JP5047050B2 - チタン含有水溶液及びその製造方法 - Google Patents
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Description
酸化チタンをアルミナのような耐火性酸化物の成形体(担体)に担持する方法としては、溶液を担体が吸水する量に調整して、担体に含浸させるポアフィリング法、または大過剰の溶液に担体を浸漬する方法などがある。
四塩化チタンや硫酸チタンの水溶液は強酸性であり取り扱いが難しいことに加え、容易に加水分解するため、pH1以下のきわめて低いpH領域で担持する必要がある。しかし、このようなpH1以下の四塩化チタンなどのチタン含有水溶液であっても耐火性酸化物と接触した際に急激に加水分解反応が生じ、チタンが耐火性酸化物上に均一に担持されにくいため、チタンの効果が顕著には発揮されないことがある。また、塩素イオンや硫酸イオンは触媒活性に悪い影響を及ぼす可能性があり、さらに、塩素イオンは工業装置にとって腐食の原因になるため、いずれも含まないことが好ましい。
また、上記チタン含有水溶液を耐火性無機酸化物担体に接触させることにより、高分散にチタンを担持した耐火性無機酸化物担体が容易に得られること、及びこのものに、さらに特定の金属を担持させることにより、高活性で低コストの炭化水素油の水素化処理触媒が得られることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
(1)チタン水酸化物及び/又はチタン含水酸化物、アンモニア、過酸化水素及びヒドロキシカルボン酸を含み、波長360nmに対する波長400nmと440nmのモル吸光係数比ε=(ε400nm+ε440nm)/ε360nm(ただし、ε360nmは波長360nmにおけるモル吸光係数、ε400nmは波長400nmにおけるモル吸光係数、ε440nmは波長440nmにおけるモル吸光係数を示す。)が0.05以上であることを特徴とするチタン含有水溶液。
(2)チタン原料に、アンモニアと過酸化水素を加えてチタンを溶解し、次いでヒドロキシカルボン酸を加えることを特徴とする上記(1)に記載のチタン含有水溶液の製造方法、
(3)チタン原料が、チタン水酸化物またはチタン含水酸化物から選ばれた少なくとも一種である上記(2)に記載のチタン含有水溶液の製造方法、
(4)アンモニアと過酸化水素の存在下、pH7.0〜14.0の範囲で、チタン水酸化物及び/又はチタン含水酸化物を水に溶解させると共に、チタンイオンをヒドロキシカルボン酸により安定化させることを特徴とする、実質上塩素イオン又は硫酸イオンを含まない上記(1)に記載のチタン含有水溶液の製造方法、
(5)上記(1)に記載のチタン含有水溶液、又は上記(2)〜(4)のいずれかに記載の方法で得られたチタン含有水溶液を耐火性無機酸化物担体に接触させることを特徴とするチタン担持耐火性無機酸化物担体の製造方法、及び
(6)上記(5)に記載の方法で得られたチタン担持耐火性無機酸化物担体に、周期律表第6族、第8族、第9族及び第10族に属する金属の中から選ばれる少なくとも一種の金属を担持させてなる炭化水素油の水素化処理触媒、
を提供するものである。
本発明にかかるチタン含有水溶液は、チタン水酸化物及び/又はチタン含水酸化物、アンモニア、過酸化水素及びヒドロキシカルボン酸を含み、かつ波長360nmに対する波長400nmと440nmのモル吸光係数比εが0.05以上のものである。このモル吸光係数比εが0.05未満ではチタンイオンの錯化が不充分であり、チタン含有水溶液の安定性が低下する。このモル吸光係数比εは0.07以上であることが特に好ましい。
なお、上記モル吸光係数比εは、下記の式
ε=(ε400nm+ε440nm)/ε360nm
(ただし、ε360nmは波長360nmにおけるモル吸光係数、ε400nmは波長400nmにおけるモル吸光係数、ε440nmは波長440nmにおけるモル吸光係数を示す。)
より求めた値である。
上記のチタン含有水溶液は、以下に示す本発明の方法により、効率よく製造することができる。
