極層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/負極層の積層構造を使用して、赤色発光用有機発光素子を製作した。
<比較例3>
ITO正極層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/負極層の積層構造を使用して、緑色発光用有機発光素子を製作した。
<電流効率>
電流効率(ηc[Cd/A])は、電流密度(J[A/m])当たりの正面輝度(L[cd/m])のサイズを表したものであって、素子の印加電圧に関係しないため、発光材料自体の発光性能を評価する際に使用される。
図4は、実施例1及び比較例1の青色発光用有機発光素子の電流効率を測定して比較したグラフ図である。図4で、▲及び■は、それぞれ実施例1の有機発光素子の電流密度及び電流効率を表示したものである。一方、図4で、△及び□は、それぞれ比較例1の有機発光素子の電流密度及び電流効率を表示したものである。すなわち、■の有機発光素子は、ITO正極層/GIZO酸化物半導体層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/負極層の積層構造を持ち、□の有機発光素子は、ITO正極層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/負極層の積層構造を持つ。GIZO酸化物半導体層は、インジウム:ガリウム:亜鉛=2:2:1の組成比を持つ酸化物半導体層を使用した。
図4のグラフ図で、GIZO酸化物半導体層を使用した実施例1の場合の電流効率が、GIZO酸化物半導体層を使用していない比較例1の場合より3倍ほど大きい。これにより、GIZO酸化物半導体層を使用した有機発光素子の電流効率が大きく向上したことが分かる。また、電流効率の向上と共に素子寿命の向上も期待される。
図5は、実施例2及び比較例2の赤色発光用有機発光素子の電流効率を測定して比較したグラフ図である。図5で、▲及び■は、それぞれ実施例2の有機発光素子の電流密度及び電流効率を表示したものである。一方、図5で、△及び□は、それぞれ比較例1の有機発光素子の電流密度及び電流効率を表示したものである。青色発光の有機発光素子の場合と同様に、赤色発光の場合にも、GIZO酸化物半導体層を使用した有機発光素子の電流効率が大きく向上したことが分かる。
図6は、実施例3及び比較例3の緑色発光用有機発光素子の電流効率を測定して比較したグラフ図である。図6で、▲及び■は、それぞれ実施例3の有機発光素子の電流密度及び電流効率を表示したものである。一方、図6で、△及び□は、それぞれ比較例3の有機発光素子の電流密度及び電流効率を表示したものである。青色発光の有機発光素子の場合と同様に、緑色発光の場合にも、GIZO酸化物半導体層を使用した有機発光素子の電流効率が大きく向上したことが分かる。
<寿命>
図7は、実施例3及び比較例3の緑色発光用有機発光素子の経時的な輝度を測定して比較したグラフ図である。図7で、●は、実施例3の有機発光素子の輝度であり、○は、比較例3の有機発光素子の輝度である。図7のグラフで、比較例3のITO正極層のみを使用した場合には輝度が一定に減少するが、実施例3のITO正極層上にGIZO酸化物半導体層を使用した場合には、輝度の起伏はあるが、減少傾向が明らかではない。また、時間が経過しても、ITO正極層上にGIZO酸化物半導体層を使用した実施例3の場合が、TO正極層のみを使用した比較例3の場合より輝度がずっと高いので、GIZO酸化物半導体層を使用した有機発光素子の寿命が向上したことが分かる。
<TEL(transient electroluminescence)測定>
一般的に電圧パルスが印加されれば、約〜1μs後から発光し始まる。これは、有機半導体層の抵抗が高いため、正孔と電子とが発光層まで入るのに時間がかかるためである。発光開始時間は、各有機半導体層の移動度及び隣接した有機層とのエネルギーレベル差により影響される。一般的に発光層に入った電荷は、低い移動度のために空間電荷制限電流(space−charge−limited−current:SCLC)を形成するようになって、電荷が押されて入るので、経時的な発光曲線が「S」字型の形態をなす。すなわち、パルスが維持される間に経時的に発光層内の電荷注入が飽和されて一定の強度を維持するようになる。この飽和発光の強度は、DCモードで電圧によって発生する発光強度と同じ値になる。
