JP5047464B2 - 燃料電池装置 - Google Patents

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Description

この発明は、利用機器の動作に合わせて燃料電池の発電効率を高める燃料電池装置に関するものである。
燃料電池は、水素と酸素をエネルギー源として、水の電気分解と逆の電気化学反応によるエネルギー変換を行って電気を発生させるものである。電気の他に水、熱、二酸化炭素も発生するが、燃料電池はエネルギー効率が高いので、近年注目されてきている。また、燃料電池は、燃料を補充し続ければ半永久的に電気を発生することができるため、モバイル機器の電源として改良が行われてきている。小型電子機器への適用が有望視される燃料電池として、メタノールと水の混合物を使用して発電を行う過程において、気体の水素そのものを発生させる工程を経ることなく発電を行うダイレクトメタノール方式燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:以下、DMFCとする)がある。これは、触媒電極に白金が混ぜられており、メタノールが白金に触れて分解され、水素イオンと二酸化炭素を発生し、反対側の電極に達した水素イオンが空気中の酸素と結合して水となり、このときに電気を発生するというものである。
DMFCの各電極における反応式は次のようになる。
負極 :CHOH+HO → CO+6H+6e
正極(空気極):6H+3/2O+6e → 3H
トータル反応式:CHOH+3/2O → CO+2H
DMFCのメタノール濃度に対する発電特性は図12に示されるが、DMFCはメタノール濃度により発電量が異なる。すなわち、発電量は、約60〜65%の濃度をピークに、これより高濃度では少し下がり、また、低濃度では大きく下がり、20%未満だと所定の発電量を得ることができない。したがって、発電量を最適な値に維持するためにはメタノール濃度をコントロールしてやる必要がある。上記反応式からも分るように、発電により水が放出され、メタノール濃度が上昇することになるので、発生した水を電解液の濃度調節に戻す方法をとればよい。そのため、例えばDMFCでは、燃料電池から発生する約90%の水を、浸透膜を通して高濃度メタノール電解液に送り、残り約10%の水を排水するという方法をとる。なお、メタノールは、危険物取扱物質第5類に該当する物質であるため、現在旅客機内に持ち込めないなどの規制を受けており、また、目に入れた場合、失明の可能性があるため、健康上の安全性にも問題がある。さらに、反応で炭酸ガスを発生するので環境上の点でも問題がある。
一方、この発明が対象としている燃料電池であるが、他の方式として、ノンメタノール高分子電解質型燃料電池(以下、「高分子型燃料電池」とする)がある。この高分子型燃料電池には、電解質に、水素イオンのみを透過するイオン交換性高分子膜を用い、燃料には水素ガス、酸化剤として空気中の酸素が用いられる。高分子型燃料電池は、60〜80℃の温度下で良好な起電力が得られるよう反応する。各電極における反応式は次のようになる。
負極(水素極):H → 2H+2e
正極(空気極):2H+1/2O+2e → H
トータル反応式:H+1/2O → H
高分子型燃料電池では、このように燃料として、メタノールの代りに水素ガスを使用するが、この場合、水素ガスはボンベに収納されたものではなく、水素吸収金属に吸収させたものが用いられる。水素吸収金属は、水素と反応して金属水素化物となる、La−Ni系、Mg−Ni系、Ti−Mn系やレアメタルの混合体であるミッシュメタルやランタンを多く含むランタンリッチ・ミッシュメタル等の合金である。水素吸収金属による水素発生装置、電池自身の体積の1000倍の量の水素ガスを吸収できるため、ボンベに比べ小型化に適し、かつ規定上の危険物にも該当せず、廃棄も含めて取り扱い上も安全なものである。
図13にDMFCと高分子型燃料電池の対比表を示す。燃料電池を電子機器に適用する場合、反応で発生する水の処理方法が重要となる。この表から分るように、発電で発生する大量の水は、高分子型燃料電池の場合には、約10%を高分子型燃料電池に必須の酸素ガスの加湿に用い、残り約90%は水蒸気として排出される。