即ち、チタン原料に、アンモニアと過酸化水素を加えてチタンを溶解し、次いでヒドロキシカルボン酸を加えることを特徴とする方法である。詳しくは、アンモニアと過酸化水素の存在下、pH7.0〜14.0の範囲で、チタン水酸化物及び/又はチタン含水酸化物を水に溶解させると共に、チタンイオンをヒドロキシカルボン酸により安定化させることにより、実質上塩素イオン又は硫酸イオンを含まないチタン含有水溶液を得るというものである。
ここで、チタン水酸化物は、オルトチタン酸(TiO2・nH2O、n=2程度)の化学名で示される化合物であって、一般的に知られている方法、すなわち、四塩化チタンあるいは硫酸チタニルの水溶液を室温でアルカリ中和と充分な洗浄によって、得られるゲル状のもの、あるいは乾燥したもので、含水率が2.0重量%以上のもの、さらに好ましくは含水率が5.0重量%以上のものである。そして実質上塩素イオン,硫酸イオン,硝酸イオン等のアニオンが検出されないものが好適に使用される。なお、「実質上塩素イオン等のアニオンが検出されない」とは、塩素イオンまたは硫酸イオン等のアニオン含有量がTiO2基準で5重量%以下のことをいう。
また、チタン水酸化物やチタン含水酸化物の間には化学種としての差異はなく、生成した微粒子の凝集度の相違があるにすぎないと一般に考えられており、上記のn値は目安値にすぎないことはいうまでもない。
まず、上記のチタン水酸化物やチタン含水酸化物等のチタン原料を水媒体に分散させて、スラリー状とする。この際、ホモジナイザーなどを用いて粒子を細かくすることにより分散性を向上させることができる。次いで、このチタン水酸化物及び/又はチタン含水酸化物を含むスラリーを、アルカリ化合物、好ましくはアンモニアと過酸化水素の存在下、pH7.0〜14.0、好ましくはpH8.0〜13.0の範囲に保持する。これにより、大部分のチタン原料が溶解する。pHは主にアルカリ化合物の添加量で調整する。pHが低すぎるとチタン原料の溶解が進行せず、pHが高すぎると溶解したチタンイオンの重合が起こりやすくなる。アルカリ化合物としては、アンモニアのみならず、一般的な化合物を使用することができる。たとえば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属の水酸化物などを使用することができる。特に、アンモニアや水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物が好適に使用される。
アンモニア及び過酸化水素の添加量については、TiO21モルに対し、アンモニアが1.5〜20モル程度、過酸化水素が1.0〜20モル程度になるように、それぞれアンモニアと過酸化水素水を添加する。これらの添加量が少なすぎるとチタン原料が溶解しにくくなり、また、過剰に添加しても溶解反応の向上効果はあまり認められない。
アンモニアと過酸化水素水の添加順序は特に限定されるものではなく、pHを上記の範囲内に設定すればどのように添加してもかまわない。後述のヒドロキシカルボン酸を含め、一般的な添加の順序は下記の通りである。
(2)過酸化水素水、アンモニア水、ヒドロキシカルボン酸
(3)アンモニア水/過酸化水素水混合溶液、ヒドロキシカルボン酸
(4)アンモニア水、アンモニア水/過酸化水素水混合溶液、ヒドロキシカルボン酸
(5)アンモニア水、ヒドロキシカルボン酸、過酸化水素水
特に上記(4)の少量のアンモニア水でチタン水溶液のpHを調整した後、アンモニア水と過酸化水素水を予め混合し除熱した水溶液を少しずつ添加し、チタン原料溶解後にヒドロキシカルボン酸を添加する方法と、(5)のアンモニア水とヒドロキシカルボン酸を添加しpHを調整した後、過酸化水素を少しずつ添加してチタン原料を溶解する方法が、チタン原料溶解時の温度制御の容易さから、好適に採用される。