図8は、実施例1及び比較例1の青色発光用有機発光素子に電圧パルスを印加した後に示される、経時的な発光強度を測定して比較したグラフ図である。図8で太線は、実施例1の発光強度であり、細線は、比較例1の発光強度である。
図8のグラフ図で、実施例1及び比較例1の青色発光用有機発光素子の電極両端に、正(positive)の電圧パルスを一定の周期(10Hz)で印加しつつ発生する反復的な発光強度をオシロスコープで測定した。図8のグラフに図示されていないが、電圧パルス幅が20μsに印加されている。
図8で、比較例1のTELは一般的なS字パターンを表している。しかし、実施例1の場合には、発光開始時間が比較例1の場合より速く、発光強度も比較例1に比べて9倍ほど増大している。発光層に多くの電荷が速く入る場合に、このような発光パターンが発生しうる。しかし、GIZO酸化物半導体層は電子が多くのn型半導体を形成しており、電気的相互作用により正極層からの正孔注入を遅くする。しかし、図8の実施例1の発光パターンは、発光層への初期発光時間が速く、これは遅い正孔注入から予想し難い。
初期の速い発光時間は、GIZO酸化物半導体層内に捕えられていた、すなわち、GIZO酸化物半導体層内に充電されていた正孔が、素子に電圧がかかれば発光層に速く注入されうるためであると解釈できる。また、GIZO酸化物半導体層から発光層に注入された正孔は、正孔より速く発光層に入った電子と結合して大きい初期発光強度を作ることと理解できる。したがって、GIZO酸化物半導体層は、電荷充電層(hole charging layer:HCL)の役割を果たすと理解できる。
図9は、本発明の実施例1及び実施例4の青色発光用有機発光素子の発光スペクトルを示したグラフ図である。図9で、太線は、実施例1の有機発光素子の発光スペクトルであり、細線は、実施例4の有機発光素子の発光スペクトルである。図9のグラフで、GIZO酸化物半導体層上に正孔注入層と正孔輸送層とを形成した実施例1の場合より、GIZO酸化物半導体層上に直ちに発光層を形成した実施例4の場合に、青色波長から700nmに至る長い波長帯まで発光の強度が大きく維持されるということが分かる。これにより、実施例4の有機発光素子は白色光を形成するのに使用可能であると判断される。
実施例4の有機発光素子が長い波長帯にわかる発光スペクトルを表すことは、GIZO酸化物半導体層が正孔充電層の役割を行う一方、発光層と発光領域とを共有し、前記発光領域の発光は、GIZO酸化物半導体層のエネルギーバンド構造の影響を受けるためであると考えることができる。
図10は、酸化物半導体層の形成時に、熱処理温度及び酸素流量による酸化物半導体層の光電流の変化を示したグラフ図である。酸化物半導体層に紫外線(365nm、4mW)を照射して相異なる2つの地点における光電流を測定した。図10のグラフ図は、酸素の流量が最も低い10sccmである時に光電流が最も高く、以後には酸素の流量が増大しても光電流が大きく変わらないことを示す。しかし、熱処理温度が250℃である場合には、酸素の流量が低いほど光電流が増大することを示す。また、図10のグラフ図は、熱処理温度によって光電流が変わることを示す。
光電流は、伝導特性と関連する。材料の伝導度が大きくなれば、光電流値も大きくなる。図10のグラフ図から、酸化物半導体層の形成時に熱処理及び酸素流量を調節することによって伝導特性を調節できるということが分かる。一方、酸化物半導体層のプラズマ処理と紫外線−オゾン処理とを通じても、伝導特性を調節できる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、有機発光素子関連の技術分野に好適に用いられる。
11 正極層
12 酸化物半導体層
13 正孔注入層
14 正孔輸送層
15 発光層
16 電子注入層
17 電子輸送層
18 負極層
101 基板
110 ゲート電極
112 ゲート絶縁膜
120 活性層
122 第1層間絶縁層
131、132 ソース/ドレイン電極