DMFCと高分子型燃料電池における水の気化量の温度依存性を図14に示す。DMFCからの水蒸気気化量は、高分子型燃料電池からのものより多くなるが、その差はわずかである。そこで、DMFCと高分子型燃料電池の60℃における燃料電池出力量と水の燃料電池内最終残存率を図15に示す。ここで、横軸を燃料電池出力量とした理由は、図13に示したように、高分子型燃料電池もDMFCも化学反応的には1モル反応で水1モルが発生するが、利用装置に搭載する場合には出力を同じにして水の発生量を比較しなければならないからである。高分子型燃料電池の電圧は、電流を取り出してない状態の起電圧約1.05Vから電流を取り出す時の電圧ロス(反応活性化エネルギーによる電圧のロス:専門的には過電圧と呼ぶ。取り出し電流により変動し、取り出し電流が大きいほど電圧ロスは大となる。)約0.15Vを差し引いた0.8〜0.9Vになる。一方、DMFCの電圧は、上記電圧ロス約0.15Vに燃料極でのメタノールからプロトン(H)を取り出す時の電圧ロス約0.4Vがプラスされることにより、0.4〜0.5V程度になるので、出力は高分子型燃料電池の方が約2倍となる。
図15において、反応で発生する水の量(実線)は、DMFCの方が高分子型燃料電池の約2倍になる。しかし、電池出力量が大きくなり、水の発生量が多くなった場合の気化除去できる水蒸気の量は、両者はほとんど変わらない。そのため、DMFCは、水の燃料電池内残存率(破線)がかなり多くなり、小型の機器に適用した場合などには、上述したように次第に燃料電池の出力量が落ちるという問題がある。この点を補うためには、メタノールの入ったカートリッジを高濃度メタノールの新規カートリッジに頻繁に取り換える必要がある。しかし、使用済みカートリッジであっても、使用負荷の20%以下のメタノールである場合、毒物であるので容易に捨てられないという問題が残る。さらに、メタノールは液体なので体積が大きく、そのカートリッジも大きくなるという問題がある。
一方、高分子型燃料電池は、図15で示したように、燃料電池内の水の残存率を大幅に減らすことで、燃料電池の出力量が経時的に落ちるのを抑えることができる。また、図14は60℃における水の残存率が示すが、高分子型燃料電池は、60+α℃では、水の残存率を60℃のときより少なくすることも可能である。その場合、電池出力量が高いほど出力効率を大きくできるという利点も生じる。また、水素吸収金属への水素の吸入、この水素と外気の酸素との結合とからなる発電サイクルは、3000回以上であることが確認できている。その場合、水素吸収金属に水素ガスを送り込む外部装置には、都市ガス(メタン)の改質器または灯油やガソリンの改質器が用いられる。800℃の都市ガスバーナで加熱した700℃位の改質器内で、水蒸気加湿したメタンガスは白金触媒で次のように反応し、HとCOに分解される。ガソリン改質器による場合には、改質器の内部気圧を約5気圧にする必要がある。
CH+HO → 3H+CO
都市ガス用改質器の場合、メタンガスから水素ガスを取り出す反応に必要なエネルギーは、DMFCでメタノールという液体から水素ガスを取り出す際の過電圧で減じられるエネルギーを上乗せした必要エネルギーに比べるとかなり少なくなる。なお、都市ガス改質の場合は水素とともに一酸化炭素も燃料電池に供給され被毒となるため、負極にゼオライトの一酸化炭素吸収剤を添加される。
燃料電池と二次電池を搭載する携帯型情報機器に関する従来技術がある(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、ノートPC(利用装置)について、燃料電池(燃料電池パネル)を搭載するための構造と、燃料電池を電源として利用するための燃料電池モードについて開示しており、燃料電池としてDMFCを用いている。そのため、高濃度メタノールの燃料カートリッジから燃料電池に対してメタノールを供給し、また、燃料電池で発生する大量の水をホースで外部に放出するようにしている。
また、燃料電池本体と水素吸蔵ボンベ、水素供給手段、水素供給・燃料電池の作動を行う制御部、送気手段、加湿手段を燃料電池の付属物として一つのケースに納める技術がある(例えば、特許文献2参照)。このケース内では、発電時に燃料電池本体から出る熱、または燃料電池を搭載する機器が発生する熱を水素吸蔵ボンベ側に伝達し、水素吸蔵合金を温めることで水素排出反応を向上させることと、燃料電池を搭載する機器を冷却した後の空気により燃料電池本体の電気化学反応を促進するようにしている。
特開平2002−49440号公報 特開平9−21359号公報