詳しく述べると、チタン原料はpH7〜14で過酸化水素の作用により溶解するが、過酸化水素自体は、低温においても分解しやすく、温度が上昇するとますますその分解が促進される。発生する熱量に比べて除熱量が少ないと系の温度が上昇し暴走するおそれがあることから、工業規模で生産する場合には特に冷却が重要である。ただし、冷却能力が充分でない場合であっても希釈水を適当量添加することにより、系の熱容量を増加させることにより温度上昇が緩和され、暴走に至らないようにすることができる。ここでいう希釈水とは、水として添加するもののみならず、チタン原料、アンモニア水、過酸化水素のおのおのに含まれる水分も含まれるものとする。この希釈水の添加量としては、TiO2相当として1重量部のチタン原料に対し、通常10〜100重量部、さらに好ましくは、15〜70重量部が適当である。希釈水の添加量が少ないと、過酸化水素の分解による発熱のため温度が上昇し暴走の危険がある。また、希釈水の添加量が多いと、濃度が低下するため溶解反応が起こりにくくなったり、目標の濃度にするための濃縮に時間がかかり現実的でない。
このヒドロキシカルボン酸としては、一分子内にカルボキシル基を2個以上、水酸基を1個以上もち、水に溶けやすいものが好ましい。特に、ヒドロキシカルボン酸は、炭素数が12個以下、更には炭素数が8個以下のものが好ましい。炭素数が多すぎると水に溶解しにくく、一方、炭素数が少なすぎると、チタン化合物を水溶液にした場合、その安定化に寄与しにくくなる。具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸などが好適に使用される。ヒドロキシカルボン酸の添加量はTiO21モルに対し、通常0.2〜2.0モル程度である。少なすぎると、チタン水溶液の安定性が損なわれるおそれがあり、多すぎてもチタン含有水溶液の安定性に寄与しないのみならず、粘度が増加して含浸液の取扱いが困難になる。該ヒドロキシカルボン酸は、結晶(粒、粉)のままでも、あるいは水溶液の形で添加してもよい。ヒドロキシカルボン酸の添加温度は特に限定されるものではないが、通常50℃以下の条件で行われる。さらに好ましくは0から40℃以下である。温度が高いと残留過酸化水素の分解が急激におこるため好ましくない。
このようにして調製したチタン含有水溶液は、チタン含浸用の水溶液として、必要に応じて、過酸化水素の除去工程に準じる条件で常圧下または減圧下で濃縮するか、あるいは任意の濃度で希釈することができる。さらにはチタン含有水溶液から水分を除去することにより、チタン含有化合物の固体を得ることもできる。水分の除去方法は、特に限定されず、一般的な方法、すなわち乾燥やフリーズドライの方法により行うことができる。たとえば、50℃以下の条件で0.5〜48h常圧ないし減圧下で乾燥させることによりチタン含有化合物の固体、結晶を得ることができる。さらに粉砕によって粉末化することもできる。
前記本発明の方法で調製したチタン含有水溶液は広い範囲のpH領域(2〜12)で安定であるため、チタンを耐火性無機酸化物に高分散に均一に担持することができる。また該チタン含有水溶液はチタン以外の金属や塩素イオン、硫酸イオンのように焼成しても除去困難で、かつ触媒の表面状態に悪影響を及ぼす可能性のある物質を実質的に含まないため、安全確実に工業的用途に適用可能である。また、耐火性無機酸化物に高分散にチタンを担持することにより、チタンと活性金属の相互作用が強くなるため、活性金属の高活性な状態が少量のチタンにより形成でき、コスト的にも安価な触媒の製造が可能となる。
この方法においては、前述のようにして得られたチタン含有水溶液を、耐火性無機酸化物担体に接触させることにより、チタン担持耐火性無機酸化物担体を製造する。
この方法において使用される耐火性無機酸化物担体としては、表面にOH基をもつ無機酸化物であればよく、特に制限はないが、本発明の目的から、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、マグネシア、酸化亜鉛、結晶性アルミノシリケート、粘土鉱物、酸化カルシウム、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化銀、酸化スズ、酸化ビスマス及びそれらの混合物などが好ましく使用される。中でも、アルミナ、特にγ−アルミナが好適である。その平均細孔径は5〜15nmの範囲のものが好ましい。形状については特に限定されないが、粉体、円柱、三つ葉、四つ葉などの成形体が好適に使用される。
