JP4970966B2 - チタン担持耐火性無機酸化物担体、炭化水素油の水素化処理触媒及びそれを用いた水素化処理方法 - Google Patents
チタン担持耐火性無機酸化物担体、炭化水素油の水素化処理触媒及びそれを用いた水素化処理方法 Download PDFInfo
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Description
チタンのみを含む水溶液としては、一般的に硫酸チタン水溶液、硫酸チタニル水溶液あるいは四塩化チタン水溶液がよく知られている。しかしながら、これらの無機チタン水溶液は特異的に加水分解を起こし、耐火性無機酸化物と接触した際に急激に加水分解反応が生じるため、チタンを耐火性無機酸化物上に均一に担持させることは困難であり、チタンの効果が顕著には発揮されない(例えば、特許文献1参照)。
含浸の条件を選ぶことにより、チタンを耐火性無機酸化物の成型体の中まで均一に担持することは可能であるが、例えば、四塩化チタンや硫酸チタンに含まれる塩素イオンや硫酸イオンは触媒活性に悪い影響を与える可能性があり、さらに工業規模では腐食の原因になることから、これらのいずれも含まれないことが好ましいため、工業規模で使用するには不適当である。
一方、有機チタン化合物(アルコキシド化合物やアセチルアセテート化合物など)は、塩素イオンや硫酸イオンを含まないので、四塩化チタンや硫酸チタンより好ましいが、少量の水分でも容易に加水分解しやすいという欠点を持っている。有機チタン化合物を有機溶媒に溶解した溶液は、耐火性無機酸化物の含浸時又は浸漬時に、耐火性無機酸化物に含まれる微量水分と接触する際にチタンの水酸化物が析出するため、チタンは耐火性無機酸化物の外部に偏在してしまう。また、前記有機チタン化合物は高価であり、大量に必要とされる炭化水素油の水素化処理触媒への適用は経済上極めて困難である。
(1)チタン担持耐火性無機酸化物担体であって、該担体中の残存有機物の炭素量(D)が、0.3〜27質量%であり、式(I)で表される水分量(A)が、0.25〜37.5質量%であることを特徴とするチタン担持耐火性無機酸化物担体。
A=100−(B+C)−D (I)
〔式(I)において、Bは該担体中の耐火性無機酸化物量(質量%)、Cは該担体中のチタン量(質量%)であり、Dは高周波加熱燃焼法によって測定される該担体中の残存有機物の炭素量(質量%)である。
(B+C)はあらかじめ秤量されたチタン担持耐火性無機酸化物担体を500℃で4時間焼成した後再度秤量し、下記の式(II)によって求められる。
(B+C)=E/F×100 (II)
Eは500℃、4時間焼成後のチタン担持耐火性無機酸化物担体量(g)、
Fは焼成前のチタン担持耐火性無機酸化物担体量(g)である。〕
(2)チタン担持量が酸化物基準で、0.5〜30質量%である前記(1)に記載のチタン担持耐火性無機酸化物担体、
(3)チタン担持耐火性無機酸化物担体を酸性水溶液で洗浄後に測定したチタン量が、洗浄前のチタン量に対して酸化物換算で50%以上である前記(1)又は(2)に記載のチタン担持耐火性無機酸化物担体、
(4)チタン源が水溶性チタン化合物である前記(1)〜(3)のいずれかに記載のチタン担持耐火性無機酸化物担体、
(5)水溶性チタン化合物が、ペルオキソチタン化合物、オキソチタン化合物及びヒドロキシ(ヒドロキシカルボキシラト)チタン化合物から選ばれる少なくとも1種である前記(4)に記載のチタン担持耐火性無機酸化物担体、
(6)耐火性無機酸化物担体がアルミナ含有担体である前記(1)〜(5)のいずれかに記載のチタン担持耐火性無機酸化物担体、
(8)水溶性チタン化合物がペルオキソチタン化合物、オキソチタン化合物及びヒドロキシ(ヒドロキシカルボキシラト)チタン化合物から選ばれる少なくとも1種である(7)に記載のチタン担持耐火性無機酸化物担体の製造方法。
(9)耐火性無機酸化物担体がアルミナ含有担体である前記(7)又は(8)に記載のチタン担持耐火性無機酸化物担体の製造方法。