従来の燃料電池装置で特許文献1に開示されるものは、メタノールカートリッジが空になるとカートリッジを交換しなければならず、放出した水もバケツなどで受けて廃棄しなければならず、利用上極めて面倒なものとなっている。一方、特許文献2に開示されるものは、燃料電池自身の作動で発生する熱あるいは燃料電池を搭載する機器が発生する熱を水素吸蔵ボンベに与えているが、熱量としては大きくないので、水素排出反応を大幅に向上させるものとしては十分ではない。また、燃料電池本体の電気化学反応の活性化を図るものではない。
この発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、燃料電池および/もしくは水素発生装置を温め、発電効率の向上を図り、かつ携帯機器への利用に適した構成を与える燃料電池装置を得ることを目的とする。
この発明に係る燃料電池装置は、ノンメタノール高分子電解質型の燃料電池と、燃料電池に供給する水素ガスを発生する水素吸収金属からなる水素発生装置と、燃料電池の制御に係る電気回路とを、前記燃料電池および前記水素発生装置と前記電気回路の間に熱伝導抑制手段を設けた一枚の支持板に組み立てて車両に備えられた筐体内に格納し、車両のエンジンまたは燃料電池の電気エネルギーを利用するモータが動作時に発生する熱を燃料電池および水素発生装置に伝えるように、車両のエンジンまたはモータを筐体内または筐体外の筐体下面に接して配置したものである。
この発明によれば、利用装置の発熱量の大きい構成部品を同じ筐体内に格納し、その熱を燃料電池に与えるようにしたので、燃料電池の反応を促進させ、発電効率を高める効果がある。
参考の形態1.
図1はこの発明の参考の形態1による燃料電池装置の概略構成を示す構成図である。ここで対象とする燃料電池装置は、例えば携帯端末、パソコン等の電子機器、自動車等の各種利用装置に搭載されるものである。
図において、燃料電池装置の筐体6内には、主発熱源1、燃料電池3、副発熱源4、プリント基板5、水素発生装置16、支持板22および電気回路23等が格納されている。この筐体6は、金属製またはポリカーボネート、ABS等の樹脂製で、燃料電池3を搭載する利用装置自身の外郭であってもよいし、あるいは利用装置内の構成の一部をブロック化したものであってもよい。主発熱源(利用装置の構成部品)1としては、例えば発熱量の多いモータが図示されているが、ヒータなどでもよい。燃料電池3には、前述したように水素ガスと外気中の酸素を用い、温度が高いほど発電量の大きい高分子型燃料電池(以下の各実施の形態で共通)が使用される。水素発生装置16は、水素ガスを吸収して小容積に貯蔵し、かつ水素ガスを徐々に発生する水素吸収金属である。副発熱源4としては、利用装置が電子機器の場合、動作上発熱を伴う電力増幅回路、電源回路、ベースバンド回路等の素子に相当する。電気回路23は、外熱の影響を好まない電池の制御回路などである。支持板22は、ベークライト等の樹脂の絶縁基板、鉄、銅、アルミ等の金属板、あるいはプリント基板で構成されている。ファン2は、主発熱源1のモータにより駆動され、筐体6内の空間熱を燃料電池3から出る水蒸気と共に通気孔61より外部へ放出する手段である。
支持板22は、上面に燃料電池3を配置し、この燃料電池3と向かい合う下面に主発熱源1を配置し、主発熱源1から発生した熱を燃料電池3に伝導する機能を持つ。プリント基板5には、副発熱源(利用装置の構成部品)4としての電力増幅回路、電源回路、ベースバンド回路等の素子群がパターン化して組み立て配置されており、その副発熱源4の面が燃料電池3の支持板22と反対側に当接して配置されている。
以上のように、筐体6に燃料電池3と発熱体1,4を納め、燃料電池3および水素吸収金属である水素発生装置16に対して、支持板22を介して主発熱体1の熱エネルギーを与えると共に、副発熱体4からの熱エネルギーも与えるようにしている。また、ファン2を回転させることにより、筐体6内の空間熱を燃料電池3から放出される水蒸気と共に排出する。このことにより、水素発生効率を向上させると共に、燃料電池3の反応効率を向上させ、発電量を高めることができる。また、支持板22を、プリント基板で一部または全部を形成した場合、熱の伝導と共に、燃料電池3と電気回路23の接続を同じ基板上で行うこともできるようになる。
なお、高温化で動作する燃料電池3および水素発生装置16と電気回路23とを支持板22上に単に配置しているが、燃料電池3および水素発生装置16の熱による影響を電気回路23が受けるのを避けるため、燃料電池3および水素発生装置16と電気回路23との間に熱伝導を抑制する手段を設ける。例えば支持板22の一部の厚みを薄くしたり、一部を切り欠くようにすれば、電気回路23が熱の影響を受けるのを少なくすることができる。
参考の形態2.