チタン含有水溶液を担体に接触させた後は、乾燥、焼成などの一般的な手法で処理することにより、チタン担持担体を得ることができる。乾燥は、通常、常圧または減圧で、好ましくは50〜300℃、より好ましくは100〜120℃の温度で、0.5〜100時間程度行う。さらに担体との結合性を高めるために、必要により焼成を実施する。焼成温度は、好ましくは300〜650℃、さらに好ましくは450〜600℃で、焼成時間は、通常0.5〜100時間程度である。
本発明の炭化水素油の水素化処理触媒は、前述のようにして得られたチタン担持耐火性無機酸化物担体に、周期律表第6族、第8族、第9族及び第10族に属する金属の中から選ばれる少なくとも一種の金属を担持させることにより、調製することができる。
この触媒の活性金属種は、周期律表第6族金属としてモリブデン、タングステンなどが使用されるが、特にモリブデンが好適に使用される。モリブデン化合物としては、三酸化モリブデン、パラモリブデン酸アンモニウムなどが好適である。タングステン化合物としては、三酸化タングステン、タングステン酸アンモニウムなどが好適である。その担持量(酸化物基準)は、触媒全量に基づき、好ましくは4〜40重量%、さらに好ましくは8〜35重量%である。
第8〜10族金属としては、通常コバルトまたはニッケルが好適に使用される。コバルト化合物としては、炭酸コバルトや硝酸コバルトなどが好ましく、ニッケル化合物としては、炭酸ニッケルや硝酸ニッケルなどが好ましい。担持量(酸化物基準)は、触媒全量に基づき、好ましくは1〜12重量%、さらに好ましくは2〜10重量%である。
さらに、リン化合物を担持させることができ、このリン化合物としては、五酸化リン、正リン酸などが使用される。その担持量(酸化物基準)は、触媒全量に基づき、好ましくは0.5〜8重量%、さらに好ましくは1〜6重量%である。
また、特にリン化合物で安定化させた含浸液には、分子量が90〜10000のポリエチレングリコールなどの水溶性有機化合物を添加することが好ましい。添加量は、担体に対して、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは3〜15重量%の範囲がよい。
上記含浸の後に、通常熱処理を行う。逐次的に含浸を実施する場合は、含浸の度に熱処理をする場合、しない場合のいずれの方法でもよい。熱処理は空気中で、通常550℃以下で3〜16時間程度行うのが有利である。このようにして調製された本発明の触媒は、炭化水素油の水素化処理触媒として用いられる。
上記触媒を用いて処理する炭化水素油として、全ての石油留分を用いることができるが、具体的には、灯油、軽質軽油、重質軽油、分解軽油等から常圧残油、減圧残油、脱蝋減圧残油、アスファルテン油、タールサンド油などを挙げることができる。本発明の触媒は特に、軽質軽油留分の超深脱領域(硫黄分50ppm以下)のための水素化処理触媒として有用である。即ち、詳しくは、上記の該水素化処理触媒は、沸点が140〜400℃である炭化水素油を水素化処理することにより、硫黄分50wtppm以下、好ましくは30wtppm以下、より好ましくは20wtppm以下、さらに好ましくは10wtppm以下の炭化水素油を製造するのに好ましく用いられる。
かかる留分を水素化処理する場合の条件としては、通常の水素化処理と同様であって、例えば反応温度250〜400℃、反応圧力2〜10MPa、水素/原料油比50〜500Nm3/キロリットル、液空間速度(LHSV)0.2〜5.0hr-1で処理することができる。
参考例