(11)前記(7)〜(9)のいずれかに記載の製造方法により得られたチタン担持耐火性無機酸化物担体に、周期律表第6族、第8族、第9族及び第10族に属する金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属を担持させてなることを特徴とする炭化水素油の水素化処理触媒、
(12)前記(10)又は(11)に記載の水素化処理触媒を用いて、炭化水素油を処理することを特徴とする炭化水素油の水素化処理方法、
である。
本発明のチタン担持耐火性無機酸化物担体は、耐火性無機酸化物にチタン水溶液を含浸してなる担体であって、該担体中の残存有機物が炭素量として0.3〜27質量%、好ましくは水分量が0.07〜45.0質量%及びチタンの含有量が酸化物基準で0.5〜30質量%のチタン担持耐火性無機酸化物担体である。
また、チタンの含有量が少なすぎると、チタンの効果が十分発揮されない場合があり、また、含有量が多すぎると、担体上への偏積もしくは凝集が生じる場合があり、同様にチタン添加の効果が十分に得られないことがある。以上の観点から、チタンの含有量は酸化物基準で0.5〜30質量%が好ましく、0.6〜15質量%がより好ましい。
その平均細孔径は水素化処理を行う炭化水素油の大きさによって適宜選択されるが、通常5〜30nmの範囲のものが好ましい。
該耐火性無機酸化物担体の形状については特に限定されないが、粉体、球形、円柱、三つ葉、四つ葉、マカロニ状などの成型体が好適に使用される。
水溶性チタン化合物としては、加水分解しにくいものが好ましく、例えば、(1)ペルオキソチタン化合物、(2)ペルオキソチタン、(3)オキソチタン化合物及び(4)ヒドロキシ(ヒドロキシカルボキシラト)チタン化合物の中から選ばれる少なくとも1種が使用される。これらの水溶性チタン化合物の水溶液は、概ね広い範囲のpH領域(2〜12)で安定であるためチタンを耐火性無機酸化物に高分散に均一に容易に担持することができる。
また、この水溶性チタン化合物の水溶液はチタン以外の金属や、塩素イオン、硫酸イオンのように焼成しても完全には除去できず、かつ触媒の表面状態に悪影響を及ぼす可能性のある物質を実質的に含まないため、安全確実に工業的用途に適用可能である。
(1)ペルオキソチタン化合物
ペルオキソチタン化合物とは、一般式Ax[Ti(O2)yBz](Aはカチオン、Bはヒドロキシカルボン酸)で表される水溶性チタン化合物であり、特開2002−1115号公報又は特開2000−159786号公報などに開示された公知の製造方法により得ることができる。炭化水素油の水素化処理触媒用に使用するには、チタン以外の金属を含まない塩として、上記カチオンAがアンモニウムイオンであるものが好ましい。ヒドロキシルカルボン酸Bとしてはさまざまなものを用いることができ、特にクエン酸、りんご酸、乳酸、酒石酸等が好適である。上記一般式において、通常、x、y、zは1〜4である。
ペルオキソチタンとは、一般式Ax[Ti(O2)y](Aはカチオン)であらわされる、チタン水溶液である。炭化水素油の水素化処理触媒用に使用するには、チタン以外の金属を含まない塩として、上記カチオンAがアンモニウムイオンであるものが好ましい。
このペルオキソチタン(水溶液)は以下に示す方法により、製造することができる。すなわち、チタン原料に、アンモニア水溶液と過酸化水素を加えて、pH7〜14の範囲でチタンを溶解する方法である。
ここで、チタン水酸化物は、オルトチタン酸(TiO2・nH2O、n=2程度)の化学名で示される化合物であって、一般的に知られている方法、すなわち、四塩化チタン又は硫酸チタニルの水溶液を室温でアルカリ中和した後に十分に洗浄することによって得られるゲル状のもの、あるいは乾燥したもので、含水率が2質量%以上のものである。そして実質上塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン等のアニオンが検出されないものが好適に使用される。なお、「実質上アニオンが検出されない」とは、アニオン含有量がTiO2基準で10質量%以下、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下のことをいう。