図2はこの発明の参考の形態2による燃料電池装置の概略構成を示す構成図である。この参考の形態2では、利用装置の一例として携帯電話を想定し、燃料電池3と水素吸収金属の水素発生装置16を熱源の上に配置した構成について説明する。また、燃料電池3の電気エネルギーを貯蔵し、燃料電池3の発電時、特に起動時の発電力を補うために使用される二次電池または二次電池と同等の機能を持つ大容量コンデンサ15を水素発生装置16に隣接させて配置している。二次電池または大容量コンデンサ15は、温度が高いほど発電量は多くなるが、燃料電池ほど効率的ではない。なお、二次電池または大容量コンデンサ15の設置位置は、筐体6内であればよく、必ずしも水素発生装置16の上でなくてもよい。
図2(a)の構成について説明すると、この例では、底板221とその上の蓋体24により筐体6を構成している。底板221の上には、利用装置の構成部品である、電力増幅回路素子12、電源回路素子13、ベースバンド回路素子14が組み立てられたプリント基板5を配置している。これらの素子12,13,14の上に燃料電池3が配置されている。この例では、図1に示したような主発熱源のモータおよびファンは設けられておらず、素子12,13,14が主発熱源として機能するようにしている。また、プリント基板5には、素子12,13,14と離れた位置に抵抗やコイル等の素子18が組み立てられている。燃料電池3は、燃料電池セル7、正極(空気極)集電板8、負極(水素極)集電板9、空気通路10、水素ガス通路11から構成されている。筐体6の側面には、燃料電池3の空気通路10に対向して、外気を取り込み、かつ空気通路10に溜まった水や水蒸気を自然放出するための開口29を備えている。
水素ガス通路11には、水素吸収金属等の水素発生装置16から水素ガスを供給するための水素送り込み管17が接続されている。水素発生装置16は、水素吸収金属を温めて水素ガスの発生を効率良くするため、副発熱源とする抵抗、コイル等の素子(利用装置の構成部品)18上に配置されて加熱される。また、水素発生装置16を最も発生効率をよくする約80℃に維持するために、ヒータ等の加熱源27と温度検出回路28が設けられている。温度検出回路28は、熱伝対またはサーミスタなどにより水素発生装置16の温度を検出し、検出温度が規定の温度以下の場合には加熱源27により水素発生装置16の温度を上げ、規定の温度以上の場合には加熱源27の電源を切断するよう制御する。加熱源27の電源には、水素発生装置16の上部に配置された二次電池または大容量コンデンサ15から得られる電力が使用される。なお、加熱源27の電源入切スイッチとしては、制御ICとFETの組み合わせである電気的スイッチ、サーモスタットあるいは80℃で磁性が無くなるフェライト等磁石を用いた機械的スイッチ等が用いられる。
水素発生装置16の温度制御による発電状況を図3に示す。利用装置の電源回路がオンの状態で、検出された水素発生装置16の温度が高い場合(例えば70℃)、ヒータをオフにするが、水素発生装置16は電源回路の熱を受けて所定の水素発生量が得られるので、燃料電池3は効率よい発電状態となる。また、電源回路がオンの状態で、水素発生装置16の温度が低い場合(例えば50℃)、ヒータをオンにして温度を上げると、水素発生量を増加させるので、燃料電池3は効率のよい発電状態へと移行する。一方、利用装置の電源回路がオフの状態(利用装置が不使用の状態)では、水素発生装置16の温度の高低にかかわらず、ヒータはオフとなる。