500℃で4時間焼成することにより求めたチタン酸化物(TiO2)の割合が85wt%であるチタン含水酸化物粉末12.7gと70gの純水を内容積1Lのガラス製ビーカーに入れ、攪拌しスラリー化した。次に、35重量%過酸化水素水78.7gと26重量%のアンモニア水26.5gを混合した水溶液を該含水酸化チタンスラリーに添加した。その後、25℃を維持したまま3h攪拌し黄緑色で透明なチタン含有水溶液を得た。そこへ、クエン酸第一水和物28.4gを添加した。その後、30℃以下の温度で6h保持した後、80〜95℃で12時間保持することにより、pH6.2で透明なチタン含有水溶液120gを得た。さらに、本化合物を30℃の条件で2時間減圧乾燥することにより粉末を得た。
この粉末を元素分析したところ、次の元素分析値(水分を除く)を得た。
C(24.2重量%),H(4.1量%),N(10.0重量%),O(45.4重量%),Ti(16.3重量%)
また、IR分光法により、アンモニウム、COO−、Ti=Oの存在も確認され、元素分析結果と併せて、Ti1当量に対し、アンモニウム基は2当量,クエン酸基は1当量存在することがわかった。その結果、この粉末は、(NH4)2[Ti(O)(クエン酸基)]であると推定した。
C,H,N:市販のCHN分析装置(燃焼−TCD法)を用いて測定した。
O:市販の酸素分析装置(高温抽出−赤外法)を用いて測定した。
Ti:市販のICP装置(発光分光分析法)を用いて測定した。
IR分光分析は、市販のFT−IR装置を用いて測定した。
試料中には結晶水などの水分が含まれるため、乾燥条件を変えた試料の各々の元素分析を行い、その結果を詳細に検討し、化学式を決定した。
なお、酸化還元滴定法(沃化カリウム法)によりチタン含有水溶液の残留過酸化水素濃度を測定したところ、残留過酸化水素量はTi1モルに対し0.03モルであった。また、市販の陰イオンクロマトグラフ装置を用い不純物のアニオン濃度を測定したところ、不純物(主にSO4)はTiO2に対して1.9wt%であった。
500℃で4時間焼成することにより求めたチタン酸化物(TiO2)の割合が85wt%であるチタン含水酸化物粉末12.7gと70gの純水を内容積1Lのガラス製ビーカーに入れ、攪拌しスラリー化した。次に、純度96wt%の苛性ソーダを11.3g添加した。次に35重量%過酸化水素水78.7gを該含水酸化チタンスラリーに添加した。その後、25℃を維持したまま3h攪拌し黄緑色で透明なチタン含有水溶液を得た。そこへ、クエン酸第一水和物28.4gを添加した。その後、30℃以下の温度で6h保持した後、80〜95℃で12時間保持することにより、pH6.2で透明なチタン含有水溶液120gを得た。さらに、本化合物を30℃の条件で減圧乾燥することにより粉末を得た。
この粉末について、実施例1と同様にして諸分析を行なった。
結果は次のとおりである。
元素分析値(水分を除く):
C(24.5重量%),H(1.4重量%),N(15.4重量%),O(42.6重量%),Ti(16.1重量%)
なお、酸化還元滴定法(沃化カリウム法)によりチタン含有水、溶液の残留過酸化水素濃度を測定したところ、残留過酸化水素量はTi1モルに対し0.01未満であり、検出されなかった。また、市販の陰イオンクロマトグラフ装置を用い不純物のアニオン濃度を測定したところ、不純物(主にSO4)はTiO2に対して1.9wt%であった。
実施例3
四塩化チタン500gおよび純水1リットルを氷にて冷却した。純水を攪拌しておき、そこに冷却しながら徐々に四塩化チタンを滴下して、無色のチタニアゾル塩酸溶液を得た。このチタニアゾル溶液に、1.2倍当量のアンモニア水(濃度:1モル/リットル)を滴下し、1時間攪拌し、水酸化チタンゲルを得た。この水酸化チタンゲルを吸引濾過で分別し、約1リットルの純水に再分散し濾過洗浄した。この操作を洗液が中性になるまで4〜5回繰り返し、硝酸銀を用いて塩素イオンフリーであることを確認した。得られた水酸化チタンゲル(含水率80.4重量%)を134.3g分取し攪拌し、25重量%アンモニア水を43ミリリットル添加し、pHを11.5に調整した。次に30重量%過酸化水素水76ミリリットルを、水酸化チタンゲル水溶液の温度が40℃を超えないように徐々に添加し、水酸化チタンゲルを溶解し、黄緑色で透明なチタン含有水溶液を得た。溶解工程時のチタン含有水溶液のpHは最小で9.7であった。そこへ、クエン酸第一水和物27.1gをチタン含有水溶液の温度が40℃を超えないように徐々に添加した。その後、チタン含有水溶液の温度を40℃で30分、50℃で30分、80℃で6時間保持し、pH6.2で透明なチタン含有水溶液250ミリリットル(A1)を得た。