チタン水酸化物及びチタン含水酸化物はスラリーのまま使用しても良いが、乾燥したものも用いることができる。乾燥条件の制限は特になく、一般的な条件、すなわち、常圧下又は減圧下で、150℃以下の温度で乾燥させることが好ましい。TiO2含有率は、550℃で2時間焼成し、水分を除去した後に秤量して求める。
なお、チタン水酸化物及びチタン含水酸化物の間には化学種としての差異はなく、生成した微粒子の凝集度の相違があるに過ぎないと一般に考えられており、上記のn値はそれぞれ目安値に過ぎない。
まず、上記のチタン水酸化物やチタン含水酸化物、チタン金属などのチタン原料を所定量の水に分散させてスラリー状とする。次いで、このスラリーをアルカリ化合物と過酸化水素の存在下、pH7〜14、好ましくはpH8〜13の範囲に保持する。これにより、チタン原料が溶解する。pHはアルカリ化合物の添加量で調整する。pHが低すぎるとチタン原料の溶解が進行せず、pHが高すぎると後述するとおり、過酸化水素の分解反応が促進するため危険である。
チタン原料を溶解する際の温度は特に限定されないが、通常水溶液を処理する温度5〜80℃程度、好ましくは10〜70℃の範囲が適当である。温度が低すぎるとチタン原料の溶解が進行しにくい。また温度が高すぎると過酸化水素の分解反応(酸素放出)が起こり、添加した過酸化水素が無駄になるのみならず、圧力上昇により溶解槽が破裂する危険性が高くなるため好ましくない。
このようにして調製したペルオキソチタン水溶液は、チタン含浸用の水溶液として、必要に応じて、希釈して用いる。そのために、最初に使用する希釈水の量は最低限とする。
オキソチタン化合物とは、一般式Ax[Ti(O)yBz](Aはカチオン、Bはヒドロキシカルボン酸)であらわされる水溶性チタン化合物であり、特開2004−74148号公報などに開示された公知の製造方法により得られる。炭化水素油の水素化処理触媒用に使用するには、チタン以外の金属を含まない塩としてカチオンAがアンモニウムイオンであるものが好ましい。ヒドロキシルカルボン酸Bとしてはさまざまなものを用いることができ、クエン酸、りんご酸、乳酸、酒石酸等が好適である。上記一般式において、通常、xは0.4〜4、y及びzは0.2〜2である。
ヒドロキシ(ヒドロキシカルボキシラト)チタン化合物とは、一般式[Ti(OH)x(B)y](Bはヒドロキシカルボン酸)で表される水溶性化合物である。特開2000−256376号公報又は特開2000−351787号公報に開示されている公知の製造方法により得ることができる。炭化水素油の水素化処理触媒用としては、チタン以外の金属を含まないものが好適に使用される。通常、x及びyは1〜4である。該チタン化合物の中では、工業規模で製造されているジヒドロキシビス(ラクタト)チタンモノアンモニウム塩が入手性、溶液の安定性の観点から好適に使用される。
チタン担持耐火性無機酸化物担体の製造方法としては、上記の水溶性チタン化合物水溶液を耐火性無機酸化物が吸収する量に調整して含浸させるポアフィリング法(含浸法)、大過剰の水溶性チタン化合物の水溶液に耐火性無機酸化物を浸漬する方法などの一般的な手法で、常圧又は減圧下で行うことができる。なお、本発明で使用する水溶性チタン化合物の水溶液はpH2〜12の範囲で安定であり、アンモニア(水)や有機酸などを添加し、耐火性無機酸化物毎に、各々の最適なpH領域で担持することが可能である。
また、チタンの含有量が少なすぎると、チタンの効果が十分発揮されない場合があり、また、含有量が多すぎると、担体上への偏積もしくは凝集が生じる場合があり、同様にチタン添加の効果が十分に得られないため好ましくない。以上の観点から、チタンの含有量は酸化物基準で0.5〜30質量%が好ましく、0.6〜15質量%がより好ましい。