次に、図2(b)の例について説明すると、図2(a)と燃料電池の構成が異なる。燃料電池セル7に対して、負極集電板9と水素ガス通路11が上に配置され、正極集電板と空気通路10が下に来るように配置されている。そして、水素発生装置16から水素送り込み管17を介して注入された水素ガスが、空気通路10との隣接部(または共有部)を有する迂回路32を経て上部の水素ガス通路11に導かれるようにしている。この迂回路32の隣接部には、空気通路10との間に保水シート30と水素非透過・水透過性膜31が介在するように設けられ、燃料電池3の反応で空気通路10に発生する水の一部を迂回路32側に浸入させ、迂回路32を通過する水素ガスを加湿するようにしている。保水シート30には紙おむつ等に用いられる高吸収性高分子を適用され、水素非透過・水透過性膜31には、例えばパーフルオロスルフォン酸高分子などの固体高分子電解質が適用される。燃料電池3で発生する水のうち、水素ガスを加湿した残りの水は、電力増幅素子12、電源素子13、ベースバンド素子14、および電気回路23等(利用装置の構成部品)発熱源から発生する熱で気化され、開口29より筐体6の外に排出されるようにしている。
このように、燃料電池3の負荷により発生した熱を燃料電池3に与え、また、周辺回路で発生する熱を利用すると共に、水素発生装置16の温度をヒータ等の加熱源27を制御して、燃料電池3に送り込む所定の水素発生量が得られるようにしているので、効率よい発電を達成することができる。なお、熱を付与されることにより、高温化で動作する燃料電池3および水素発生装置16と電気回路23との間のプリント基板5の一部の厚みを薄くしたり、切り欠きを設けることにより、燃料電池3および水素発生装置16の熱の影響を電気回路23が受けにくくすることができる。
実施の形態
図4はこの発明の実施の形態による燃料電池装置の概略構成を示す構成図である。この実施の形態では、自動車を燃料電池の利用装置とし、燃料電池をエンジンルームに搭載して燃料電池装置を構成する例について説明する。
図4において、燃料電池3、水素発生装置16と二次電池または大容量コンデンサ15が、支持体である底板221と蓋体24からなる一つの筐体6内に収容されている。このうち、燃料電池3と水素発生装置16は、主熱源であるエンジンまたはモータ19の上に配置され固定されている。また、燃料電池3と二次電池または大容量コンデンサ15は配線20で電気接続されている。また、空気の取り入れ、燃料電池3で発生した水の水蒸気の放出は、参考の形態1や参考の形態2と同様な構造を用いて行われる。
この実施の形態では、エンジンまたはモータ19を発熱源として、底板221を介して熱を伝え、筐体6内の水素発生装置16と燃料電池3の両方の温度を高め、水素ガスの発生量を促進させ、かつ、その水素ガスを用いて高温で発電反応を高めるようにしたので、効率よい発電を達成することができる。
参考の形態
図5はこの発明の参考の形態による燃料電池装置を模式的に示す構成図である。この参考の形態では、燃料電池の利用装置が携帯電話やノートパソコンなどの携帯機器である場合に適用され、携帯機器の筐体とは別の筐体で構成される燃料電池装置について説明する。
図5では、筐体6内には燃料電池3、水素吸収金属からなる水素発生装置16、二次電池または大容量コンデンサ15を主とし、電池の制御回路(図示せず)や温度検出回路と加熱源(図示せず)が収容され、一つにブロック化されている。これらの燃料電池3および二次電池等15から得られる電力で動作する携帯機器50の電気機能回路部51を別ブロックとし、両者は配線52により電気接続されている。
燃料電池3に送り込む水素発生量を高めるために水素発生装置16を約80℃に維持する必要があるが、上記実施の形態2で説明したと同様に、水素発生装置16に装着した温度検出回路とヒータ等の加熱源を用いて、規定の温度以下では水素発生装置の温度を上げ、規定温度以上では加熱源を切断するようにしている。なお、燃料電池3の反応も高めるために、実施の形態2で述べたようにヒータ等の加熱源を用いて燃料電池3の温度を上げるようにしてもよい。また、空気の取り入れ、燃料電池3で発生した水の水蒸気の放出は、参考の形態1や参考の形態2と同様な構造を用いて行われる。