このチタン含有水溶液(A1)のUV−VISスペクトルを図1に示す。図1で示すように、チタン含有水溶液(A1)は紫外部に強い吸収スペクトルをもち、pH2〜13の広い範囲で長期間安定であった。
含水率16.5重量%の含水酸化チタン粉末25.8gに135ミリリットルの純水を加えスラリー化し攪拌した。次に、25重量%アンモニア水を20ミリリットル添加し、pHを11.7に調整した。さらに、25重量%アンモニア水81ミリリットルと30重量%過酸化水素水141ミリリットルを混合し室温まで冷却した溶液を、スラリーの温度が40℃を超えないように徐々に添加し、黄緑色で透明なチタン含有水溶液を得た。そこへ、クエン酸第一水和物56.7gをチタン含有水溶液の温度が40℃を超えないように徐々に添加した。その後、40℃で30分、50℃で30分、60℃で30分保持した後、80℃で6時間保持することにより、pH6.0で透明なチタン含有水溶液99ミリリットル(A2)を得た。
このチタン含有水溶液(A2)のUV−VISスペクトルを図2に示す。図2で示すように、チタン含有水溶液(A2)は紫外部に強い吸収スペクトルをもち、pH2〜13の広い範囲で長期間安定であった。
含水率9.8重量%の含水酸化チタン粉末23.9gに25重量%アンモニア水122ミリリットルを加えスラリー化し攪拌した。クエン酸一水和物17.0gをスラリーの温度が40℃を超えないように少しずつ添加したところ、pHは10.4になった。次に、30重量%過酸化水素水169ミリリットルを、スラリーの温度が40℃を超えないように徐々に添加した。過酸化水素添加終了後、30℃で1時間保持したところ、黄色で透明なチタン含有水溶液を得た。その後40℃で30分、50℃で2時間保持した後、80℃で6時間保持することにより、pH6.2で黄色透明なチタン含有水溶液90ミリリットル(A3)を得た。
このチタン含有水溶液(A3)のUV−VISスペクトルを図3に示す。この図3で示すように、チタン含有水溶液(A3)は紫外部に強い吸収スペクトルをもち、pH2〜13の広い範囲で長期間安定であった。
含水率16.5重量%の含水酸化チタン粉末25.8gに135ミリリットルの純水を加えスラリー化し攪拌した。次に、25重量%アンモニア水20ミリリットルをスラリーに添加したところ、pHは11.2であった。次に30重量%過酸化水素水141ミリリットルを、スラリーの温度が40℃を超えないように徐々に添加したところ、pHは11.2から徐々に低下し、含水酸化チタンが溶ける前に6.9以下となった。その後40℃で2時間保持したが、含水酸化チタンの溶解が進行しなかったため、クエン酸を56.7g添加し、40℃で30分、50℃で2時間、80℃で6時間保持したが、溶け残りが非常に多く、透明なチタン含有水溶液は得られなかった。
含水率9.8重量%の含水酸化チタン粉末23.9gに135ミリリットルの純水を加えスラリー化し攪拌した。クエン酸一水和物を17.0g添加した後に、25重量%アンモニア水20ミリリットルを添加したところ、pHは8.6であった。次に、30重量%過酸化水素水169ミリリットルを、スラリーの温度が40℃を超えないように徐々に添加したところ、pHは8.6から徐々に低下し、含水酸化チタンが溶ける前に6.5まで低下した。その後35℃、40℃でそれぞれ2時間保持したが、溶解しなかったため、さらに、80℃で6時間保持したが、透明なチタン含有水溶液は得られなかった。