この後、300℃を超える温度で焼成を行うことは好ましくない。チタンと耐火性無機酸化物との結合性、すなわちチタン固定化率をより高めるために焼成を行うと、チタンの分散性が低下する、この操作によって、触媒としての性能が低下してしまうためである。
チタン固定化率=[酸性水溶液で洗浄後のチタン担持耐火性無機酸化物中のチタン担持量]/[洗浄前のチタン担持耐火性無機酸化物中のチタン担持量]×100
チタン固定化率が30%以下では、チタンの効果が十分に発揮されない。本発明のチタン担持耐火性無機酸化物担体においては、300℃を超える温度で焼成しなくとも、チタンの固定化率は50%以上でありチタンは十分に固定化されている。
A=100−(B+C)−D
ここで、Aは[水分量]、Bは[耐火性無機酸化物量]、Cは[チタン量]、Dは[高周波燃焼法によって測定される炭素量]である。
なお、(B+C)は、あらかじめ秤量されたチタン担持耐火性無機酸化物担体を500℃で4時間焼成した後、再度秤量し、次式で求められる。
(B+C)=E/F×100
ここで、Eは[500℃、4時間焼成後のチタン担持耐火性無機酸化物担体量]、Fは[チタン担持耐火性無機酸化物担体量]であり、それぞれ質量(g)で表す。
本発明は、また、水溶性チタン化合物を耐火性無機酸化物担体に含浸後、水分除去処理によって、チタン担持耐火性無機酸化物担体中の残存有機物を、炭素量として0.3〜27質量%の範囲に制御することを特徴とするチタン担持耐火性無機酸化物担体の製造方法及び水溶性チタン化合物を耐火性無機酸化物担体に含浸した後、水分除去処理によって、チタン担持耐火性無機酸化物担体中の水分量を0.07〜45.0質量%の範囲に制御することを特徴とするチタン担持耐火性無機酸化物担体の製造方法も提供する。
本発明の炭化水素油の水素化処理触媒は、前述のようにして得られたチタン担持耐火性無機酸化物に、周期律表第6族、第8族、第9族及び第10族に属する金属の中から選ばれる少なくとも一種の金属を担持させることにより、調製することができる。
この触媒の活性金属種は、周期律表第6族金属としてモリブデン、タングステンなどが使用されるが、特にモリブデンが好適に使用される。モリブデン化合物としては、12モリブドリン酸などのヘテロポリ酸、三酸化モリブデン、パラモリブデン酸アンモニウムなどが好適である。タングステン化合物としては、12タングストリン酸などのヘテロポリ酸、三酸化タングステン、タングステン酸アンモニウムなどが好適である。
通常は、含浸液中の第6族金属、第8〜第10族金属及びリンの含有量は、目標とする担持量から計算で求める。これらの金属を脱イオン水に溶解させた後、その含浸液の液量を用いるチタン担持耐火性無機酸化物担体の吸水量に等しくなるように調整した後、含浸させる。
活性金属の含浸液には水溶性有機化合物を添加することにより活性を高めることができる。例えば、分子量が90〜10000のポリエチレングリコール等の水溶性有機物を添加することが特に好ましい。添加量は担体に対して、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは2〜10質量%の範囲がよい。
上記のようにして調製された本発明の触媒は、炭化水素油の水素化処理触媒として好適に用いられる。軽質油の水素化処理触媒として使用される場合と、重質油の水素化処理触媒として使用される場合、あるいは水素化分解触媒の前処理として使用される場合とでは、水素化処理の目的の相違から、担体の物性及び担持金属の含有量等の最適範囲が異なる。
軽質油の水素化処理の目的は、水素化脱硫、水素化脱オレフィン、水素化脱芳香族、水素化脱窒素等であり、特に軽油留分中の硫黄含有量を10質量ppm以下まで低減する水素化脱硫反応においては、4,6−ジメチルジベンゾチオフェンのような難脱硫性硫黄化合物を脱硫しなければ硫黄含有量を10質量ppm以下にすることは困難である。そのため、反応初期から反応温度を高くする必要があり、従来の触媒では触媒寿命が著しく短くなる。従って、従来の触媒より活性点の数を多くすることが必要であり、そのためには本発明における触媒の好ましい物性は以下のようになる。