134 第2層間絶縁層
140 画素部積層構造
142 画素定義膜

Claims (13)

  1. 正極層と、
    前記正極層上に位置し、酸化物半導体からなる正孔充電層と、
    前記正孔充電層上に位置する一つ以上の有機層と、
    前記有機層上に位置する負極層と、
    を含み、
    前記正孔充電層は、インジウム、亜鉛及びハフニウムを含む酸化物半導体であり、
    前記インジウム、亜鉛及びハフニウムを含む酸化物半導体は、前記インジウムの含有量が35〜55原子%であり、前記亜鉛の含有量が35〜55原子%であり、前記ハフニウムの含有量が5〜15原子%であることを特徴とする、有機発光素子。
  2. 前記酸化物半導体のバンドギャップエネルギーは3〜3.5eVであり、
    前記酸化物半導体の価電子帯エネルギーは、前記正極層の仕事関数と、前記酸化物半導体と接する前記有機層のHOMOエネルギーとの間に存在する
    ことを特徴とする、請求項に記載の有機発光素子。
  3. 前記有機層は、前記正孔充電層上に位置する正孔注入層を有し、
    前記酸化物半導体のエネルギー状態は、バンドテールを有し、前記酸化物半導体は、前記正孔注入層に対するエネルギー障壁を形成することを特徴とする、請求項に記載の有機発光素子。
  4. 前記有機層は、発光層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
  5. 前記正孔充電層と前記発光層とが、発光領域を共有することを特徴とする、請求項に記載の有機発光素子。
  6. 前記有機発光素子は、400nm〜700nm領域で発光することを特徴とする、請求項に記載の有機発光素子。
  7. 前記有機層は、前記正孔充電層と前記発光層との間に、正孔注入層及び正孔輸送層のうちの少なくとも何れか一つを更に含むことを特徴とする、請求項に記載の有機発光素子。
  8. 前記発光層と前記負極層との間に、電子輸送層及び電子注入層のうち少なくとも何れか一つを更に含むことを特徴とする、請求項4又は5に記載の有機発光素子。
  9. 前記正極層は、酸化インジウムスズ(ITO)又は酸化インジウム亜鉛(IZO)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
  10. 前記有機発光素子は、青色光、赤色光又は緑色光を発光することを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
  11. 基板と、
    前記基板上に位置するゲート電極、前記ゲート電極及び前記基板上に位置するゲート絶縁層、前記ゲート絶縁層上に位置し、前記ゲート電極と対向する活性層、前記活性層と電気的に連結されたソース電極及びドレイン電極を含む薄膜トランジスタと、
    絶縁層と、
    を更に備え、
    前記正極層は、前記絶縁層を貫通して前記ソース電極又は前記ドレイン電極と接触することを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
  12. 正極層を形成する段階と、
    前記正極層上に酸化物半導体からなる正孔充電層を形成する段階と、
    前記正孔充電層上に少なくとも一つ以上の有機層を形成する段階と、
    前記有機層上に負極層を形成する段階と、
    を含み、
    前記正孔充電層は、インジウム、亜鉛及びハフニウムを含む酸化物半導体であり、
    前記インジウム、亜鉛及びハフニウムを含む酸化物半導体は、前記インジウムの含有量が35〜55原子%であり、前記亜鉛の含有量が35〜55原子%であり、前記ハフニウムの含有量が5〜15原子%であることを特徴とする、有機発光素子の製造方法。
  13. 前記酸化物半導体のバンドギャップエネルギーは、3〜3.5eVであり、
    前記酸化物半導体の価電子帯エネルギーは、前記正極層の仕事関数と前記酸化物半導体と接する前記有機層のHOMOエネルギーとの間に存在する
    ことを特徴とする、請求項12に記載の有機発光素子の製造方法。
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