含水率9.8重量%の含水酸化チタン粉末23.9gに135ミリリットルの純水を加えスラリー化し攪拌した。クエン酸一水和物79.5gを添加した後に、25重量%アンモニア水84ミリリットルを添加したところ、pHは5.8であった。次に、30重量%を過酸化水素水141ミリリットルをスラリーの温度が40℃を超えないように徐々に添加したところ、pHは5.8から徐々に低下し、pH5.5になった。その後35℃、40℃、50℃でそれぞれ2時間ずつ、さらに、80℃で6時間保持したが、透明なチタン含有水溶液は得られなかった。
硫酸チタン30重量%水溶液52.9gを純水で80ミリリットルに希釈したところ、pH<1の無色透明の水溶液(A4)が得られた。アンモニア水を用いてpH調整を行なったところ、pH1前後でゲル化したため、水溶液(A4)そのものを含浸液とした。
この硫酸チタン水溶液(A4)のUV−VISスペクトルを図4に示す。この図4で示すように、硫酸チタン水溶液(A4)は紫外部に非常に強い吸収スペクトルをもつ。
以上、実施例3〜5及び比較例1〜4における、チタン含有水溶液の調製方法及びチタン含有水溶液のモル吸光係数ε(UV−VISスペクトル)を、それぞれ第1表及び第2表にまとめて示す。
500℃で4時間焼成することにより求めたチタン酸化物(TiO2)の割合が85wt%である含水酸化チタン粉末16.0kgと320kgの純水と26重量%のアンモニア水33.5kgを、内容積0.5m3の反応器に充填し、攪拌しスラリー化し冷却した。次に、35重量%過酸化水素水99.2kgを、該含水酸化チタンスラリーの温度が20℃を維持するように1時間かけて少しずつ添加した。その後、20℃を維持したまま3h攪拌し黄緑色で透明なチタン含有水溶液を得た。そこへ、クエン酸第一水和物35.8kgをチタン含有水溶液の温度が25℃を超えないように徐々に添加した。その後、30℃以下の温度で4h保持した後、80〜95℃で12時間保持することにより、pH6.2で透明なチタン含有水溶液180kg(A5)を得た。希釈水/TiO2重量比は、30.3であった。
500℃で4時間焼成することにより求めたチタン酸化物(TiO2)の割合が85wt%である含水酸化チタン粉末16.0kgと16.0kgの純水と26重量%のアンモニア水33.5kgを、内容積0.5m3の反応器に充填し、攪拌しスラリー化し冷却した。次に、35重量%過酸化水素水溶液99.2kgを、該含水酸化チタンスラリーに少しずつ添加したところ、冷却能力最大であるにもかかわらず水溶液の温度が20℃を維持できず、水溶液の温度が上昇したため、該混合水溶液の添加速度を遅くした。6時間かけて該混合水溶液の添加を終了した後、温度を20℃で保持し含水酸化チタンの溶解を待ったところ、該スラリーの温度が徐々に上昇し過酸化水素の分解が始まり、内圧が少しずつ上昇し始めたため、脱液し反応を停止させた。この異常現象の結果、透明なチタン含有水溶液は得られなかった。希釈水/TiO2重量比は、7.9であった。
実施例7
チタン含有水溶液(A1)50ミリリットルを純水で希釈し80ミリリットルとし、細孔容量0.8ミリリットル/gで円筒状のγ−アルミナ100gに常圧下で含浸(ポアフィリング法)した。その後、真空下で70℃で1時間乾燥した後に、120℃で3時間乾燥し、最後に500℃で4時間焼成し、チタニア5重量%担持アルミナ担体(B1)を得た。得られたチタニア担持アルミナ担体B1(成形体)の直径方向のEPMA分析を行った。図5に、このEPMAの分析結果を示す。この図5から分かるように、チタニア担持アルミナ担体(B1)は、外部から内部まで、チタニアが均質に担持されている。
チタン含有水溶液(A2)24ミリリットルを純水で希釈し80ミリリットルとし、細孔容量0.8ミリリットル/gで円筒状のγ−アルミナ100gに減圧下で含浸(ポアフィリング法)した。その後、真空下で70℃で1時間乾燥した後、12℃で3時間乾燥し、最後に500℃で4時間焼成し、チタニア5重量%担持アルミナ担体(B2)を得た。得られたチタニア担持アルミナ担体(B2)(成形体)の直径方向のEPMA分析を行った。
図6に、このEPMAの分析結果を示す。この図6から分かるように、チタニア担持アルミナ担体(B2)は、外部から内部まで、チタニアが均質に担持されている。