まず、上記の周期表第6族金属の担持量は、触媒全量に対して、酸化物基準で4〜32質量%の範囲にあることが好ましく、特には8〜28質量%の範囲が好ましい。次に周期表第8〜10族金属の担持量は、酸化物基準で1〜10質量%の範囲であることが好ましく、特には2〜8質量%の範囲が好ましい。これらの水素化金属がこの範囲内であると水素化脱硫活性が高くなる。担持量が多すぎても活性向上には効果がなく、担持量が少なすぎると活性が不足するため、担持量には最適値がある。
また、上記のリンの担持量は触媒金属全量に対して、酸化物基準で0.5〜8質量%の範囲であることが好ましく、さらには1〜6質量%の範囲が好ましい。
軽質油の水素化処理触媒として使用される場合のチタン担持耐火性無機酸化物担体の細孔直径としては、8〜25nmの範囲であることが好ましく、さらには10〜22nmの範囲が好ましい。比表面積は80〜300m2/gの範囲が好ましい。細孔容積は0.4〜1ml/gの範囲が好ましく、さらには0.5〜0.9ml/gの範囲が好ましい。
本発明の触媒を常圧残油や減圧残油等の重質油を原料として低硫黄重油を生産する水素化触媒として使用する場合の好適な物性等について以下に説明する。
通常、前記重質油の水素化処理等の用途においては、重油(直接)脱硫装置が用いられる。使用によって触媒の脱硫活性が低下するため、触媒寿命は1年以内と短く、短い周期で該装置を停止し、触媒を交換する必要がある。また、灯軽油等の水素化処理と異なり運転初期から高い温度を必要とし、さらに触媒活性が低下していくために、一定の活性を維持するため反応温度を徐々に上げていく必要がある。特に重質油にはバナジウム、ニッケル等の金属分が含まれ、反応中に触媒に堆積して水素化処理活性を被毒するため、触媒の劣化が著しい。
また、重質油の水素化処理に本触媒を適用する場合には、重質油を構成する炭化水素分子が軽質油に比較して大きいこと、触媒の寿命を延ばすために反応塔の上流側に水素化脱金属触媒を用い、下流側に水素化処理(主に水素化脱硫)触媒を用いた触媒システムが好適に採用されるということが重要である。
重質油の水素化脱金属触媒として使用される場合のチタン担持耐火性無機酸化物担体として、細孔径が10〜30nmの範囲であることが好ましく、さらには12〜25nmの範囲が好ましい。比表面積は80〜250m2/gの範囲であることが好ましく、さらには100〜200m2/gの範囲が好ましい。細孔容積は0.4〜1ml/gの範囲が好ましく、さらには0.5〜0.9ml/gの範囲が好ましい。
重質油の水素化処理(主に脱硫)触媒として使用される場合のチタン担持耐火性無機酸化物担体としては、細孔径として、8〜25nmの範囲であることが好ましい。8nm未満であると原料油中のバナジウム、ニッケル等の金属の堆積及びコーク前駆体の蓄積により、短時間で細孔の入口が閉塞し、脱硫活性が低下する。一方、25nmを超えると、結果として触媒の比表面積が小さくなりすぎるので水素化金属を好適に分散させることができなくなるため、運転初期において脱硫活性が低く(反応温度が高く)なる。以上の観点から触媒としての細孔径はさらには10〜22nmの範囲であることが好ましい。比表面積は100〜250m2/gの範囲であることが好ましい。比表面積が100m2/g未満であると、触媒の脱硫活性が低くなる場合があり、一方、比表面積が250m2/gを超えても、(細孔径が小さくなりすぎるので)、脱硫活性はむしろ低下する場合がある。以上の観点から、比表面積は120〜230m2/gの範囲であることが好ましい。
本発明の触媒を用いて処理する炭化水素油として、全ての石油留分を用いることができる。具体的には、ナフサ、灯油、軽質軽油、重質軽油、分解軽油等から常圧残油、減圧残油、脱ロウ減圧残油、アスファルテン油、タールサンド油まで広く挙げることができる。特に、灯油留分、軽質軽油留分の超深度脱硫領域(硫黄分10質量ppm以下)のための水素化処理触媒として、極めて高活性な本発明の触媒は有用である。