水素発生装置16内の水素ガスがなくなれば、そのカートリッジの交換は必要となるが、水素吸収金属は、カートリッジの体積の1000倍もの水素ガスを吸収するので、交換頻度はきわめて少ない。水素吸収金属への水素充填は、細い供給管を通して常温で約10気圧の圧力をかけることにより行うが、約5分かかる。充填動作には発熱を伴うが、この熱を隣接する燃料電池3に伝え、燃料電池で発生して溜まっている水を気化するのに利用することができる。
以上のように、燃料電池3、水素発生装置16および二次電池または大容量コンデンサ15等を利用装置の筐体とは別の筐体6にブロック化しているので、利用装置側への影響を軽減できる構成とすることができ、また、電池ユニットとしての交換にも対応しやすくなる。
参考の形態
図6はこの発明の参考の形態による燃料電池装置の構成を示す模式図である。この参考の形態では、燃料電池の利用装置が携帯電話やノートパソコンなどの携帯機器である場合、その携帯機器の筐体内に組み込んで筐体を一体化する構成の燃料電池装置について説明する。
図6において、携帯機器50と筐体を同じくする筐体6内に、燃料電池3、水素発生装置16、二次電池または大容量コンデンサ15等が収容されている。燃料電池3と水素発生装置16の加熱方法および発生した水の処理方法は具体的には参考の形態2で説明したような構成で行われる。このようにすることにより、携帯機器用として体積を小さくでき、また、電気機能回路部(利用装置の構成部品)51で発生する熱を燃料電池3にダイレクトに伝熱でき、燃料電池セルは温められ発電効率を上げることができる。また、水素発生装置16も上記参考の形態2で説明したと同様に、温度検出回路とヒータ等の加熱源を用いるため、所定の温度(例えば約80℃)に維持でき、水素ガスの発生効率を上げることができる。
参考の形態
図7はこの発明の参考の形態による燃料電池装置の構成を示す模式図である。この参考の形態では、上記図6で説明した構成から、水素発生装置16を携帯機器(または筐体6)の外に取り出した構成の燃料電池装置について説明する。
図7において、水素発生装置16は、燃料電池3、二次電池または大容量コンデンサ15、電気機能回路部51が収容された筐体6から切り離されている。このケースでは、水素発生装置16は水素充填器を備えており、水素ガスは水素充填器によりパイプ53を介して燃料電池3に送り込まれるようにしている。また、水素吸収金属である水素発生装置16を規定の温度に維持するヒータ等の加熱源には、その電源を二次電池または大容量コンデンサ15からワイヤで供給するようにしてもよいし、別途他の電源から供給できるようにしてもよい。
このように構成することにより、水素発生装置16を質量の大きい水素吸収金属からなる水素発生装置16を携帯機器本体から無くせるので、携帯機器を軽くすることができる。また、水素発生装置16が携帯機器から切り離されたため、水素充填器は重量、体積が大きくなってもよい。さらに、水素発生装置16として、水素吸収金属のほかに、液体水素貯蔵タンク、水素ガス高圧充填タンク、都市ガスを改質して水素ガスを発生する装置、あるいは水を電気分解して水素ガスを発生する装置を使用することもできる。
参考の形態
図8はこの発明の参考の形態による燃料電池装置を模式的に示す構成図である。この参考の形態では、上記図7の構成に対して、利用機器(携帯機器)の筐体内に水素貯蔵器を設ける構成について説明する。
図8において、燃料電池3を内蔵した携帯機器50と水素発生装置16を分けているが、電気エネルギーを消費する携帯機器50側に水素貯蔵器54を設けている。この水素貯蔵器54には、水素ガスをそのまま貯蔵するのでなく、気体より体積を小さくし体積密度を上げて貯蔵する水素吸収金属、液体水素充填タンク、あるいは水素ガス高圧充填タンクが用いられる。一方、別構成とした水素発生装置16は、水素吸収金属のほか、参考の形態で説明した各装置としてもよい。水素貯蔵器54から燃料電池3への水素ガスの供給はパイプ55により行われる。