チタン含有水溶液(A3)47ミリリットルを純水で希釈し80ミリリットルとし、細孔容量0.8ミリリットル/gで円筒状のγ−アルミナ100gに減圧下で含浸(ポアフィリング法)した。その後、真空下で70℃で1時間乾燥した後、120℃で3時間乾燥し、最後に500℃で4時間焼成し、チタニア5重量%担持アルミナ担体(B3)を得た。得られたチタニア担持アルミナ担体(B3)(成形体)の直径方向のEPMA分析を行った。
図7に、このEPMAの分析結果を示す。この図7から分かるように、チタニア担持アルミナ担体(B3)は、外部から内部まで、チタニアが均質に担持されている。
硫酸チタン30重量%水溶液52.9gを純水で希釈し80ミリリットルとし、細孔容量0.8ミリリットル/gで円筒状のγ−アルミナ100gに減圧下で含浸(ポアフィリング法)した。その後、真空下で70℃で1時間乾燥した後、120℃で3時間乾燥し、最後に500℃で4時間焼成し、チタニア5重量%担持アルミナ担体(B4)を得た。得られたチタニア担持アルミナ担体(成形体)の直径方向のEPMA分析を行った。
図8に、このEPMA分析結果を示す。図8から分かるように、チタニア担持アルミナ担体(B4)は、外部にチタニアが偏在している。
以上、実施例7〜9及び比較例6で調製した担体の組成を、まとめて第3表に示す。
実施例10
炭酸ニッケル69.5g(NiOとして39.7g)、三酸化モリブデン220g、正リン酸31.5g(純度85%:P2O5として19.5g)に純水を250ミリリットル加え、攪拌しながら80℃で溶解し、室温にて冷却後、純水にて250ミリリットルに定容し、含浸液(S1)を調製した。
含浸液S1を50ミリリットル採取し、ポリエチレングリコール(分子量400)6gを添加して、担体(B2)100gの吸水量に見合うように純水にて希釈・定容し、常圧にて含浸させ、70℃で1時間真空乾燥後、120℃、16時間熱処理し、触媒C1を調製した。
含浸液S1を50ミリリットル採取し、ポリエチレングリコール(分子量400)6gを添加して、担体(B4)100gの吸水量に見合うように純水にて希釈・定容し、常圧にて含浸させ、70℃で1時間真空乾燥後、120℃、16時間熱処理し、触媒C2を調製した。実施例10及び比較例7で調製した触媒の組成を第4表に示す。
実施例11
固定床流通式の反応管にそれぞれ触媒C1とC2を100ミリリットル充填した。原料油は水素ガスとともに反応管の下段から導入するアップフロー形式で流通させて反応性を評価した。
前処理として第5表に示す性状の原料油「中東系直留軽油(LGO)」を水素ガスとともに流通させて予備硫化した。予備硫化後、上記の原料油「中東系直留軽油(LGO)」を水素ガスと共に流通させて水素化脱硫反応を行った。反応温度は320℃〜350℃、水素分圧5MPa、水素/原料油比250Nm3/キロリットル、LHSV=2.0hr-1の条件で実施した。
320〜350℃で評価した脱硫速度定数の平均値を用い、比較例7(触媒C2)の脱硫速度定数の平均値を100とした相対脱硫活性を求めたところ、実施例10(触媒C1)は135であった。
このチタン含有水溶液を用いることにより、高分散にチタンを担持した耐火性無機酸化物担体、及び高活性で低コストの炭化水素油の水素化処理触媒を提供することができる。また、かかる触媒を用いることにより低硫黄分の炭化水素油を効率的に製造することができる。
Claims (2)
- アンモニアと過酸化水素の存在下、pH7.0〜14.0の範囲で、チタン水酸化物及び/又はチタン含水酸化物を水に溶解させると共に、チタンイオンをヒドロキシカルボン酸により安定化させることを特徴とする、塩素イオン又は硫酸イオンのアニオン含有量がTiO 2 基準で5重量%以下のチタン含有水溶液の製造方法。
- 請求項1に記載の方法で得られたチタン含有水溶液を耐火性無機酸化物担体に接触させることを特徴とするチタン担持耐火性無機酸化物担体の製造方法。
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