本発明の水素化処理方法は、沸点がASTM D86(JIS K2254)に基づく初留点および90%留出温度が100〜400℃程度である炭化水素油を水素化処理することにより、硫黄含有量が10質量ppm以下の炭化水素油を製造するのに好ましく用いられる。
また、上記低硫黄炭化水素油を製造する際に、本発明の水素化処理用触媒を用い、触媒反応圧力をさらに上げることにより、低硫黄炭化水素油中の芳香族分を低減することも可能である。例えば、反応温度250〜400℃、反応圧力4〜30MPa、水素/原料油比200〜3000Nm3/キロリットル、液空間速度(LHSV)0.2〜5h-1程度で処理することにより、二環以上の芳香族分を5容量%以下に、一環芳香族分を15容量%以下に容易に低減することができる。さらに、上記の反応条件を適切に選択することにより、二環以上の芳香族分を1容量%以下に、一環芳香族分を5容量%以下に低減することができる。
なお、本発明を重質油の水素化処理(水素化脱金属処理、水素化脱硫処理等)に適用する場合には、反応温度200〜550℃程度、好ましくは220〜500℃、水素分圧5〜30MPa程度、好ましくは10〜25MPaの範囲で行なう。反応形式は特に限定されないが、通常は、固定床、移動床、沸騰床、懸濁床等の種々のプロセスから選択でき、特に固定床が好ましい。固定床の場合の温度、圧力以外の条件としては、液空間速度(LHSV)は0.05〜10h-1程度、好ましくは0.1〜5h-1、水素/原料油比は500〜2500Nm3/キロリットル程度、好ましくは700〜2000Nm3/キロリットルである。
500℃で4時間焼成することにより得られたチタン酸化物の割合が85質量%であるチタン含水酸化物粉末12.7gと70gの純水を内容積1リットルのガラス製ビーカーに入れ、攪拌してスラリー化した。次に、35質量%濃度の過酸化水素水78.7gと26質量%濃度のアンモニア水26.5gを混合した水溶液を該含水酸化チタンスラリーに添加した。その後、25℃を維持したまま3時間攪拌し黄緑色で透明なチタン含有水溶液を得た。そこへ、クエン酸第一水和物28.4gを添加した。その後、30℃以下の温度で6時間保持した後、80〜95℃で12時間保持することにより、pH6.2で透明なオキソチタン化合物水溶液(A1)120gを得た。得られた水溶液(A1)を30℃の条件で2時間減圧乾燥することにより粉末化した。
得られたオキソチタン化合物を用いてその元素分析を行い、次の元素分析値(水分を除く)を得た。C:24.2質量%、H:4.1質量%、N:10質量%、O:45.4質量%、Ti:16.3質量%。
また、IR分光法により、アンモニウム、COO−、Ti=Oの存在も確認され、元素分析結果と併せて、Ti1モルに対し、アンモニウムが2モル、クエン酸基が1モル存在することが分かった。その結果、この粉末は、(NH4)2[Ti(O)(クエン酸基)]であることが分かった。
調製例1で調製したオキソチタン化合物水溶液(A1)34gを、脱イオン水で希釈して80ミリリットルとした。次に、この水溶液を細孔径16nm、比表面積208m2/g、細孔容積0.88ml/gであるアルミナ(B0)100gに常圧下にて含浸(ポアフィリング法)した。70℃で1時間減圧にて乾燥後、120℃で3時間乾燥器にて乾燥させ、水分量1.2質量%、炭素量2.7質量%のチタン担持アルミナ担体(B1)を得た。得られた担体のチタン量は酸化物基準で3.0質量%であった。
得られたチタン担持アルミナ担体(B1)は細孔径14nm、比表面積217m2/g,細孔容積0.78ml/gであった。
なお、細孔径、比表面積、細孔分布、細孔容積は、カンタクロム社製「オートソーブ」を用いて窒素吸着法(脱離側)で測定した。
調製例1で調製したオキソチタン化合物水溶液(A1)34gを、脱イオン水で希釈して80ミリリットルとした。次に、この水溶液をアルミナ(B0)100gに常圧下にて含浸(ポアフィリング法)した。70℃で1時間減圧にて乾燥後、500℃で4時間焼成し、水分量0.0質量%、炭素量0.1質量%のチタン担持アルミナ担体(B2)を得た。得られた担体のチタン量は酸化物基準で3質量%であった。