水素発生装置16から水素貯蔵器54への水素ガスの送り込みはパイプ53を介して行なわれる。パイプ53は、図9に示すように、中央に持ち手があり、両先端に細い注射針58,59を備えている。これらの注射針58,59を水素発生装置16と水素貯蔵器54の連結部に設けられたゴムパッキング56,57に差し込み、水素ガスの受け渡しが達成される。また、パイプ53の中間に設けられた持ち手部60を持って注射針58,59を抜くと、ゴムパッキング56,57の針穴は消滅する。なお、持ち手部60を流路開閉ネジとし、水素貯蔵器54側だけ注射針を抜いた場合、手動または自動で開閉ネジを回して流路を閉鎖するようにしてもよい。さらに、水素貯蔵器54の水素注入口に逆止弁を設け、水素ガスが水素発生装置16側に逆流しないようにしておくとよい。これにより、水素発生装置16が事故で水素発生断となって気圧が低下し、水素が逆流することはないので安全である。
参考の形態
図10はこの発明の参考の形態による燃料電池装置の構成を示す正面図である。この参考の形態では、携帯機器に適するように小型化を図る燃料電池装置内の組み立て構造について説明する。
図10において、プリント基板5を用いた共通基板25が支持板22に留め台26を介して固定されている。共通基板25の一部には燃料電池3が形成され、かつ燃料電池3の上には水素吸収金属からなる水素発生装置16が配置され、燃料電池3の反応で発生する熱が伝えられるようになっている。共通基板25の他部の上面や下面には二次電池または大容量コンデンサ15および電池の制御回路を構成する電気回路23の素子等が実装されている。このように、共通基板25を切り分けることなくユニット化した部品を構成している。燃料電池3を構成する部分は、共通基板25の略厚みの部分で燃料電池セル7を形成し負極集電板9の上部と水素発生装置16の間で水素ガス通路11を形成し、また反対面の正極集電板8と支持板22と間で酸素を取り込む空気通路を形成している。また、水素発生装置16が最も発生効率をよくする約80℃に維持するために、ヒータ等の加熱源27と温度検出回路28が設けられている。
図11は共通基板25の一部に形成した燃料電池セル7の構造例を示す。図11(a)は燃料電池セル7の平面図、図11(b)、(C)はA−A、B−B断面図である。
この例では、導電箔を両面に形成したプリント基板5を2枚使用し、負極34、高分子電解質膜33および正極35からなる層を挟んで上下に配置した構造としている。高分子電解質膜33には、例えばフッ素樹脂系のNafion膜またはDow膜が用いられる。これらの膜は、湿った状態でのみ高いHイオン伝導性を持つため、空気通路10(図10)側に水生成反応で発生する水を高分子膜の吸湿性を利用して供給する。また、高分子電解質膜33を挟む負極34および正極35の材料にはカーボンが使用され、反応触媒として白金が使用される。電流はそれぞれプリント基板5のスルーホール38で電気接続された両面導電層からなる負極集電板9と正極集電板8間から取り出される。また、プリント基板5と負極集電板9には、水素ガス通路11から水素ガスを流しこむための穴39が複数位置に設けられている。正極側のプリント基板5と正極集電板8も同様の構造のとなっており、空気は穴40を通して供給され、正極35で発生する水蒸気が空気通路10へ放出されるように構成されている。2枚のプリント基板5の間で、燃料電池セルを形成していない部分(図12の左側)には、他の樹脂基板を埋め込んでもよいし、適当なスペーサを挟んで空間部を形成してもよい。