得られたチタン担持アルミナ担体(B2)は細孔径16nm、比表面積205m2/g,細孔容積0.82ml/gであった。
三酸化モリブデン300g(MoO3含有率100%)、塩基性炭酸ニッケル103g、正リン酸65g(正リン酸含有率85.2質量%)を80℃にてイオン交換水に溶解し、全量が427mLの水溶液(金属含浸液S)を調製した。該金属含浸液に、実施例1で製造したチタン担持アルミナ担体(B1)100質量部に対して6質量部のトリエチレングリコールを添加し、上記担体に含浸させた。含浸後120℃で4時間乾燥し、水素化処理触媒(C1)を得た。該触媒の比表面積は164m2/g、モリブデン、ニッケル及びリンの含有量は、それぞれ酸化物換算(MoO3、NiO、P2O5)で、27質量%、5.4質量%、3.6質量%であった。
実施例2で調製した金属含浸液(S)を、それぞれ酸化物換算(MoO3、NiO、P2O5)で、30.0質量%、6.0質量%、4.0質量%になるように、比較例1で調製したチタン担持アルミナ担体(B2)に含浸させた。含浸後120℃で4時間乾燥し、水素化処理触媒(C2)を得た。
固定床流通式の反応管に、それぞれ実施例2および比較例2で製造した水素化処理触媒(C1)および(C2)を100ミリリットル充填した。原料油は水素ガスとともに反応管の上段から導入するダウンフロー形式で流通させて反応性を評価した。
前処理として、第1表に示す性状の原料油「中東系直留軽油(LGO)」を水素ガスとともに流通させて予備硫化処理した。予備硫化処理後、第2表に示す原料油「中東系直留軽油(LGO)」を水素ガスと共に流通させて水素化脱硫反応を行った。反応温度は310〜360℃、水素分圧4.9MPa、水素/原料比250Nm3/キロリットル、LHSV=1.0h-1の条件で実施した。
硫黄分10質量ppmを実現するための反応温度、および得られた生成油の性状を第3表に示す。なお、密度はJIS K2249、硫黄分はJIS K2541−2あるいはJIS K2541−6、窒素分はJIS K2609、芳香族分はJPI−5S−49−97により測定した。
比較例3に比べ実施例3は反応温度が5℃高活性で、色相(ASTMカラー)も良好であることが分かる。
実施例2で得た水素化処理触媒(C1)を前段に50容量%、Y型ゼオライトとアルミナおよびボリアとの混合担体にNiMoを担持してなる水素化分解触媒(HYC)を後段に50容量%、高圧固定床反応器に充填し、通常の方法で予備硫化した。その後、中東系原油から得た重質軽油(VGO)を原料として、液空間速度(LHSV)1.0/hr、水素分圧110kg/cm2G(10.79MPa)、前段前処理触媒(C1)の反応温度を375℃、後段の水素化分解触媒の反応温度を385℃、水素/原料油比1,000Nm3/klの条件で水素化分解反応を行った。尚、前処理触媒のみの性能を評価するため、その他の条件はすべて同一で、後段の水素化分解触媒の反応温度を200℃以下に下げ、実質上後段触媒の反応が進行しない条件でも評価を実施した。
原料油である減圧軽油の性状を表4に示す。
比較例2で得た水素化処理触媒(C2)を同じく(C1)に置き換えた以外はすべて実施例4と同様にして、組合せ系での水素化分解反応ならびに前処理触媒(C2)のみの性能評価を実施した。
実施例4と比較例4の性能評価結果を表5に示す。
固定床流通式の反応管に、それぞれ実施例2、比較例2で製造した水素化処理触媒(C1)、(C2)を45ミリリットル充填した。原料油は水素ガスとともに反応管の上段から導入するダウンフロー形式で流通させて反応性を評価した。
前処理として、第6表に示す性状の原料油「中東系直留灯油(KERO)」を水素ガスとともに流通させて予備硫化処理した。予備硫化処理後、同じ中東系直留灯油(KERO)を水素ガスと共に流通させて水素化脱硫反応を行った。反応温度は300〜320℃、水素分圧3.4MPa、水素/原料比85Nm3/キロリットル、LHSV=9.0h−1の条件で実施した。
硫黄分5質量ppm以下を実現するための反応温度を第7表に示す。本技術により、脱硫活性が向上するとともに、色相も向上していることがわかる。
Claims (12)
- チタン担持耐火性無機酸化物担体であって、該担体中の残存有機物の炭素量(D)が、0.3〜27質量%であり、式(I)で表される水分量(A)が、0.25〜37.5質量%であることを特徴とするチタン担持耐火性無機酸化物担体。
A=100−(B+C)−D (I)
〔式(I)において、Bは該担体中の耐火性無機酸化物量(質量%)、Cは該担体中のチタン量(質量%)であり、Dは高周波加熱燃焼法によって測定される該担体中の残存有機物の炭素量(質量%)である。
(B+C)はあらかじめ秤量されたチタン担持耐火性無機酸化物担体を500℃で4時間焼成した後再度秤量し、下記の式(II)によって求められる。
(B+C)=E/F×100 (II)
Eは500℃、4時間焼成後のチタン担持耐火性無機酸化物担体量(g)、Fは焼成前のチタン担持耐火性無機酸化物担体量(g)である。〕 - チタン担持量が酸化物基準で、0.5〜30質量%である請求項1に記載のチタン担持耐火性無機酸化物担体。
- チタン担持耐火性無機酸化物担体を酸性水溶液で洗浄後に測定したチタン量が、洗浄前のチタン量に対して酸化物換算で50%以上である請求項1又は2に記載のチタン担持耐火性無機酸化物担体。
- チタン源が水溶性チタン化合物である請求項1〜3のいずれかに記載のチタン担持耐火性無機酸化物担体。
- 水溶性チタン化合物が、ペルオキソチタン化合物、オキソチタン化合物及びヒドロキシ(ヒドロキシカルボキシラト)チタン化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載のチタン担持耐火性無機酸化物担体。
- 耐火性無機酸化物担体がアルミナ含有担体である請求項1〜5のいずれかに記載のチタン担持耐火性無機酸化物担体。
- 水溶性チタン化合物を耐火性無機酸化物担体に含浸した後、水分除去処理によって、チタン担持耐火性無機酸化物担体中の残存有機物を、炭素量として、0.3〜27質量%の範囲に制御し、チタン担持耐火性無機酸化物担体中の水分量を0.25〜37.5質量%の範囲に制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のチタン担持耐火性無機酸化物担体の製造方法。
- 水溶性チタン化合物がペルオキソチタン化合物、オキソチタン化合物及びヒドロキシ(ヒドロキシカルボキシラト)チタン化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載のチタン担持耐火性無機酸化物担体の製造方法。
- 耐火性無機酸化物担体がアルミナ含有担体である請求項7又は8に記載のチタン担持耐火性無機酸化物担体の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のチタン担持耐火性無機酸化物担体に、周期律表第6族、第8族、第9族及び第10族に属する金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属を担持させてなることを特徴とする炭化水素油の水素化処理触媒。
- 請求項7〜9のいずれかに記載の製造方法により得られたチタン担持耐火性無機酸化物担体に、周期律表第6族、第8族、第9族及び第10族に属する金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属を担持させてなることを特徴とする炭化水素油の水素化処理触媒。
- 請求項10又は11に記載の水素化処理触媒を用いて、炭化水素油を処理することを特徴とする炭化水素油の水素化処理方法。
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