なお、上記説明例では、共通基板25を2枚のプリント基板を使用したが、他の例として1枚の基板を用い、その一部をくりぬき、その部分に燃料電池セルを形成するようにしてもよい。また、燃料電池は一枚セル構造で所定の電圧、電流を取り出せるようにしているが、これに代わり、平面的に形成した一枚のセルを複数のセルに多分割し、両面プリント基板の配線パターンを利用して複数のセルを直列に電気接続することにより所定の電圧、電流を取り出すように構成してもよい。
以上のように、共通基板25を用い、その一部に燃料電池3を形成すると共に、燃料電池3の上部に水素吸収金属からなる水素発生装置16を配置し、他部に二次電池または大容量コンデンサ15、電気回路素子23等を組み立てて一つのブロックとしてまとめたので、空間を少なくして全体の容積を薄型で小型化することができる。その結果、上記参考の形態および参考の形態で説明した携帯機器用の燃料電池装置に適用して小型化に寄与できる効果を奏する。
この発明の参考の形態1による燃料電池装置の概略構成を示す構成図である。 この発明の参考の形態2による燃料電池装置の概略構成を示す構成図である。 この発明の参考の形態2に係る水素発生装置の温度制御による発電状況を示す説明図である。 この発明の実施の形態による燃料電池装置の概略構成を示す構成図である。 この発明の参考の形態による燃料電池装置を模式的に示す構成図である。 この発明の参考の形態による燃料電池装置を模式的に示す構成図である。 この発明の参考の形態による燃料電池装置を模式的に示す構成図である。 この発明の参考の形態による燃料電池装置を模式的に示す構成図である。 この発明の参考の形態に係る水素ガスの送り込み用パイプの構造を示す正面図である。 この発明の参考の形態による燃料電池装置の組み立て構造例を示す側面図である。 この発明の参考の形態に係る燃料電池セルの構造例を示す説明図である。 ダイレクトメタノール方式燃料電池のメタノール濃度に対する発電特性を示す説明図である。 DMFCと高分子型燃料電池の対比表を示す説明図である。 DMFCと高分子型燃料電池の水の気化量の温度依存性を示す説明図である。 DMFCと高分子型燃料電池の燃料電池出力量と水の燃料電池内最終残存率を示す説明図である。
1 主発熱源(利用装置の構成部品)、3 燃料電池、4 副発熱源(利用装置の構成部品)、5 プリント基板、6 筐体、7 燃料電池セル、10 空気通路、11 水素ガス通路、12 電力増幅回路素子、13 電源回路素子、14 ベースバンド回路素子、15 二次電池または大容量コンデンサ、16 水素発生装置、18 素子、19 エンジンまたはモータ、22 支持板、23 電気回路、25 共通基板、27 加熱源、28 温度検出回路、29 開口、30 保水シート、31 水素非透過・水透過性膜、32 迂回路、51 電気機能回路部、54 水素貯蔵器、61 通気孔、221 底板。

Claims (2)

  1. ノンメタノール高分子電解質型の燃料電池と、
    前記燃料電池に供給する水素ガスを発生する水素吸収金属からなる水素発生装置と、
    前記燃料電池の制御に係る電気回路
    を、前記燃料電池および前記水素発生装置と前記電気回路の間に熱伝導抑制手段を設けた一枚の支持板に組み立てて車両に備えられた筐体内に格納し、
    前記車両のエンジンまたは前記燃料電池の電気エネルギーを利用するモータが動作時に発生する熱を前記燃料電池および前記水素発生装置に伝えるように、前記車両のエンジンまたはモータを前記筐体内または前記筐体外の筐体下面に接して配置したことを特徴とする燃料電池装置。
  2. 前記燃料電池から発生した水の一部を筐体内の熱で気化し、前記筐体に設けた開口より排出するようにしたことを特徴とする請求項1項記載の燃料電池装置。
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